説明

加熱装置

【課題】被処理物を収容する空間を備えるチャンバと、該チャンバ内に配設され、発光管とその両端部のシール部とを有するフィラメントランプを備えた加熱装置において、前記フィラメントランプ、特にそのシール部の冷却を効果的に行えて、該フィラメントランプへの高入力化を実現できる構造を提供しようとするものである。
【解決手段】前記チャンバを貫通して配設され、両端が前記チャンバの外部に開放され、内部に冷却風を流通させるガラス管と、該ガラス管と前記チャンバとの間を封止する封止部材を備え、前記フィラメントランプが、前記ガラス管の内部に配置されていることを特徴とする。また、前記ガラス管は、その表面において前記封止部材に対応する領域に赤外線反射膜が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、結晶系シリコン太陽電池の基板に反射防止膜またはパッシベーション膜を形成するときに、シリコン基板を加熱するために使用される加熱装置に関するものであり、特に、チャンバに貫通支持されたガラス管内にフィラメントランプを配置し、該ガラス管内に冷却風を流通して前記フィラメントランプを冷却するようにした加熱装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽電池は、近年、特に地球環境問題の観点から次世代のエネルギー源としての期待が急激に高まっている。この太陽電池としては多結晶シリコン基板を用いた多結晶シリコン太陽電池と、単結晶シリコン基板を用いた単結晶シリコン太陽電池とが知られているが、現在のところ、多結晶シリコン太陽電池が生産の中心となるものと考えられている。この多結晶シリコン基板に特有の課題は、結晶粒毎に基板の品質や面方位が異なることに起因する特性低下を克服するパッシベーション技術と光閉じ込め技術である。
【0003】
特開2008−263189号公報(特許文献1)には、この太陽電池のシリコン基板表面に反射防止コーティングまたはパッシベーションコーティングを製造するコーティング装置が開示されている。
図3に同文献1のコーティング装置が示されており、互いに近接配置された2つの真空チャンバ21、22を備え、コンベヤ23が該真空チャンバ21、22の両方を通過するとともに、入口開口部26および出口開口部27を通じて延在しており、このコンベヤ23上をSiウェハ24が搬送され、前記チャンバ21、22内で加熱処理されるものである。
真空チャンバ21内には、コンベヤ23上を搬送されるSiウェハ24を予備加熱するために、いくつかの赤外線ヒータであるフィラメントランプ25が、互いに平行に且つ一定間隔で並んで配置されている。
Siウェハ24は、真空チャンバ21内を移動中にフィラメントランプ25によって予備加熱され、その後に、後続の真空チャンバ22に搬送されて反応性スパッタリングプロセスによる層の堆積が実施される。
なお、28、29は真空ポンプ、30はスパッタ手段、31は作動ガス供給手段、32は反応性ガス供給手段である。
【0004】
同文献によれば、真空チャンバ内で赤外線ヒータによりSiウェハを400℃以上の高温、特に好ましくは500℃以上に加熱することにより、後続する真空チャンバ内での反射防止コーティングまたはパッシベーションコーティングの堆積に関して有利な効果が得られるとされている。
ところでこのような処理装置においては、近年ではSiウェハなどの被処理物の処理速度を向上させることが強く要求されており、かかる要求に応えるためには、加熱源であるフィラメントランプが急速な昇温速度を有するものであることが好ましい。Siウェハを高温にすると共に、加熱源であるフィラメントランプの昇温速度を高めるためには、当然のこととしてフィラメントランプに大電流を供給することが必要である。
【0005】
しかしながら、同文献に示すコーティング装置において、フィラメントランプ(赤外線ヒータ)25が備えるフィラメントに大電流を供給した場合にはその温度が急上昇するが、該フィラメントランプ25が真空チャンバ21内に配置されていることから、このフィラメントランプを冷却することができないという問題がある。そのため、フィラメントランプの端部に金属箔を埋設して形成されたシール部が高温になり、金属箔の耐熱性が低いことも相俟って、該金属箔が溶断するなどシール部分の破損を招く惧れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−263189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、真空チャンバ内に配設され、発光管とその両端部のシール部とを有するフィラメントランプを備えた加熱装置において、前記フィラメントランプ、特にそのシール部を効率的に冷却することができて、該シール部の破損を未然に防止し、フィラメントランプへの高入力を実現できるようにした構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明に係る加熱装置は、チャンバを貫通して配設され、両端が該チャンバの外部に開放されて、内部に冷却風を流通させるガラス管と、該ガラス管と前記チャンバとの間を封止する封止部材を備え、前記フィラメントランプが、前記ガラス管の内部に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、前記ガラス管は、その表面において前記封止部材に対応する領域に赤外線反射膜が形成されていることを特徴とする。
また、上記赤外線反射膜はガラス管の内表面に形成されていることを特徴とする。
また、前記赤外線反射膜は、赤外線反射膜に入射した赤外線を散乱反射させる拡散反射面を有することを特徴とする。
更には、前記フィラメントランプは、冷却風の下流側に配置されたシール部が、前記ガラス管の外方にまで伸長していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の加熱装置によれば、チャンバを貫通するガラス管内にフィラメントランプを配置するので、該ガラス管内に冷却風を流通させることにより、フィラメントランプを効率的に冷却することができ、該フィラメントランプへの高入力化を達成できる。
また、ガラス管とチャンバとの間の封止部材に対応するガラス管の表面に赤外線反射膜を形成したので、チャンバ内で反射してくる赤外線が封止部材に照射されることがなく、該封止部材の熱による劣化を防止できる。
また、前記赤外線反射膜をガラス管の内表面に形成したことにより、該赤外線反射膜の構成物質によってチャンバ内を汚染することがない。
また、該赤外線反射膜が拡散反射面を有することにより、上記封止部材への熱影響を更に効果的にすることができる。
更に、前記ガラス管内のフィラメントランプのシール部のうち、特に冷却風の下流側に位置して高温になりやすいシール部を、ガラス管の外方に位置させることで、該シール部の温度上昇を防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の加熱装置の全体斜視図。
【図2】図1の断面図。
【図3】従来の加熱装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示されるように、加熱装置1は、チャンバ2と、このチャンバ2を貫通して支持される複数のガラス管3、3と、該ガラス管3内に配設された赤外線ヒータであるフィラメントランプ4からなる。なお、チャンバ2の下方にはワークの搬入口5が形成されている。また、チャンバ2は不図示の排気手段に接続され、内部の空間を所定の真空状態とすることができる。
図2に詳細に示されるように、チャンバ2には、これを貫通してガラス管3が設けられている。チャンバ2の両側壁には支持ブロック6、6が取り付けられていて、前記ガラス管3は該支持ブロック6、6にOリング等の封止部材7、7を介して気密状態で貫通支持され、その両端はチャンバ2の外部に開放されている。
前記ガラス管3の両端部近傍の内表面には赤外線反射膜8、8が形成されている。この赤外線反射膜8はSiO,Al,ZrOを含んだ材料によって構成される。そしてその表面は拡散反射面とされていて、これにより、赤外線反射機能が増幅される。
【0013】
前記赤外線反射膜8、8は、ワークWに向けてフィラメントランプ4から出射される赤外線Rを邪魔することなく、且つ、チャンバ2の内壁によって反射された赤外線Rが封止部材7、7に照射されることのないように、ガラス管3の両端部近傍の内表面において、前記封止部材7、7に対応する領域に形成されている。
なお、赤外線反射膜8はガラス管3の外表面に形成してもよいが、内表面に形成した場合には、該赤外線反射膜8を構成する物質によってチャンバ2内が汚染されることがないという点でより好適である。
【0014】
前記チャンバ2を貫通するガラス管3内には、フィラメントランプ4が挿入配置されている。該フィラメントランプ4は、例えば石英ガラスによって構成される円筒状の発光管41を備え、該発光管41の両端にシール部42、42を有する。そして、前記発光管41の内部には、これと同軸上にコイル状のフィラメント43が配置されていると共に、ハロゲンガスが封入されている。該コイル状のフィラメント43は、発光管41の長手方向に延在し、両端のシール部42、42内のモリブデン製の金属箔44、44にそれぞれ接続される。各々のシール部42、42の周囲には絶縁材料によって中空円筒形状に構成されたベース45、45が装着され、各ベース45、45には給電用のリード線46、46が接続されている。
【0015】
また、前記ガラス管3の一端から冷却風10が流入されて該ガラス管3内を流通し、他端から流出され、この間にフィラメントランプ4を冷却する。なお、冷却風10は空気のほかに窒素ガスなどの不活性ガスも使用できる。
【0016】
上記構成において、真空状態にされたチャンバ2内に置かれたワークWに対して、フィラメントランプ4から赤外線Rがガラス管3を介して照射され、該ワークWが加熱処理される。
この間、ガラス管3内に冷却風10を流通させることにより、フィラメントランプ4、特にそのシール部42を効果的に冷却できる。
また、赤外線Rはチャンバ2の内壁で反射され、その一部がガラス管3を経て封止部材7に向うが、ガラス管3に形成した赤外線反射膜8、8によって反射されて、封止部材7、7に照射されることがなく、その劣化を防止できる。更には、フィラメントランプ4のシール部42に対しても赤外線Rの反射光が照射されることがなく、シール部42が不所望に加熱されることも防止できる。
【0017】
また、前記赤外線反射膜8をガラス管3の内表面に形成することにより、該赤外線反射膜8の構成物質によるチャンバ内の汚染を防げる。
加えて、上記赤外線反射膜8の表面は拡散反射面とすることにより、該赤外線反射膜8に入射した赤外線は、その表面の拡散反射面で四方八方に散乱反射されることにより、封止部材7に照射されることが防止される。
【0018】
上記実施例において、フィラメントランプ4は省スペースの観点からその長さ方向の寸法をできるだけ小さなものとしてシール部42も含めてガラス管3内に位置するような寸法とするのが望ましいが、スペースにある程度の余裕がある場合には、シール部42をガラス管3の外方に延在させると冷却の点からは優位になる。その場合、ガラス管3内を流通する冷却風は、フィラメントランプ4の冷却により上流側に比べて下流側の温度が若干高くなってしまうので、特に、下流側に位置するシール部42をガラス管3の外方にまで延在させておくと、該シール部の温度上昇を防止する観点から好適である。
【0019】
以上説明したように、本発明に係る加熱装置では、チャンバを貫通し、両端が該チャンバの外部に開放されて、内部に冷却風を流通させるガラス管を設けるとともに、該ガラス管と前記チャンバとの間を封止する封止部材を備え、フィラメントランプが、前記ガラス管の内部に配置されているので、フィラメントランプの冷却、とりわけ、シール部の冷却を効果的に行えて、該フィラメントランプへの高入力化を実現できるという効果を奏するものである。
加えて、前記ガラス管は、その表面において前記封止部材に対応する領域に赤外線反射膜が形成されているので、チャンバ内で反射されてくる赤外線が封止部材に照射されることがなく、封止部材の劣化を防止できるものである。
【符号の説明】
【0020】
1 加熱装置
2 チャンバ
3 ガラス管
4 フィラメントランプ
41 発光管
42 シール部
43 フィラメント
44 金属箔
45 ベース
46 リード線
6 支持ブロック
7 封止部材
8 赤外線反射膜
10 冷却風
W ワーク




【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を収容する空間を備えるチャンバと、該チャンバ内に配設され、発光管とその両端部のシール部とを有するフィラメントランプを備えた加熱装置において、
前記チャンバを貫通して配設され、両端が前記チャンバの外部に開放され、内部に冷却風を流通させるガラス管と、
該ガラス管と前記チャンバとの間を封止する封止部材を備え、
前記フィラメントランプが、前記ガラス管の内部に配置されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記ガラス管は、その表面において前記封止部材に対応する領域に赤外線反射膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記赤外線反射膜がガラス管の内表面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記赤外線反射膜は、赤外線反射膜に入射した赤外線を散乱反射させる拡散反射面を有することを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記フィラメントランプは、冷却風の下流側に配置されたシール部が、前記ガラス管の外方にまで伸長していることを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−190511(P2011−190511A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58594(P2010−58594)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】