説明

加飾成形品、加飾成形品用の樹脂基材および加飾成形品の製造方法

【課題】シート状加飾材のトリミング作業を容易かつ迅速に行うことができるとともに、シート状加飾材の端部の剥がれが生じても、加飾状態に影響を及ぼさない加飾成形品、加飾成形品用の樹脂基材および加飾成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】裏面側が凹面形状をした加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から裏面側の凹面の一部までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を凹面内で切断除去するトリミング工程とを経て、シート状加飾材が裏面側の凹面内でトリミングされている加飾成形品を得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾成形品、加飾成形品用の樹脂基材および加飾成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、モーターバイクやスクータの二輪自動車100は、マフラー(図示せず)にライダーの足等が直接触れて火傷などを起こさないようにマフラーカバー110で覆われている。マフラーカバー110は、図6に示すようなマフラーサイドカバー111や図7に示すようなエンドキャップ112等の複数のカバー材が組み合わされて形成されるようになっている。
【0003】
従来、上記マフラーサイドカバー111やエンドキャップ112等は、ポリアミド樹脂(ナイロン6等)等によって形成された樹脂基材の表面にメッキを施すとともに、メッキ表面を必要に応じて透明樹脂製の保護層で被覆したものが使用されている。
しかし、メッキの場合、廃液処理が面倒であるため、メッキ処理業者が減少する傾向にあり、異なる製造方法が求められている。
【0004】
一方、金属調のシート状加飾材を、樹脂基材の表面に貼着するようにすれば、上記メッキ工程が省略できるが、シート状加飾材からなる加飾層を樹脂基材の表面に設ける方法として従来から用いられているインモールド法(特許文献1参照)や、真空圧空成形法(特許文献2参照)では、それぞれ以下のような問題があった。
【0005】
すなわち、インモールド法は、一般的に、図8(a)に示すように、金型200のキャビティ面201に沿うようにプリフォームしたシート状加飾材300を、図8(b)に示すように金型200内にセットしたのち、図8(c)に示すように金型200を閉じて、樹脂基材となる樹脂300を金型200内に射出充填し、図8(d)に示すように、充填された樹脂300を冷却固化させたのち、金型200から取り出すことによって加飾成形品400が得られる。
しかし、インモールド法の場合、予め上記のようにシート状加飾材300をプリフォームしなければならない、プリフォームしたシート状加飾材300の金型200内での位置決めが難しい、製品表面と裏面側との境界(コア玉縁部)のラインがきれいに出せない、量産連続成形が難しい(自動成形が困難、特に中〜大型の成形品)、金型200のゲート構造が複雑になる、などの問題がある。
【0006】
一方、真空圧空成形法の場合、図9(a)に示すように、粘着剤付きのシート状加飾材310と、予め成形された樹脂基材500とを真空成形装置600内にセットし、シート状加飾材310をヒータ630で加熱するとともに、シート状加飾材310で仕切られた真空成形装置600の上下のチャンバー610、620の内部を真空にした後、図9(b)に示すように、樹脂基材500をシート状加飾材310側に押し上げて、シート状加飾材310を変形させながら、シート状加飾材310の粘着層を樹脂基材500の表面に押し当てた状態とする。つぎに、図9(c)に示すように、真空成形装置600の下部チャンバー620内を真空状態に保ちながら、上部チャンバー610内を大気圧あるいは大気圧より加圧状態として、シート状加飾材310を樹脂基材500の被加飾面全体に密着させたのち、図9(d)に示すように、真空成形装置600内全体を大気圧に戻すとともに、シート状加飾材310の非接着部分を切り取り、加飾成形品700を得るようになっている。
【0007】
この真空圧空成形法を用いた場合、シート状加飾材のプリフォームが不要、シート状加飾材の位置決めが不要、量産連続成形が可能、製品表面と裏面側との境界(コア玉縁部)のラインがきれいに出せる、金型への細工が不要などインモールド法に比べ、かなり利点がある。
しかしながら、真空圧空成形法の場合、シート状加飾材を加飾部分に正確に合わせてトリミングする必要があり、トリミングの際にシート状加飾材端部が樹脂基材から剥がれたり、裂け目が加飾部分にまで拡がったりするのを避けるために作業時間がかかるとともに、熟練を要し、トリミングの作業性に問題がある。
また、基材樹脂への粘着層の密着性が弱いため、端部で剥がれを起こす恐れがある。
【0008】
【特許文献1】特開平9−57792号公報
【特許文献2】特開2006−35540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて、シート状加飾材のトリミング作業に熟練を要さず、容易かつ迅速に行うことができるとともに、シート状加飾材の端部の剥がれが生じても、加飾状態に影響を及ぼさない加飾成形品、加飾成形品用の樹脂基材および加飾成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる加飾成形品は、裏面側が凹面形状をした樹脂基材が、その表面をシート状加飾材によって被覆されてなる加飾成形品であって、前記シート状加飾材が樹脂基材の裏面側の凹面の一部を巻き込むように被覆され、凹面内でトリミングされていることを特徴としている。
【0011】
本発明にかかる樹脂基材は、裏面側が凹面形状をしていて、表面がシート状加飾材によって被覆される加飾成形品用の樹脂基材であって、裏面側の凹面の外縁部が全周にわたって平坦面に形成されていることを特徴としている。
上記本発明の樹脂基材は、平坦面に溝が平坦面全周にわたって設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明にかかる樹脂基材は、裏面側が凹面形状をしていて、表面がシート状加飾材によって被覆される加飾成形品用の樹脂基材であって、凹面の外周縁に沿うように凹面内に突設され、凹面の外側に向かう平坦面を有する突部を備えていることを特徴としている。
上記突部は、突部の平坦面に沿って溝が設けられていてもよい。
【0013】
本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、裏面側が凹面形状をした加飾成形品用の樹脂基材に、樹脂基材の表面から裏面側の凹面の一部までを覆うように粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を凹面内で切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、裏面側が凹面形状をしていて、凹面の外縁部が全周にわたって平坦面に形成されている加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から少なくとも凹面の平坦面までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、前記平坦面に沿った部分で切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、裏面側が凹面形状をしていて、凹面の外縁部が全周にわたって平坦面に形成されているとともに、凹面の外周縁に沿った溝が、平坦面に設けられている加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から少なくとも凹面の平坦面までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃を溝に向かってシート状加飾材に突き通し、カッターの刃によって前記溝に沿って切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴としている。
【0016】
また、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、裏面側が凹面形状をしていて、凹面の外周縁に沿うように凹面内に突設され、凹面の外側に向かう平坦面を有する突部を備えている加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から凹面の少なくとも突部の平坦面部分までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃をシート状加飾材に突部の平坦面に沿った部分で切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、裏面側が凹面形状をしていて、凹面の外周縁に沿うように凹面内に突設され、凹面の外側に向かう平坦面を有する突部を備えているとともに、突部の平坦面に沿って溝が設けられている加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から凹面の少なくとも突部の平坦面部分までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃を突部の溝に向かってシート状加飾材に突き通し、カッターの刃によって前記突部の溝に沿って切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の加飾成形品の製造方法において、トリミング工程の前にシート状加飾材の少なくとも凹面貼着側の貼着部端部を融着させる工程を備えていることが好ましい。
融着方法としては、特に限定されず、たとえば、超音波融着、振動融着、レーザー融着、熱融着等が挙げられ、中でも超音波融着が好ましい。
【0019】
さらに、本発明の加飾成形品の製造方法において、シート状加飾材を樹脂基材に貼着する方法は、特に限定されないが、真空圧空成形法を用いることが好ましい。
上記真空圧空成形には、公知の真空成形装置を使用することができる。
【0020】
本発明において、樹脂基材を構成する樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、アクリル系樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ABS樹脂等が挙げられ、マフラーカバーのエンドキャップ等のように100℃以上の高温に曝されるような場所に用いられる成形品の場合、PA,PTT等の高融点樹脂が好適である。
【0021】
本発明において、シート状加飾材とは、「加飾シート」と称される厚手のものおよび「加飾フィルム」と称される薄手のもののいずれでも構わない。
また、シート状加飾材としては、特に限定されないが、シート状基材の一方の面に加飾層として金属材料の蒸着層や印刷層を設けたもの等が挙げられる。
【0022】
上記シート状基材に蒸着される金属としては、アルミニウム、クロム、銀、銅、錫、ニッケル、インジウム等やこれらの合金が挙げられ、マフラーカバーのマフラーサイドカバーやエンドキャップなどに用いられる場合、インジウムあるいは錫もしくはこれらの合金が好ましい。
蒸着方法は、特に限定されず、たとえば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの方法が挙げられる。
【0023】
シート状基材としては、特に限定されないが、たとえば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、マフラーカバーのマフラーサイドカバーやエンドキャップなどに用いられる場合、耐熱性に優れたものが選択される。
また、シート状加飾材を樹脂基材に融着させる態様においては、しっかりとした融着を行わせるために、シート基材の材質は、樹脂基材の樹脂と相溶性を備えたものが好適である。
因みに、マフラーカバーフロントの樹脂基材としては、従来、ABS樹脂、PC、PC/ABS系アロイ等が用いられているが、ABS樹脂、PC、PC/ABS系アロイの場合、非結晶性の樹脂同士となるPMMA(ポリメチルメタクリレート)等のアクリル系樹脂フィルムでも超音波融着できる。一方、マフラーカバーリヤに従来から用いられている結晶性のPA6、PA66、ナイロン系アロイ等のPA系樹脂の場合、PMMAフィルムを超音波融着することはできない。したがって、樹脂基材が上記のようにPA系樹脂である場合、シート状加飾材のシート状基材もPA系樹脂で、また、樹脂基材がPTTである場合、シート状加飾材のシート状基材もPTTで形成されていることが好ましい。
【0024】
さらに、加飾層の表面には透明保護層を設けるようにしても構わない。
透明保護層としては、特に限定されないが、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、マフラーカバーのマフラーサイドカバーやエンドキャップなどに用いられる場合、鉛筆硬度H以上のものを選択することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明にかかる加飾成形品は、裏面側が凹面形状をした樹脂基材が、その表面をシート状加飾材によって被覆されてなる加飾成形品であって、前記シート状加飾材が裏面側の凹面内でトリミングされているので、シート状加飾材のトリミング部が表面から見えない位置にあり、精度の悪い切断除去の仕方でも加飾成形品の加飾面への影響がない。したがって、トリミング作業に熟練度が不要で作業性がよい。しかも、トリミングされたシート状加飾材の端部が凹面内にあるため、シート状加飾材の端部に剥がれが生じても加飾成形品の加飾面への影響がない。
【0026】
そして、本発明にかかる加飾成形品の製造方法は、裏面側が凹面形状をした加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から裏面側の凹面の一部までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を凹面内で切断除去するトリミング工程とを備えているので、上記本発明の加飾成形品を容易に製造することができる。
【0027】
また、樹脂基材として、裏面側の凹面の外縁部が全周にわたって平坦面に形成されているものを用い、シート状加飾材を、樹脂基材の表面から凹面の平坦面を含む部分まで貼着するとともに、貼着された前記シート状加飾材を前記平坦面に沿った部分で切断すれば、より容易にかつ見栄えよくシート状加飾材の不要部分をトリミングすることができる。
すなわち、カッター等の切断具が上記平坦面で受けられるので、カッターの刃先等がゆがんだりせず、シート状加飾材をきれいに切断することができる。
【0028】
また、樹脂基材として、凹面の外周縁に沿った溝が、上記平坦面に設けられているものを用い、シート状加飾材を、樹脂基材の表面から凹面の平坦面を含む部分まで貼着するとともに、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃を溝に向かってシート状加飾材に突き通し、カッターの刃によって前記溝に沿って切断すれば、シート状加飾材の切断端面が常に溝に沿った位置に配置され、より容易にかつ見栄えよくシート状加飾材の不要部分をトリミングすることができる。しかも、切断端部を溝内に押し込むようにすれば、組立作業中などの端部の剥がれ等が防止できる。
【0029】
また、樹脂基材として、凹面の外周縁に沿うように凹面内に突設され、凹面の外側に向かう平坦面を有する突部を備えているものを用い、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から凹面の少なくとも突部の平坦面部分までを覆うように貼着するとともに、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃をシート状加飾材に突部の平坦面に沿った部分で切断するようにすれば、より容易にかつ見栄えよくシート状加飾材の不要部分をトリミングすることができる。
すなわち、カッター等の切断具が上記平坦面で受けられるので、カッターの刃先等がゆがんだりせず、シート状加飾材をきれいに切断することができる。
【0030】
また、樹脂基材として、突部の平坦面に沿って溝が設けられているものを用い、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から凹面の少なくとも突部の平坦面部分までを覆うように貼着するとともに、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃を突部の溝に向かってシート状加飾材に突き通し、カッターの刃によって前記突部の溝に沿って切断すれば、シート状加飾材の切断端面が常に溝に沿った位置に配置され、より容易にかつ見栄えよくシート状加飾材の不要部分をトリミングすることができる。しかも、切断端部を溝内に押し込むようにすれば、組立作業中などの端部の剥がれ等が防止できる。
【0031】
さらに、本発明の加飾成形品の製造方法において、トリミング工程の前にシート状加飾材の少なくとも凹面貼着側の貼着部端部を融着させる工程を備えていれば、シート状加飾材の加飾端部が樹脂基材にしっかりと融着するので、シート状加飾材の端部の剥がれをより確実に防止できる。
また、融着を超音波融着法によって行えば、短時間で融着作業が完了し、作業効率がよい。
【0032】
さらに、本発明の加飾成形品の製造方法において、真空圧空成形法を用いてシート状加飾材を樹脂基材の少なくとも表面に貼着するようにすれば、樹脂基材表面に凹凸が形成されていても、気泡等がかみこむことなく、シート状加飾材を貼着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明を、その実施の形態を表す図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第1の実施の形態を表している。
【0034】
図1に示すように、樹脂基材1aは、裏面側に凹面11を有し、凹面11の周縁部に平坦面としてのテーパ面12を全周にわたって備えている。
また、テーパ面12の端部(図で見て上端側)には、断面略直角三角形の溝13が形成されている。
【0035】
そして、この製造方法は、樹脂基材1aを受け治具2にセットし、従来の真空成形方法と同様にしてインジウム‐錫合金の蒸着層を有し、金属光沢を備えたシート状加飾材3を真空成形装置(図示せず)内で図1(a)に示すように、樹脂基材1aの表面に沿うように成形するとともに、樹脂基材1aに沿った部分を樹脂基材1aに貼着したのち、トムソンの刃4aによってシート状加飾材3を一旦大まかに切断する。
つぎに、残ったシート状加飾材3の非接着部分を図1(b)に示すように、手で凹面11内に差し入れ、テーパ面12に貼り付ける。
【0036】
続いて、図1(c)に示すように、超音波融着装置の超音波溶着ホーン5をシート状加飾材3のテーパ面12に沿った部分に押し当てて、シート状加飾材3のテーパ面12に沿った部分をテーパ面12に超音波融着する。
最後に、図1(d)に示すように、トムソンの刃4bを溝13の側壁に沿うように、溝13内に進入させてシート状加飾材3の不要部分31を切り取って、図1(e)に示すような表面が金属メッキ調に加飾された加飾成形品6aを得る。
なお、図1では、発明をより理解しやすくするために、シート状加飾材3の厚みを実際の厚みよりかなり厚く描いているが、実際は200〜250μm程度である。
【0037】
このようにして得られた加飾成形品6aは、シート状加飾材3を樹脂基材1aの表面に貼り付けることによって加飾が行われるので、メッキなどのように環境汚染等の心配がない。しかも、シート状加飾材3の端部が樹脂基材1aの裏面側である凹面11内にあるので見栄えがよい。そして、シート状加飾材3の端部がテーパ面12に融着されているので、シート状加飾材3の端部からの剥がれを防止することができる。
【0038】
図2は、本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第2の実施の形態を表している。
図2に示すように、この樹脂基材1bは、凹面11が、外縁部に沿って、全周にわたって凹面の開口側に平坦面14aを有する突部14を備えている。
【0039】
そして、この樹脂基材1bを用いた加飾成形品の製造方法は、図2(a)に示すように、上記第1の実施の形態と同様にして、真空成形装置内で樹脂基材1bの表面から突部14の平坦面14aまでシート状加飾材3を貼着したのち、図2(b)に示すように、トムソンの刃4cを平坦面14aに突き当たるまでシート状加飾材3に突き通してシート状加飾材3の不要部分31を切り取って加飾成形品6bを得るようになっている。
【0040】
図3は、本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第3の実施の形態をあらわしている。
図3に示すように、この樹脂基材1cは、突部15の平坦面15aに略V字形をした溝15bが全周にわたって設けられている以外は、上記樹脂基材1bと同様になっている。
【0041】
そして、この樹脂基材1cを用いた加飾成形品の製造方法は、図3(a)に示すように、上記第1、第2の実施の形態と同様にして、真空成形装置内で樹脂基材1cの表面から突部15の平坦面15aまでシート状加飾材3を貼着したのち、図3(b)に示すように、カッターの刃4dを溝15bの底に刃先が当たるまでシート状加飾材3に突き通し、カッターの刃4dを溝15bに沿って動かして、シート状加飾材3の不要部分31を切り取って加飾成形品6cを得るようになっている。
すなわち、この方法によれば、作業者がカッターを手で持って手動でシート状加飾材3を切り取る場合、ガイドとなる溝が設けられているので、だれでも同じ精度で見栄え良い加飾成形品を得ることができる。
【0042】
図4は、本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第4の実施の形態をあらわしている。
【0043】
図4に示すように、この樹脂基材1dは、凹面11の外縁部側に設けられた平坦面としてのテーパ面16に溝が形成されていない以外は、上記第1の実施の形態の樹脂基材1aと同様になっている。なお、テーパ面16の幅は、0.3〜50mm程度が好ましい。
そして、この樹脂基材1dを用いた加飾成形品の製造方法は、図4(a)に示すように、上記第1〜第3の実施の形態と同様にして、真空成形装置内で樹脂基材1dの表面からテーパ面16までシート状加飾材3を貼着したのち、図4(b)に示すように、トムソンの刃4eをテーパ面16に突き当たるまでシート状加飾材3に突き通してシート状加飾材3の不要部分31を切り取るようになっている。
【0044】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記第1の実施の形態では、テーパ面にのみ、シート状加飾材を融着するようにしていたが、外観に影響を与えなければ、表面側の周縁部まで融着するようにしても構わない。
また、樹脂基材の融着部に突条を設け、融着時にシート状加飾材越しにこの突条を押しつぶしシート状加飾材と、樹脂基材との密着性を向上させるようにしても構わない。
【0045】
さらに、上記の実施の形態では、樹脂基材の周縁部の裏面が平坦な面となっているが、玉縁状にしても構わない。
また、上記の実施の形態では、シート状加飾材の切断手段がトムソンの刃やカッターの刃であったが、レーザーカッターなど他の切断手段を用いるようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる加飾成形品の用途としては、特に限定されないが、たとえば、マフラーカバーのマフラーサイドカバーやエンドキャップなどのオートバイの内外装部品、自動車の内外装部品、携帯電話や電化製品のケーシング、カバー等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第1の実施の形態を工程順に説明する説明図である。
【図2】本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第2の実施の形態を工程順に説明する説明図である。
【図3】本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第3の実施の形態を工程順に説明する説明図である。
【図4】本発明にかかる樹脂基材を用いた加飾成形品の製造方法の第4の実施の形態を工程順に説明する説明図である。
【図5】二輪自動車の側面図である。
【図6】二輪自動車のマフラーサイドカバーの斜視図である。
【図7】二輪自動車のマフラーエンドキャップの斜視図である。
【図8】インモールド成形による加飾成形品の製造方法を工程順に説明する説明図である。
【図9】真空成形装置を用いた加飾成形品の製造方法を工程順に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1a,1b,1c,1d 樹脂基材
11 凹面
12 テーパ面
13 溝
14 突部
14a 突部14の平坦面
15 突部
15a 突部15の平坦面
15b 突部15の溝
16 テーパ面(平坦面)
3 シート状加飾材
4a,4b,4c,4d 刃
6a,6b,6c,6d 加飾成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側が凹面形状をした樹脂基材が、その表面をシート状加飾材によって被覆されてなる加飾成形品であって、
前記シート状加飾材が裏面側の凹面内でトリミングされていることを特徴とする加飾成形品。
【請求項2】
裏面側が凹面形状をしていて、表面がシート状加飾材によって被覆される加飾成形品用の樹脂基材であって、
裏面側の凹面の外縁部が全周にわたって平坦面に形成されていることを特徴とする樹脂基材。
【請求項3】
凹面の外周縁に沿った溝が、平坦面に設けられている請求項2に記載の樹脂基材。
【請求項4】
裏面側が凹面形状をしていて、表面がシート状加飾材によって被覆される加飾成形品用の樹脂基材であって、
凹面の外周縁に沿うように凹面内に突設され、凹面の外側に向かう平坦面を有する突部を備えていることを特徴とする樹脂基材。
【請求項5】
突部の平坦面に沿って溝が設けられている請求項4に記載の樹脂基材。
【請求項6】
裏面側が凹面形状をした加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から裏面側の凹面の一部までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を凹面内で切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載の加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から少なくとも凹面の平坦面までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、前記平坦面に沿った部分で切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から少なくとも凹面の平坦面までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃を溝に向かってシート状加飾材に突き通し、カッターの刃によって前記溝に沿って切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から凹面の少なくとも突部の平坦面部分までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃をシート状加飾材に突部の平坦面に沿った部分で切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項5に記載の加飾成形品用の樹脂基材に、粘着剤付きのシート状加飾材を、粘着剤を介して樹脂基材の表面から凹面の少なくとも突部の平坦面部分までを覆うように貼着するシート状加飾材貼着工程と、貼着された前記シート状加飾材の不要部分を、カッターの刃を突部の溝に向かってシート状加飾材に突き通し、カッターの刃によって前記突部の溝に沿って切断除去するトリミング工程とを備えていることを特徴とする加飾成形品の製造方法。
【請求項11】
トリミング工程の前にシート状加飾材の少なくとも凹面貼着側の貼着部端部を融着させる工程を含む請求項6〜請求項10のいずれか1項に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項12】
超音波で融着させる請求項11に記載の加飾成形品の製造方法。
【請求項13】
真空圧空成形法を用いてシート状加飾材を樹脂基材の少なくとも表面に貼着する請求項7〜請求項12のいずれか1項に記載の加飾成形品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−284771(P2008−284771A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131472(P2007−131472)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】