説明

動物性消化物の嗜好性を向上させる方法

本発明は、ゲル化防止剤を動物性消化物に添加し、pHを内臓タンパク質を加水分解するのに使用されるプロテアーゼに最適なpHに調節することによって、動物性消化物の嗜好性を向上させる方法を提供する。ゲル化防止剤は、メイラード反応に関与して動物性消化物の嗜好性を高めることができる内臓タンパク質加水分解物の生成を最大にする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2009年10月9日に出願された米国特許仮出願第61/278758号に対する優先権を主張するものであり、その出願の開示内容は、ここで参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【発明の背景】
【0002】
発明の分野:
[0002]本発明は概して動物性消化物(animal digest)に関し、特に、動物性消化物の嗜好性を向上させる方法に関する。
【0003】
関連技術の説明:
[0003]動物性消化物は、清潔で未分解の動物組織の化学的及び/又は酵素的加水分解によって生成する材料である。一般に、動物組織には、通常の製造実務において不可避の微量のものは除いて、毛、角、歯、蹄又は羽は含まれない。動物性消化物は、嗜好性を高めるために動物性食物の表面に施されることが多い(例えば、嗜好性向上剤としてドライペットフード上に施される液体の動物性消化物)。
【0004】
[0004]一般に、動物性消化物の生成には、内臓性タンパク質の加水分解物の生成後に、加水分解により生成したタンパク質と内臓中の他の化合物(例えば、内因性及び外因性還元糖)との間のメイラード反応が含まれる。このプロセスでは、内臓を採取し、内因性プロテアーゼが大半のタンパク質を加水分解するまで消化させる。加水分解タンパク質は、その後、還元糖とのメイラード反応に供される。生じるメイラード反応生成物は消化物の嗜好性を高める。
【0005】
[0005]未処理の内臓のpHは一般に約6.0である。あいにく、このpHでは、タンパク質の加水分解を担う内臓の内因性プロテアーゼの多くは最適には機能しない。タンパク質の加水分解を最適化するために、pHは酵素活性を最適化するpH、一般に約7.3〜約8.5に調節されなければならない。このpH範囲は、タンパク質の加水分解の大半を担う内臓中の主要な2つのプロテアーゼであるトリプシン及びキモトリプシンの活性に最適なpH範囲である。
【0006】
[0006]しかしながら、pHを酵素の活性に最適な範囲に調節すると、内臓のタンパク質が著しくゲル化する。生じる粘性のタンパク質ゲルにより、pHの調節がさらに難しくなり、内臓の取り扱いがさらに難しくなり、所与の時間内に内臓で加水分解されるタンパク質の量が減少する。機構ははっきりとしないが、ゲル化が内臓酵素、タンパク質及び他の化合物の動きを妨げ、当該化合物が、非ゲル環境におけるほど頻繁に相互作用し、化学反応に関与することが簡単にできないようである。上記の機構にかかわらず、ゲル化した結果、加水分解タンパク質が減少し、そのため、嗜好性を向上させるメイラード反応生成物を生成するメイラード反応剤が減少する。
【0007】
[0007]現在のところ、内臓中のタンパク質ゲル化により生じる問題を軽減するのに適した方法はない。したがって、動物性消化物を製造するための新たな方法であって、タンパク質のゲル化により生じる問題を最小限にし、該消化物の嗜好性を高める方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
[0008]本発明は、動物性消化物の嗜好性を向上させる方法を提供することを目的とする。
【0009】
[0009]本発明はまた、嗜好性の向上した動物性消化物を提供することを目的とする。
【0010】
[0010]本発明はまた、嗜好性の向上した食用組成物を提供することを目的とする。
【0011】
[0011]本発明はまた、動物性消化物の製造に使用されるpH調節された内臓においてタンパク質のゲル化を低減する方法を提供することを目的とする。
【0012】
[0012]こうした目的の少なくとも1つは、ゲル化防止剤を動物性消化物に添加し、pHを内臓タンパク質の加水分解に使用されるプロテアーゼに最適なpHに調節することを含む方法を用いて達成される。ゲル化防止剤は、メイラード反応に関与して動物性消化物の嗜好性を高めることができる内臓タンパク質加水分解物の生成を最大にする。得られた動物性消化物は、食用成分と混合し、又は食用成分に施して、動物性消化物を嗜好性向上剤として使用する食用組成物(例えばペットフード)の嗜好性を向上させる。
【0013】
[0013]本発明のさらなる目的、特徴及び利点は当業者に容易に理解できるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0014】
定義:
[0014]「内臓」とは、動物性消化物を製造するのに有用な動物組織を意味する。
【0015】
[0015]「ゲル化防止剤」とは、動物性消化物の製造に使用されるプロセスにおいて内臓中のタンパク質ゲル化を低減する任意の化合物、組成物又は他の材料を意味する。
【0016】
[0016]「向上した嗜好性」及び「嗜好性を向上させる」とは、本発明のゲル化防止剤を用いて調製される動物性消化物又は動物性消化物を含む製品が、本発明のゲル化防止剤を使用せずに調製される動物性消化物又は動物性消化物を含む製品よりも味がよいことを意味する。
【0017】
[0017]本明細書中で表示されるすべての百分率は、特に断らない限り、組成物の総重量に対する重量に基づく。
【0018】
[0018]本明細書において、範囲内の1つ1つの値を列挙及び記載することを避けるため、範囲は簡略に記す。範囲の上限値、下限値又は端値として、必要に応じて範囲内の任意の適切な値を選択することができる。
【0019】
[0019]本明細書及び添付の特許請求の範囲では、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合でない限り、単語の単数形は複数を含み、逆もまた同様である。したがって、“a”、“an”及び“the”は一般にその語の複数形を含む。例えば、“a digest”又は“a method”は、その“digest”又は“method”の複数を含む。同様に、「含む」(“comprise”、“comprises”、“comprising”)は、排他的ではなく包含的に解釈されるべきである。同様に、「含む」(“include”、“including”)、「若しくは」、「又は」、「或いは」(“or”)は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合でない限り包含的に解釈されるべきである。
【0020】
[0020]本明細書に開示される方法、組成物及び他の提案は、本明細書に記載の特定の方法、手順及び試薬に限定されるものではない。なぜならば、当業者には理解されるように、それらは変わり得るものだからである。さらに、本明細書で使用される用語は、専ら特定の実施形態を記載するためのものであり、開示又は請求の範囲を限定するものではない。
【0021】
[0021]特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての技術的・科学的用語、当技術分野の用語、及び頭字語は、本発明の分野又は当該用語が使用される分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等のすべての組成物、方法、製品又は他の手段若しくは材料は本発明の実施に際して使用することができるが、本明細書には、好ましい組成物、方法、製品又は他の手段若しくは材料が記載されている。
【0022】
[0022]本明細書で引用又は参照されるすべての特許、特許出願、出版物、技術的及び/又は学術的論文及び他の文献は、ここで参照されることにより、法律で許容される範囲でその全体が本明細書に組み込まれる。これらの文献についての議論は、単にその主張内容を要約することを意図したものである。そのような特許、特許出願、出版物又は文献又はそれらの任意の一部が関連技術又は先行技術であることを認めるものではない。そのような特許、特許出願、出版物及び他の文献が関連技術又は先行技術であるとのいかなる主張に関しても、その正確性及び妥当性について異議を申し立てる権利は特に留保されている。
【0023】
発明:
[0023]一態様において、本発明は、動物性消化物の嗜好性を向上させる方法を提供する。該方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)ゲル化防止量の少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に添加して内臓混合物を得るステップ、
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)該混合物中のプロテアーゼに該混合物中のタンパク質を加水分解させるステップ、及び
(5)該混合物を、メイラード反応を促進する温度に加熱するステップ
を含む。
【0024】
[0024]本発明は、内臓のプロテアーゼは一般的な内臓pHでは効果的に機能しない;プロテアーゼの活性を最適化し、内臓のタンパク質の加水分解を高めるためにpHを調節する必要がある;pHを調節すると、タンパク質の加水分解を妨げるタンパク質ゲル化が起こる;ゲル化防止剤はタンパク質ゲル化を最小限にし、そのためタンパク質の加水分解を高める;タンパク質の加水分解の増加は、消化物の嗜好性を高めるメイラード反応生成物を生成するメイラード反応剤の濃度を増加させる、という発見に基づくものである。
【0025】
[0025]本発明において使用される内臓は、任意の適切な供給源から得ることができる。内臓を得る方法、内臓に使用される組織、及び内臓を加工して動物性消化物を製造する方法は、当業者に周知のように動物及び内臓によって異なる。一般に、本発明に有用な内臓は、動物性消化物を製造するのに有用な組織を含む任意の動物の内臓であり、例えば、内臓は、家禽、豚、魚又は牛の内臓である。一般に、内臓には、体の柔らかい内臓器官が含まれ、特に、腹腔及び胸腔内に含まれる器官である。内臓に使用される組織及び器官は、動物によって異なり、例えば、「鶏の内臓」には、頭部及び足が含まれることもある。内臓の定義の一例は、Association of American Feed Control Officials、Inc.(AAFCO)によって示されている。AAFCOは、内臓を概して主要な3つの体腔(腹腔、胸腔及び骨盤腔)内のすべての器官と定義しているが、魚の内臓は鰓、心臓、肝臓、脾臓、胃及び腸を含む主要な体腔内のすべての器官と定義している。同様に、AAFCOは、哺乳動物の内臓を食道、心臓、肝臓、脾臓、胃及び腸を含むが、腸管の内容物は除く主要な体腔内のすべての器官と定義し、家禽の内臓を食道、心臓、肝臓、脾臓、胃、そ嚢、砂嚢、未発達の卵及び腸を含む主要な体腔内のすべての器官と定義している。上記のような定義及び類似の定義が当業者に知られている。好適な実施形態において、内臓は家禽の内臓である。さまざまな実施形態において、内臓は、当業者に知られているような前処理、例えば、攪拌、ホモジナイズ、乳化などによって前処理されることもある。
【0026】
[0026]ゲル化防止剤は、任意の適切な手段又は方法を用いて内臓に添加される。一般に、内臓中にゲル化防止剤が本質的に均質に分布することを確実にするために、ゲル化防止剤は、内臓を攪拌しながらゲル化防止剤を内臓に注ぐことによって内臓に添加される。多くのそのような方法が当業者に知られている。
【0027】
[0027]ゲル化防止剤は、内臓中のタンパク質ゲル化を低減又は防止する任意の化合物、組成物又は他の材料である。一実施形態において、ゲル化防止剤は、タンパク質間の静電相互作用を妨げることができる任意の荷電化合物(例えば電解質)である。他の実施形態において、ゲル化防止剤はクエン酸三ナトリウム及び硫酸ナトリウムである。他の実施形態において、ゲル化防止剤はアルギニン、ヒスチジン及びリシンである。
【0028】
[0028]好適な実施形態において、ゲル化防止剤は電解質である。電解質は、タンパク質間に静電反発力を作りだすことによってタンパク質のゲル化を効果的に防ぐ。pHが調節され、プロテアーゼの活性を最大化するのに使用されるpHにある場合、静電反発力によりタンパク質が均質溶液中に維持される。ゲル化防止電解質を使用することによりタンパク質の加水分解度が増加するが、その理由は、溶液中のタンパク質が、ゲル中にある場合よりもプロテアーゼに接近しやすいからと思われる。
【0029】
[0029]電解質は、本明細書に記載のゲル化を低減又は防止する任意の電解質である。さまざまな実施形態において、電解質は、内臓中でイオン化し、内臓と適合する強電解質又は弱電解質であり、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、リン酸水素二ナトリウム(DSP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びそれらの組み合わせである。他の電解質としては、臭化物、フッ化物、重硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ヨウ化銅及びそれらの組み合わせなどのイオン性化合物が挙げられる。
【0030】
[0030]好適な実施形態において、電解質はNaCl、TSPP及びそれらの組み合わせである。
【0031】
[0031]ゲル化防止剤は、タンパク質のゲル化を最小限にするのに必要とされる任意の量、内臓に添加される。好適な実施形態において、ゲル化防止剤は、約0.5〜約5%、好ましくは約1〜約4.5%、最も好ましくは約1〜約4%の量内臓に添加される。
【0032】
[0032]一部の実施形態において、確実にゲル化防止剤(特に電解質)を溶解し、混合物中で溶液のままであるようにするために追加の水が内臓混合物に添加される。
【0033】
[0033]内臓のゲル化を評価する方法は当業者に公知である。一部の実施形態において、ゲル化は目視で観察される。他の実施形態において、ゲル化は、内臓の攪拌のし難さを判断することによって、例えばせん断応力を測定することによって判定される。他の実施形態において、粘度は粘度計を用いて測定することができ、又は粘弾特性はレオメータを用いて測定することができる。
【0034】
[0034]pHは、任意の方法並びに内臓のpHに影響を及ぼすことができ、内臓に適合する化合物又は組成物を用いて変えることができる。そのような化合物又は組成物は、所望のpHを達成するのに十分な量添加される。そのような化合物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、トリス塩基、リン酸(HPO)、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、クエン酸及び酢酸が挙げられる。一般に、これらの化合物は、攪拌しながら内臓混合物に添加される。好適な実施形態において、pHを上げるためにNaOHが内臓に添加され、該内臓と共に完全に混合される。pHの測定及び調節方法・技術は当業者に公知である。
【0035】
[0035]さまざまな実施形態において、pHは約7.4〜約8.4、好ましくは約7.6〜約8.2、最も好ましくは約7.8〜約8.0に調節される。
【0036】
[0036]当業者に公知の任意の方法を用いて(内因性又は外因性)プロテアーゼに内臓のタンパク質を加水分解させる。好適な実施形態において、酵素活性及び加水分解速度を高めるために内臓混合物が加熱される。一実施形態において、内臓混合物は、約0.25〜約4時間、好ましくは0.5〜2時間、最も好ましくは0.5〜1時間、約50℃〜約75℃に加熱される。
【0037】
[0037]混合物は、メイラード反応を促進する任意の温度に加熱される。さまざまな実施形態において、混合物は、約70℃〜約110℃、好ましくは約80℃〜約100℃、最も好ましくは85℃〜約95℃の温度に加熱される。混合物は、任意の適した方法を用いて加熱される。例えば、直接的な蒸気注入、容器の壁を介した間接的な加熱又はジャケット付き容器の間接的な蒸気加熱によって加熱される。他の方法(例えば熱交換器)は当業者に公知である。
【0038】
[0038]一実施形態において、上記方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)ゲル化防止量の少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に添加して内臓混合物を得るステップ、
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)該混合物の温度を約50℃〜約75℃に調節し、該混合物中のプロテアーゼに該混合物中のタンパク質を約0.25〜約4時間、加水分解させるステップ、及び
(5)該混合物を約70℃〜約110℃の温度に加熱するステップ
を含む。
【0039】
[0039]一実施形態において、上記方法は、好ましくは、混合物のpHを調節するステップの直前に、少なくとも1種の外因性プロテアーゼを内臓又は内臓混合物に添加するステップをさらに含む。しかしながら、外因性プロテアーゼは、該混合物中のプロテアーゼに該混合物中のタンパク質を加水分解させる前の任意のステップで添加できる。内臓に適合し、タンパク質の加水分解を増加させる任意のプロテアーゼが添加できる。外因性プロテアーゼとしては、アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼなどのエキソペプチダーゼ、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、アルカラーゼ、エラスターゼ、プロテマックス(protemax)、ニュートラーゼ(neutrase)、フレーバーザイム(flavourzyme)などのエンドペプチダーゼ並びにそれらの組み合わせが可能である。好適な実施形態において、外因性プロテアーゼは、トリプシン、キモトリプシン、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カルパイン及びそれらの組み合わせである。さまざまな実施形態において、外因性プロテアーゼは、約0.01〜約4%、好ましくは約0.05〜約0.2%、最も好ましくは約0.1〜約1%の量添加される。外因性プロテアーゼは、任意の適した方法を用いて、一般には攪拌しながらプロテアーゼを混合物に注ぐことによって混合物に添加される。
【0040】
[0040]一実施形態において、上記方法は、好ましくは、混合物を加熱するステップの直前に、少なくとも1種の還元糖を混合物に添加するステップをさらに含む。しかしながら、還元糖は、加熱前の任意のステップで添加できる。還元糖は、メイラード反応に関与し、メイラード反応生成物を生成することが当業者に公知である任意の還元糖である。一般的な還元糖としては、グルコース、フルクトース、ラムノース、マルトース、ラクトース、グリセルアルデヒド、ジヒドキシアセトン、アラビノース、キシロース、リボース、マンノース、エリトロース、トレオース、ガラクトースなどのアルドース又はケトース及びそれらの組み合わせが挙げられる。還元糖は、混合物中のタンパク質及び他のメイラード反応剤との望ましいメイラード反応を促進する任意の量添加される。さまざまな実施形態において、還元糖は、約0.1〜約5%、好ましくは約0.5〜約4%、最も好ましくは約1〜約3%の量添加される。
【0041】
[0041]一実施形態において、上記方法は、好ましくは、混合物を加熱するステップの直前に、少なくとも1種のアミノ酸を混合物に添加するステップをさらに含む。しかしながら、アミノ酸は、加熱前の任意のステップで添加できる。アミノ酸は、メイラード反応に関与し、メイラード反応生成物を生成することが当業者に公知である任意のアミノ酸である。一般的なアミノ酸としては、グリシン、アラニン、システイン、メチオニン、プロリン及びそれらの組み合わせが挙げられる。アミノ酸は、混合物中の還元糖及び他のメイラード反応剤との望ましいメイラード反応を促進する任意の量添加される。さまざまな実施形態において、アミノ酸は、約0.1〜約5%、好ましくは約0.2〜約3%、最も好ましくは約0.3〜約2%の量添加される。一実施形態において、アミノ酸は約0.4〜約1%の量添加される。
【0042】
[0042]好適な実施形態において、上記方法は、少なくとも1種の還元糖及び少なくとも1種のアミノ酸を本明細書に記載の混合物に添加するステップをさらに含む。
【0043】
[0043]混合物に添加される還元糖及びアミノ酸の量は、過度の褐変及びその他の望ましくない反応の原因となる過剰なメイラード反応を防ぐために制御される。
【0044】
[0044]還元糖及びアミノ酸は、任意の適した方法を用いて、一般には攪拌しながら化合物を混合物に注ぐことによって混合物に添加される。両方が使用される場合、還元糖及びアミノ酸は個々に添加されるか、又は還元糖及びアミノ酸が内臓混合物に添加される前に混合される。
【0045】
[0045]一実施形態において、上記方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に約0.5〜約5%の量添加して内臓混合物を得るステップ、
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)外因性プロテアーゼを該混合物に約0.01〜約4%の量添加するステップ、
(5)該混合物中の内因性及び外因性プロテアーゼに該混合物中のタンパク質を加水分解させるステップ、及び
(6)該混合物を約70℃〜約110℃の温度に加熱するステップ
を含む。
【0046】
[0046]他の実施形態において、上記方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に約0.5〜約5%の量添加するして内臓混合物を得るステップ、
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)外因性プロテアーゼを該混合物に約0.01〜約4%の量添加するステップ、
(5)該混合物中の内因性及び外因性プロテアーゼに該混合物中のタンパク質を加水分解させるステップ、
(6)還元糖を該混合物に約0.1〜約5%の量添加するステップ、及び
(7)該混合物を約70℃〜約110℃の温度に加熱するステップ
を含む。
【0047】
[0047]他の実施形態において、上記方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に約0.5〜約5%の量添加して内臓混合物を得るステップ、
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)外因性プロテアーゼを該混合物に約0.01〜約4%の量添加するステップ、
(5)該混合物中の内因性及び外因性プロテアーゼに該混合物中のタンパク質を加水分解させるステップ、
(6)還元糖を該混合物に約0.1〜約5%の量添加するステップ、
(7)アミノ酸を該混合物に約0.1〜約5%の量添加するステップ、及び
(8)該混合物を約70℃〜約110℃の温度に加熱するステップ
を含む。
【0048】
[0048]好適な一実施形態において、ゲル化防止剤は本明細書に記載の電解質であり、外因性プロテアーゼはトリプシン、キモトリプシン及びそれらの組み合わせである。そのような好適な実施形態において、電解質はNaCl、TSPP及びそれらの組み合わせである。
【0049】
[0049]一実施形態において、上記方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に約0.5〜約5%の量添加して内臓混合物を得るステップ、
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)該混合物中のプロテアーゼに該混合物中のタンパク質を加水分解させるステップ、
(5)還元糖を該混合物に約0.1〜約5%の量添加するステップ、
(6)アミノ酸を該混合物に約0.1〜約5%の量添加するステップ、及び
(7)該混合物を約70℃〜約110℃の温度に加熱するステップ
を含む。
【0050】
[0050]好適な一実施形態において、ゲル化防止剤は本明細書に記載の電解質であり、好ましくはNaCl、TSPP及びそれらの組み合わせである。
【0051】
[0051]本発明の方法は、嗜好性の向上した動物性消化物を製造する方法である。
【0052】
[0052]他の態様において、本発明は、本発明の方法により製造される動物性消化物を提供する。該消化物は、ゲル化防止剤を使用せずに製造された消化物と比較して向上した嗜好性を有する。
【0053】
[0053]他の態様において、本発明は、少なくとも1種の食用成分と少なくとも1種の動物性消化物とを含む食用組成物であって、動物性消化物は本発明の方法により製造される食用組成物を提供する。
【0054】
[0054]食用成分は、動物が摂取するのに適した任意の成分である。一実施形態では、動物性消化物及び食用成分を混合して本組成物を得る。他の一実施形態では、動物性消化物及び少なくとも1種の食用成分を混合し、次いで少なくとも1種の追加の食用成分を混合して本組成物を得る。好適な実施形態では、食用成分を用いてフード組成物を製造し、本動物性消化物をそのフード組成物に施す、例えば、フード組成物の全体又は一部の上にコーティングする。特に好適な実施形態では、食用成分を用いてペットフードキブルなどのペットフード組成物を製造し、動物性消化物をそのペットフード組成物に施す。一実施形態において、ペットフード組成物は押出成形により製造される。そのような成分及び方法は当業者に公知である。
【0055】
[0055]動物性消化物は、液体動物性消化物又は固体動物性消化物の形態であってもよい。当業者に知られるような固体動物性消化物は、液体動物性消化物から水を除去することによって、一般に噴霧乾燥することによって調製されて粉末形態の消化物を得る。
【0056】
[0056]本発明の動物性消化物を含む食用組成物は向上した嗜好性を有する。
【0057】
[0057]他の態様において、本発明は、嗜好性の向上した食用組成物を製造する方法であって、少なくとも1種の動物性消化物と少なくとも1種の食用成分とを混合するか、少なくとも1種の動物性消化物を少なくとも1種の食用成分の全体又は一部に施すステップを含み、動物性消化物は本発明の方法を用いて製造される方法を提供する。
【0058】
[0058]他の態様において、本発明は、動物性消化物の製造に使用されるpH調節された内臓においてタンパク質のゲル化を低減する方法を提供する。該方法は、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)少なくとも1種のゲル化防止剤を該内臓に約0.5〜約5%の量添加して内臓混合物を得るステップ、及び
(3)該混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ
を含む。
【0059】
[0059]他の態様において、本発明は、本発明の方法を用いて製造されるpH調節された内臓を提供する。
【0060】
[0060]他の態様において、本発明は、嗜好性の向上した食用組成物を製造するのに適した製品製造生産ラインを提供する。該製造生産ラインは、
(1)少なくとも1種の食用成分から食用組成物を製造することができる少なくとも1つの装置、
(2)動物性消化物を食用成分と混合するか、動物性消化物を食用成分の全体又は一部に施すことができる少なくとも1つの装置、及び
(3)少なくとも1種の本発明の動物性消化物
を備える。
【0061】
[0061]一実施形態において、食用組成物を製造することができる装置は、ペットフード組成物として使用するのに適したキブルを製造する押出成形機及び関連設備であり、動物性消化物を食用成分と混合するか、動物性消化物を食用成分の全体又は一部に施すことができる装置は、動物性消化物をフード組成物の表面に施すコーティング設備である。そのような設備はペットフード産業の当業者に周知である。
【0062】
[0062]他の態様において、本発明は、(1)本発明の方法を用いて動物性消化物を製造する方法、(2)pH調節された動物性消化物のゲル化を防ぐ方法、(3)本発明の食用組成物、特にペットフード組成物を製造する方法、(4)内臓中のタンパク質ゲル化を低減又は防止する方法及び(5)本発明の動物性消化物又は該消化物の製造若しくは使用方法について疑問がある場合の消費者の問い合わせ先、のうちの少なくとも1つについての情報又は指示を伝達する手段を提供する。該手段は、情報又は指示を含む物理的若しくは電子的文書、デジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーション、オーディオビジュアルディスプレイ又はビジュアルディスプレイの少なくとも1つを含む。好ましくは、該手段は、表示されたウェブサイト、ビジュアルディスプレイキオスク、パンフレット、製品ラベル、パッケージ、添付文書、広告、チラシ、広報、オーディオテープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、コンピュータ可読カード、コンピュータ可読ディスク、USBデバイス、ファイアワイアデバイス、コンピュータメモリ及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0063】
[0063]有用な指示としては、動物性消化物の製造に使用される方法;内臓のゲル化を防ぐために使用されるゲル化防止剤を選択する、取り扱う及び使用する方法;pHを調節する方法;外因性プロテアーゼの選択及びそのようなプロテアーゼを使用する方法;還元糖及びアミノ酸を選択及び使用する方法;並びにメイラード反応を生じさせる方法にかかわる技術並びにステップの順序が挙げられる。該伝達手段は、本発明を使用することの利点について教示し、本発明を使用する際のサポートを得るための問い合わせ先を本発明の消費者又は使用者に対して提供するのに有用である。
【0064】
[0064]他の態様において、本発明は、パッケージであって、該パッケージは、動物性消化物を入れるのに適した材料と、該パッケージに貼られたラベルと、を含み、該ラベルは、本発明の方法により製造された嗜好性の向上した動物性消化物が該パッケージ内に含まれることを示す単語、絵、図案、頭字語、キャッチフレーズ、語句又は他の手段又はそれらの組み合わせを有する、パッケージを提供する。一般に、そのような手段は、パッケージ上に印刷された形で、「嗜好性の向上した動物性消化物」、「ゲル化防止剤を用いて調製された動物性消化物」という文言又は同等の表現を備える。動物性消化物を入れるのに適した任意のパッケージ又はパッケージング材料(例えば、紙、プラスチック、ホイル、金属等から製造された袋、箱、ボトル、タンク車、トラック用タンク車、缶、小袋等)は本発明において有用である。一実施形態において、該パッケージには本発明の動物性消化物が含まれる。
【0065】
[0065]他の態様において、本発明は、パッケージであって、該パッケージは、本発明の動物性消化物を用いて製造される食用組成物と、該パッケージに貼られたラベルと、を含み、該ラベルは、嗜好性の向上した食用成分が該パッケージ内に含まれることを示す単語、絵、図案、頭字語、キャッチフレーズ、語句又は他の手段又はそれらの組み合わせを有する、パッケージを提供する。一般に、そのような手段は、パッケージ上に印刷された形で、「向上した嗜好性」、「嗜好性の向上したフード組成物」という文言又は同等の表現を含む。本発明の食用組成物を入れるのに適した任意のパッケージ又はパッケージング材料(例えば、紙、プラスチック、ホイル、金属等から製造された袋、箱、ボトル、缶、小袋等)は本発明において有用である。
【実施例】
【0066】
[0066]本発明は、さらに以下の実施例により具体的に説明される。ただし、当然のことながら、これらの実施例は単に説明のために記載されたものであり、特に断らない限り、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0067】
実施例1:
[0067]表1に示される成分を用いて動物性消化物を製造し、対照として使用した。
【表1】

【0068】
[0068]150ポンドの対照の動物性消化物を製造するために、120.3ポンドの凍った鶏の内臓を3〜5mmの小片サイズに砕き、スティーブン反応器に加える。反応器を直接的な蒸気注入によって86°F(30℃)に加熱した。酸化防止剤(0.03lb)及び消泡剤(0.09lb)を反応器に添加した。内臓混合物のpHを50%(w/v)NaOH溶液によりpH7.8〜8.0(温度≒86°F)に調節した。この時点で、内臓混合物は、非常に粘性のあるゲル状になり、攪拌するのが非常に難しかった。この内臓混合物を、その後、158°F(70℃)に加熱し、158°Fで45分間保持した。表1に示されるような乾燥成分(アミノ酸、還元糖及びソルビン酸カリウム)を内臓混合物に添加し、内臓/乾燥成分のブレンドを200°F(93.3℃)に加熱し、200°Fで60分間保持してメイラードフレーバーを発生させた。この消化物を110〜120°F(43〜48℃)に冷まし、60メッシュのふるいを通してふるった。8.25ポンドのリン酸(75%)を添加し、混合して消化物のpHをpH2.6に調節した。
【0069】
実施例2:
[0069]表2の成分を用いて、ゲル化防止剤である塩化ナトリウム及びピロリン酸四ナトリウムを水に溶解し、pHの調節に先だって内臓と混合したこと以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【表2】

【0070】
[0070]ここでゲル化防止剤を含む150ポンドの動物性消化物を製造するために、99.3ポンドの凍った鶏の内臓を3〜5mm小片に砕き、スティーブン反応器に加えた。反応器を直接的な蒸気注入によって86°F(30℃)に加熱した。酸化防止剤(0.03lb)及び消泡剤(0.09lb)を反応器に添加した。3.98ポンドの塩化ナトリウム及び0.41ポンドのピロリン酸四ナトリウムを16.8ポンドの水に溶解し、内臓に添加した。内臓混合物のpHを50%(w/v)NaOH溶液によりpH7.8〜8.0(温度≒86°F)に調節した。実施例1とは異なり、内臓混合物の粘度及び取り扱いに顕著な変化はなかった。この内臓混合物を、その後、158°F(70℃)に加熱し、158°Fで45分間保持した。表2に示されるような乾燥成分(アミノ酸、還元糖及びソルビン酸カリウム)を内臓混合物に添加し、内臓/乾燥成分のブレンドを200°F(93.3℃)に加熱し、200°Fで60分間保持してメイラードフレーバーを発生させた。この消化物を110〜120°F(43〜48℃)に冷まし、60メッシュのふるいを通してふるった。8.25ポンドのリン酸(75%)を添加し、混合して消化物のpHをpH2.6に調節した。
【0071】
実施例3:
[0071]表3の成分を用いて、pHの調節に先だって16.8ポンドの水を添加し混合し、ゲル化防止剤を省いたこと以外は、実施例2の手順を繰り返した。内臓混合物のpHを調節すると粘度及びゲル化の大幅な増加が顕著であった。
【表3】

【0072】
実施例4:
[0072]表4の成分を用いて、消化物をpH2.6に酸性化した後、3.98ポンドの塩化ナトリウム及び0.41ポンドのピロリン酸四ナトリウムを加えたこと以外は、実施例3の手順を繰り返した。プロテアーゼ分解の前にゲル化防止剤が添加された動物性消化物と比較すると、得られる動物性消化物は嗜好性が向上されなかった。
【表4】

【0073】
実施例5:
[0073]タンパク質の分子量分布について、未処理の内臓並びに実施例1、2及び3の動物性消化物を分析した。サイズ排除クロマトグラフィを用いて分子量分布を行った。振とうしながら各サンプルをDL−ジチオスレイトール(DTT)を含む塩酸グアニジン(GuHCl)緩衝液中において65℃で3時間、抽出した。以下の条件下で高圧液体クロマトグラフを用いて各サイズ画分を分析した。結果を表5に示す。
移動相としてのGuHCl緩衝液
連続した2つのカラム及びガードカラム:
トーソー・バイオサイエンス(TOSOH Biosciences)、TSKゲル G3000SWXL、7.8×300mm、5μ(カタログNo.M5726−504G)
エプロジェン(Eprogen)、SynChropak GPCPEP、7.8×300mm、5μ(カタログNo.SPCGPEP−30)
280nmにて紫外線検出
流速:0.47mL/min
ランタイム:100min
注入量:100μL
【0074】
[0074]表5を参照すると、ゲル化防止剤が使用されると加水分解がより効率的であったことを結果は示している。ゲル化防止剤の存在下ではゲル化防止剤が使用されない場合よりも小さなペプチドが生成した。明らかに、ゲル化防止剤を用いて製造された動物性消化物は、大きな分子量サイズ範囲から小さな分子量サイズ範囲への変化が最も大きかった。
【表5】

【0075】
実施例6:
[0075]実施例1、2、3及び4の動物性消化物を用いて、表6に示す組成を有するドライペットフードキブルをコーティングした。コーティングは、ドラムコーターを用いて行った。ドラム内でキブルを連続的に回転させながらキブルに脂肪及び消化物を噴霧することによって、動物性脂肪に続いて動物性消化物でキブルをコーティングした。
【表6】

【0076】
[0076]それぞれ実施例1、2、3及び4の4種の各動物性消化物により表6のコーティング組成に従って、4種の異なるコーティングが施されたキブルを製造した。コーティングされたキブルのすべてに同じバッチのドライドッグキブルを使用した。ラウンドロビン方式でキブルをイヌに与えた。すなわち、相対的な嗜好性を比較するために、各キブルを他のキブルと比較して試験した。各試験について、20匹のイヌに試験対象の2つのキブルの各々の同量を20分間与えた。その後、食べ残したキブルを計量して摂取された量を算出した。各製品の平均摂取量を算出し、表7に示した。
【表7】

【0077】
[0077]表7を参照すると、結果は、ゲル化防止剤により製造された動物性消化物は向上した嗜好性を有することを明確に示している。さらに、ゲル化防止剤により嗜好性が向上したのではなかったことを結果は示している。
【0078】
実施例7:
[0078]実施例1及び2の動物性消化物中のグルコース及びキシロースの量を求めた。炭水化物を水により抽出し、イオン交換カラムを取り付けたイオンクロマトグラフィによって分離する。パルスアンペロメトリック検出器によって溶出した化合物の電気化学検出を行い、標準溶液中の炭水化物のピーク範囲との比較によって定量する。結果を表8に示す。
【0079】
[0079]表8を参照すると、ゲル化防止剤を用いて製造された動物性消化物中のグルコース及びキシロースの量は、ゲル化防止剤を用いずに製造された動物性消化物中のグルコース及びキシロースの量よりも有意に少ない。このことは、ゲル化防止剤を用いて製造された消化物中の還元糖を消費する、より多くのメイラード反応が起こったことを示している。メイラード反応がより多いことは、消化物の嗜好性を向上させるメイラード反応生成物がより多いことを意味する。結果のとおり、本発明を用いて製造される消化物は、本発明を用いずに製造された消化物よりも色が濃い。このことは、メイラード反応生成物がより多く存在していることを示している。
【表8】

【0080】
[0080]本明細書では、本発明の代表的な好適な実施形態が開示されている。特定の用語が使用されているが、それらは単に一般的かつ説明的な意味で使用したものであり、限定を意図したものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲に記載の通りである。上述の教示内容に照らせば、本発明の多くの修正及び改変が可能であることは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、特に記載されている以外の形態でも実施可能であることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物性消化物の嗜好性を向上させる方法であって、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)ゲル化防止量の少なくとも1種のゲル化防止剤を前記内臓に添加して内臓混合物を得るステップ、
(3)前記混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ、
(4)前記混合物中のプロテアーゼに前記混合物中のタンパク質を加水分解させるステップ、及び
(5)前記混合物を、メイラード反応を促進する温度に加熱するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記ゲル化防止剤は、タンパク質間の静電相互作用を妨げることができる荷電化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲル化防止剤は電解質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲル化防止剤は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、リン酸水素二ナトリウム(DSP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、ヘキサメタリン酸ナトリウム及びそれらの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲル化防止剤は、臭化物、フッ化物、重硫酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ヨウ化銅及びそれらの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ゲル化防止剤は、塩化ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム及びそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ゲル化防止剤は約0.5〜約5%の量添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記pHは約7.4〜約8.4に調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記pHは約7.6〜約8.2に調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記pHは約7.8〜約8.0に調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プロテアーゼに、前記混合物中のタンパク質を約50℃〜約75℃の温度で約0.25〜約4時間加水分解させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物は、メイラード反応を促進するために約70℃〜約110℃の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物中のプロテアーゼに前記混合物中のタンパク質を加水分解させるステップの前に、少なくとも1種の外因性プロテアーゼを前記内臓又は前記内臓混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記外因性プロテアーゼは、エキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ及びそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記エキソペプチダーゼは、アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記エンドペプチダーゼは、パパイン、アルカラーゼ、エラスターゼ、プロテマックス、ニュートラーゼ、フレーバーザイム及びそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記外因性プロテアーゼは、トリプシン、キモトリプシン及びそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
加熱ステップの前に、少なくとも1種の還元糖を前記混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
加熱ステップの前に、少なくとも1種のアミノ酸を前記混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
加熱ステップの前に、少なくとも1種の還元糖及び少なくとも1種のアミノ酸を前記混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記混合物中のプロテアーゼに前記混合物中のタンパク質を加水分解させるステップの前に、少なくとも1種の外因性プロテアーゼを前記内臓又は前記内臓混合物に添加するステップをさらに含み、加熱ステップの前に、少なくとも1種の還元糖及び少なくとも1種のアミノ酸を前記混合物に添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法により製造される動物性消化物。
【請求項23】
少なくとも1種の食用成分と少なくとも1種の動物性消化物とを含む食用組成物であって、前記動物性消化物は請求項1に記載の方法により製造される、食用組成物。
【請求項24】
ペットフード組成物である、請求項23に記載の食用組成物。
【請求項25】
嗜好性の向上した食用組成物を製造する方法であって、
少なくとも1種の動物性消化物と少なくとも1種の食用成分とを混合するか、少なくとも1種の動物性消化物を少なくとも1種の食用成分の全体又は一部に施すステップを含み、前記動物性消化物は請求項1に記載の方法を用いて製造される、方法。
【請求項26】
動物性消化物の製造に使用されるpH調節された内臓においてタンパク質のゲル化を低減する方法であって、
(1)動物の内臓を得るステップ、
(2)少なくとも1種のゲル化防止剤を前記内臓に約0.5〜約5%の量添加して内臓混合物を得るステップ、及び
(3)前記混合物のpHを約7.3〜約8.5に調節するステップ
を含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法を用いて製造されるpH調節された内臓混合物。
【請求項28】
嗜好性の向上した食用組成物を製造するのに適した製品製造生産ラインであって、
(1)少なくとも1種の食用成分から食用組成物を製造することができる少なくとも1つの装置、
(2)動物性消化物を前記食用成分と混合するか、動物性消化物を前記食用成分の全体又は一部に施すことができる少なくとも1つの装置、及び
(3)請求項22に記載の少なくとも1種の動物性消化物
を備えるライン。
【請求項29】
(1)本発明の方法を用いて動物性消化物を製造する方法、(2)pH調節された動物性消化物のゲル化を防ぐ方法、(3)本発明の食用組成物、特にペットフード組成物を製造する方法、(4)内臓中のタンパク質ゲル化を低減又は防止する方法、及び(5)本発明の動物性消化物又は該消化物の製造若しくは使用方法について疑問がある場合の消費者の問い合わせ先、のうちの少なくとも1つについての情報又は指示を伝達する手段であって、該情報又は指示を含む物理的若しくは電子的文書、デジタル記憶媒体、光学記憶媒体、オーディオプレゼンテーション、オーディオビジュアルディスプレイ又はビジュアルディスプレイの少なくとも1つを含む手段。
【請求項30】
表示されたウェブサイト、ビジュアルディスプレイキオスク、パンフレット、製品ラベル、パッケージ、添付文書、広告、チラシ、広報、オーディオテープ、ビデオテープ、DVD、CD−ROM、コンピュータ可読チップ、コンピュータ可読カード、コンピュータ可読ディスク、USBデバイス、ファイアワイアデバイス、コンピュータメモリ及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項29に記載の手段。
【請求項31】
パッケージであって、該パッケージは、動物性消化物を入れるのに適した材料と、該パッケージに貼られたラベルと、を含み、該ラベルは、請求項1に記載の方法により製造された嗜好性の向上した動物性消化物が該パッケージ内に含まれることを示す単語、絵、図案、頭字語、キャッチフレーズ、語句又は他の手段又はそれらの組み合わせを有する、パッケージ。
【請求項32】
パッケージであって、該パッケージは、請求項22に記載の動物性消化物を用いて製造される食用組成物と、該パッケージに貼られたラベルと、を含み、該ラベルは、嗜好性の向上した食用成分が該パッケージ内に含まれることを示す単語、絵、図案、頭字語、キャッチフレーズ、語句又は他の手段又はそれらの組み合わせを有する、パッケージ。

【公表番号】特表2013−507122(P2013−507122A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533140(P2012−533140)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/002723
【国際公開番号】WO2011/043828
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】