説明

動力作業機

【課題】エンジン周辺の高温化を抑制することが可能な動力作業機を提供する。
【解決手段】流体圧送装置であるポンプ7及びこれを駆動するエンジン6を有する本体8と、ホースと、を備えた動力作業機である自走式動力噴霧機100に、下流へ向かうに従いエンジン6の排ガスの流路を狭くする絞り部16と、絞り部16を通過した排ガスを本体8の外側へ送り出す終端部17と、エンジン6の周辺の空気を終端部17内に導入するための吸気口18と、を有し、排ガスを本体8の外側に送り出す排気ダクト12を設ける。絞り部16により、絞り部16出口での排ガスの流れを高速化し、ベンチュリー効果で絞り部16出口の圧力を低下させ、この圧力低下により、エンジン6周辺の空気を吸気口18から終端部17内に導入し、エンジン6周辺の高温化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧、散布、又は送風等を行う動力作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体圧送装置及びこれを駆動するエンジンを有する本体と、本体から延出し流体圧送装置から排出された流体を送り出すホースと、を備えた動力作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−171916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている構成では、エンジン周辺に滞留した空気がエンジンを熱源として高温化し、エンジン周辺に配置された樹脂製部品に熱影響を及ぼすおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、エンジン周辺の高温化を抑制することが可能な動力作業機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による動力作業機(100)は、流体圧送装置(7)及びこれを駆動するエンジン(6)を有する本体(8)と、本体(8)から延出し流体圧送装置(7)から排出された流体を送り出すホース(9)と、を備えた動力作業機(100)であって、エンジン(6)の排ガスを本体(8)の外側へ送り出す排気ダクト(12)を備え、排気ダクト(12)は、下流へ向かうに従い排ガスの流路を狭くする絞り部(16)と、絞り部(16)を通過した排ガスを本体(8)の外側へ送り出す終端部(17)と、エンジン(6)の周辺の空気を終端部(17)内に導入するための吸気口(18)と、を有することを特徴とする。
【0007】
このような動力作業機(100)によれば、エンジン(6)の排ガスが、排気ダクト(12)によって本体(8)の外側へ送り出される。このとき、排ガスの流路が絞り部(16)によって狭められているため、排ガスの流れは絞り部(16)出口で高速化し、ベンチュリー効果によって絞り部(16)出口の圧力が低下する。この圧力低下に伴い、エンジン(6)周辺の空気が吸気口(18)を通って終端部(17)内に導入され、エンジン(6)周辺に滞留することなく終端部(17)を通って本体(8)の外側に送り出される。これにより、エンジン(6)周辺の空気が高温化する前に入れ替わり、エンジン(6)周辺の高温化が抑制される。
【0008】
ここで、排気ダクト(12)は、エンジン(6)の隣に配置され、吸気口(18)は、エンジン(6)と排気ダクト(12)との間の空間に向かって開口している構成であると、熱源であるエンジン(6)近傍の空気が優先的に本体(8)の外側に送り出され、エンジン(6)周辺の高温化が更に抑制される。
【0009】
また、本体(8)は、ホース(9)を巻き取るホースリール(5)を有し、排気ダクト(12)は、ホースリール(5)とエンジン(6)との間に配置され、エンジン(6)からホースリール(5)に向かう方向と交差する方向に排ガスを送り出す構成であると、ホースリール(5)とエンジン(6)とに囲まれた空間の空気が本体(8)の外側に送り出され、エンジン(6)周辺の高温化が効果的に抑制される。
【0010】
また、エンジン(6)の一部を覆うカバー部材(20)を備え、吸気口(18)は、カバー部材(20)のエンジン(6)側の端面と略同一面内に位置する構成であると、カバー部材(20)の端面と吸気口(18)との位置関係を基準にして排気ダクト(12)の取り付け位置を容易に合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明の動力作業機によれば、エンジン周辺の高温化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る動力作業機の側面図である。
【図2】図1の動力作業機の平面図である。
【図3】図1の動力作業機の背面図である。
【図4】排気ダクトを出口側から見た斜視図である。
【図5】排気ダクトを入口側から見た斜視図である。
【図6】図1中のVI-VI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る動力作業機の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る動力作業機の側面図、図2は、図1の動力作業機の平面図、図3は、図1の動力作業機の背面図、図4は、排気ダクトを出口側から見た斜視図、図5は、排気ダクトを入口側から見た斜視図、図6は、図1中のVI-VI矢視図であり、本実施形態では、動力作業機を自走式動力噴霧機として説明する。
【0014】
図1〜3に示すように、本実施形態に係る自走式動力噴霧機100は、一対の駆動輪2,2及び一対の従輪3,3を有するフレーム1を備えている。駆動輪2は、後述のようにエンジンにより駆動される車輪であり、ここではフレーム1の前側に設けられている。従輪3は、フレーム1の進行方向に合わせ、回転軸の向きが自在に変わるように取り付けられた車輪であり、ここではフレーム1の後側に設けられている。フレーム1の後側且つ上側には左右に延びるハンドル4が設けられている。ハンドル4は、フレーム1を押し引きする際に作業者が把持するための部分である。
【0015】
フレーム1の前側には、ホースリール5が搭載され、フレーム1の後側には、エンジン6とポンプ7とが左右に並べて搭載され、フレーム1と、ホースリール5と、エンジン6と、ポンプ7と、で自走式動力噴霧機100の本体8が構成されている。
【0016】
ポンプ7は、本実施形態における流体圧送装置であり、本体8外部に設置されたタンクから液体を吸引して排出する。ポンプ7には、ホースリール5を介してホース9が接続されている。ホース9の先端には噴霧ノズルが設けられている。ホース9は、本体8から延出し、ポンプ7から排出された液体を送り出して噴霧ノズルから噴霧する。なお、図2及び3は、ホース9が取り外された状態を示している。
【0017】
ホースリール5は、左右方向に延びる軸回りに回転自在となるようフレーム1に取り付けられている。ホースリール5は、ホース9を巻き取るためのものであり、ホースリール5を回転させることで、ホース9が引き出され又は巻き取られる。
【0018】
ホースリール5の上方には、複数のプーリ10を含んだホースガイド11が設けられている。ホース9は、ホースリール5からホースガイド11に向かって引き出され、ホースガイド11の複数のプーリ10に当接して曲がり、本体8の周りに引き出される。ホースガイド11は、鉛直軸回りに回転可能となっており、ホース9の引き出し方向に追従して向きを変える。これにより、本体8周囲のどの方向へもホース9をスムーズに引き出すことが可能である。
【0019】
ホースガイド11は、ホースリール5の回転に連動して左右方向に往復運動する。ホースリール5に巻き取られるホース9は、ホースガイド11の往復運動に応じて左右方向に移動し、ホースリール5上に軸線方向に沿って均等に巻き取られる。
【0020】
エンジン6の動力は、クラッチ(不図示)を介して駆動対象に伝えられる。クラッチは、エンジン6の駆動対象をホースリール5、ポンプ7、及び駆動輪2のいずれかに切り替える伝達装置である。クラッチにより、エンジン6の動力が駆動輪2に伝えられると、駆動輪2が駆動され、フレーム1即ち本体8が自走する。また、クラッチにより、エンジン6の動力がポンプ7に伝えられると、ポンプ7が作動しホース9を通して液体が噴霧される。更にまた、クラッチにより、エンジン6の動力がホースリール5に伝えられると、ホースリール5が回転し、ホース9の引き出し及び巻き取り作業が補助される。
【0021】
エンジン6は、図1,2及び6に示すように、排ガスをエンジン6外に送り出す排気パイプ15を含んでいる。排気パイプ15は、エンジン6の前方に延出し、左方向に曲がっている。
【0022】
また、自走式動力噴霧機100は、エンジン6の排ガスを本体8の左外側へ送り出す排気ダクト12を備えている。排気ダクト12は、ホースリール5とエンジン6との間において、エンジン6の隣に配置され、フレーム1に固定されたステー13に取り付けられている。この排気ダクト12は、左右方向に延びる筒状体14を有している。筒状体14は、上記排気パイプ15に連なるように配置され、エンジン6の排ガスは、排気パイプ15及び筒状体14の中を通り、本体8の左外側、即ちエンジン6からホースリール5に向かう方向と交差する方向に送り出される。
【0023】
図4及び5に示すように、筒状体14は、例えば、金属の板材から構成され、下流に向かう(入口から出口に向かう)に従い断面積が小さくなる絞り部16と、絞り部16の出口に連設された終端部17とに分かれている。
【0024】
絞り部16は、上板16a、下板16b、前板16c、及び後板16dに囲まれて構成され、略四角形の断面形状をなしている。絞り部16の断面形状の幅は、入口から出口に向かうに従い徐々に小さくされており、当該断面形状の高さは、入口から出口にかけて略一定とされている。
【0025】
絞り部16の出口に続く終端部17は、上板17a、下板17b、前板17c、及び後板17dに囲まれて構成され、略四角形の断面形状をなしている。終端部17の断面形状は入口から出口にかけて略一定とされている。終端部17の断面形状の高さは、絞り部16の断面形状の高さと略同等とされ、当該断面形状の幅は、絞り部16の出口の幅よりも大きくされている。このため、上板17a、下板17b、前板17c、及び後板17dの入口側端部に囲まれた終端部17の入口は、上板16a、下板16b、前板16c、及び後板16dの出口側端部に囲まれた絞り部16の出口よりも大きく、終端部17の入口の一部が絞り部16の外側に向かって開口している。具体的には、上板17a、下板17b、及び前板17cが、上板16a、下板16b、及び前板16cにそれぞれ連設され、後板17dが後板16dよりも後方に位置し、後板17dと後板16dとの間が開口している。これにより、終端部17の入口は、排気ダクト12の後方の空間、即ち排気ダクト12とエンジン6との間の空間に向かって開口している。この開口が、エンジン6周辺の空気を終端部17内に導入するための吸気口18を構成している。
【0026】
絞り部16の上板16aは排気ダクト12の前方に延び上側に曲げられてブラケット19とされ、このブラケット19がボルト等(不図示)によってステー13に取り付けられる。
【0027】
図6に示すように、エンジン6の左側の一部は、樹脂製のカバー部材20に覆われている。カバー部材20は、作業者の手がエンジン6に直接触れることを防止するためのものである。このカバー部材20のエンジン6側の端面と、上記吸気口18と、は略同一の面内に位置している。
【0028】
以上のように構成された自走式動力噴霧機100によれば、エンジン6の排ガスが、排気ダクト12によって本体8の外側へ送り出される。このとき、排ガスの流路が絞り部16によって狭められているため、排ガスの流れは絞り部16出口で高速化し、ベンチュリー効果によって絞り部16出口の圧力が低下する。この圧力低下に伴い、エンジン6周辺の空気が吸気口18を通って終端部17内に導入され、エンジン6周辺に滞留することなく終端部17を通って本体8の外側に送り出される。これにより、エンジン6周辺の空気が高温化する前に入れ替わり、エンジン6周辺の高温化が抑制される。また、このように排気ダクト12によりエンジン6周辺の高温化が抑制されるため、冷却ファン等の冷却専用装置を搭載する必要がなく、自走式動力噴霧機100の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0029】
また、排気ダクト12は、エンジン6の隣に配置され、吸気口18は、エンジン6と排気ダクト12との間の空間に向かって開口しているため、熱源であるエンジン6近傍の空気が優先的に本体8の外側に送り出され、エンジン6周辺の高温化が更に抑制される。
【0030】
また、排気ダクト12は、ホースリール5とエンジン6との間に配置され、エンジン6からホースリール5に向かう方向と交差する方向に排ガスを送り出すため、ホースリール5とエンジン6とに囲まれた空間の空気が本体8の外側に送り出され、エンジン6周辺の高温化が効果的に抑制される。また、このようにエンジン6周辺の高温化が抑制されるため、ホースリール5とエンジン6との距離を近づけ、本体8の小型化を図ることができる。
【0031】
また、吸気口18は、カバー部材20のエンジン6側の端面と略同一面内に位置するため、カバー部材20の端面と吸気口18との位置関係を基準にして排気ダクト12の取り付け位置を容易に合わせることができる。
【0032】
なお、本実施形態では動力作業機を自走式動力噴霧機として説明したが、これに限られない。例えば、本発明に係る動力作業機は、自走機能を有さず、エンジンの駆動対象をポンプのみとしたものであってもよく、本体にタンクを搭載したものであってもよい。また、本発明に係る動力作業機は、流体圧送装置として、ポンプの代わりに送風機を備えた動力散布機やブロワであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
5…ホースリール、6…エンジン、7…ポンプ、8…本体、9…ホース、12…排気ダクト、16…絞り部、17…終端部、18…吸気口、20…カバー部材、100…自走式動力噴霧機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧送装置(7)及びこれを駆動するエンジン(6)を有する本体(8)と、前記本体(8)から延出し前記流体圧送装置(7)から排出された流体を送り出すホース(9)と、を備えた動力作業機(100)であって、
前記エンジン(6)の排ガスを前記本体(8)の外側へ送り出す排気ダクト(12)を備え、
前記排気ダクト(12)は、下流へ向かうに従い前記排ガスの流路を狭くする絞り部(16)と、前記絞り部(16)を通過した前記排ガスを前記本体(8)の外側へ送り出す終端部(17)と、前記エンジン(6)の周辺の空気を前記終端部(17)内に導入するための吸気口(18)と、を有することを特徴とする動力作業機(100)。
【請求項2】
前記排気ダクト(12)は、前記エンジン(6)の隣に配置され、
前記吸気口(18)は、前記エンジン(6)と前記排気ダクト(12)との間の空間に向かって開口していることを特徴とする請求項1記載の動力作業機(100)。
【請求項3】
前記本体(8)は、前記ホース(9)を巻き取るホースリール(5)を有し、
前記排気ダクト(12)は、前記ホースリール(5)と前記エンジン(6)との間に配置され、前記エンジン(6)から前記ホースリール(5)に向かう方向と交差する方向に前記排ガスを送り出すことを特徴とする請求項1又は2記載の動力作業機(100)。
【請求項4】
前記エンジン(6)の一部を覆うカバー部材(20)を備え、
前記吸気口(18)は、前記カバー部材(20)の前記エンジン(6)側の端面と略同一面内に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の動力作業機(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97578(P2012−97578A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243376(P2010−243376)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】