動力学的隔離加圧システム
患者体内の標的部位に治療用薬剤を送達する方法により、全身作用を低減させた状態で効率的に薬剤を送達する。同方法は、第一の流体圧の流体が通過できる壁を少なくとも1つ有する非穿孔送達装置を提供する段階を含む。非穿孔送達装置は、標的部位に対して放射状の流体力を提供するように配置される。少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体は、第一の流体圧で治療用薬剤送達装置に供給される。流体は、送達装置の少なくとも1つの壁を通過し、送達装置の外側に第二の流体圧で半閉鎖空間を作り出す。送達装置は、半閉鎖空間とその中に配置された流体とに対して放射状の流体力を印加し、同時に、送達装置を通過する流体が標的部位の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする。流体は、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに十分な量で実質的に均一に標的部位へと分布される、少なくとも1つの治療用薬剤を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は治療用薬剤の送達に関し、より具体的には、非損傷的に、組織への薬物の分布および透過を最大限にするため、圧力を印加しながら、患者体内の標的部位に治療用薬剤を送達するための装置および/またはシステムに関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2003年5月22日に提出された同時継続中の米国特許出願第10/444,863号と共通するすべての事項について、同出願の優先権および恩典を主張するものである。同出願の開示内容は参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
薬物および薬剤の送達装置は、多数の生物学的用途を含む広範な用途に利用されている。多くの場合、そのような送達装置は、放射状に伸展可能な装置の形態を取る。例えば、疾患により閉塞した体内経路を治療すること、および、カテーテル送達された医療装置をそのような体内経路内の適切な位置に保つことの用途向けに、膨張可能なエラストマーバルーンが提唱されている。さらに、身体組織への徐放を目的として中に薬物または薬剤を埋め込んだ薬剤溶出ステントが体内管腔に留置される。
【0004】
一部のエラストマーバルーンは、薬物を含んだ液体または気体を標的部位に送達するように作られている。残念ながら、標的部位に送達された薬物または薬剤のうちかなりの量は、治療効果を生じるほど十分には標的部位の組織へと透過せず、したがって、標的部位を通過して流れる血液またはそのたの流体によって洗い流されてしまう。このため、送達装置により提供される薬物または薬剤の有効性が実質的に消失し、かつ大量の薬物または薬剤が血流中へと洗い流されることにより全身作用が生じる可能性が高くなる。薬物または薬剤は、標的とする組織領域に治療的効果をもたらす前に大部分が洗い流されてしまうと予測されることから、その体積を増加させる必要がある。しかしながら、全身作用があるため、薬物または薬剤の体積は、系統的な希釈とそれに続く患者全身への系統的な分布とによる曝露に関して安全と考えられる体積を越えてはならない。薬物または薬剤は、希釈状態において患者身体の他の部位へと洗い流されても十分安全でなければならず、かつ望ましくない治療作用またはその他有害な作用を有していてはならない。標的部位において治療特性を有するよう薬物または薬剤を十分に濃縮することと、同時に、洗い流された後に有害な作用をもたらさないよう十分に希釈することとの間には、微妙なバランスが存在する。
【0005】
薬物および薬剤を送達するさらなるビヒクルとしては、従来、薬剤溶出ステントがある。既存のステント型送達ビヒクルは、組織中へと透過する薬物の局所濃度にばらつきがあることが示されている。ステントのストラット部の薬物濃度は、ステントのストラット間領域の薬物濃度より比較的高い。このことは薬物の治療効果に悪影響を及ぼす可能性がある。より具体的には、組織の一部の領域では薬物濃度が毒性範囲に達し、一方、他の領域では濃度が不十分であるということが起こりうる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
当技術分野において、全身作用を低減させた状態で、患者体内の標的部位に治療用薬剤を効率的に送達する方法が求められている。本発明は、この課題を解決するためのさらなる解決法を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の1つの態様において、体腔内の標的部位に治療用薬剤を送達するための方法は、第一の流体圧の流体が通過できる壁を少なくとも1つ有する非穿孔送達装置を提供する段階を含む。非穿孔送達装置は、標的部位に対して放射状の流体力を提供するように配置される。少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体は、第一の流体圧で治療用薬剤送達装置に供給される。流体は、送達装置の少なくとも1つの壁を通過し、送達装置の外側に第二の流体圧で半閉鎖空間を作り出す。送達装置は、半閉鎖空間とその中に配置された流体とに対して放射状の流体力を印加し、同時に、送達装置を通過する流体が標的部位の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする。流体は、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに十分な量で実質的に均一に標的部位へと分布される、少なくとも1つの治療用薬剤を含む。
【0008】
本発明の複数の局面において、半閉鎖空間は、標的部位と送達装置の外壁とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含んでいてもよい。オリフィスは、送達装置の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成されてもよい。第一の流体圧は第二の流体圧より大きくてもよい。第二の流体圧は、送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きくてもよい。本発明の方法はさらに、送達装置に連結されたカテーテルを用いて送達装置に流体を供給する段階を含んでいてもよい。少なくとも1つの壁は、折りたたみ可能および伸展可能であってもよい。送達装置は標的部位に対して放射状の流体力を印加してもよく、このことは、送達装置をより大きい有効直径まで伸展させこれによって放射状の流体力の印加が生じるよう、流体を第一の流体圧で送達装置に導入する段階を含む。
【0009】
本発明のさらなる局面において、少なくとも1つの壁は形状が固定されていてもよい。送達装置により標的部位に放射状の流体力を印加する段階は、有効直径が体腔の有効直径より大きい送達装置を体腔内に留置する段階を含んでいてもよい。同方法は、放射状の流体力によって、体腔を、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展させる段階をさらに含んでいてもよい。送達装置は灌流用成形フォームであってもよい。同方法は、標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含んでいてもよい。標的部位に送達される治療用薬剤の量を制御するため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させてもよい。
【0010】
本発明の1つの態様において、体腔内の標的部位に配置するのに適した治療用薬剤送達装置は、少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体が第一の流体圧で通過できるような多孔度を有する、非穿孔壁構造を含んでいてもよい。この壁構造には少なくとも1つの供給用アパーチャが形成され、これにより、治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスが提供される。壁構造のサイズは、第二の流体圧の流体を用いて半閉鎖空間を作り出すことができるよう、留置時に標的部位に対して放射状の流体力を生成するように決定される。さらに、流体中に含まれる治療用薬剤が、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに実質的に十分な量で、実質的に均一に標的部位に分布されるよう、壁構造は、標的部位に対して放射状の流体力を印加し、同時に、壁構造を通過する流体が標的部位において壁構造の外側の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする。
【0011】
本発明の複数の局面において、半閉鎖空間は、標的部位と壁構造の外側面とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含む。オリフィスは、壁構造の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成されてもよい。第一の流体圧は第二の流体圧より大きくてもよい。第二の流体圧は、治療用薬剤送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きくてもよい。治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスは、少なくとも1つの供給用アパーチャに連結されたカテーテルを含んでいてもよい。壁構造は、折りたたみ可能および伸展可能であってもよい。標的部位に対する放射状の流体力は、治療用薬剤送達装置に第一の流体圧で流体を導入することによって生じる。
【0012】
本発明のさらなる局面において、壁構造は形状が固定されていてもよい。標的部位に対する放射状の流体力は、治療用薬剤送達装置を体腔内に留置することによって生じてもよい。放射状の流体力によって、体腔を、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展させてもよい。壁構造は灌流用成形フォームを含んでいてもよい。
【0013】
本発明の複数の局面において、本発明の方法は、標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含んでいてもよい。本発明の方法はまた、標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させる段階をさらに含んでいてもよい。
【0014】
詳細な説明
本発明の1つの例証的態様は、非損傷的な様式で薬物の送達および身体組織への薬物または薬剤の透過を最大にするため、患者体内の標的部位に治療用薬剤または薬物を送達するための装置、システム、および方法に関する。本発明は、動力学的隔離加圧作用(以降「KIP作用」という)によって、細胞外および細胞内の両方に治療用薬剤または薬物を送達する。
【0015】
「治療用薬物および/または薬剤」という語句およびその種の語句は、本明細書において互いに置き換え可能な語句として用いられ、単一もしくは複数の治療用薬物、単一もしくは複数の治療用薬剤、または、単一もしくは複数の薬物もしくは薬剤の任意の組み合わせを意味する。したがって、前記語句をわずかに変化させたいかなる語句も、異なる意味を示すものとして、または、薬物もしくは薬剤の異なる組み合わせを指すものとして、解釈されるべきではない。当業者に理解されるとおり、本発明は、治療用薬物および/もしくは薬剤、またはそれらの任意の組み合わせを送達することを目的としている。
【0016】
KIP作用は、身体組織の隔離部位または標的部位に対する治療用薬物または薬剤の透過性およびその付着を向上させるため、半閉鎖空間を作成および維持することを目的に、隔離部位または標的部位に加圧流体を投与する(隔離部位または標的部位は、半閉鎖空間の少なくとも一部を形成する)ことの結果として生じる作用として定義できる。
【0017】
より具体的には、KIP作用は、送達される特定の薬物または薬剤がもたらす治療を必要とする標的部位に対して圧力下で流される流体を利用する。流体が標的部位と非損傷的に接触する際に、流体の圧力により、分布および濃度が実質的に均一である1つまたは複数の治療用薬剤を含む流体の領域が作り出される。この流体の領域により、所望の滞留時間または滞在時間にわたって治療用薬剤を均一に投与または配置することが可能となり、その結果、治療用薬物または薬剤の組織透過が向上する。治療用薬物または薬剤の配置が均一であるほど、かつ治療用薬物または薬剤の組織透過が良好であるほど、治療対象の組織中の治療用薬物または薬剤の濃度が均一になる。
【0018】
したがって、前述した公知の経口的および全身的な薬物投与方法と比較して薬物または薬剤の全体的な用量または体積を減らしながら、流体中に含まれる薬物または薬剤の強度または濃度を維持するかまたは増強させ、治療効果を得ることが可能である。標的部位の組織へと透過しなかった過量の薬物または薬剤は、すべて希釈されて、加圧流体とともに洗い流される。しかしながら、薬物または薬剤を含む流体は、薬物または薬剤の含有量という点において、他の公知の方法より実質的に濃度を高くしてもよい。標的部位から出た治療用薬物または薬剤が速やかに希釈されること、および、他の公知の方法と比較して薬剤または薬物の全体的な用量が少ないことから、患者身体の他の部位に対して望ましくない治療作用またはその他有害作用を生じる可能性は低くなる。さらに、薬物または薬剤の組織への透過性が向上するため、標的部位が受け取る薬物または薬剤の量が従来の方法と比較して増加し、したがって治療の有効性が向上する。
【0019】
約言すれば、KIP作用の隔離および加圧によって薬物または薬剤の組織への透過が実質的に向上するため、標的部位に投与する流体は、従来の方法と比較して、治療用薬物または薬剤の濃度を高くし、かつ全体的な用量を少なくできる。透過が向上すると治療用薬物または薬剤の必要な用量が少なくなり、公知の経口的および全身的な分布方法と比較して治療効果が向上する。
【0020】
図1〜9において、同様のパーツには同様の符番が付されている。これらの図は、本発明に基づき、KIP作用を利用して流体を生成しかつこれを患者に送達するための装置、システム、および方法の態様の例を示している。以下に、これらの図に示した態様の例を参照しながら本発明を説明するが、この他にも多数の形式で本発明を実現できることが理解されるべきである。当業者にはさらに、本発明の精神および範囲に則った様式で、要素または材料のサイズ、形状、または種類など、開示された態様の各パラメータを変更するさまざまな方法が理解されるものと思われる。
【0021】
本発明の1つの例示的態様に従って、図1および図2に、一般的に非弾性伸展フルオロポリマー材料で構成される本体12など、灌流用成形フォームを有する、放射状伸展可能装置10を示す。本発明が提供する伸展可能装置は、例えばさまざまな医学的治療用途など、幅広い用途に好適である。生物学的用途の例としては、移植された血管グラフト、ステント、補綴物、もしくはその他の種類の医療用移植物の治療、および、血管、尿路、腸管、鼻腔、神経鞘、骨腔、尿管など、任意の体腔、空間、もしくは中空臓器の経路の治療を行うためのカテーテルバルーンとしての使用がある。カテーテルバルーンはバルーンの全長を通過するカテーテルを伴う種類、またはカテーテルの末端に配置されたバルーンを伴う種類のものであり得る。その他の例としては、血管内の塞栓および血栓など閉塞物を除去するための装置、閉塞した体内経路の開存性を回復させるための拡張装置、経路または空間を閉塞または充填する手段を選択的に送達するための閉塞装置、ならびに、経血管器具およびカテーテル用のセンタリング機構としての使用がある。伸展可能装置10はまた、従来のカテーテルバルーンの伸展を制御することを目的として、従来のバルーンをカバーするシースとして使用してもよい。
【0022】
例示的放射状伸展可能装置10の本体12は、図1に示す小さな第一の直径の状態から、図2に示す大きな第二の直径の状態へと、伸展力の印加によって展開することができる。放射状伸展可能装置10の本体12は、好ましくは非穿孔モノリシック構造などを特徴とする。すなわち、本体12は、概ね均一な材料で作られた単一単体の物体である。本体12の実施例は、2002年4月22日に提出され参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/131396号に詳述されている押出伸展処理を用いて作製される。その他の方法としては、プラズマ処理したPTFE、および、2000年10月3日に提出され参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/678,765号に記載の追加湿潤により伸長されたPTFEを使用する方法がある。さらに、放射状伸展可能装置10は1つの例示的態様にすぎない。当業者に理解されるとおり、KIP作用を実施するには、後述のように望ましい高い圧力を維持でき、かつ治療用薬物または薬剤を含む流体を圧力下で隔離部位に送達できるものであれば、任意の治療用薬物または薬剤の送達装置を利用できる。図に示されているとおり、伸展可能部品10は、伸展可能な灌流用成形フォームであって、圧力下でこの灌流用成形フォームに流体(ナノ粒子のスラリー、半固体、固体、ゲル、液体、または気体の形態である流体)を供給できるカテーテルまたはその他の構造に連結できるような灌流用成形フォームである。
【0023】
この例示的処理により、非弾性伸展フルオロポリマーの非穿孔シームレス構造を特徴とする本体12が得られる。このフルオロポリマーは、大きな第二の直径の状態において、あらかじめ規定されたサイズおよび形状を有する。本体12は、装置の伸展に用いられる伸展力にかかわらず、あらかじめ規定されかつ固定された最大直径およびあらかじめ規定された形状へと、信頼できかつ予測可能な状態で伸展することができる。
【0024】
または、前述の各作製方法は、例示の目的に適したエラストマー灌流用成形フォームを治療用送達装置の1例として作製することに関するものであることに注意されたい。放射状伸展可能装置10はこの他多数の異なる材料でも作製可能であり、このことは当業者に理解されるものと思われる。例えば、好適なフルオロポリマー材料としてはポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)があり、または、テトラフルオロエチレンと他のモノマーとのコポリマーを使用してもよい。そのようなモノマーとしては、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン、または、ヘキサフルオロプロピレンなどのフッ化プロピレンがある。最も多くの場合に用いられるのはPTFEである。したがって、放射状伸展可能装置10は種々のフルオロポリマー材料で作製可能であり、本発明の作製方法にも種々のフルオロポリマー材料が利用可能であるが、本明細書の説明では特にPTFEのことを指す。
【0025】
図2において、放射状伸展可能装置10の本体12は、好ましくは伸展時に概ね管状の形状となるが、方形、卵形、楕円形、多角形などその他の断面を用いてもよい。本体12の断面は、好ましくは、本体の長さに沿って連続的かつ均一である。しかしながら別の態様において、断面は本体の長さに沿ってサイズおよび/または形状が変化していてもよい。図1は、弛緩して小さな第一の直径の状態にある本体12を示したものである。本体12は、第一の端部16と第二の端部18との間で縦軸14に沿ってわたる中央管腔13を有する。
【0026】
本体12に放射状の展開力または伸展力を与えるため中央管腔13の中に配置された、細長の中空チューブ20の形態である展開機構が示されている。放射状の展開力は、第一の状態から、図2に示す大きな第二の直径の状態へと、本体12を放射状に伸展させる。第一の端部16および第二の端部18は、中空チューブ20の外面にシーリング状態で連結される。第一の端部16および第二の端部18は、熱接着しても、接着剤によって接着しても、または、本体12の壁とチューブ20との間で第一の端部16および第二の端部18から流体が漏れることを防ぐようなその他の好適な手段によって取り付けてもよい。
【0027】
中空チューブ20は、内部で長軸方向にわたる管腔22、および、チューブ20の外面と管腔22との間に流体接触をもたらす多数の側孔24を備える。チューブ20は、管腔22および側孔24を介して本体12の管腔13へと選択的に流体を供給するため、単数または複数の流体供給源(後述)と連結してもよい。流体からの圧力は、本体12に放射状の伸展力を与え、これにより、本体12を、大きな第二の直径の状態へと放射状に進展させる。本体12は非弾性材料で構成されているため、チューブ20と流体供給源との連結を解除するかまたはその他の方法により本体12の管腔13内の流体圧を実質的に低下させても、一般的に、本体12が小さな第一の直径の状態に戻ることはない。しかしながら、本体12は自重によってつぶれ、直径が小さくなる。例えば真空源などによる陰圧の印加を用いて、最初の小さな直径の状態まで本体12を完全に収縮させてもよい。
【0028】
放射状伸展可能装置10が、中空チューブ20など、流体による展開力を利用した展開機構との併用に限定されることはなく、このことは当業者に理解されるものと思われる。他の公知の展開機構を用いて、放射状伸展可能装置10を放射状に展開させてもよく、そのような機構としては例えば、機械的に作動する部品など機械操作される伸展要素、または、ニチノールなどの温度作動性材料で構成された機械要素などがある。
【0029】
本発明への使用には種々のフルオロポリマー材料が好適である。好適なフルオロポリマー材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、またはテトラフルオロエチレンと他のモノマーとのコポリマーが使用できる。そのようなモノマーとしては、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン、またはフッ化プロピレン(ヘキサフルオロプロピレンなど)などがある。最も多くの場合に使用されるのはPTFEである。したがって、放射状伸展可能装置10は種々のフルオロポリマー材料で作製でき、かつ本発明の作製方法には種々のフルオロポリマー材料が利用できるが、本明細書の説明では具体的にPTFEを指す。
【0030】
図3は、本体12など、押出伸展処理により形成されたePTFE製灌流用成形フォーム110の壁の微細構造を示した略図である。説明のため、灌流用成形フォーム110の微細構造を誇張して示した。したがって、微細構造の寸法は拡大されているが、同図が示している微細構造の一般的な特徴は、灌流用成形フォーム110内に多数存在する微細構造を代表するものである。
【0031】
ePTFE製灌流用成形フォーム110の微細構造は、フィブリル132で相互連結されたノード130を特徴とする。ノード130は、灌流用成形フォーム110の縦軸114に対して概ね直角に配向される。フィブリル132で相互連結されたノード130のこの微細構造により、ミクロフィブリル空隙を有する微孔性構造が得られる。ミクロフィブリル空隙は、灌流用成形フォーム110の内壁136から外壁138まで完全にわたる貫通孔またはチャネル134を規定するような空隙である。貫通孔134は(縦軸114に対して)概ね直角に配向され、内壁136から外壁138まで横断するノード間の空隙である。貫通孔134のサイズおよび幾何学構造は、1999年10月1日に提出され参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/411797号に詳述されている押出伸長処理によって変更することができ、これにより、非透過性、半透過性、または透過性の微細構造を得ることができる。しかしながら、本発明が本製造方法に限定されないことに注意するべきである。言及された適用は、伸展可能装置の製造方法の一例にすぎない。
【0032】
貫通孔134のサイズおよび幾何学構造を変更して、さまざまな異なる配向を形成することができる。例えば、押出処理および/または伸長処理中にePTFE製灌流用成形フォーム110に捻りまたは回転を加えることにより、灌流用成形フォーム110の縦軸114に直角な軸に対してある角度をもつようにマイクロチャネルを配向させることができる。伸展可能装置10は、押出処理を施し、続いてポリマーを伸張し、そしてポリマーを焼結して貫通孔134の伸長構造を固定することによって得られる。
【0033】
伸展可能装置10を形成する材料の貫通孔134の微孔性構造により、伸展可能装置10を穿孔する必要なく、伸展可能装置10の壁が透過性となる。同装置の微孔性構造により、穿孔部からのみ流体が流出する有孔装置と比較して、伸展可能装置10の壁を通過する流体の分布の制御性および均一性が向上する。したがって、本明細書で説明するように、伸展可能装置10の非穿孔構造は、伸展可能装置10により流体を有効に分配することに寄与する。体内管腔内に流体を分布させるいくつかの公知の方法では、有孔バルーンが使用される。流体はこの孔を通って体内管腔へと放出される。本発明の貫通孔134の非穿孔微孔性構造では、明確な孔と比較して、流体が通過できる表面積の割合がはるかに大きくなる。流体が伸展可能装置10を透過する位置(すなわち貫通孔134)の数が、壁に明確な孔が作られている場合と比較してはるかに多いため、標的部位への流体の分布がより均一かつ完全になり、かつ流体圧の分布もより均一になりしたがってKIP作用をより良好にもたらすことができる。
【0034】
1つの態様において、ePTFE製灌流用成形フォーム110およびそれにより得られる伸展可能装置10は、ePTFE製灌流用成形フォームの全断面および全長にわたって均一な微細ノード構造を有する。この均一な微細ノード構造により、伸展可能装置10は信頼できかつ予測可能な状態で第二の直径まで伸展するため、伸展可能装置の伸展特性が向上する。微細ノード構造は、従来のePTFEグラフトにおけるノードよりサイズおよび質量が小さいノード(例えば25μm〜30μm)を特徴としていてもよい。さらに、ノード間の空間(「ノード間距離」という)および繊維間の空間(「フィブリル間距離」という)も、従来のePTFEグラフトと比較して小さくてもよい(例えば1μm〜5μm)。さらに、例示的態様において、ノード間距離およびフィブリル間距離は、ePTFE製灌流用成形フォームの全長および全断面にわたって均一であってもよい。この均一なノード構造は、全断面および全長にわたって潤滑剤のレベルを均一にした状態でビレットを形成することによって作成してもよい。この管状の押出物を、例えば1インチ/秒より速い速度など高速の伸長速度で伸長させると、微細ノード構造が得られる。好ましくは、押出物の伸長速度は約10インチ/秒以上である。ノード構造は、潤滑剤の配置および量、ならびに伸長処理を変更することによって、不均一にしてもよい。
【0035】
詳しく後述するように、放射状伸展可能装置10の本体12が流体によって膨張する際、流体は加圧滲出の様式で本体12を通過して患者体内の標的部位に投与されてもよい。そのような例において、流体は異常を生じた標的部位を治癒させるための治療特性を有する1つまたは複数の薬物を含んでいてもよい。治療用薬物および治療用薬剤の例を以下の表1に示すが、これらに限定されない。
【0036】
【表1】
【0037】
外科用接着剤、癒着防止用ゲルおよび/またはフィルム、ならびに組織吸収性の生物学的コーティングも、表1の治療用薬物および薬剤と併用してまたは併用せずに、本発明とともに利用することができる。接着タイプのポリマーは、治療用薬物および薬剤と併用してまたは併用せずに用いるための一液型接着剤および二液型接着剤を含み得る。接着タイプのポリマーの例としては、2-オクチルシアノアクリレート、天然の生物学的シーラントを生成するためヒト由来コラーゲンおよびトロンビンの懸濁液と混合した患者自身の血漿、患者の血液の製剤に由来するフィブリングルー、ポリマーヒドロゲルなどがある。表1に示すように、組織吸収性の治療用薬剤は、魚油オメガ3脂肪酸、魚油オメガ3脂肪酸を含む植物油、組織吸収、接着、親油性の透過を増強するのに適したその他の油もしくは物質、およびこれらの組み合わせなどの流体に組み込んでもよい。薬剤の組織付着を増強しかつ細胞内および細胞外における治療用薬剤の透過を向上させ、同時に、標的治療部位およびその周囲において外傷性の組織癒着形成を低減するため、治療用薬物と併用してまたは併用せずに、癒着防止フィルムを形成するゲル、溶液、または化合物を用いてもよい。ステントを留置した血管および拡張した尿道など、癒着生成をきたしやすい選択部位では、癒着を防止するこのような治療的送達方法により、組織癒着形成の低減という利点が得られる。
【0038】
流体が貫通孔またはチャネル134を通過できるよう、比較的広範囲にわたって制御を行うため、ノード間距離およびフィブリル間距離を変化させてもよい。貫通孔またはチャネル134のサイズは、例えば、すでに参照により本明細書に組み入れられている米国特許出願第09/411797号に詳述されている工程などの製造工程により選択できる。微孔性領域内の壁の微細構造のノード間距離、ひいては貫通孔またはチャネル134の幅は、約1μm〜約150μmであってもよい。ノード間距離がこの規模であると、本体12の壁を通過する流体の流量は約0.01 ml/分〜約100 ml/分となる。
【0039】
チャネル134のサイズが場所または領域ごとに異なるよう、微孔性構造に沿った場所ごとにノード間距離が異なっていてもよい。これにより、実質的に同じ流体圧において、同じ微孔性構造の中で領域ごとに流量を変化させることができる。
【0040】
放射状伸展可能装置10によってこの異なる流量を実現すると、伸展可能装置10の膨張中に流体圧を変化させるのに役立つとともに、治療的処置を要する標的部位における伸展可能装置10の滞留時間を変化させることも可能となる。さらに別の要素として、混合する各溶液の相対的な粘稠度、および得られる治療用薬剤の溶液粘稠度も含まれ得る。粘性が高いほど流れに対する抵抗が大きくなり、したがって、十分量の薬剤を投与するために必要な滞留時間が長くなる。
【0041】
滞留時間とは、伸展可能装置10が患者体内に配置されて標的部位など患者体内の場所へと1つまたは複数の治療用薬剤を投与する時間の長さの測定値である。標的部位とは、治療的処置を必要とする場所である。貫通孔またはチャネル134のサイズおよび形状を変化させることができれば、滞留時間を変更することが可能である。滞留時間を長くすることが望ましい場合は、通過する流体が少なくなるように貫通孔134のサイズおよび形状を変化させてもよい。同様に、投与する治療用の流体の量が同じで滞留時間を短くすることが望ましい場合は、より大きい流量で流体が通過するように貫通孔134を変化させてもよい。さらに、本発明の1つの例示的態様および本明細書の後述に示すように、体内管腔の組織により吸収される流体の圧力印加も滞留時間に影響を及ぼす。
【0042】
貫通孔134の微孔性構造は、通過する流体の流体圧がかなりの範囲にわたって変化できかつ貫通孔134を通過する流体の流量が実質的に等しくなるような構造である。例えば、与えられた態様において、貫通孔134を通過する流体の流量は、あらかじめ定められた流体圧の範囲にわたって実質的に一定に維持される。または、流体の流量の変化率が、与えられた流体圧の変化率より小さくなるようにしてもよい。例えば、伸展可能装置10の外部の流体に加圧することを含む1つの態様において、伸展可能装置10の内部の圧力は、最大約6気圧であってもよい。伸展可能装置10で利用できることが確認されているその他の範囲としては、2〜4気圧の範囲の圧力がある。可撓性の伸展可能装置10の内部の流体圧を比較的低くすることによる結果の1つは、伸展可能装置10が機能する場所である体内管腔または体腔の形状に伸展可能装置10が適合でき、伸展可能装置10の過膨張による身体組織の損傷が生じにくいことである。
【0043】
伸展可能装置10への流体の流れを変化させることにより、伸展可能装置10の内部の圧力を、一定、変動、または間欠的な値で提供してもよい。詳しく後述するように、伸展可能装置10の内部の流体圧の変化は、伸展可能装置10の外部の流体圧の変化に影響を及ぼし得る。
【0044】
伸展可能装置10の内部の圧力の一部は、伸展可能装置10の外部の流体圧へ変換される。詳しく後述するように、加圧流体は伸展可能装置10から流出し、標的部位の組織に浸透する。
【0045】
1つの例示的態様に従って、治療用薬物送達システム200を図4に示す。伸展可能装置10は、管状継手214を介して第一の貯蔵容器212と流体接触する。例示的伸展可能装置10はまた、第二の管状継手218を介して第二の貯蔵容器216とも流体接触する。第一の貯蔵容器212および第二の貯蔵容器216から流体の形態で供給されるさまざまな量の1つまたは複数の成分を、伸展可能装置10の中で混合してから、伸展可能装置10から流出させて患者の体内へと入れてもよい。さらに、貯蔵容器への接続を容易に切り替えることができるよう、伸展可能装置10との接続は取り外し可能であってもよい。
【0046】
貯蔵容器はこの他に複数あってもよく、管状継手224を有する貯蔵容器222および管状継手228を有する貯蔵容器226はそれを表したものである。各貯蔵容器212、216、222、および226は、混合が生じるまで、別々の成分を保持していてもよい。したがって、貯蔵容器の数はさまざまに変化し得る。さらに、貯蔵容器の種類もさまざまに変化し得る。各貯蔵容器212、216、222、および226のいずれも、固体、液体、または気体の保持に適したものであってよい。より具体的には、第一の貯蔵容器212を液体保持用に設計し、第二の貯蔵容器216を気体保持に設計してもよく、もしくはその逆であってもよく、または、一方が固体、液体、または気体のうち1つを保持し他方が別のものを保持してもよい。固体、液体、および/または気体を保持できる容器の設計は必ずしも単一でなくてもよいが、本発明にはそのような設計が機能的であると考えられる。
【0047】
または、貯蔵する成分の物理的状態に応じて、異なる設計を用いてもよい。貯蔵容器212、216、222、および226により保持される固体は、液体または気体との混合のため伸展可能装置10へと容易に移送できるよう、パウダーの形態であってもよい。さらに、貯蔵容器212、216、222、および226は、必要であれば、貯蔵される成分を望ましい温度に保つため加熱または冷却してもよい。
【0048】
この説明および図示には、1つから複数まで、特定の態様に必要な任意の数の貯蔵容器の使用が意図されていることが理解されるべきである。
【0049】
伸展可能装置10を通過する成分流体の量を変化させるまたは制御するため、第一の管状継手214に沿ってコントローラ220が具備されていてもよい。コントローラ220は多数の異なる形態を取りうる。コントローラ220は主として、第一の貯蔵容器212および任意の追加の容器からの流れを制限および/または分流する。コントローラ220は、流量を調整できる単純な弁を含んでいてもよく、または、当業者に理解されるとおり、より精巧なものであってもよい。この例示的コントローラはまた、第一の貯蔵容器212から供給される流体を加圧するため、十分なポンプ作用を提供してもよい。または、貯蔵容器212自体を直接加圧してもよい。コントローラの1例は、圧力計とともに血管形成術用バルーンカテーテルの膨張に従来利用されている加圧注入器である。マニホールドに接続された1つまたは複数の加圧注入装置により、装置に複数の治療要素が注入される。
【0050】
別の構成において、第一の管状継手214は、コントローラ220を間にはさむことなく伸展可能装置10と接続していてもよい。標的部位に必要な流体の量は、個々の流体に対する希釈の程度(または希釈がないこと)によって決定される。
【0051】
貯蔵容器に複数の成分が入っているかまたは単一の成分が入っているか、および、成分が固体、液体、または気体の形態であるかにかかわらず、成分のさまざまな特性を変更してもよい。例えば、成分を、希釈または強化、加熱または冷却、および、混合または層化などしてもよい。さらに成分は、その供給の点においてさまざまであってもよく、例えば、一定、変動、または間欠的な流量を伸展可能装置10へとおよび伸展可能装置10を介して提供してもよい。さらに成分は、その状態の点においてさまざまであってもよく、例えば、固体パウダー、半固体、ナノ粒子、ゲル、液体、気体、高粘性の液体、PTFEなどのポリマーと混合し硬化させたコーティングなどであってもよい。
【0052】
本発明のさらなる態様において、1つまたは複数の成分を組み合わせることにより、治療用薬剤を伴ってまたは伴わずにポリマー体を形成してもよい。例えば、ポリマー材料を生成する成分を貯蔵容器212に入れてもよい。成分を伸展可能装置10へ送達すると、これらの成分は硬化してポリマー構造を形成する。そのような構造を、内出血を止血する、一連の縫合部をカバーして滑らかな表面を形成する、身体組織を接着する、病変組織または損傷組織に保護コーティングを施すなどの目的に利用してもよい。
【0053】
注意点として、得られる薬剤は、治療用か非治療用かにかかわらず、気体、液体、パウダー、ゲル、ミクロ粒子、ナノ粒子を含む物理的形態であってもよい。
【0054】
図5Aに、内壁232を有する体腔または体内管腔230の代表的な部分断面に挿入された状態の伸展可能装置10を示す。体腔または体内管腔230は患者体内の小さな閉鎖中空空間であり、それに対する圧力は伸展可能装置または腔もしくは管腔よりわずかに大きなサイズの装置に印可され得る。体内管腔230は、例えば、血管、毛細血管、または、伸展可能装置10を挿入できるその他の閉鎖構造であってもよい。以下に、伸展可能装置10の用途を詳しく説明する。
【0055】
使用時、伸展可能装置10は患者体内に挿入され、例えば図4に示すように体内管腔230内の標的部位に到達するよう操作される。当業者に理解されるとおり、伸展可能装置10内の圧力は、多数の異なる圧力範囲にわたっていてもよい。例えば圧力は、1つの例示的な態様において最大約6気圧であってもよく、別の実施例においては約2〜約4気圧であってもよく、またはその他の望ましい圧力範囲であってもよい。伸展可能装置10は、進入する流体または薬剤からの圧力下において膨張し、これにより、伸展可能装置10が挿入された部位の体内管腔230の内壁232に対して押し付けられてもよい。注意すべき点として、体内管腔230の代表例として示されている血管は、本発明に基づいて伸展可能装置10により治療用薬剤を導入するための、適切な標的部位の例を示したものにすぎない。
【0056】
伸展可能装置10は多数の異なるサイズの範囲で提供される。このサイズとは、完全に膨張した状態の伸展可能装置10が、伸展可能装置10が配置される体内管腔または体腔の内径サイズの100%より大きくなるようなサイズである。換言すると、伸展可能装置10は膨張して体内管腔または体腔内の空間を十分に占め、これにより、体内管腔または体腔の組織に対して伸展可能装置10から圧力が印加される。伸展可能装置10が小さすぎる場合は、完全に膨張しても体内管腔の壁に到達せず、したがってKIP作用を生成するための接触は確立されない。伸展可能装置10が大きすぎる場合は、装置10が完全に膨張すると体内管腔または体腔に損傷および可能な切開を生じる。場合によってはこれが望ましいこともある(例えば血管の治癒修復を強制的に起こすことが望ましい場合)。しかしながらその他の場合は、体内管腔または体腔に対して伸展可能装置10が大きすぎることは望ましくない。したがってユーザーは、目的の作業に適したサイズを選択する必要がある。例えば、伸展可能装置10により、体内管腔または体腔に対して非損傷的な圧力を印加する必要がある場合は、体内管腔または体腔の有効内径の約101%〜150%、または最大110%まで、もしくは150%までも膨張するように伸展可能装置10を選択してもよい。有効直径は実質的に最大サイズの近似であり、これは円形横断面の実際の直径に等しく、かつ非円形横断面の直径タイプの寸法に等しい。当業者に理解されるとおり、伸展可能装置10により印加される圧力、体内管腔または体腔の強度、および、所望される結果が非損傷的なものかまたは損傷的なものかに基づいて、他のサイズ範囲を使用することも可能である。
【0057】
伸展可能装置10は、図5Cに示す本発明の例示的態様のように半閉鎖空間234が形成されない場合でも、伸展可能装置10が内壁232に印加する圧力により、伸展可能装置10を内壁232に押し付けて保持するという特性を有する。半閉鎖空間234は、体内管腔230の内壁232に対して伸展可能装置10が押し付けられ、加圧流体が伸展可能装置10から押し出された際の、伸展可能装置10と内壁232との間の領域である。半閉鎖空間234の1つの側面は伸展可能装置10に接し、その反対側の側面は体内管腔の内壁232に接し、第三の側面は、加圧流体が空間を占めたときに、伸展可能装置10が終端する縁部周囲に形成される小オリフィス236に接する。
【0058】
より詳しく説明するため、図5Aに、矢印Aの方向に流れる流体によって膨張し、体内管腔230の内壁232に押し付けられた状態の伸展可能装置10を示す。この図の状態においては、伸展可能装置10を膨張させている流体はまだ伸展可能装置10の壁を通過していないため、半閉鎖空間234は存在しない。十分量の流体が伸展可能装置の壁を通過すると、流体は加圧状態に保たれて内壁232および伸展可能装置10の外壁に押し付けられ、これにより半閉鎖空間234が生じる。伸展可能装置10および内壁232の加圧を通して、半閉鎖空間234が作成される。図5Bに、伸展可能装置10の外部に流体がいくらか集まり、半閉鎖空間234を形成し始めている様子を示す(しかしながら、図が示しているように、空間はまだ完全ではない)。加圧流体が伸展可能装置10の外部にさらに供給されて空間を押し広げ、これにより、図5Cに示すように半閉鎖空間234が形成される。半閉鎖空間234は、完全な大きさになると、伸展可能装置10の端部に到達し、小オリフィス236が形成される。加圧流体が伸展可能装置10へとさらに供給されることにより、伸展可能装置10の外部の圧力が保たれ、半閉鎖空間234が維持され、かつ小オリフィス236も開口状態に保たれる。伸展可能装置の外部の流体圧が実質的に低下すると、小オリフィス236が閉じる。
【0059】
半閉鎖空間234は、伸展可能装置10の貫通孔134から放出される加圧流体を図の矢印Bの方向に誘導する。この構成により、流体中に濃縮された治療用薬剤および/または薬物が、内壁232の標的部位に完全に接触する。このようにして、治療用薬剤および/または薬物の少なくとも一部が、透過領域238の内壁232の局所の細胞空間および組織へと透過する。さらに、流体の一部は、伸展可能装置10の縁部周囲に小オリフィス236を形成し、次にこの小オリフィス236を通って矢印Cの方向に漏出する。したがって、伸展可能装置10の内部からの圧力の一部は半閉鎖空間234へと伝わり、その結果、流体が体内管腔230の内壁232に押し付けられる。流体が半閉鎖空間234から出ると、流体に含まれている薬物および/または薬剤は希釈され、実質的に洗い流される。
【0060】
KIP作用は、伸展可能装置10と体内管腔230の内壁232との間に半閉鎖空間234を作り出すのに役立ち、したがって、内壁232の透過領域238に治療用薬物または薬剤をより均一に分配または接触させるのに役立つ。この半閉鎖空間234は、伸展可能装置10の壁を通過して半閉鎖空間234へと流れ込む流体によって継続的に満たされる。この継続的な流体の動きがあること、および半閉鎖空間234内の圧力が高いことにより、伸展可能装置10の実際の構造と内壁232または透過領域238との接触は長時間に及ばずにすむ。したがって、少なくとも1つの治療用薬剤または薬物をある濃度で含みかつ継続的に撹拌される流体が内壁232に接触する。流体の動きによって治療用薬剤または薬物が常に撹拌され、これにより新鮮な流体の供給と均一または実質的に均質な流体の接触とが継続的に生じるため、内壁232の組織上のある場所において、治療用薬物または薬剤の一部の領域が停滞する機会は生じない。
【0061】
少なくとも1つの治療用薬物または薬剤を含む流体が継続的に撹拌および再供給されることにより、組織部分における治療用薬物または薬剤の濃度は調節されかつ実質的に均一になる。さらに、流体が加圧されていることにより、治療用薬物または薬剤を非損傷的に送達または接触させることが可能である。さらに、ステントのストラット、または内壁232に対してバルーンが押し付けられる領域など、薬物の接触の妨げとなる構造があると、流体、ひいては治療用薬物または薬剤の貯留を引き起こす可能性があるが、そのような構造は存在しない。濃度が実質的に均一な治療用薬剤または薬物が均一に接触することにより、組織透過の効率が上昇し、かつ体内管腔230の内壁232を透過する治療用薬物または薬剤の濃度もより均一になる。
【0062】
治療用薬剤または薬物の送達は、有効性を得るため、標的部位において十分な濃度を実現する必要がある。従来の方法は、標的部位において治療効果を得るため、薬物または薬剤の用量または体積が本発明と比較して実質的に大きい必要があった。従来の方法では、標的部位から洗い流されながら、組織に浸透しかつ同時にステントのストラットなどの構造の周囲でも作用するようにするため、十分量の薬物または薬剤を含める必要があった。または、従来の方法では、標的を定める手法ではなく全身に投与する手法を用いることにより、実質的により大量に薬物を患者に投与していた。しかしながら本発明は、標的部位の組織に対する治療用薬物および/または薬剤の分配をより効率的かつ均一にするため、治療用薬物および/または薬剤をより高濃度で含む加圧流体を用いて、少なくとも1つの治療用薬物および/または薬剤の組織への透過を向上させる非損傷的な方法を提供する。
【0063】
図6A、6B、および6Cに、伸展可能装置10とともに使用できる追加の医療装置の例示的態様を示す。図6Aは、コーティング242に完全に封入されたステント240の斜視図である。図6Bは、部分的なコーティング246を有するステント244の斜視図である。図6Cは、コーティングがないか、またはステント248の個々のワイヤ上にコーティングを有するステント248の斜視図である。当業者に理解されるとおり、コーティング242および246はPTFEまたはその他適切な材料で作られていてもよい。さらに、コーティング242は、1つまたは複数の治療用薬剤、または本明細書の説明のように治療用薬剤を生成するための1つまたは複数の成分を含んでいてもよい。当業者に理解されるとおり、伸展可能装置10は、患者体内の管腔壁に対してステント240、246、および248を伸展させるため、ステント240、246、または248のいずれかの内部に配置してもよい。
【0064】
別の構成において、伸展可能装置10は、すでに伸展したステント(例えば、図6A、6B、および6Cのステント240、246、および248)の内部で伸展してもよい。そのような構成において、ステント240、246、または248は、体内管腔または体腔を元の内径の110%程度まで既に伸長させている。次に、伸展可能装置10が伸展し、ステント240、246、または248、および体内管腔内壁232と接触してこれらに押し付けられる。ステント240、246、または248により追加の構造が提供され、かつ身体組織が既に伸長されているため、前記の態様におけるよりも伸展可能装置10を押し戻す力がより大きくなり、伸展可能装置10をわずかに圧迫する。さらに、伸展可能装置10内の圧力を、ステント240、246、または248を使用しない構成における3〜4気圧に対して、最大約6気圧まで高くすることができる。
【0065】
前述したように、伸展可能装置10のサイズおよび寸法は、半閉鎖空間234を形成できるよう、用途に特異的な体内管腔のサイズに対して十分な直径まで伸展可能装置10が伸展できるように決定される。換言すると、伸展可能装置10が小さすぎる場合は、小オリフィス236が大きくなりすぎて流体圧を維持できず、KIP作用は生じない。伸展可能装置10が大きすぎる場合は、伸展可能装置10を伸展させた際、実質的な圧力の印加によって体内管腔を破裂させる可能性がある。前述したのと同様、体内管腔の壁と伸展可能装置10との両方に対してわずかに圧迫を加えながら小オリフィス236を形成することによって外へと流出していく加圧流体が半閉鎖空間内にない限り、小オリフィス236は存在しない。体内管腔と伸展可能装置10との距離(すなわちオリフィスの高さ)は、約1/10000インチ〜約2 mmであってもよい。体内管腔と伸展可能装置10との間にこの距離があるため、治療用薬剤および/または薬物を非損傷的に標的部位に送達することが可能となる。本発明においては、組織への透過を高める目的で高圧ジェットの流体を用いることはないため、組織の融蝕が生じず、かつ組織に押し付けられる硬い構造もないため、組織に損傷を与えない。加圧流体により生じる、体内管腔と伸展可能装置10との間の距離が、組織を損傷から保護する。
【0066】
この加圧流体により、治療用薬剤が内壁232の中へと優先的に分布および浸透し、したがって、内壁232の細胞内空間および細胞外空間の両方に治療用薬物または薬剤をより効率的に投与できることが、予想外に明らかになった。このようにして得られる治療用薬物の送達作用がKIP作用である。治療用薬物または薬剤がより効率的に投与されることの結果の1つは、特定の用量の治療用薬剤または薬物を標的部位に投与するために必要な滞留時間が、前述した従来の方法と比較して短くなることである。さらに、滞留時間を短くせず同じにした場合は、より多量の薬物または薬剤が標的部位の組織へと透過し、したがって、従来の方法と比較して治療効果が向上する。
【0067】
別の結果の1つは、内壁232の透過領域238へと浸透しなかった治療用薬物または薬剤を含む流体はすべて半閉鎖空間234から流出し、その流体圧は体内管腔230内の周囲圧力まで低下し、したがって、KIP作用が働いている部位より外には局所的な薬物送達作用が生じないことである。
【0068】
さらに、伸展可能装置10とともにステント240、246、または248を使用する構成においては、前述したように、伸展可能装置10の内部で比較的高い圧力が得られる(例えば最大約6気圧)。この高い圧力により、体内管腔または体腔の組織中への治療用薬剤の分布および透過がさらに増強される。
【0069】
内壁232の標的部位へと時間をかけて投与された治療用薬剤は、内壁232の組織に浸透する。本明細書で説明しているように、内壁232に浸透しなかった治療用薬剤を含む流体は、半閉鎖空間234から出て希釈され、洗い流されて全身の血液循環に入る。KIP作用を用いると、標的部位を、治療用薬物および/または薬剤を含む流体の流れに時間をかけて接触させることができるため、標的部位に投与する流体は、治療用薬剤または薬物の用量または全体的な体積を少なくしかつその濃度を比較的高くすることが可能である。したがって、薬剤を送達する流体は実質的に希釈された状態となるため、身体組織に浸透しなかった治療用薬剤は、悪影響を及ぼすことなく患者身体の他の部位へと出て行くことが可能である。
【0070】
図7に、本発明により治療用薬物を投与する1つの例示的方法を示す。同方法は、伸展可能装置10などの薬物送達構造を、患者体内において体内管腔230などの標的部位に配置する段階(段階300)を含む。第一の薬剤または薬剤を含む成分を薬物送達構造に導入して、送達構造内に配置された第二の薬剤または薬剤を含む成分と反応させ、治療用薬物を生成する(段階302)。次に、治療用薬物は、薬物送達構造に沿った複数の位置から、制御された速度で、患者体内の標的部位へと放出される(段階304)。伸展可能装置10のサイズが十分であり、かつ伸展可能装置に提供される圧力が適切であれば、治療用薬物はKIP作用によって放出され、より短い滞留時間でより良好な組織への分布および透過が生じる。
【0071】
図8に、患者体内でポリマー体を形成する1つの例示的態様を示す。同方法は、伸展可能装置10などの送達構造を患者体内の標的部位に配置する段階(段階320)を含む。第一の成分を送達構造に導入して、送達構造内に配置された第二の成分と反応させ、化合物を生成する(段階322)。化合物は、送達構造に沿った複数の位置から、あらかじめ定められた制御された速度で放出され、標的部位へと投与されて、ポリマー体を形成する(段階324)。伸展可能装置10のサイズが十分であり、かつ伸展可能装置に提供される圧力が適切であれば、治療用薬物はKIP作用によって放出され、より短い滞留時間でより良好な組織への分布および透過が生じる。
【0072】
図9に、治療用気体を患者体内の標的部位に投与する1つの例示的態様を示す。伸展可能装置10などの気体送達構造を標的部位に配置する(段階330)。気体送達構造は第一の気体を受け取り、この第一の気体が、送達構造内に配置された第二の気体と反応することにより、治療用気体が生成される(段階332)。治療用気体は、気体送達構造に沿った複数の位置から、あらかじめ定められた制御された速度で放出されて、標的部位へと投与される(段階334)。伸展可能装置10のサイズが十分であり、かつ伸展可能装置に提供される圧力が適切であれば、治療用薬物はKIP作用によって放出され、より短い滞留時間でより良好な組織透過が生じる。
【0073】
図7、8、および9に示した各態様において、これらの方法は、第二の気体または成分が送達構造内に配置されているものとして説明されている。注意すべき点として、気体または成分は、多数の異なる様式で送達構造内に存在していてもよい。例えば、第二の気体または成分は、第一の気体または成分を送達構造に導入する直前またはそれと同時に送達構造に供給してもよい。または、第二の気体または成分は、臨床ユーザーが使用するまで、送達構造内に密封してもよい。また別の様式として、成分または気体は、例えばPTFE材料もしくはその他の送達装置材料などに組み込む、または、送達装置構造の壁にコーティングとして施すなどして、送達装置構造の内部に存在していてもよい。
【0074】
本発明のKIP作用により、加圧流体中に含まれる少なくとも1つの治療用薬物および/または薬剤を、実質的に均一な濃度で、非損傷的に送達することができる。より具体的には、本発明のKIP作用は、治療用薬物および/または薬剤の濃度を高めた加圧流体を用いて、少なくとも1つの治療用薬物および/または薬剤の組織への透過を高め、これにより、従来の方法と比較してより効率的かつ均一に治療用薬物および/または薬剤を標的部位の組織に分布させる、非損傷的な方法を提供する。薬物または薬剤の分布の効率が向上するため、特定の用量の治療用薬剤または薬物を標的部位に投与するために必要な滞留時間が、特定の用量の薬剤または薬物を送達するための従来の方法と比較して短くなる。さらに、身体組織に浸透しなかった治療用薬物または薬剤を含む流体は、すべて半閉鎖空間から流出する。流出する際に、流体圧が体内管腔内の周囲圧力まで低下し、流体中の薬物または薬剤は希釈されて濃度が低下し、洗い流される。したがって、KIP作用が働いている部位より外には局所的な薬物送達作用が生じない。
【0075】
以上の説明に鑑み、当業者には、本発明に関する多数の改変および代替の態様が明らかであると思われる。したがって、本明細書の説明は、例示的なものにすぎないと解釈されるべきであり、その目的は、本発明を実施するための最良の様式を当業者に教示することである。構造の細部は本発明の精神から実質的に逸脱することなくさまざまに異なっていてもよく、開示される本発明の範囲内に入るすべての改変はその独占使用権が留保される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の教示による、放射状伸展可能装置の側断面図である。小さい第一の直径の状態にある同装置を示している。
【図2】図1の放射状伸展可能装置の側断面図である。大きい第二の直径の状態にある同装置を示している。
【図3】本発明の放射状伸展可能装置を得るため本発明の作成工程中に用いた伸展フルオロポリマー製灌流用成形フォームの壁の一部の微細構造を示した略図である。
【図4】本発明の1つの局面による治療用薬物送達システムを示した線図である。
【図5】本発明の1つの局面による、体内管腔の内壁に配置された伸展可能装置を示した断面図である。
【図6】本発明とともに使用するためのステントを示した斜視図である。
【図7】本発明の1つの局面による、治療用薬物を投与する方法の例を示したフローチャートである。
【図8】本発明の1つの局面による、ポリマー体を形成する方法の例を示したフローチャートである。
【図9】患者体内の標的部位に治療用気体を投与する態様の例を示したフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は治療用薬剤の送達に関し、より具体的には、非損傷的に、組織への薬物の分布および透過を最大限にするため、圧力を印加しながら、患者体内の標的部位に治療用薬剤を送達するための装置および/またはシステムに関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2003年5月22日に提出された同時継続中の米国特許出願第10/444,863号と共通するすべての事項について、同出願の優先権および恩典を主張するものである。同出願の開示内容は参照によりその全部が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
薬物および薬剤の送達装置は、多数の生物学的用途を含む広範な用途に利用されている。多くの場合、そのような送達装置は、放射状に伸展可能な装置の形態を取る。例えば、疾患により閉塞した体内経路を治療すること、および、カテーテル送達された医療装置をそのような体内経路内の適切な位置に保つことの用途向けに、膨張可能なエラストマーバルーンが提唱されている。さらに、身体組織への徐放を目的として中に薬物または薬剤を埋め込んだ薬剤溶出ステントが体内管腔に留置される。
【0004】
一部のエラストマーバルーンは、薬物を含んだ液体または気体を標的部位に送達するように作られている。残念ながら、標的部位に送達された薬物または薬剤のうちかなりの量は、治療効果を生じるほど十分には標的部位の組織へと透過せず、したがって、標的部位を通過して流れる血液またはそのたの流体によって洗い流されてしまう。このため、送達装置により提供される薬物または薬剤の有効性が実質的に消失し、かつ大量の薬物または薬剤が血流中へと洗い流されることにより全身作用が生じる可能性が高くなる。薬物または薬剤は、標的とする組織領域に治療的効果をもたらす前に大部分が洗い流されてしまうと予測されることから、その体積を増加させる必要がある。しかしながら、全身作用があるため、薬物または薬剤の体積は、系統的な希釈とそれに続く患者全身への系統的な分布とによる曝露に関して安全と考えられる体積を越えてはならない。薬物または薬剤は、希釈状態において患者身体の他の部位へと洗い流されても十分安全でなければならず、かつ望ましくない治療作用またはその他有害な作用を有していてはならない。標的部位において治療特性を有するよう薬物または薬剤を十分に濃縮することと、同時に、洗い流された後に有害な作用をもたらさないよう十分に希釈することとの間には、微妙なバランスが存在する。
【0005】
薬物および薬剤を送達するさらなるビヒクルとしては、従来、薬剤溶出ステントがある。既存のステント型送達ビヒクルは、組織中へと透過する薬物の局所濃度にばらつきがあることが示されている。ステントのストラット部の薬物濃度は、ステントのストラット間領域の薬物濃度より比較的高い。このことは薬物の治療効果に悪影響を及ぼす可能性がある。より具体的には、組織の一部の領域では薬物濃度が毒性範囲に達し、一方、他の領域では濃度が不十分であるということが起こりうる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
当技術分野において、全身作用を低減させた状態で、患者体内の標的部位に治療用薬剤を効率的に送達する方法が求められている。本発明は、この課題を解決するためのさらなる解決法を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の1つの態様において、体腔内の標的部位に治療用薬剤を送達するための方法は、第一の流体圧の流体が通過できる壁を少なくとも1つ有する非穿孔送達装置を提供する段階を含む。非穿孔送達装置は、標的部位に対して放射状の流体力を提供するように配置される。少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体は、第一の流体圧で治療用薬剤送達装置に供給される。流体は、送達装置の少なくとも1つの壁を通過し、送達装置の外側に第二の流体圧で半閉鎖空間を作り出す。送達装置は、半閉鎖空間とその中に配置された流体とに対して放射状の流体力を印加し、同時に、送達装置を通過する流体が標的部位の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする。流体は、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに十分な量で実質的に均一に標的部位へと分布される、少なくとも1つの治療用薬剤を含む。
【0008】
本発明の複数の局面において、半閉鎖空間は、標的部位と送達装置の外壁とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含んでいてもよい。オリフィスは、送達装置の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成されてもよい。第一の流体圧は第二の流体圧より大きくてもよい。第二の流体圧は、送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きくてもよい。本発明の方法はさらに、送達装置に連結されたカテーテルを用いて送達装置に流体を供給する段階を含んでいてもよい。少なくとも1つの壁は、折りたたみ可能および伸展可能であってもよい。送達装置は標的部位に対して放射状の流体力を印加してもよく、このことは、送達装置をより大きい有効直径まで伸展させこれによって放射状の流体力の印加が生じるよう、流体を第一の流体圧で送達装置に導入する段階を含む。
【0009】
本発明のさらなる局面において、少なくとも1つの壁は形状が固定されていてもよい。送達装置により標的部位に放射状の流体力を印加する段階は、有効直径が体腔の有効直径より大きい送達装置を体腔内に留置する段階を含んでいてもよい。同方法は、放射状の流体力によって、体腔を、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展させる段階をさらに含んでいてもよい。送達装置は灌流用成形フォームであってもよい。同方法は、標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含んでいてもよい。標的部位に送達される治療用薬剤の量を制御するため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させてもよい。
【0010】
本発明の1つの態様において、体腔内の標的部位に配置するのに適した治療用薬剤送達装置は、少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体が第一の流体圧で通過できるような多孔度を有する、非穿孔壁構造を含んでいてもよい。この壁構造には少なくとも1つの供給用アパーチャが形成され、これにより、治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスが提供される。壁構造のサイズは、第二の流体圧の流体を用いて半閉鎖空間を作り出すことができるよう、留置時に標的部位に対して放射状の流体力を生成するように決定される。さらに、流体中に含まれる治療用薬剤が、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに実質的に十分な量で、実質的に均一に標的部位に分布されるよう、壁構造は、標的部位に対して放射状の流体力を印加し、同時に、壁構造を通過する流体が標的部位において壁構造の外側の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする。
【0011】
本発明の複数の局面において、半閉鎖空間は、標的部位と壁構造の外側面とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含む。オリフィスは、壁構造の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成されてもよい。第一の流体圧は第二の流体圧より大きくてもよい。第二の流体圧は、治療用薬剤送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きくてもよい。治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスは、少なくとも1つの供給用アパーチャに連結されたカテーテルを含んでいてもよい。壁構造は、折りたたみ可能および伸展可能であってもよい。標的部位に対する放射状の流体力は、治療用薬剤送達装置に第一の流体圧で流体を導入することによって生じる。
【0012】
本発明のさらなる局面において、壁構造は形状が固定されていてもよい。標的部位に対する放射状の流体力は、治療用薬剤送達装置を体腔内に留置することによって生じてもよい。放射状の流体力によって、体腔を、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展させてもよい。壁構造は灌流用成形フォームを含んでいてもよい。
【0013】
本発明の複数の局面において、本発明の方法は、標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含んでいてもよい。本発明の方法はまた、標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させる段階をさらに含んでいてもよい。
【0014】
詳細な説明
本発明の1つの例証的態様は、非損傷的な様式で薬物の送達および身体組織への薬物または薬剤の透過を最大にするため、患者体内の標的部位に治療用薬剤または薬物を送達するための装置、システム、および方法に関する。本発明は、動力学的隔離加圧作用(以降「KIP作用」という)によって、細胞外および細胞内の両方に治療用薬剤または薬物を送達する。
【0015】
「治療用薬物および/または薬剤」という語句およびその種の語句は、本明細書において互いに置き換え可能な語句として用いられ、単一もしくは複数の治療用薬物、単一もしくは複数の治療用薬剤、または、単一もしくは複数の薬物もしくは薬剤の任意の組み合わせを意味する。したがって、前記語句をわずかに変化させたいかなる語句も、異なる意味を示すものとして、または、薬物もしくは薬剤の異なる組み合わせを指すものとして、解釈されるべきではない。当業者に理解されるとおり、本発明は、治療用薬物および/もしくは薬剤、またはそれらの任意の組み合わせを送達することを目的としている。
【0016】
KIP作用は、身体組織の隔離部位または標的部位に対する治療用薬物または薬剤の透過性およびその付着を向上させるため、半閉鎖空間を作成および維持することを目的に、隔離部位または標的部位に加圧流体を投与する(隔離部位または標的部位は、半閉鎖空間の少なくとも一部を形成する)ことの結果として生じる作用として定義できる。
【0017】
より具体的には、KIP作用は、送達される特定の薬物または薬剤がもたらす治療を必要とする標的部位に対して圧力下で流される流体を利用する。流体が標的部位と非損傷的に接触する際に、流体の圧力により、分布および濃度が実質的に均一である1つまたは複数の治療用薬剤を含む流体の領域が作り出される。この流体の領域により、所望の滞留時間または滞在時間にわたって治療用薬剤を均一に投与または配置することが可能となり、その結果、治療用薬物または薬剤の組織透過が向上する。治療用薬物または薬剤の配置が均一であるほど、かつ治療用薬物または薬剤の組織透過が良好であるほど、治療対象の組織中の治療用薬物または薬剤の濃度が均一になる。
【0018】
したがって、前述した公知の経口的および全身的な薬物投与方法と比較して薬物または薬剤の全体的な用量または体積を減らしながら、流体中に含まれる薬物または薬剤の強度または濃度を維持するかまたは増強させ、治療効果を得ることが可能である。標的部位の組織へと透過しなかった過量の薬物または薬剤は、すべて希釈されて、加圧流体とともに洗い流される。しかしながら、薬物または薬剤を含む流体は、薬物または薬剤の含有量という点において、他の公知の方法より実質的に濃度を高くしてもよい。標的部位から出た治療用薬物または薬剤が速やかに希釈されること、および、他の公知の方法と比較して薬剤または薬物の全体的な用量が少ないことから、患者身体の他の部位に対して望ましくない治療作用またはその他有害作用を生じる可能性は低くなる。さらに、薬物または薬剤の組織への透過性が向上するため、標的部位が受け取る薬物または薬剤の量が従来の方法と比較して増加し、したがって治療の有効性が向上する。
【0019】
約言すれば、KIP作用の隔離および加圧によって薬物または薬剤の組織への透過が実質的に向上するため、標的部位に投与する流体は、従来の方法と比較して、治療用薬物または薬剤の濃度を高くし、かつ全体的な用量を少なくできる。透過が向上すると治療用薬物または薬剤の必要な用量が少なくなり、公知の経口的および全身的な分布方法と比較して治療効果が向上する。
【0020】
図1〜9において、同様のパーツには同様の符番が付されている。これらの図は、本発明に基づき、KIP作用を利用して流体を生成しかつこれを患者に送達するための装置、システム、および方法の態様の例を示している。以下に、これらの図に示した態様の例を参照しながら本発明を説明するが、この他にも多数の形式で本発明を実現できることが理解されるべきである。当業者にはさらに、本発明の精神および範囲に則った様式で、要素または材料のサイズ、形状、または種類など、開示された態様の各パラメータを変更するさまざまな方法が理解されるものと思われる。
【0021】
本発明の1つの例示的態様に従って、図1および図2に、一般的に非弾性伸展フルオロポリマー材料で構成される本体12など、灌流用成形フォームを有する、放射状伸展可能装置10を示す。本発明が提供する伸展可能装置は、例えばさまざまな医学的治療用途など、幅広い用途に好適である。生物学的用途の例としては、移植された血管グラフト、ステント、補綴物、もしくはその他の種類の医療用移植物の治療、および、血管、尿路、腸管、鼻腔、神経鞘、骨腔、尿管など、任意の体腔、空間、もしくは中空臓器の経路の治療を行うためのカテーテルバルーンとしての使用がある。カテーテルバルーンはバルーンの全長を通過するカテーテルを伴う種類、またはカテーテルの末端に配置されたバルーンを伴う種類のものであり得る。その他の例としては、血管内の塞栓および血栓など閉塞物を除去するための装置、閉塞した体内経路の開存性を回復させるための拡張装置、経路または空間を閉塞または充填する手段を選択的に送達するための閉塞装置、ならびに、経血管器具およびカテーテル用のセンタリング機構としての使用がある。伸展可能装置10はまた、従来のカテーテルバルーンの伸展を制御することを目的として、従来のバルーンをカバーするシースとして使用してもよい。
【0022】
例示的放射状伸展可能装置10の本体12は、図1に示す小さな第一の直径の状態から、図2に示す大きな第二の直径の状態へと、伸展力の印加によって展開することができる。放射状伸展可能装置10の本体12は、好ましくは非穿孔モノリシック構造などを特徴とする。すなわち、本体12は、概ね均一な材料で作られた単一単体の物体である。本体12の実施例は、2002年4月22日に提出され参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第10/131396号に詳述されている押出伸展処理を用いて作製される。その他の方法としては、プラズマ処理したPTFE、および、2000年10月3日に提出され参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/678,765号に記載の追加湿潤により伸長されたPTFEを使用する方法がある。さらに、放射状伸展可能装置10は1つの例示的態様にすぎない。当業者に理解されるとおり、KIP作用を実施するには、後述のように望ましい高い圧力を維持でき、かつ治療用薬物または薬剤を含む流体を圧力下で隔離部位に送達できるものであれば、任意の治療用薬物または薬剤の送達装置を利用できる。図に示されているとおり、伸展可能部品10は、伸展可能な灌流用成形フォームであって、圧力下でこの灌流用成形フォームに流体(ナノ粒子のスラリー、半固体、固体、ゲル、液体、または気体の形態である流体)を供給できるカテーテルまたはその他の構造に連結できるような灌流用成形フォームである。
【0023】
この例示的処理により、非弾性伸展フルオロポリマーの非穿孔シームレス構造を特徴とする本体12が得られる。このフルオロポリマーは、大きな第二の直径の状態において、あらかじめ規定されたサイズおよび形状を有する。本体12は、装置の伸展に用いられる伸展力にかかわらず、あらかじめ規定されかつ固定された最大直径およびあらかじめ規定された形状へと、信頼できかつ予測可能な状態で伸展することができる。
【0024】
または、前述の各作製方法は、例示の目的に適したエラストマー灌流用成形フォームを治療用送達装置の1例として作製することに関するものであることに注意されたい。放射状伸展可能装置10はこの他多数の異なる材料でも作製可能であり、このことは当業者に理解されるものと思われる。例えば、好適なフルオロポリマー材料としてはポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)があり、または、テトラフルオロエチレンと他のモノマーとのコポリマーを使用してもよい。そのようなモノマーとしては、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン、または、ヘキサフルオロプロピレンなどのフッ化プロピレンがある。最も多くの場合に用いられるのはPTFEである。したがって、放射状伸展可能装置10は種々のフルオロポリマー材料で作製可能であり、本発明の作製方法にも種々のフルオロポリマー材料が利用可能であるが、本明細書の説明では特にPTFEのことを指す。
【0025】
図2において、放射状伸展可能装置10の本体12は、好ましくは伸展時に概ね管状の形状となるが、方形、卵形、楕円形、多角形などその他の断面を用いてもよい。本体12の断面は、好ましくは、本体の長さに沿って連続的かつ均一である。しかしながら別の態様において、断面は本体の長さに沿ってサイズおよび/または形状が変化していてもよい。図1は、弛緩して小さな第一の直径の状態にある本体12を示したものである。本体12は、第一の端部16と第二の端部18との間で縦軸14に沿ってわたる中央管腔13を有する。
【0026】
本体12に放射状の展開力または伸展力を与えるため中央管腔13の中に配置された、細長の中空チューブ20の形態である展開機構が示されている。放射状の展開力は、第一の状態から、図2に示す大きな第二の直径の状態へと、本体12を放射状に伸展させる。第一の端部16および第二の端部18は、中空チューブ20の外面にシーリング状態で連結される。第一の端部16および第二の端部18は、熱接着しても、接着剤によって接着しても、または、本体12の壁とチューブ20との間で第一の端部16および第二の端部18から流体が漏れることを防ぐようなその他の好適な手段によって取り付けてもよい。
【0027】
中空チューブ20は、内部で長軸方向にわたる管腔22、および、チューブ20の外面と管腔22との間に流体接触をもたらす多数の側孔24を備える。チューブ20は、管腔22および側孔24を介して本体12の管腔13へと選択的に流体を供給するため、単数または複数の流体供給源(後述)と連結してもよい。流体からの圧力は、本体12に放射状の伸展力を与え、これにより、本体12を、大きな第二の直径の状態へと放射状に進展させる。本体12は非弾性材料で構成されているため、チューブ20と流体供給源との連結を解除するかまたはその他の方法により本体12の管腔13内の流体圧を実質的に低下させても、一般的に、本体12が小さな第一の直径の状態に戻ることはない。しかしながら、本体12は自重によってつぶれ、直径が小さくなる。例えば真空源などによる陰圧の印加を用いて、最初の小さな直径の状態まで本体12を完全に収縮させてもよい。
【0028】
放射状伸展可能装置10が、中空チューブ20など、流体による展開力を利用した展開機構との併用に限定されることはなく、このことは当業者に理解されるものと思われる。他の公知の展開機構を用いて、放射状伸展可能装置10を放射状に展開させてもよく、そのような機構としては例えば、機械的に作動する部品など機械操作される伸展要素、または、ニチノールなどの温度作動性材料で構成された機械要素などがある。
【0029】
本発明への使用には種々のフルオロポリマー材料が好適である。好適なフルオロポリマー材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、またはテトラフルオロエチレンと他のモノマーとのコポリマーが使用できる。そのようなモノマーとしては、エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン、またはフッ化プロピレン(ヘキサフルオロプロピレンなど)などがある。最も多くの場合に使用されるのはPTFEである。したがって、放射状伸展可能装置10は種々のフルオロポリマー材料で作製でき、かつ本発明の作製方法には種々のフルオロポリマー材料が利用できるが、本明細書の説明では具体的にPTFEを指す。
【0030】
図3は、本体12など、押出伸展処理により形成されたePTFE製灌流用成形フォーム110の壁の微細構造を示した略図である。説明のため、灌流用成形フォーム110の微細構造を誇張して示した。したがって、微細構造の寸法は拡大されているが、同図が示している微細構造の一般的な特徴は、灌流用成形フォーム110内に多数存在する微細構造を代表するものである。
【0031】
ePTFE製灌流用成形フォーム110の微細構造は、フィブリル132で相互連結されたノード130を特徴とする。ノード130は、灌流用成形フォーム110の縦軸114に対して概ね直角に配向される。フィブリル132で相互連結されたノード130のこの微細構造により、ミクロフィブリル空隙を有する微孔性構造が得られる。ミクロフィブリル空隙は、灌流用成形フォーム110の内壁136から外壁138まで完全にわたる貫通孔またはチャネル134を規定するような空隙である。貫通孔134は(縦軸114に対して)概ね直角に配向され、内壁136から外壁138まで横断するノード間の空隙である。貫通孔134のサイズおよび幾何学構造は、1999年10月1日に提出され参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/411797号に詳述されている押出伸長処理によって変更することができ、これにより、非透過性、半透過性、または透過性の微細構造を得ることができる。しかしながら、本発明が本製造方法に限定されないことに注意するべきである。言及された適用は、伸展可能装置の製造方法の一例にすぎない。
【0032】
貫通孔134のサイズおよび幾何学構造を変更して、さまざまな異なる配向を形成することができる。例えば、押出処理および/または伸長処理中にePTFE製灌流用成形フォーム110に捻りまたは回転を加えることにより、灌流用成形フォーム110の縦軸114に直角な軸に対してある角度をもつようにマイクロチャネルを配向させることができる。伸展可能装置10は、押出処理を施し、続いてポリマーを伸張し、そしてポリマーを焼結して貫通孔134の伸長構造を固定することによって得られる。
【0033】
伸展可能装置10を形成する材料の貫通孔134の微孔性構造により、伸展可能装置10を穿孔する必要なく、伸展可能装置10の壁が透過性となる。同装置の微孔性構造により、穿孔部からのみ流体が流出する有孔装置と比較して、伸展可能装置10の壁を通過する流体の分布の制御性および均一性が向上する。したがって、本明細書で説明するように、伸展可能装置10の非穿孔構造は、伸展可能装置10により流体を有効に分配することに寄与する。体内管腔内に流体を分布させるいくつかの公知の方法では、有孔バルーンが使用される。流体はこの孔を通って体内管腔へと放出される。本発明の貫通孔134の非穿孔微孔性構造では、明確な孔と比較して、流体が通過できる表面積の割合がはるかに大きくなる。流体が伸展可能装置10を透過する位置(すなわち貫通孔134)の数が、壁に明確な孔が作られている場合と比較してはるかに多いため、標的部位への流体の分布がより均一かつ完全になり、かつ流体圧の分布もより均一になりしたがってKIP作用をより良好にもたらすことができる。
【0034】
1つの態様において、ePTFE製灌流用成形フォーム110およびそれにより得られる伸展可能装置10は、ePTFE製灌流用成形フォームの全断面および全長にわたって均一な微細ノード構造を有する。この均一な微細ノード構造により、伸展可能装置10は信頼できかつ予測可能な状態で第二の直径まで伸展するため、伸展可能装置の伸展特性が向上する。微細ノード構造は、従来のePTFEグラフトにおけるノードよりサイズおよび質量が小さいノード(例えば25μm〜30μm)を特徴としていてもよい。さらに、ノード間の空間(「ノード間距離」という)および繊維間の空間(「フィブリル間距離」という)も、従来のePTFEグラフトと比較して小さくてもよい(例えば1μm〜5μm)。さらに、例示的態様において、ノード間距離およびフィブリル間距離は、ePTFE製灌流用成形フォームの全長および全断面にわたって均一であってもよい。この均一なノード構造は、全断面および全長にわたって潤滑剤のレベルを均一にした状態でビレットを形成することによって作成してもよい。この管状の押出物を、例えば1インチ/秒より速い速度など高速の伸長速度で伸長させると、微細ノード構造が得られる。好ましくは、押出物の伸長速度は約10インチ/秒以上である。ノード構造は、潤滑剤の配置および量、ならびに伸長処理を変更することによって、不均一にしてもよい。
【0035】
詳しく後述するように、放射状伸展可能装置10の本体12が流体によって膨張する際、流体は加圧滲出の様式で本体12を通過して患者体内の標的部位に投与されてもよい。そのような例において、流体は異常を生じた標的部位を治癒させるための治療特性を有する1つまたは複数の薬物を含んでいてもよい。治療用薬物および治療用薬剤の例を以下の表1に示すが、これらに限定されない。
【0036】
【表1】
【0037】
外科用接着剤、癒着防止用ゲルおよび/またはフィルム、ならびに組織吸収性の生物学的コーティングも、表1の治療用薬物および薬剤と併用してまたは併用せずに、本発明とともに利用することができる。接着タイプのポリマーは、治療用薬物および薬剤と併用してまたは併用せずに用いるための一液型接着剤および二液型接着剤を含み得る。接着タイプのポリマーの例としては、2-オクチルシアノアクリレート、天然の生物学的シーラントを生成するためヒト由来コラーゲンおよびトロンビンの懸濁液と混合した患者自身の血漿、患者の血液の製剤に由来するフィブリングルー、ポリマーヒドロゲルなどがある。表1に示すように、組織吸収性の治療用薬剤は、魚油オメガ3脂肪酸、魚油オメガ3脂肪酸を含む植物油、組織吸収、接着、親油性の透過を増強するのに適したその他の油もしくは物質、およびこれらの組み合わせなどの流体に組み込んでもよい。薬剤の組織付着を増強しかつ細胞内および細胞外における治療用薬剤の透過を向上させ、同時に、標的治療部位およびその周囲において外傷性の組織癒着形成を低減するため、治療用薬物と併用してまたは併用せずに、癒着防止フィルムを形成するゲル、溶液、または化合物を用いてもよい。ステントを留置した血管および拡張した尿道など、癒着生成をきたしやすい選択部位では、癒着を防止するこのような治療的送達方法により、組織癒着形成の低減という利点が得られる。
【0038】
流体が貫通孔またはチャネル134を通過できるよう、比較的広範囲にわたって制御を行うため、ノード間距離およびフィブリル間距離を変化させてもよい。貫通孔またはチャネル134のサイズは、例えば、すでに参照により本明細書に組み入れられている米国特許出願第09/411797号に詳述されている工程などの製造工程により選択できる。微孔性領域内の壁の微細構造のノード間距離、ひいては貫通孔またはチャネル134の幅は、約1μm〜約150μmであってもよい。ノード間距離がこの規模であると、本体12の壁を通過する流体の流量は約0.01 ml/分〜約100 ml/分となる。
【0039】
チャネル134のサイズが場所または領域ごとに異なるよう、微孔性構造に沿った場所ごとにノード間距離が異なっていてもよい。これにより、実質的に同じ流体圧において、同じ微孔性構造の中で領域ごとに流量を変化させることができる。
【0040】
放射状伸展可能装置10によってこの異なる流量を実現すると、伸展可能装置10の膨張中に流体圧を変化させるのに役立つとともに、治療的処置を要する標的部位における伸展可能装置10の滞留時間を変化させることも可能となる。さらに別の要素として、混合する各溶液の相対的な粘稠度、および得られる治療用薬剤の溶液粘稠度も含まれ得る。粘性が高いほど流れに対する抵抗が大きくなり、したがって、十分量の薬剤を投与するために必要な滞留時間が長くなる。
【0041】
滞留時間とは、伸展可能装置10が患者体内に配置されて標的部位など患者体内の場所へと1つまたは複数の治療用薬剤を投与する時間の長さの測定値である。標的部位とは、治療的処置を必要とする場所である。貫通孔またはチャネル134のサイズおよび形状を変化させることができれば、滞留時間を変更することが可能である。滞留時間を長くすることが望ましい場合は、通過する流体が少なくなるように貫通孔134のサイズおよび形状を変化させてもよい。同様に、投与する治療用の流体の量が同じで滞留時間を短くすることが望ましい場合は、より大きい流量で流体が通過するように貫通孔134を変化させてもよい。さらに、本発明の1つの例示的態様および本明細書の後述に示すように、体内管腔の組織により吸収される流体の圧力印加も滞留時間に影響を及ぼす。
【0042】
貫通孔134の微孔性構造は、通過する流体の流体圧がかなりの範囲にわたって変化できかつ貫通孔134を通過する流体の流量が実質的に等しくなるような構造である。例えば、与えられた態様において、貫通孔134を通過する流体の流量は、あらかじめ定められた流体圧の範囲にわたって実質的に一定に維持される。または、流体の流量の変化率が、与えられた流体圧の変化率より小さくなるようにしてもよい。例えば、伸展可能装置10の外部の流体に加圧することを含む1つの態様において、伸展可能装置10の内部の圧力は、最大約6気圧であってもよい。伸展可能装置10で利用できることが確認されているその他の範囲としては、2〜4気圧の範囲の圧力がある。可撓性の伸展可能装置10の内部の流体圧を比較的低くすることによる結果の1つは、伸展可能装置10が機能する場所である体内管腔または体腔の形状に伸展可能装置10が適合でき、伸展可能装置10の過膨張による身体組織の損傷が生じにくいことである。
【0043】
伸展可能装置10への流体の流れを変化させることにより、伸展可能装置10の内部の圧力を、一定、変動、または間欠的な値で提供してもよい。詳しく後述するように、伸展可能装置10の内部の流体圧の変化は、伸展可能装置10の外部の流体圧の変化に影響を及ぼし得る。
【0044】
伸展可能装置10の内部の圧力の一部は、伸展可能装置10の外部の流体圧へ変換される。詳しく後述するように、加圧流体は伸展可能装置10から流出し、標的部位の組織に浸透する。
【0045】
1つの例示的態様に従って、治療用薬物送達システム200を図4に示す。伸展可能装置10は、管状継手214を介して第一の貯蔵容器212と流体接触する。例示的伸展可能装置10はまた、第二の管状継手218を介して第二の貯蔵容器216とも流体接触する。第一の貯蔵容器212および第二の貯蔵容器216から流体の形態で供給されるさまざまな量の1つまたは複数の成分を、伸展可能装置10の中で混合してから、伸展可能装置10から流出させて患者の体内へと入れてもよい。さらに、貯蔵容器への接続を容易に切り替えることができるよう、伸展可能装置10との接続は取り外し可能であってもよい。
【0046】
貯蔵容器はこの他に複数あってもよく、管状継手224を有する貯蔵容器222および管状継手228を有する貯蔵容器226はそれを表したものである。各貯蔵容器212、216、222、および226は、混合が生じるまで、別々の成分を保持していてもよい。したがって、貯蔵容器の数はさまざまに変化し得る。さらに、貯蔵容器の種類もさまざまに変化し得る。各貯蔵容器212、216、222、および226のいずれも、固体、液体、または気体の保持に適したものであってよい。より具体的には、第一の貯蔵容器212を液体保持用に設計し、第二の貯蔵容器216を気体保持に設計してもよく、もしくはその逆であってもよく、または、一方が固体、液体、または気体のうち1つを保持し他方が別のものを保持してもよい。固体、液体、および/または気体を保持できる容器の設計は必ずしも単一でなくてもよいが、本発明にはそのような設計が機能的であると考えられる。
【0047】
または、貯蔵する成分の物理的状態に応じて、異なる設計を用いてもよい。貯蔵容器212、216、222、および226により保持される固体は、液体または気体との混合のため伸展可能装置10へと容易に移送できるよう、パウダーの形態であってもよい。さらに、貯蔵容器212、216、222、および226は、必要であれば、貯蔵される成分を望ましい温度に保つため加熱または冷却してもよい。
【0048】
この説明および図示には、1つから複数まで、特定の態様に必要な任意の数の貯蔵容器の使用が意図されていることが理解されるべきである。
【0049】
伸展可能装置10を通過する成分流体の量を変化させるまたは制御するため、第一の管状継手214に沿ってコントローラ220が具備されていてもよい。コントローラ220は多数の異なる形態を取りうる。コントローラ220は主として、第一の貯蔵容器212および任意の追加の容器からの流れを制限および/または分流する。コントローラ220は、流量を調整できる単純な弁を含んでいてもよく、または、当業者に理解されるとおり、より精巧なものであってもよい。この例示的コントローラはまた、第一の貯蔵容器212から供給される流体を加圧するため、十分なポンプ作用を提供してもよい。または、貯蔵容器212自体を直接加圧してもよい。コントローラの1例は、圧力計とともに血管形成術用バルーンカテーテルの膨張に従来利用されている加圧注入器である。マニホールドに接続された1つまたは複数の加圧注入装置により、装置に複数の治療要素が注入される。
【0050】
別の構成において、第一の管状継手214は、コントローラ220を間にはさむことなく伸展可能装置10と接続していてもよい。標的部位に必要な流体の量は、個々の流体に対する希釈の程度(または希釈がないこと)によって決定される。
【0051】
貯蔵容器に複数の成分が入っているかまたは単一の成分が入っているか、および、成分が固体、液体、または気体の形態であるかにかかわらず、成分のさまざまな特性を変更してもよい。例えば、成分を、希釈または強化、加熱または冷却、および、混合または層化などしてもよい。さらに成分は、その供給の点においてさまざまであってもよく、例えば、一定、変動、または間欠的な流量を伸展可能装置10へとおよび伸展可能装置10を介して提供してもよい。さらに成分は、その状態の点においてさまざまであってもよく、例えば、固体パウダー、半固体、ナノ粒子、ゲル、液体、気体、高粘性の液体、PTFEなどのポリマーと混合し硬化させたコーティングなどであってもよい。
【0052】
本発明のさらなる態様において、1つまたは複数の成分を組み合わせることにより、治療用薬剤を伴ってまたは伴わずにポリマー体を形成してもよい。例えば、ポリマー材料を生成する成分を貯蔵容器212に入れてもよい。成分を伸展可能装置10へ送達すると、これらの成分は硬化してポリマー構造を形成する。そのような構造を、内出血を止血する、一連の縫合部をカバーして滑らかな表面を形成する、身体組織を接着する、病変組織または損傷組織に保護コーティングを施すなどの目的に利用してもよい。
【0053】
注意点として、得られる薬剤は、治療用か非治療用かにかかわらず、気体、液体、パウダー、ゲル、ミクロ粒子、ナノ粒子を含む物理的形態であってもよい。
【0054】
図5Aに、内壁232を有する体腔または体内管腔230の代表的な部分断面に挿入された状態の伸展可能装置10を示す。体腔または体内管腔230は患者体内の小さな閉鎖中空空間であり、それに対する圧力は伸展可能装置または腔もしくは管腔よりわずかに大きなサイズの装置に印可され得る。体内管腔230は、例えば、血管、毛細血管、または、伸展可能装置10を挿入できるその他の閉鎖構造であってもよい。以下に、伸展可能装置10の用途を詳しく説明する。
【0055】
使用時、伸展可能装置10は患者体内に挿入され、例えば図4に示すように体内管腔230内の標的部位に到達するよう操作される。当業者に理解されるとおり、伸展可能装置10内の圧力は、多数の異なる圧力範囲にわたっていてもよい。例えば圧力は、1つの例示的な態様において最大約6気圧であってもよく、別の実施例においては約2〜約4気圧であってもよく、またはその他の望ましい圧力範囲であってもよい。伸展可能装置10は、進入する流体または薬剤からの圧力下において膨張し、これにより、伸展可能装置10が挿入された部位の体内管腔230の内壁232に対して押し付けられてもよい。注意すべき点として、体内管腔230の代表例として示されている血管は、本発明に基づいて伸展可能装置10により治療用薬剤を導入するための、適切な標的部位の例を示したものにすぎない。
【0056】
伸展可能装置10は多数の異なるサイズの範囲で提供される。このサイズとは、完全に膨張した状態の伸展可能装置10が、伸展可能装置10が配置される体内管腔または体腔の内径サイズの100%より大きくなるようなサイズである。換言すると、伸展可能装置10は膨張して体内管腔または体腔内の空間を十分に占め、これにより、体内管腔または体腔の組織に対して伸展可能装置10から圧力が印加される。伸展可能装置10が小さすぎる場合は、完全に膨張しても体内管腔の壁に到達せず、したがってKIP作用を生成するための接触は確立されない。伸展可能装置10が大きすぎる場合は、装置10が完全に膨張すると体内管腔または体腔に損傷および可能な切開を生じる。場合によってはこれが望ましいこともある(例えば血管の治癒修復を強制的に起こすことが望ましい場合)。しかしながらその他の場合は、体内管腔または体腔に対して伸展可能装置10が大きすぎることは望ましくない。したがってユーザーは、目的の作業に適したサイズを選択する必要がある。例えば、伸展可能装置10により、体内管腔または体腔に対して非損傷的な圧力を印加する必要がある場合は、体内管腔または体腔の有効内径の約101%〜150%、または最大110%まで、もしくは150%までも膨張するように伸展可能装置10を選択してもよい。有効直径は実質的に最大サイズの近似であり、これは円形横断面の実際の直径に等しく、かつ非円形横断面の直径タイプの寸法に等しい。当業者に理解されるとおり、伸展可能装置10により印加される圧力、体内管腔または体腔の強度、および、所望される結果が非損傷的なものかまたは損傷的なものかに基づいて、他のサイズ範囲を使用することも可能である。
【0057】
伸展可能装置10は、図5Cに示す本発明の例示的態様のように半閉鎖空間234が形成されない場合でも、伸展可能装置10が内壁232に印加する圧力により、伸展可能装置10を内壁232に押し付けて保持するという特性を有する。半閉鎖空間234は、体内管腔230の内壁232に対して伸展可能装置10が押し付けられ、加圧流体が伸展可能装置10から押し出された際の、伸展可能装置10と内壁232との間の領域である。半閉鎖空間234の1つの側面は伸展可能装置10に接し、その反対側の側面は体内管腔の内壁232に接し、第三の側面は、加圧流体が空間を占めたときに、伸展可能装置10が終端する縁部周囲に形成される小オリフィス236に接する。
【0058】
より詳しく説明するため、図5Aに、矢印Aの方向に流れる流体によって膨張し、体内管腔230の内壁232に押し付けられた状態の伸展可能装置10を示す。この図の状態においては、伸展可能装置10を膨張させている流体はまだ伸展可能装置10の壁を通過していないため、半閉鎖空間234は存在しない。十分量の流体が伸展可能装置の壁を通過すると、流体は加圧状態に保たれて内壁232および伸展可能装置10の外壁に押し付けられ、これにより半閉鎖空間234が生じる。伸展可能装置10および内壁232の加圧を通して、半閉鎖空間234が作成される。図5Bに、伸展可能装置10の外部に流体がいくらか集まり、半閉鎖空間234を形成し始めている様子を示す(しかしながら、図が示しているように、空間はまだ完全ではない)。加圧流体が伸展可能装置10の外部にさらに供給されて空間を押し広げ、これにより、図5Cに示すように半閉鎖空間234が形成される。半閉鎖空間234は、完全な大きさになると、伸展可能装置10の端部に到達し、小オリフィス236が形成される。加圧流体が伸展可能装置10へとさらに供給されることにより、伸展可能装置10の外部の圧力が保たれ、半閉鎖空間234が維持され、かつ小オリフィス236も開口状態に保たれる。伸展可能装置の外部の流体圧が実質的に低下すると、小オリフィス236が閉じる。
【0059】
半閉鎖空間234は、伸展可能装置10の貫通孔134から放出される加圧流体を図の矢印Bの方向に誘導する。この構成により、流体中に濃縮された治療用薬剤および/または薬物が、内壁232の標的部位に完全に接触する。このようにして、治療用薬剤および/または薬物の少なくとも一部が、透過領域238の内壁232の局所の細胞空間および組織へと透過する。さらに、流体の一部は、伸展可能装置10の縁部周囲に小オリフィス236を形成し、次にこの小オリフィス236を通って矢印Cの方向に漏出する。したがって、伸展可能装置10の内部からの圧力の一部は半閉鎖空間234へと伝わり、その結果、流体が体内管腔230の内壁232に押し付けられる。流体が半閉鎖空間234から出ると、流体に含まれている薬物および/または薬剤は希釈され、実質的に洗い流される。
【0060】
KIP作用は、伸展可能装置10と体内管腔230の内壁232との間に半閉鎖空間234を作り出すのに役立ち、したがって、内壁232の透過領域238に治療用薬物または薬剤をより均一に分配または接触させるのに役立つ。この半閉鎖空間234は、伸展可能装置10の壁を通過して半閉鎖空間234へと流れ込む流体によって継続的に満たされる。この継続的な流体の動きがあること、および半閉鎖空間234内の圧力が高いことにより、伸展可能装置10の実際の構造と内壁232または透過領域238との接触は長時間に及ばずにすむ。したがって、少なくとも1つの治療用薬剤または薬物をある濃度で含みかつ継続的に撹拌される流体が内壁232に接触する。流体の動きによって治療用薬剤または薬物が常に撹拌され、これにより新鮮な流体の供給と均一または実質的に均質な流体の接触とが継続的に生じるため、内壁232の組織上のある場所において、治療用薬物または薬剤の一部の領域が停滞する機会は生じない。
【0061】
少なくとも1つの治療用薬物または薬剤を含む流体が継続的に撹拌および再供給されることにより、組織部分における治療用薬物または薬剤の濃度は調節されかつ実質的に均一になる。さらに、流体が加圧されていることにより、治療用薬物または薬剤を非損傷的に送達または接触させることが可能である。さらに、ステントのストラット、または内壁232に対してバルーンが押し付けられる領域など、薬物の接触の妨げとなる構造があると、流体、ひいては治療用薬物または薬剤の貯留を引き起こす可能性があるが、そのような構造は存在しない。濃度が実質的に均一な治療用薬剤または薬物が均一に接触することにより、組織透過の効率が上昇し、かつ体内管腔230の内壁232を透過する治療用薬物または薬剤の濃度もより均一になる。
【0062】
治療用薬剤または薬物の送達は、有効性を得るため、標的部位において十分な濃度を実現する必要がある。従来の方法は、標的部位において治療効果を得るため、薬物または薬剤の用量または体積が本発明と比較して実質的に大きい必要があった。従来の方法では、標的部位から洗い流されながら、組織に浸透しかつ同時にステントのストラットなどの構造の周囲でも作用するようにするため、十分量の薬物または薬剤を含める必要があった。または、従来の方法では、標的を定める手法ではなく全身に投与する手法を用いることにより、実質的により大量に薬物を患者に投与していた。しかしながら本発明は、標的部位の組織に対する治療用薬物および/または薬剤の分配をより効率的かつ均一にするため、治療用薬物および/または薬剤をより高濃度で含む加圧流体を用いて、少なくとも1つの治療用薬物および/または薬剤の組織への透過を向上させる非損傷的な方法を提供する。
【0063】
図6A、6B、および6Cに、伸展可能装置10とともに使用できる追加の医療装置の例示的態様を示す。図6Aは、コーティング242に完全に封入されたステント240の斜視図である。図6Bは、部分的なコーティング246を有するステント244の斜視図である。図6Cは、コーティングがないか、またはステント248の個々のワイヤ上にコーティングを有するステント248の斜視図である。当業者に理解されるとおり、コーティング242および246はPTFEまたはその他適切な材料で作られていてもよい。さらに、コーティング242は、1つまたは複数の治療用薬剤、または本明細書の説明のように治療用薬剤を生成するための1つまたは複数の成分を含んでいてもよい。当業者に理解されるとおり、伸展可能装置10は、患者体内の管腔壁に対してステント240、246、および248を伸展させるため、ステント240、246、または248のいずれかの内部に配置してもよい。
【0064】
別の構成において、伸展可能装置10は、すでに伸展したステント(例えば、図6A、6B、および6Cのステント240、246、および248)の内部で伸展してもよい。そのような構成において、ステント240、246、または248は、体内管腔または体腔を元の内径の110%程度まで既に伸長させている。次に、伸展可能装置10が伸展し、ステント240、246、または248、および体内管腔内壁232と接触してこれらに押し付けられる。ステント240、246、または248により追加の構造が提供され、かつ身体組織が既に伸長されているため、前記の態様におけるよりも伸展可能装置10を押し戻す力がより大きくなり、伸展可能装置10をわずかに圧迫する。さらに、伸展可能装置10内の圧力を、ステント240、246、または248を使用しない構成における3〜4気圧に対して、最大約6気圧まで高くすることができる。
【0065】
前述したように、伸展可能装置10のサイズおよび寸法は、半閉鎖空間234を形成できるよう、用途に特異的な体内管腔のサイズに対して十分な直径まで伸展可能装置10が伸展できるように決定される。換言すると、伸展可能装置10が小さすぎる場合は、小オリフィス236が大きくなりすぎて流体圧を維持できず、KIP作用は生じない。伸展可能装置10が大きすぎる場合は、伸展可能装置10を伸展させた際、実質的な圧力の印加によって体内管腔を破裂させる可能性がある。前述したのと同様、体内管腔の壁と伸展可能装置10との両方に対してわずかに圧迫を加えながら小オリフィス236を形成することによって外へと流出していく加圧流体が半閉鎖空間内にない限り、小オリフィス236は存在しない。体内管腔と伸展可能装置10との距離(すなわちオリフィスの高さ)は、約1/10000インチ〜約2 mmであってもよい。体内管腔と伸展可能装置10との間にこの距離があるため、治療用薬剤および/または薬物を非損傷的に標的部位に送達することが可能となる。本発明においては、組織への透過を高める目的で高圧ジェットの流体を用いることはないため、組織の融蝕が生じず、かつ組織に押し付けられる硬い構造もないため、組織に損傷を与えない。加圧流体により生じる、体内管腔と伸展可能装置10との間の距離が、組織を損傷から保護する。
【0066】
この加圧流体により、治療用薬剤が内壁232の中へと優先的に分布および浸透し、したがって、内壁232の細胞内空間および細胞外空間の両方に治療用薬物または薬剤をより効率的に投与できることが、予想外に明らかになった。このようにして得られる治療用薬物の送達作用がKIP作用である。治療用薬物または薬剤がより効率的に投与されることの結果の1つは、特定の用量の治療用薬剤または薬物を標的部位に投与するために必要な滞留時間が、前述した従来の方法と比較して短くなることである。さらに、滞留時間を短くせず同じにした場合は、より多量の薬物または薬剤が標的部位の組織へと透過し、したがって、従来の方法と比較して治療効果が向上する。
【0067】
別の結果の1つは、内壁232の透過領域238へと浸透しなかった治療用薬物または薬剤を含む流体はすべて半閉鎖空間234から流出し、その流体圧は体内管腔230内の周囲圧力まで低下し、したがって、KIP作用が働いている部位より外には局所的な薬物送達作用が生じないことである。
【0068】
さらに、伸展可能装置10とともにステント240、246、または248を使用する構成においては、前述したように、伸展可能装置10の内部で比較的高い圧力が得られる(例えば最大約6気圧)。この高い圧力により、体内管腔または体腔の組織中への治療用薬剤の分布および透過がさらに増強される。
【0069】
内壁232の標的部位へと時間をかけて投与された治療用薬剤は、内壁232の組織に浸透する。本明細書で説明しているように、内壁232に浸透しなかった治療用薬剤を含む流体は、半閉鎖空間234から出て希釈され、洗い流されて全身の血液循環に入る。KIP作用を用いると、標的部位を、治療用薬物および/または薬剤を含む流体の流れに時間をかけて接触させることができるため、標的部位に投与する流体は、治療用薬剤または薬物の用量または全体的な体積を少なくしかつその濃度を比較的高くすることが可能である。したがって、薬剤を送達する流体は実質的に希釈された状態となるため、身体組織に浸透しなかった治療用薬剤は、悪影響を及ぼすことなく患者身体の他の部位へと出て行くことが可能である。
【0070】
図7に、本発明により治療用薬物を投与する1つの例示的方法を示す。同方法は、伸展可能装置10などの薬物送達構造を、患者体内において体内管腔230などの標的部位に配置する段階(段階300)を含む。第一の薬剤または薬剤を含む成分を薬物送達構造に導入して、送達構造内に配置された第二の薬剤または薬剤を含む成分と反応させ、治療用薬物を生成する(段階302)。次に、治療用薬物は、薬物送達構造に沿った複数の位置から、制御された速度で、患者体内の標的部位へと放出される(段階304)。伸展可能装置10のサイズが十分であり、かつ伸展可能装置に提供される圧力が適切であれば、治療用薬物はKIP作用によって放出され、より短い滞留時間でより良好な組織への分布および透過が生じる。
【0071】
図8に、患者体内でポリマー体を形成する1つの例示的態様を示す。同方法は、伸展可能装置10などの送達構造を患者体内の標的部位に配置する段階(段階320)を含む。第一の成分を送達構造に導入して、送達構造内に配置された第二の成分と反応させ、化合物を生成する(段階322)。化合物は、送達構造に沿った複数の位置から、あらかじめ定められた制御された速度で放出され、標的部位へと投与されて、ポリマー体を形成する(段階324)。伸展可能装置10のサイズが十分であり、かつ伸展可能装置に提供される圧力が適切であれば、治療用薬物はKIP作用によって放出され、より短い滞留時間でより良好な組織への分布および透過が生じる。
【0072】
図9に、治療用気体を患者体内の標的部位に投与する1つの例示的態様を示す。伸展可能装置10などの気体送達構造を標的部位に配置する(段階330)。気体送達構造は第一の気体を受け取り、この第一の気体が、送達構造内に配置された第二の気体と反応することにより、治療用気体が生成される(段階332)。治療用気体は、気体送達構造に沿った複数の位置から、あらかじめ定められた制御された速度で放出されて、標的部位へと投与される(段階334)。伸展可能装置10のサイズが十分であり、かつ伸展可能装置に提供される圧力が適切であれば、治療用薬物はKIP作用によって放出され、より短い滞留時間でより良好な組織透過が生じる。
【0073】
図7、8、および9に示した各態様において、これらの方法は、第二の気体または成分が送達構造内に配置されているものとして説明されている。注意すべき点として、気体または成分は、多数の異なる様式で送達構造内に存在していてもよい。例えば、第二の気体または成分は、第一の気体または成分を送達構造に導入する直前またはそれと同時に送達構造に供給してもよい。または、第二の気体または成分は、臨床ユーザーが使用するまで、送達構造内に密封してもよい。また別の様式として、成分または気体は、例えばPTFE材料もしくはその他の送達装置材料などに組み込む、または、送達装置構造の壁にコーティングとして施すなどして、送達装置構造の内部に存在していてもよい。
【0074】
本発明のKIP作用により、加圧流体中に含まれる少なくとも1つの治療用薬物および/または薬剤を、実質的に均一な濃度で、非損傷的に送達することができる。より具体的には、本発明のKIP作用は、治療用薬物および/または薬剤の濃度を高めた加圧流体を用いて、少なくとも1つの治療用薬物および/または薬剤の組織への透過を高め、これにより、従来の方法と比較してより効率的かつ均一に治療用薬物および/または薬剤を標的部位の組織に分布させる、非損傷的な方法を提供する。薬物または薬剤の分布の効率が向上するため、特定の用量の治療用薬剤または薬物を標的部位に投与するために必要な滞留時間が、特定の用量の薬剤または薬物を送達するための従来の方法と比較して短くなる。さらに、身体組織に浸透しなかった治療用薬物または薬剤を含む流体は、すべて半閉鎖空間から流出する。流出する際に、流体圧が体内管腔内の周囲圧力まで低下し、流体中の薬物または薬剤は希釈されて濃度が低下し、洗い流される。したがって、KIP作用が働いている部位より外には局所的な薬物送達作用が生じない。
【0075】
以上の説明に鑑み、当業者には、本発明に関する多数の改変および代替の態様が明らかであると思われる。したがって、本明細書の説明は、例示的なものにすぎないと解釈されるべきであり、その目的は、本発明を実施するための最良の様式を当業者に教示することである。構造の細部は本発明の精神から実質的に逸脱することなくさまざまに異なっていてもよく、開示される本発明の範囲内に入るすべての改変はその独占使用権が留保される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の教示による、放射状伸展可能装置の側断面図である。小さい第一の直径の状態にある同装置を示している。
【図2】図1の放射状伸展可能装置の側断面図である。大きい第二の直径の状態にある同装置を示している。
【図3】本発明の放射状伸展可能装置を得るため本発明の作成工程中に用いた伸展フルオロポリマー製灌流用成形フォームの壁の一部の微細構造を示した略図である。
【図4】本発明の1つの局面による治療用薬物送達システムを示した線図である。
【図5】本発明の1つの局面による、体内管腔の内壁に配置された伸展可能装置を示した断面図である。
【図6】本発明とともに使用するためのステントを示した斜視図である。
【図7】本発明の1つの局面による、治療用薬物を投与する方法の例を示したフローチャートである。
【図8】本発明の1つの局面による、ポリマー体を形成する方法の例を示したフローチャートである。
【図9】患者体内の標的部位に治療用気体を投与する態様の例を示したフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、体腔内の標的部位に治療用薬剤を送達するための方法であって:
第一の流体圧の流体が通過できる壁を少なくとも1つ有する非穿孔送達装置を提供する段階;
非穿孔送達装置を、標的部位に対して放射状の流体力を提供するように配置する段階;
少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体を、第一の流体圧で治療用薬剤送達装置に供給する段階;
流体が、送達装置の少なくとも1つの壁を通過し、送達装置の外側に第二の流体圧で半閉鎖空間を作り出す段階;および
送達装置が、半閉鎖空間とその中に配置された流体とに対して放射状の流体力を印加し、同時に、送達装置を通過する流体が標的部位の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする段階;
ここで、流体が、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに十分な量で実質的に均一に標的部位へと分布される、少なくとも1つの治療用薬剤を含む方法。
【請求項2】
半閉鎖空間が、標的部位と送達装置の外壁とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
オリフィスが、送達装置の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第一の流体圧が第二の流体圧より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第二の流体圧が、送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項6】
送達装置に連結されたカテーテルを用いて送達装置に流体を供給する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの壁が、折りたたみ可能および伸展可能である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
送達装置により標的部位に放射状の流体力を印加する段階が、送達装置をより大きい有効直径まで伸展させこれによって放射状の流体力の印加が生じるよう、流体を第一の流体圧で送達装置に導入する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの壁の形状が固定されている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
送達装置により標的部位に放射状の流体力を印加する段階が、有効直径が体腔の有効直径より大きい送達装置を体腔内に留置する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
放射状の流体力によって、体腔を、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
送達装置が灌流用成形フォームである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
以下を含む体腔内の標的部位に配置するのに適した治療用薬剤送達装置であって:
少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体が第一の流体圧で通過できるような多孔度を有する、非穿孔壁構造;および
治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスを提供するため、壁構造に形成された少なくとも1つの供給用アパーチャ;
ここで、壁構造のサイズが、第二の流体圧の流体を用いて半閉鎖空間を作り出すことができるよう、留置時に標的部位に対して放射状の流体力を生成するように決定され;ならびに
流体中に含まれる治療用薬剤が、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに実質的に十分な量で、実質的に均一に標的部位に分布されるよう、壁構造が、標的部位に対して放射状の流体力を印加し、同時に、壁構造を通過する流体が標的部位において壁構造の外側の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にするような壁構造である、治療用薬剤送達装置。
【請求項16】
半閉鎖空間が、標的部位と壁構造の外側面とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含む、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項17】
オリフィスが、壁構造の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成される、請求項16記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項18】
第一の流体圧が第二の流体圧より大きい、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項19】
第二の流体圧が、治療用薬剤送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きい、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項20】
治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスが、少なくとも1つの供給用アパーチャに連結されたカテーテルを含む、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項21】
壁構造が折りたたみ可能および伸展可能である、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項22】
標的部位に対する放射状の流体力が、治療用薬剤送達装置に第一の流体圧で流体を導入することによって生じる、請求項21記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項23】
壁構造の形状が固定されている、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項24】
標的部位に対する放射状の流体力が、治療用薬剤送達装置を体腔内に留置することによって生じる、請求項23記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項25】
放射状の流体力によって、体腔が、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展する、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項26】
壁構造が灌流用成形フォームを含む、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項27】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項28】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項1】
以下の段階を含む、体腔内の標的部位に治療用薬剤を送達するための方法であって:
第一の流体圧の流体が通過できる壁を少なくとも1つ有する非穿孔送達装置を提供する段階;
非穿孔送達装置を、標的部位に対して放射状の流体力を提供するように配置する段階;
少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体を、第一の流体圧で治療用薬剤送達装置に供給する段階;
流体が、送達装置の少なくとも1つの壁を通過し、送達装置の外側に第二の流体圧で半閉鎖空間を作り出す段階;および
送達装置が、半閉鎖空間とその中に配置された流体とに対して放射状の流体力を印加し、同時に、送達装置を通過する流体が標的部位の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にする段階;
ここで、流体が、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに十分な量で実質的に均一に標的部位へと分布される、少なくとも1つの治療用薬剤を含む方法。
【請求項2】
半閉鎖空間が、標的部位と送達装置の外壁とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
オリフィスが、送達装置の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第一の流体圧が第二の流体圧より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第二の流体圧が、送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きい、請求項1記載の方法。
【請求項6】
送達装置に連結されたカテーテルを用いて送達装置に流体を供給する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの壁が、折りたたみ可能および伸展可能である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
送達装置により標的部位に放射状の流体力を印加する段階が、送達装置をより大きい有効直径まで伸展させこれによって放射状の流体力の印加が生じるよう、流体を第一の流体圧で送達装置に導入する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの壁の形状が固定されている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
送達装置により標的部位に放射状の流体力を印加する段階が、有効直径が体腔の有効直径より大きい送達装置を体腔内に留置する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
放射状の流体力によって、体腔を、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
送達装置が灌流用成形フォームである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
以下を含む体腔内の標的部位に配置するのに適した治療用薬剤送達装置であって:
少なくとも1つの治療用薬剤を含む流体が第一の流体圧で通過できるような多孔度を有する、非穿孔壁構造;および
治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスを提供するため、壁構造に形成された少なくとも1つの供給用アパーチャ;
ここで、壁構造のサイズが、第二の流体圧の流体を用いて半閉鎖空間を作り出すことができるよう、留置時に標的部位に対して放射状の流体力を生成するように決定され;ならびに
流体中に含まれる治療用薬剤が、流体圧および滞留時間によって変更可能である治療効果をもたらすのに実質的に十分な量で、実質的に均一に標的部位に分布されるよう、壁構造が、標的部位に対して放射状の流体力を印加し、同時に、壁構造を通過する流体が標的部位において壁構造の外側の半閉鎖空間内で第二の流体圧を保つことを容易にするような壁構造である、治療用薬剤送達装置。
【請求項16】
半閉鎖空間が、標的部位と壁構造の外側面とによって形成されたチャンバーであって、治療用薬剤送達装置の外周に沿いかつ流体が通過できるオリフィスを有するチャンバーを含む、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項17】
オリフィスが、壁構造の外側に流体を加圧下で誘導したときに形成される、請求項16記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項18】
第一の流体圧が第二の流体圧より大きい、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項19】
第二の流体圧が、治療用薬剤送達装置および半閉鎖空間より外側の周囲圧力より大きい、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項20】
治療用薬剤送達装置に流体を供給するためのアクセスが、少なくとも1つの供給用アパーチャに連結されたカテーテルを含む、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項21】
壁構造が折りたたみ可能および伸展可能である、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項22】
標的部位に対する放射状の流体力が、治療用薬剤送達装置に第一の流体圧で流体を導入することによって生じる、請求項21記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項23】
壁構造の形状が固定されている、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項24】
標的部位に対する放射状の流体力が、治療用薬剤送達装置を体腔内に留置することによって生じる、請求項23記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項25】
放射状の流体力によって、体腔が、留置前の体腔の有効直径の約101%〜約150%まで伸展する、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項26】
壁構造が灌流用成形フォームを含む、請求項15記載の治療用薬剤送達装置。
【請求項27】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため滞留時間を調整する段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項28】
標的部位に送達される治療用薬剤の量を変化させるため、流体圧、流体中の治療用薬剤の濃度、および滞留時間のうち少なくとも1つを変化させる段階をさらに含む、請求項15記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−501094(P2007−501094A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533284(P2006−533284)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/015992
【国際公開番号】WO2004/105832
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(500131675)アトリウム メディカル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/015992
【国際公開番号】WO2004/105832
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(500131675)アトリウム メディカル コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
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