説明

加熱装置

【課題】電子部品の加熱にあたって電子部品の周辺で温度上昇を抑制することができる加熱装置を提供する。
【解決手段】加熱ノズル12は、高温風を噴き出す噴き出し口13を区画する。加熱ノズル12の周囲には空気噴き出しノズル22が配置される。空気噴き出しノズル22は、加熱ノズル12から離れた位置で気流を流通させる。こういった加熱装置11では、基板42からチップといった電子部品43を取り外す際に、加熱ノズル12の噴き出し口13は電子部品43に向き合わせられる。電子部品43は高温風に基づき高温に曝される。導電端子44は溶融する。その一方で、空気噴き出しノズル22で生成される気流の働きで電子部品43の周辺の温度上昇は抑制される。例えば電子部品43の周辺に実装される電子部品45の温度上昇は抑制されることができる。周辺の電子部品45の破壊は回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装されるICチップといった電子部品の取り外しや取り付けに用いられる加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、パッケージ基板上の例えば不良品のICチップの取り外しにあたって加熱装置が用いられる。こうした加熱装置は加熱ノズルを備える。加熱ノズルの噴き出し口はICチップに向き合わせられる。加熱ノズルは噴き出し口からICチップに向けて高温風を噴き出す。こうした高温風に基づきICチップおよびパッケージ基板の間で導電端子は溶融する。ICチップはパッケージ基板から取り外される。
【特許文献1】特開2004−6453号公報
【特許文献2】特開平05−109838号公報
【特許文献3】特開2000−31217号公報
【特許文献4】特開平09−260834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、パッケージ基板ではICチップの周辺に電子部品がさらに実装される。加熱ノズルから高温風が噴き出すと、そういった電子部品は同時に高温に曝される。こうして電子部品が許容回数を超えて高温に曝されると、電子部品は破壊されてしまう。特に、導電端子にPbを含まないはんだ材料が用いられると、導電端子の融点はこれまで以上に上昇する。ICチップは一層高温に曝されなければならない。電子部品の破壊の確率は高まってしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、電子部品の加熱にあたって電子部品の周辺で温度上昇を抑制することができる加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、高温風を噴き出す噴き出し口を区画する加熱ノズルと、加熱ノズルの周囲に配置されて、加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる空気噴き出しノズルとを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0006】
こういった加熱装置では、例えば基板からチップといった電子部品を取り外す際に、加熱ノズルの噴き出し口は電子部品に向き合わせられる。噴き出し口から噴き出される高温風に基づき電子部品は加熱される。電子部品および基板の間で導電端子は溶融する。その一方で、加熱ノズルの周囲には空気噴き出しノズルが配置される。空気噴き出しノズルは、加熱ノズルから離れた位置で気流を生成させる。こうした気流の働きで電子部品の周辺の温度上昇は抑制される。電子部品の周辺にさらに実装される電子部品の温度上昇は回避される。周辺の電子部品の破壊は回避される。
【0007】
これまでの加熱装置では、電子部品の加熱に伴って周辺の電子部品の温度上昇は抑制されることができない。その結果、周辺の電子部品は、例えば取り外しの対象の電子部品から離れた位置に配置されなければならない。その一方で、本発明の加熱装置によれば、電子部品の周辺で電子部品の温度上昇は抑制されることができる。電子部品同士は接近して配置されることができる。基板上では電子部品の実装密度はこれまで以上に高められることができる。
【0008】
こうした加熱装置では、空気噴き出しノズルには加熱ノズルから離れる方向に開口する吐き出し口が形成されればよい。こうした吐き出し口から空気が吐き出されれば、加熱ノズルから離れる方向に気流は生成される。空気噴き出しノズルから加熱ノズルに向かう気流の生成は回避される。その結果、空気噴き出しノズルから噴き出される空気に基づく電子部品の冷却は回避される。加熱ノズルの高温風に基づき電子部品の温度上昇は高い精度で実現されることができる。
【0009】
以上のような加熱装置は、加熱ノズルの噴き出し口に向き合わせられる噴き出し口を区画する補助加熱ノズルと、補助加熱ノズルの周囲に配置されて、補助加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる補助空気噴き出しノズルとをさらに備えてもよい。
【0010】
こうした加熱装置では、基板は加熱ノズルと補助加熱ノズルの間に配置される。こうして補助加熱ノズルは例えば基板の裏面に向き合わせられる。補助加熱ノズルの働きで基板の裏面に高温風は噴き出される。基板上の電子部品の温度上昇は一層効率的に実現される。その一方で、補助加熱ノズルの周囲には補助空気噴き出しノズルが配置される。補助噴き出しノズルは、補助加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる。こうした気流の働きで、基板の裏面で補助加熱ノズルの周辺の温度上昇は抑制される。基板の裏面に電子部品が実装されても、そういった電子部品の温度上昇は抑制される。
【0011】
第2発明によれば、先端で、高温風を噴き出す噴き出し口を区画する加熱ノズルと、加熱ノズルの周囲に配置される整流板と、整流板に連続し、加熱ノズルの先端で加熱ノズルの周囲に配置される弾性断熱部材とを備えることを特徴とする加熱装置が提供される。
【0012】
こうした加熱装置では、加熱ノズルの周囲には整流板が配置される。整流板には弾性断熱部材が連続する。弾性断熱部材は加熱ノズルの先端で加熱ノズルの周囲に配置される。弾性断熱部材は弾性力に基づき例えば基板の表面に密着することができる。したがって、加熱ノズルから噴き出される高温風は弾性断熱部材で遮られる。遮られた高温風は整流板に沿って流通する。例えば基板の表面に沿って加熱ノズルの周囲に高温風の漏れは回避される。電子部品の周辺で温度上昇は抑制される。
【0013】
こうした加熱装置では、弾性断熱部材は加熱ノズルに向かって弾性変形すればよい。こうして弾性断熱部材が加熱ノズルに向かって弾性変形すれば、加熱ノズルの先端から弾性断熱部材、整流板に沿って高温風の流通路が区画されることができる。こうして、加熱ノズルの噴き出し口から噴き出される高温風は弾性断熱部材から整流板に効率的に導かれることができる。例えば基板の表面に沿って加熱ノズルの周囲に高温風の漏れは確実に回避されることができる。
【0014】
こうした加熱装置は、先端で、前記加熱ノズルの噴き出し口に向き合わせられる噴き出し口を区画する補助加熱ノズルと、補助加熱ノズルの周囲に配置される補助整流板と、補助整流板に連続し、補助加熱ノズルの先端で補助加熱ノズルの周囲に配置される補助弾性断熱部材とをさらに備えてもよい。
【0015】
こうした加熱装置では、補助加熱ノズルの働きで基板の裏面に高温風は噴き出される。基板上の電子部品の温度上昇は一層効率的に実現される。その一方で、補助加熱ノズルの周囲には補助整流板が配置される。補助整流板には補助弾性断熱部材が連続する。こうした補助弾性断熱部材の働きで例えば基板の裏面に沿って補助加熱ノズルの周囲に高温風の漏れは回避される。基板の裏面に電子部品が実装されても、そういった電子部品の温度上昇は抑制される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、電子部品の加熱にあたって電子部品の周辺で温度上昇を抑制することができる加熱装置が提供されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の第1実施形態に係る加熱装置11の構造を概略的に示す。この加熱装置11は加熱ノズル12を備える。加熱ノズル12は、先端で例えば方形の噴き出し口13を区画する筒状のシェル14を備える。シェル14は可動部材15に固定される。シェル14の内側で可動部材15には筒状の支持軸16が固定される。支持軸16の軸心は噴き出し口13に向けられる。可動部材15は支持軸16の軸心に沿って変位することができる。
【0019】
支持軸16には回転自在に送風ファン17が装着される。送風ファン17は支持軸16の軸心に沿って気流を生成する。送風ファン17から送り出される気流は噴き出し口13から噴き出す。送風ファン17および噴き出し口13の間には電熱器18が配置される。電熱器18は例えばニクロム線といった電熱線から構成されればよい。こうして気流は温められる。噴き出し口13から高温風が噴き出される。
【0020】
加熱ノズル12のシェル14内には吸引ノズル19が配置される。吸引ノズル19は支持軸16の中空区間内に配置されればよい。吸引ノズル19の先端は可動部材15から支持軸16を貫通して噴き出し口13に辿り着くことができる。吸引ノズル19は、その先端から空気を吸引することができる。空気の吸引にあたって吸引ノズル19には吸引ポンプ21が接続される。こういった吸引ノズル19は、可動部材15とは別個に、支持軸16の軸心に沿って変位することができる。
【0021】
加熱ノズル12の周囲には例えば4つの空気噴き出しノズル22、22…が配置される。空気噴き出しノズル22は可動部材15に固定される。空気噴き出しノズル22の先端には、加熱ノズル12から離れる方向に開口する吐き出し口23が形成される。吐き出し口23は噴き出し口13の周囲に配置される。空気噴き出しノズル22は、加熱ノズル12から離れた位置で気流を生成することができる。気流の生成にあたって空気噴き出しノズル22、22…には吐出ポンプ24が接続される。吐出ポンプ24には調整器(図示されず)が接続されてもよい。調整器の働きで吐き出し口23から吐き出される空気の圧力は調整されることができる。
【0022】
加熱ノズル12の周囲には例えば4枚の整流板25、25…が配置される。整流板25は可動部材15に固定される。整流板25は加熱ノズル12の外周面に向き合わせられる。整流板25は加熱ノズル12および空気噴き出しノズル22の間に挟み込まれる。個々の整流板25には開口26が区画される。開口26は、加熱ノズル12の噴き出し口13や空気噴き出しノズル22の吐き出し口23よりも可動部材15に近づいた位置に区画される。
【0023】
整流板25には弾性断熱部材27が連続する。弾性断熱部材27は整流板25の先端に例えば耐熱性の接着剤に基づき固定されればよい。弾性断熱部材27は、加熱ノズル12の先端で噴き出し口13の周囲に配置される。弾性断熱部材27の先端には傾斜面27aが形成される。傾斜面27aは、可動部材15から遠ざかるにつれて加熱ノズル12に接近する。こういった弾性断熱部材27は例えば発泡性のシリコーン樹脂から形成されればよい。シリコーン樹脂には例えば導電性の金属粒が含まれればよい。
【0024】
加熱装置11は、電子部品パッケージを保持する例えば4つの保持部材28、28…を備える。個々の保持部材28には、支持軸16の軸心に沿って変位自在にねじ29が取り付けられる。後述されるように、ねじ29と保持部材28との間で電子部品パッケージのパッケージ基板は挟み込まれる。保持部材28は、支持軸16の軸心に直交する平面に沿って変位することができる。
【0025】
加熱装置11は補助加熱ノズル31を備える。補助加熱ノズル31は、先端で例えば方形の噴き出し口32を区画する筒状のシェル33を備える。噴き出し口32は加熱ノズル12の噴き出し口13に向き合わせられる。シェル33内には電熱器34が配置される。電熱器34は例えばニクロム線から構成されればよい。電熱器34には回転自在に送風ファン35が装着される。送風ファン35は前述の支持軸16の軸心に沿って気流を生成する。こうして噴き出し口32から高温風が噴き出される。その一方で、シェル33の上端には例えば4本の支柱36、36…が配置される。
【0026】
補助加熱ノズル31のシェル33には補助電熱器37が固定される。補助電熱器37は、補助加熱ノズル31の周囲で支持軸16の軸心に直交する平面に沿って広がる。こうした補助電熱器37の大きさは、例えばパッケージ基板42の大きさに応じて設定されればよい。ここでは、補助電熱器37は例えばパッケージ基板42と同じ大きさで広がればよい。補助電熱器37は例えばニクロム線といった電熱線から構成されればよい。こういった補助加熱ノズル31や補助電熱器37は支持軸16の軸心に沿って変位することができる。
【0027】
図2に示されるように、整流板25や弾性断熱部材27は加熱ノズル12の周囲を四方から取り囲む。隣接する整流板25、25同士の間すなわち弾性断熱部材27、27同士の間には隙間が形成されてもよい。整流板25の外側では、空気噴き出しノズル22は加熱ノズル12の周囲で四方に配置される。同様に、保持部材28、28…は加熱ノズル12の周囲で例えば四方に配置される。支柱36、36…は例えば加熱ノズル12で区画される正方形の対角線上に配置される。
【0028】
いま、加熱装置11でパッケージ基板からICチップを取り外す場面を想定する。図3に示されるように、電子部品パッケージ41のパッケージ基板42はねじ29に基づき保持部材28、28…に固定される。こうしてパッケージ基板42は加熱ノズル12および補助加熱ノズル31の間に配置される。保持部材28は支持軸16の軸心に直交する平面に沿って変位する。こうしてパッケージ基板42上の電子部品すなわちICチップ43は加熱ノズル12や補助加熱ノズル31に位置合わせされる。位置合わせにあたって例えば撮像装置の画像が用いられればよい。
【0029】
続いて、可動部材15は、支持軸16の軸心に沿ってパッケージ基板42の表面に向かって下降する。加熱ノズル12のシェル14はICチップ43を受け入れる。弾性断熱部材27は傾斜面27aでパッケージ基板42の表面に接触する。傾斜面27aの働きで、弾性断熱部材27の先端は、可動部材15が下降するにつれて加熱ノズル12に向かって弾性変形していく。こうして弾性断熱部材27には、噴き出し口13に向き合わせられる傾斜面27bが形成される。傾斜面27bは、加熱ノズル12から離れるにつれてパッケージ基板42の表面から遠ざかる。
【0030】
同時に、補助加熱ノズル31および補助電熱器37はパッケージ基板42の裏面に向かって上昇する。こうして4本の支柱36、36…は上端でパッケージ基板42の裏面を受け止める。ここでは、隣接する支柱36、36同士の間隔は、例えばパッケージ基板42の一辺の長さに合わせて設定されればよい。こうした支柱36、36…によれば、パッケージ基板42では温度上昇に基づく撓みは阻止されることができる。
【0031】
続いて、加熱ノズル12および補助加熱ノズル31の電源が投入される。電熱器17、34は熱を生成する。送風ファン18、35の働きで噴き出し口13、32に向かう高温風が生成される。高温風はICチップ43やパッケージ基板42の裏面に向かって噴き出す。こうした高温風に基づきICチップ43の導電端子44やパッケージ基板42の温度は上昇し始める。導電端子44の温度が導電端子44の融点を超えると、導電端子44は溶融し始める。ここでは、導電端子16はボールグリッドアレイを構成する。
【0032】
このとき、噴き出し口13から噴き出す高温風は、パッケージ基板42の表面に沿ってICチップ43から離れる方向に流通する。高温風は弾性断熱部材27の傾斜面27bに向かって流通する。傾斜面27bは加熱ノズル12から離れるにつれてパッケージ基板42の表面から遠ざかることから、高温風は傾斜面27bの働きで、加熱ノズル22のシェル14および整流板25の間で可動部材15に向かって上方に流通する。流通する高温風は整流板25の開口26から外側に放出される。こうして高温風の循環路が形成される。加熱ノズル12のシェル14内では加熱は効率的に実現される。
【0033】
同時に、補助電熱器37の電源は投入される。補助電熱器37は熱を生成する。補助電熱器37で生成された熱はICチップ43の周囲でパッケージ基板42の裏面に向かって放射される。ICチップ43の周囲でパッケージ基板42は加熱される。こうした補助電熱器37の働きでパッケージ基板42では、ICチップ43の実装領域とICチップ43の周囲の領域との間で温度差は縮小される。パッケージ基板42では温度差に基づく熱膨張の差は縮小される。パッケージ基板42の変形は回避されることができる。
【0034】
同時に、吐出ポンプ24は空気噴き出しノズル22、22…に温風を供給する。吐き出し口23は加熱ノズル12から離れる方向に開口することから、吐き出し口23から吐き出される温風は、パッケージ基板42の表面に沿ってパッケージ基板42の外縁に向かって流通する。こうした温風に基づきICチップ43の周囲に配置される電子部品45の温度上昇は抑制されることができる。温風は、例えばICチップ43の耐熱温度よりも摂氏30度〜摂氏50度程度低い温度に設定されればよい。
【0035】
導電端子44が溶融すると、吸引ノズル19は支持軸16の軸心に沿ってICチップ43の表面に向かって下降する。同時に、吸引ポンプ21は空気を吸引する。吸引ノズル19の先端がICチップ43の表面に到達すると、吸引ポンプ21の空気の吸引に基づきICチップ43は吸引ノズル19の先端に吸い付く。吸引ノズル19は支持軸16の軸心に沿ってパッケージ基板42の表面から離れる方向に上昇する。溶融に基づき導電端子44はパッケージ基板42から引き離される。こうしてICチップ43はパッケージ基板42から取り外される。
【0036】
次に、電子部品パッケージ41の表面にICチップ43を取り付ける場面を想定する。保持部材28、28…にはパッケージ基板42が固定される。吸引ノズル19の先端には、吸引ポンプ21の空気の吸引に基づきICチップ43が吸い付けられる。ICチップ43の裏面には予め導電端子44が形成される。加熱ノズル12および補助加熱ノズル31はパッケージ基板42の所定の位置に位置合わせされる。加熱ノズル12はパッケージ基板42の表面に向かって下降する。同時に、補助加熱ユニット41はパッケージ基板42の裏面に向かって上昇する。
【0037】
その後、吸引ノズル19はパッケージ基板42の表面に向かって下降する。ICチップ43の導電端子44はパッケージ基板42上に配置される。前述と同様に、加熱ノズル12および補助加熱ノズル31に基づきICチップ43は加熱される。導電端子44の温度が導電端子44の融点を超えると、導電端子44は溶融する。その後、吸引ポンプ21の空気の吸引が停止されると、吸引ノズル19はICチップ43の表面から離れる。ICチップ43の加熱は停止される。導電端子44が冷却に基づき硬化すると、導電端子44およびパッケージ基板42の間で接続は確立される。
【0038】
以上のような加熱装置11では、加熱ノズル12から噴き出す高温風の働きでICチップ43は加熱される。導電端子44は溶融する。その一方で、空気噴き出しノズル22から吐き出される気流の働きでICチップ43の周辺の電子部品45では温度上昇は抑制される。ICチップ43は高温に曝されることができる一方で、ICチップ43の周辺で電子部品45の温度上昇は抑制されることができる。電子部品45の温度は電子部品45の耐熱温度の範囲内に保持されることができる。電子部品45の破壊は回避されることができる。
【0039】
これまでの加熱装置では、ICチップ43の加熱に伴って電子部品45は高温に曝される。周辺の電子部品45の温度上昇は抑制されることができない。その結果、電子部品45はICチップ43から離れた位置に配置されなければならない。その一方で、本発明の加熱装置11によれば、電子部品45の温度上昇は抑制されることができる。電子部品45はICチップ43に接近して配置されることができる。パッケージ基板42上ではICチップ43や電子部品45の実装密度は高められることができる。
【0040】
加えて、空気噴き出しノズル22の吐き出し口23は、加熱ノズル12から離れる方向に開口する。したがって、吐き出し口23から吐き出される気流は加熱ノズル12から離れた位置で流通する。すなわち、気流はパッケージ基板42の外縁に向かって流通する。吐き出し口23から加熱ノズル12に向かう気流の生成は回避される。吐き出し口23から吐き出される気流に基づくICチップ43の冷却は回避される。ICチップ43の温度上昇は高い精度で実現されることができる。
【0041】
さらに、整流板25には弾性断熱部材27が連続する。弾性断熱部材27は弾性変形に基づきパッケージ基板42の表面に隙間なく密着する。高温風は弾性弾性部材37で遮られる。しかも、弾性断熱部材27は加熱ノズル12に向かって弾性変形する。こうして高温風は例えば整流板25に沿って流通する。電子部品45に高温風の到達は回避される。電子部品45の温度上昇は抑制される。さらに、弾性断熱部材27には導電性の金属粒が含まれる。こうした金属粒の働きで加熱ノズル12や可動部材15からパッケージ基板42に帯電は回避される。
【0042】
本発明者は加熱装置11の効果を検証した。検証にあたって、具体例および比較例が用意された。比較例に係る加熱装置では、空気噴き出しノズル22、整流板25および弾性断熱部材27は省略された。電子部品パッケージ41では導電端子44にSn/Ag/Cuのはんだ材料が用いられた。ICチップ43の裏面には45mm四方の領域に導電端子44は配列された。電子部品45はICチップ43から10mmの距離に配置された。ICチップ43の取り外しにあたって、ICチップ43、導電端子44および電子部品45の温度は計測された。
【0043】
その結果、図4に示されるように、比較例に係る加熱装置では、電子部品45のピーク温度は摂氏193度を計測した。その一方で、具体例に係る加熱装置11では、空気噴き出しノズル22の空気の温度は摂氏25度、空気の流量は200l/min、空気の圧力は0.23MPaに設定された。図5に示されるように、電子部品45のピーク温度は摂氏126度を計測した。具体例では、整流板25や弾性断熱部材27、空気噴き出しノズル22の働きで、比較例に比べて電子部品45の温度上昇は大幅に抑制されることが確認された。
【0044】
図6は、本発明の第2実施形態に係る加熱装置11aの構造を概略的に示す。この加熱装置11aは、補助加熱ノズル31の周囲に配置される補助空気噴き出しノズル51を備える。補助空気噴き出しノズル51は例えば補助電熱器37に固定される。補助空気噴き出しノズル51には、補助加熱ノズル31から離れる方向に開口する吐き出し口52が区画される。補助空気吐き出しノズル51は前述の吐出ポンプ24に接続されればよい。こうした補助空気吐き出しノズル51は、補助加熱ノズル31から離れた位置で気流を流通させることができる。
【0045】
加熱装置11aは、補助加熱ノズル31の周囲に配置される補助整流板53を備える。補助整流板53は例えば補助電熱器37に固定されればよい。補助整流板53は補助加熱ノズル31および補助空気噴き出しノズル51の間に挟み込まれる。補助整流板53には開口54が区画される。開口54は、補助空気噴き出しノズル51の吐き出し口52よりも補助電熱器37に近づく位置に配置されればよい。
【0046】
補助整流板53には補助弾性断熱部材55が連続する。補助弾性断熱部材55は、補助加熱ノズル31の先端で補助加熱ノズル31の周囲に配置される。補助弾性断熱部材55の先端は、補助加熱ノズル12の噴き出し口32よりも補助電熱器37から遠ざかる位置に配置される。補助弾性断熱部材55の先端には傾斜面55aが形成される。補助弾性断熱部材55は補助加熱ノズル31に向かって弾性変形することができる。補助弾性断熱部材55には、前述の弾性断熱部材27と同様の構造が採用されればよい。その他、前述の第1実施形態と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0047】
以上のような加熱装置11aによれば、パッケージ基板42の裏面に例えば電子部品45が実装されても、補助空気噴き出しノズル51から噴き出される空気に基づき電子部品45の温度上昇は抑制されることができる。ICチップ43が高温に曝される一方で、電子部品45では温度上昇は抑制されることができる。パッケージ基板42の表面に実装される電子部品45のみならず、パッケージ基板42の裏面に実装される電子部品45の破壊は回避されることができる。
【0048】
しかも、補助弾性断熱部材55は弾性変形に基づきパッケージ基板42の裏面に隙間なく密着する。補助加熱ノズル31から吐き出される高温風は補助弾性弾性部材55で遮られる。加えて、補助弾性断熱部材55は補助加熱ノズル31に向かって弾性変形する。高温風は補助弾性断熱部材55から補助整流板53に導かれる。開口54から高温風は放出される。パッケージ基板42の裏面に実装される電子部品45に高温風の到達は回避される。
【0049】
(付記1) 高温風を噴き出す噴き出し口を区画する加熱ノズルと、加熱ノズルの周囲に配置されて、加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる空気噴き出しノズルとを備えることを特徴とする加熱装置。
【0050】
(付記2) 付記1に記載の加熱装置において、前記空気噴き出しノズルには、前記加熱ノズルから離れる方向に開口する吐き出し口が形成されることを特徴とする加熱装置。
【0051】
(付記3) 付記1に記載の加熱装置において、前記加熱ノズルの噴き出し口に向き合わせられる噴き出し口を区画する補助加熱ノズルと、補助加熱ノズルの周囲に配置されて、補助加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる補助空気噴き出しノズルとをさらに備えることを特徴とする加熱装置。
【0052】
(付記4) 先端で、高温風を噴き出す噴き出し口を区画する加熱ノズルと、加熱ノズルの周囲に配置される整流板と、整流板に連続し、加熱ノズルの先端で加熱ノズルの周囲に配置される弾性断熱部材とを備えることを特徴とする加熱装置。
【0053】
(付記5) 付記4に記載の加熱装置において、前記弾性断熱部材は前記加熱ノズルに向かって弾性変形することを特徴とする加熱装置。
【0054】
(付記6) 付記4に記載の加熱装置において、先端で、前記加熱ノズルの噴き出し口に向き合わせられる噴き出し口を区画する補助加熱ノズルと、補助加熱ノズルの周囲に配置される補助整流板と、補助整流板に連続し、補助加熱ノズルの先端で補助加熱ノズルの周囲に配置される補助弾性断熱部材とをさらに備えることを特徴とする加熱装置。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加熱装置の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】加熱装置の構造を概略的に示す平面図である。
【図3】パッケージ基板からICチップを取り外す場面を説明するための図である。
【図4】比較例に係る加熱装置に基づき加熱された電子部品パッケージの温度変化を示すグラフである。
【図5】具体例に係る加熱装置に基づき加熱された電子部品パッケージの温度変化を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る加熱装置の構造を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
11 加熱装置、12 加熱ノズル、13 噴き出し口、22 空気噴き出しノズル、23 吐き出し口、25 整流板、27 弾性断熱部材、31 補助加熱ノズル、32 噴き出し口、51 補助空気噴き出しノズル、53 補助整流板、55 補助弾性断熱部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温風を噴き出す噴き出し口を区画する加熱ノズルと、加熱ノズルの周囲に配置されて、加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる空気噴き出しノズルとを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、前記空気噴き出しノズルには、前記加熱ノズルから離れる方向に開口する吐き出し口が形成されることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の加熱装置において、前記加熱ノズルの噴き出し口に向き合わせられる噴き出し口を区画する補助加熱ノズルと、補助加熱ノズルの周囲に配置されて、補助加熱ノズルから離れた位置で気流を流通させる補助空気噴き出しノズルとをさらに備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
先端で、高温風を噴き出す噴き出し口を区画する加熱ノズルと、加熱ノズルの周囲に配置される整流板と、整流板に連続し、加熱ノズルの先端で加熱ノズルの周囲に配置される弾性断熱部材とを備えることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱装置において、前記弾性断熱部材は前記加熱ノズルに向かって弾性変形することを特徴とする加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−344699(P2006−344699A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167579(P2005−167579)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】