説明

加熱調理器

【課題】加熱室の扉が開いていても、これが調理に影響しない程度の隙間であれば、扉閉状態として検知できるとともに、扉の閉状態をある程度保持できるようにする。
【解決手段】ヒータ2a,2bが設置された加熱室3を有する調理器本体4と、この調理器本体4の加熱室3の前面を閉塞可能な扉5とを備え、扉5に磁石11を設けるとともに、調理器本体4に磁石11の磁力から扉4と加熱室3前面との隙間gが所定間隔以下となったことを検知して扉閉信号を出力する扉センサ12を設け、さらに扉センサ12が隙間gを検知したときに、磁石11の磁力の有効範囲内に加熱室3の前縁部が位置して磁路を形成できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁誘導加熱調理器の天板の下方に組み込まれてヒータにより魚や肉等の被加熱物を加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータが設置された加熱室を有する調理器本体と、この調理器本体の加熱室の前面を閉塞可能な扉とを備え、電磁誘導加熱調理器の天板の下方に組み込まれて魚や肉等の被加熱物を加熱調理する加熱調理器は知られている。このようなものにおいて、扉の開閉の検出は、従来、マイクロスイッチにより行っている。
【0003】
このマイクロスイッチからなる扉センサは、扉と加熱室の前縁とが当接する箇所の近傍に設置され、扉が開いている時には、マイクロスイッチの可動接点側の釦が扉から解放され、突出してOFF状態になっている。また、扉が閉じている時には、マイクロスイッチの可動接点側の釦が扉により押下され、ON状態になっている。
【0004】
そして、加熱調理するために使用者が調理スタート等のキーを操作した場合、扉が開いておればマイクロスイッチがOFF状態になっているので、加熱調理器は電源が入らず、加熱調理が開始されない。また、そのとき扉が閉じておればマイクロスイッチがON状態になっているので、そのスイッチの状態をマイコンが認識して使用者のキー操作を有効にし、正常に加熱調理が開始されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平5-26026号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、扉の開閉検知を行っている前述のマイクロスイッチは、一般にその可動接点側の釦が常時解放側へ付勢されており、扉閉時に扉そのものが前記付勢力に抗して可動接点側の釦を物理的に押下することで、ON状態にするようになっている。このため、扉が僅かでも開いている時は、前記付勢力によってマイクロスイッチがOFF状態になり、使用者が調理スタート等のキーを操作しても電源が入らず、調理が開始されない。
【0007】
このように、従来は、マイクロスイッチの可動接点側の釦を物理的に押下することで、扉の閉状態(スイッチのON状態)を検出していたため、マイクロスイッチをON状態にする場合、マイクロスイッチの可動接点側の釦を確実に押下できれば問題はないが、扉の組立て精度や、各部品のバラツキ、マイクロスイッチの取りつけ位置にズレ等があると、扉閉時に扉と加熱室前面との間に僅かな隙間(調理に影響しない隙間)が発生しても、マイクロスイッチとしては、可動接点側の釦の押し込み量が不十分となり、OFF状態のままになってしまう場合があった。そして、このようになってしまうと、扉が一見閉じたように見えても、動作的には扉開放状態となって使用者のキー操作がすべて無効になってしまうという難点があった。
【0008】
本発明の技術的課題は、加熱室の扉が開いていても、これが調理に影響しない程度の隙間であれば、扉閉状態として検知できるとともに、扉の閉状態をある程度保持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加熱調理器は、下記の構成からなるものである。すなわち、ヒータが設置された加熱室を有する調理器本体と、この調理器本体の加熱室の前面を閉塞可能な扉とを備えた加熱調理器において、扉に磁石を設けるとともに、調理器本体に前記磁石の磁力から扉と加熱室前面との隙間が所定間隔以下となったことを検知して扉閉信号を出力する扉センサを設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加熱調理器によれば、加熱室の扉が多少開いていても、扉と加熱室前面との隙間が所定間隔以下であれば、換言すれば調理に影響しない隙間以下であれば、この状態から扉閉状態として非接触で検出することができる。このため、従来のような調理が可能であるにも拘わらず使用者のキー操作がすべて無効になってしまうような問題は発生せず、使い勝手が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図示実施形態により本発明を説明する。
図1は電磁誘導加熱調理器に組み込まれた本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉開放状態を示す斜視図、図2はその扉閉状態を示す斜視図、図3はその扉開放状態を示す側面図、図4はその扉閉状態を示す側面図、図5はその要部である磁石と磁気センサからなる扉センサと磁路を形成する金属板との位置関係を概略的に示す斜視図、図6はその扉閉状態における磁石と扉センサと金属板との位置関係を概略的に示す平面図、図7はその扉と加熱室前面との間に調理に影響しない程度の隙間が開いている状態における磁石と扉センサと金属板と磁界との関係を概略的に示す平面図である。
【0012】
本実施の形態の加熱調理器は、図1乃至図7に示すように、電磁誘導加熱調理器の天板1の下方に組み込まれている。すなわち加熱調理器は、魚や肉等の被加熱物を加熱調理するための上ヒータ2a及び下ヒータ2bが設置された加熱室3を有する調理器本体4と、調理器本体4の加熱室3の前面を閉塞可能な扉5とを有している。
【0013】
電磁誘導加熱調理器側の天板1には、その上面の前縁部に、電磁誘導加熱等の各種操作を行うためのスイッチ6が設けられた上部パネル7が配置されているとともに、調理器本体4側の前面の右側部には、この調理器の上下ヒータ2a,2bへの通電を可能にするためのメイン電源スイッチ8等が設けられたメインパネル9が設置されている。
【0014】
また、扉5の側面には、扉閉時に磁力によって扉閉状態を保持するための磁石11が設けられているとともに、調理器本体4のメインパネル9内には、磁石11の磁力から扉5と加熱室3前面との隙間g(図7)が所定間隔以下となったことを検知して扉閉信号を出力するリードスイッチまたはホールIC等の磁気センサからなる扉センサ12が設けられている。扉センサ12は、安全確保の観点から、指が入らず、さらに調理に影響しない、つまり強制排気の場合を考慮し、通気によって加熱室3内が冷えすぎない10mm以下の隙間gを、扉閉時に検知して扉閉信号を出力する機能を有する。
【0015】
また、ここでは加熱室3の前縁部が合成樹脂(のカバーなど)で覆われており、この合成樹脂からなる前縁部の磁石11と対向する位置に、磁路を形成する金属板13が面一となるように埋め込まれている。つまり、扉5と加熱室3前面との隙間gが10mm以下の状態にあるときには、図7のように磁石11の磁力の有効範囲(図中に波線で示す)内に、扉センサ12と金属板13が位置しており、これによって扉閉状態(隙間gが10mm以下の状態)を検知できるとともに、扉5の閉状態を磁力によりある程度保持できるようになっている。なお、金属板13は、加熱室3の前縁部が合成樹脂で覆われず、磁性体金属が剥きだし構成されておれば不要にできるものである。
【0016】
以上の構成を有する本実施の形態の加熱調理器において、図1及び図3のように扉5が開いていて扉5と加熱室前面との間隔が所定間隔以上離れている時は、磁石11と扉センサ12が離れていて扉センサ12が磁石11の磁力の有効範囲外にあるので、センサ回路はOFF状態になっている。このため、加熱調理器は電源が入らず、使用者によるキー操作がすべて無効になり、加熱調理が開始されることはない。
【0017】
また、図2及び図4のように扉5が閉じていて扉5と加熱室前面との間隔が所定間隔以下(隙間gが10mm以下)になっている時は、磁石11と扉センサ12と金属板13の位置関係が図5及び図6のように近接し、あるいは図7のように磁石11の磁力の有効範囲内に扉センサ12と金属板13が位置しているので、扉閉状態を検知でき、かつ扉5の閉状態を磁力によりある程度保持できるようになっている。したがって、加熱調理するために使用者が調理スタート等のキーを操作した場合、センサ回路はON状態になっているので、その状態をマイコンが認識して使用者のキー操作を有効にし、正常に加熱調理が開始されるようになっている。
【0018】
このように、本実施の形態の加熱調理器においては、加熱室3の扉5が多少開いていても、扉5と加熱室3前面との隙間gが所定間隔以下、つまり指が入らず、調理に影響しない10mm以下となれば、この状態から扉閉状態として非接触で検出することができる。このため、従来のような調理が可能であるにも拘わらず使用者のキー操作がすべて無効になってしまうような問題は発生せず、使い勝手が向上する。
【0019】
また、扉センサ12としてリードスイッチまたはホールIC等の磁気センサを用いることで、扉閉状態を非接触で検出する磁気センサ回路を容易に形成することができる。
【0020】
また、扉センサ12が隙間gを検知したときに、つまり隙間gが10mm以下となった時点では、磁石11の磁力の有効範囲内に加熱室の前縁部が位置して磁路を形成できるようにしているので、隙間gが10mmの段階から既に扉5の閉状態を磁力によりある程度保持することができる。
【0021】
また、加熱室3の前縁部が合成樹脂(非磁性体)から構成されていても、本実施の形態のようにその扉5側の磁石11と対向する位置に磁路を形成する金属板13を設けることで、磁力による吸引力を発生させることができ、扉5の閉状態を磁力により保持することができる。そのため、加熱室3の前縁部の材質の選択が容易となり設計的自由度が拡大する。
【0022】
なお、前述の実施の形態では、本発明を電磁誘導加熱調理器に組み込まれた加熱調理器に用いたものを例に挙げて説明したが、これに限るものでなく、それ以外の単体構成の加熱調理器、例えばロースタやグリル等にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉開放状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉閉状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉開放状態を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉閉状態を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の要部である磁石と扉センサと磁路を形成する金属板との位置関係を概略的に示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉閉状態における磁石と扉センサと金属板との位置関係を概略的に示す平面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る加熱調理器の扉と加熱室前面との間に調理に影響しない程度の隙間が開いている状態における磁石と扉センサと金属板と磁界との関係を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 天板、2a 上ヒータ、2b 下ヒータ、3 加熱室、4 調理器本体、5 扉、6 スイッチ、7 上部パネル、8 メイン電源スイッチ、9 メインパネル、11 磁石、12 扉センサ、13 金属板、g 隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータが設置された加熱室を有する調理器本体と、該調理器本体の前記加熱室の前面を閉塞可能な扉とを備えた加熱調理器において、
前記扉に磁石を設けるとともに、前記調理器本体に前記磁石の磁力から前記扉と前記加熱室前面との隙間が所定間隔以下となったことを検知して扉閉信号を出力する扉センサを設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記扉センサは、前記扉と前記加熱室前面との隙間が10mm以下となったことを検知して扉閉信号を出力することを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記扉センサが前記隙間を検知したときに、前記磁石の磁力の有効範囲内に前記加熱室の前縁部が位置して磁路を形成できるように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記加熱室の前縁部は合成樹脂からなり、その扉側の磁石と対向する位置に、前記磁路を形成する金属板が設けられていることを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記扉センサは、リードスイッチまたはホールICからなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−36011(P2008−36011A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212207(P2006−212207)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】