説明

加熱炉および加熱装置

【課題】SMAワイヤを連続して安定的に残留歪みを除去することができる加熱炉、加熱装置を提供する。
【解決手段】ワイヤの一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路が形成された加熱部と、ワイヤが通過する第2通路が形成され、第2通路が第1通路の両端にそれぞれ連通するように加熱部と一体に設けられた2つのガイド部と、を備え、ガイド部は、2つのガイド部の開口の温度が張力におけるマルテンサイト変態終了温度以下になるように構成されていることを特徴とする加熱炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金からなるワイヤを加熱する加熱炉および加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
形状記憶合金(Shape Memory Alloy、以下SMAと記す。)からなるワイヤや箔等の伸縮を利用して駆動対象物を駆動させる駆動装置が知られている。このような駆動装置を製造する際には、SMAを架設した初期状態を検査するが、架設時の張力調整のばらつきや、SMAの取り付け状態に起因する張力変動等により、駆動装置内における駆動対象物の初期位置にばらつきが生じるといった問題点があった。
【0003】
このような問題に対して、駆動対象物の初期位置を調整するために、調整機構を設けた駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されている調整を行っても、SMAの特性により初回の加熱、冷却による伸縮駆動時にSMAの応力が変動し、駆動対象物の初期位置がずれるという問題がある。
【0005】
SMAの特性について図17を用いて説明する。図17はSMAの応力−歪み特性例を示すグラフである。図17の横軸は歪み、縦軸は応力である。
【0006】
例えば図17の0点からA点まで応力を加えた後、応力を取り去ると図中矢印で示すようにA’点に達する。A’点の歪みが残留歪みである。この状態から再びSMAに応力を加えるとA’点からA点に向かってSMAの歪みは増加する。SMAを一旦加熱してオーステナイト変態させると残留歪は消失するため、応力と歪の関係は再びグラフ上0Aで示す関係となる。
【0007】
一般に、SMAからなるワイヤ(以下、SMAワイヤと記す)を用いる駆動装置では、金属製の2つの端子にSMAワイヤを固定する方法がとられる。この端子間に架設する際のSMAワイヤに加える応力が一定であっても、残留歪みの有無により、結果的に応力差が生じる。例えば、端子間に架設する際のSMAワイヤに加える応力の設計上の目標値をb1とする。残留歪みのないSMAワイヤにb1の応力を加えた場合は図中の0点から直線上にあるB点に達するのに対し、例えば前述のようにA’点に示す残留歪みの残っているSMAワイヤにb1の応力を加えた場合は図中のA’点から直線上にあるC’点に達する。
【0008】
このように残留歪みの残っているSMAワイヤにb1の応力を加えた状態で駆動装置の端子間にSMAワイヤを固定した後、SMAワイヤを加熱してオーステナイト変態させると残留歪みは解消する。残留歪みが解消すると、SMAワイヤの長さは歪みがc2になる直線0A上の点Cで均衡する。すなわち、SMAワイヤを加熱して残留歪みが解消されると応力はc1になり、SMAワイヤ架設時の応力b1との応力差b1−c1が生じる。しかしながら、予めSMAワイヤの残留歪みの量を測定することは困難であり、残留歪みの無いSMAワイヤを選別したり、残留歪みの量に応じて応力差を補正することはできない。
【0009】
このような問題を解決するため、被架設物にSMAワイヤを架設した後、架設されたSMAワイヤに通電してオーステナイト温度域まで加熱した後、所定の引張応力を与えながら駆動装置に固定することにより、SMAワイヤに対して生じる架設時の応力変動を解消する製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−160997号公報
【特許文献2】特開2007−162612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示されている製造方法では、SMAワイヤを架設する工程と加熱する工程とを同じ環境で行うため、SMAワイヤ周辺の環境を管理することが難しく、環境温度や風の影響によりオーステナイト温度域まで加熱できないおそれがあった。また、部品毎に所定の長さのSMAワイヤを架設した後、加熱、冷却と張力調整を行うため連続生産に適していない面があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、SMAワイヤを連続して安定的に残留歪みを除去することができる加熱炉、加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0013】
1.一定の張力が与えられた形状記憶合金からなるワイヤが通過するように配設され、該ワイヤのマルテンサイト変態終了温度以下の環境に設置し、通過する該ワイヤを加熱して残留歪みを除去する加熱炉であって、
前記ワイヤの一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路が形成された加熱部と、
前記ワイヤが通過し前記第1通路の両端にそれぞれ連通する第2通路が形成されていて、前記加熱部の壁面から突出するように設けられた2つのガイド部と、
を備え、
前記ガイド部は、
2つの前記ガイド部の開口の温度が前記張力におけるマルテンサイト変態終了温度以下になるように構成されていることを特徴とする加熱炉。
【0014】
2.前記第1通路と前記第2通路とからなる前記加熱炉の内部空間は、2つの前記開口のみ外部環境に開放されていることを特徴とする前記1に記載の加熱炉。
【0015】
3.前記ガイド部は円筒状であることを特徴とする前記1または2に記載の加熱炉。
【0016】
4.前記ガイド部の前記ワイヤの通過方向と直交する断面の断面積は、
前記加熱部の前記ワイヤの通過方向と直交する断面の断面積より小さく、
前記ガイド部の前記ワイヤの通過方向が水平になるように設置されていることを特徴とする前記1乃至3の何れか1項に記載の加熱炉。
【0017】
5.前記1乃至4の何れか1項に記載の加熱炉と、
前記加熱炉の加熱部を加熱する加熱手段と、
前記加熱部の温度を検出する加熱部温度センサと、
前記加熱部温度センサの検出した温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御回路と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【0018】
6.一定の張力が与えられた形状記憶合金からなるワイヤが通過するように配設され、通過する前記ワイヤを加熱して残留歪みを除去する加熱炉であって、
前記ワイヤの一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路が形成された加熱部と、
前記ワイヤが通過し前記第1通路の両端にそれぞれ連通する第2通路が形成されていて、前記加熱部の壁面から突出するように設けられた2つのガイド部と、
前記ガイド部を冷却する冷却手段と、
を備えたことを特徴とする加熱炉。
【0019】
7.前記冷却手段は、
前記ガイド部を形成する材料より熱伝導率の高い材料で形成され、前記ガイド部と前記ガイド部より熱容量の大きい固定部とを接続し、熱伝導により前記ガイド部を冷却するように構成されていることを特徴とする前記6に記載の加熱炉。
【0020】
8.前記冷却手段は、
前記ガイド部に送風する送風手段であることを特徴とする前記6に記載の加熱炉。
【0021】
9.前記冷却手段は、
前記ガイド部に取り付けられたラジエータであることを特徴とする前記6に記載の加熱炉。
【0022】
10.前記6乃至9の何れか1項に記載の加熱炉と、
前記加熱炉の加熱部を加熱する加熱手段と、
前記加熱部の温度を検出する加熱部温度センサと、
前記加熱部温度センサの検出した温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御回路と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【0023】
11.前記ガイド部の温度を検出するガイド部温度センサを有し、
前記制御回路は、
前記ガイド部温度センサの検出した温度に基づいて前記冷却手段を制御することを特徴とする前記10に記載の加熱装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加熱炉に、ワイヤの一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路が形成された加熱部と、ワイヤが通過する第2通路が形成され、第2通路が第1通路の両端とそれぞれ連通するように加熱部と一体に形成された2つのガイド部とを設け、2つのガイド部の開口の温度が所定の張力におけるマルテンサイト変態終了温度以下になるように構成している。したがって、SMAワイヤを連続して安定的に残留歪みを除去することができる加熱炉、加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1は本発明の加熱装置20を用いた製造システム1の一例を示すブロック図、図2は、SMAワイヤ2の温度−歪み特性の一例を示すグラフ、図3は本発明の第1の実施形態の加熱装置20の第1例を説明する断面図、である。
【0027】
最初に、図1を用いて製造システム1の全体を説明する。
【0028】
製造システム1は、ストック制御ユニット10と加熱装置20、締結ユニット30、搬送部31、制御部14などから構成される。
【0029】
リール11に巻き回されたSMAワイヤ2は、一端が搬送締結ユニット30の搬送パレット32に搭載された架設対象物70(図1には図示せず)に固定されており搬送パレット32の移動に伴って紙面右方向にリール11から引き出される。リール11と搬送パレット32の間、SMAワイヤ2はガイドローラ14a、13、14bに沿って方向を変えて加熱装置20に入り、加熱装置20を出てからガイドローラ14cで方向を変えて架設対象物70と連結している。SMAワイヤ2には例えばNiTi系の材料が用いられる。
【0030】
ストック制御ユニット10は、SMAワイヤ2が巻き回されたリール11、リール11の回転中心に回転軸が直結されたモータ15、リール11から引き出されたSMAワイヤ2が掛けられたガイドローラ14a、13、14b、ガイドローラ13を通るSMAワイヤ2の張力を検知する張力センサ12などから構成される。
【0031】
制御部14は、図示せぬCPU(中央処理装置)とRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROMに記憶されているプログラムをRAMに読み出し、当該プログラムに従って製造システム1の各部を集中制御する。
【0032】
制御部14は、張力センサ12が検知したガイドローラ13に掛けられたSMAワイヤ2の張力に応じてモータ15の回転を制御する。制御部14は、張力が目標値を上回るとその差分に応じてモータ15をSMAワイヤ2を送り出す方向に回転させ、目標値を下回ればその差分に応じてモータ15を逆方向に回転させ張力が目標値になるように制御する。
【0033】
図2は、SMAワイヤ2の温度−歪み特性の一例を示すグラフである。図2を用いて本実施形態で用いるSMAワイヤ2の特性について説明する。
【0034】
図2の横軸は温度、縦軸は歪みであり矢印で示す方向が収縮する方向である。
【0035】
図中、ASはオーステナイト変態開始温度、AFはオーステナイト変態終了温度、MSはマルテンサイト変態開始温度、MFはマルテンサイト変態終了温度、Trは室温、Tmは記憶温度である。SMAワイヤ2には一定の張力が与えられ、室温では所定量伸長しているものとする。SMAワイヤ2を加熱し、温度がオーステナイト変態開始温度以上になると図2に示すように急速に収縮する。オーステナイト変態終了温度以上になるとSMAワイヤ2はオーステナイト相に変態し、残留歪みは除去される。
【0036】
次に、SMAワイヤ2の温度をマルテンサイト変態開始温度以下にすると与えられている張力によって図2に示すように急速に伸長する。マルテンサイト変態終了温度以下になるとSMAワイヤ2はマルテンサイト相に変態する。
【0037】
SMAワイヤ2の線径は、細いほど熱容量が小さいため同じエネルギーでの温度上昇及び下降が早くなり、応答性が良くなる。また、SMAワイヤ2を架設した架設対象物70が高温環境下でも動作するように、SMAワイヤ2にはオーステナイト変態開始温度、マルテンサイト変態終了温度が例えば60℃以上の材料を用いる。このような材料ではオーステナイト変態終了温度は100℃〜200℃程度である。
【0038】
次に、図3〜図6を用いて本発明の第1実施形態の加熱装置20と加熱炉230を説明する。
【0039】
図3は第1実施形態の加熱装置20の第1例である。図3(a)は第1実施形態の第1例の加熱装置20の側面図、図3(b)は加熱装置20のA−A’面の断面図である。
【0040】
加熱装置20は、加熱炉230、ヒータ21、加熱部温度センサ22、制御回路23などから構成される。
【0041】
加熱炉230は、ヒータ121によって加熱される加熱部24と、加熱部24の壁面から突出した肉厚の薄い筒状のガイド部25a、25bからなる。加熱部24には、通過するSMAワイヤ2の一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路221が形成されている。ガイド部25a、25bは図3のように加熱部24の壁面から突出するように設けられ、第1通路221の両端と連通する第2通路220a、220bがそれぞれ形成されている。
【0042】
本例では、第1通路221と第2通路220a、220bの直径φは同じであり、同じ太さの孔がガイド部25aからガイド部25bまで貫通している。第1通路22と第2通路220a、220bは、図3のように直線状であり、第1通路22と第2通路220a、220bとからなる加熱炉230の内部空間は、開口29a、開口29bのみ大気側に開放されている。本実施形態ではSMAワイヤ2は、開口29aから開口29bに向けて第2通路220a、第1通路221、第2通路220bを通過するものとする。
【0043】
加熱部24は熱容量/表面積の比率が大きくなるように構成し、ガイド部25a、25bは熱容量/表面積の比率が小さくなるように構成することが好ましい。
【0044】
なお、以降説明する実施形態では、加熱炉230を第2通路220a、220bの長手方向が水平になるように設置するものとする。また、加熱装置20は、マルテンサイト変態終了温度以下の温度、例えば25℃に温度調整された雰囲気下に設置されるものとする。
【0045】
加熱部温度センサ22は、図3(b)に示すように加熱部24の中心に位置する加熱中心235付近で、ヒータ121と対向する位置の第1通路221の温度を検知するように配置されている。制御回路23は、加熱部温度センサ22が検知した温度の情報に基づいて、加熱中心235の温度がオーステナイト変態終了温度以上になるようヒータ22を制御する。ヒータ121は本発明の加熱手段である。
【0046】
図中のφは通路220の開口29a、開口29bの直径であり、x1は第2通路220aの入口側の開口29aからSMAワイヤ2がオーステナイト変態終了温度以上に加熱される加熱中心235までの距離である。x2は加熱中心235から第2通路220bの出口側の開口29bまでの距離である。開口29a、29bから第2通路220a、220bに空気が流れ込まないように、φはできるだけ小さくし、x1、x2はできるだけ大きくすることが望ましい。少なくともφ<x1、φ<x2にすると空気が流れ込まないようにすることが可能である。
【0047】
SMAワイヤ2は、第2通路220aから第1通路221に沿って進み、加熱中心235付近でオーステナイト変態終了温度以上に加熱される。すると、SMAワイヤ2のオーステナイト変態終了温度以上に加熱された部分はオーステナイト相に変態し、残留歪みが除去される。
【0048】
本発明の加熱炉230では、このように環境温度や風の影響を受けることなくSMAワイヤ2を確実にオーステナイト温度域まで加熱できる。
【0049】
一方、ヒータ121によって加熱された加熱部24は高温になり、加熱部24によって温められた空気は、加熱炉230の周囲に鉛直方向に上昇する上昇気流を発生させる。加熱部24の底面で温められた空気は、一部がガイド部25a、25bの底部に沿って移動し、開口29a、開口29bに近づこうとする。しかしながら、ガイド部25a、25bは少なくとも開口29a、開口29bの近傍が加熱部24より細くなっているため、温められた空気は開口29a、開口29bに到達する前にガイド部25a、25bの途中で上昇し、開口29a、開口29bの温度に影響を及ぼさない。また、加熱部24の側面で温められた空気はそのまま上昇するため開口29a、開口29bの温度に影響を及ぼさない。
【0050】
このようにガイド部25a、25bを設けることにより、加熱部24によって温められた空気による影響を受けることなく、開口29a、開口29bの温度をマルテンサイト変態終了温度以下にすることができる。したがって、SMAワイヤ2が開口29b付近で加熱部24によって温められた空気により収縮し、張力が急激に変動するようなことがない。
【0051】
加熱中心235付近でオーステナイト変態終了温度以上に加熱されたSMAワイヤ2の部分は、第2通路220bに沿って進み、開口29bから加熱炉23の外部に出る。開口29bの温度はマルテンサイト変態終了温度以下であり、加熱中心235でオーステナイト変態終了温度以上に加熱され残留歪みが除去されたSMAワイヤ2の部分は、開口29bを出るとマルテンサイト相に変態する。
【0052】
本発明の加熱装置20では、このようにSMAワイヤ2を加熱する領域が小さいので、低消費電力化や製造システムの小型化が可能であり架設対象物70に対する熱の影響もほとんど無い。また、SMAワイヤ2を架設対象物70に架設してから加熱する方法では温度分布にムラが発生し、十分加熱されず残留歪みが残る可能性があるが、本発明では確実に残留歪みを除去できる。
【0053】
図4は、第1実施形態の加熱装置20の第2例の断面図である。
【0054】
図3の第1例と本第2例との違いは液体204を用いてSMAワイヤ2を加熱する点である。液体204には、水、フロリナート等の各種液体を用いることができるが、沸騰すると蒸気が通路220を通って開口部から噴出し、SMAワイヤ2を収縮させるおそれがあるためオーステナイト変態終了温度で沸騰しないものが好ましい。
【0055】
第2例の加熱装置20は、加熱炉230、ヒータ21、加熱部温度センサ22、制御回路23、ベンチレータ202などから構成される。
【0056】
ベンチレータ202は、オーステナイト変態終了温度と沸点が近い液体(例えば水)を使用する場合に発生する蒸気による圧力上昇を抑えるために設けられている。このようにベンチレータ202を設けると、外気の流入を防ぎつつ気圧だけを下げることが可能である。
【0057】
本例の加熱部24には、ガイド部25a、25bの第2通路220a、220bより大きな第1通路221が設けられ液体204が充填されている。加熱部温度センサ22は、図4に示すように液体204の温度を検知するように配置されている。制御回路23は、加熱部温度センサ22が検知した温度の情報に基づいて、液体204の温度がオーステナイト変態終了温度以上になるようヒータ22を制御する。
【0058】
第2通路220a、220bは、図4のように直線状であり、第1通路221も含め加熱炉230の内部空間は、開口29a、29bのみが大気側に開放されている。プーリ205bの一部は液体204に浸漬している。
【0059】
第1例と同様に、第2通路220a、220bに空気が流れ込まないように開口29a、29bの直径は、開口29a、29bから加熱中心235までの距離より小さくなっているので空気が流れ込んで加熱中心235の温度が変動することがない。
【0060】
第2通路220aを通ったSMAワイヤ2は、プーリ205a、205b、205cに沿って進み、液体204に一部が浸漬しオーステナイト変態温度以上に加熱される。すると、SMAワイヤ2のオーステナイト変態終了温度以上に加熱された部分はオーステナイト相に変態し、残留歪みが除去される。
【0061】
前述したガイド部25a、25bの効果により開口29bの温度はマルテンサイト変態終了温度以下であり、残留歪みが除去されたSMAワイヤ2の部分は、開口29bを出るとマルテンサイト相に変態する。
【0062】
図5は、第1実施形態の加熱装置20の第3例の断面図である。
【0063】
図4の第2例と本第3例との違いはプーリ205bを加熱して、プーリ205bに接触するSMAワイヤ2を加熱する点である。このようにすると、空気や液体を介してSMAワイヤ2を加熱する場合と比べて加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0064】
加熱部温度センサ22は、プーリ205bの温度を検知するのではなく、図5のように第1通路221の温度を検知するように配置されている。制御回路23は、加熱部温度センサ22が検知した温度の情報と予め計測された温度補正情報に基づいて、プーリ205bの温度がオーステナイト変態終了温度以上になるようヒータ22を制御する。
【0065】
ガイド部25a、25bの構成と効果は第2例と同様であり説明を省略する。
【0066】
図6は、第1実施形態の加熱装置20の第4例である。図6は加熱装置20の断面図である。
【0067】
図5の第3例と本第4例との違いはSMAワイヤ2に通電して加熱する点である。このようにすると、第3例よりさらに加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
【0068】
プーリ205bは定電流回路270に接続され、プーリ205a、プーリ205cはそれぞれ接地されている。制御回路23が定電流回路270を制御し、定電流回路270がプーリ205bに定電流を供給すると、プーリ205bに接触するSMAワイヤ2の部分から、プーリ205a、プーリ205cにそれぞれ接触するSMAワイヤ2の部分に定電流が流れ、オーステナイト変態終了温度以上に発熱する。定電流回路270は本発明の加熱手段である。
【0069】
ガイド部25a、25bの構成と効果は第3例と同様であり説明を省略する。
【0070】
次に、本発明の第2実施形態の加熱炉230を説明する。第2実施形態の加熱炉230の特徴はガイド部25a、25bを冷却する冷却手段を設けた点であり、図7〜図10を用いて第2実施形態の加熱炉230を説明する。
【0071】
図7は、第2実施形態の加熱炉230の第1例を説明するための説明図である。図7(b)は加熱炉230の鉛直方向から見た平面図、図7(a)は加熱炉230の側面図である。図7(c)は図7(b)にC−C’で示す断面の断面図、図7(d)は図7(a)にD−D’で示す断面の断面図、図7(e)は図7(b)にE−E’で示す断面の断面図、図7(f)は図7(b)にF−F’で示す断面の断面図である。
【0072】
なお、これまでに説明した構成要素と同じ構成要素には同番号を付し説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、ヒータ21を加熱部24の内部に埋め込み、第1通路221に近づけ効率良く加熱できるようにしている。加熱部24と接する部分は第1実施形態と同様にガイド部25a、25bだけであり、熱はガイド部25a、25b以外には伝導しないように構成されている。
【0074】
一方、本実施形態では、ガイド部25a、25bに熱容量の大きい第2ガイド部26が取り付けられており放熱効果を高めている。熱は図7(d)に矢印で示すように、ガイド部25から第2ガイド部26に伝導し、さらに第2ガイド部26に取り付けられた脚部27に伝導する。脚部27は熱容量の大きい固定台240に固定されており、脚部27に伝導した熱は固定台240に放熱されるように構成されている。第2ガイド部26と脚部27は本発明の冷却手段である。
【0075】
加熱部24はヒータ21により加熱され高温になっているため、加熱部24の周辺の空気が温められ図7(c)に示す矢印のように鉛直方向に上昇気流を発生する。本実施形態では第2ガイド部26が加熱部24を囲むように構成されており、加熱部24の周囲はほとんど開放されているため、図7(c)に示す矢印のように温められた空気は加熱部24の側面に沿って鉛直方向に上昇し、開口29a、29bの温度に影響を及ぼさない。
【0076】
また、ガイド部25a、25bの断面積Sは、加熱部24の断面積Pより小さくなっているので、ガイド部25a、25bにより温められた空気も図7(e)に示す矢印のようにガイド部25a、25bの側面に沿って鉛直方向に上昇し、開口29a、29bの温度に影響を及ぼさない。
【0077】
なお、別法として加熱部24の中心部以外を熱伝導率の低い材料で構成すると、設計の自由度を増すことができる。
【0078】
図8は第2実施形態の加熱炉230の第2例である。
【0079】
図8(a)は加熱炉230の側面図、図8(b)は加熱炉230の正面図である。図8(c)は熱伝導の経路を説明するための加熱炉230の側面図、図8(d)は熱伝導の経路を説明するための加熱炉230の断面図である。
【0080】
図8のようにガイド部25a、25bには脚部27が取り付けられ、脚部27は固定台240に固定されている。ヒータ21で発生した熱は、図8(d)の矢印に示すように加熱部24からガイド部25a、25bと脚部27に伝導し、固定台240に放熱される。脚部27の熱伝導率がガイド部25より高くなるように構成すると、図8(d)の矢印のようにほとんどの熱が脚部27から放熱され、ガイド部25a、25bの開口29a、29b付近には伝導しない。
【0081】
図9は第2実施形態の加熱炉230の第3例である。
【0082】
図9(a)は加熱炉230の側面図、図9(b)は加熱炉230の正面の断面図である。
【0083】
図9のようにガイド部25a、25bにはラジエータ28が取り付けられ、ラジエータ28は固定台240に固定されている。ラジエータ28の内部は冷媒が通るように管状になっており、図9(a)の矢印I方向から冷媒をラジエータ28に注入すると矢印Oのように排出される。冷媒としては例えば水などを用いる。このように構成すると、放熱効率を最も高くすることができ、加熱装置20を小型化できる。
【0084】
図10は第2実施形態の加熱炉230の第4例である。
【0085】
図10(a)は加熱炉230の側面図、図10(b)は加熱炉230の正面の断面図である。
【0086】
図10のようにガイド部25a、25bにはエアノズル200と、エアノズル200と対向する位置に吸引ノズル201がそれぞれ取り付けられている。エアノズル200から空気をガイド部25a、25bに向けて噴出し、吸引ノズル201は空気を吸引して、ガイド部25a、25bの周りに空気の流れを作り空冷により放熱するように構成されている。なお、吸引ノズル201は埃が問題でなければ必ずしも設ける必要は無い。エアノズル200は本発明の送風手段である。
【0087】
なお、図7〜図10では図面を簡略にするため加熱部温度センサ22の図示を省略しているが、図3と同様にヒータ21と対向する位置に設ければ良い。
【0088】
次に、本発明の第3実施形態の加熱装置20を説明する。図11は第3実施形態の加熱装置20である。第3実施形態の加熱装置20と第2の実施形態の加熱装置20との違いはガイド部25aの温度を検知するガイド部温度センサ242を設け、開口29の温度を一定に制御する点である。
【0089】
このようにすると、エアノズル200と吸引ノズル201とを必要に応じて動作させれば良いので、エネルギー効率が良い。また、加熱装置20の設置されている環境温度の変化にも対応することができる。
【0090】
本実施形態は、第3実施形態の加熱炉230の第2例のように液体で冷却する場合にも適用可能である。
【0091】
なお、本実施形態では開口29a側にしかガイド部温度センサ242を設けていないが、加熱中心235に対してガイド部25a、ガイド部25bが対称でない場合は、開口29b側にもガイド部温度センサ242を設け、それぞれ独立して温度制御を行う必要がある。
【0092】
加熱中心235の温度制御は目標温度が決まっており、なおかつ周囲が熱容量が大きく構成されているため温度変化は少なく、制御は簡単で単純なON/OFF制御でも制御可能である。一方ガイド部25a、ガイド部25bは熱容量が小さく構成されているとはいえ放熱には時間遅れが生じる。このため温度制御の閾値をマルテンサイト変態終了温度未満に設定しておく必要がある。
【0093】
次に、図12を用いて本発明の加熱装置20を用いた製造システム1に用いられる搬送部31の一例を説明する。図12は搬送部31の平面図である。
【0094】
図12では2つの搬送パレット32a、32bが搬送部31に搭載されている例を図示している。搬送パレット32a、32bは同じ構成であり、各構成要素を必要に応じてa、bを付けて区別する。
【0095】
後に詳しく説明するように搬送パレット32の移動方向は矢印F1、F2、F3の順であり、搬送パレット32はF1方向に所定の位置まで挿入された後、搬送部材35によりF2方向に押されて紙面右側に移動し、F3方向に排出される。搬送部材35は矢印F2方向または逆方向に移動可能であり搬送機構36により駆動される。
【0096】
搬送パレット32の回転部33に設けられたワーク収容部34に架設対象物70(図12には図示せず)を搭載する。ウレタンローラ37は、制御部14の指令により回転する図示せぬ駆動源に連結され、図12に示すように回転部33bに当接して回転部33bを回転させる。後に説明するように、回転部33bの回転に伴って回転部33bに搭載された架設対象物70にSMAワイヤが架設される。
【0097】
図13は架設対象物70の一例の平面図、図14は架設対象物70の一例の側面図である。
【0098】
最初に、架設対象物70の一例として図13、図14に示すレンズユニットを説明する。
【0099】
図13、図14に示す架設対象物70は、レバー76、SMAワイヤ2、端子74、端子75からなるレンズ駆動機構により、レンズ駆動枠72を駆動するように構成されている。レンズ駆動枠72にはレンズ71が組み込まれている。なお、図14に示すカバー80、バイアスバネ79、平行板バネ81は図面を簡略にするため図13には図示していない。
【0100】
図14(a)はレンズ駆動枠72が初期位置にある状態の側面図、図14(b)はレンズ駆動枠72が矢印P2方向に繰り出された状態の側面図である。
【0101】
図13に示すようにレバー76のU字状に2つに分かれた先端部分がレンズ駆動枠72の突起部82と突起部83にそれぞれ当接している。図14に示すように、レバー76はベース部73に設けられたヒンジ部78を支点に図14(b)の矢印P1方向または逆方向に回動可能であり、図14(b)のように矢印P1方向にSMAワイヤ2が収縮するとレバー76の2つに分かれた先端部分は突起部82と突起部83とを矢印P2方向に押し上げるように構成されている。
【0102】
レンズ駆動枠72は、矢印P2方向または逆方向に直進するように平行板バネ81により図14の紙面上下方向を保持され、バイアスバネ79により矢印P2と逆方向に付勢されている。SMAワイヤ2は、図13のように中央部がレバー76のフック部77に引っ掛けられ、両端が端子74と端子75に固定されている。
【0103】
レンズ駆動枠72を駆動する手順を説明する。
【0104】
端子74、端子75の間に電圧を印加し、SMAワイヤ2に電流を流して加熱すると、SMAワイヤ2はオーステナイト変態して収縮し、レバー76はヒンジ部78を回転中心として矢印P1方向に回動する。すると、レバー76の2つに分かれた先端部分は突起部82と突起部83とを矢印P2方向に押し上げ、図14(b)のようにレンズ駆動枠72を矢印P2方向に移動させる。
【0105】
SMAワイヤ2に電流を流すのを止めると、SMAワイヤ2は自然冷却されマルテンサイト相に変態して矢印P1と逆方向に伸長し、レンズ駆動枠72は初期位置に戻る。
【0106】
図15は、製造システム1がSMAワイヤを架設対象物70に架設し固定する手順を説明するフローチャート、図16は、SMAワイヤを架設対象物に架設し固定する手順毎の搬送部31の動作を説明する説明図である。
【0107】
製造システム1によりSMAワイヤを架設対象物70に架設する手順の一例を図15のフローチャートの順に図16の説明図を参照しながら説明する。なお、図16の説明図は、回転部33に搭載された架設対象物70の動きを説明するため、図12の搬送部31の平面図を簡略化して説明に必要な部分だけ図示している。
【0108】
以下のフローチャートの説明では、図16(a)のように架設対象物70bが搬送パレット32bの回転部33bに搭載された状態から説明する。
【0109】
図16(a)の架設対象物70bには、リール11から引き出されたSMAワイヤ2の一端が端子74bに固定されている。SMAワイヤ2は、本発明の加熱装置20を通過し、SMAワイヤ2はオーステナイト変態終了温度以上に加熱された後、マルテンサイト相まで冷却されて搬送部31に供給されている。したがって搬送部31に供給されているSMAワイヤ2は、加熱装置20で行われる上記加熱冷却工程で残留歪みが除去されている。
【0110】
S1:搬送パレット32bを矢印F2方向に直進させるステップである。
【0111】
制御部14は、搬送機構36に指令し、搬送パレット32bを図16(a)の位置から図16(b)の位置に移動させる。本ステップでは、制御部14は張力の制御目標値を、架設対象物70に架設後のSMAワイヤ2の応力目標値b1未満のbxに設定し、張力センサ12で検知した張力値に応じてモータ15を制御している。
【0112】
本ステップでは搬送パレット32bを矢印F2方向に直進させ、移動距離に応じたSMAワイヤ2をリール11から引き出すので負荷変動が大きく、搬送パレット32bの移動速度を一定に制御することは難しい。そのため、SMAワイヤ2の張力も制御目標値から変動するが、SMAワイヤ2の張力が変動しても応力目標値b1を越えないようにSMAワイヤ2の制御目標値を応力目標値b1よりも低いbxに設定する。このようにSMAワイヤ2の張力の制御目標値をb1より低く設定することにより、何らかの誤差要因によってSMAワイヤ2の張力がb1を越え残留歪みが発生することを防止できる。なお、bxはb1に対して十分低い値が望ましい。
【0113】
S2:張力の制御目標値をb1に設定するステップである。
【0114】
制御部14は、SMAワイヤ2の張力を制御する制御目標値を、架設対象物70に架設後のSMAワイヤ2の応力目標値b1に設定し、張力センサ12で検知した張力値に応じてモータ15を制御する。ステップS3、S4の架設工程でSMAワイヤ2を架設するに先立って、制御部14は張力の制御目標値をb1に設定し、架設するSMAワイヤ2の張力が応力目標値のb1になるように制御する。
【0115】
S3:搬送パレット32bの回転部33bを回転させるステップである。
【0116】
制御部14は、ウレタンローラ37の駆動源に指令し、ウレタンローラ37を図7(c)のように反時計方向に回転させ架設工程を開始する。ウレタンローラ37は圧接している回転部33bを時計方向に回転させる。図中Oは回転部33bの回転中心であり、搭載された架設対象物70bのフック部77が回転軸上にある。回転部33bを時計方向に回転させることにより、SMAワイヤ2をレバー76bのフック部77と端子75bに架設する。制御部14は、端子75bに架設する位置まで所定の角度だけ回転部33bを回転させるとウレタンローラ37の駆動を停止する。
【0117】
本ステップでリール11から引き出されるSMAワイヤ2の長さは短く、SMAワイヤ2に外乱が加わっても制御部14がSMAワイヤ2の張力がb1を越えないように制御することは容易であり張力の変動幅は非常に少ない。
【0118】
S4:端子75をカシメるステップである。
【0119】
前ステップでSMAワイヤ2は端子75bに設けられた溝部に入っている。また、端子75bはポンチ45bの直下に位置している。制御部14は、モータ43bを回転させてポンチ45bを端子75bに所定の荷重がかかるまで下降させた後、モータ43bを逆回転させてポンチ45bを上昇させる。本ステップで端子75bにSMAワイヤ2が固定され、架設工程が完了する。
【0120】
S5:張力の制御目標値をbxに設定するステップである。
【0121】
制御部14は、張力の制御目標値をb1未満のbxに設定し、張力センサ12で検知した張力値に応じてモータ15を制御する。ステップS3、S4の架設工程が終了した後、制御部14は張力の制御目標値をb1未満のbxに設定し、SMAワイヤ2の張力がbxになるように制御する。以降の工程ではステップS1と同様に、SMAワイヤ2の張力の制御目標値をb1より低くするので、何らかの誤差要因によりSMAワイヤ2の張力がb1を越え残留歪みが発生することを防止できる。
【0122】
S6:搬送パレットを供給するステップである。
【0123】
新たな架設対象物70aが回転部33aに搭載された搬送パレット32aを、図示せぬ駆動手段により矢印F1方向に移動させ搬送部31上の図16(d)の位置に停止させる。
【0124】
S7:端子74をカシメるステップである。
【0125】
前ステップでSMAワイヤ2は端子74aの溝部に入っている。また、端子74aはポンチ45aの直下に位置している。制御部14は、モータ43bを回転させてポンチ45aを端子74aに所定の荷重がかかるまで下降させた後、モータ43aを逆回転させてポンチ45aを上昇させる。本ステップで新たな架設対象物70aの端子74aにSMAワイヤ2が固定される。
【0126】
S8:SMAワイヤ2を切断するステップである。
【0127】
SMAワイヤ2はカッタ46の刃先の直下に位置している。制御部14は、カッタ駆動機構47に指令し、カッタ46をSMAワイヤ2に向けて下降させSMAワイヤ2を切断する。
【0128】
S9:搬送パレットを排出するステップである。
【0129】
図7(e)に示すように、架設済みの架設対象物70bが回転部33bに搭載された搬送パレット32bを、図示せぬ駆動手段により矢印F3方向に移動させ搬送部31から排出する。搬送パレット32bを排出後は、新たな架設対象物70aが回転部33aに搭載された搬送パレット32aが残り、ステップS1に戻って同じ手順の架設工程を行う。
【0130】
フローチャートの説明は以上である。
【0131】
このように本例の製造システム1では、SMAワイヤ2を加熱装置20で加熱、冷却を行って残留歪みを除去し、SMAワイヤ2の張力を架設後のSMAワイヤ2の応力目標値b1に制御しながら架設対象物70に架設する。仮に、組立中にSMAワイヤ2に加わる応力に変動があった場合でも、最大でも応力目標値のb1以下なら応力−歪み特性は図11の斜線で示す範囲内で遷移し、残留歪みによる応力の誤差が生じることが無い。
【0132】
したがって、残留歪みのため駆動対象物の初期位置がずれたりすることが無い架設対象物70を短時間で連続生産することができる。
【0133】
以上このように本発明によれば、SMAワイヤを連続して安定的に残留歪みを除去することができる加熱炉、加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の加熱装置20を用いた製造システム1の一例を示すブロック図である。
【図2】SMAワイヤ2の温度−歪み特性の一例を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施形態の加熱装置20の第1例を説明する断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の加熱装置20の第2例を説明する断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の加熱装置20の第3例を説明する断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の加熱装置20の第4例を説明する断面図である。
【図7】第2実施形態の加熱炉230の第1例を説明するための説明図である。
【図8】第2実施形態の加熱炉230の第2例を説明するための説明図である。
【図9】第2実施形態の加熱炉230の第3例を説明するための説明図である。
【図10】第2実施形態の加熱炉230の第4例を説明するための説明図である。
【図11】第3実施形態の加熱装置20を説明するための説明図である。
【図12】本発明の加熱装置20を用いた製造システム1に用いられる搬送部31の一例を説明する説明図である。
【図13】設対象物70の一例の平面図である。
【図14】架設対象物70の一例の側面図である。
【図15】製造システム1がSMAワイヤを架設対象物70に架設し固定する手順を説明するフローチャートである。
【図16】SMAワイヤを架設対象物に架設し固定する手順毎の搬送部31の動作を説明する説明図である。
【図17】SMAの応力−歪み特性例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0135】
1 製造システム
2 SMAワイヤ
10 ストック制御ユニット
11 リール
12 張力センサ
13 ガイドローラ
14 ガイドローラ
15 モータ
17 制御部
20 加熱装置
21 ヒータ
22 加熱部温度センサ
23 制御回路
24 加熱部
25 ガイド部
29 開口
30 締結ユニット
31 搬送部
32 搬送パレット
33 回転部
34 ワーク収容部
43 モータ
44 荷重センサ
45 ポンチ
46 カッタ
70 架設対象物
72 レンズ駆動枠
74、75 端子
76 レバー
78 ヒンジ部
205 プーリ
220 第2通路
221 第1通路
230 加熱炉
235 加熱中心
240 固定台
270 定電流回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の張力が与えられた形状記憶合金からなるワイヤが通過するように配設され、該ワイヤのマルテンサイト変態終了温度以下の環境に設置し、通過する該ワイヤを加熱して残留歪みを除去する加熱炉であって、
前記ワイヤの一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路が形成された加熱部と、
前記ワイヤが通過し前記第1通路の両端にそれぞれ連通する第2通路が形成されていて、前記加熱部の壁面から突出するように設けられた2つのガイド部と、
を備え、
前記ガイド部は、
2つの前記ガイド部の開口の温度が前記張力におけるマルテンサイト変態終了温度以下になるように構成されていることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記第1通路と前記第2通路とからなる前記加熱炉の内部空間は、2つの前記開口のみ外部環境に開放されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記ガイド部は円筒状であることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱炉。
【請求項4】
前記ガイド部の前記ワイヤの通過方向と直交する断面の断面積は、
前記加熱部の前記ワイヤの通過方向と直交する断面の断面積より小さく、
前記ガイド部の前記ワイヤの通過方向が水平になるように設置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の加熱炉。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の加熱炉と、
前記加熱炉の加熱部を加熱する加熱手段と、
前記加熱部の温度を検出する加熱部温度センサと、
前記加熱部温度センサの検出した温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御回路と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
一定の張力が与えられた形状記憶合金からなるワイヤが通過するように配設され、通過する前記ワイヤを加熱して残留歪みを除去する加熱炉であって、
前記ワイヤの一部をオーステナイト変態終了温度以上に加熱する第1通路が形成された加熱部と、
前記ワイヤが通過し前記第1通路の両端にそれぞれ連通する第2通路が形成されていて、前記加熱部の壁面から突出するように設けられた2つのガイド部と、
前記ガイド部を冷却する冷却手段と、
を備えたことを特徴とする加熱炉。
【請求項7】
前記冷却手段は、
前記ガイド部を形成する材料より熱伝導率の高い材料で形成され、前記ガイド部と前記ガイド部より熱容量の大きい固定部とを接続し、熱伝導により前記ガイド部を冷却するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の加熱炉。
【請求項8】
前記冷却手段は、
前記ガイド部に送風する送風手段であることを特徴とする請求項6に記載の加熱炉。
【請求項9】
前記冷却手段は、
前記ガイド部に取り付けられたラジエータであることを特徴とする請求項6に記載の加熱炉。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れか1項に記載の加熱炉と、
前記加熱炉の加熱部を加熱する加熱手段と、
前記加熱部の温度を検出する加熱部温度センサと、
前記加熱部温度センサの検出した温度に基づいて前記加熱手段を制御する制御回路と、
を有することを特徴とする加熱装置。
【請求項11】
前記ガイド部の温度を検出するガイド部温度センサを有し、
前記制御回路は、
前記ガイド部温度センサの検出した温度に基づいて前記冷却手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−47800(P2010−47800A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212652(P2008−212652)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】