説明

加飾シートの製造方法及び樹脂成形品の製造方法

【課題】ドクターブレードを使用して、複数の色調を有し、高級感の高い柄模様等を有するSMC成形等に適用される加飾シートの製造方法を実現する。
【解決手段】上フィルム3の搬送路に沿って、加飾層用樹脂4を一定量供給するためのドクターブレードを複数備え、そのうちの上流側のドクターブレード6の先端部に切り欠き8が形成されて櫛状になっており、この切り欠き8の高さは、下流側のドクターブレード7と上フィルム1の間隙9よりも小さく、上流側で上フィルムの表面に帯状の模様用の加飾層用樹脂10を塗布し、下流側で地となるベース用の加飾層用樹脂11を塗布し、一対の含浸ローラ2で下フィルム1とともに加圧して、加飾シート5を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートの製造方法及び樹脂成形品の製造方法に関し、例えば、浴室の床板、キッチンのカウンタ等に用いられる意匠性が高い人工大理石等のSMCシートを製造するSMC成形(シートモールディングコンパウンド:Sheet Molding Compound)等の際に、SMCシート(成形材料)の表面に加飾層を形成するための加飾シートの製造方法及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加飾シートを成形する際に、樹脂を上下フィルムに挟んで含浸ローラで圧延させ、樹脂をシート状に成型するドクターブレード法がある。このような加飾シートの成形において、樹脂を一定の厚みで積層するための手段として、通常、ドクターブレードを使用するドクターブレード法がある。
【0003】
ドクターブレードで加飾シートを製造する加飾シートの製造方法、及び成形材料と加飾シートをプレス成形して、成形品の表面に加飾層を形成する技術として、本願出願人はすでに特願2009−282760を出願している。
【0004】
ところで、ドクターブレード法では、色調を複数にして、高級感の高い柄模様(例えば、オニックス調)等を付与する成形が困難である。そこで、色調を複数有する人造大理石を製造するために、注型用金型を傾斜させて色調の異なる樹脂を順次注入していく製造方法が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、シート状の支持体表面に、ドクターブレードを使用し樹脂を多層構造として付与する製造方法として、多層フレキソ印刷版の製造方法が知られている(特許文献2参照)。この製造方法は、一枚の印刷版において、多層構造かつ印刷表面にネガフィルムを用いて、印刷版表面において画像に応じて組成の異なる樹脂を配置可能としている。
【0006】
ところで、ドクターブレードは、樹脂の積層厚さを一定にするためにSMC成形等で使用されるが、紙の製造においてカレンダーロールの表面に付着した好ましくない堆積物や粒子等を取り除く手段としても使用されている(特許文献3参照)。この特許文献3に記載されたドクターブレードは、ロールの周面に対する縁部に、複数の鋸歯を設けることで、ロール表面から汚れを効果的に取り除き、またロール表面を損傷しにくいようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−062840号公報
【特許文献2】特開2005−326722号公報
【特許文献3】特開2005−533935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ドクターブレード法では、上記のとおり、色調を複数にして、高級感の高い柄模様等の成形が困難である。上記特許文献1記載の発明によれば、色調を複数有する人造大理石の製造が可能であるが、注型用金型を傾斜させて色調の異なる樹脂を順次注入していく方法であるから、ドクターブレード法のようにSMCシートを連続的に量産する方法としては向いていないものと考えられる。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決することを目的とするものであり、ドクターブレード法を使用しても、色調を複数にして、高級感の高い柄模様等の加飾層を有するSMCシートを製造可能とするSMC成形等に適用される加飾シートの製造方法を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、フィルムとフィルムの間に樹脂を充填し製造する加飾シートの製造方法であって、樹脂を一定量供給するためのドクターブレードを複数備え、そのうち1つのドクターブレードの先端部が櫛状になっていることを特徴とする加飾シートの製造方法を提供する。
【0011】
上記櫛状になっている先端部の切り欠き高さは、もう一方のドクターブレードとフィルムの間隙よりも小さいことが好ましい。
【0012】
上記ドクターブレードの先端部が櫛状となっているドクターブレードが、フィルムの送り方向に直交する方向に揺動するようにしてもよい。
【0013】
成形材料と加飾シートをプレス成形して製造される樹脂成形品の製造方法において、樹脂成形品の表面に、上記加飾シートの製造方法で製造された加飾シートにより加飾層を形成する樹脂成形品の製造方法に適用してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る加飾シートの製造方法によれば、ドクターブレードを複数配置し、そのうちの一部のドクターブレードをその先端部に複数の切り込みを設け櫛状に構成としたので、簡単な構造で、容易に色調を複数にして、高級感の高い柄模様等を有する加飾シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1を模式的に説明する図であり、(a)は断面図であり、(b)は斜視図である。
【図2】実施例1のドクターブレードを説明する図であり、(a)は上流側及び下流側のドクターブレードを説明する図であり、(b)は上流側のドクターブレードを説明する図であり、(c)は上流側から見た上流側及び下流側のドクターブレードを説明する図である。
【図3】実施例1をより詳細に説明する図であり、(a)は上流側及び下流側のドクターブレードを備えた樹脂受け筺体の断面図であり、(b)は下流側のドクターブレードを備えた樹脂受け筺体の斜視図を示す図である。
【図4】本発明の実施例2を模式的に説明する平面図であり、(a)は揺動機構を説明する図であり、(b)は作用を説明する図である。
【図5】実施例1及び実施例2による加飾シートの製造過程を説明するための図であり、(a)は上フィルムに模様用の加飾層用樹脂を塗布した状態を示し、(b)はさらにベース用の加飾層用樹脂を塗布した状態を示し、(c)はさらに下フィルムと重ね合わせ含浸ロールでプレスして形成された加飾シートを示し、(d)は実施例1により製造された加飾シートの斜視図であり、(e)は実施例2により製造された加飾シートの斜視図である。
【図6】本発明の実施例3を模式的に説明する図である。
【図7】実施例3による加飾シートの製造過程を説明するための図であり、(a)は上フィルムに模様用の加飾層用樹脂を塗布した状態を示し、(b)はさらにベース用の加飾層用樹脂を塗布した状態を示し、(c)はさらに下フィルム及びガラスマットと重ね合わせ含浸ロールでプレスして形成された加飾シートを示し、(d)は実施例3により製造された加飾シートの斜視図であり、(e)は実施例3において上流側のドクターブレードを揺動して製造された加飾シートの斜視図を示す。
【図8】(a)、(b)は本発明の実施例4を模式的に説明する図であり、(a)は成形型内に、加飾シートと成形材料を積層した状態を示し、(b)は実施例4で製造された成形品を説明する図である。(c)、(d)は本発明の実施例5を模式的に説明する図であり、(c)は成形型内に、加飾シート、滲み出し防止シート及び成形材料を積層した状態を示し、(b)は実施例4で製造された成形品を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る加飾シートの製造方法及び樹脂成形品の製造方法を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明に係る加飾シートの製造方法の実施例1について図1〜3及び図5によって説明する。本発明の加飾シートの製造方法では、図1(a)、(b)に示すように、保護フィルムであるポリプロピレンなどの下フィルム1が、水平な状態で一対の含浸ローラ2間に送給される。
【0018】
同じく保護フィルムであるポリプロピレンなどの上フィルム3は、下フィルム1とは反対方向上方から下方に傾斜するように一対の含浸ローラ2に向けて送給され、その上面に加飾層用樹脂4が塗布され、上部含浸ローラ2で反転され、下フィルム1に重ね合わされて、一対の含浸ローラ2間に送給される。加飾層用樹脂4としては、加飾用BMC(Bulk Molding Compound)が使用され、例えばポリエステル樹脂が使用される。
【0019】
そして、下フィルム1と上フィルム3との間に加飾層用樹脂4を挟んだ状態で、一対の含浸ローラ2間でプレスされて一体となって、加飾シート5が製造される。
【0020】
以上のとおりの加飾シートの製造方法において、本発明では、加飾層用樹脂を一定量供給するためのドクターブレードを上フィルムの送り方向に沿って直列に複数設け、上フィルム3の表面に加飾層用樹脂を複数層塗布するが、複数のドクターブレードのうちの一部(少なくとも1つ)のドクターブレードの先端部に、その長手方向(上フィルム3に直交する横幅方向)に沿って間隔をおいて切り欠きを複数設けて櫛状にし、上フィルム3の表面に模様用の加飾層用樹脂を塗布する点を特徴とする。
【0021】
なお、本発明におけるドクターブレードの先端部とは、上フィルム3と間隙を介して対向するドクターブレードの下端縁であり、上フィルム3に加飾層用樹脂の通過を一定量に規制して供給する部分である。
【0022】
上記のとおり、本発明ではドクターブレードを複数設けているが、この実施例1では、図1(a)、(b)に示すように、下方に向けて傾斜状に供給される上フィルム3に沿って、上流側のドクターブレード6と下流側のドクターブレード7の2つのドクターブレードを設けている。
【0023】
そして、上流側のドクターブレード6の先端部には、図1(b)、図2(a)〜(c)に示すように、ドクターブレード6の長手方向に沿って間隔をおいて切り欠き8を複数設けて、櫛状に構成している。下流側のドクターブレード7は、その先端部は、上流側のドクターブレード6の先端部のように切り欠き8が形成されてはおらず、直線状に形成されている。
【0024】
図2(a)、(c)に示すように、上流側のドクターブレード6の櫛状になっている先端部の切り欠き8の高さhは、下流側のドクターブレード7と上フィルム3の間隙9の寸法sよりも小さい。これにより、図5(b)に示すように、上流側のドクターブレード6で帯状に塗布された模様用の加飾層用樹脂10を埋め込む状態で、下流側のドクターブレード7で地となるベース用の加飾層用樹脂11を塗布して、2層から成る模様付きの加飾層用樹脂4を塗布することができる。
【0025】
上流側のドクターブレード6と下流側のドクターブレード7によってそれぞれ一定量の加飾層用樹脂が供給される箇所では、上フィルム3は、後記する上流側及び下流側の樹脂受け筺体15、16の下敷板17(図3参照)上で、それぞれ上下方向にぶれないように案内される。その結果、切り欠き8の上縁と上フィルム3の間隙の寸法t及び下流側のドクターブレード7と上フィルム3の間隙9の寸法sは、それぞれ一定に保たれる。
【0026】
なお、切り欠き8の上縁と上フィルム3の間隙の寸法tは、切り欠き8の高さhと略同じであり、上フィルム3の表面に塗布された模様用の加飾層用樹脂10の肉厚となる。下流側のドクターブレード7によって、地となるベース用の加飾層用樹脂11が上フィルム3及び模様用の加飾層用樹脂10の表面に塗布されるが、下流側のドクターブレード7と上フィルム3の間隙9の寸法sは、ベース用の加飾層用樹脂11の上フィルム3からの肉厚となる。
【0027】
図3(a)は、本発明に係る加飾シートの製造方法で使用する上流側のドクターブレード6を備えた上流側の樹脂受け筺体15及び下流側のドクターブレード7を備えた下流側の樹脂受け筺体16の構造を具体的に説明する図である。さらに、図3(b)は、下流側の樹脂受け筺体16を、その長手方向(上フィルム3が移動する方向と直交する方向)の一部で破断した状態の斜視図を示す図である。
【0028】
上流側の樹脂受け筺体15と下流側の樹脂受け筺体16は、上流側のドクターブレード6はその先端部に切欠き8を有し櫛状に形成されているのに対して、下流側のドクターブレード7は櫛状に形成されていない点では異なるが、その他の構成では同じ構成である。よって、上流側の樹脂受け筺体15と下流側の樹脂受け筺体16の構造については、図3(a)だけでなく、下流側の樹脂受け筺体16を示す図3(b)も参照して説明する。
【0029】
樹脂受け筺体15、16は、それぞれ下敷板17、左右の側板18、前板19及び後板20とから略長方形の筺状に構成されている。また、樹脂受け21は、左右の側板22、前板23及び後板24とから成り、略長方形の枠として構成されている。
【0030】
樹脂受け21の側板22の上端に前後方向に伸びる引っ掛け部25が形成されており、この引っ掛け部25を樹脂受け筺体15、16の前板19及び後板20上に載置して、樹脂受け21を樹脂受け筺体15、16内に装着することができる。
【0031】
上流側のドクターブレード6は、樹脂受け筺体15の前板23の上流側近傍に設けられている。上流側のドクターブレード6の櫛状の先端部は、下敷板17上で案内される上フィルム3に当接されるが、切り欠き8の部分だけフィルム3に対して高さhに対応する間隙tが形成される。
【0032】
下流側のドクターブレード7は、樹脂受け筺体16の前板23の上流側近傍に設けられており、ドクターブレード7の先端部と上フィルム3との間隙の寸法がsとなるように、下敷板17に対して隙間をあけてその上方に設けられている。より正確には、ドクターブレード7は、その先端部と下敷板17との間に、「間隙の寸法s」+「略上フィルム厚さp」の隙間が形成されるように、設けられている。
【0033】
上流側の樹脂受け筺体15において、模様用の加飾用樹脂10は樹脂受け21内に充填され、上フィルム3は、下敷板17上を案内されて搬送されるが、上流側のドクターブレード6の切り欠き8を通して上フィルム3上に、図5(a)に示すように、切欠きの高さhに対応した所定の膜厚t’(切り欠き8の上縁と上フィルム3の間隙の寸法tと略同じ)で上流側の加飾層用樹脂10を帯状に塗布することができる。
【0034】
下流側の樹脂受け筺体16において、ベース用の加飾用樹脂11は樹脂受け21内に充填され、上フィルム3は、下敷板17上を案内され搬送されるが、下流側のドクターブレード7は、上フィルム3との間隙9を通して上フィルム3及び帯状に塗布に塗布された模様用の加飾層用樹脂10の表面上に、図5(b)に示すように、ベース用の加飾層用樹脂11を平面状に均一に塗布することができる。
【0035】
この場合、上フィルム3の表面には、ベース用の加飾層用樹脂11を、間隙9の寸法sに略同じである所定の膜厚s’で塗布し、模様用の加飾層用樹脂10の表面には、図5(b)に示すように、s’−t’の膜厚で塗布する。
【実施例2】
【0036】
本発明の加飾シートの製造方法の実施例2について図4及び図5において説明する。この実施例2は、実施例1とほぼ同じ(共通の構成は同じ符号を記載)であるが、図4に示すように、上流側ドクターブレード6を上フィルム3の送り方向と直交する方向(横幅方向)に揺動(往復動)して、上流側において、模様用の加飾層用樹脂10を上フィルム3の表面に帯状且つ波状に塗布する点を特徴とする。
【0037】
この実施例2では、上流側の樹脂受け筺体15の後方に、揺動機構27を設け、上流側のドクターブレード6を上流側の樹脂受け筺体15ごと、上フィルム3に対して、その横幅方向に揺動可能な構成とした。
【0038】
揺動機構27は、図4(a)に示すように、モータ28により回転するねじ棒29と、このねじ棒29に螺合し上流側の樹脂受け筺体15の後部から突設された突出部30とを備えている。
【0039】
図4(b)に示すように、モータ28を繰り返し反転回動させることで、上流側のドクターブレード6は上流側の樹脂受け筺体15ごと、上フィルム3に対して揺動可能となる。なお、上フィルム3は、上流側の樹脂受け筺体15とともに揺動しないように、上流側の樹脂受け筺体15には、上フィルム3が通過するための横幅方向に隙間が余裕をもって形成されている。
【0040】
上流側のドクターブレード6は上流側の樹脂受け筺体15ごと揺動するのではなく、上流側の樹脂受け筺体15内で、上流側のドクターブレード6のみ揺動する構成としてもよい。この場合は、横幅方向左右に往復動した際に、ドクターブレード6の側端と樹脂受け21との間に隙間が形成されて樹脂を通過する可能性があるから、これを防止するために、上流側のドクターブレード6は、上フィルム3の横幅より横幅方向に大きな幅とする必要がある。
【0041】
先端部が櫛状となっている上流側のドクターブレード6を、上フィルム3の送り方向に直交する方向に揺動することにより、その切り欠き8を通して、上流側において、模様用の加飾層用樹脂10を帯状且つ波状に上フィルム3の表面に塗布する。これにより、図5(e)に示すように、ベース用の加飾層32の表面側に帯状且つ波状の模様を有する模様用の加飾層31を有する加飾シート5’を形成することができる。
【0042】
(実施例1、2の作用)
本発明に係る加飾シートの製造方法の実施例1、2の作用を以下説明する。図1及び図3(a)に示すように、下フィルム1は水平方向に送られて、一対の含浸ローラ2間に供給される。一方、上フィルム3は上方から下方に傾斜して上部含浸ローラ2の面に沿って反転し一対の含浸ローラ2間に供給される。
【0043】
上フィルム3が一対の含浸ローラ2間に供給されるまでの走行過程において、上フィルム3は、まず上流側の樹脂受け筺体15において、下敷板17上で案内されて通過する。その際、上流側のドクターブレード6の切り欠き8を通して、図5(a)に示すように、模様用の加飾層用樹脂10が上フィルム3に帯状に塗布される。
【0044】
特に実施例2の場合は、図4(a)に示す揺動機構27により、上流側の先端部が櫛状となっている上流側のドクターブレード6を、上フィルム3の送り方向に対して横幅方向に揺動することにより、図4(b)に示すように、切り欠き8を通して模様用の加飾層用樹脂10を上フィルム3の表面に波状に塗布される。
【0045】
次に、模様用の加飾層用樹脂10が塗布された上フィルム3は、下流側の樹脂受け筺体16を通過する。その際、下流側のドクターブレード7と上フィルム3の間隙9を通して、ベース用の加飾層用樹脂11が、上フィルム3及び模様用の加飾層用樹脂10の表面上に塗布される。上フィルム3の表面に対しては、図5(b)に示すように、膜厚s’でベース用の加飾層用樹脂11が塗布され、上流側の加飾層用樹脂10の表面には、図5(b)に示すように、s’−t’の膜厚で塗布される。
【0046】
このように模様用の加飾層用樹脂10及びベース用の加飾層用樹脂11から成る加飾層用樹脂4が塗布された上フィルム3は、一対の含浸ローラ2間に送給され、下フィルム1と重ね合わされ、プレスされる。この結果、実施例1の場合は、図5(c)、(d)に示すように、上フィルム3と下フィルム1の間に、ベース用の加飾層32と、その表面の模様用の加飾層31とから成る加飾層33が形成された加飾シート5が製造される。
【0047】
また、実施例2の場合は、図5(e)に示すような、上フィルム3と下フィルム1の間に、ベース用の加飾層32と、その表面の帯状且つ波状の模様の付された模様用の加飾層31’とから成る加飾層33’が形成された加飾シート5’が製造される。
【実施例3】
【0048】
本発明の加飾シートの製造方法の実施例3について図6によって説明する。この実施例3は、実施例1、2と略同じ(共通の構成は同じ符号を記載)であるが、下フィルム1の上にチョップドストランドマット40を積層したものを使用する点を特徴とする。チョップドストランドマット40は、ガラス繊維を極く細い糸状にしてシート状に形成されたものであり、例えば、市販されているチョップドストランドマット#300を利用する。
【0049】
実施例3の加飾シートの製造方法では、実施例1、2と同様に、図7(a)に示すように上フィルム3に、櫛状の先端部を有する上流側のドクターブレード6で模様用の加飾層用樹脂10を塗布し、さらに、図7(b)に示すように、下流側のドクターブレード7でベース用の加飾層用樹脂11を塗布して、これを一対の含浸ローラ2間に送給する。
【0050】
一方、下フィルム1の上にチョップドストランドマット40を積層したものを、ガラス基板41上に載置して、一対の含浸ローラ2間に向けて水平に搬送する。その搬送過程において、チョップドストランドマット40の表面に、スプレーによって液状のMMAモノマー(Methyl methacrylate:メタクリル酸メチル)43を噴霧する。さらに、チョップドストランドマット40上にサーフェイスマット44を供給して積層し、ガラスマット45を形成する。
【0051】
MMAモノマー43は、透明で揮発性の液であり、チョップドストランドマット40の表面に噴霧することにより、加飾用樹脂を塗布する際の濡れ性を改善し、塗布し易くする。
【0052】
ガラス基板41上のガラスマット45は、一対の含浸ローラ2の間に搬送される。そして、実施例2と同様に上流側ドクターブレードを横幅方向に揺動して塗布された模様用の加飾層用樹脂10と、さらにその上にベース用の加飾層用樹脂11が塗布された上フィルム3を含浸ローラ2に巻き込み、ガラスマット45と重ね合わせる。
【0053】
そして、上フィルム3の表面に塗布された模様用の加飾層用樹脂10とベース用の加飾層用樹脂11をサーフェイスマット44上に供給し、一対の含浸用ローラ2でプレスして、図7(c)、(d)に示すように、チョップドストランドマット40を積層したガラスマット45の表面上に加飾層33を一体に形成した加飾シート46を製造することができる。
【0054】
なお、上流側のドクターブレード6が揺動する場合は、チョップドストランドマット40を積層したガラスマット45の表面上に図7(e)に示すように、帯状且つ波状の模様を有する加飾層33’を一体に形成した加飾シート46’を製造することができる。
【実施例4】
【0055】
本発明の加飾シートの製造方法の実施例4について図8によって説明する。この実施例4は、実施例1又は実施例2と加飾シート自体の製造の技術内容については、略同じ(共通の構成は同じ符号を記載)であるが、別途用意した成形材料とともにプレス成形して、その成形材料の表面に加飾層を形成した樹脂成形品を製造することを特徴とする樹脂成形品の製造方法である。
【0056】
この実施例4の模様付き樹脂成形品の製造方法では、図8(a)に示すように、まず、成形型50上に、加飾シート5を載置する。この加飾シート5の製造方法は、実施例1又は実施例2に説明したとおりである。
【0057】
そして、加飾シート5の上に、成形材料51を積み重ねる。成形材料51としては、例えば、SMC(Sheet Molding Compound)材、BMC(Bulk Molding Compound)材などが使用されるが、本実施例では、SMC材52を使用する。
【0058】
SMC材52は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などにガラス繊維を混合して、シート状にした材料である。加飾シート5上に1枚のSMC材52を積み重ねてもよいが、通常は2、3枚積み重ねる。本実施例では図8(a)に示すように、成形材料51として2枚のSMC材52を積み重ねた例を示す。
【0059】
このように積層した加飾シート5及び成形材料51を、上方からプレスヘッド53によって、成形型50に向けて押圧しプレス成形する。これによって、加飾シート5を成形材料51の表面に一体に貼り付けて、図8(b)に示すように、樹脂成形品54の表面に加飾層33を備えたシート状の模様付き樹脂成形品55を形成する。
【0060】
なお、実施例4において、成形型50の内面に凹凸型を設けておき、加飾層33の表面に所望の凹凸模様を形成してもよい。
【実施例5】
【0061】
図8(c)、(d)は、本発明の実施例5を説明する図である。実施例4で説明した製造方法において、プレス成形の際に加熱され溶融し流動化した成形材料51(SMC材52)が、加飾シート5内に滲み出して加飾シート5の表面を破って破損などが生じたり、或いはその破れた表面から成形材料51が表面に表出したりしてしまう滲み出しの問題が生じることがある。
【0062】
実施例5は、実施例4とほぼ同じであるが、上記滲み出しの問題を防止するために、加飾シート5の上に、滲み出し防止シートとしてセピオライト紙60を積み重ねてから、その上に成形材料51(2枚のSMC材52)を積み重ねた製造方法を示す。セピオライト紙60は、無機鉱物のセピオライトとガラス繊維にアクリルバインダーを含浸させて結合して形成された材料である。
【0063】
このように積層した加飾シート5、セピオライト紙60及び成形材料51を、上方からプレスヘッド53によって、成形型50に向けて押圧しプレス成形する。これによって、加飾シート5を成形材料51の表面に一体に貼り付けて、図8(d)に示すように、樹脂成形品61の表面に加飾層33を備えたシート状の模様付き樹脂成形品62を製造することができる。なお、この場合も、実施例4と同様に、成形型50の内面に凹凸型を設けて、加飾層33の表面に所望の凹凸模様を形成してもよい。
【0064】
以上、本発明に係る加飾シートの製造方法及び樹脂成形品の製造方法を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る加飾シートの製造方法及び樹脂成形品の製造方法は、上記のような内容であるから、例えば、浴室の床板、キッチンのカウンタ等に用いられる意匠性が高い人工大理石等のSMCシートを製造するSMC成形において適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
(実施例1、2)
1 下フィルム
2 含浸ローラ
3 上フィルム
4 加飾層用樹脂
5、5’ 加飾シート
6 上流側のドクターブレード
7 下流側のドクターブレード
8 切り欠き
9 下流側のドクターブレードと上フィルムの間隙
10 模様用の加飾層用樹脂
11 ベース用の加飾層用樹脂
15 上流側の樹脂受け筺体
16 下流側の樹脂受け筺体
17 下敷板
18 樹脂受け筺体の左右の側板
19 樹脂受け筺体の前板
20 樹脂受け筺体の後板
21 樹脂受け
22 樹脂受けの左右の側板
23 樹脂受けの前板
24 樹脂受けの後板
25 引っ掛け部
27 揺動機構
28 モータ
29 回転するねじ棒
30 上流側の樹脂受け筺体から突設された突出部
31、31’ 模様用の加飾層
32 ベース用の加飾層
33、33’ 加飾層
(実施例3)
40 チョップドストランドマット
41 ガラス基板
43 MMAモノマー
44 サーフェイスマット
45 ガラスマット
46、46’ 加飾シート
(実施例4、5)
50 成形型
51 成形材料
52 SMC材
53 プレスヘッド
54、61 樹脂成形品
55、62 模様付き樹脂成形品
60 セピオライト紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムとフィルムの間に樹脂を充填し製造する加飾シートの製造方法であって、樹脂を一定量供給するためのドクターブレードを複数備え、そのうち1つのドクターブレードの先端部が櫛状になっていることを特徴とする加飾シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加飾シートの製造方法であって、上記櫛状になっている先端部の切り欠き高さは、もう一方のドクターブレードとフィルムの間隙よりも小さいことを特徴とする加飾シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加飾シートの製造方法であって、上記ドクターブレードの先端部が櫛状となっているドクターブレードが、フィルムの送り方向に直交する方向に揺動することを特徴とする加飾シートの製造方法。
【請求項4】
成形材料と加飾シートをプレス成形して製造される樹脂成形品の製造方法であって、樹脂成形品の表面に、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法で製造された加飾シートにより加飾層を形成することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−35493(P2012−35493A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177137(P2010−177137)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】