説明

加熱部材、加熱部材の弾性発熱層の作製方法、定着部材、加熱装置、定着方法、定着装置、画像形成装置

【課題】弾性層の弾性を保ちながら、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した加熱部材(定着部材)を提供するとともに、その加熱部材を用い、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した加熱装置(定着装置)を提供する。
【解決手段】本発明の加熱部材11B,11Cは、弾性高分子材料と金属とからなる弾性発熱層43を有し、前記金属は相互に連結された構造を有し、前記弾性発熱層43に渦電流を発生させて発熱させる。本発明は、シート状の被加熱部材Sを挟持搬送する2つの回転体11B,11Cと、該回転体を加熱する加熱手段とを備え、被加熱部材を加熱及び加圧する加熱装置6Bにおいて、加熱手段は、励磁手段12と、該励磁手段によって回転体に設けられた導電層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段から成り、2つの回転体のいずれか一方または両方に前記加熱部材を用いたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置や定着装置に用いられ被加熱部材を加熱する加熱部材、その加熱部材の弾性発熱層の作製方法、前記加熱部材からなりシート状の被加熱部材(記録材)の未定着画像を定着する定着部材、前記加熱部材を用いた加熱装置、前記定着部材を用いて未定着画像を記録材に定着する定着方法及び定着装置、前記加熱装置を用いて未定着画像を記録材に定着する定着方法及び定着装置に関するものであり、より詳しくは、電磁誘導を利用して加熱する際の加熱効率の向上を図った加熱部材及び定着部材と、その加熱部材を用いた加熱装置、その定着部材や加熱装置を用いた定着方法及び定着装置に関する。
また、本発明は、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、印刷装置、あるいはこれらの機能を組み合わせた複合機など、画像形成プロセスと転写プロセスを利用してシート状の記録材上に未定着画像を形成し、前記の定着方法や定着装置を用いて未定着画像を記録材に定着する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置の定着工程に関しては、種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的な方法は熱ローラによる圧着加熱方式である。
加熱ローラ(定着ローラ)による圧着加熱方式の定着装置では、トナーに対し離型性を有する材料(主にフッ素樹脂)で表面を形成した定着ローラを用い、定着ローラの表面にシート状の被加熱部材(記録用紙、OHPシート、葉書等の記録材)のトナー像面を加圧下で接触しながら通過せしめることにより定着を行なうものである。
このような定着装置に関する従来技術としては種々の提案がなされているが、その中で電磁誘導加熱を利用したものとしては以下のようなものがある。
【0003】
(a) 特許文献1(特開2002−49260号公報)には、「転写材上のトナー像を加熱と加圧とにより前記転写材に固定する定着装置において、電磁誘導加熱体を内部に有する円筒状の熱伝導性基体と、該熱伝導性基体の外側に弾性断熱層と、該弾性断熱層の外側に磁性弾性発熱層とを設けてロール状の電磁誘導定着用回転部材を形成するもので、前記磁性弾性発熱層は弾性高分子材料と磁性材とからなることを特徴とする定着装置」が開示されている。
(b) 特許文献2(特開2002−55548号公報)には、「電磁誘導加熱体と、薄肉の円筒状弾性体と、前記円筒状弾性体の外側の磁性弾性発熱層とからなる電磁誘導定着用定着ローラ部材」が開示されている。
(c) 特許文献3(特開2002−91208号公報)には、「加熱回転体と、該加熱回転体の内側に配置された磁場発生手段とを有し、該磁場発生手段から発生させた高周波誘導磁束により前記加熱回転体を電磁誘導発熱させて、記録媒体上に形成されたトナー像を加熱して定着する誘導加熱型の定着装置において、前記加熱回転体を、基体と、該基体の外側に積層された磁性発熱層とにより形成し、前記磁性発熱層がゴム層中に磁性体を含み、前記磁性発熱層のゴム層に含まれる磁性体を鎖状に整列させたことを特徴とする定着装置」が開示されている。
(d) 特許文献4(特開2002−108124号公報)には、「転写材上のトナー像を加熱と加圧とにより前記転写材に固定する定着装置において、電磁誘導加熱体を有する円筒状の熱伝導性基体と、該熱伝導性基体の外側に磁性弾性発熱層とを設けてロール状の電磁誘導定着用回転部材を形成すると共に、前記磁性弾性発熱層は、球状の磁性粒子を層中に分散して形成されていることを特徴とする定着装置」が開示されている。
(e) 特許文献5(特開昭53−60236号公報)には、「コアに巻付けられた巻線と、これに順次巻装された耐熱性絶縁層および発熱体を有する誘導発熱ローラーにおいて、上記発熱体に10Ωcm以下のシリコンゴムを用いたことを特徴とする定着装置」が開示されている。
(f) 特許文献6(特開昭54−78140号公報)には、「導電性を有する弾質材よりなる発熱層をロール表面に巻装して、該ロールに付設された励起体の電気付勢に基づく誘導発熱により、同発熱層を高温に保持させるようにした加熱ロールであって、金属、カーボン類の良導電性の粉材、繊維材、または繊維捩編材よりなる発熱促進体を、上記発熱層内に埋め込んだことを特徴とする加熱ロール」が開示されている。
【0004】
以上のように電磁誘導加熱を利用した加熱部材や定着装置の提案が種々なされているが、上記の(a)〜(f)のいずれの従来技術も、弾性層中に導電性あるいは磁性を有する粒子を分散させているため、電気抵抗が高く加熱効率が低いという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−49260号公報
【特許文献2】特開2002−55548号公報
【特許文献3】特開2002−91208号公報
【特許文献4】特開2002−108124号公報
【特許文献5】特開昭53−60236号公報
【特許文献6】特開昭54−78140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
画像形成装置の定着装置、特にカラー画像を出力する電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着装置では、ローラ芯金の表面にシリコーンゴム等の弾性層を有する定着ローラ(加熱ローラ)が用いられる。
これは定着ローラが硬質であると、用紙やトナー層の凹凸に定着ローラ表面が追従せず、ハーフトーン画像などでは、ドットにより潰れ方が異なって、ざらついて見えたり、ベタ部では光沢ムラとなり、画質を低下させるからである。モノクロ画像でも同様の画質低下が生じるが、線画が中心であるため、比較的目立たない。このため、カラー画像の高画質化には、弾性層を有する定着ローラが必須となる。
【0007】
上記の定着ローラ(加熱ローラ)方式の定着装置は、ウォーミングアップ時に、定着ローラ内に備えられているハロゲンヒータ等の熱源から、熱容量が大きいローラ芯金、熱伝導の悪いシリコーンゴム層、ローラ表面層へと熱が伝わって所定の定着温度に達するまでに時間を要していた。また、このため、画像出力動作を速やかに実行するためには、非画像出力時にも定着ローラ表面をある程度の待機温度に温度調整していなければならなかった。
【0008】
これに対し、画質に優れた弾性層を有する定着ローラの昇温速度を大きくするために、前述の(a)〜(f)の従来技術のように、弾性層中に導電性粒子や磁性体粒子を分散させ、電磁誘導加熱により加熱する方法の提案が種々なされているが、弾性層中に粒子が分散しているため、電気抵抗が高く発熱効率が低いという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、弾性層の弾性を保ちながら、電磁誘導加熱での加熱効率(発熱効率)を向上した加熱部材及びその加熱部材からなる定着部材を提供することを目的とする。また、本発明は、加熱部材の弾性発熱層の作成方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記の加熱部材を用い、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した回転体を備えた加熱装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記の定着部材または加熱装置を用いて定着時の加熱効率を向上することができる定着方法及び定着装置を提供することを目的とする。さらに本発明は、その定着方法または定着装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では、以下のような手段を採っている。
本発明の第1の手段は、被加熱部材に接触し該被加熱部材を加熱する加熱部材において、弾性高分子材料と金属とからなる弾性発熱層を有し、前記金属は相互に連結された構造を有し、前記弾性発熱層に渦電流を発生させて発熱させることを特徴とする(請求項1)。
また、本発明の第2の手段は、第1の手段の加熱部材において、前記金属材料は、被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融することを特徴とする(請求項2)。
【0011】
本発明の第3の手段は、第1または第2の手段の加熱部材において、前記金属材料の少なくとも1種類は被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融し、かつ形状異方性を有することを特徴とする(請求項3)。
また、本発明の第4の手段は、第1〜第3のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記弾性発熱層よりも外側に設けられる離型層を有することを特徴とする(請求項4)。
【0012】
本発明の第5の手段は、第4の手段の加熱部材において、前記離型層は、フッ素系樹脂層であることを特徴とする(請求項5)。
また、本発明の第6の手段は、第4の手段の加熱部材において、前記離型層は、シリコーンゴム層であることを特徴とする(請求項6)。
さらにまた、本発明の第7の手段は、第1〜第4のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記離型層は、フッ素ゴム層であることを特徴とする(請求項7)。
【0013】
本発明の第8の手段は、第1〜第7のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記弾性発熱層の内側に設けられ、弾性高分子材料からなる弾性断熱層を有することを特徴とする(請求項8)。
また、本発明の第9の手段は、第1〜第8のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記弾性発熱層の外側に設けられ、弾性高分子材料からなる第2の弾性層を有することを特徴とする(請求項9)。
【0014】
本発明の第10の手段は、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材の弾性発熱層の作製方法において、前記金属材料を硬化前のゴム液中に分散して作製した塗装液を基材または弾性断熱層上に塗装し、硬化させる際または硬化させた後に、少なくとも1種類の金属の溶融温度よりも高温に加熱することを特徴とする(請求項10)。
【0015】
本発明の第11の手段は、被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、記録材上の未定着画像を定着する定着部材において、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材からなることを特徴とする(請求項11)。
また、本発明の第12の手段は、加熱装置であって、励磁手段と、該励磁手段によって導電層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段を有する加熱部材とを備え、前記加熱部材として第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材を用いたことを特徴とする(請求項12)。
【0016】
本発明の第13の手段は、加熱装置であって、シート状の被加熱部材を挟持搬送する2つの回転体と、該回転体を加熱する加熱手段とを備え、前記被加熱部材を加熱及び加圧する加熱装置において、前記加熱手段は、励磁手段と、該励磁手段によって回転体に設けられた導電層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段から成り、2つの回転体のいずれか一方または両方に、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材を用いたことを特徴とする(請求項13)。
また、本発明の第14の手段は、第13の手段の加熱装置において、前記加熱手段を2つ備え、2つの回転体が2つの加熱手段によりそれぞれ加熱されることを特徴とする(請求項14)。
【0017】
本発明の第15の手段は、周面が周回するように支持された定着部材と、前記定着部材に圧接される加圧部材とを用い、前記定着部材に前記加圧部材が圧接される領域を通過する記録材を加熱及び加圧して、該記録材上に担持された未定着画像を定着する定着方法において、前記定着部材として第11の手段の定着部材を用いたことを特徴とする(請求項15)。
また、本発明の第16の手段は、第15の手段の定着方法において、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする(請求項16)。
【0018】
本発明の第17の手段は、定着方法であって、第12の手段の加熱装置を用い、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする(請求項17)。
また、本発明の第18の手段は、定着方法であって、第13または第14の手段の加熱装置を用い、2つの回転体の一方を定着部材、他方を加圧部材とし、定着部材と加圧部材の圧接部で被加熱部材である記録材を挟持搬送し、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする(請求項18)。
さらに、本発明の第19の手段は、第15〜第18のいずれか一つの手段の定着方法において、前記定着部材と加圧部材のうち、少なくとも定着部材に離型剤を塗布することを特徴とする(請求項19)。
【0019】
本発明の第20の手段は、周面が周回するように支持された定着部材と、前記定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材に前記加圧部材が圧接される領域を通過する記録材を加熱及び加圧して、該記録材上に担持された未定着画像を定着する定着装置において、前記定着部材として第11の手段の定着部材を用いたことを特徴とする(請求項20)。
また、本発明の第21の手段は、第20の手段の定着装置において、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする(請求項21)。
【0020】
本発明の第22の手段は、定着装置であって、第12の手段の加熱装置を備え、ワックス含有のトナーを用いてシート状の被加熱部材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする(請求項22)。
また、本発明の第23の手段は、定着装置であって、第13または第14の手段の加熱装置を備え、2つの回転体の一方を定着部材、他方を加圧部材とし、定着部材と加圧部材の圧接部で被加熱部材である記録材を挟持搬送し、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする(請求項23)。
さらに、本発明の第24の手段は、第20〜第23のいずれか一つの手段の定着装置において、前記定着部材と前記加圧部材のうち、少なくとも定着部材に離型剤を塗布することを特徴とする(請求項24)。
【0021】
本発明の第25の手段は、シート状の記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材にトナー画像を定着させる定着部を備えた画像形成装置において、前記定着部に、第15〜第19のいずれか一つの手段の定着方法を用いたことを特徴とする(請求項25)。
また、本発明の第26の手段は、シート状の記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材にトナー画像を定着させる定着部を備えた画像形成装置において、前記定着部に、第20〜第24のいずれか一つの手段の定着装置を備えたことを特徴とする(請求項26)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1〜第9の手段によれば、被加熱部材に接触し該被加熱部材を加熱する加熱部材において、弾性高分子材料と金属とからなる弾性発熱層を有し、前記金属は相互に連結された構造を有し、前記弾性発熱層に渦電流を発生させて発熱させることにより、弾性発熱層の弾性を保ちながら電磁誘導加熱での加熱効率を向上した加熱部材を実現することができるので、カラー画像の高画質化に必要な用紙やトナー層の凹凸への加熱部材表面の追従性を損なわずに電磁誘導加熱での加熱効率を向上することができる。
また、本発明の第10の手段によれば、カラー画像の高画質化に必要な用紙やトナー層の凹凸への加熱部材表面の追従性を損なわずに電磁誘導加熱での加熱効率を向上した加熱部材の弾性発熱層の作製方法を提供することができる。
【0023】
本発明の第11の手段によれば、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材を用いて、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した定着部材(定着ローラ等)を提供することができる。
また、本発明の第12〜第14の手段によれば、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材を用いて、電磁誘導加熱での加熱効率を向上した回転体(定着ローラ等)を備えた加熱装置を提供することができる。
【0024】
本発明の第15〜19の手段によれば、第11の手段の定着部材または第12〜第14のいずれか一つの手段の加熱装置を用いて、カラー画像の高画質化に必要な用紙やトナー層の凹凸への加熱部材(定着部材)表面の追従性を損なわずに定着時の加熱効率も向上することができる定着方法を提供することができる。
また、本発明の第20〜24の手段によれば、第11の手段の定着部材または第12〜第14のいずれか一つの手段の加熱装置を用いて、カラー画像の高画質化に必要な用紙やトナー層の凹凸への加熱部材(定着部材)表面の追従性を損なわずに定着時の加熱効率も向上することができる定着装置を提供することができる。
【0025】
本発明の第25、第26の手段によれば、第15〜第19のいずれか一つの手段の定着方法または第20〜第24のいずれか一つの手段の定着装置を用いて、高耐久、高画質、省エネの特性を持った画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の構成、動作及び作用について詳細に説明する。
第1の手段の加熱部材では、弾性高分子材料と金属とからなる弾性発熱層を有し、前記金属は相互に連結された構造を有している。
具体的には、例えば前記金属材料に、(1)錫−銀系、(2)錫−銅系、(3)錫−亜鉛系、(4)錫−銀−銅系、(5)錫−銀−ビスマス系、(6)錫−銀−銅−ビスマス系、(7)錫系、(8)錫、(9)ビスマス系、(10)ビスマスのいずれかの溶融温度が低い金属または合金を少なくとも1種類含ませることにより、金属同士をこれらの溶融温度が低い金属で接合できるため、単純に分散した状態では達成できない電気抵抗の低い弾性発熱層を形成することができ、加熱効率を向上させることができる。
【0027】
第2の手段では、第1の手段の加熱部材において、前記金属材料が、被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融する金属であることにより、加熱時に前記金属材料が溶融して変形するということが防止され、加熱効率を損ねることが防止できる。
また、第3の手段では、第1または第2の手段の加熱部材において、金属材料の少なくとも1種類に、被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融しかつ形状異方性を有するフィラーを用いることにより、形状異方性を有する金属同士を溶融温度が低い金属で接合する形で構造を形成でき、電気的な連続性を向上させることができ、弾性発熱層の電気抵抗をより低抵抗化できる。
【0028】
第4の手段では、第1〜第3のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記弾性発熱層よりも外側に設けられる離型層を有することにより、前記弾性発熱層にシリコーンオイルを塗布することによりトナーに対する離型性を確保するということが無くなり、前記弾性発熱層がシリコーンオイルにより膨潤して耐久性を損ねるような問題が無くなる。
【0029】
第5の手段では、第4の手段の加熱部材において、前記離型層は、フッ素系樹脂層であることにより、フッ素系樹脂が離型性に優れ、ワックス含有トナーを使用して離型剤の塗布機構が不要なオイルレス定着を行うため、構成が簡単となり、低コスト化やイージーメンテナンスが可能となり、オイルスジの発生等の塗布に関する不具合点も発生し得ないこととなる。さらにフッ素系樹脂は、低摩擦高強度という特性から、ローラに接触する温度検出器や分離爪等の摺擦に対しても耐久性が高くなる。
また、第6の手段では、第4の手段の加熱部材において、前記離型層は、シリコーンゴム層であることにより、トナーや記録材表面の凹凸への追従性が高く、高画質が要求される場合に対応できる。
さらにまた、第7の手段では、第4の手段の加熱部材において、前記離型層は、フッ素ゴム層であることにより、耐磨耗性の観点から強度が確保できることとなる。
【0030】
第8の手段では、第1〜第7のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記弾性発熱層の内側に設けられ、弾性高分子材料からなる弾性断熱層を有することにより、弾性発熱層で発生した熱が基材側に逃げず、素早い温度上昇を行うことができる。また、弾性発熱層の横方向は金属フィラー等によって熱的にも連続しているため、一部の熱低下が発生しても素早く均一化される。従って、立ち上がりが早く、熱の均一化も良く、加熱効率が良い。
弾性断熱層は、厚さ(肉厚)0.2〜2mm、好ましくは0.5〜1.5mm厚の、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等のベースゴム(ベース層)を用い、磁力線を透過する磁力線透過性の弾性高分子材料としてのベースゴムで形成される。なお、弾性断熱層の熱伝導率は熱伝導性基体の熱伝導率の1/2以下とすることが好ましい。
【0031】
第9の手段では、第1〜第8のいずれか一つの手段の加熱部材において、前記弾性発熱層の外側に設けられ、弾性高分子材料からなる第2の弾性層を有することにより、加熱部材の表面がより適度に弾性変形することができる。このため、加熱部材と加圧部材との間で挟圧して搬送される被加熱材上に、例えばトナー像が形成されている場合、被加熱材の表面に凹凸があっても、凹凸面に加熱部材の表面が十分に追従し、加熱むらが生じない。したがって、トナーが十分溶着し、剥離することがない良好な品質の定着画像を得ることができる定着温度範囲である「非オフセット域」を広くとることができる。
【0032】
ここで、本発明では、前記第2の弾性層の厚みは、10μm以上、300μm未満であることを特徴とする。
第2の弾性層の厚みが300μm以上になると熱容量が大きくなり、ウォームアップ時間が長くなる。また、第2の弾性層の厚みが10μmよりも薄くなると第2の弾性層による十分な弾性が得られないので、加熱部材の表面が被加熱材上の凹凸面に追従しなくなる。本発明に従えば、第2の弾性層の厚みを上記範囲とすることによって、ウォームアップ時間が短く、加熱むらが無くなる。
【0033】
また、本発明では、前記離型層の厚みは、5μm以上、50μm以下であることを特徴とする。
離型層は、加熱部材の表面に位置し被加熱材に接するので、厚みが5μmよりも薄いと耐久性が不足する。また、離型層の厚みを50μmよりも厚くすると、離型層の下層に形成されている第2の弾性層の弾性の効果が無くなり、加熱回転部材の表面が固くなるので、加熱むらが生じる。本発明に従えば、離型層の厚みを上記範囲とすることによって、加熱むらがなく、耐久性を有する加熱装置を構成することができる。
第2の弾性層は、耐熱性に優れゴム弾性を有する材料から構成される。具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴムなどが第2の弾性層として用いられ、特に、ゴム弾性が優れているシリコーンゴムを用いるのが望ましい。
【0034】
第10の手段では、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材の弾性発熱層の作製方法において、前記金属材料を硬化前のゴム液中に分散して作製した塗装液を基材または弾性断熱層上に塗装し、硬化させる際または硬化させた後に、少なくとも1種類の金属の溶融温度よりも高温に加熱することにより、金属同士を相互に連結することができる。
【0035】
第11の手段では、被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、記録材上の未定着画像を定着する定着部材において、第1〜第9のいずれか一つの手段の加熱部材からなることにより、第1〜第9のいずれかの手段と同様の効果が得られる定着部材を得ることができる。
【0036】
第12の手段では、加熱装置であって、励磁手段と、該励磁手段によって導電層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段を有する加熱部材とを備え、前記加熱部材として第1〜第9の手段の加熱部材を用いたことにより、加熱部材の表層(弾性発熱層)が導電層として機能し、該導電層に渦電流を発生させて発熱させることにより、電磁誘導加熱により発熱させることができ、熱伝導層を介して加熱部材の表面温度を素早く上昇させることが可能となり、加熱効率を向上させることができる。
また、加熱部材の基材の、表層が形成される面に弾性層もしくは断熱層を有する構成では、表層で発生した熱が基材側に逃げることが防止され、被加熱部材を効率良く加熱することができる。
【0037】
第13の手段では、シート状の被加熱部材を挟持搬送する2つの回転体と、該回転体を加熱する加熱手段とを備え、前記被加熱部材を加熱及び加圧する加熱装置において、前記加熱手段は、励磁手段と、該励磁手段によって回転体に設けられた導電層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段から成り、2つの回転体のいずれか一方または両方に、第1〜第9の手段の加熱部材を用いたことにより、加熱部材の表層(弾性発熱層)が導電層として機能し、該導電層で発熱させることができるため、回転体の表面温度を素早く上昇させることができ、被加熱部材を効率よく加熱することができる。また、加熱部材の基材の、表層が形成される面に弾性層もしくは断熱層を有する構成では、表層で発生した熱が基材側に逃げることが防止され、被加熱部材を効率良く加熱することができる。
また、第14の手段では、第13の手段の加熱装置において、前記加熱手段を2つ備え、2つの回転体が2つの加熱手段によりそれぞれ加熱されることにより、被加熱部材の両面から効率良く加熱することができる。
【0038】
第15の手段では、周面が周回するように支持された定着部材と、前記定着部材に圧接される加圧部材とを用い、前記定着部材に前記加圧部材が圧接される領域を通過する記録材を加熱及び加圧して、該記録材上に担持された未定着画像を定着する定着方法において、前記定着部材として第11の手段の定着部材を用いたことにより、離型性を確保しながら定着時の加熱効率を向上することができる。
また、第16の手段では、第15の手段の定着方法において、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことにより、トナー中のワックスによりさらに離型性が向上する。
【0039】
第17の手段は、定着方法であって、第12の手段の加熱装置を用い、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことにより、電磁誘導加熱による定着を行うことができ、離型性を確保しながら定着時の加熱効率を向上することができる。また、トナー中のワックスによりさらに離型性が向上する。
また、第18の手段では、定着方法であって、第13または第14の手段の加熱装置を用い、2つの回転体の一方を定着部材、他方を加圧部材とし、定着部材と加圧部材の圧接部で被加熱部材である記録材を挟持搬送し、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことにより、電磁誘導加熱による定着を行うことができ、離型性を確保しながら定着時の加熱効率を向上することができる。また、トナー中のワックスによりさらに離型性が向上する。
さらに第19の手段では、第15〜第18のいずれか一つの手段の定着方法において、前記定着部材と加圧部材のうち、少なくとも定着部材に離型剤を塗布することにより、離型剤により、トナーとトナーに接する定着部材の離型性がさらに向上する。
【0040】
第20の手段では、周面が周回するように支持された定着部材と、前記定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材に前記加圧部材が圧接される領域を通過する記録材を加熱及び加圧して、該記録材上に担持された未定着画像を定着する定着装置において、前記定着部材として第11の手段の定着部材を用いたことにより、離型性を確保しながら定着時の加熱効率を向上することができる。
また、第21の手段では、第20の手段の定着装置において、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことにより、トナー中のワックスによりさらに離型性が向上する。
【0041】
第22の手段では、定着装置であって、第12の手段の加熱装置を備え、ワックス含有のトナーを用いてシート状の被加熱部材に形成された画像の定着を行うことにより、電磁誘導加熱による定着を行うことができ、離型性を確保しながら定着時の加熱効率を向上することができる。また、トナー中のワックスによりさらに離型性が向上する。
また、第23の手段では、定着装置であって、第13または第14の手段の加熱装置を備え、2つの回転体の一方を定着部材、他方を加圧部材とし、定着部材と加圧部材の圧接部で被加熱部材である記録材を挟持搬送し、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことにより、電磁誘導加熱による定着を行うことができ、離型性を確保しながら定着時の加熱効率を向上することができる。また、トナー中のワックスによりさらに離型性が向上する。
さらに第24の手段では、第20〜第23のいずれか一つの手段の定着装置において、前記定着部材と前記加圧部材のうち、少なくとも定着部材に離型剤を塗布することにより、離型剤により、トナーとトナーに接する定着部材の離型性がさらに向上する。
なお、以上の本発明に係る加熱部材(定着部材)では、表層側に渦電流を発生させて発熱しうる弾性発熱層を有しているので、加熱時の立ち上げ時間を非常に短くすることができる。従って、この加熱部材(定着部材)を用いることにより、加熱時の立ち上げ時間が非常に短い加熱装置や定着装置を実現することができる。
【0042】
第25の手段では、シート状の記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材にトナー画像を定着させる定着部を備えた画像形成装置において、前記定着部に、高離型性の熱伝導層と該熱伝導層よりも基材側にあり渦電流を発生させて発熱しうる導電層(弾性発熱層)を有する表層を持つ加熱部材(定着部材)を利用した定着方法を用いたことにより、高耐久で信頼性の高い、エネルギー効率のよい高画質な画像形成装置を実現することができる。
また、第26の手段では、シート状の記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材にトナー画像を定着させる定着部を備えた画像形成装置において、前記定着部に、高離型性の熱伝導層と該熱伝導層よりも基材側にあり渦電流を発生させて発熱しうる導電層(弾性発熱層)を有する表層を持つ加熱部材(定着部材)を利用した定着装置を備えたことにより、高耐久で信頼性の高い、エネルギー効率のよい高画質な画像形成装置を実現することができる。
【0043】
[実施形態]
以下、本発明にかかる加熱部材、定着部材、加熱装置、定着装置および画像形成装置の具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0044】
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。この画像形成装置は、周知の電子写真方式の画像形成プロセスと静電転写プロセスを実行することによって、シート状の被加熱部材(記録用紙、OHPシート、葉書等の記録材)に画像を得ることができるものであって、像担持体として円筒状に形成された光導電性の感光体1を有している。この感光体1の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ2、現像手段としての現像装置4、転写手段としての転写ローラ5、クリーニング手段としてのクリーニング装置7、除電手段としての除電装置8が配備されている。また、それらの他に、画像形成装置は、光走査装置3と定着装置6を備えている。なお、帯電手段としては、帯電ローラ2の他、コロナチャージャ等を用いることができる。また、転写手段としては、転写ローラ5の他、転写チャージャ、転写ベルト等を用いることができる。
【0045】
光走査装置3は、半導体レーザ(LD)等の光源と光偏向器と結像光学系などからなり、帯電ローラ2と現像装置4との間の感光体面で光走査による露光を行い、画像データに対応した静電潜像を形成する。また、光走査装置3に代えて、発光ダイオード(LED)アレイや、液晶シャッターアレイ等を利用した光書込み装置を用いても良い。
【0046】
現像装置4は、トナーからなる一成分現像剤、あるいはトナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤を用い、該現像剤中のトナーで感光体1上の静電潜像を現像する。
また、クリーニング装置7は、クリーニングブレードやクリーニングブラシ等で感光体1上の残留トナーや紙粉等を清掃する。
【0047】
定着装置6は、発熱手段を有するローラ状の定着部材(定着ローラ)11と、その定着ローラ11に圧接するローラ状の加圧部材(加圧ローラ)13とからなり、定着ローラ11と加圧ローラ13との圧接部でシート状の被加熱部材(記録用紙等の記録材)Sを挟持搬送し、被加熱部材上の未定着画像を定着する。発熱手段としては、定着ローラ11自体を発熱手段にして電磁誘導加熱方式で発熱させる方式である。
【0048】
図1に示す画像形成装置で画像形成を実行する際は、感光体1が図1の時計回りに回転され、その表面が帯電ローラ2により均一に帯電される。そして、図示しない原稿読取部で読み取られた原稿の画像データ、あるいは図示しない外部機器(パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等)から入力される画像データ、あるいは通信回線を通して送信されて来た画像データに応じて、光走査装置3の駆動が制御され、光走査装置3の露光により感光体1の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置4のトナーにより反転現像され、感光体1の表面にトナー画像が形成される。このトナー画像は、感光体1のトナー画像が転写位置へ移動するのとタイミングを合わせて図示されない給紙機構により転写部へ送り込まれたシート状の被加熱部材(例えば記録用紙)Sと重ね合わされ、転写ローラ5の作用により、記録用紙Sへ静電転写される。トナー画像を転写された記録用紙Sは、定着装置6でトナー画像を定着された後、装置外部の図示しない排紙部へ排出される。また、トナー画像を記録用紙Sに転写した後の感光体1の表面は、クリーニング装置7により残留トナーや紙粉などが除去され、さらに除電装置8により除電される。
【0049】
次に図1に示す画像形成装置に用いられる定着装置6の構成例について説明する。
図2は本発明に係る加熱部材を用いた電磁誘導加熱方式の加熱装置からなる定着装置6Aの一実施形態を示す概略構成図である。また、図2では、2つの回転体(例えば定着ローラ11Aと加圧ローラ13)と、加熱手段(磁束生成コイル)12との位置関係も示している。図2において、符号11Aは加熱部材からなる定着ローラ、13は加圧ローラ、21は磁束生成コイル12のコア、30は磁束生成コイル12のリッツ線、31、32はコア21の突出部22、23と定着ローラ11Aの外側表面との隙間を示している。図2では、分かりやすいように各部の寸法を実際とは変えて描いてある。また、リッツ線30の断面は、その多くを省略して8個の断面のみを描いてある。
【0050】
磁束生成コイル12は、定着ローラ11Aに対して図2に示したような位置に配設されている。すなわち、磁束生成コイル12は、そのコア21がニップ部以外の定着ローラ11A外周面のうち、ニップ部入口に近い側を覆うようにして、コア21の突出部22、23を定着ローラ11Aに向けて配設されている。また、コア21の突出部22、23と定着ローラ11Aの外側表面との間隔が一定になるように配設されている。コア21の突出部22、23が定着ローラ11Aの外側表面に接近しているほど効率よく定着ローラ11Aを電磁誘導加熱することができる。本実施形態では、このコア21の突出部22、23と定着ローラ11A外側表面との隙間の距離を1mmにした。なお、リッツ線30と定着ローラ11A外周面との隙間の距離が、コア21の突出部22、23と定着ローラ外側表面との隙間の距離よりも長くなるように、コア21の突出部22、23の高さを確保している。そのようにしておくと、コア21の突出部22、23と定着ローラ外側表面とに隙間を確保できているときは、リッツ線30が定着ローラ11Aの外周面に触れることがないから、定着ローラ11Aを傷つけることはない。したがって、磁束生成コイル12と定着ローラ11Aとの接触を防止することが容易になる。
【0051】
本実施形態では、定着ローラ11Aの弾性発熱層(図示省略)は、定着ローラ11Aの表面側に形成されており、この弾性発熱層は、渦電流を発生させて発熱しうる導電層であり発熱手段として機能する。従って、磁束生成コイル12による電磁誘導により、定着ローラ11Aの弾性発熱層に渦電流を発生させて発熱させることができる。なお、弾性発熱層の構成に付いては後述する。
【0052】
図2の例では、加熱手段である磁束生成コイル12は、上側のローラ11Aに対してのみ設けられているが、下側のローラ13も定着ローラ11Aと同じく導電層を有する構成にして、加熱手段(磁束生成コイル)を設けることにより(すなわち、2つのローラに対してそれぞれ磁束生成コイルを設けることにより)、被加熱部材(記録用紙等)の両面から加熱することができる。
【0053】
図3はその一例を示すもので、2つの回転体11B,11Cの両方が加熱部材で構成された定着装置(加熱装置)6Bであり、両方の回転体に電磁誘導加熱方式の加熱手段(磁束生成コイル)12を有している。すなわち、図3の構成では、2つの回転体11B,11Cは定着ローラ(定着部材)であり、定着ローラ11B,11Cの弾性発熱層43は、定着ローラ11A,11Cに形成されている。この弾性発熱層43は、渦電流を発生させて発熱しうる導電層であり発熱手段として機能する。従って、磁束生成コイル12による電磁誘導により、2つの定着ローラ11B,11Cの弾性発熱層43に渦電流を発生させて発熱させることができ、記録用紙Sの両面に形成された未定着トナー像TIを効率良く加熱して定着することができる。また、図3に示す構成では、2つの定着ローラ11B,11Cは、芯金(基材)17と弾性発熱層43の間にシリコーンゴム等からなる弾性断熱層18が設けられており、弾性発熱層43で発熱した熱が芯金(基材)17側に逃げないようになっている。従って、加熱時の立ち上がりが非常に早く、かつ加熱効率が大幅に向上されている。なお、弾性発熱層43の構造に付いては後述する。
【0054】
次に図4は本発明に係る加熱部材を用いた電磁誘導加熱方式の加熱装置からなる定着装置の別の実施形態を示す概略構成図である。この定着装置6Cの基本的な構成は図2と同様であるが、定着ローラ11Aと加圧ローラ13の表面にそれぞれ離型剤(例えばシリコーンオイル)を塗布する塗布部材19A,19Bが設けられている。この定着装置6Cでは、塗布部材19A,19Bによりローラ表面に離型剤が塗布されるので、ローラ表面の離型性を向上することができる。
【0055】
なお、図4では、定着ローラ11Aと加圧ローラ13の両方に離型剤塗布部材19A,19Bを設けているが、少なくとも定着ローラ11A側に設けられていれば良い。また、このような離型剤塗布部材19A,19Bは、図2に示した定着装置6Aの定着ローラ11Aや、図3に示した定着装置6Bの定着ローラ11B,11Cにも設けることが好ましい。
【0056】
以上、本発明に係る画像形成装置と、その画像形成装置に用いられる定着装置(加熱装置)の構成例について説明したが、本発明に係る定着装置の定着部材(加熱部材)としては図示のローラ形状に限らず、無端ベルト状の定着部材(定着ベルト)でも良い。
【0057】
本発明は、以上に示したような定着装置(加熱装置)に用いられるローラ状または無端ベルト状の定着部材(加熱部材)の発熱層の構成に特徴を有するものであり、定着部材(加熱部材)の発熱層の弾性を保ちながら、加熱効率を向上するものである。以下、定着部材(加熱部材)の弾性発熱層43の構成について説明する。
【0058】
図5(a),(b)は加熱部材の弾性発熱層の構成例を示す図であり、弾性発熱層43の一部の垂直断面を示している。本発明に係る加熱部材は、図5(a)または(b)に示すように、弾性高分子材料40と金属(A)41、金属(B)42とからなる弾性発熱層43を有し、前記金属(A)41と、金属(B)42は相互に連結された構造を有している。
すなわち弾性発熱層43は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性高分子材料40としてのベースゴム中(ベースゴムを構成するゴム液中)に、金属材料として比較的溶融温度が低い(1)錫−銀系、(2)錫−銅系、(3)錫−亜鉛系、(4)錫−銀−銅系、(5)錫−銀−ビスマス系、(6)錫−銀−銅−ビスマス系、(7)錫系、(8)錫、(9)ビスマス系、(10)ビスマス、(11)銀−ビスマス系のいずれかの金属または合金のいずれか1種類以上の粒子41を混入し、分散し基材上に塗装もしくは成形する。なお、必要に応じて、さらに金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、チタンのいずれかの金属または合金のいずれか1種類以上の粒子42を混入して配合しても良い。なお、金属(A)41と金属(B)42は同じ種類の金属でも良い。また、金属は(A),(B)の2種類に限定されず何種類でも同時に使用できる。
【0059】
上記のように金属材料を硬化前のゴム液中に分散して作製した塗装液を加熱部材の基材17または弾性断熱層18上に塗装した後、ゴム液を硬化させる際もしくは硬化させた後に上記金属の少なくとも1種類の金属の溶融温度よりも高温に加熱する。このとき溶融した金属が相互に結合し、もしくは溶融していない金属同士を連結する。その後、室温まで冷却することにより、図5(a)または(b)に示したような弾性発熱層43の構造が形成される。
【0060】
なお、前記金属材料が、被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融する金属であることにより、加熱時に前記金属材料が溶融して変形するということが防止され、加熱効率を損ねることが防止できる。
【0061】
さらに、本発明における金属材料の少なくとも1種類を被加熱部材を加熱する時の温度より高い融点を有しかつ形状異方性を有するフィラーとして用いることにより(図5(a))、球状のような等方性のフィラーを用いる場合(図5(b))に比べて電気的な連続性を向上させることができ、弾性発熱層43の電気抵抗をより低抵抗化できる。
本発明における形状異方性を有するフィラーとしては、アスペクト比(平均長径/平均短径)が10以上で平均長径が表層の厚さ以下のフィラーを使用する。本発明の形状異方性を有するフィラーとしては、例えば、板状もしくは鱗片状のもの:金属フレーク等、繊維状のもの:金属繊維等、針状のもの:金属ウィスカ等、のものが使用できる。また、上記以外のタイプの形状異方性を有するフィラーも適宜使用可能である。
【0062】
本発明では前記弾性発熱層43にシリコーンオイルを塗布することによりトナーに対する離型性を確保でき離型層としても使用できるが、弾性発熱層43がシリコーンオイルにより膨潤する等して耐久性を損ねるような場合には、図3に示す例のように、前記弾性発熱層43よりも外側に離型層15を設けることが望ましい。
また、ワックス含有トナーを使用してオイルレス定着を行う場合には、表面の離型性を確保するために、離型層15は数十μmのフッ素系樹脂層(例えばテフロン(登録商標)樹脂層等)で形成してもよいが、フルカラー画像形成装置等、高画質が要求される場合は鏡面シリコーンゴムにシリコーンオイルを供給して離型性を得るのが一般的である。例えば離型層15に、シリコーンゴムを用いる場合は、その厚さは50μm以上500μm以下であることが望ましい。50μm程度以下であれば、トナー像の拡大等の画質劣化が発生し、また、十分なオイル(離型剤)保持能力が確保できず、一方、500μmを超えるとオイル膨潤による通紙性の悪化や、熱伝導性の低下を招くからである。
【0063】
一方、離型層15をフッ素系樹脂層とした場合は、その厚さは10μm以上100μm以下であることが望ましい。10μmより薄いと磨耗や傷を生じやすく、また、チューブタイプではシワが発生し製造が困難となるからである。また、100μmより厚いと表面の硬度が上がり、トナーによる記録紙表面の凹凸への追従性が低下し、凸部ではつぶれが、凹部では定着不良が発生しやすくなるからである。また、フッ素系樹脂は、材質の離型性に優れるため、これを離型層15に用いた場合には、ワックス含有トナーを使用して離型剤の塗布機構が不要なオイルレス定着を行うため、構成が簡単となり、低コスト化やイージーメンテナンスが可能となり、オイルスジの発生等の塗布に関する不具合点も発生しないこととなる。さらに、フッ素系樹脂は、低摩擦、高強度という特性から、ローラに接触する温度検出器や分離爪等の摺擦に対しても耐久性が高くなる。
【0064】
また、離型層15をフッ素ゴム層とした場合は、その厚さは50μm以上500μm以下であることが望ましい。50μm程度以下であれば、トナー像の拡大等の画質劣化が発生し、また、十分なオイル(離型剤)保持能力が確保できず、一方、500μmを超えるとオイル膨潤による通紙性の悪化や、熱伝導性の低下が発生するからである。離型層にフッ素ゴムを用いた場合は、耐磨耗性の観点から強度が確保できることとなる。
【0065】
ところで、本発明の加熱部材(定着部材)11A,11B,11Cを図2〜4に示したような電磁誘導加熱方式の定着装置6A,6B,6Cに用いる場合は、弾性発熱層43で発生した熱が基材17側に逃げないように、弾性発熱層43と基材17の間に弾性断熱層18を設けると良い。図6はその一例を示しており、加熱部材(定着部材)の一部の垂直断面を示す図である。図6の例は、基材17側の表面にシリコーンゴム等からなる弾性断熱層18を設け、その上に図5(a)または(b)と同様の構成の弾性発熱層43を形成し、さらにその上に離型層15を形成したものである。
【0066】
図6の構成の場合、弾性発熱層43に外部から高周波電磁界を印加すると、弾性発熱層43に渦電流が発生し発熱するが、このとき、弾性発熱層43はシリコーンゴム等からなる弾性断熱層18で断熱されているため、素早い温度上昇を行うことができる。また、弾性発熱層43の横方向は金属フィラー等により熱的にも連続しているため、一部の熱低下が発生しても素早く均一化される。従って、立ち上がりが早く、熱の均一化も良く、加熱効率の良い加熱部材(定着部材)を得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明に係る加熱部材(定着部材)とその作製方法の具体的な実施例について説明する。
まず図2に示すような構成の電磁誘導加熱方式の定着装置(加熱装置)6Aに用いられる加熱部材(定着部材)11Aの実施例について説明する。
【0068】
[実施例1]
厚み100μmの弾性発熱層を加熱部材である定着ローラの芯金17となる非磁性のステンレススチール(SUS)管上に配置し、さらにその上に厚み50μmの離型層15を設けて定着ローラ11Aとした。
弾性発熱層は、液状シリコーンゴム中に、金属材料として平均粒径30μmの錫の鱗片状フィラー粒子を80wt%分散し、芯金上に塗装し、ゴム液を硬化させる際に250℃に加熱し、その後、室温まで冷却して形成した。
離型層15は、厚み数十μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)チューブを被覆して形成した。
【0069】
この定着ローラ11Aを(株)リコー製の画像形成装置MF4570の定着部に用い、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成の電磁誘導加熱用のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通して定着を繰返した後、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。また、このとき使用した芯金(基材)17は、定着部の管の厚みが1.5mmと厚く、通常のハロゲンヒータによる内部加熱では、ローラの表面温度が180℃になるのに50秒必要であるが、本実施例の電磁誘導加熱式の定着ローラ11Aでは、30秒程度であった(両方とも定格出力800Wの場合)。
【0070】
[実施例2]
加熱部材である定着ローラ11Aの断面を図6と同様に構成し、厚み100μmの弾性発熱層43を定着ローラの芯金17となる非磁性のSUS管上の2mmの弾性断熱層18の上に配置し、さらにその上に、図6の如く厚み50μmの離型層15を設けて定着ローラ11Aとした。
本実施例では、断熱性の高い弾性断熱層18を設けることにより、弾性発熱層43で発生された熱が芯金側へ伝達していくことを防止している。この弾性断熱層18はシリコーンゴムで形成した。
【0071】
弾性発熱層43は、液状シリコーンゴム中に、金属材料として平均粒径30μmの錫の鱗片状フィラー粒子を40wt%および平均粒径10μmの銀の鱗片状フィラー粒子を30wt%分散し、芯金上に塗装し、ゴム液を硬化させた後に250℃に加熱し、その後、室温まで冷却して形成した。
離型層15は、厚み50μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)チューブを被覆して形成した。
【0072】
この定着ローラを(株)リコー製の画像形成装置MF4570の定着部に用い、図1と同様の構成の画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成の電磁誘導加熱用のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚の黒ベタ画像を通して定着を繰返した後、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。また、このとき使用した芯金17は、定着部の管の厚みが1.5mmと厚く、通常のハロゲンヒータによる内部加熱では、ローラの表面温度が180℃になるのに50秒必要であるが、本実施例の電磁誘導加熱式の定着ローラ11Aでは、15秒程度であった(両方とも定格出力800Wの場合)。
【0073】
[実施例3]
加熱部材である定着ローラ11Aの断面を図7のように構成し、厚み100μmの弾性発熱層43を定着ローラの芯金17となる非磁性のSUS管上の2mmの弾性断熱層18の上に配置し、さらにその上に図7の如く厚み20μmの第2の弾性層44と、厚み50μmの離型層15を設けて定着ローラとした。
本実施例では、定着ローラ(加熱部材)11Aの表面がより適度に弾性変形することができるため、定着ローラ(加熱部材)11Aと加圧部材13との間で挟圧して搬送される被加熱材上に、例えばトナー像が形成されている場合、被加熱材の表面に凹凸があっても、凹凸面に定着ローラ(加熱部材)11Aの表面が十分に追従し、加熱むらが生じない。したがって、トナーが十分溶着し、剥離することがない良好な品質の定着画像を得ることができる定着温度範囲である「非オフセット域」を広くとることができる。
【0074】
本実施例では、弾性断熱層18はシリコーンゴムで形成した。また、弾性発熱層43は、液状シリコーンゴム中に、金属材料として平均粒径30μmの錫の粒状フィラー粒子を40wt%および平均粒径10μmの銀の鱗片状フィラー粒子を30wt%分散し、芯金上に塗装し、ゴム液を硬化させた後に250℃に加熱し、その後、室温まで冷却して形成した。さらに第2の弾性層44はシリコーンゴムで形成した。また、離型層15は、50μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)チューブを被覆して形成した。
【0075】
この定着ローラ11Aを市販のカラー複写機の定着部に用い、シリコンオイルレスの構成とし、画像形成部を用いて作成した未定着トナー画像を、図2に示すような構成の電磁誘導加熱用のテスト機(定着装置)に通して定着した。10000枚のカラーのベタ画像を通し、ローラ表面のトナーの付着状態を観察した結果、特に大きな付着は観察されず、通常のものと何ら変わりがなかった。また、このとき使用した芯金(基材)17は、定着部の管の厚みが1.5mmと厚く、通常のハロゲンヒータによる内部加熱では、ローラの表面温度が180℃になるのに50秒必要であるが、本実施例の電磁誘導加熱式の定着ローラ11Aでは20秒程度であった(両方とも定格出力800Wの場合)。また、本実施例の構成では、最表面に発熱層があるためモノクロ機並みの立ち上げ時間となっている。
【0076】
[実施例4]
以上の実施例1〜3では、図2に示す構成の定着装置6Aに定着ローラ11Aを装着してテストした例を示したが、例えば図3に示すような構成の加熱手段12を2つ備えた定着装置6Bにも同様に適用でき、上下の2つのローラ11B、11Cに実施例2に係る定着ローラを用いることにより、記録用紙Sの両面を同時に加熱できるようになる。従って、この構成では、記録用紙Sの両面から効率良く加熱できるようになり、さらには、記録用紙Sの両面に付いた未定着トナー像T1を同時に定着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明に係る加熱部材(定着部材)では、加熱時の立ち上げ時間を非常に短くすることができる。従って、本発明の加熱部材を用いた加熱装置は、複写機、プリンタ、プロッタ、ファクシミリ、印刷装置、あるいはこれらの機能を組み合わせた複合機などの画像形成装置の定着装置として好適に利用することができ、エネルギー効率のよい画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態を示す画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す定着装置の概略断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態を示す定着装置の概略断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態を示す定着装置の概略断面図である。
【図5】本発明に係る加熱部材(定着部材)の弾性発熱層の構成例を示す図であり、弾性発熱層の一部の表面に垂直な方向の断面を示す図である。
【図6】本発明に係る加熱部材(定着部材)の構成例を示す図であり、表面に垂直な方向の断面を示す図である。
【図7】本発明に係る加熱部材(定着部材)の別の構成例を示す図であり、表面に垂直な方向の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1:感光体
2:帯電ローラ
3:光走査装置
4:現像装置
5:転写ローラ
6,6A,6B,6C:定着装置(加熱装置)
7:クリーニング装置
8:除電装置
11,11A,11B,11C:加熱部材(定着部材(定着ローラ))
12:磁束生成コイル(加熱手段)
13:加圧ローラ(加圧部材)
15:離型層
17:基材(芯金)
18:弾性断熱層
19A,19B:離型剤塗布部材
21:コア
30:リッツ線
40:弾性高分子材料
41:金属(A)
42:金属(B)
43:弾性発熱層
44:第2の弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱部材に接触し該被加熱部材を加熱する加熱部材において、
弾性高分子材料と金属とからなる弾性発熱層を有し、前記金属は相互に連結された構造を有し、前記弾性発熱層に渦電流を発生させて発熱させることを特徴とする加熱部材。
【請求項2】
請求項1記載の加熱部材において、
前記金属材料は、被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融することを特徴とする加熱部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の加熱部材において、
前記金属材料の少なくとも1種類は、前記被加熱部材を加熱する時の温度より高い温度で溶融し、かつ形状異方性を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の加熱部材において、
前記弾性発熱層よりも外側に設けられる離型層を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項5】
請求項4記載の加熱部材において、
前記離型層は、フッ素系樹脂層であることを特徴とする加熱部材。
【請求項6】
請求項4記載の加熱部材において、
前記離型層は、シリコーンゴム層であることを特徴とする加熱部材。
【請求項7】
請求項4記載の加熱部材において、
前記離型層は、フッ素ゴム層であることを特徴とする加熱部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の加熱部材において、
前記弾性発熱層の内側に設けられ、弾性高分子材料からなる弾性断熱層を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の加熱部材において、
前記弾性発熱層の外側に設けられ、弾性高分子材料からなる第2の弾性層を有することを特徴とする加熱部材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の加熱部材の弾性発熱層の作製方法において、
前記金属材料を硬化前のゴム液中に分散して作製した塗装液を基材または弾性断熱層上に塗装し、硬化させる際または硬化させた後に、少なくとも1種類の金属の溶融温度よりも高温に加熱することを特徴とする加熱部材の弾性発熱層の作製方法。
【請求項11】
被加熱部材であるシート状の記録材に接触して該記録材を加熱し、前記記録材上の未定着画像を定着する定着部材において、
請求項1〜9のいずれか一つに記載の加熱部材からなることを特徴とする定着部材。
【請求項12】
励磁手段と、該励磁手段によって弾性発熱層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段を有する加熱部材とを備え、前記加熱部材として請求項1〜9のいずれか一つに記載の加熱部材を用いたことを特徴とする加熱装置。
【請求項13】
シート状の被加熱部材を挟持搬送する2つの回転体と、該回転体を加熱する加熱手段とを備え、前記被加熱部材を加熱及び加圧する加熱装置において、
前記加熱手段は、励磁手段と、該励磁手段によって回転体に設けられた弾性発熱層に渦電流を発生させて発熱させる電磁誘導加熱による発熱手段から成り、2つの回転体のいずれか一方または両方に、請求項1〜9のいずれか一つに記載の加熱部材を用いたことを特徴とする加熱装置。
【請求項14】
請求項13記載の加熱装置において、
前記加熱手段を2つ備え、2つの回転体が2つの加熱手段によりそれぞれ加熱されることを特徴とする加熱装置。
【請求項15】
周面が周回するように支持された定着部材と、前記定着部材に圧接される加圧部材とを用い、前記定着部材に前記加圧部材が圧接される領域を通過する記録材を加熱及び加圧して、該記録材上に担持された未定着画像を定着する定着方法において、
前記定着部材として請求項11に記載の定着部材を用いたことを特徴とする定着方法。
【請求項16】
請求項15記載の定着方法において、
ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする定着方法。
【請求項17】
請求項12記載の加熱装置を用い、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする定着方法。
【請求項18】
請求項13または14記載の加熱装置を用い、2つの回転体の一方を定着部材、他方を加圧部材とし、定着部材と加圧部材の圧接部で被加熱部材である記録材を挟持搬送し、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする定着方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか一つに記載の定着方法において、
前記定着部材と加圧部材のうち、少なくとも定着部材に離型剤を塗布することを特徴とする定着方法。
【請求項20】
周面が周回するように支持された定着部材と、前記定着部材に圧接される加圧部材とを有し、前記定着部材に前記加圧部材が圧接される領域を通過する記録材を加熱及び加圧して、該記録材上に担持された未定着画像を定着する定着装置において、
前記定着部材として請求項11に記載の定着部材を用いたことを特徴とする定着装置。
【請求項21】
請求項20記載の定着装置において、
ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする定着装置。
【請求項22】
請求項12記載の加熱装置を備え、ワックス含有のトナーを用いてシート状の被加熱部材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする定着装置。
【請求項23】
請求項13または14記載の加熱装置を備え、2つの回転体の一方を定着部材、他方を加圧部材とし、定着部材と加圧部材の圧接部で被加熱部材である記録材を挟持搬送し、ワックス含有のトナーを用いて記録材に形成された画像の定着を行うことを特徴とする定着装置。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか一つに記載の定着装置において、
前記定着部材と前記加圧部材のうち、少なくとも定着部材に離型剤を塗布することを特徴とする定着装置。
【請求項25】
シート状の記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材にトナー画像を定着させる定着部を備えた画像形成装置において、
前記定着部に、請求項15〜19のいずれか一つに記載の定着方法を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項26】
シート状の記録材上にトナー画像を形成する画像形成部と、前記記録材にトナー画像を定着させる定着部を備えた画像形成装置において、
前記定着部に、請求項20〜24のいずれか一つに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−294555(P2006−294555A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117102(P2005−117102)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】