説明

包装容器の製造方法

【課題】ロール状包装物を収容する紙製の容器本体にそのロール状包装物を切断するための非金属製の切断刃が接合された包装容器の製造方法であって、切断刃と容器本体との間の密着性を向上させた包装容器の製造方法を提供する。
【解決手段】ロール状包装物を収容する紙製の容器本体にそのロール状包装物を切断するための非金属製の切断刃が接合された包装容器の製造方法であって、ウレタン系接着剤組成物からなる接着層と、その接着層に積層されたポリエチレン系樹脂からなるシーラント層とを有する切断刃を、容器本体を構成する基材に対して加熱及び加圧することにより、容器本体に切断刃を接合する工程を具備し、ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とからなる接着液32を、切断刃を構成する切断刃基材31に対して塗布することにより接着層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状包装物を収容する紙製の容器本体にそのロール状包装物を切断するための非金属製の切断刃が接合された包装容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を包装するラップフィルムやアルミホイルといった包装物の包装容器は、包装物が捲き回されたかたちのロール状包装物を厚紙製の容器本体内に収容しており、必要とされる長さの包装物がその容器本体から引き出される態様で一般に利用されている。このようにして利用される包装容器には鋸歯状の切断刃が容器本体に接合されており、引き出された包装物がこの切断刃により即座に切断されることで包装容器を利用する利用者に対しその利便性が図られている。
【0003】
上記切断刃の構成材料としては、包装物に対する切断性や切断刃の耐久性などが得られやすいという観点から、従来から金属製のものが利用されてきた。一方近年では、環境に対する適応性や使用者に対する安全性などの機能が上記切断刃にも強く求められており、こうした要請に応えるものとして厚紙製や樹脂製といった特許文献1に記載のような非金属製のものも検討されるに至っている。またこうした切断刃の構造としても、切断対象や切断方法に適した切断性が実現されるために、特に金属製の切断刃に比べてその切断性が劣るといった上記非金属製の切断刃においてはその切断性が向上されることを目的として、特許文献2、特許文献3に記載のように各種の歯形状が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3573605号公報
【特許文献2】特開平5−178344号公報
【特許文献3】特開平8−40433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した構成からなる切断刃においては、切断刃の構成要素である各歯が容器本体に対して適切に固定されることによって、はじめてそれの構造に即した切断性が実現されることとなる。それゆえ、上記切断刃がその切断性を向上する上では、上述したような歯形状のみならず、厚紙製の容器本体と切断刃との間における接合強度も重要な要素となる。この点、従来からの金属製の切断刃であれば、厚紙製の容器本体に比べてその剛性が十分に高くなるため、切断刃に設けられたかしめ部などによって切断刃が容器本体にかしめられる構造も採用可能となり、こうした接合構造によれば切断刃と容器本体との間の機械的な接合強度が確保可能にもなる。だが十分な剛性が得られ難い上記非金属製の切断刃では、上述するようなかしめ部による接合構造も採用され難く、その結果、切断刃と容器本体とが1つの接着層を介在するだけの一般的な接合構造では、切断刃の構造に即した切断性が実現され難くなっている。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロール状包装物を切断する非金属製の切断刃が同ロール状包装物を収容する紙製の容器本体に接合されて成る包装容器の製造方法であって、切断刃と容器本体との間の密着性を向上させた包装容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、ロール状包装物を収容する紙製の容器本体にそのロール状包装物を切断するための非金属製の切断刃が接合された包装容器の製造方法であって、ウレタン系接着剤組成物からなる接着層と、その接着層に積層されたポリエチレン系樹脂からなるシーラント層とを有する前記切断刃を、前記容器本体を構成する基材に対して例えば超音波接着法を施すといった加熱及び加圧を施すことにより、前記容器本体に前記切断刃を接合する工程を具備し、ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とからなる液を、前記切断刃を構成する基材または前記シーラント層に対して塗布することにより前記接着層を形成することを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ウレタン系接着剤組成物からなる接着層とポリエチレンからなるシーラント層といった接着機能を有する2つの異なる層が切断刃と容器本体との間に介在することとなる。それゆえこれら接着層とシーラント層との間、さらには切断刃とシーラント層との間や接着層と容器本体との間の密着性が向上し、ひいては切断刃と容器本体との間の密着性が向上する。
【0009】
なおウレタン系接着剤組成物の主剤には、ポリエステル系化合物の他、ウレタン結合を得る上では、ポリエーテル系化合物やポリカーボネート系化合物なども適用可能と考えられる。ウレタン系接着剤組成物の硬化剤についても、脂肪族系イソシアネート化合物の他、芳香族系ジイソシアネート化合物も適用可能と考えられる。だがこうしたポリエーテル系化合物やポリカーボネート系化合物にあっては、たとえ硬化剤が脂肪族系イソシアネート化合物であっても、非金属性の切断刃と接着層との間に十分な密着力が得られ難く、切断刃と包装容器との間における密着性は接着層が無い構造のものと同程度となってしまう。また芳香族系ジイソシアネート化合物にあっては、たとえ主剤がポリエステル系化合物であっても、非金属性の切断刃と接着層との間に十分な密着力が得られ難く、これもまた切断刃と包装容器との間における密着性は接着層が無い構造のものと同程度となってしまう。この点、請求項1に記載の発明によれば、接着層の構成材料として、ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とが利用されることから、非金属性の切断刃と接着層との間に十分な密着力が得られることとなる。それゆえ切断刃と容器本体との間の密着性を向上させた包装容器が提供可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記切断刃がポリ乳酸系樹脂からなることを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、切断刃と容器本体との間の密着性が向上可能となり、ポリ乳酸系樹脂は生分解性を有することから、こうした包装容器の環境への影響が抑えられることにもなる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記シーラント層がエチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体からなることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、シーラント層がエチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)からなる構成であるため、シーラント層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる構成に比べて、シーラント層と容器本体との間の密着性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の包装容器の斜視構造を示す斜視図。
【図2】本実施形態の包装容器の一部断面構造を示す断面図。
【図3】本実施形態の包装容器の製造方法における接合工程を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態の包装容器とその製造方法とを図面に従って説明する。図1は包装容器の斜視構造を示す斜視図であり、図2は包装容器における切断刃の
接続態様についてその断面構造を示す断面図である。
【0014】
図1に示されるように、包装容器10を構成する容器本体11は、蓋体11aを有した箱体状に構成されており、1枚の厚紙である例えばコートボール紙が折り曲げられて箱体状に組立てられて成る。容器本体11の上部を構成する厚紙製の蓋体11aは、容器本体11の後面壁の頂縁11bから容器本体11の上部開口の全体を連続的に覆うかたち構成されている。そして頂縁11bが回転軸となる態様で蓋体11aが回転することにより、容器本体11の上部全体が蓋体11aにより開閉されることとなる。この厚紙製の容器本体11の内部には、円筒状の紙管12aにロール状に巻き付けられた例えばラップフィルムやアルミホイルなどの包装物12が収納されている。そして容器本体11の上部全体が蓋体11aによって開けられることにより、必要とされる量の包装物12が容器本体11から引き出し可能となる。
【0015】
容器本体11を構成する蓋体11aには、それを構成する前面壁の裏面11c(図2参照)に樹脂製の切断刃21が接合されている。切断刃21の構成材料としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET系樹脂)、塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性を有してその加工が容易であり、実用上においても十分な硬度ならびに強度が得られる材料である上記PET系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂が好ましい。特に環境への影響が抑えられる点において、生分解性樹脂がより好ましい。こうした生分解性樹脂としては、代表的なものとしてポリ乳酸、ポリグリコール酸等が挙げられる。なお上述した樹脂以外の成分としては、特許文献1に開示される無機充填剤、さらには熱安定剤、光安定剤、防水材、離型剤、顔料、染料等を含む構成であっても良い。
【0016】
図2に示されるように、こうした構成からなる切断刃21と蓋体11aとの間には、蓋体11aを構成する前面壁の裏面11cから順に、ポリエチレン系樹脂から構成されるシーラント層22と、ウレタン系接着剤組成物から構成される接着層23とが積層されている。そしてこれらシーラント層22と接着層23とからなる積層構造が切断刃21と容器本体11とに挟まれる態様で切断刃21と容器本体11との接合構造が構成されている。つまり上述した包装容器10においては、樹脂製の切断刃21が接着層23を介してシーラント層22に接合されており、このシーラント層22と上述した紙製の容器本体11とが接合されることによって、切断刃21と容器本体11とが接合されている。
【0017】
接着層23を構成するウレタン系接着剤組成物とは、主剤の両末端の水酸基と、硬化剤のイソシアネート基とが鎖延長反応によりウレタン結合を生成し、このウレタン結合とイソシアネート基とがさらに架橋反応によりアロファネート結合を生成してなるものである。
【0018】
詳述すると、上記主剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのグリコール類もしくはそれらの混合物と、アジピン酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバチン酸、アゼライン酸などのカルボン酸もしくはそれらのアルキルエステルまたはそれらの混合物との縮合物であるポリエステルポリオール、または、上記ポリエステルポリオールと下記イソシアネート化合物とを、水酸基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.6〜1.0、好ましくは0.7〜0.9で反応させることにより得られるポリエステルポリウレタンポリオールなどのポリエステル系化合
物が用いられる。
【0019】
上記硬化剤としては、イソシアネート基が鎖状炭素原子に結合したジイソシアネート化合物とイソシアネート基が環状飽和炭化水素の炭素原子に結合したジイソシアネート化合物、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジイソシアネートシクロヘキサン、キシリレンジイソシアネートなどの脂肪族系ジイソシアネート単量体もしくはそれらの混合物、または上記単量体から誘導される、例えば、ダイマー、トリマー、ビュレット、アロファネート、および、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとの付加体などの脂肪族系イソシアネート化合物が用いられる。
【0020】
また上記シーラント層22を構成するポリエチレン系樹脂としては、エチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン‐メチル(メタ)アクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン‐アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)などの変性ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が用いられる。なお、EMAAなどの変性ポリエチレンからなるシーラント層22であればLLDPEに比べて容器本体11との密着性がより高くなるため、シーラント層22の構成材料としてはより好ましい。
【0021】
こうした構成からなる包装容器10の製造方法について、上述した切断刃21と容器本体11との間の接合方法を中心に図3を参照して以下に説明する。図3は切断刃21の基材である切断刃基材31と、シーラント層22の基材であるシーラント基材34とが接着層23を介して接合される接合工程を説明する工程図である。
【0022】
図3に示されるように、切断刃21の基材である切断刃基材31は、例えば上記ポリ乳酸系の樹脂組成物が2軸延伸されて成る帯状のシート材であり、ロール状に巻回された状態からその後段である塗布ローラへと順に送給される。なお切断刃基材31の構成材料としては上述したような樹脂あるいは樹脂に上記無機充填剤などが添加されたものも用いることができる。塗布ローラに送給される切断刃基材31は、上述したウレタン系接着剤組成物を含む接着液32がその一側面に塗布されて、その後段である乾燥機33へと順に送給される(塗布工程)。
【0023】
なお、上記接着液32としては、上述した主剤であるポリエステル系化合物に硬化剤である脂肪族系イソシアネート化合物を添加混合した液が用いられる。なお、これら主剤と硬化剤との配合比は、主剤の水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が0.4〜5.0、好ましくは0.5〜2.0である。上記接着液は有機溶剤で希釈することもでき、有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなどが挙げられ、接着液の固形分濃度としては10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。また上記塗布工程においては、例えば塗工速度が40mm/分であって、切断刃基材31に加わる張力が30kgになる態様にて、上述した接着液32の塗布が行われる。そしてこうした塗布工程が実行されることにより、ポリエステル系化合物からなる主剤に脂肪族系イソシアネート化合物からなる硬化剤が添加混合されて得られる接着液32が切断刃基材31の一側面に塗布されることとなる。
【0024】
乾燥機33に送給される切断刃基材31は、所定の張力の下で所定の温度に加熱されて、その後段である接合ローラに送給される(乾燥工程)。この乾燥工程においては、例え
ば乾燥温度が50℃、60℃、70℃といった順に徐々に高くなり、切断刃基材31に加わる張力が17kgとなる態様にて上記接着液32の乾燥が行われる。そしてこうした乾燥工程が実行されることにより、切断刃基材31の一側面に塗布された接着液32からそれに含まれる溶剤が蒸発することとなる。
【0025】
接合ローラに送給される切断刃基材31は、ウレタン系接着剤組成物が塗布された一側面に、切断刃基材31と同じくロール状に巻回された帯状を成すシーラント基材34が順に張り合わされる。そして切断刃基材31とシーラント基材34とが張り合わされてなる積層基材35が、接着層23を介して接合された状態で順に巻き取られることとなる(接合工程)。なおシーラント基材34としては、上述したポリエチレン系樹脂であるエチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン‐メチル(メタ)アクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン‐アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン‐酢酸ビニル共重合体(EVA)からなるシーラント材が用いられる。
【0026】
このようにして製造された帯状の積層基材35は、プレス加工やレーザ切削などにより所望の歯形状に成形されて、これにより上述するような切断刃21、シーラント層22、及び接着層23が得られることとなる。そして上記容器本体11の基材である容器基材とこのようにして得られた切断刃21とが、前記裏面11cとシーラント層22とが向かい合う態様で重ね合わされて、加圧された後に加熱される、もしくは加熱された後に加圧される、あるいは加熱と同時に加圧されることで、容器本体の容器基材と溶着される。ここで、こうした溶着方法として例えば超音波を用いた超音波溶着を使用すれば、別途の加熱機構を用いることなく、ごく短時間でシーラント層を加熱溶融させられ、こうしたシーラント層と容器基材と溶着することができるため、好ましく用いることができる。このようにして接合された切断刃21を有する容器基材が折り曲げられて箱体状に組立てられることにより包装容器10が製造される。
【0027】
このような製造方法から得られる包装容器10について、その切断刃21と容器本体11との間の接合強度を比較例とともに以下に説明する。まず上述した接合構造を得るための実施例の製造条件と比較例の製造条件とを以下に示す。次いで実施例及び比較例の各々について、切断刃と容器本体との間の接着力を表1に示す。なお切断刃と容器本体との間の接着力は、これら切断刃と容器本体とが相対向する方向に引張られる方式のスタッドプル試験により得られる引張強度である。
【0028】
(実施例)
・容器基材:コートボール紙
・切断刃基材:ポリ乳酸系組成物
・シーラント層:エチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)
・主剤:ポリエステル系化合物
・硬化剤:脂肪族系イソシアネート化合物
・主剤と硬化剤との配合比:主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の当量比(OH/OCN)=1.0
・塗工幅:840mm
・塗工速度:40m/分
・乾燥温度:50℃−60℃−70℃
・乾燥機内張力:17kg
・巻き取り張力:30kg
・塗布量:3.5g/m2
(比較例)
・容器基材:コートボール紙
・切断刃基材:ポリ乳酸系組成物
・シーラント層:エチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)
・主剤:ポリエーテル系化合物
・硬化剤:芳香族系ジイソシアネート化合物
・主剤と硬化剤との配合比:主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の当量比(OH/OCN)=1.0
・塗工幅:840mm
・塗工速度:40m/分
・乾燥温度:50℃−60℃−70℃
・乾燥機内張力:17kg
・巻き取り張力:30kg
・塗布量:3.5g/m2
【0029】
【表1】

表1に示されるように、比較例の接着力が500g/15mmであることに対して、実施例の接着力はその約2倍の強度である900g/15mmである。それゆえ主剤及び硬化剤がそれぞれポリエステル系化合物及び芳香族系イソシアネート化合物からなる構成によって、このように切断刃21と容器本体11との間の接合強度が著しく向上されることが分かる。
【0030】
ちなみにウレタン系接着剤組成物の主剤には、上記実施例に示されるポリエステル系化合物の他、ウレタン結合を得る上では、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの1種もしくは2種以上を多価アルコールや多塩基性カルボン酸などの2個以上の活性水素を持つ化合物に付加重合させて得られるポリエーテル系化合物や、カーボネートと1種以上のジオールとの間のエステル交換反応によって得られるポリカーボネートポリオールなどのポリカーボネート系化合物なども適用可能と考えられる。またウレタン系接着剤組成物の硬化剤についても、上記実施例に示される脂肪族系イソシアネート化合物の他、イソシアネート基が芳香環の炭素原子に結合した芳香族系イソシアネート化合物も適用可能と考えられる。だがこうしたポリエーテル系化合物やポリカーボネート系化合物が主剤として利用される場合には、たとえ硬化剤が脂肪族系イソシアネート化合物であっても、比較例と同程度の接着力しか得られないことが本発明者らの試験により認められている。また芳香族系ジイソシアネート化合物が硬化剤として利用される場合には、たとえ主剤がポリエステル系化合物であっても、これもまた比較例と同程度の接着力しか得られないことが本発明者らの試験により認められている。
【0031】
しかも伸縮性に富むポリエチレンやポリ塩化ビニリデンなどからなるラップフィルムの切断には特に大きな力が必要とされ、その際、切断刃21の切断性が十分に発揮されるための接着力が400g/15mmであることも認められている。これらの点を鑑みれば、上述した包装容器10の製造方法によって、切断刃21と容器本体11との間に十分に高い接合強度が付与可能であることが分かる。
【0032】
以上説明したように、上記実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、ウレタン系接着剤組成物からなる接着層23と変成ポリエチレンからなるシーラント層22といった接着機能を有する2つの異なる層が切断刃21と容器本体11との間に介在することとなる。それゆえこれら接着層23とシーラント層22との間、さらには切断刃21とシーラント層22との間や接着層23と容器本体11との間の密着性が向上可能となり、ひいては切断刃21と容器本体11との間の密着性が向上可能となる。
【0033】
(2)上記実施形態によれば、接着層23の構成材料として、ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とが利用されることから、非金属性の切断刃21と接着層23との間に十分な密着力が得られることとなる。それゆえ切断刃21と容器本体11との間の密着性を向上させた包装容器10が提供可能となる。
【0034】
(3)上記実施形態によれば、切断刃21の構成材料としてポリ乳酸系樹脂が適用可能であるため、上述のように切断刃21と容器本体11との間の密着性が向上可能となり、さらには包装容器10の環境への影響も抑えられる。
【0035】
(4)上記実施形態によれば、シーラント層22の構成材料としてエチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体(EMAA)が適用可能であるため、シーラント層22が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる構成に比べて、シーラント層22と容器本体11との間の密着性がより向上されることになる。
【0036】
なお上記実施形態は、以下の態様に変更して実施することもできる。
・上記実施形態では、ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とが利用されて単層の接着層23が形成されることとなる。これを変更して、例えば主剤及び硬化剤の種類、さらには主剤と硬化剤との配合比が変更されるかたちで多層の接着層23が形成される構成であっても、上記に類似した硬化が得られることとなる。
【0037】
・上記実施形態では、切断波を構成する基材である切断刃基材31に主剤と硬化剤とからなる液が塗布される例について説明した。こうした方法に限らず、上述した主剤と硬化剤とからな液が、シーラント層を構成する基材であるシーラント基材34、あるいは上記切断刃基材31及びシーラント基材34の双方に塗布される方法であってもよい。こうした方法であっても、ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とからなる液を用いて接着層が形成される上では、上述した効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
10…包装容器、11…容器本体、12…包装物、13…切断刃、21…切断刃、22…シーラント層、23…接着層、31…切断刃基材、32…接着液、33…乾燥機、34…シーラント基材、35…切断刃積層材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状包装物を収容する紙製の容器本体にそのロール状包装物を切断するための非金属製の切断刃が接合された包装容器の製造方法であって、
ウレタン系接着剤組成物からなる接着層と、その接着層に積層されたポリエチレン系樹脂からなるシーラント層とを有する前記切断刃を、前記容器本体を構成する基材に対して加熱及び加圧することにより、前記容器本体に前記切断刃を接合する工程を具備し、
ポリエステル系化合物を含む主剤と脂肪族系イソシアネート化合物を含む硬化剤とからなる液を、前記切断刃を構成する基材または前記シーラント層に対して塗布することにより前記接着層を形成すること
を特徴とする包装容器の製造方法。
【請求項2】
前記切断刃がポリ乳酸系樹脂からなる
請求項1に記載の包装容器の製造方法。
【請求項3】
前記シーラント層がエチレン‐(メタ)アクリル酸共重合体からなる
請求項1又は2に記載の包装容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−202225(P2010−202225A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47250(P2009−47250)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】