説明

加熱焼結性銀粒子の製造方法、ペースト状銀粒子組成物、固形状銀の製造方法、金属製部材の接合方法、プリント配線板の製造方法および電気回路接続用バンプの製造方法

【課題】加熱すると銀粒子が容易に焼結して強度と電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状銀となるペースト状銀粒子組成物、固形状銀の製造方法等を提供する。
【解決手段】表面を被覆している高級脂肪酸若しくはその誘導体を、より低級の高・中級脂肪酸若しくはその誘導体で置換する銀粒子の製法、該銀粒子と揮発性分散媒とからなるペースト状物であり、加熱することにより該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結して固形状銀になるペースト状銀粒子組成物。該ペースト状銀粒子組成物を加熱することによる固形状銀の製造方法、ペースト状銀粒子組成物を使用する金属製部材の接合方法、銀配線を有するプリント配線板の製造方法および電気回路接続用バンプの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高・中級脂肪酸または高・中級脂肪酸の誘導体により被覆された加熱焼結性銀粒子の製造方法;高・中級脂肪酸または高・中級脂肪酸の誘導体により被覆された加熱焼結性銀粒子と揮発性分散媒からなり、加熱により焼結して優れた強度と電気伝導性と熱伝導性を有する固形状銀となるペースト状銀粒子組成物;該ペースト状銀粒子組成物からの固形状銀の製造方法;該ペースト状銀粒子組成物を使用しての金属製部材の接合方法;該ペースト状銀粒子組成物を使用してのプリント配線板の製造方法;および該ペースト状銀粒子組成物を使用しての電気回路接続用バンプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀粉末を熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性ペーストは、加熱により硬化して導電性被膜が形成されるので、プリント回路基板上の導電性回路の形成、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成、電磁波シールド用導電性被膜の形成、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着、太陽電池の電極、特にアモルファスシリコン半導体を用いた高温処理のできない太陽電池の電極の形成、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
近年チップ部品の高性能化によりチップ部品からの発熱量が増え、電気伝導性はもとより、熱伝導性の向上が要求されるので、銀粒子の含有率を可能な限り増加して電気伝導性、熱伝導性を向上しようとすると、ペーストの粘度が上昇し、作業性が著しく低下するという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、本発明者らは、銀粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銀粒子組成物は加熱すると当該揮発性分散媒が揮発し銀粉末が焼結して、極めて高い導電性と熱伝導性を有する固形状銀となり、金属製部材の接合や、導電回路の形成に有用なことを見出して国際出願した(WO2006/126614、WO2007/034833)。
しかしながら、電子機器、電子部品、チップ部品等およびこれらを構成する材料の耐熱性の制約から、低温度、具体的には150℃以下の温度でペースト状組成物が焼結し、かつ、接着性を有することを求められる場合が増えてきている。
しかし、特に低温度での焼結における接着性の発現が十分ではなく、この原因として銀粒子の凝集防止の目的で用いられている銀粒子の被覆剤(例、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸)に問題があることに気がついた。
【0004】
ペースト状銀粒子組成物に使用される銀は微細粒子であるため、銀粒子同士の凝集を防ぐためその表面は有機物で被覆されている。特開昭54−121270では、銀粉末の凝集を防止するために、銀粉末生成過程で高級脂肪酸を共存させることにより高級脂肪酸で被覆された銀粉末を製造している。具体的には硝酸銀水溶液にホルマリン、水酸化ナトリウム等の還元剤とステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸を添加して攪拌した後、これらの高級脂肪酸で被覆された銀粉末を分離している。
【0005】
特開2001-49309では、酸化銀を還元して銀粒子を製造する際に高級脂肪酸塩(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム)を共存させることにより高級脂肪酸塩で被覆された銀粒子を製造している。特開2001-49309では、銀粒子をボールミルによりフレーク化する際に高級脂肪酸塩を添加しており、特開2003−55701では、銀粒子をボールミルによりフレーク化する際に界面活性剤および/または高級脂肪酸(例、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、オレイン酸)を添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/126614
【特許文献2】WO2007/034833
【特許文献3】特開昭54−121270号公報
【特許文献4】特開2001-49309号公報
【特許文献5】特開2003−55701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記問題のない銀ペースト、すなわち、比較的低温度で焼結し、かつ、接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となる、ペースト状銀粒子組成物を開発すべく鋭意研究した結果、高級脂肪酸若しくはその誘導体で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸若しくはその誘導体を、より低級の高・中級脂肪酸または高・中級脂肪酸の誘導体に置換することが有効なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の目的は、加熱すると銀粒子が比較的低温度で容易に焼結して接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となる加熱焼結性銀粒子の製造方法;加熱すると銀粒子が比較的低温度で容易に焼結して接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状銀となるペースト状銀粒子組成物;ペースト状銀粒子組成物から強度と電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状銀を製造する方法;該ペースト状銀粒子組成物を使用して金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合する方法;耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を有するプリント配線板を製造する方法;および、電気伝導性と熱伝導性が優れた電気回路接続用バンプを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、
「[1] 表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)により置換することを特徴とする、加熱焼結性銀粒子の製造方法。
[2] 高級脂肪酸(a1)の炭素原子数が17以上であり、高・中級脂肪酸(b1)の炭素原子数が16以下であることを特徴とする、[1]に記載の加熱焼結性銀粒子の製造方法。
[2-1] 高級脂肪酸(a1)の炭素原子数が17〜24であり、高・中級脂肪酸(b1)の炭素原子数8〜14であることを特徴とする、[2]に記載の加熱焼結性銀粒子の製造方法。」により達成され、さらには、
「[2-2] 銀粒子が還元法で製造されたものであることを特徴とする、[1]、[2]または[2-1]に記載の加熱焼結性銀粒子の製造方法。」により達成される。
【0010】
この目的は、
「[3] (A)表面が高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子と、(B)揮発性分散媒とからなり、加熱により該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結するペースト状銀粒子組成物において、銀粒子表面を被覆している高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)は、銀粒子表面をあらかじめ被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で置換したものであることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
[4] 高級脂肪酸(a1)の炭素原子数が17以上であり、高・中級脂肪酸(b1)の炭素原子数が16以下であることを特徴とする、[3]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[4-1] 高級脂肪酸(a1)の炭素原子数が17〜24であり、高・中級脂肪酸(b1)の炭素原子数が8〜14であることを特徴とする、[4]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[4-2] 銀粒子(A)の平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく20μm以下であり、その形状が球状、粒状またはフレーク状であることを特徴とする、[3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[4-3] 揮発性分散媒(B)の沸点が60℃以上300℃以下であることを特徴とする、[3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[5] 銀粒子(A)の平均粒径が0.1μmより大きく20μm以下であり、その形状が球状、粒状またはフレーク状であり、揮発性分散媒(B)の沸点が60℃以上300℃以下であることを特徴とする、[3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物。」により達成され、さらには、[4-2-1] 銀粒子が還元法で製造されたものであることを特徴とする、[3]、[4]または[4-2]に記載のペースト状銀粒子組成物。
[5-1] 銀粒子が還元法で製造されたものであることを特徴とする、[5]に記載のペースト状銀粒子組成物により達成される。
【0011】
この目的は、
「[6] [3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物を70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結することを特徴とする、固形状銀の製造方法。
[6-1] [5]に記載のペースト状銀粒子組成物を70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結することを特徴とする、固形状銀の製造方法。
[7] 製造された固形状銀の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする、[6]に記載の固形状銀の製造方法。
[7-1] 製造された固形状銀の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする、[6-1]に記載の固形状銀の製造方法。」により達成される。
【0012】
この目的は、
「[8] [3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物を複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材の接合方法。
[8-1] [5]に記載のペースト状銀粒子組成物を複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材の接合方法。
[9] 金属製部材が金属製基板または電子部品の金属部分であることを特徴とする、[8]に記載の金属製部材の接合方法。
[9-1] 金属製部材が金属製系基板または電子部品の金属部分であることを特徴とする[8-1]に記載の金属製部材の接合方法。」により達成される。
【0013】
この目的は、
「[10] [3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物を、接着剤が塗布された基板上に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、接着剤上に銀配線を形成することを特徴とする、プリント配線板の製造方法。
[10-1] [5]に記載のペースト状銀粒子組成物を、接着剤が塗布された基板上に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、接着剤上に銀配線を形成することを特徴とする、プリント配線板の製造方法。」
【0014】
この目的は、
「[11] [3]または[4]に記載のペースト状銀粒子組成物を、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に銀製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。
[11-1] [5]に記載のペースト状銀粒子組成物を、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に銀製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。」により達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の加熱焼結性銀粒子の製造方法によると、加熱により、特には70℃以上400℃以下での加熱により、銀粒子(A)同士が焼結して接着強さと硬さと電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状銀となる銀粒子を容易に製造することができる。
本発明のペースト状銀粒子組成物は、加熱により揮発性分散媒(B)が揮散し、特には70℃以上400℃以下での加熱により、銀粒子(A)同士が焼結して接着強さと硬さと電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状銀となる。
【0016】
本発明の固形状銀の製造方法によると、加熱により該揮発性分散媒(B)が揮散し、特には70℃以上400℃以下での加熱により、銀粒子(A)同士が焼結して接着強さと硬さと電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状銀を製造することができる。
本発明の金属製部材の接合方法によると、加熱により該揮発性分散媒(B)が揮散し銀粒子(A)同士が焼結して複数の金属製部材同士を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合させることができる。
【0017】
本発明のプリント配線板の製造方法によると、該揮発性分散媒(B)が揮散し銀粒子(A)同士が焼結して耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を有するプリント配線板を製造することができる。また、前記接合方法によりチップ等を当該プリント配線板に搭載することにより、回路板を製造することができる。
【0018】
本発明の電気回路接続用バンプの製造方法によると、半導体素子上または基板上に電気伝導性と熱伝導性が優れた銀製バンプを効率よく簡易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における、置換前と置換後の銀粒子についての大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)チャートである。
【図2】実施例3における、置換前と置換後の銀粒子についての大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)チャートである。
【図3】実施例における接着強さ測定用試験体Aの平面図である。銀基板1上にペースト状銀粒子組成物2をメタルマスクで印刷塗布し、銀チップ3を搭載後、加熱して銀基板1と銀チップ3を接合させて接着強さを測定するものである。
【図4】図3におけるX-X線方向の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の加熱焼結性銀粒子の製造方法は、表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)により置換することを特徴とする。置換の結果、表面が該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)により被覆された加熱焼結性銀粒子が製造される。
【0021】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、(A)表面が高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子と、(B)揮発性分散媒とからなり、加熱により該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結するペースト状銀粒子組成物において、銀粒子表面を被覆している高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)は、銀粒子表面を予め被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で置換したものであることを特徴とする。
【0022】
表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子における銀粒子の形状は、特に限定されず、球状,針状,角状,樹枝状,繊維状,フレーク状(片状),粒状,不規則形状,涙滴状が例示される(JIS Z2500:2000参照)。さらには楕円球状,海綿状,ぶどう状,紡錘状,略立方体状,六角板状,柱状,棒状,多孔状,塊状,けい角状,丸み状が例示される。製造容易性、調達容易性の点で、好ましくは球状、粒状およびフレーク状である。
【0023】
ここで言う球状とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000参照)。必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数あるいは真球度と言うことがある)が1.0〜1.2の範囲にあるものが好ましい。
粒状とは、不規則形状のものではなくほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000参照)。
フレーク状(片状)とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000参照)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも言われるものである。
【0024】
ここで言うフレーク状の銀粒子のアスペクト比は、[粒子の平均長径(μm)]/[粒子の平均短径(μm)]の値が1.0〜8.0の範囲にあるものが好ましい。アスペクト比の算出において平均長径および平均短径の値は、走査型電子顕微鏡により倍率1000〜3000倍程度で観察し、その観察像の中にある20個以上の銀粒子の長径および短径を測定して、その平均値として得ることができる。なお、アスペクト比は、[粒子の平均長径(μm)]/[粒子の平均厚さ(μm)]の値であっても良く、この場合は2.0〜200.0の範囲にあるものが好ましい。ここで、平均長径は先に記載の方法により得ることができ、また、平均厚さの値は、フレーク状の銀粒子をエポキシ樹脂等の硬化性樹脂で固めた試料を製造し、その試料の断面を走査型電子顕微鏡により倍率5000〜20000倍程度で観察して、その観察像の中にある20個以上の銀粒子の厚さを測定して、その平均値として得ることができる。いずれの形状であっても粒度分布は限定されない。
【0025】
フレーク状は、通常、球状または粒状の銀粒子をセラミック製のボールとともにボールミルのような回転式ドラム装置に投入して、ボールにより銀粒子を物理的に殴打することによりフレーク状に加工される。この際、原料となる球状または粒状の銀粒子の表面が高級脂肪酸または高級脂肪酸誘導体等により被覆されていない場合、銀粒子同士の凝集を低減、防止するため少量の高級脂肪酸若しくは高級脂肪酸誘導体が添加される。そのため、フレーク状銀粒子は、通常、高脂肪酸または高脂肪酸誘導体等により被覆されている。
【0026】
本発明における銀粒子の平均粒径は、加熱焼結性の点で好ましくは0.1μmより大きく20μm以下である。この平均粒径はレーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる一次粒子の平均粒径(メディアン径D50)である。平均粒径が20μmを越えると銀粒子同士の焼結性が低くなり、優れた強度と電気伝導性、熱伝導性、接着性を得にくい。そのため平均粒子径は20μm以下が好ましく、10μm以下であることがより好ましい。しかし、いわゆるナノサイズである0.1μm以下の場合、銀粒子の表面活性が強すぎてペースト状銀粒子組成物の保存安定性が低下する恐れがあるため、0.1μmより大である。このような観点から、銀粒子の平均粒径は、好ましくは0.2〜10μmである。なお、メディアン径D50は、レーザー回折法50%粒径と称されたり(特開2003−55701参照)、体積累積粒径D50と称されてもいる(特開2007−84860参照)。
【0027】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、金属粒子にレーザービームを照射し、その金属粒子の大きさに応じて様々な方向へ発せられる回折光や散乱光のレーザー光の強度を測定することにより一次粒子の粒径を求めるという汎用の測定方法である。数多くの測定装置が市販されており(例えば、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD、日機装株式会社製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック)、これらを用いて容易に平均粒径(メディアン径D50)を測定することができる。なお金属粒子の凝集が強い場合には、ホモジナイザーにより一次粒子の状態に分散してから測定することが好ましい。
【0028】
銀粒子の製法は、特に限定されず、還元法・粉砕法・電解法・アトマイズ法・熱処理法・それらの組合せによる製法が例示されるが、高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)による置換効果の点で、特に還元法であることが好ましい。
【0029】
銀粒子の表面を予め被覆している高級脂肪酸(a1)は、炭素原子数15以上の脂肪酸であり、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシステアリン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の直鎖飽和脂肪酸;2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、イソステアリン酸等の分枝飽和脂肪酸;パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の不飽和脂肪酸が例示される。
【0030】
銀粒子の表面を予め被覆している高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)中の高級脂肪酸(a1)は、炭素原子数が17以上の高級脂肪酸が多く、炭素原子数が17〜24の高級脂肪酸がより多い。そのような高級脂肪酸としてマルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が例示される。
【0031】
高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)として、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミン塩、高級脂肪酸アミドが例示される。
高級脂肪酸金属塩の金属塩として、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩)、アルミニウム塩、遷移金属塩が例示される。高級脂肪酸エステルのエステルとして、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)、フェニルエステルが例示される。高級脂肪酸アミン塩のアミンとして、1級アルキルアミン(例えば、エチルアミン、プロピルアミン)、1級フェニルアミン、2級アルキルアミン(例えば、ジエチルアミン)、3級アルキルアミンが例示される。高級脂肪酸アミドのアミドとして、N-アルキルアミド(例えば、N-エチルアミド)、N,N’-ジアルキルアミド(例えば、N,N’-ジエチルアミド)、N-フェニルアミドが例示される。高級脂肪酸(a1)のアルカリ金属塩、高級脂肪酸(a1)のアミン塩は通常親水性である。
なお、銀表面が高級脂肪酸(a1)により被覆された銀粒子は通常撥水性を示す。
【0032】
銀粒子表面を予め被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を置換するために使用する、高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)は、炭素原子数が16以下の高・中級脂肪酸が好ましく、炭素原子数が8〜14の中級脂肪酸がより好ましい。そのような高・中級脂肪酸として、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸が例示される。本発明では、「より低級の」は、脂肪酸の炭素原子数が一つでも小さいことを意味し、置換効果の点で炭素原子数が2以上小さいことが好ましく、3以上小さいことがさらに好ましい。
なお、銀表面が高・中級脂肪酸(b1)により被覆された銀粒子は通常撥水性を示す。
【0033】
より低級の高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)として、高・中級脂肪酸金属塩、高・中級脂肪酸エステル、高・中級脂肪酸アミド、高・中級脂肪酸アミン塩が例示される。
高・中級脂肪酸金属塩の金属塩として、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩)、アルミニウム塩、遷移金属塩が例示される。高・中級脂肪酸エステルのエステルとして、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)、フェニルエステルが例示される。高・中級脂肪酸アミドのアミドとして、N-アルキルアミド(例えば、N-エチルアミド)、N,N’-ジアルキルアミド(例えば、N,N’-ジエチルアミド)、N-フェニルアミドが例示される。なお、高・中級脂肪酸のアルカリ金属塩、高・中級脂肪酸のアミン塩は親水性である。
【0034】
本発明の加熱焼結性銀粒子は、表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)により置換することにより製造される。置換能力の点で、より低級の高・中級脂肪酸(b1)が好ましく、ついで、より低級の高・中級脂肪酸(b1)の撥水性誘導体が好ましい。
【0035】
置換方法は、特に限定されず、例えば、表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子を、該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)の液中に浸漬するという方法がある。この際、液を攪拌機、振とう機、超音波振動機等により攪拌あるいは振とうしてもよい。
【0036】
より低級の高・中脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)が常温で固体の場合は、アセトン、トルエン等の有機溶剤に溶解して溶液としてから、表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子と混合することが好ましい。より低級の高・中脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)と有機溶剤の混合比率は、前者を溶解できるような比率であればよく、特に限定されない。
【0037】
上記浸漬時の温度は、特に限定されないが、銀粒子同士の凝集を抑制するため、常温以下であることが好ましい。浸漬時間は、銀粒子表面を被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を除去するのに十分な時間であればよく、特に限定されない。
ついで、上記浸漬液または混合物を濾過するなどにより、銀粒子を分離する。
【0038】
このようにして分離した銀粒子は、その表面が該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)により被覆されているが、過剰の、より低級の高・中級脂肪酸(b1) または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)が付着しているので、こうした過剰物を除去することが好ましい。また、予め銀粒子表面を被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)も付着していることがあるので、これらも除去することが好ましい。
【0039】
そのためには、分離した銀粒子を揮発性有機溶剤により洗浄することが好ましく、そのための有機溶剤として、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、ジメチルスルフォキシド、テトラヒドロフランが例示される。これらの有機溶剤は沸点が低く、揮発性が高いため、常温における風乾や減圧乾燥により、容易に除去できるからである。また、銀粒子が還元法で製造されたものである場合は、銀粒子に付着していた有機系還元剤もあわせて除去されるという利点がある。
【0040】
かくして得られた銀粒子表面を被覆している、より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)の量は、銀粒子の焼結性と、焼結してできた固形状銀の強度と電気伝導性と熱伝導性の点で、0.01%以上であり、2.0重量%以下であることが好ましく、特には0.05%以上であり、1.0重量%以下であることが好ましい。
【0041】
銀粒子を被覆している高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)の量は通常の方法で測定できる。銀粒子を空気気流中で500℃に加熱して、銀粒子に付着している高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)を酸化分解、揮発、あるいは燃焼により除去して重量減少を測定するという熱重量分析が例示される。別の方法として、銀粒子を酸素気流中で加熱して銀粒子に付着している高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)中の炭素を炭酸ガスに変えて赤外線吸収スペクトル法により定量分析する方法が例示される。これらの場合、銀粒子表面や銀粒子中の有機系還元剤との合計量が定量されるが、有機還元剤の残留量はごく微量なので、無視することができる。
【0042】
表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子、該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子は、銀粒子表面が酸化されていてもよい。しかし、酸化銀の割合が高いと加熱時に多量の酸素が発生し、焼結してできた固形状銀中にボイドが発生する原因となる恐れがあるため、表面が酸化銀である割合は銀粒子の全表面の50%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、更には2%以下が好ましい。特にメモリやCPUのような大型チップ接続のため比較的大きな接合面積で半密閉系となるダイボンド剤のような使用例では、酸化銀の存在はボイド発生により接着強さの低下の原因となるので、10%以下が好ましい。
【0043】
なお、より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子は、加熱焼結性が高いため、ペースト状銀組成物とするまでは、できるだけ熱を加えないほうが良い。
【0044】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子(A)と揮発性分散媒(B)との混合物であり、粉末状の銀粒子が揮発性分散媒(B)の作用によりペースト化している。ペースト化することによりシリンダーやノズルから細い線状に吐出でき、またメタルマスクによる塗布が容易であり、電極の形状に適用しやすくなる。なお、ペースト状は、クリーム状やスラリー状を含むものである。
【0045】
非揮発性分散媒ではなく、揮発性分散媒を使用するのは、加熱により銀粒子が焼結する際に分散媒が前もって揮散すると銀粒子が焼結しやすく、その結果固形状銀の強度と電気伝導性や熱伝導性が大きくなりやすいからである。揮発性分散媒は、銀粒子表面を変質させず、その沸点は60℃以上であり、300℃以下であることが好ましい。沸点が60℃未満であるとペースト状銀粒子組成物を調製する作業中に溶媒が揮散しやすく、沸点が300℃より大であると、銀粒子が焼結後も揮発性分散媒が残留しかねないからである。
【0046】
そのような揮発性分散媒(B)として、水;エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等の揮発性多価アルコール;低級n−パラフィン、低級イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の揮発性芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2,6−ジメチル−4−ヘプタノン)等の揮発性ケトン;酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチルのような揮発性酢酸エステル;酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチルのような揮発性脂肪族カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、プロピレンブリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、ブチルカルビトール等の揮発性エーテル;低分子量の揮発性シリコーンオイルおよび揮発性有機変成シリコーンオイルが例示される。
【0047】
なお、揮発性分散媒(B)は2種類以上を併用しても良い。揮発性分散媒(B)として水を用いる場合に、高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体で被覆された銀粒子(A)が撥水性を示す場合は、他の水溶性の揮発性分散媒(B)と併用することが好ましい。
【0048】
揮発性分散媒(B)の配合量は、高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子(A)をペースト状にするのに十分な量でよく、目安として加熱焼結性銀粒子(A)100重量部あたり、5〜20重量部であり、好ましくは6〜14重量部である。本発明のペースト状銀粒子組成物は、本発明の目的に反しない限り加熱焼結性銀粒子(A)以外の還元銀、アトマイズ銀、銀コロイド、銀合金、表面銀コート粉、その他の金属系や非金属系の粉体、金属化合物や金属錯体、チクソ剤、安定剤、着色剤等の添加物を含有しても良い。
【0049】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、加熱することにより揮発性分散媒(B)が揮散し、加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結することにより強度と電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状の銀となり、かつ、接着性を発現する。この際、揮発性分散媒(B)が揮散し、ついで加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結してもよく、揮発性分散媒の揮散と共に銀粒子が焼結してもよい。銀は本来大きな強度と極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有するため、本発明の該銀粒子同士の焼結物も大きな強度ときわめて高い電気伝導性と熱伝導性を有する。この際の加熱温度は、揮発性分散媒が揮散し、銀粒子が焼結できる温度であればよく、通常70℃以上である。しかし、400℃を越えると揮発性分散媒(B)が突沸的に蒸発して固形状銀の形状に悪影響が出る恐れがあるため、400℃以下であることが必要であり、好ましくは220℃以下であり、より好ましく180℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下である。
【0050】
高・中級脂肪酸(b1)または高・中脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子(A)が焼結してできた固形状銀の電気伝導性は、体積抵抗率で1×10-4Ω・cm以下であることが好ましく、1×10-5Ω・cm以下であることがより好ましい。その熱伝導性は、10W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましい。加熱焼結性銀粒子(A)が焼結してできた固形状銀の形状は特に限定されず、シート状、フィルム状、テープ状、線状、円盤状、ブロック状、スポット状、不定形状が例示される。
【0051】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、加熱すると揮発性分散媒(B)が揮散し加熱焼結性銀粒子(A)が焼結することにより、強度と電気伝導性、熱伝導性が優れ、接触していた金属製部材、例えば金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケルメッキ基板、スズメッキ金属基板等の金属系基板ないし金属製基板、電気絶縁性基板上の電極等金属部分への接着性を有する固形状銀となるので、金属系基板や金属部分を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等の接合に有用である。そのような接合として、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合;ダイオード、トランジスタ、メモリ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合;高発熱の半導体チップと冷却板との接合が例示される。
【0052】
本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱して生成した銀粒子(A)焼結物の洗浄は不要であるが、水や有機溶媒で洗浄してもよい。特に揮発性分散媒(B)が親水性溶剤である場合は水で洗浄することができ、アルコール等の有機溶媒による洗浄の場合のようなVOC発生の問題がない。本発明のペースト状銀粒子組成物の各成分は不純物が少ないため洗浄が容易である。
【0053】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、加熱すると揮発性分散媒(B)が揮散し、加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結することにより大きな強度と極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有する固形状の銀となる。したがって、硬化性接着剤、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、ポリイミド樹脂系接着剤を塗布したプリント配線用基板、あるいはプライマー組成物を塗布し、ついで硬化性接着剤を塗布したプリント配線用基板に、該接着剤が硬化する前に、該ペースト状銀粒子組成物を塗布して加熱することにより、耐摩耗性と基板への接着性に優れた銀配線を形成することができる。本発明のペースト状銀粒子組成物を適用する方法は特に制限されず、ディスペンシング、印刷(例えばスクリーン印刷)、メタルマスク塗布、噴霧、はけ塗り等がある。また、チップ等を該プリント配線板に搭載することにより、回路板を製造することができる。
【0054】
加熱温度は、揮発性分散媒(B)が揮散し、銀粒子が焼結できる温度であればよく、通常70℃以上である。しかし、400℃を越えると揮発性分散媒(B)が突沸的に蒸発して固形状銀の形状に悪影響が出る恐れがあるため、400℃以下であることが必要であり、好ましくは220℃以下であり、より好ましく180℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下である。
【0055】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、加熱すると揮発性分散媒(B)が揮散し、銀粒子(A)同士が焼結することにより大きな強度と極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有する固形状の銀となる。したがって、該ペースト状銀粒子組成物を、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用端部にドット状に塗布して加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ当該銀粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に銀製バンプを製造することができる。
【0056】
ここで、半導体素子として、ダイオード、トランジスタ、メモリ、CPUが例示される。
該ペースト状銀粒子組成物をドット状に塗布する方法として、滴下、ディスペンシング、印刷(例えばスクリーン印刷)、メタルマスク塗布が例示される。
加熱温度は、揮発性分散媒(B)が揮散し、銀粒子が焼結できる温度であればよく、通常70℃以上である。しかし、400℃を越えると揮発性分散媒(B)が突沸的に蒸発して固形状銀の形状に悪影響が出る恐れがあるため、400℃以下であることが必要であり、好ましくは220℃以下であり、より好ましく180℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下である。
【0057】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、揮発性分散媒(B)を含有するので、密閉容器に保存することが好ましい。長期間保存後に使用するときは、容器を振とうしてから、あるいは容器内を攪拌してから使用することが好ましい。保存安定性を向上する目的で冷蔵保管をしても良く、保管温度として10℃以下が例示されるが、特に密閉容器内では揮発性分散媒(B)が凝固しない温度であることが好ましい。密閉容器にシリンジを使用した場合は、ディスペンサーを用いて微少量の吐出ができる。
【実施例】
【0058】
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、部とあるのは重量部を意味し、%とあるのは重量%を意味する。フレーク状の銀粒子のアスペクト比、ペースト状銀粒子組成物を加熱して焼結することにより生成した固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率および熱伝導率は、下記の方法により25℃で測定した。
【0059】
[フレーク状の銀粒子のアスペクト比]
フレーク状の銀粒子を走査型電子顕微鏡により倍率2000倍で観察し、その観察像の中にある20個の銀粒子の長径および短径を測定して、各々の平均値を平均長径、平均短径とし、[粒子の平均長径(μm)]/[粒子の平均短径(μm)]によりアスペクト比Aを算出した。
フレーク状の銀粒子を走査型電子顕微鏡により倍率10000倍で観察し、その観察像の中にある20個の銀粒子の長径および厚さを測定して、各々の平均値を平均長径、平均厚さとし、[粒子の平均長径(μm)]/[粒子の平均厚さ(μm)]によりアスペクト比Bを算出した。
【0060】
[置換前と置換後の銀粒子についての大気中における示差熱分析]
示差熱熱重量同時測定装置(島津製作所株式会社製DTG−60AH型)を用い、大気中で置換前と置換後の銀粒子を昇温速度5℃/分にて23℃から400℃まで昇温してDTA曲線をとった。
【0061】
幅50mm×長さ50mm×厚さ1.0mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する500μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、150℃の強制循環式オーブン内で2時間加熱してフィルム状の銀とした。フィルム状の銀についてJIS Z 2244に準じた方法により硬さを測定した。
【0062】
[接着強さ]
幅25mm×長さ70mm×厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.99%)1上に、10mmの間隔をおいて4つの幅2.5mm×長さ2.5mmの開口部を有する100μm厚のメタルマスクを用いてペースト状銀粒子組成物2を塗布し、その上に幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ0.5mmの銀チップ(銀純度99.99%)3を搭載後、150℃の強制循環式オーブン内で2時間加熱して接合した。かくして得られた接着強さ測定用試験体の幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ0.5mmの銀チップ3の側面を接着強さ試験機により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ{単位;N(kgf)}とした。なお、接着強さ測定の個数は4個であり、4回の平均値を接着強さとした。
【0063】
[体積抵抗率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ1.0mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する500μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、150℃の強制循環式オーブン内で2時間加熱してフィルム状の銀とした。フィルム状の銀についてJIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
【0064】
[熱伝導率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ1.0mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、150℃の強制循環式オーブン内で2時間加熱して板状の銀とした。板状の銀について熱定数測定装置を用いたレーザーフラッシュ法により熱伝導率(単位;W/mK)を測定した。
【0065】
[参考例]
表面を被覆している高級脂肪酸(a1)を、より低級の高・中級脂肪酸(b1)で置換した銀粒子(A)を製造する方法は、次のとおりである。
ビーカに、高級脂肪酸(a1)で被覆された銀粒子100部と、より低級の高・中級脂肪酸(b1){25℃で液体の場合はそのまま用いた。25℃で固体の場合はアセトン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)により30%の溶液にして用いた}100部を投入し、マグネチックスターラーを用いて25℃で5時間攪拌した。10分間静置して上澄み液(高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)、またはそれらのアセトン溶液)をできるだけ取り除いてから、アセトン(和光純薬工業株式会社製、試薬1級)100部を添加して、マグネチックスターラーを用いて同様に25℃で10分間攪拌した。同様に静置して上澄み液をできるだけ取り除いてから、再度アセトンを添加して同様に銀粒子を洗浄した。これを5回繰返してから銀粒子を取り出し、25℃で16時間風乾した。
【0066】
[実施例1]
参考例の製造方法において、市販の還元法で製造され表面がステアリン酸で被覆されたフレーク状の銀粒子(レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が1.2μmであり、アスペクト比Aが1.6であり、アスペクト比Bが2.4であり、有機物量(注:ステアリン酸と微量の有機系還元剤の合計量である)が0.3重量%である)と、より低級の高・中級脂肪酸(b1)としてのオクタン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)を用いて、銀粒子の表面を被覆しているステアリン酸(炭素原子数18、分子量284)をオクタン酸(炭素原子数8、分子量144)に置換した銀粒子(A)を得た。
【0067】
ステアリン酸がオクタン酸に置換されたことを確認するため、置換前と置換後の銀粒子について大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)を行ない図1に示した。図1によると、置換前のステアリン酸の酸化分解ピーク温度は210℃である。置換後の酸化分解ピーク温度は199℃であり、かつ、ステアリン酸の酸化分解ピーク温度の210℃には発熱ピークがまったく検出されていない。したがって、ステアリン酸はオクタン酸に置換されたことがわかった。
【0068】
この銀粒子(A)50部に1−ヘキサノール(和光純薬工業株式会社、試薬特級)3.5部を添加し、へらを用いて均一になるまで混合することによりペースト状銀粒子組成物を調製した。このペースト状銀粒子組成物は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。硬さ測定に使用したフィルム状銀は、固体状であるに十分な硬さを有していた。以上の結果より、このペースト状銀粒子組成物が、強固な固形状銀を製造するのに有用なこと、金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合するのに有用なこと、耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を形成するのに有用なこと、および半導体素子上または基板上に銀バンプを形成するのに有用なことがわかった。
【0069】
[実施例2]
実施例1において、1−ヘキサノールの代わりに蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィン(新日本石油化学株式会社製、商品名アイソゾール300)を用いた以外は実施例1と同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。このペースト状銀粒子組成物は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。硬さ測定に使用したフィルム状銀は、固体状であるに十分な硬さを有していた。以上の結果より、このペースト状銀粒子組成物が、強固な固形状銀を製造するのに有用なこと、金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合するのに有用なこと、耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を形成するのに有用なこと、および半導体素子上または基板上に銀バンプを形成するのに有用なことがわかった。
【0070】
[実施例3]
参考例の製造方法において、市販の還元法で製造された粒状の銀粒子(被覆剤なし)をボールミルに投入し、オレイン酸を添加してフレーク化することにより製造された、表面がオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子{レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであり、アスペクト比Aが3.3であり、アスペクト比Bが15.3であり、有機物量(注:オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量である)が0.3重量%である}と、ラウリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)の30%アセトン溶液を用いて、銀粒子の表面を被覆しているオレイン酸(炭素原子数18、分子量282)をラウリン酸(炭素原子数12、分子量200)に置換したフレーク状銀粒子(A)を得た。
【0071】
オレイン酸がラウリン酸に置換されたことを確認するため、置換前と置換後の銀粒子について大気中における示差熱分析(昇温速度5℃/分)を行ない図2に示した。図2によると、置換前のオレイン酸の酸化分解ピーク温度は227℃である。置換後の酸化分解ピーク温度は212℃であり、かつ、オレイン酸の酸化分解ピーク温度の227℃付近には発熱ピークがまったく検出されていない。したがって、オレイン酸はラウリン酸に置換されたことがわかった。
【0072】
この銀粒子(A)50部に、蒸留範囲が106℃から202℃である低級イソパラフィン(新日本石油化学株式会社製、商品名アイソゾール300)4部を添加し、へらを用いて均一に混合なるまで混合することによりペースト状銀粒子組成物を調製した。このペースト状銀粒子組成物はメタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。硬さ測定に使用したフィルム状銀は、固体状であるに十分な硬さを有していた。以上の結果より、このペースト状銀粒子組成物が、強固な固形状銀を製造するのに有用なこと、金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合するのに有用なこと、耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を形成するのに有用なこと、および半導体素子上または基板上に銀バンプを形成するのに有用なことがわかった。
【0073】
[比較例1]
実施例2において、銀粒子の表面を被覆しているステアリン酸(炭素原子数18、分子量284)をオクタン酸(炭素原子数8、分子量144)に置換した銀粒子(A)の代わりに、市販の還元法で製造され表面がステアリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子(レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が1.2μmであり、アスペクト比Aが1.6であり、アスペクト比Bが2.4であり有機物量{注:ステアリン酸と微量の有機系還元剤の合計量である)が0.3重量%である}で被覆された銀粒子をそのまま用いた以外は、実施例2と同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。このペースト状銀粒子組成物は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。特に接着強さが不十分であった。
【0074】
[比較例2]
実施例3において、銀粒子の表面を被覆しているオレイン酸(炭素原子数18、分子量282)をラウリン酸(炭素原子数12、分子量200)に置換したフレーク状銀粒子(A)の代わりに、市販の還元法で製造された粒状の銀粒子をボールミルに投入し、オレイン酸を添加してフレーク化することにより製造された、表面がオレイン酸で被覆されたフレーク状銀粒子{レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が3.0μmであり、アスペクト比Aが3.3であり、アスペクト比Bが15.3であり、有機物量(注:オレイン酸と微量の有機系還元剤の合計量)が0.3重量%である}をそのまま用いた以外は、実施例3と同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。
このペースト状銀粒子組成物は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。特に接着強さが不十分であった。
【0075】
[比較例3]
実施例3において、銀粒子の表面を被覆しているオレイン酸(炭素原子数18、分子量282)をラウリン酸(炭素原子数12、分子量200)に置換したフレーク状銀粒子(A)の代わりに、市販の還元法で製造された被覆剤なしの粒状の銀粒子をボールミルに投入し、ラウリン酸を添加してフレーク化することにより製造された、表面がラウリン酸で被覆されたフレーク状銀粒子{レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径が3.0μmであり、アスペクト比Aが2.9であり、アスペクト比Bが9.0であり、有機物量(注:ラウリン酸と微量の有機系還元剤の合計量)が0.3重量%である}をそのまま用いた以外は、実施例3と同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。このペースト状銀粒子組成物は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。このペースト状銀粒子組成物について加熱焼結物である固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率、熱伝導率を測定し、結果を表1にまとめて示した。特に接着強さが不十分であった。
【0076】
[実施例4]
厚さが1.2mmのFRP板上に、エポキシ樹脂接着剤(住友スリーエム株式会社製、商品名SW2214)を、幅1mm×長さ50mmの開口部を有する50μm厚のメタルマスクを用いて塗布し、塗布したエポキシ樹脂接着剤に重ねて実施例2のペースト状銀粒子組成物を同様に印刷塗布した。このERP板を150℃の強制循環式オーブン内で2時間加熱してエポキシ樹脂接着剤を硬化させ、銀粒子を焼結した。
このプリント配線板上の幅1mm、長さ50mm、厚さ50μmの銀製配線回路について長さ方向の体積抵抗率を測定したところ、9×10-6Ω・cmであり、実用上十分な導電性を有していた。
【0077】
[比較例4]
実施例4において、実施例2のペースト状銀粒子組成物を用いない他は同様にして、幅1mm、長さ50mm、厚さ50μmのエポキシ樹脂製配線回路を作製した。実施例4と同様に、幅1mm、長さ50mm、厚さ50μmのエポキシ樹脂製配線回路について長さ方向の体積抵抗率を測定したところ1×10+1Ω・cm以上であり、導電性は著しく低かった。
【0078】
[実施例5]
厚さが1.2mmのFRP板上に形成された銅製配線回路(幅1mm、長さ50mm、厚さ30μm)の表面を金メッキした電気回路の両端部に、縦1mm、横1mm、厚さ100μmの開口部を有するメタルマスクを用いて実施例2のペースト状銀粒子組成物をドット状に印刷塗布した。このFRP板を150℃の強制循環式オーブン内で2時間加熱して銀粒子を焼結することにより、電気回路接続用バンプを製造した。
この電気回路の両端部に形成した電気回路接続用バンプ間の電気抵抗を測定したところ、0.05Ω未満であり、実用上十分な導電性を有していた。
【0079】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の製造方法で製造される加熱焼結性銀粒子は、ペースト状銀粒子組成物の主原料として有用である。
本発明のペースト状銀粒子組成物、固形状銀の製造方法および金属製部材の接合方法は、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成、電磁波シールド用導電性被膜の形成、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接合、太陽電池の電極の形成、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成、プリント回路基板上の導電性回路の形成等に有用である。
本発明の配線板の製造方法は、銀配線を有するプリント配線板を効率よく製造するのに有用である。
本発明の電気回路接続用バンプの製造方法は、半導体素子または基板上に銀製バンプを効率よく製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0081】
A 接着強さ測定用試験体
1 銀基板
2 ペースト状銀粒子組成物(加熱して焼結後は固体状銀)
3 銀チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)で被覆された銀粒子の該高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)よりは低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)により置換することを特徴とする、加熱焼結性銀粒子の製造方法。
【請求項2】
高級脂肪酸(a1)の炭素原子数が17以上であり、高・中級脂肪酸(b1)の炭素原子数が16以下であることを特徴とする、請求項1記載の加熱焼結性銀粒子の製造方法。
【請求項3】
(A)表面が高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で被覆された銀粒子と、(B)揮発性分散媒とからなり、加熱により該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結するペースト状銀粒子組成物において、銀粒子表面を被覆している高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)は、銀粒子表面をあらかじめ被覆していた高級脂肪酸(a1)または高級脂肪酸(a1)の誘導体(a2)を、該高級脂肪酸(a1)より低級の高・中級脂肪酸(b1)または高・中級脂肪酸(b1)の誘導体(b2)で置換したものであることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
【請求項4】
高級脂肪酸(a1)の炭素原子数が17以上であり、高・中級脂肪酸(b1)の炭素原子数が16以下であることを特徴とする、請求項3記載のペースト状銀粒子組成物。
【請求項5】
銀粒子(A)の平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく20μm以下であり、その形状が球状、粒状またはフレーク状であり、揮発性分散媒(B)の沸点が60℃以上300℃以下であることを特徴とする、請求項3または請求項4記載のペースト状銀粒子組成物。
【請求項6】
請求項3、請求項4または請求項5記載のペースト状銀粒子組成物を70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結することを特徴とする、固形状銀の製造方法。
【請求項7】
製造された固形状銀の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が10W/m・K以上であることを特徴とする、請求項6記載の固形状銀の製造方法。
【請求項8】
請求項3、請求項4または請求項5記載のペースト状銀粒子組成物を複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材の接合方法。
【請求項9】
金属製部材が金属製基板または電子部品の金属部分であることを特徴とする、請求項8記載の金属製部材の接合方法。
【請求項10】
請求項3、請求項4または請求項5記載のペースト状銀粒子組成物を、接着剤が塗布された基板上に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、接着剤上に銀配線を形成することを特徴とする、プリント配線板の製造方法。
【請求項11】
請求項3、請求項4または請求項5記載のペースト状銀粒子組成物を、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該揮発性分散媒を揮散させ該銀粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に銀製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−289745(P2009−289745A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109997(P2009−109997)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000111199)ニホンハンダ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】