説明

加熱処理装置

【課題】 加熱処理中に生ずる昇華物の析出が有効に防止される加熱処理装置を実現する。
【解決手段】 基板3を加熱すると、基板3の表面に塗布されたレジスト液などから溶剤が気化しあるいは樹脂から昇華したものが天板10の下面のフッ素樹脂被膜11で凝集する。凝集物はフッ素樹脂被膜11の表面に形成されるため微細な径となるが、更にフッ素樹脂被膜は滑りやすいので、傾斜に沿って移動し、天板10の端部から下方に落下する。凝集液滴が落下する位置は基板3よりも外側にしているため、歩留り低下の原因にはならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体や液晶パネルの製造工程等において使用される加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶パネルの製造工程においては、ガラス基板やウェーハなどの被処理基板に対し洗浄、コーティング、露光、乾燥等の各種工程が行われている。これらの製造プロセスの中間工程において、プリベークやポストベークが必要となり、この場合、被処理基板を加熱処理装置内で加熱処理してから次段の工程に移行している。
【0003】
加熱処理装置の構造は、ハウジング内にホットプレートを配置し、被処理基板をホットプレート上に載置し、ホットプレートにより基板を加熱処理するようにしている(特許文献1)。この既知の加熱処理装置では、ホットプレートの上方にパージ室を形成する蓋体が設けられ、この蓋体の裏面にはホットプレートと対向する反射板が形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−326532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加熱処理中には、基板表面に形成された塗布膜から溶剤が気化するだけでなく、前記塗布膜に含まれる樹脂等に起因する昇華成分が昇華し、ハウジングの天井面を含む内側表面に析出する。
【0006】
ハウジングの天井面に昇華物が析出すると、析出した昇華物が成長し、加熱処理中に基板上に落下してしまうことがある。このように基板上に昇華物が落下するとピンホールなどの不良発生の原因となる。このため、数週間に1回程度、析出した昇華物を除去する清掃を行ない、昇華物が基板上に落下するリスクを低減する必要があり、人手が必要になるとともに清掃の間は装置を停止しなければならず生産効率も低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る加熱処理装置は、ハウジングの天井面または当該天井面から吊り下げられた天板の下面に、フッ素樹脂またはシリコン樹脂からなる撥水・撥油被膜を形成するようにした。
撥水・撥油被膜を形成することで、第1に付着する析出物の粒径が極めて小さくなり、第2に仮に天井面や天板から落下した場合でも、気流によって排気口に運ばれ、基板表面に落下する確率が大幅に低減する。
【0008】
また、ハウジングの天井面または当該天井面から吊り下げられた天板をハウジングの一方(排気口がある側)に向けて傾斜させてもよい。このようにすることで、天井面または天板の下面に付着した析出物となる液体は傾斜に沿って移動し、基板から外れた箇所に落下する。
【0009】
フッ素樹脂被膜としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニルフロライド(PVF)四フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビリニデンフロライド(PVDF)を用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、加熱処理中の被処理体上に析出物が落下する不具合が解消される。また、清掃する回数も低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明による加熱処理装置の一例を示す断面図である。加熱処理装置は、ハウジング1を有し、当該ハウジング1内にホットプレート2を備えている。ホットプレート2は内部に加熱装置を有し、載置した基板(被処理体)3を加熱する。なお、基板3表面にはフォトレジスト組成物等の感光性組成物、SOG材料等が塗布されている。
【0012】
また、加熱処理装置はホットプレート2を貫通する昇降ピン4a〜4cを備え、加熱処理前の基板3が、シャッタ5を介してアームにより搬入され、上昇したピン4a〜4cに受け渡され、該ピン4a〜4cが下降することによりホットプレートに載置される。そして、ホットプレートにて該基板の加熱処理が行われる。
【0013】
ハウジング1はホットプレート2をはさんで互いに対向する第1及び第2の側壁1a及び1bおよび天井面1cを有し、側壁1aにはシャッタ5を設け、側壁1bには真空源に接続する排気口6を設けている。
【0014】
ハウジング1の天井面1cからはその下面が基板3の表面に接近して対抗する天板10が吊り下げられている。この天板10は前記シャッタ5の側が高く排気口6の側が低くなるように全体が傾斜し、更に天板10の下面には撥水・撥油被膜であるフッ素樹脂被膜11が形成されている。フッ素樹脂被膜11の代わりにシリコン樹脂被膜でもよい。
【0015】
以上において、基板3を加熱すると、基板3の表面に塗布されたレジスト液などから溶剤が気化しあるいは樹脂から昇華したものが天板10の下面のフッ素樹脂被膜11で凝集する。凝集物はフッ素樹脂被膜11の表面に形成されるため微細な径となるが、更にフッ素樹脂被膜は滑りやすいので、図2に示すように傾斜に沿って移動し、天板10の端部から下方に落下する。凝集液滴が落下する位置は基板3よりも外側にしているため、歩留り低下の原因にはならない。
【0016】
図3は別実施例を示す断面図であり、この実施例にあっては天板を設けておらず、その代わり、ハウジング1の天井面1cにフッ素樹脂被膜11を形成している。
【0017】
図3に示した実施例にあっては天井面1cは傾斜させていないが、前記実施例と同様に排気口6に向けて傾斜させてもよい。
【0018】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、排気口を側壁に設けているが、上側壁部または下側壁部に設けてもよい。特に天板を設けた場合には、天板と対向する上側壁部に排気口を設けることができる。
【0019】
また撥水・撥油被膜を黒色としてもよい。このようにすることで撥水・撥油被膜の温度が上がるため、昇華物が冷却されて析出することを抑制する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による加熱処理装置の一例を示す断面図
【図2】昇華物の動きについて説明した図
【図3】加熱処理装置の変形例を示す断面図
【符号の説明】
【0021】
1…ハウジング、1a,1b…ハウジングの側壁部、1c…ハウジングの天井面、2…ホットプレート、3…基板、4a〜4c…ピン、5…シャッタ、6…排気口、11…撥水・撥油被膜、10…天板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に被処理体を加熱処理するホットプレートを配置した加熱処理装置において、前記ハウジングの天井面または当該天井面から吊り下げられた天板の下面にはフッ素樹脂またはシリコン樹脂からなる撥水・撥油膜が形成されていることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱処理装置において、前記フッ素樹脂被膜が形成された面はハウジング内の一端に向かって傾斜していることを特徴とする加熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−78402(P2008−78402A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256177(P2006−256177)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】