説明

助手席用エアバッグ装置

【課題】容易に製造できて、開いた扉部がフロントウィンドシールドに接触することを防止可能な助手席用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】本発明の助手席用エアバッグ装置Mは、インストルメントパネル3の上面側に配置される扉部5を備える。インストルメントパネル3が、パネル本体9と連結支持部18と、から構成される。連結支持部18が、扉本体部20と周縁部24とを備える。扉本体部20と周縁部24とが、扉部5の開き時の回転中心となる湾曲ヒンジ部25Fにより、連結される。車両前方側に向かって開く前側扉部6の裏面側に配設される前側扉本体部21の周縁に、前側扉本体部6と周囲の周縁部24とを連結するとともに、前側扉部6の裏面側に向かって突出するように湾曲して配置されて、前側扉部6の開きを規制するストラップ27が、前側扉本体部21及び周縁部24と一体的に、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の助手席前方におけるインストルメントパネル(以下「インパネ」と称する)の部位に配設される助手席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、助手席用エアバッグ装置としては、インパネの上面側に配置される扉部を、膨張用ガスの流入時に押し開いて突出可能とするように、扉部の下方に配置される収納部に、折り畳まれて収納されるエアバッグを備える構成とされて、インパネが、表面側に配置される硬質樹脂製のパネル本体と、軟質樹脂製とされてパネル本体の裏面側に結合されて収納部に取り付けられる連結支持部と、から構成されるものがあった。この従来の助手席用エアバッグ装置では、パネル本体が、扉部の部位に配置される扉上面部と、扉上面部の周囲に配置される一般部と、を備える構成とされ、連結支持部は、扉上面部の裏面側に配置される扉本体部と扉本体部の周縁に配置される周縁部とを備えた天井壁部と、天井壁部における周縁部の部位から裏面側に突出する連結壁部と、から構成されていた。そして、扉部は、扉上面部を、周縁に配置されるテアライン部を破断させて周囲の一般部と分離させ、扉本体部と周縁部とを連結する湾曲ヒンジ部を回転中心として、開く構成とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、助手席用エアバッグ装置としては、インパネと別体とされる前開きの扉部を備えるとともに、扉部の左右の縁部側に、エアバッグを収納する収納部側と扉部とを連結して、扉部の開きを規制するストラップを配設させた構成のものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−99006公報
【特許文献2】実開平5−94030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の助手席用エアバッグ装置では、インパネのパネル本体は、強化繊維入りのポリプロピレン(PPF)等の硬質樹脂から構成され、連結支持部はオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質樹脂から構成されている。そして、特許文献1の助手席用エアバッグ装置では、扉部は、開き時に、前後両端側において裏面側に突出するように湾曲して配置される湾曲ヒンジ部をそれぞれ伸ばすようにして、前後両側に開くこととなる。インパネの前方には、フロントウィンドシールドが配置されることから、助手席用エアバッグ装置をフロントウィンドシールドの近傍となるインパネの前部側に配置させるトップマウントタイプとする場合、湾曲ヒンジ部が大きく伸びて、前方側に大きく移動するように開いた扉部がフロントウィンドシールドと接触する虞れが生ずる。そのため、特許文献1の助手席用エアバッグ装置では、開いた扉部がフロントウィンドシールドと接触することを防止するために、配置位置を考慮する必要が生じていた。
【0005】
また、特許文献2に記載の助手席用エアバッグ装置では、扉部の左右の縁部側に、エアバッグを収納するケース側と扉部とを連結して、扉部の開きを規制するストラップが、それぞれ、配設されているが、このストラップは、扉部と別体とされており、エアバッグ装置を組み立てる際に、後付けで扉部に取り付ける必要があり、製造工数及びコストが増大していた。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、容易に製造できて、開いた扉部がフロントウィンドシールドに接触することを防止可能な助手席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る助手席用エアバッグ装置は、車両の助手席前方におけるインパネの上面側に配置された扉部を膨張用ガスの流入時に押し開いて突出可能とするように折り畳まれて収納されるエアバッグを備えるとともに、インパネにおける扉部の下方に配置されてエアバッグを収納する略箱形状の収納部を備える構成とされ、
インパネが、表面側に配置される硬質樹脂製のパネル本体と、軟質樹脂製とされるとともにパネル本体の裏面側に結合されて収納部に取り付けられる連結支持部と、から構成され、
パネル本体が、扉部の部位に配置される扉上面部と、扉上面部の周囲に配置される一般部と、を備える構成とされるとともに、扉上面部を、周縁に形成されるテアライン部により、扉部の開き時に、周囲の一般部と分離させて開かせる構成とされ、
連結支持部が、
パネル本体の裏面側に結合されるとともに、扉上面部の裏面側に配置される扉本体部と扉本体部の周縁に配置される周縁部とから構成される天井壁部と、
天井壁部における周縁部の部位から、収納部側となる裏面側に突出するように形成されて、収納部に連結される連結壁部と、
を備える構成とされ、
扉本体部と周縁部とが、テアライン部の裏面側において扉本体部の裏面側に向かって突出するように湾曲して配置されて、扉部の開き時の回転中心となる湾曲ヒンジ部により、連結される構成の助手席用エアバッグ装置であって、
扉部が、湾曲ヒンジ部を前縁側に配置させて、開き時に車両前方側に向かって開く前側扉部を備える構成として、
前側扉部の裏面側に配設される扉本体部としての前側扉本体部の周縁であって、湾曲ヒンジ部側と開き時の先端側と除いた側部側となる縁部に、前側扉本体部と前側扉本体部の周囲の周縁部とを連結するとともに、前側扉部の裏面側に向かって突出するように湾曲して配置されて、エアバッグの展開膨張時における前側扉部の開きを規制するストラップが、前側扉本体部及び周縁部と一体的に、形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の助手席用エアバッグ装置では、インパネにおけるパネル本体の裏面側に配置される連結支持部に、前側扉部の開きを規制するストラップが形成されていることから、エアバッグの展開膨張時において前側扉部が開く際に、前側扉部が膨張するエアバッグにより大きく押されて、湾曲ヒンジ部が大きく伸びても、ストラップが、前側扉部が前方に向かって大きく移動するように開くことを規制することとなって、前側扉部が、インパネの前方に位置するフロントウィンドシールドと接触することを防止できる。また、本発明の助手席用エアバッグ装置では、このストラップを、前側扉本体部及び周縁部と一体的に構成していることから、連結支持部の製造時に一体的に形成する(型成形により一体成形する)ことができる。そのため、従来のごとく、ストラップを扉部に取り付ける工程が不要となり、エアバッグ装置の製造工数・コストを低減させることができる。
【0009】
したがって、本発明の助手席用エアバッグ装置では、容易に製造できて、開いた扉部がフロントウィンドシールドに接触することを防止することができる。
【0010】
また、本発明の助手席用エアバッグ装置において、ストラップを、前側扉本体部の周囲で、湾曲ヒンジ部から連なって形成する構成とすれば、ストラップと湾曲ヒンジ部とを分離して形成する場合と比較して、成形時における成形型の形状を簡略にすることができ、また、成形時における樹脂の流れも良好となり、成形性を向上させることができる。
【0011】
本発明の助手席用エアバッグ装置において、逆に、前側扉本体部の周囲で、湾曲ヒンジ部との間に隙間を開けるように、湾曲ヒンジ部と分離して形成した場合には、ストラップと湾曲ヒンジ部との間に、隙間が設けられることとなることから、湾曲ヒンジ部とストラップとが、相互に撓み時の影響を受けず、ストラップを、湾曲ヒンジ部と連続して一体的に形成する場合と比較して、エアバッグの膨張初期において、容易に前側扉部を円滑に開かせることが可能となる。
【0012】
さらに、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、前側扉本体部における湾曲ヒンジ部側と開き時の先端側とを除いた側部側となる縁部に、前側扉部の裏面側に向かって突出するリブを、前側扉部の縁部に略沿って、ストラップから前側扉部の開き時の先端にかけて配置させる構成とすれば、エアバッグの展開膨張時に開いた前側扉部が、リブにより先端の側部の曲げ剛性を高くして、先端側を前方側に向けるように湾曲すること(曲げ変形すること)を防止でき、前側扉部がフロントウィンドシールドに接触することを、一層、防止することができる。
【0013】
さらにまた、上記構成の助手席用エアバッグ装置において、ストラップを、前側扉本体部における湾曲ヒンジ部側と開き時の先端側と除いた側部側となる縁部に、縁部に沿って複数配設させる構成とすれば、仮に、前側扉部における開きの元部側となる湾曲ヒンジ部側に配置されるストラップが破断しても、先端側に配置されるストラップにより、前側扉部が前方に向かって大きく移動するように開くことを規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書での上下、前後、及び、左右の方向は、特に断らない限り、車両の直進状態における上下、前後、及び、左右の方向に、一致するものである。
【0015】
実施形態の助手席用エアバッグ装置Mは、図1,7に示すようにインパネ3の上面4側に配置されるトップマウントタイプとされるもので、インパネ3と、インパネ3の上面4側に配置される扉部5の下方に折り畳まれて収納されるエアバッグ38と、エアバッグ38に膨張用ガスを供給するインフレーター36と、エアバッグ38及びインフレーター36を収納保持する収納部としてのケース32と、エアバッグ38をケース32に取り付けるためのリテーナ41と、を備えて構成されている。
【0016】
インパネ3は、図1〜3及び7に示すように、上面4側に、ケース32の後述する開口32aを覆い可能とする扉部5を、備える構成である。実施形態の場合、扉部5は、前後に沿って並設されて、開き時に車両前方側に向かって開く前側扉部6と、開き時に車両後方側に向かって開く後側扉部7と、の2枚から、構成されている。
【0017】
また、インパネ3は、図2,3に示すように、表面側に配置される硬質樹脂製のパネル本体9と、軟質樹脂製とされてパネル本体9の裏面側に結合される連結支持部18と、から、構成されている。具体的には、パネル本体9は、強化繊維入りのポリプロピレン(PPF)等の硬質樹脂から構成され、連結支持部18は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質樹脂から構成されている。
【0018】
パネル本体9は、扉部5の部位に配置される扉上面部10と、扉上面部10の周囲に配置される一般部13と、から、構成されている。扉上面部10は、前側扉部6の部位に配置されて前側扉部6の表面側を構成する略長方形板状の前側扉上面部11と、後側扉部7の部位に配置されて後側扉部7の表面側を構成する略長方形板状の後側扉上面部12と、から、構成されている。そして、扉上面部10の周縁には、テアライン部14が、全周にわたって、形成されている。具体的には、テアライン部14は、前側扉上面部11と一般部13との間、後側扉上面部12と一般部13との間、前側扉上面部11と後側扉上面部12との間に、それぞれ全域にわたって形成されるもので、上方から見て略「日」の字状に、配設されている(図1参照)。実施形態の場合、テアライン部14は、図2に示すように、パネル本体9の裏面側から断面略逆V字形状に凹むように形成される破断溝15から構成されるもので、扉部5の開き時に、前側扉上面部11と後側扉上面部12とを、それぞれ、周囲の一般部13から分断させるように、破断されることとなる。すなわち、実施形態では、前側扉部6及び後側扉部7は、それぞれ、前側扉上面部11及び後側扉上面部12全体を、周囲の一般部13と分離させるようにして、開くこととなる。
【0019】
連結支持部18は、パネル本体9に略沿って形成されてパネル本体9の裏面側に結合される天井壁部19と、天井壁部19からケース32側となる裏面側に突出するように形成される連結壁部29と、を備えて構成されている。
【0020】
天井壁部19は、パネル本体9における扉上面部10の裏面側に配置される扉本体部20と、扉本体部20の周縁に配置される周縁部24と、から構成されている。扉本体部20は、前側扉上面部11の裏面側に配置される略長方形板状の前側扉本体部21と、後側扉上面部12の裏面側に配置される略長方形板状の後側扉本体部22と、から構成されている。周縁部24は、扉本体部20の周縁を全周にわたって囲むような略長方形枠状とされている。前側扉本体部21及び後側扉本体部22は、それぞれ、前側扉上面部11及び後側扉上面部12より若干外形形状を小さくして構成されるもので、前側扉本体部21は前縁側を、後側扉本体部22は後縁側を、扉本体部20の前後両側に配置される湾曲ヒンジ部25により、それぞれ、周縁部24と連結されている。前側扉本体部21及び後側扉本体部22の左右両縁側は、周縁部24との間に隙間S1を設けるように周縁部24と分離して構成され、前側扉本体部21と後側扉本体部22との間にも、隙間S2が、形成されている(図2,3,5,6参照)。隙間S1は、テアライン部14における扉上面部10の左右両縁側に配置される左側部位14a及び右側部位14bの裏面側となる位置に配置され、隙間S2は、テアライン部14における前側扉上面部11と後側扉上面部12との間に配置される中央側部位14cの裏面側となる位置に配置される。
【0021】
各湾曲ヒンジ部25は、前側扉部6及び後側扉部7の開き時の回転中心を構成するもので、テアライン部14における扉上面部10の前後両縁側に配置される前側部位14d及び後側部位14eの裏面側となる位置に配置されている。各湾曲ヒンジ部25は、扉本体部20及び周縁部24と一体的に構成されるもので、それぞれ、扉本体部20の裏面側に向かって突出するように、湾曲した形状とされて、前側扉本体部21及び後側扉本体部22より左右方向の幅寸法を若干小さくして、前側扉本体部21及び後側扉本体部22の左右の略全域にわたって、配設されている。
【0022】
前側扉本体部21の左右両縁側には、前側扉本体部21の左右の縁部21a,21bと、前側扉本体部21の左右両側に配置される周縁部24の左側部位24a及び右側部位24bと、を、それぞれ、連結するストラップ27が、配設されている。実施形態の場合、各ストラップ27は、図5,6に示すように、前側扉本体部21の前方に配置される湾曲ヒンジ部25Fの近傍(前側扉部6開き時の元部側)において、左右対称となる位置に、それぞれ、配設されている。各ストラップ27は、扉本体部20及び周縁部24と一体的に構成されるもので、左右方向に沿った帯状とされるとともに、扉本体部20の裏面側に向かって突出するように、湾曲した形状とされている。また、実施形態の場合、各ストラップ27は、湾曲ヒンジ部25Fとの間に隙間を開けるようにして、湾曲ヒンジ部25Fと分離して構成されている。このストラップ27は、エアバッグ38が膨張して前側扉部6を押し開いた際に、図4の二点鎖線に示すごとく、前側扉部6の左右の縁部側と一般部13側とを連結して、前側扉部6が、開き時の先端6aを前方に向けるように、開ききることを防止するためのものであり、実施形態の場合、各ストラップ27は、長さ寸法(裏面側への突出高さ)を、開き時に、図7に示すごとく、先端6aを上方に向けて略鉛直方向に沿って配置されるような位置で、前側扉部6の開きを停止可能な寸法に、設定されている。
【0023】
また、前側扉本体部21における左右両縁近傍には、前側扉本体部21の裏面側に向かって突出するリブ21cが、湾曲ヒンジ部25F近傍から後端(開き時の先端)側となる前後の略全域にわたって、縁部に略沿った前後方向に沿って形成されている。このリブ21cは、前側扉部6が開いた際に、開き時の先端6aとなる後端側を車両前方側に向けるように湾曲することを防止するために、配設されている。
【0024】
連結壁部29は、周縁部24の部位からケース32側に突出するように配設されるもので、実施形態の場合、周縁部24における内縁近傍からケース32側に突出する略四角筒形状とされている。この連結壁部29は、ケース32における後述する周壁部34の外周側に配置されるもので、前後で対向する壁部には、ケース32の周壁部34に形成される後述する係止フック34aを係止可能な係止孔29aが、左右方向に沿って複数形成されている。また、連結壁部29における左右で対向する壁部には、図4に示すごとく、ストラップ27を挿通する貫通孔29bが、形成されている。
【0025】
なお、実施形態の場合、連結支持部18は、パネル本体9から裏面側に突出するように配置される多数のピン9aを、天井壁部19(扉本体部20及び周縁部24)に形成される挿通孔19aに挿通させ、天井壁部19から突出した先端9bを拡径させるように溶融させて熱カシメすることにより、パネル本体9の裏面側に結合されている(図2参照)。
【0026】
収納部としてのケース32は、上端側に長方形状の開口32aを有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター36を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部33と、底壁部33の外周縁から上方に延びる略長方形筒状の周壁部34と、から構成されている。周壁部34における前後で対向する壁部bには、連結壁部29の係止孔29cに挿通されて、係止孔29c周縁を係止可能な係止フック34aが、左右方向に沿って複数形成されている。また、ケース32には、底壁部33の部位に、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0027】
インフレーター36は、複数のガス吐出口36bを有した略円柱状の本体36aと、インフレーター36をケース32に取り付けるためのフランジ部36cと、を備えて構成されている。
【0028】
エアバッグ38は、可撓性を有した織布から構成される袋状とされて、ケース32内に折り畳まれて収納されている。エアバッグ38は、インフレーター36の本体36aを挿通可能とされて、内部に膨張用ガスを流入させる略円形に開口したガス流入口39を備える構成とされ、内部に膨張用ガスを流入させて、図7に示すように、インパネ3と、インパネ3の前方に配置されるフロントウィンドシールド1と、の間を塞ぐように膨張する構成とされている。
【0029】
なお、エアバッグ38とインフレーター36とは、エアバッグ38内に配置される円環状のリテーナ41の複数のボルト41aを、エアバッグ38におけるガス流入口39の周縁、ケース32の底壁部33、及び、インフレーター36のフランジ部36c、を貫通させて、ナット42止めすることにより、ケース32に取り付けられている。
【0030】
次に、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mの組み立てについて述べると、各ボルト41aをガス流入口39周縁から突出させるようにして、リテーナ41を内部に入れたエアバッグ38を、折り畳み、各ボルト41aをケース32の底壁部33から突出させるようにして、エアバッグ38をケース32内に収納させる。次いで、インフレーター36の本体36aを、底壁部33の下方からケース32内に挿入させるとともに、底壁部33から突出している各ボルト41aを、インフレーター36のフランジ部36cに挿通させる。その後、インフレーター36のフランジ部36cから突出した各ボルト41aにナット42を締結させれば、ケース32の底壁部33に対して、折り畳んだエアバッグ38とインフレーター36とを取り付けることができる。
【0031】
そして、予め車両に搭載しておいたインパネ3における連結支持部18の連結壁部29に形成される係止孔29a周縁に、ケース32の周壁部34に形成される係止フック34aを係止させ、ケース32の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側の部位に固定させれば、助手席用エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。なお、インパネ3は、予め、それぞれ、射出成形により成形したパネル本体9と連結支持部18とを、パネル本体9に形成されるピン9aを、天井壁部19(扉本体部20及び周縁部24)の挿通孔19aに挿通させ、突出した先端9bを拡径させるように溶融させて熱カシメして製造されるもので、この製造されたインパネ3を、一般部13に設けられる図示しない取付ブラケットをボルト止めして、車両に搭載しておく。
【0032】
助手席用エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター36のガス吐出口36bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ38が膨張して、インパネ3に形成される前側扉部6及び後側扉部7を押圧し、前側扉上面部11と後側扉上面部12が、周囲に配置されるテアライン部14を破断させるようにして一般部13と分離されて、前側扉部6及び後側扉部7が、湾曲ヒンジ部25を回転中心として前後に開くこととなり、前側扉部6及び後側扉部7が開いて形成されたケース32の開口32aから、エアバッグ38が突出し、図7に示すように膨張を完了させることとなる。
【0033】
そして、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、図8に示すごとく、インパネ3におけるパネル本体9の裏面側に配置される連結支持部18に、前側扉部6の開きを規制するストラップ27が形成されていることから、エアバッグ38の展開膨張時において前側扉部6が開く際に、前側扉部6が突出するエアバッグ38により大きく押されて、前側扉部6の開き時の回転中心となる湾曲ヒンジ部25Fが、大きく伸びても、ストラップ27が、前側扉部6が先端6a側を前方に向けつつ前方に向かって大きく移動するように開くことを規制することとなって、前側扉部6が、インパネ3の前方に位置するフロントウィンドシールド1と接触することを防止できる。また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、このストラップ27を、前側扉本体部21及び周縁部24と一体的に構成していることから、連結支持部18の製造時に一体的に形成する(型成形により一体成形する)ことができる。そのため、従来のごとく、ストラップを扉部に取り付ける工程が不要となり、エアバッグ装置の製造工数・コストを低減させることができる。
【0034】
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、容易に製造できて、開いた前側扉部6がフロントウィンドシールド1に接触することを防止することができる。
【0035】
また、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、ストラップ27が、前方に配置される湾曲ヒンジ部25Fとの間に隙間を開けるようにして、湾曲ヒンジ部25Fと分離して形成されていることから、湾曲ヒンジ部25Fとストラップ27とが、相互に撓み時の影響を受けず、エアバッグ38の膨張初期において、容易に前側扉部6を円滑に開かせることが可能となる。
【0036】
さらに、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、前側扉本体部21における左右の縁部21a,21bに、裏面側に向かって突出するリブ21cを、前側扉本体部21(前側扉部6)の縁部に略沿って、配置させていることから、エアバッグ38の展開膨張時に開いた前側扉部6が、リブ21cにより先端6aの側部の曲げ剛性を高くして、図8の二点鎖線に示すごとく、先端6a側を前方側に向けるように湾曲すること(曲げ変形すること)を防止でき、前側扉部6がフロントウィンドシールド1に接触することを、一層、防止することができて、好ましい。
【0037】
なお、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、各ストラップ27は、前側扉本体部21の左右の縁部21a,21b側であって、湾曲ヒンジ部25Fの近傍となる位置に、配設されているが、ストラップの配置位置は、湾曲ヒンジ部25F側となる前縁側と開き時の先端側となる後縁側以外であればよく、例えば、ストラップを、前側扉本体部21の左右の縁部21a,21b側であって、開き時の先端側となる後端近傍となる位置に、配置させる構成としてもよい。
【0038】
また、ストラップ27は、1箇所に限らず、図9に示すように、前側扉本体部21の縁部21a側(縁部21b側)に、縁部21a(縁部21b)に沿った2箇所に配設させる構成としてもよい。図9では、後方側(開きの先端側)に配置されるストラップ27Bが、前方側(開きの元部側)に配置されるストラップ27Fより、突出量を大きくして、実質的な長さ寸法を大きくするように、構成されている。このようにストラップ27B,27Fを複数配設させる構成とすれば、仮に、前側扉部における開きの元部側となる湾曲ヒンジ部25F側に配置されるストラップ27Fが破断しても、開きの先端側に配置されるストラップ27Bにより、前側扉部が前方に向かって大きく移動するように開くことを規制することができる。
【0039】
さらに、図10に示すように、連結支持部18Aとして、ストラップ27Aを、湾曲ヒンジ部25Aから連なって形成したものを使用してもよい。この連結支持部18Aでは、前側扉本体部21Aの前縁から左右両縁にかけての部位が、コーナ部も含めて、裏面側に突出する湾曲部44により連結されることとなり、この湾曲部44において前側扉本体部21Aの前方に位置する部位44aが、湾曲ヒンジ部25Aを構成し、前側扉本体部21Aの側方となる左方及び右方に位置する部位44bが、ストラップ27Aを構成することとなる。そして、湾曲部44は、ストラップ27Aを構成する前側扉本体部21Aの側方に位置する部位44bを、後端側(前側扉本体部21Aの先端側)にかけて突出量を大きくするように、構成している。このような構成の連結支持部18Aでは、前述の連結支持部18のごとく、ストラップ27と湾曲ヒンジ部25とを分離して形成する場合と比較して、成形時における成形型の形状を簡略にすることができ、また、成形時における樹脂の流れも良好となり、成形性を向上させることができる。また、この連結支持部18Aでは、ストラップ27Aを構成する湾曲部44の前側扉本体部21Aの側方に位置する部位44bを、後端側にかけて突出量を大きくするように、構成している。すなわち、ストラップ27Aは、後縁側の長さ寸法を前方側の長さ寸法より大きくするように傾斜した構成とされている。そのため、エアバッグの膨張初期において、湾曲ヒンジ部25Aが、ストラップ27Aから影響を受けることを極力押えることができ、エアバッグの膨張初期において、前側扉部を極力円滑に開かせることができる。
【0040】
なお、実施形態では、扉部5が、前側扉部6と後側扉部7とから構成されるものを例に採り説明したが、インパネとして、前開きの1つの扉部を備える構成のものにも、本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグ装置のインパネの概略斜視図である。
【図2】実施形態の助手席用エアバッグ装置を示す概略断面図である。
【図3】実施形態の助手席用エアバッグ装置を示す概略断面図であり、図2のIII−III部位に対応する図である。
【図4】実施形態の助手席用エアバッグ装置におけるストラップの部位を示す部分断面図である。
【図5】実施形態の助手席用エアバッグ装置に使用される連結支持部の概略斜視図である。
【図6】実施形態の助手席用エアバッグ装置に使用される連結支持部の概略斜視図であり、ストラップの部位を示す部分拡大図である。
【図7】実施形態の助手席用エアバッグ装置においてエアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略断面図である。
【図8】実施形態の助手席用エアバッグ装置において、前側扉部が開いた状態を示す概略部分拡大斜視図である。
【図9】本発明の他の形態の連結支持部におけるストラップの部位を示す部分拡大斜視図である。
【図10】本発明のさらに他の形態の連結支持部におけるストラップの部位を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1…フロントウィンドシールド、
3…インパネ、
4…上面、
5…扉部、
6…前側扉部、
7…後側扉部、
9…パネル本体、
10…扉上面部、
11…前側扉上面部、
12…後側扉上面部、
13…一般部、
14…テアライン部、
18…連結支持部、
19…天井壁部、
20…扉本体部、
21…前側扉本体部、
22…後側扉本体部、
24…周縁部、
25(25F,25B,25A)…湾曲ヒンジ部、
27,27A…ストラップ、
29…連結壁部、
32…ケース、
36…インフレーター、
38…エアバッグ、
M…助手席用エアバッグ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席前方におけるインストルメントパネルの上面側に配置された扉部を膨張用ガスの流入時に押し開いて突出可能とするように折り畳まれて収納されるエアバッグを備えるとともに、前記インストルメントパネルにおける前記扉部の下方に配置されて前記エアバッグを収納する略箱形状の収納部を備える構成とされ、
前記インストルメントパネルが、表面側に配置される硬質樹脂製のパネル本体と、軟質樹脂製とされるとともに前記パネル本体の裏面側に結合されて前記収納部に取り付けられる連結支持部と、から構成され、
前記パネル本体が、前記扉部の部位に配置される扉上面部と、該扉上面部の周囲に配置される一般部と、を備える構成とされるとともに、前記扉上面部を、周縁に形成されるテアライン部により、前記扉部の開き時に、周囲の一般部と分離させて開かせる構成とされ、
前記連結支持部が、
前記パネル本体の裏面側に結合されるとともに、前記扉上面部の裏面側に配置される扉本体部と該扉本体部の周縁に配置される周縁部とから構成される天井壁部と、
該天井壁部における前記周縁部の部位から、前記収納部側となる裏面側に突出するように形成されて、前記収納部に連結される連結壁部と、
を備える構成とされ、
前記扉本体部と前記周縁部とが、前記テアライン部の裏面側において前記扉本体部の裏面側に向かって突出するように湾曲して配置されて、前記扉部の開き時の回転中心となる湾曲ヒンジ部により、連結される構成の助手席用エアバッグ装置であって、
前記扉部が、前記湾曲ヒンジ部を前縁側に配置させて、開き時に車両前方側に向かって開く前側扉部を備える構成として、
該前側扉部の裏面側に配設される前記扉本体部としての前側扉本体部の周縁であって、前記湾曲ヒンジ部側と開き時の先端側と除いた側部側となる縁部に、前記前側扉本体部と該前側扉本体部の周囲の前記周縁部とを連結するとともに、前記前側扉部の裏面側に向かって突出するように湾曲して配置されて、前記エアバッグの展開膨張時における前記前側扉部の開きを規制するストラップが、前記前側扉本体部及び前記周縁部と一体的に、形成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ストラップが、前記前側扉本体部の周囲で、前記湾曲ヒンジ部から連なって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記ストラップが、前記前側扉本体部の周囲で、前記湾曲ヒンジ部との間に隙間を開けるように、前記湾曲ヒンジ部と分離して、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記前側扉本体部における前記湾曲ヒンジ部側と開き時の先端側とを除いた側部側となる縁部に、前記前側扉部の裏面側に向かって突出するリブが、前記前側扉部の縁部に略沿って、前記ストラップから前記前側扉部の開き時の先端にかけて配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の助手席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記ストラップが、前記前側扉本体部における前記湾曲ヒンジ部側と開き時の先端側と除いた側部側となる縁部に、該縁部に沿って複数配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の助手席用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−313975(P2007−313975A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143914(P2006−143914)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】