劣化診断システム及び遠隔保守システム
【課題】ローカル設備の診断対象部位に異種センサを取付け、異なるサンプリング周期で異種センサから収集したセンシングデータから劣化兆候を迅速、高精度に判定する。
【解決手段】ローカル設備の所要の診断対象部位に取付けられ、異なる物理量を計測する異種センサ3a〜3hの計測データを複数のサンプリング周期でセンシングして無線送信する複数の異種センサユニット1と、各異種センサユニットからサンプリング周期別にセンシングデータを取り込み、当該サンプリング周期別にセンシングデータから診断対象部位の劣化兆候の有無を診断し、異常判定処理を行う劣化診断装置2とを備えた劣化診断システムである。
【解決手段】ローカル設備の所要の診断対象部位に取付けられ、異なる物理量を計測する異種センサ3a〜3hの計測データを複数のサンプリング周期でセンシングして無線送信する複数の異種センサユニット1と、各異種センサユニットからサンプリング周期別にセンシングデータを取り込み、当該サンプリング周期別にセンシングデータから診断対象部位の劣化兆候の有無を診断し、異常判定処理を行う劣化診断装置2とを備えた劣化診断システムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のシステム設備の診断対象部位(装置,機器、部品に相当する)の劣化兆候(劣化傾向)から異常の程度を把握し、寿命を延命化する保全を実施する劣化診断システム及び遠隔保守システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のシステム設備の診断対象部位の動作状態を遠隔的に監視・診断するシステムとしては、ローカル設備の所要部位にセンサを取付け、当該センサにて所要のデータを取り込み、通信回線を利用してセンターに送信し、ここで所定の劣化診断用アルゴリズムを用いて、ローカル設備の診断対象部位の劣化状態を診断する。
【0003】
ところで、ローカル設備の診断対象部位に取付けるセンサは、コスト及びサイズ等の制約から計算能力の高いCPUを搭載できない場合が多い。そのため、センサとセンターの間で比較的ローカルに近い場所に中間処理装置を設置し、ローカル設備,ひいては診断対象部位の劣化診断処理を行うか、あるいは前述したようにセンサで計測されたデータをセンターに送信し、センター側にて診断対象部位の劣化診断処理を行う構成となっている。このとき、何れの劣化診断処理にも、性能向上が求められている。
【0004】
従来、劣化診断処理の性能を向上させる技術としては、センサ部と中間処理装置(不具合判定デバイス)が無線通信可能にて接続され、センサ部で収集した各センサのステータスデータを無線にて中間処理装置に送信する。
【0005】
中間処理装置は、受信したステータスデータに基づき、少なくとも1つの動作上の不具合(異常発生)の可能性を示すコンディションレベルを含むコンディションデータ(しきい値)を計算し、無線通信にてセンサ部に送る。このセンサ部は、予め不具合発生時期を示す複数種類のコンディションレベルが用意され、前記ステータスデータと中間処理装置から送られてくるコンディションレベルを含むコンディションデータとを比較し、複数種類のコンディションレベルの中から1つのコンディションレベルを選択する。センサ部は、選択されたコンディションレベルから異常発生日時を予測し、その異常発生予測日時が所定の期間内に入ったとき、警報通知を生成し提供する(特許文献1)。
【0006】
また、他の劣化診断処理の性能を向させる技術としては、バッテリの寿命を延命化する遠隔センシングシステムが提案されている(特許文献2)。この技術は、具体的には、センシング対象の状態を計測するセンサ及びバッテリを備えたセンサユニットとセンター装置とが無線ネットワークで接続され、センサユニットがセンシング対象の状態を表すセンシングデータをセンター装置に伝送する。
【0007】
センター装置は、センサユニットから送られてくるセンシング対象の状態が通常状態であるか、又は異常と分類される状態にあるかを判定する。センシング対象が通常状態にある場合には長いセンシング周期とし、異常状態にある場合には短いセンシング周期とし、センサユニットに送信する。センサユニットは、指定されたセンシング周期に基づき、センサを駆動し、センシング対象の状態を計測し、センシングデータをセンター装置に伝送する。
【0008】
その結果、センシング対象が通常の状態にあるとき、長いセンシング周期でセンサを駆動することから、バッテリの寿命を延命化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−087396号公報
【特許文献2】特開2006−187316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、以上のような従来のシステムでは、設備の所要部位に取付けたセンサの計測データを用い、予め定めたしきい値のもとに異常・正常を判定するのが一般的である。その結果、センサで計測されたセンシングデータがしきい値を超えない限り、正常と見なす傾向にあるので、随時稼動中の設備の状態から劣化の傾向ないし程度を捉えにくい問題がある。
【0011】
また、センサで計測されたセンシングデータと使用環境データとに基づき、例えば特許文献1の段落15に説明するような劣化確率モデルに従って劣化の確率を計算し、劣化の程度を判定するものである。
【0012】
しかし、劣化の兆候は、複合的な要因に基づく場合が多いことから、劣化確率モデルに従って劣化の確率を計算したとしても、一律に劣化のレベルを判定することが難しく、幾つかの複合的な要因を含む結果、複数のセンシングデータと劣化の影響との関係を考慮しない限り、劣化の傾向を高精度に予測することはできない。
【0013】
さらに、特許文献2に記載の技術によれば、センサを駆動するバッテリの消費電力の低減化を図る観点から、センシング対象の通常状態時にサンプリング周期を長くし、異常状態時にサンプリング周期を短くする方法である。
【0014】
しかし、サンプリング周期を変える方法は、通常状態時にサンプリング周期が長くなるので、種々の要因のもとに急激な劣化が生じたとき、その劣化の検出が難しくなる問題がある。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ローカル設備の診断対象部位に取付けた異種センサから異なるサンプリング周期でセンシングデータを取り込み、劣化兆候を迅速、高精度に判定し、診断対象部位の劣化兆候レベルを含む異常の状態を判定する劣化診断システムを提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、劣化診断システムで得られた異常に関するデータを遠隔的に受け取り、異常に関するデータに基づいて保守員に適切な点検支援情報を提示し寿命を延命化する保全を実施する遠隔保守システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る劣化診断システムは、ローカル設備の所要とする診断対象部位に取付けられ、異なる物理量を計測する異種センサの計測データを複数のサンプリング周期でセンシングして無線送信する複数の異種センサユニットと、
各異種センサユニットから前記サンプリング周期別にセンシングデータを取り込み、前記サンプリング周期別に前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断し、異常判定処理を行う劣化診断装置とを備えた構成である。
【0018】
なお、劣化診断装置としては、複数の異種センサユニットから送信されてくる長周期のセンシングデータを受信し格納する第1の無線部と、複数の異種センサユニットから送信されてくる短周期のセンシングデータを受信し格納する第2の無線部と、前記第1の無線部にて格納された長周期のセンシングデータと長周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候有無を診断する長周期データ診断手段と、前記第2の無線部にて格納された前記短周期のセンシングデータと短周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候有無を診断する短周期データ診断手段と、これら両診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りと判定したときにセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを有する構成である。
【0019】
また、別の本発明に係る劣化診断システムは、ローカル設備の異なる診断対象部位に取付けられ、各部位の計測対象に合った異なる物理量を計測する異種センサの計測データを所要とする高速のサンプリング周期でセンシングして無線送信するn個(nは整数)の異種センサユニットと、これら異種センサユニットの出力から劣化診断処理を行う劣化診断装置とで構成され、
劣化診断装置は、前記n個より少ない任意数の異種センサユニットのセンシングデータから、それぞれ前記サンプリング周期よりも長い異なる複数の周期のセンシングデータを取り込んで格納する複数の無線部と、各無線部にて取り込んだ異なる各周期のセンシングデータと各周期判定参照データとを比較し、前記異なる周期ごとに前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断するデータ診断手段と、このデータ診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りの判定時にセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを設けた構成である。
【0020】
さらに、本発明に係る遠隔保守システムは、前述した構成の劣化診断システムと、前記劣化診断装置に設けられ、前記異常判定手段で記憶された前記異常に関係するデータを読み出し、広域ネットワークを通して伝送するWAN通信部と、前記広域ネットワークに接続され、前記WAN通信部から伝送されてくる異常に関係するデータ取得し、当該異常に関係するデータに基づいて前記診断対象設備または部位に関する点検支援情報を取得し、保守員に提示する遠隔保守センターとを備えた構成である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ローカル設備の診断対象部位に取付けた異種センサから異なるセンシング周期でセンシングデータを取り出し、診断対象部位の劣化の兆候を見出すことにより、異なる複数の物理量の変化から劣化の兆候有無を判定し、例えば長周期のセンシングデータから劣化の兆候有りを判定したとき、短周期のセンシングデータから劣化の兆候有無を見出すことにより、迅速、かつ、精度良く劣化の兆候を検出でき、さらに長周期及び短周期のセンシングデータの劣化兆候有りから劣化兆候のレベル含む部位異常を取得できる劣化診断システムを提供できる。
【0022】
また、本発明は、劣化診断システムで得られた異常に関するデータを遠隔的に受け取り、異常に関するデータに基づいて保守員に適切な点検支援情報を提示し点検を促すことにより、診断対象設備又は部位の寿命を延命化できる遠隔保守システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る劣化診断システム及び実施の形態3に係る遠隔保守システムを示す構成図。
【図2】設定データメモリに設定される判定参照データ及び劣化兆候レベルデータの配列例図。
【図3】3つの異種センサで計測されたデータを長周期のサンプリング時間でセンシングしている状態を説明する図。
【図4】劣化診断装置の長周期収集用の無線部が異種センサユニットから送られてくるセンシングデータを収集して専用メモリに格納したときのデータの一配列例図。
【図5】3つの異種センサで計測されたデータを短周期のサンプリング時間でセンシングしている状態を説明する図。
【図6】劣化診断装置の短周期収集用の無線部が異種センサユニットから送られてくるセンシングデータを収集して専用メモリに格納したときのデータの一配列例図。
【図7】本発明の実施の形態1に係る劣化診断システムの劣化診断装置の一連の処理例を説明するフロー図。
【図8】診断対象部位を異常と判定したとき、診断処理データ格納メモリに格納するセンシングデータを含む異常に係るデータの一例を示す図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る劣化診断システム及び実施の形態3に係る遠隔保守システムを示す構成図。
【図10】異なるサンプリング周期でそれぞれ収集した異種センサのセンシングデータの配列例を示す図。
【図11】本発明の実施の形態2に係る劣化診断システムの劣化診断装置の一連の処理例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る劣化診断システムの実施の形態1を示す構成図である。
劣化診断システムは、ローカル設備の診断対象部位(装置,機器,部品に相当する。以下、同じ)に取付けられる異種センサユニット1と、診断対象部位の劣化傾向を予測する劣化診断装置2とが設けられ、これら異種センサユニット1と劣化診断装置2は無線通信手段により通信可能に接続されている。
【0025】
異種センサユニット1は、診断目的に応じて定まる数の異種センサ3a〜3hと、各センサ3a〜3hの出力をサンプリング周期でサンプリングする各センサ対応の処理部4a〜4hと、各処理部4a〜4hでサンプリングされたセンシングデータを無線送信する無線部5a〜5hとが接続されている。
【0026】
異種センサ3a〜3hは、具体的には,例えば温度センサ、湿度センサ,電圧センサ,電流センサ,加速度センサ,変位センサ,照度センサ,音響センサ等が挙げられ、診断対象部位である装置,機器,部品の劣化兆候を的確に反映できる物理量を計測するためのセンサが適宜選択的に組合せ選定される。
【0027】
処理部4a〜4hは、組合せ選択された複数の異種センサ3a〜3hで計測されたデータをそれぞれ複数のサンプリング周期(例えば2種類のサンプリング周期)でサンプリングするものである。
【0028】
無線部5a〜5hは、対応する各処理部4a〜4hでサンプリングされたセンシングデータの無線情報6を無線送信するものであって、例えばパソコンと携帯電話との間で情報のやり取りを行う比較的近距離(例えば100m max範囲)で通信する通信規格を持つ例えばBT(Bluetooth(登録商標)TM)等で使われる周波数ポッピング型の前記無線情報6を用いて劣化診断装置2に向けて送信する。
【0029】
劣化診断装置2は、各無線部5a〜5hから無線送信されてくる長周期のセンシングデータを受信し、対応する専用メモリ11aに格納する無線部12a、同じく各無線部5a〜5hから無線送信されてくる短周期のセンシングデータを受信し、対応する専用メモリ11bに格納するする無線部12b、予め劣化兆候を判定する判定参照データや劣化兆候レベルを設定する設定データメモリ13、CPUで構成された劣化診断処理部14、リアルタイマ15、診断処理データ格納メモリ16及びWAN通信部17が設けられている。
【0030】
設定データメモリ13には、図2に示すように診断対象部位ごとに劣化兆候の判定参照データ及び劣化兆候レベルデータが設定されている。劣化兆候の判定参照データとしては、例えば診断対象部位××Aに対して、温度センサ3a、電圧センサ3c,電流センサ3dを組合せたとき、温度t,電圧v,電流iの長周期判定参照データ(例えば長周期における劣化兆候を比較的顕著に表すしきい値データや変化パターン、その他診断対象部位特有の変化傾向を表すデータ等)LA1,LA2,LA3、同じく温度t,電圧v,電流iの短周期判定参照データ(例えば短周期における劣化兆候を比較的顕著に表す変化率その他診断対象部位特有の変化傾向を表すデータ等)SA1,SA2,SA3が設定される。
【0031】
劣化兆候レベルデータは、温度t,電圧v,電流iに関する長周期センシングデータtj,vj,ij,Δtj,Δvj,Δij(j=1,2,…,n、図4及び図6参照)の何れに劣化兆候有りかに応じて、予め定められる兆候レベル1,…,5を意味する。
【0032】
劣化診断処理部14は、ローカル診断の診断対象部位を特定する部位特定手段14Aと、長周期のセンシングデータと予め設定された長周期の判定参照データ(例えばしきい値、変化パターン等)とを比較し、診断の診断対象部位の劣化兆候の有無を判定する長周期データ診断手段14Bと、短周期のセンシングデータと予め設定された短周期データの劣化の兆候を表す判定参照データ(例えば変化率データ)とを比較し、診断の診断対象部位の劣化兆候の有無を判定する短周期データ診断手段14Cと、これら両診断手段14B,14Cの診断判定結果から劣化兆候レベルを伴う異常を予測する異常判定手段14Dとで構成される。
【0033】
リアルタイマ15は、劣化診断処理部14にて異常を予測したとき、各専用メモリ11a,11bから該当する長周期センシングデータ、短周期センシングデータを取り出し、データ収集日・時刻、判定参照データ、劣化兆候レベル等を診断処理データ格納メモリ16に格納する。
【0034】
次に、以上のように構成された劣化診断システムの動作について説明する。
先ず、異種センサユニット1を構成する処理部4a〜4hは、予め定める複数のサンプリング周期,例えば長いサンプリング周期及び短いサンプリング周期にて、予め選択された複数の異種センサ3a〜3hで計測されたデータをサンプリングし、対応する無線部5a〜5hを通して長周期及び短周期のセンシングデータとして劣化診断装置2に向けて無線送信する。
【0035】
このとき、設備のある診断対象部位に例えば異種センサ3a,3d,3e、同一設備の異なる診断対象部位に例えば異種センサ3a,3c,3fを取付けている場合、例えば部位識別データ××A,××Bとともに長周期及び短周期のセンシングデータを送信する。
【0036】
ここで、劣化診断装置2の無線部12aは、ある診断対象部位に取付けた例えば異種センサ3a,3d,3eのセンシングデータに着目して考えると、図3に示すように長周期のサンプリング時間T1,T2,T3,…毎に収集した異種センサ3a,3d,3eに関するセンシングデータを受信し、図4に示す所定のフォーマットに従って専用メモリ11aに順次時系列的に格納していく。このとき、劣化診断処理部14であるCPUを径由してリアルタイマ15から収集時刻を採取し、当該収集時刻とともに、部位識別データ、各異種センサのセンシングデータを対応する専用メモリ11aに格納していく。
【0037】
但し、図4は、説明の便宜上、設備の診断対象部位に図1の全ての異種センサ3a〜3hを取付けたときの全てのセンシングデータを格納した例を示している。
【0038】
一方、劣化診断装置2の無線部12bでは、図5に示すように短周期のサンプリング時間Δ1,Δ2,Δ3,…毎に収集した異種センサ3a,3d,3eのセンシングデータを受信し、図6に示す所定のフォーマットに従って、劣化診断処理部14であるCPUを径由してリアルタイマ15から収集時刻を採取し、当該収集時刻とともに、部位識別データ、異種センサ3a,3d,3eのセンシングデータを専用メモリ11bに順次時系列的に格納していく。
【0039】
劣化診断処理部14は、各無線部12a,12bから所定時間毎のセンシングデータを専用メモリ11a,11bに格納されたことの通知を受けたとき、あるいは自ら所定の時間毎に専用メモリ11a,11bからセンシングデータを読み出し、図7に示す一連の診断処理を実行する。
【0040】
すなわち、劣化診断処理部14を構成する部位特定手段14Aは、専用メモリ11a,11bに格納されている診断対象部位××Aに基づき、適宜なカウンタメモリ(図示せず)にi=1を設定し(S1)、診断対象部位である例えば電磁ブレーキ(××A)を特定する。
【0041】
一例として、電磁ブレーキは温度センサ3a,電圧センサ3c,電流センサ3dが取付けられているものとする。電磁ブレーキの劣化は、過去の経験等から駆動電圧、電流の状態から劣化の状況を監視することができるが、駆動電圧と電流から劣化の兆候を検出するには、短周期でサンプリングされた多量のデータを監視する必要がある。その結果、劣化診断処理部14であるCPUは、多量のデータを高速処理するパワーの大きなものが必要となる。
【0042】
そこで、本発明は、CPUパワーの節約を図りつつ、劣化の兆候を効率よく捉えるためには、温度センサ3a,電圧センサ3c,電流センサ3dの長周期のサンプリングデータと短周期のサンプリングデータを有効に活用することにある。
【0043】
そこで、劣化診断処理部14は、診断対象部位(例えば電磁ブレーキ××A)を特定した後、長周期データ診断手段14Bを実行する。
【0044】
長周期データ診断手段14Bは、専用メモリ11aから温度センサ3aの長周期のセンシングデータを読み出し、長周期のセンシングデータtjと設定データメモリ13に設定される劣化の兆候を表す判定参照データ(例えばしきい値、変化パターン等)t=LA1とを比較し(S2)、劣化兆候の有無を判定する(S3)。
【0045】
具体的には、電磁ブレーキのシューとドラムあるいはシリンダの接触抵抗の発熱によるブレーキカバーの温度上昇が劣化の兆候の有効な目安となる。このことは、特に温度に関する長周期のセンシングデータの温度t1〜tn+1の状態から検出できる。このとき、温度上昇に伴って電圧センサ3c,電流センサ3dの長周期のセンシングデータにも変化が現れてくる。例えば電磁ブレーキ××Aに関する劣化の兆候を判断するとき、最も劣化の兆候が顕著に表れる順位を温度、電圧、電流とすると、これら何れの物理量が判定参照データを超えるかに応じて劣化兆候のレベルを定める目安にもなる。
【0046】
そこで、長周期データ診断手段14Bは、温度に関して劣化兆候有りと判定したとき、適宜なメモリの空き領域に診断対象部位の識別データ××A、リアルタイマ15からデータ収集日時、該当長周期のセンシングデータ、温度に劣化の兆候有り等のデータを一時的に保存するとともに、フラグ「1」を設定する(S4)。
【0047】
長周期データ診断手段14Bは、全センサデータ診断完了かを判断し(S5)、未だ完了していない場合にはステップS2に戻り、次の電圧センサ3cに関する長周期のセンシングデータvjと設定データメモリ13に設定される劣化の兆候を表す判定参照データ(例えばしきい値、変化パターン等)t=LA2とを比較し(S2)、劣化兆候の有無を判定する(S3)。引き続き、電流センサ3dの長周期のセンシングデータについても、劣化兆候の有無を判定する(S3)。
【0048】
劣化診断処理部14は、ステップS5にて全センサデータの診断処理が完了してと判断すると、劣化兆候有りを表すフラグ「1」が立っていることを条件とし(S6)、短周期データ診断手段14Cを実行する。
すなわち、短周期データ診断手段14Cは、専用メモリ11bから温度センサ3aの短周期センシングデータΔt1〜Δt10を読み出し、当該短周期センシングデータΔt1〜Δt10と短周期データにおける劣化の兆候を表す判定参照データ(例えば変化率等)t=SA1とを比較し(S7)、詳細な劣化兆候の有無を判定する(S8)。ここで、劣化兆候の有り場合には、温度に関して劣化兆候有りと判定したとき、適宜なメモリの空き領域に記憶させた長周期の異常に関連するデータに対応付けて、識別データ××A、リアルタイマ15からデータ収集日時、該当短周期のセンシングデータ、温度に劣化の兆候有り等のデータを一時的に保存するとともに、フラグ「1」を設定する(S9)。
【0049】
引き続き、全センサデータの診断処理完了かを判断し(S10)、電圧及び電流についてもステップS7〜S9の処理を繰り返し実行し、劣化兆候の有無を判定する。
【0050】
そして、ここで診断対象部位に関する組合せ選択された全センサのセンシングデータの診断処理が終了すると、異常判定手段14Dを実行する。
【0051】
異常判定手段14Dは、長周期用フラグ及び短周期用フラグとして「1」が立っており(S11)、長周期及び短周期データ診断手段14B、14Cとも該当部位××Aに劣化兆候有りと判定しているので、該当設備の診断対象部位××Aが異常と判定し(S11)、長周期及び短周期データ診断手段14B、14Cで一時的に保存した異常に関するデータを診断処理データ格納メモリ16に格納する(S12)。
【0052】
すなわち診断処理データ格納メモリ16には、長周期の診断で得られた診断対象部位ないし部位識別データ××A、長周期データ収集時刻、該当異種センサの長周期センシングデータ、長周期用判定参照データ、劣化兆候の有無の他、短周期の診断で得られた短周期データ収集時刻、該当異種センサの短周期センシングデータ、短周期用判定参照データ、劣化兆候の有無のデータが格納される。
【0053】
なお、異常判定手段14Dとしては、両周期データ診断手段14B、14Cの診断結果から何れも劣化兆候有りと判定したとき、例えば図2に示す劣化兆候レベルデータのもとに劣化兆候レベルを伴う異常判定を行っても良い。
【0054】
例えば部位××Aに関する劣化兆候の程度は、温度、電圧、電流の順位で劣化兆候の影響が現れるものとすると、異常判定手段14Dは、図2に示す劣化兆候レベルデータに従い、長周期及び短周期の温度tj,Δtj、電圧vj、Δvj、電流ij、Δijの全てのセンシングデータに劣化兆候有りの場合、最も劣化の影響を大きく受けて劣化兆候レベル5、長周期及び短周期の温度tj,Δtj、電圧vj、Δvjの場合にはレベル4、温度tj,Δtjの場合にはレベル3、電圧vj、Δvj、電流ij、Δijの場合にはレベル2、電流ij、Δijのみの場合にはレベル1を有する該当部位の異常と判定し(S12)、異常に関するデータに含めて診断処理データ格納メモリ16に格納してもよい(S13)。
【0055】
なお、劣化診断装置2に表示部(図示せず)が設けられている場合、診断処理データ格納メモリ16から必要なデータを取り出し、劣化兆候に関するデータを表示し、比較的ローカルに近い場所の中間処理装置である劣化診断装置2で設備の状況を監視することができる。
【0056】
さらに、劣化診断装置2は、全診断対象部位の診断処理が完了したか否かを判断し(S14)、未だ実施していない診断対象設備があれば、ステップS15にてiに+1インクリメントし、ステップS2に戻り、同様の処理を繰り返し実行する。
【0057】
ステップS14にて全診断対象部位に関する診断処理を実施している場合、引き続き継続処理するか判断し(S16)、継続処理する場合にはステップS1に移行し、新たに診断対象部位を特定し、一連の処理を実行する。
【0058】
従って、以上のような実施の形態によれば、ローカル設備の同一の診断対象部位(装置,機器,部品頭)に取付けられた複数の異種センサ3a〜3hの出力から長周期のセンシングデータを監視し、劣化の兆候有りと判定されたとき、複数の異種センサ3a〜3hの出力である短周期センシングデータを監視し、短周期でも劣化の兆候有りと判定されたとき、診断対象部位が異常であると判定し、異常解析に必要なデータをまとめて保存し、必要に応じて表示し、確認することができ、さらに警報等により通知することができる。
【0059】
また、長周期のセンシングデータから劣化の兆候有りと判定したとき、詳細に短周期センシングデータを確認することから、CPUの負荷を低減しつつ診断対象部位の劣化状況を高精度に予測できる。
【0060】
さらに、部位の劣化の兆候を最も顕著に反映する複数の順位の物理量を取り込んで劣化の兆候を診断するので、劣化兆候の物理量の順位から劣化兆候のレベル、例えば即刻点検、ある程度期間をおいて点検できるとか、非常に重要な物理量の急激な変化から劣化が急激に進行中であるなどを予測可能となる。
【0061】
(その他の実施の形態例)
(1) 上記実施の形態では、長周期のセンシングデータから劣化の兆候有りと判定したとき、短周期のセンシングデータの診断処理を行うようにしたが、設備その他の環境状況等を考慮し、長周期のセンシングデータと短周期のセンシングデータとを同時並行的に診断処理し、両方のセンシングデータの相関関係を見ながら劣化の兆候有無を判定するようにしてもよい。
【0062】
(2) また、上記実施の形態では、CPUで構成される劣化診断処理部14で劣化の診断処理を行っているが、高速演算処理が可能なDSP(Digital Signal Processor)や特定の目的・機能に特化したLSIであるASSP(Application Specific Standard Produce)で構成される劣化診断処理部14を用いてもよい。
【0063】
(実施の形態2)
図9は本発明に係る劣化診断システムの実施の形態2を示す構成図である。なお、同図において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、その重複する部分の説明を省略する。
実施の形態1では、ローカル設備の同一診断対象部位に複数の異種センサ3a〜3hを取付けた例について説明したが、実施の形態2では、ローカル設備の異なる診断対象部位に異種センサ3a〜3hを取付けた例である。なお、異なる診断対象部位とは、複数の装置、機器、部品等が連なってローカル設備を構成しているが、それらの連なっている装置、機器、部品等が部位となる。
【0064】
この劣化診断システムの異種センサユニット1は、設備の異なる診断対象部位ごとに当該部位の劣化兆候を最も顕著に表す物理量を計測する複数の異種センサを取付け、これら異種センサ3a〜3hの計測データをそれぞれ短いサンプリング周期で収集する。
【0065】
一方、劣化診断装置2には、複数の無線部12a,12b,…,12nが設けられ、これら無線部12a,12b,…,12nには専用メモリ11a,11b,…,11nが接続されている。
【0066】
各無線部12a,12b,…,12nは、異なる診断対象部位ごとに取付けられた異種センサの計測データについて、劣化要因の兆候を最も見出すのに望ましい異なるサンプリング周期でセンシングデータとして収集し、劣化診断処理部14であるCPUを径由してリアルタイマ15から収集時刻を採取し、当該時刻データとともに、対応する専用メモリ11a,11b,…,11nに格納していく。
【0067】
具体的には、無線部12aは、少なくとも処理部4a,4c,4d,4eのサンプリング周期よりも整数倍長周期となる例えば100msのサンプリング周期で異種センサ3a,3c,3d,3eで計測された部位識別データ付きのセンシングデータを収集し、その収集時刻とともに専用メモリ11aに記憶する(図10(a)参照)。
【0068】
無線部部12bは、少なくとも処理部4b,4c,4hのサンプリング周期よりも整数倍長周期となる例えば20msのサンプリング周期で異種センサ3b,3c,3hで計測された部位識別データ付きのセンシングデータを収集し、その収集時刻とともに専用メモリ11bに記憶する(図10(b)参照)。
【0069】
さらに、無線部12nは、少なくとも処理部4c,4gのサンプリング周期よりも整数倍長周期となる例えば50msのサンプリング周期で異種センサ3c,3gで計測された部位識別データ付きのセンシングデータを収集し、その収集時刻とともに専用メモリ11nに記憶する(図10(n)参照)。
【0070】
劣化診断処理部14としては、一定の順序に従って選択される無線部を特定する無線部特定手段14Eと、この無線部特定手段14Eのサンプリング周期で収集した専用メモリ11a,11b,…のセンシングデータを取り出し、そのセンシングデータまたは当該センシングデータの変化パターンと判定参照データとを比較し、センシングデータまたは変化パターンが判定参照データである所定のしきい値を超えたとき、判定参照データとなる変化パターンにほぼ一致するとき、無線部例えば12aに対応する異種センサのセンシングデータから劣化兆候有りと判定するデータ診断手段14Fと、これら異種センサのセンシングデータの劣化兆候有りの状態から何れの部位から如何なる劣化兆候レベルを有する異常であるかを判定する異常診断手段14Dとで構成される。
【0071】
次に、以上のような劣化診断装置の動作について、図11を参照して説明する。
劣化診断装置2の無線部12aは、異なる診断対象部位に取付けた異種センサ例えば3a,3c,3d,3eに対応する各無線部5a,5c,5d,5eから部位識別データとともに予め定める例えば100msのサンプリング周期で順次センシングデータを取り込み、部位識別データ、収集時刻とともに専用メモリ11aに記憶する(図10(a)参照)。
【0072】
無線部12bは、異なる診断対象部位に取付けた異種センサ例えば3b,3c,3hに対応する各無線部5b,5c,5hから部位識別データとともに予め定める例えば20msのサンプリング周期で順次センシングデータを取り込み、部位識別データ、収集時刻とともに専用メモリ11bに記憶する(図10(b)参照)。
【0073】
無線部12nにおいても、無線部12a,12bとは異なる例えば50msのサンプリング周期で順次センシングデータを取り込み、部位識別データ、収集時刻とともに専用メモリ11nに記憶する(図10(n)参照)。
【0074】
以上のようにサンプリング周期を異ならせた理由は、劣化要因(劣化症状)の兆候を見出すのに最も望ましい周期とすることにより、劣化の兆候を迅速、かつ、確実に見つけ出すことにある。
【0075】
そこで、劣化診断処理部14の無線部特定手段14Eは、適宜なカウンタメモリ(図示せず)にM=1を設定し、当該M=1に相当する無線部例えば12aを選択した後(S21)、データ診断手段14Fを実行する。
【0076】
データ診断手段14Fは、無線部12aに対応する専用メモリ11aから第1のサンプリング周期(100ms)に関するセンシングデータを取り込み、そのセンシングデータまたは当該センシングデータの変化パターンと設定データメモリ13に設定される判定参照データとを比較し(S22)、センシングデータまたは変化パターンが判定参照データである所定のしきい値を超えたとき、判定参照データとなる変化パターンにほぼ一致したとき、無線部12aに対応する異種センサ3aのセンシングデータから劣化兆候有りと判定する(S23)。
【0077】
データ診断手段14Fは、劣化兆候有りと判定したとき、異種センサ3aの設置部位の部位識別データ、無線部識別データ、収集日時、センシングデータ、判定参照データ、劣化兆候有無等の劣化兆候に関するデータを適宜なメモリに一時的に保存する(S24)。
【0078】
データ診断手段14Fは、劣化兆候に関するデータを保存した後、全部位設置の異種センサのデータ診断完了か否かを判断し(S25)、未だ診断していない異種センサのセンシングデータがあれば、ステップS22に移行し、次の異種センサ3cに関するセンシングデータの診断を行う。ステップS25において、第1のサンプリング周期に関する全部の異種センサ3a,3c,3d,3eの診断が終したとき、異常判定手段14Dを実行する。
【0079】
異常判定手段14Dは、異種センサ3a,3c,3d,3eの何れか1種類のセンシングデータに劣化兆候有りと判定したときに異常と判定する(S26)。
【0080】
また、その他の例としては、例えば実施の形態1で説明したように、劣化兆候を最も顕著に表す物理量の順位に基づいて何れの順位の異種センサ及び幾つの数の異種センサのセンシングデータに劣化兆候有りかに応じて、設定データメモリ13に予め劣化兆候レベルを設定しておく。
【0081】
そして、異常判定手段14Dは、異種センサ3a,3c,3d,3eの何れか1種類のセンシングデータに劣化兆候有りと判定したとき、設定データメモリ13を参照し、何れの劣化兆候レベルを伴う異常であるかを判定することもできる。
【0082】
異常判定手段14Dは、劣化兆候レベルを伴う異常と判定すると、異常に関するデータ,例えば前述した異種センサの設置部位の部位識別データ、無線部識別データ、収集日時、センシングデータ、判定参照データ、劣化兆候有無等の他、劣化兆候レベル等を含めた異常に関するデータを診断処理データ格納メモリ16に格納する(S27)。
【0083】
引き続き、全無線部12a〜12nのデータ診断完了か否か判断し(S28)、未だ完了していない場合にはMに+1をインクリメントし(S29)、次の無線部を選択し特定する。ステップS28において、全部の無線部12a〜12nに関するデータの診断が完了した場合には処理を継続するか否かを判断する(S30)。処理継続の場合にはステップS21に戻り、同様の処理を繰り返し実行する。
【0084】
従って、以上のような実施の形態によれば、ローカル設備の関連性ある複数の診断対象部位に取付けられた異種センサで計測されたセンシングデータについて、劣化の兆候を見出すのに最も望ましいサンプリング周期を用いて当該センシングデータ取り込み、診断処理を実施するので、関連性ある複数の部位の劣化の状況を一括、かつ迅速に診断することができる。
【0085】
また、同一の設備を構成する上流から下流へと連結される装置、機器,部品に必要なセンサ3a〜3hを取付け、劣化の兆候を見出すのに最も望ましいサンプリング周期を用いて部位識別データと共にセンシングデータを取り込んで診断処理するので、何れの機器、部品に劣化兆候有りかを迅速に判定でき、しかも、劣化兆候発生源となった機器、部品から下流側の何れの物理量(センシングデータ)にどの程度の速度で劣化兆候が拡大していったかを同時に把握でき、保守員等により経験的におおよその劣化要因を予測することも可能となる。
【0086】
(実施の形態3)
本発明に係る遠隔保守システムの実施の形態について、図1,図9を用いて説明する。従って、本実施の形態において、実施の形態1,実施の形態2と同一構成には同一の符号を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0087】
この実施の形態は、異種センサユニット1及び対象診断部位の劣化兆候を予測する劣化診断装置2の他、劣化診断装置2に内部広域ネットワーク21を介して遠隔保守センター22が接続される。
【0088】
遠隔保守センター22は、キーボード及びポインティングデバイス等の入力部22a、遠隔サーバ22b、遠隔点検データベース22c及び表示部22dを備え、保守が必要な設備の劣化部位を判断し、保守員に対して保守作業に必要な保守支援情報を提供するものである。
【0089】
遠隔点検データベース22cには、予め診断対象部位識別データごとに、装置・機器・部品等の名称、特定の物理量(センシングデータ)の劣化兆候(劣化症状)に関する点検箇所、劣化原因、必要に応じて劣化兆候レベルに応じた点検期間等が紐付けされている。
【0090】
この実施の形態に動作について説明する。
WAN通信部17は、劣化兆候有りのもとに劣化診断処理部14から異常判定に基づく診断終了の通知を受けると、診断処理データ格納メモリ16からローカル設備の診断対象部位の劣化兆候に関する異常に関するデータを読み出し、内部広域ネットワーク21を通して遠隔保守センター22に送信する。
【0091】
遠隔保守センター22の遠隔点検サーバ22bは、WAN通信部17から異常に関するデータを受信すると、遠隔点検データベース22cの所定の空き領域内に、診断対象部位ごと、あるいは無線部12a,12b,…,12nごとの異常に関するデータを時系列的に順次保存していく。
【0092】
従って、以上のような実施の形態によれば、遠隔点検データベース22cに、前述したように予め診断対象部位識別データ毎に点検対象となる装置・機器・部品等の名称、各物理量による劣化兆候(劣化症状)に関する点検箇所、劣化原因、劣化兆候レベルに応じた点検期間等が規定されているので、劣化診断装置2から送信されてくる異常に関するデータから装置・機器・部品等の名称、各物理量による劣化兆候(劣化症状)に関する点検箇所、劣化原因、劣化兆候レベルに応じた点検期間等を表示部22dに表示し、保守員の保守支援情報として役立てることができる。
【0093】
また、表示部22dに診断対象部位ごとの装置・機器・部品等の名称、判定参照データ、何れの物理量に基づく時系列的なセンシングデータを表示すれば、監視員または保守員の経験等の判断のもとに前述した点検期間に修正を加えつつ、装置・機器・部品等の寿命を延命化するための最適な保守時期の指示を出すことができる。
【0094】
なお、上記実施の形態では、各無線部12a,12b,…ごとに専用メモリ11a,11b,…を設け、さらに診断処理データ格納メモリ16を設けているが、これらメモリメモリ11a,11b,…、16に記憶するデータを全て例えばデータベースに領域分けして記憶する構成であってもよい。
【0095】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【符号の説明】
【0096】
1…異種センサユニット、2…劣化診断装置、3a〜3h…異種センサ、4a〜4h…処理部、5a〜5h…無線部、6…無線情報、11a,11b,…,11n…専用メモリ、12a,12b,…、12n…無線部、13…設定データメモリ、14…劣化診断処理部、14A…部位特定手段、14B…長周期データ診断手段、14C…短周期データ診断手段、14D…異常判定手段、14E…無線部特定手段、14F…データ診断手段、15…リアルタイマ、16…診断処理データ格納メモリ、17…WAN通信部、21…内部広域ネットワーク、22…遠隔保守センター、22b…遠隔点検サーバ、22c…遠隔点検データベース。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のシステム設備の診断対象部位(装置,機器、部品に相当する)の劣化兆候(劣化傾向)から異常の程度を把握し、寿命を延命化する保全を実施する劣化診断システム及び遠隔保守システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のシステム設備の診断対象部位の動作状態を遠隔的に監視・診断するシステムとしては、ローカル設備の所要部位にセンサを取付け、当該センサにて所要のデータを取り込み、通信回線を利用してセンターに送信し、ここで所定の劣化診断用アルゴリズムを用いて、ローカル設備の診断対象部位の劣化状態を診断する。
【0003】
ところで、ローカル設備の診断対象部位に取付けるセンサは、コスト及びサイズ等の制約から計算能力の高いCPUを搭載できない場合が多い。そのため、センサとセンターの間で比較的ローカルに近い場所に中間処理装置を設置し、ローカル設備,ひいては診断対象部位の劣化診断処理を行うか、あるいは前述したようにセンサで計測されたデータをセンターに送信し、センター側にて診断対象部位の劣化診断処理を行う構成となっている。このとき、何れの劣化診断処理にも、性能向上が求められている。
【0004】
従来、劣化診断処理の性能を向上させる技術としては、センサ部と中間処理装置(不具合判定デバイス)が無線通信可能にて接続され、センサ部で収集した各センサのステータスデータを無線にて中間処理装置に送信する。
【0005】
中間処理装置は、受信したステータスデータに基づき、少なくとも1つの動作上の不具合(異常発生)の可能性を示すコンディションレベルを含むコンディションデータ(しきい値)を計算し、無線通信にてセンサ部に送る。このセンサ部は、予め不具合発生時期を示す複数種類のコンディションレベルが用意され、前記ステータスデータと中間処理装置から送られてくるコンディションレベルを含むコンディションデータとを比較し、複数種類のコンディションレベルの中から1つのコンディションレベルを選択する。センサ部は、選択されたコンディションレベルから異常発生日時を予測し、その異常発生予測日時が所定の期間内に入ったとき、警報通知を生成し提供する(特許文献1)。
【0006】
また、他の劣化診断処理の性能を向させる技術としては、バッテリの寿命を延命化する遠隔センシングシステムが提案されている(特許文献2)。この技術は、具体的には、センシング対象の状態を計測するセンサ及びバッテリを備えたセンサユニットとセンター装置とが無線ネットワークで接続され、センサユニットがセンシング対象の状態を表すセンシングデータをセンター装置に伝送する。
【0007】
センター装置は、センサユニットから送られてくるセンシング対象の状態が通常状態であるか、又は異常と分類される状態にあるかを判定する。センシング対象が通常状態にある場合には長いセンシング周期とし、異常状態にある場合には短いセンシング周期とし、センサユニットに送信する。センサユニットは、指定されたセンシング周期に基づき、センサを駆動し、センシング対象の状態を計測し、センシングデータをセンター装置に伝送する。
【0008】
その結果、センシング対象が通常の状態にあるとき、長いセンシング周期でセンサを駆動することから、バッテリの寿命を延命化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−087396号公報
【特許文献2】特開2006−187316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、以上のような従来のシステムでは、設備の所要部位に取付けたセンサの計測データを用い、予め定めたしきい値のもとに異常・正常を判定するのが一般的である。その結果、センサで計測されたセンシングデータがしきい値を超えない限り、正常と見なす傾向にあるので、随時稼動中の設備の状態から劣化の傾向ないし程度を捉えにくい問題がある。
【0011】
また、センサで計測されたセンシングデータと使用環境データとに基づき、例えば特許文献1の段落15に説明するような劣化確率モデルに従って劣化の確率を計算し、劣化の程度を判定するものである。
【0012】
しかし、劣化の兆候は、複合的な要因に基づく場合が多いことから、劣化確率モデルに従って劣化の確率を計算したとしても、一律に劣化のレベルを判定することが難しく、幾つかの複合的な要因を含む結果、複数のセンシングデータと劣化の影響との関係を考慮しない限り、劣化の傾向を高精度に予測することはできない。
【0013】
さらに、特許文献2に記載の技術によれば、センサを駆動するバッテリの消費電力の低減化を図る観点から、センシング対象の通常状態時にサンプリング周期を長くし、異常状態時にサンプリング周期を短くする方法である。
【0014】
しかし、サンプリング周期を変える方法は、通常状態時にサンプリング周期が長くなるので、種々の要因のもとに急激な劣化が生じたとき、その劣化の検出が難しくなる問題がある。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ローカル設備の診断対象部位に取付けた異種センサから異なるサンプリング周期でセンシングデータを取り込み、劣化兆候を迅速、高精度に判定し、診断対象部位の劣化兆候レベルを含む異常の状態を判定する劣化診断システムを提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、劣化診断システムで得られた異常に関するデータを遠隔的に受け取り、異常に関するデータに基づいて保守員に適切な点検支援情報を提示し寿命を延命化する保全を実施する遠隔保守システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る劣化診断システムは、ローカル設備の所要とする診断対象部位に取付けられ、異なる物理量を計測する異種センサの計測データを複数のサンプリング周期でセンシングして無線送信する複数の異種センサユニットと、
各異種センサユニットから前記サンプリング周期別にセンシングデータを取り込み、前記サンプリング周期別に前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断し、異常判定処理を行う劣化診断装置とを備えた構成である。
【0018】
なお、劣化診断装置としては、複数の異種センサユニットから送信されてくる長周期のセンシングデータを受信し格納する第1の無線部と、複数の異種センサユニットから送信されてくる短周期のセンシングデータを受信し格納する第2の無線部と、前記第1の無線部にて格納された長周期のセンシングデータと長周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候有無を診断する長周期データ診断手段と、前記第2の無線部にて格納された前記短周期のセンシングデータと短周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候有無を診断する短周期データ診断手段と、これら両診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りと判定したときにセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを有する構成である。
【0019】
また、別の本発明に係る劣化診断システムは、ローカル設備の異なる診断対象部位に取付けられ、各部位の計測対象に合った異なる物理量を計測する異種センサの計測データを所要とする高速のサンプリング周期でセンシングして無線送信するn個(nは整数)の異種センサユニットと、これら異種センサユニットの出力から劣化診断処理を行う劣化診断装置とで構成され、
劣化診断装置は、前記n個より少ない任意数の異種センサユニットのセンシングデータから、それぞれ前記サンプリング周期よりも長い異なる複数の周期のセンシングデータを取り込んで格納する複数の無線部と、各無線部にて取り込んだ異なる各周期のセンシングデータと各周期判定参照データとを比較し、前記異なる周期ごとに前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断するデータ診断手段と、このデータ診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りの判定時にセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを設けた構成である。
【0020】
さらに、本発明に係る遠隔保守システムは、前述した構成の劣化診断システムと、前記劣化診断装置に設けられ、前記異常判定手段で記憶された前記異常に関係するデータを読み出し、広域ネットワークを通して伝送するWAN通信部と、前記広域ネットワークに接続され、前記WAN通信部から伝送されてくる異常に関係するデータ取得し、当該異常に関係するデータに基づいて前記診断対象設備または部位に関する点検支援情報を取得し、保守員に提示する遠隔保守センターとを備えた構成である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ローカル設備の診断対象部位に取付けた異種センサから異なるセンシング周期でセンシングデータを取り出し、診断対象部位の劣化の兆候を見出すことにより、異なる複数の物理量の変化から劣化の兆候有無を判定し、例えば長周期のセンシングデータから劣化の兆候有りを判定したとき、短周期のセンシングデータから劣化の兆候有無を見出すことにより、迅速、かつ、精度良く劣化の兆候を検出でき、さらに長周期及び短周期のセンシングデータの劣化兆候有りから劣化兆候のレベル含む部位異常を取得できる劣化診断システムを提供できる。
【0022】
また、本発明は、劣化診断システムで得られた異常に関するデータを遠隔的に受け取り、異常に関するデータに基づいて保守員に適切な点検支援情報を提示し点検を促すことにより、診断対象設備又は部位の寿命を延命化できる遠隔保守システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る劣化診断システム及び実施の形態3に係る遠隔保守システムを示す構成図。
【図2】設定データメモリに設定される判定参照データ及び劣化兆候レベルデータの配列例図。
【図3】3つの異種センサで計測されたデータを長周期のサンプリング時間でセンシングしている状態を説明する図。
【図4】劣化診断装置の長周期収集用の無線部が異種センサユニットから送られてくるセンシングデータを収集して専用メモリに格納したときのデータの一配列例図。
【図5】3つの異種センサで計測されたデータを短周期のサンプリング時間でセンシングしている状態を説明する図。
【図6】劣化診断装置の短周期収集用の無線部が異種センサユニットから送られてくるセンシングデータを収集して専用メモリに格納したときのデータの一配列例図。
【図7】本発明の実施の形態1に係る劣化診断システムの劣化診断装置の一連の処理例を説明するフロー図。
【図8】診断対象部位を異常と判定したとき、診断処理データ格納メモリに格納するセンシングデータを含む異常に係るデータの一例を示す図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る劣化診断システム及び実施の形態3に係る遠隔保守システムを示す構成図。
【図10】異なるサンプリング周期でそれぞれ収集した異種センサのセンシングデータの配列例を示す図。
【図11】本発明の実施の形態2に係る劣化診断システムの劣化診断装置の一連の処理例を説明するフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る劣化診断システムの実施の形態1を示す構成図である。
劣化診断システムは、ローカル設備の診断対象部位(装置,機器,部品に相当する。以下、同じ)に取付けられる異種センサユニット1と、診断対象部位の劣化傾向を予測する劣化診断装置2とが設けられ、これら異種センサユニット1と劣化診断装置2は無線通信手段により通信可能に接続されている。
【0025】
異種センサユニット1は、診断目的に応じて定まる数の異種センサ3a〜3hと、各センサ3a〜3hの出力をサンプリング周期でサンプリングする各センサ対応の処理部4a〜4hと、各処理部4a〜4hでサンプリングされたセンシングデータを無線送信する無線部5a〜5hとが接続されている。
【0026】
異種センサ3a〜3hは、具体的には,例えば温度センサ、湿度センサ,電圧センサ,電流センサ,加速度センサ,変位センサ,照度センサ,音響センサ等が挙げられ、診断対象部位である装置,機器,部品の劣化兆候を的確に反映できる物理量を計測するためのセンサが適宜選択的に組合せ選定される。
【0027】
処理部4a〜4hは、組合せ選択された複数の異種センサ3a〜3hで計測されたデータをそれぞれ複数のサンプリング周期(例えば2種類のサンプリング周期)でサンプリングするものである。
【0028】
無線部5a〜5hは、対応する各処理部4a〜4hでサンプリングされたセンシングデータの無線情報6を無線送信するものであって、例えばパソコンと携帯電話との間で情報のやり取りを行う比較的近距離(例えば100m max範囲)で通信する通信規格を持つ例えばBT(Bluetooth(登録商標)TM)等で使われる周波数ポッピング型の前記無線情報6を用いて劣化診断装置2に向けて送信する。
【0029】
劣化診断装置2は、各無線部5a〜5hから無線送信されてくる長周期のセンシングデータを受信し、対応する専用メモリ11aに格納する無線部12a、同じく各無線部5a〜5hから無線送信されてくる短周期のセンシングデータを受信し、対応する専用メモリ11bに格納するする無線部12b、予め劣化兆候を判定する判定参照データや劣化兆候レベルを設定する設定データメモリ13、CPUで構成された劣化診断処理部14、リアルタイマ15、診断処理データ格納メモリ16及びWAN通信部17が設けられている。
【0030】
設定データメモリ13には、図2に示すように診断対象部位ごとに劣化兆候の判定参照データ及び劣化兆候レベルデータが設定されている。劣化兆候の判定参照データとしては、例えば診断対象部位××Aに対して、温度センサ3a、電圧センサ3c,電流センサ3dを組合せたとき、温度t,電圧v,電流iの長周期判定参照データ(例えば長周期における劣化兆候を比較的顕著に表すしきい値データや変化パターン、その他診断対象部位特有の変化傾向を表すデータ等)LA1,LA2,LA3、同じく温度t,電圧v,電流iの短周期判定参照データ(例えば短周期における劣化兆候を比較的顕著に表す変化率その他診断対象部位特有の変化傾向を表すデータ等)SA1,SA2,SA3が設定される。
【0031】
劣化兆候レベルデータは、温度t,電圧v,電流iに関する長周期センシングデータtj,vj,ij,Δtj,Δvj,Δij(j=1,2,…,n、図4及び図6参照)の何れに劣化兆候有りかに応じて、予め定められる兆候レベル1,…,5を意味する。
【0032】
劣化診断処理部14は、ローカル診断の診断対象部位を特定する部位特定手段14Aと、長周期のセンシングデータと予め設定された長周期の判定参照データ(例えばしきい値、変化パターン等)とを比較し、診断の診断対象部位の劣化兆候の有無を判定する長周期データ診断手段14Bと、短周期のセンシングデータと予め設定された短周期データの劣化の兆候を表す判定参照データ(例えば変化率データ)とを比較し、診断の診断対象部位の劣化兆候の有無を判定する短周期データ診断手段14Cと、これら両診断手段14B,14Cの診断判定結果から劣化兆候レベルを伴う異常を予測する異常判定手段14Dとで構成される。
【0033】
リアルタイマ15は、劣化診断処理部14にて異常を予測したとき、各専用メモリ11a,11bから該当する長周期センシングデータ、短周期センシングデータを取り出し、データ収集日・時刻、判定参照データ、劣化兆候レベル等を診断処理データ格納メモリ16に格納する。
【0034】
次に、以上のように構成された劣化診断システムの動作について説明する。
先ず、異種センサユニット1を構成する処理部4a〜4hは、予め定める複数のサンプリング周期,例えば長いサンプリング周期及び短いサンプリング周期にて、予め選択された複数の異種センサ3a〜3hで計測されたデータをサンプリングし、対応する無線部5a〜5hを通して長周期及び短周期のセンシングデータとして劣化診断装置2に向けて無線送信する。
【0035】
このとき、設備のある診断対象部位に例えば異種センサ3a,3d,3e、同一設備の異なる診断対象部位に例えば異種センサ3a,3c,3fを取付けている場合、例えば部位識別データ××A,××Bとともに長周期及び短周期のセンシングデータを送信する。
【0036】
ここで、劣化診断装置2の無線部12aは、ある診断対象部位に取付けた例えば異種センサ3a,3d,3eのセンシングデータに着目して考えると、図3に示すように長周期のサンプリング時間T1,T2,T3,…毎に収集した異種センサ3a,3d,3eに関するセンシングデータを受信し、図4に示す所定のフォーマットに従って専用メモリ11aに順次時系列的に格納していく。このとき、劣化診断処理部14であるCPUを径由してリアルタイマ15から収集時刻を採取し、当該収集時刻とともに、部位識別データ、各異種センサのセンシングデータを対応する専用メモリ11aに格納していく。
【0037】
但し、図4は、説明の便宜上、設備の診断対象部位に図1の全ての異種センサ3a〜3hを取付けたときの全てのセンシングデータを格納した例を示している。
【0038】
一方、劣化診断装置2の無線部12bでは、図5に示すように短周期のサンプリング時間Δ1,Δ2,Δ3,…毎に収集した異種センサ3a,3d,3eのセンシングデータを受信し、図6に示す所定のフォーマットに従って、劣化診断処理部14であるCPUを径由してリアルタイマ15から収集時刻を採取し、当該収集時刻とともに、部位識別データ、異種センサ3a,3d,3eのセンシングデータを専用メモリ11bに順次時系列的に格納していく。
【0039】
劣化診断処理部14は、各無線部12a,12bから所定時間毎のセンシングデータを専用メモリ11a,11bに格納されたことの通知を受けたとき、あるいは自ら所定の時間毎に専用メモリ11a,11bからセンシングデータを読み出し、図7に示す一連の診断処理を実行する。
【0040】
すなわち、劣化診断処理部14を構成する部位特定手段14Aは、専用メモリ11a,11bに格納されている診断対象部位××Aに基づき、適宜なカウンタメモリ(図示せず)にi=1を設定し(S1)、診断対象部位である例えば電磁ブレーキ(××A)を特定する。
【0041】
一例として、電磁ブレーキは温度センサ3a,電圧センサ3c,電流センサ3dが取付けられているものとする。電磁ブレーキの劣化は、過去の経験等から駆動電圧、電流の状態から劣化の状況を監視することができるが、駆動電圧と電流から劣化の兆候を検出するには、短周期でサンプリングされた多量のデータを監視する必要がある。その結果、劣化診断処理部14であるCPUは、多量のデータを高速処理するパワーの大きなものが必要となる。
【0042】
そこで、本発明は、CPUパワーの節約を図りつつ、劣化の兆候を効率よく捉えるためには、温度センサ3a,電圧センサ3c,電流センサ3dの長周期のサンプリングデータと短周期のサンプリングデータを有効に活用することにある。
【0043】
そこで、劣化診断処理部14は、診断対象部位(例えば電磁ブレーキ××A)を特定した後、長周期データ診断手段14Bを実行する。
【0044】
長周期データ診断手段14Bは、専用メモリ11aから温度センサ3aの長周期のセンシングデータを読み出し、長周期のセンシングデータtjと設定データメモリ13に設定される劣化の兆候を表す判定参照データ(例えばしきい値、変化パターン等)t=LA1とを比較し(S2)、劣化兆候の有無を判定する(S3)。
【0045】
具体的には、電磁ブレーキのシューとドラムあるいはシリンダの接触抵抗の発熱によるブレーキカバーの温度上昇が劣化の兆候の有効な目安となる。このことは、特に温度に関する長周期のセンシングデータの温度t1〜tn+1の状態から検出できる。このとき、温度上昇に伴って電圧センサ3c,電流センサ3dの長周期のセンシングデータにも変化が現れてくる。例えば電磁ブレーキ××Aに関する劣化の兆候を判断するとき、最も劣化の兆候が顕著に表れる順位を温度、電圧、電流とすると、これら何れの物理量が判定参照データを超えるかに応じて劣化兆候のレベルを定める目安にもなる。
【0046】
そこで、長周期データ診断手段14Bは、温度に関して劣化兆候有りと判定したとき、適宜なメモリの空き領域に診断対象部位の識別データ××A、リアルタイマ15からデータ収集日時、該当長周期のセンシングデータ、温度に劣化の兆候有り等のデータを一時的に保存するとともに、フラグ「1」を設定する(S4)。
【0047】
長周期データ診断手段14Bは、全センサデータ診断完了かを判断し(S5)、未だ完了していない場合にはステップS2に戻り、次の電圧センサ3cに関する長周期のセンシングデータvjと設定データメモリ13に設定される劣化の兆候を表す判定参照データ(例えばしきい値、変化パターン等)t=LA2とを比較し(S2)、劣化兆候の有無を判定する(S3)。引き続き、電流センサ3dの長周期のセンシングデータについても、劣化兆候の有無を判定する(S3)。
【0048】
劣化診断処理部14は、ステップS5にて全センサデータの診断処理が完了してと判断すると、劣化兆候有りを表すフラグ「1」が立っていることを条件とし(S6)、短周期データ診断手段14Cを実行する。
すなわち、短周期データ診断手段14Cは、専用メモリ11bから温度センサ3aの短周期センシングデータΔt1〜Δt10を読み出し、当該短周期センシングデータΔt1〜Δt10と短周期データにおける劣化の兆候を表す判定参照データ(例えば変化率等)t=SA1とを比較し(S7)、詳細な劣化兆候の有無を判定する(S8)。ここで、劣化兆候の有り場合には、温度に関して劣化兆候有りと判定したとき、適宜なメモリの空き領域に記憶させた長周期の異常に関連するデータに対応付けて、識別データ××A、リアルタイマ15からデータ収集日時、該当短周期のセンシングデータ、温度に劣化の兆候有り等のデータを一時的に保存するとともに、フラグ「1」を設定する(S9)。
【0049】
引き続き、全センサデータの診断処理完了かを判断し(S10)、電圧及び電流についてもステップS7〜S9の処理を繰り返し実行し、劣化兆候の有無を判定する。
【0050】
そして、ここで診断対象部位に関する組合せ選択された全センサのセンシングデータの診断処理が終了すると、異常判定手段14Dを実行する。
【0051】
異常判定手段14Dは、長周期用フラグ及び短周期用フラグとして「1」が立っており(S11)、長周期及び短周期データ診断手段14B、14Cとも該当部位××Aに劣化兆候有りと判定しているので、該当設備の診断対象部位××Aが異常と判定し(S11)、長周期及び短周期データ診断手段14B、14Cで一時的に保存した異常に関するデータを診断処理データ格納メモリ16に格納する(S12)。
【0052】
すなわち診断処理データ格納メモリ16には、長周期の診断で得られた診断対象部位ないし部位識別データ××A、長周期データ収集時刻、該当異種センサの長周期センシングデータ、長周期用判定参照データ、劣化兆候の有無の他、短周期の診断で得られた短周期データ収集時刻、該当異種センサの短周期センシングデータ、短周期用判定参照データ、劣化兆候の有無のデータが格納される。
【0053】
なお、異常判定手段14Dとしては、両周期データ診断手段14B、14Cの診断結果から何れも劣化兆候有りと判定したとき、例えば図2に示す劣化兆候レベルデータのもとに劣化兆候レベルを伴う異常判定を行っても良い。
【0054】
例えば部位××Aに関する劣化兆候の程度は、温度、電圧、電流の順位で劣化兆候の影響が現れるものとすると、異常判定手段14Dは、図2に示す劣化兆候レベルデータに従い、長周期及び短周期の温度tj,Δtj、電圧vj、Δvj、電流ij、Δijの全てのセンシングデータに劣化兆候有りの場合、最も劣化の影響を大きく受けて劣化兆候レベル5、長周期及び短周期の温度tj,Δtj、電圧vj、Δvjの場合にはレベル4、温度tj,Δtjの場合にはレベル3、電圧vj、Δvj、電流ij、Δijの場合にはレベル2、電流ij、Δijのみの場合にはレベル1を有する該当部位の異常と判定し(S12)、異常に関するデータに含めて診断処理データ格納メモリ16に格納してもよい(S13)。
【0055】
なお、劣化診断装置2に表示部(図示せず)が設けられている場合、診断処理データ格納メモリ16から必要なデータを取り出し、劣化兆候に関するデータを表示し、比較的ローカルに近い場所の中間処理装置である劣化診断装置2で設備の状況を監視することができる。
【0056】
さらに、劣化診断装置2は、全診断対象部位の診断処理が完了したか否かを判断し(S14)、未だ実施していない診断対象設備があれば、ステップS15にてiに+1インクリメントし、ステップS2に戻り、同様の処理を繰り返し実行する。
【0057】
ステップS14にて全診断対象部位に関する診断処理を実施している場合、引き続き継続処理するか判断し(S16)、継続処理する場合にはステップS1に移行し、新たに診断対象部位を特定し、一連の処理を実行する。
【0058】
従って、以上のような実施の形態によれば、ローカル設備の同一の診断対象部位(装置,機器,部品頭)に取付けられた複数の異種センサ3a〜3hの出力から長周期のセンシングデータを監視し、劣化の兆候有りと判定されたとき、複数の異種センサ3a〜3hの出力である短周期センシングデータを監視し、短周期でも劣化の兆候有りと判定されたとき、診断対象部位が異常であると判定し、異常解析に必要なデータをまとめて保存し、必要に応じて表示し、確認することができ、さらに警報等により通知することができる。
【0059】
また、長周期のセンシングデータから劣化の兆候有りと判定したとき、詳細に短周期センシングデータを確認することから、CPUの負荷を低減しつつ診断対象部位の劣化状況を高精度に予測できる。
【0060】
さらに、部位の劣化の兆候を最も顕著に反映する複数の順位の物理量を取り込んで劣化の兆候を診断するので、劣化兆候の物理量の順位から劣化兆候のレベル、例えば即刻点検、ある程度期間をおいて点検できるとか、非常に重要な物理量の急激な変化から劣化が急激に進行中であるなどを予測可能となる。
【0061】
(その他の実施の形態例)
(1) 上記実施の形態では、長周期のセンシングデータから劣化の兆候有りと判定したとき、短周期のセンシングデータの診断処理を行うようにしたが、設備その他の環境状況等を考慮し、長周期のセンシングデータと短周期のセンシングデータとを同時並行的に診断処理し、両方のセンシングデータの相関関係を見ながら劣化の兆候有無を判定するようにしてもよい。
【0062】
(2) また、上記実施の形態では、CPUで構成される劣化診断処理部14で劣化の診断処理を行っているが、高速演算処理が可能なDSP(Digital Signal Processor)や特定の目的・機能に特化したLSIであるASSP(Application Specific Standard Produce)で構成される劣化診断処理部14を用いてもよい。
【0063】
(実施の形態2)
図9は本発明に係る劣化診断システムの実施の形態2を示す構成図である。なお、同図において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、その重複する部分の説明を省略する。
実施の形態1では、ローカル設備の同一診断対象部位に複数の異種センサ3a〜3hを取付けた例について説明したが、実施の形態2では、ローカル設備の異なる診断対象部位に異種センサ3a〜3hを取付けた例である。なお、異なる診断対象部位とは、複数の装置、機器、部品等が連なってローカル設備を構成しているが、それらの連なっている装置、機器、部品等が部位となる。
【0064】
この劣化診断システムの異種センサユニット1は、設備の異なる診断対象部位ごとに当該部位の劣化兆候を最も顕著に表す物理量を計測する複数の異種センサを取付け、これら異種センサ3a〜3hの計測データをそれぞれ短いサンプリング周期で収集する。
【0065】
一方、劣化診断装置2には、複数の無線部12a,12b,…,12nが設けられ、これら無線部12a,12b,…,12nには専用メモリ11a,11b,…,11nが接続されている。
【0066】
各無線部12a,12b,…,12nは、異なる診断対象部位ごとに取付けられた異種センサの計測データについて、劣化要因の兆候を最も見出すのに望ましい異なるサンプリング周期でセンシングデータとして収集し、劣化診断処理部14であるCPUを径由してリアルタイマ15から収集時刻を採取し、当該時刻データとともに、対応する専用メモリ11a,11b,…,11nに格納していく。
【0067】
具体的には、無線部12aは、少なくとも処理部4a,4c,4d,4eのサンプリング周期よりも整数倍長周期となる例えば100msのサンプリング周期で異種センサ3a,3c,3d,3eで計測された部位識別データ付きのセンシングデータを収集し、その収集時刻とともに専用メモリ11aに記憶する(図10(a)参照)。
【0068】
無線部部12bは、少なくとも処理部4b,4c,4hのサンプリング周期よりも整数倍長周期となる例えば20msのサンプリング周期で異種センサ3b,3c,3hで計測された部位識別データ付きのセンシングデータを収集し、その収集時刻とともに専用メモリ11bに記憶する(図10(b)参照)。
【0069】
さらに、無線部12nは、少なくとも処理部4c,4gのサンプリング周期よりも整数倍長周期となる例えば50msのサンプリング周期で異種センサ3c,3gで計測された部位識別データ付きのセンシングデータを収集し、その収集時刻とともに専用メモリ11nに記憶する(図10(n)参照)。
【0070】
劣化診断処理部14としては、一定の順序に従って選択される無線部を特定する無線部特定手段14Eと、この無線部特定手段14Eのサンプリング周期で収集した専用メモリ11a,11b,…のセンシングデータを取り出し、そのセンシングデータまたは当該センシングデータの変化パターンと判定参照データとを比較し、センシングデータまたは変化パターンが判定参照データである所定のしきい値を超えたとき、判定参照データとなる変化パターンにほぼ一致するとき、無線部例えば12aに対応する異種センサのセンシングデータから劣化兆候有りと判定するデータ診断手段14Fと、これら異種センサのセンシングデータの劣化兆候有りの状態から何れの部位から如何なる劣化兆候レベルを有する異常であるかを判定する異常診断手段14Dとで構成される。
【0071】
次に、以上のような劣化診断装置の動作について、図11を参照して説明する。
劣化診断装置2の無線部12aは、異なる診断対象部位に取付けた異種センサ例えば3a,3c,3d,3eに対応する各無線部5a,5c,5d,5eから部位識別データとともに予め定める例えば100msのサンプリング周期で順次センシングデータを取り込み、部位識別データ、収集時刻とともに専用メモリ11aに記憶する(図10(a)参照)。
【0072】
無線部12bは、異なる診断対象部位に取付けた異種センサ例えば3b,3c,3hに対応する各無線部5b,5c,5hから部位識別データとともに予め定める例えば20msのサンプリング周期で順次センシングデータを取り込み、部位識別データ、収集時刻とともに専用メモリ11bに記憶する(図10(b)参照)。
【0073】
無線部12nにおいても、無線部12a,12bとは異なる例えば50msのサンプリング周期で順次センシングデータを取り込み、部位識別データ、収集時刻とともに専用メモリ11nに記憶する(図10(n)参照)。
【0074】
以上のようにサンプリング周期を異ならせた理由は、劣化要因(劣化症状)の兆候を見出すのに最も望ましい周期とすることにより、劣化の兆候を迅速、かつ、確実に見つけ出すことにある。
【0075】
そこで、劣化診断処理部14の無線部特定手段14Eは、適宜なカウンタメモリ(図示せず)にM=1を設定し、当該M=1に相当する無線部例えば12aを選択した後(S21)、データ診断手段14Fを実行する。
【0076】
データ診断手段14Fは、無線部12aに対応する専用メモリ11aから第1のサンプリング周期(100ms)に関するセンシングデータを取り込み、そのセンシングデータまたは当該センシングデータの変化パターンと設定データメモリ13に設定される判定参照データとを比較し(S22)、センシングデータまたは変化パターンが判定参照データである所定のしきい値を超えたとき、判定参照データとなる変化パターンにほぼ一致したとき、無線部12aに対応する異種センサ3aのセンシングデータから劣化兆候有りと判定する(S23)。
【0077】
データ診断手段14Fは、劣化兆候有りと判定したとき、異種センサ3aの設置部位の部位識別データ、無線部識別データ、収集日時、センシングデータ、判定参照データ、劣化兆候有無等の劣化兆候に関するデータを適宜なメモリに一時的に保存する(S24)。
【0078】
データ診断手段14Fは、劣化兆候に関するデータを保存した後、全部位設置の異種センサのデータ診断完了か否かを判断し(S25)、未だ診断していない異種センサのセンシングデータがあれば、ステップS22に移行し、次の異種センサ3cに関するセンシングデータの診断を行う。ステップS25において、第1のサンプリング周期に関する全部の異種センサ3a,3c,3d,3eの診断が終したとき、異常判定手段14Dを実行する。
【0079】
異常判定手段14Dは、異種センサ3a,3c,3d,3eの何れか1種類のセンシングデータに劣化兆候有りと判定したときに異常と判定する(S26)。
【0080】
また、その他の例としては、例えば実施の形態1で説明したように、劣化兆候を最も顕著に表す物理量の順位に基づいて何れの順位の異種センサ及び幾つの数の異種センサのセンシングデータに劣化兆候有りかに応じて、設定データメモリ13に予め劣化兆候レベルを設定しておく。
【0081】
そして、異常判定手段14Dは、異種センサ3a,3c,3d,3eの何れか1種類のセンシングデータに劣化兆候有りと判定したとき、設定データメモリ13を参照し、何れの劣化兆候レベルを伴う異常であるかを判定することもできる。
【0082】
異常判定手段14Dは、劣化兆候レベルを伴う異常と判定すると、異常に関するデータ,例えば前述した異種センサの設置部位の部位識別データ、無線部識別データ、収集日時、センシングデータ、判定参照データ、劣化兆候有無等の他、劣化兆候レベル等を含めた異常に関するデータを診断処理データ格納メモリ16に格納する(S27)。
【0083】
引き続き、全無線部12a〜12nのデータ診断完了か否か判断し(S28)、未だ完了していない場合にはMに+1をインクリメントし(S29)、次の無線部を選択し特定する。ステップS28において、全部の無線部12a〜12nに関するデータの診断が完了した場合には処理を継続するか否かを判断する(S30)。処理継続の場合にはステップS21に戻り、同様の処理を繰り返し実行する。
【0084】
従って、以上のような実施の形態によれば、ローカル設備の関連性ある複数の診断対象部位に取付けられた異種センサで計測されたセンシングデータについて、劣化の兆候を見出すのに最も望ましいサンプリング周期を用いて当該センシングデータ取り込み、診断処理を実施するので、関連性ある複数の部位の劣化の状況を一括、かつ迅速に診断することができる。
【0085】
また、同一の設備を構成する上流から下流へと連結される装置、機器,部品に必要なセンサ3a〜3hを取付け、劣化の兆候を見出すのに最も望ましいサンプリング周期を用いて部位識別データと共にセンシングデータを取り込んで診断処理するので、何れの機器、部品に劣化兆候有りかを迅速に判定でき、しかも、劣化兆候発生源となった機器、部品から下流側の何れの物理量(センシングデータ)にどの程度の速度で劣化兆候が拡大していったかを同時に把握でき、保守員等により経験的におおよその劣化要因を予測することも可能となる。
【0086】
(実施の形態3)
本発明に係る遠隔保守システムの実施の形態について、図1,図9を用いて説明する。従って、本実施の形態において、実施の形態1,実施の形態2と同一構成には同一の符号を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0087】
この実施の形態は、異種センサユニット1及び対象診断部位の劣化兆候を予測する劣化診断装置2の他、劣化診断装置2に内部広域ネットワーク21を介して遠隔保守センター22が接続される。
【0088】
遠隔保守センター22は、キーボード及びポインティングデバイス等の入力部22a、遠隔サーバ22b、遠隔点検データベース22c及び表示部22dを備え、保守が必要な設備の劣化部位を判断し、保守員に対して保守作業に必要な保守支援情報を提供するものである。
【0089】
遠隔点検データベース22cには、予め診断対象部位識別データごとに、装置・機器・部品等の名称、特定の物理量(センシングデータ)の劣化兆候(劣化症状)に関する点検箇所、劣化原因、必要に応じて劣化兆候レベルに応じた点検期間等が紐付けされている。
【0090】
この実施の形態に動作について説明する。
WAN通信部17は、劣化兆候有りのもとに劣化診断処理部14から異常判定に基づく診断終了の通知を受けると、診断処理データ格納メモリ16からローカル設備の診断対象部位の劣化兆候に関する異常に関するデータを読み出し、内部広域ネットワーク21を通して遠隔保守センター22に送信する。
【0091】
遠隔保守センター22の遠隔点検サーバ22bは、WAN通信部17から異常に関するデータを受信すると、遠隔点検データベース22cの所定の空き領域内に、診断対象部位ごと、あるいは無線部12a,12b,…,12nごとの異常に関するデータを時系列的に順次保存していく。
【0092】
従って、以上のような実施の形態によれば、遠隔点検データベース22cに、前述したように予め診断対象部位識別データ毎に点検対象となる装置・機器・部品等の名称、各物理量による劣化兆候(劣化症状)に関する点検箇所、劣化原因、劣化兆候レベルに応じた点検期間等が規定されているので、劣化診断装置2から送信されてくる異常に関するデータから装置・機器・部品等の名称、各物理量による劣化兆候(劣化症状)に関する点検箇所、劣化原因、劣化兆候レベルに応じた点検期間等を表示部22dに表示し、保守員の保守支援情報として役立てることができる。
【0093】
また、表示部22dに診断対象部位ごとの装置・機器・部品等の名称、判定参照データ、何れの物理量に基づく時系列的なセンシングデータを表示すれば、監視員または保守員の経験等の判断のもとに前述した点検期間に修正を加えつつ、装置・機器・部品等の寿命を延命化するための最適な保守時期の指示を出すことができる。
【0094】
なお、上記実施の形態では、各無線部12a,12b,…ごとに専用メモリ11a,11b,…を設け、さらに診断処理データ格納メモリ16を設けているが、これらメモリメモリ11a,11b,…、16に記憶するデータを全て例えばデータベースに領域分けして記憶する構成であってもよい。
【0095】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【符号の説明】
【0096】
1…異種センサユニット、2…劣化診断装置、3a〜3h…異種センサ、4a〜4h…処理部、5a〜5h…無線部、6…無線情報、11a,11b,…,11n…専用メモリ、12a,12b,…、12n…無線部、13…設定データメモリ、14…劣化診断処理部、14A…部位特定手段、14B…長周期データ診断手段、14C…短周期データ診断手段、14D…異常判定手段、14E…無線部特定手段、14F…データ診断手段、15…リアルタイマ、16…診断処理データ格納メモリ、17…WAN通信部、21…内部広域ネットワーク、22…遠隔保守センター、22b…遠隔点検サーバ、22c…遠隔点検データベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカル設備の所要とする診断対象部位に取付けられ、異なる物理量を計測する異種センサの計測データを複数のサンプリング周期でセンシングして無線送信する複数の異種センサユニットと、
各異種センサユニットから前記サンプリング周期別にセンシングデータを取り込み、前記サンプリング周期別に前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断し、異常判定処理を行う劣化診断装置と
を備えたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の劣化診断システムにおいて、
前記異種センサユニットは、異なる物理量を計測する複数の異種センサと、所要の長周期及び短周期に関するサンプリング周期で前記各異種センサの計測データをセンシングする各異種センサ対応の処理部と、各処理部のセンシングデータを無線送信する各処理部対応のセンサ側無線部とを設けたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項3】
請求項1に記載の劣化診断システムにおいて、
前記劣化診断装置は、前記複数の異種センサユニットから送信されてくる前記長周期のセンシングデータを受信し格納する第1の無線部と、前記複数の異種センサユニットから送信されてくる前記短周期のセンシングデータを受信し格納する第2の無線部と、前記第1の無線部にて格納された前記長周期のセンシングデータと長周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断する長周期データ診断手段と、前記第2の無線部にて格納された前記短周期のセンシングデータと短周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断する短周期データ診断手段と、これら両診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りの判定時にセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを備えたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項4】
請求項3に記載の劣化診断システムにおいて、
前記短周期データ診断手段は、前記長周期データ診断手段で前記診断対象接部位に劣化兆候有りと診断されたとき、前記短周期のセンシングデータに基づいて前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断することを特徴とする劣化診断システム。
【請求項5】
ローカル設備の異なる部位に取付けられ、各部位の計測対象に合った異なる物理量を計測する異種センサの計測データを所要とする高速のサンプリング周期でセンシングして無線送信するn個(nは整数)の異種センサユニットと、
前記n個より少ない任意数の異種センサユニットのセンシングデータから、それぞれ前記サンプリング周期よりも長い異なる複数の周期のセンシングデータを取り込んで格納する複数の無線部と、各無線部にて取り込んだ異なる各周期のセンシングデータと各周期判定参照データとを比較し、前記異なる周期ごとに前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断するデータ診断手段と、このデータ診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りの判定時にセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを備えたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項6】
請求項3ないし請求項6の何れか一項に記載の劣化診断システムにおいて、
前記異常判定手段は、前記診断手段が劣化兆候有りと診断したとき、前記劣化兆候を最も顕著に表す前記異種センサのセンシングデータの順位を考慮し、劣化兆候レベルを伴う異常判定結果を出力することを特徴とする劣化診断システム。
【請求項7】
請求項1、請求項3、請求項5の何れか一項に記載された構成の劣化診断システムと、
前記劣化診断装置に設けられ、前記異常判定手段にて記憶された前記異常に関係するデータを読み出し、広域ネットワークを通して伝送する WAN通信部と、
前記広域ネットワークに接続され、前記WAN通信部から伝送されてくる異常に関係するデータ取得し、当該異常に関係するデータに基づいて前記診断対象部位に関する点検支援情報を取得し、保守員に提示する遠隔保守センターと
を備えたことを特徴とする遠隔保守システム。
【請求項1】
ローカル設備の所要とする診断対象部位に取付けられ、異なる物理量を計測する異種センサの計測データを複数のサンプリング周期でセンシングして無線送信する複数の異種センサユニットと、
各異種センサユニットから前記サンプリング周期別にセンシングデータを取り込み、前記サンプリング周期別に前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断し、異常判定処理を行う劣化診断装置と
を備えたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の劣化診断システムにおいて、
前記異種センサユニットは、異なる物理量を計測する複数の異種センサと、所要の長周期及び短周期に関するサンプリング周期で前記各異種センサの計測データをセンシングする各異種センサ対応の処理部と、各処理部のセンシングデータを無線送信する各処理部対応のセンサ側無線部とを設けたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項3】
請求項1に記載の劣化診断システムにおいて、
前記劣化診断装置は、前記複数の異種センサユニットから送信されてくる前記長周期のセンシングデータを受信し格納する第1の無線部と、前記複数の異種センサユニットから送信されてくる前記短周期のセンシングデータを受信し格納する第2の無線部と、前記第1の無線部にて格納された前記長周期のセンシングデータと長周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断する長周期データ診断手段と、前記第2の無線部にて格納された前記短周期のセンシングデータと短周期判定参照データとを比較し、前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断する短周期データ診断手段と、これら両診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りの判定時にセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを備えたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項4】
請求項3に記載の劣化診断システムにおいて、
前記短周期データ診断手段は、前記長周期データ診断手段で前記診断対象接部位に劣化兆候有りと診断されたとき、前記短周期のセンシングデータに基づいて前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断することを特徴とする劣化診断システム。
【請求項5】
ローカル設備の異なる部位に取付けられ、各部位の計測対象に合った異なる物理量を計測する異種センサの計測データを所要とする高速のサンプリング周期でセンシングして無線送信するn個(nは整数)の異種センサユニットと、
前記n個より少ない任意数の異種センサユニットのセンシングデータから、それぞれ前記サンプリング周期よりも長い異なる複数の周期のセンシングデータを取り込んで格納する複数の無線部と、各無線部にて取り込んだ異なる各周期のセンシングデータと各周期判定参照データとを比較し、前記異なる周期ごとに前記診断対象部位の劣化兆候の有無を診断するデータ診断手段と、このデータ診断手段の診断結果から異常有無を判定し、異常有りの判定時にセンシングデータを含む異常に関係するデータを記憶する異常判定手段とを備えたことを特徴とする劣化診断システム。
【請求項6】
請求項3ないし請求項6の何れか一項に記載の劣化診断システムにおいて、
前記異常判定手段は、前記診断手段が劣化兆候有りと診断したとき、前記劣化兆候を最も顕著に表す前記異種センサのセンシングデータの順位を考慮し、劣化兆候レベルを伴う異常判定結果を出力することを特徴とする劣化診断システム。
【請求項7】
請求項1、請求項3、請求項5の何れか一項に記載された構成の劣化診断システムと、
前記劣化診断装置に設けられ、前記異常判定手段にて記憶された前記異常に関係するデータを読み出し、広域ネットワークを通して伝送する WAN通信部と、
前記広域ネットワークに接続され、前記WAN通信部から伝送されてくる異常に関係するデータ取得し、当該異常に関係するデータに基づいて前記診断対象部位に関する点検支援情報を取得し、保守員に提示する遠隔保守センターと
を備えたことを特徴とする遠隔保守システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−34320(P2011−34320A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179603(P2009−179603)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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