説明

包括的な保健評価を実行するためのシステム及び方法

【課題】包括的で全般的な保健評価を提供する。
【解決手段】保健評価システム(10)は、垂直方向に向けられると共にスキャン対象を受け容れるスキャンエリア(18)を画定するように互いから離間させている第1及び第2の支持構造(14、16)と、該第1及び第2の支持構造(14、16)内に組み込まれると共に立位位置にある対象からX線画像データを収集するX線撮像システム(36)と、対象から保健関連データを収集する追加のデータ収集デバイスと、X線画像データ及び保健関連データを受け取ること並びに該X線画像データ及び保健関連データに基づいて保健関連の診断と将来の処置に関する助言のうちの少なくとも一方を含む診断出力を作成するコンピュータを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は全般的には、診断用撮像に関し、またさらに詳細には、対象から複数のタイプの生理学的及び形態学的データを収集するように構成されると共に、対象の全般的健康に関する包括的な評価を提供するウォークスルータイプの撮像デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
対象に関する情報を収集するためのウォークスルー撮像デバイスは、こうしたデバイスが多数の対象に対して非常に費用対効果が高い方式で高スループットで高効率の撮像が可能とするデバイスなど近年益々価値あるツールになってきた。こうしたウォークスルー撮像デバイスの実現に関する一例は、空港や盗難防止用のスキャナとしての利用である。しかし、こうしたウォークスルー撮像デバイスは、それがセキュリティや盗難防止という特異的な目的だけについて設計されているという点において、自らが収集したデータ内に限定されることは周知である。したがってこれらのウォークスルー撮像デバイスの目的は個人に対する診断や保健情報の提供となっておらず、また実際にもこうしたデバイスは個人に対して個人の保健情報を提供する機能をもたない。
【0003】
同様に、潜在的な感染保菌者を示す体温が上昇した個人を検出するために身体規制箇所で用いられる身体熱撮像体温モニタなど特定の生理学的状態について個人をスクリーニングするようなウォークスルーデバイスやテクノロジーも存在している。しかしこの場合もこれらのデバイスの目的は、個人に対する診断や保健情報の提供ではなく、かつ複数のタイプのデータ(患者履歴、電子的医療記録(EMR)情報、その他)に関する自動統合も備えていない。決定的な違いは、個人の健康を突き合わせて参照する先となる個別化した基準がないことである。これに代えて上述した従来技術のデバイスでは、個人からの計測パラメータを全集団的な標準と突き合わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7664222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって既存のウォークスルーデバイスでは、単一のウォークスルーデバイスによってある範囲の診断試験情報を収集し取得するような「ワンストップ」検査の有効化及び容易化ができない。こうしたワンストップ検査デバイスがあれば、これにより効率が高まる点並びにヘルスケア事業に対する全般的コストを低減できる点において有益となる。さらにこうしたワンストップ検査デバイスがあれば、完全な患者診断の取得が困難であるような「非伝統的な」地域において患者の全般的健康に関する包括的な評価を提供するような実現が可能となる。すなわちワンストップ検査デバイスがあれば例えば、施術者配置が不十分なエリア(例えば、農村部や発展途上国)、より利便性が望まれるエリア(例えば、ショッピングモール、ドラッグストア)、あるいは単独で迅速な保健スクリーニングが要求されるエリア(例えば、自然災害、軍隊配備、越境地点)に配備することが可能となる。
【0006】
したがって、「ワンストップ」タイプ検査で患者データの収集が可能でありかつ個人の診断または個人に関する保健情報を個人に提供するウォークスルータイプ撮像デバイスが設計されることが望ましい。さらに、こうしたウォークスルータイプ撮像デバイスが患者の全般的健康に関する包括的な評価を提供するように複数のタイプの患者データの自動統合を備えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、対象から複数のタイプの生理学的及び形態学的データを収集しかつ対象の全般的健康に関する包括的な評価を提供するための方法及び装置を目的とする。「ワンストップ」タイプ検査での患者データの収集並びに個人の診断や個人に関する保健情報の個人への提供を可能にしたウォークスルータイプ撮像デバイスを提供する。
【0008】
本発明の一態様による保健評価システムは、垂直方向に向けられた第1の支持構造と、垂直方向に向けられると共にスキャン対象を受け容れるように構成されたスキャンエリアを画定するように該第1の支持構造から離間されている第2の支持構造と、該第1及び第2の支持構造内に組み込まれると共に立位位置にある対象からX線画像データを収集するように構成されたX線撮像システムと、対象から保健関連データを収集するように構成された少なくとも1つの追加のデータ収集デバイスと、を含む。本保健評価システムはさらに、X線画像データ及び保健関連データを受け取り該X線画像データ及び保健関連データに基づいて診断出力を作成するようにプログラムされたコンピュータを含んでおり、この診断出力は保健関連の診断と将来の処置に関する助言のうちの少なくとも一方を含む。
【0009】
本発明の別の態様によるウォークスルー保健評価システムは、第1の垂直部材とスキャンエリアを画定するように該第1の垂直部材から離間させた第2の垂直部材とを有するゲート構造と、該ゲート構造に対して確保されると共にスキャンエリア内に立ったときに対象からX線画像データを収集するように構成されたX線撮像システムと、対象からX線画像データとは別の追加の保健関連データを収集するための手段と、を含む。本ウォークスルー保健評価システムはさらに、X線画像データ及び追加の保健関連データを受け取り、該X線画像データ及び保健関連データから診断情報を抽出しかつ該抽出診断情報から対象の保健評価を作成するようにプログラムされたコンピュータを含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様によるウォークスルー保健評価システムを介して対象に関する生理学的及び生物学的データを収集する方法は、第1の垂直部材とスキャンエリアを画定するように該第1の垂直部材から離間させた第2の垂直部材とを含むウォークスルー保健評価システムのゲート構造のスキャンエリア内部に対象を位置決めするステップを含む。本方法はさらに、直線型X線源とX線検出器配列を介して対象からX線画像データを収集するステップと、少なくとも1つの追加のデータ収集デバイスを介して対象から追加の保健関連データを収集するステップと、を含む。本方法はさらに、X線画像データ及び追加の保健関連データから診断情報を抽出するステップと、該抽出診断情報から対象の保健評価を作成するステップと、を含む。
【0011】
これらの利点及び特徴、並びにその他の利点及び特徴については、添付の図面と関連して提供している本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【0012】
図面では、本発明を実施するために目下のところ企図される好ましい実施形態を表している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるウォークスルー保健評価システムの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるウォークスルー保健評価システムの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による図1及び2のウォークスルー保健評価システムの概要図である。
【図4】本発明の実施形態による図1及び2の保健評価システムにおける対象検査を通じた診断が可能な状態及び/または疾患の臨床例を表した図である。
【図5】本発明の実施形態による図1及び2の保健評価システムにおける対象検査を通じた診断が可能な状態及び/または疾患の臨床例を表した図である。
【図6】本発明の実施形態による図1及び2の保健評価システムにおける対象検査を通じた診断が可能な状態及び/または疾患の臨床例を表した図である。
【図7】本発明の実施形態による図1及び2の保健評価システムにおける対象検査を通じた診断が可能な状態及び/または疾患の臨床例を表した図である。
【図8】本発明の実施形態による図1及び2の保健評価システムにおける対象検査を通じた診断が可能な状態及び/または疾患の臨床例を表した図である。
【図9】本発明の実施形態による図1及び2の保健評価システムにおける対象検査を通じた診断が可能な状態及び/または疾患の臨床例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態により、対象からの生理学的及び/または解剖学的データに対する迅速かつ効率のよい収集及び処理を提供できる保健評価システムを提供する。本保健評価システムは、単一のシステムによってある範囲の診断試験情報が収集かつ取得されるような「ワンストップ」検査として構成されている。こうしたデータの収集のために保健評価システムは、対象から画像データ並びに生理学的及び保健関連データを収集するまたは受け取るように構成された複数のデータ取り込みデバイスを含む。収集した/受け取った対象データを処理するために保健評価システム内には、例えば対象に関する保健関連の診断または将来の処置に関する助言を可能にさせる診断デバイスが設けられている。本保健評価システムはしたがって対象の全般的健康に関して、例えばスタンドアロンのX線検査/撮像システムなど対象から生理学や生物学関連のパラメータのみしか取り込まないシステムやデバイスにより提供されるものと比べてより完全な評価が可能である。
【0015】
図1〜3を参照すると、本発明の一実施形態による保健評価システム10の斜視図及び概要図を表している。図1及び2に示すように保健評価システム10は、対象からの生理学的及び/または解剖学的データの迅速かつ効率よい収集を提供するために対象が機械的支援を伴わずにデバイスを歩いて通るか通過できるような「ゲート」設計を実現したウォークスルー保健評価システムとして構成されている。ウォークスルー保健評価システム10は、その各々が直立または垂直方式で方向付けされている第1の支持構造14と第2の支持構造16を有するゲート構造12を含む。第1の支持構造14と第2の支持構造16は、撮像システム10の撮像ボリューム(すなわち、スキャンエリア)18を画定するように離間させている。第1の支持構造14と第2の支持構造16はしたがって、撮像エリア18の内部に集団の大多数にあたる多種多様な体型や体格をもつ対象を収容できるように十分な距離だけ離間させている。第1の支持構造14と第2の支持構造16の間には基部構造20が延びると共に、これをその足場または底部エッジで支持構造に接続している。基部構造20はその上に、X線画像収集を実行するために対象をその上に立たせる所望の箇所(複数のこともある)を示しているマークオフ領域またはハイライト領域22を含むことが可能である。一実施形態では基部構造20内に、X線画像収集を開始するように対象が適正に位置決めされた時点を判定するための体重センサまたは位置決め/接近センサ(図示せず)を含めている。
【0016】
保健評価システム10に対象誘導機構を統合させており、この対象誘導機構は対象が熟練の医療スタッフの支援を受けずに単独でシステムを動作させられるようにシステムの動作に関して対象に指令及び/または案内指示を提供する。ある範囲の診断試験情報の収集を容易にしかつ対象に関する保健関連の診断及び/または将来の処置に関する助言を可能にするように、対象は対象誘導機構が提供する文字、音声または視覚的合図に従うことがある。図1及び2に示すように一実施形態では、対象がスキャンエリア18に入るべきであることを示すように緑色の光を出すかつ/または対象のスキャンが進行中であることを示すように赤色の光を出すことによるなど、保健評価システム10を通る対象の流れを調節するためにゲート構造12に対象誘導機構が指示光24の形態で設けられている。さらに、対象に対して保健評価スキャンに関する視覚的指令を提供するように機能する投影デバイス26が設けられている。例えば投影デバイス26は、「止まれ」指令や「前へ出る/後ろにさがる」指令を生成させるなどによるスキャンエリア18内における自身の位置決め方法に関する対象への指令として地面を照らすことがある。
【0017】
別の対象誘導機構は保健評価システム10内において対象が対話するユーザインタフェース28の形態で設けられている。ユーザインタフェース28は、第1と第2の支持構造14、16のうちの一方の上に(対象に対するアクセスを容易にするためにその内方と外方のいずれかを向いた表面上に)配置されている。ユーザインタフェース28は、対象から保健データを収集するため(対象を識別する情報の収集や対象に関する保健関連の情報/データの収集を含む)の幾つかの機能を果たすように構成されている。
【0018】
指摘したようにユーザインタフェース28は、ユーザインタフェース28が対象に対して幾つかの方法での自身の識別を可能とさせるようにして、検査を受ける対象からの識別用情報の収集を支援する。一実施形態ではユーザインタフェース28は、対象が所有するデータ記憶/伝送デバイスを受け容れる/収容するように構成されたデバイス読取り機30を含む。例えば図2に示すようにデバイス読取り機30は、磁気カード読取り機、RFカード読取り機や同様のデバイスなどシステムに到達した時点で対象がその中に「保健カード」を通すことが可能なカード読取り機30の形態とすることがある。別法としてデバイス読取り機は、対象がフラッシュドライブや同様のデバイスをその中に差し込むことが可能であるようなUSBポート(図示せず)の形態とすることがある。この保健カードやフラッシュドライブは、検査を受ける対象を識別するデータを包含することになる。別の実施形態ではそのユーザインタフェース28はさらに、対象が識別情報をそれを通じて入力可能なデータ入力デバイス32を含む。データ入力デバイス32は、対象から口述または手作業による識別情報に関する入力を受け取るように構成することが可能である。したがって例えば対象は、対象情報をリンク/関連付けさせた生体識別番号をキーボードやタッチ画面32を介して入力することがある。
【0019】
別の実施形態ではユーザインタフェース28は、顔認識テクノロジーを介して対象から識別用情報を収集するように構成されている。すなわち、対象から顔画像を取り込み該画像を識別目的で処理するためにユーザインタフェース28内にプログラムされた顔認識ソフトウェアと連携して動作する映像取り込みデバイス(図示せず)をユーザインタフェース28内に統合させている。したがって、ユーザインタフェース28内への顔認識機能の実現によって、対象保健カード、フラッシュドライブまたは同様の保健データ記憶デバイスの盗難など本人確認の盗難からの保護の提供によってユーザの安全を強化するように対象の本人確認の照合を提供することが可能である。
【0020】
「ワンストップ」検査システムとして機能するにあたり保健評価システム10は、対象の全般的健康に関する包括的な評価を提供するために複数のタイプの患者データを収集し統合している。こうしたデータを収集するために保健評価システム10は、対象から生理学的及び保健関連データを収集するまたは受け取るように構成され複数のデータ取り込みデバイスを含む。
【0021】
保健評価システム10により対象から収集されるこうしたタイプのデータの1つはX線画像データである。こうしたX線画像データが収集できるように、X線源34と検出器アセンブリまたは配列36とが第1及び第2の支持構造14、16内にそれぞれ組み込まれている。図1及び2に示すように本発明の一実施形態では、X線源34及び検出器アセンブリ36は、垂直方向に向いた直線型X線源及び直線型検出器アセンブリとして構成されており、この直線型X線源34と検出器アセンブリ36はウォークスルー保健評価システム10の相対する側で互い整列させている。したがってX線源34は、垂直方向で直線状に整列させた複数のX線源(電界放出体デバイスなど)や別の制御可能かつアドレス指定可能なX線源を含む分散型線源として、単一の静止型X線源として、あるいは第1の支持構造14の内部で垂直方向に摺動するように設計された移動可能なX線源として、形成されることがある。検出器アセンブリ36は、従来のディジタルX線検出器と概ね同様とすることができ、X線放射をこれより低エネルギーの光子に変換するためのシンチレータ、シンチレータから光子を受け取るためのフォトダイオード、及び相互作用する光子により生じたフォトダイオード内の電荷欠乏を読み出すためのトランジスタを含む。別法として本発明の一実施形態では検出器アセンブリ36は、直接変換材料(すなわち、X線を電気信号に直接変換する)を含むと共に、エネルギー弁別や複数のエネルギーバンドを用いた撮像を可能にするために光子計数デバイスとして構成されることがある。検出器アセンブリ36は、単一の収集で関心対象の解剖構造全体の像を収集できる十分なサイズとした矩形の面積の形態を有することがあり、あるいは検出器アセンブリ36はこれより面積を小さくし完全な画像を収集するように並進や回転させることがある。上ではX線源34及び検出器アセンブリ36の構造に関して特定の例を提供しているが、保健評価システム10内に別の形態/タイプのX線源及び検出器を実現させることが可能であり、したがって上で提示したこの特定の例は本発明の範囲の限定を意味しないことを理解されたい。
【0022】
図3に示すように直線型X線源34及び検出器配列36の動作を制御するために保健評価システム10は、放射線源制御器38とデータ収集システム(DAS)40を含んでおり、これらはいずれもコンピュータ42と動作可能に連絡させることがある。したがってコンピュータ42は放射線源制御器38に対して、X線放射の放出をトリガさせると共に、DAS40が収集したデータを受け取らせ当該データの保存及び処理を調整させている。オペレータインタフェース44をコンピュータ42と一体化させることがあり、またこのオペレータインタフェース44は一般に、撮像シーケンスの開始、こうしたシーケンスの制御、及び撮像シーケンス中に収集されたデータの取り扱い(記憶デバイス46内に保存することが可能)のためのオペレータワークステーションを含む。さらにコンピュータ42は、対象または対象の具体的なある関心領域(ROI)の画像を作成するようにDAS40からのX線データに対して高速の再構成を実行することがある。
【0023】
本発明の例示的な実施形態では直線型X線源34及び検出器アセンブリ36は、断層画像の作成を可能とするようなX線画像データ収集を提供できるように構成されている。すなわち直線型X線源34は直線型検出器配列36を基準とした複数の位置から対象に向けてX線を放出するように制御されており、これにより複数位置での直線型X線源34からのX線放出に基づいて様々な角度で複数の投影画像が収集される。この複数の投影画像に基づいて、対象の少なくとも一部分に関する断層画像が作成される。さらに本発明の一実施形態では検出器アセンブリ36は、直接変換材料(例えば、CZT)から形成されると共に、検出した光子の数及び/またはエネルギーに関するデータまたはフィードバックの提供が可能なエネルギー感応性検出器として構成されている。検出器アセンブリが検出した光子の数及び/またはエネルギーに関するデータによって、こうしたデータの取り込みを提供するように直線型X線源34にデュアルエネルギーX線スキャンを実行させながらマルチスペクトルX線画像データを収集することが可能となる。
【0024】
図1〜3に示すように保健評価システム10内にはさらに、単にX線検査または画像だけにより提供されるよりも患者の全般的健康に関するより完全な評価を可能とするように対象から生理学的及び保健関連データを収集するまたは受け取るように構成された複数の追加のデータ収集デバイス及び/またはセンサも含めている。例えば保健評価システム10内に、基礎体温、骨密度、身長、体重、肥満指数(BMI)、導出型メタボリック保健情報及び追加の生理学的パラメータなどの情報を提供するセンサ及びデバイスを組み込むことが可能である。本発明の実施形態では保健評価システム10は、受動方式と能動方式の両方で患者から医学診断データを収集するように構成されたデータ収集デバイス及び/またはセンサを含むことが可能である。体脂肪率、体温、体重及び身長などのデータは、例えば電気インピーダンス体脂肪率特徴付けデバイス47、身体熱撮像デバイス48、体重計測デバイス(例えば、スケール)50及び映像取り込みデバイス52などの受動タイプのデバイスを介して評価することが可能である。生体マーカの解析のためのサンプルを取得するために保健評価システム10内に生体マーカ試料収集機54の形態をした能動デバイスを統合することも可能である。例えば、吐き出される息や痰を収集するために患者がその中に吐き出すように指示される「マウスピース」を設けることも可能である。別の例として、糖尿病の追跡/診断を支援するために患者が血液サンプルを提供する先の血糖値計を設けることが可能である。
【0025】
生理学的及び保健関連データを収集するための別の手段として、ユーザインタフェース28はデータ収集デバイスとして機能する。すなわち上で述べたようにユーザインタフェース28は、対象に関する識別情報を受け取れるように構成されるのみならず、検査を受ける対象に関する保健関連データを受け取るまたは収集できるように構成されている。本発明の一実施形態ではユーザインタフェース28は、対象が所有するデータ記憶/伝送デバイスを受け容れる/収容するように構成されたデバイス読取り機30を含んでおり、このデバイス読取り機30は、システムに到達した時点で対象がその中に「保健カード」を通すことが可能なカード読取り機30の形態、あるいは対象がフラッシュドライブや同様のデバイスをその中に差し込むUSBポートの形態としている。この保健カードまたはフラッシュドライブは、患者特異的情報及び/または対象の特徴に関するデータを識別/提供する対象の電子的医療記録(EMR)に関するデータを包含することになる。保健カード/フラッシュドライブによって提供される特異的情報は、例えばユーザの過去の医療履歴(すなわち、病気、手術、慢性疾患)、家族歴、目下の症状に関する審査及び/または保健関連の行動、並びに目下の薬剤服用やサプリメントに関する情報を含むことがある。これらの情報はさらに、様々な生理学的パラメータの目下の計測値を含むこともある。したがって例えば、ユーザインタフェース28との対象の対話(例えば、デバイス読取り機30内への保健カードの差し入れ)を介して、ユーザの現在の体重、身長及び血圧に関するデータがシステムに提供されることがある。
【0026】
ユーザインタフェース28上にデータ入力デバイス32(例えば、キーボード、タッチ画面、その他)が設けられている実施形態では、対象はこのデバイス32を介して保健関連データを入力することが可能である。したがって例えば対象は、例えば生理学的または生物学的な特異的状態に関するテキスト記述、生理学的または生物学的な特異的パラメータに関する数値を入力すること、あるいは保健関連の記述/状態をメニューから選択することがある。対象が生体識別番号を入力している一実施形態では、提供された生体識別番号に基づいてユーザインタフェース28は対象のEMRにリンクされる。こうした実施形態では保健評価システム10は、ヘルスケア記録保管施設やその他の記録保管箇所に対する有線式またはワイヤレス式のリンクなど患者のEMRに対する遠隔アクセスを可能とさせる通信デバイス56を含むことがある。したがって例えば保健評価システム10は、ブルートゥース、赤外線プロトコル、IEEE802.11、その他など、患者のEMRに対してやり取りするデータの双方向通信を提供する所望の任意のワイヤレス転送プロトコルに従って機能し得る送受信器56を含むことが可能である。
【0027】
対象から生理学的及び保健関連データを収集するまたは受け取るデータ収集デバイス及び/またはセンサに加えて、保健評価システム10はさらに、例えば対象に関する保健関連の診断または将来の処置に関する助言を可能にさせるために収集した/受け取った対象データを処理するように構成された診断用ツールを含む。したがって保健評価システム10のコンピュータ42は、データ収集デバイス及び/またはセンサを介して対象に関して収集した/受け取った生理学的及び生物学的データ(X線源と検出器の組34、36が収集したX線撮像データ、カード読取り機30の中に保健カードを通すことによって受け取った保健関連データなど)を処理するようにプログラムされている。コンピュータ42上のアルゴリズム及び/またはプログラミングによって、収集したデータからの診断情報の自動抽出が可能となる。例えばコンピュータ42上のアルゴリズムは、コンピュータ支援診断(CAD)を介した肺がん検出など収集したX線画像データから情報を抽出することが可能である。さらにコンピュータ42上のアルゴリズムは、保健関連の診断または将来の処置に関する助言を取得するために追加のデータ収集デバイス30、32及び/またはセンサ48〜54を介して収集した追加の保健関連データと撮像データとの統合を提供する。例えば、肺炎の診断や急性のウイルス性呼吸器感染(一般的な感冒)をSARSやH1N1またはTBなどパンデミック型の可能性がある感染の発現から区別のため、並びに国境や施設へのアクセス規制などのさらなる医学的措置や非医学的措置を推奨するために、体温や患者の口述履歴を伴う胸部X線からの疑わしいパターンのCAD検出を用いることが可能である。
【0028】
本発明の実施形態では保健評価システム10の診断出力は、システムの位置で対象及び/またはシステムのオペレータに提供される、あるいはさらに解析するために遠隔の箇所に送られている。一実施形態では保健評価システム10の診断出力は、保健関連の診断及び/または将来の処置に関する助言の形態をしており、対象及び/またはシステムのオペレータが観察できるように表示画面58(図1)上に表示される。別の実施形態では保健評価システム10の診断出力はプリントアウトの形態で対象に提供される。したがって診断出力が対象により即座に観察可能であるので有益である。別の実施形態では保健評価システム10の診断出力は通信デバイス56(図3)を介するなどして遠隔箇所に送られる。例えば保健評価システム10の診断出力を熟練の保健スタッフに送り、これにより保健評価システム10のコンピュータ42が出力した保健関連の診断及び/または助言に保健スタッフがアクセスできかつその上で解析を実行できるようにさせることがある。次いで保健スタッフは、指示、フィードバックとヘルプ、追加の現場撮像に関する誘導、情報収集の強化、または追加のケアの照会の提供など対象にフィードバックを提供することがある。別の例として保健評価システム10の診断出力は、健康案内や健康リスク評価を含むような電子メールを対象に送ることがある。
【0029】
ここで図4〜9を参照すると、保健評価システム10の検査によってそれに関する診断を取得可能な状態及び/または疾患に関する臨床例を提供している。図4は、マルチスペクトル3D−X線撮像をCADや対象のEMRの統合を伴ってあるいは伴わずに利用することによるなど、保健評価システム10における対象検査を通じた肺がんの検出及び診断を表している。図5は、X線撮像、対象のEMRの統合、及びシステム10での喀痰試験を利用することによるなど、保健評価システム10における対象検査を通じた結核及び/または別の感染性疾患の検出及び診断を表している。図6は、デュアルエネルギー放射線撮像/X線撮像、カルシウムスコアリング(scoring)及びCADリスク評価を利用することによるなど、保健評価システム10における対象検査を通じた心血管疾患の検出及び診断を表している。図7は、3D断層X線撮像、BMI解析及び形態計測の計算値と関節空間マップによるなど保健評価システム10における対象検査を通じた骨関節炎の検出及び診断を表している。図8は、マルチスペクトル3D−X線撮像、対象のEMRの統合、及びリスク層別化のためのCADリスクプロフィールを利用することによるなど、保健評価システム10における対象検査を通じた乳がんの検出及び診断を表している。図9は、断層撮像法、荷重負荷X線撮像、脚長解析、体位動態(postural dynamic)解析及びCAD評価を利用することによるなど、保健評価システム10における対象検査を通じた筋骨格系疾患の検出及び診断を表している。図4〜9に示した状態及び/または疾患に関する臨床例は単なる例示の意味であり、保健評価システム10はX線画像データやその他の保健関連データの検査によってそれに関する診断を取得できるその他の状態及び/または疾患の診断/評価も可能であることを理解されたい。
【0030】
したがって保健評価システム10の実施形態によって、対象の診断または対象に関する保健情報の対象への提供ができるように画像データやその他の保健関連データを収集するウォークスルータイプ保健評価システムが提供される。保健評価システム10によって患者は、文字、音声または視覚合図並びに案内指示に従って熟練の医療スタッフの支援を得ることなく単独でシステムを動作させることが可能となる。動作時において保健評価システム10は、その上に含めたユーザインタフェース28との対象の対話を介して保健関連データを収集する。保健評価システム10はさらに、対象がゲート構造12のスキャンエリア18内に自身を位置決めした後に保健関連データを収集する。すなわちX線画像データとその他の保健関連データとは、X線源と検出器の組34、36によって並びに例えば電気インピーダンス体脂肪率特徴付けデバイス47、身体熱撮像デバイス48、体重計測デバイス(例えば、スケール)50、映像取り込みデバイス52、生体マーカ試料収集機54など生理学的及び生物学的データを収集するように構成された追加のデバイス/センサによって収集される。データ収集が終わると、コンピュータ42上のアルゴリズム及び/またはプログラミングによって、収集データからの診断情報の自動抽出が可能となると共に、コンピュータ支援診断(CAD)の実現を通じて保健関連の診断またはこれに基づいた将来の処置に関する助言を提供することができる。
【0031】
したがって保健評価システム10は、対象に対する「ワンストップ」検査を可能にしかつ容易にするためにある範囲の診断試験情報を収集し解析するように機能するので有益である。こうしたワンストップ検査によれば効率が上昇すると共に、ヘルスケア事業に対する全般的コストが低下する。システムをユーザフレンドリとすると共に熟練した医学専門家に依存せずに動作するように設計することによって、高信頼の健康診断に対するアクセスが改善される。保健評価システム10は、施術者配置が不十分なエリア(例えば、農村部や発展途上国)、より利便性が望まれるエリア(例えば、ショッピングモール、ドラッグストア)、あるいは単独に迅速でしかも包括的な保健スクリーニングが要求されるエリア(例えば、自然災害、軍隊配備、越境地点や施設規制箇所)などの非伝統的な地域に配備することが可能である。
【0032】
一実施形態では、スキャンエリア18内に位置決めされた対象によるデータ収集過程は、収集した画像及び保健関連データが対象の診断または対象に関する保健情報の対象への提供ができるように秒単位(例えば、2秒)を要している。ウォークスルー保健評価システム10による画像収集時間は短いため、大人数の対象に対して必要であれば費用対効果が非常に高い方式で高スループットで高効率の撮像を提供するようにかつ対象が受けるX線照射を最小限にするように、デバイス内に対象を効率よくかつ利便よく通過させることが可能である。
【0033】
したがって本発明の一実施形態による保健評価システムは、垂直方向に向けられた第1の支持構造と、垂直方向に向けられると共にスキャン対象を受け容れるように構成されたスキャンエリアを画定するように該第1の支持構造から離間されている第2の支持構造と、該第1及び第2の支持構造内に組み込まれると共に立位位置にある対象からX線画像データを収集するように構成されたX線撮像システムと、対象から保健関連データを収集するように構成された少なくとも1つの追加のデータ収集デバイスと、を含む。本保健評価システムはさらに、X線画像データ及び保健関連データを受け取り該X線画像データ及び保健関連データに基づいて診断出力を作成するようにプログラムされたコンピュータを含んでおり、この診断出力は保健関連の診断と将来の処置に関する助言のうちの少なくとも一方を含む。
【0034】
本発明の別の実施形態によるウォークスルー保健評価システムは、第1の垂直部材とスキャンエリアを画定するように該第1の垂直部材から離間させた第2の垂直部材とを有するゲート構造と、該ゲート構造に対して確保されると共にスキャンエリア内に立ったときに対象からX線画像データを収集するように構成されたX線撮像システムと、対象からX線画像データとは別の追加の保健関連データを収集するための手段と、を含む。本ウォークスルー保健評価システムはさらに、X線画像データ及び追加の保健関連データを受け取り、該X線画像データ及び保健関連データから診断情報を抽出しかつ該抽出診断情報から対象の保健評価を作成するようにプログラムされたコンピュータを含む。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によるウォークスルー保健評価システムを介して対象に関する生理学的及び生物学的データを収集する方法は、第1の垂直部材とスキャンエリアを画定するように該第1の垂直部材から離間させた第2の垂直部材とを含むウォークスルー保健評価システムのゲート構造のスキャンエリア内部に対象を位置決めするステップを含む。本方法はさらに、直線型X線源とX線検出器配列を介して対象からX線画像データを収集するステップと、少なくとも1つの追加のデータ収集デバイスを介して対象から追加の保健関連データを収集するステップと、を含む。本方法はさらに、X線画像データ及び追加の保健関連データから診断情報を抽出するステップと、該抽出診断情報から対象の保健評価を作成するステップと、を含む。
【0036】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0037】
10 ウォークスルー保健評価システム
12 ゲート構造
14 第1の支持構造
16 第2の支持構造
18 スキャンエリア
20 基部構造
22 ハイライト領域
24 指示光
26 投影デバイス
28 ユーザインタフェース
30 デバイス読取り機
32 データ入力デバイス
34 X線源
36 検出器アセンブリ
38 放射線源制御器
40 データ収集システム(DAS)
42 コンピュータ
44 オペレータインタフェース
46 記憶デバイス
47 電気インピーダンス体脂肪率特徴付けデバイス
48 身体熱撮像デバイス
50 体重計測デバイス
52 映像取り込みデバイス
54 生体マーカ試料収集機
56 通信デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に向けられた第1の支持構造(14)と、
垂直方向に向けられると共に、スキャン対象を受け容れるように構成されたスキャンエリア(18)を画定するように前記第1の支持構造(14)から離間させた第2の支持構造(16)と、
前記第1及び第2の支持構造(14、16)内に組み込まれると共に立位位置にある対象からX線画像データを収集するように構成されたX線撮像システム(34、36)と、
対象から保健関連データを収集するように構成された少なくとも1つの追加のデータ収集デバイス(28、47、48、50、52、54)と、
コンピュータ(42)であって、
X線画像データ及び保健関連データを受け取ること、
前記X線画像データ及び保健関連データに基づいて、保健関連の診断と将来の処置に関する助言のうちの少なくとも一方を含む診断出力を作成すること、
を行うようにプログラムされたコンピュータ(42)と、
を備える保健評価システム(10)。
【請求項2】
前記X線撮像システム(34、36)は、
前記スキャンエリア(18)の一方の側で前記第1の支持構造(14)に添着されると共に垂直方向に向けられた直線型X線源(34)であって、対象に向けてX線を放出するように構成された直線型X線源(34)と、
前記スキャンエリア(18)の別の側で前記直線型X線源(34)と概して反対に前記第2の支持構造(16)に添着されると共に対象を通過した後のX線を受け取るように構成された直線型検出器配列(36)と、
を備える、請求項1に記載の保健評価システム(10)。
【請求項3】
前記直線型X線源(34)は、X線源からなるアレイを直線的配列で含んだ分散型X線源、直線的垂直構成を有する単一の静止型X線源、及び垂直方向に並進するように構成された移動可能なX線源のうちの1つを備える、請求項2に記載の保健評価システム(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの追加のデータ収集デバイス(28、47、48、50、52、54)は、身体熱撮像デバイス(48)、映像取り込みデバイス(52)、生体マーカ試料収集機(54)及び体重計測デバイス(50)のうちの少なくとも1つを備えると共に、
前記保健関連データは、基礎体温、骨密度、身長、体重、肥満指数(BMI)、体脂肪率及び導出型メタボリック保健情報のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の保健評価システム(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加のデータ収集デバイスは、対象から保健関連データに関する入力を受け取るように構成されたユーザインタフェース(28)を備える、請求項1に記載の保健評価システム(10)。
【請求項6】
前記ユーザインタフェース(28)は、保健関連データをその上に保存して有する対象特異的な保健カードを受け容れかつ読み取るように構成されたカード読取り機(30)を備える、請求項5に記載の保健評価システム(10)。
【請求項7】
前記ユーザインタフェース(28)は、対象から保健関連データに関する入力を受け取るように構成されたデータ入力デバイス(32)を備えており、該入力は識別番号と健康特異的データのうちの少なくとも一方を含む、請求項5に記載の保健評価システム(10)。
【請求項8】
対象に関する遠隔に保存された電子的医療記録(EMR)にアクセスするように構成された通信デバイス(56)をさらに備えており、該EMRは対象がデータ入力デバイス(32)に入力した識別番号に応答して取り出すことが可能である、請求項7に記載の保健評価システム(10)。
【請求項9】
前記ユーザインタフェース(28)はさらに、X線画像データと保健関連データのうちの少なくとも一方の収集を支援するために対象に対する案内指示を生成するように構成されている、請求項5に記載の保健評価システム(10)。
【請求項10】
前記コンピュータ(42)はさらに、
複数の垂直の千鳥配置箇所でのX線の放出から収集される複数の投影画像を収集させるようにX線撮像システム(34、36)の動作を制御すること、
前記複数の投影画像から対象の少なくとも一部分の断層画像を作成すること、
を行うようにプログラムされている、請求項1に記載の保健評価システム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−110703(P2012−110703A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252268(P2011−252268)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】