説明

包装袋

【課題】 耐ピンホール性に優れ、また、最外面に設けられた保護フィルム層を簡単に剥離することができて保護フィルム層の剥離作業を極めて容易なものとすることができる、塵や埃を嫌うクリーンルーム用として好適な包装袋を提供することである。
【解決手段】 ガスバリアー性層の両側に耐突き刺し性層を備えた基材層の一方の面に剥離可能に積層してなる保護フィルム層と、他方の面に強固な接着力で積層してなる熱接着性樹脂層とからなると共に前記熱接着性樹脂層の表出面が清浄面からなる積層体の一対を前記積層体の前記熱接着性樹脂層同士を対向させて重ね合わせて周縁熱接着部で熱接着して袋状となした内面が清浄面からなることを特徴とする包装袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、特に、塵、埃等を極端に嫌う半導体製品、磁気ディスク、あるいは、防塵用衣服等の包装に好適に使用することができる包袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、IC、LSI等の半導体製品や磁気ディスク、あるいは、防塵用衣服等は、塵や埃を極端に嫌うことからクリーンルーム内で製造されている。そして、クリーンルーム内で作業することから、それらを製造するために必要な部品、中間製品等をクリーンルーム内に搬入するに際しては、それらと一緒に塵や埃等が付着してクリーンルーム内に持ち込まれることを極力注意しなければならないし、また、完成品についても、塵や埃等が付着しないようにしなければならないことは当然のことである。一般に、上記した部品、中間製品、完成品など、あるいは、作業者が着用する衣服等は、その搬送については、従来、クリーンルーム内で製造し、超純水で洗浄した包装材料等を使用して包装され、流通、搬送されている。
【0003】
しかしながら、超純水で洗浄するための洗浄手段は、装置が複雑であると共に、製造コストが高くつくという問題や、また、超純水による包装材料の洗浄の程度により、その包装袋のクリーン度の確実性に欠けるという問題もあり、また、搬送中に包装袋に付着した塵や埃によるクリーンルームの汚染を防止するために、たとえば、ハードディスク基板を収容したハードディスクケースが真空包装された包装袋を、さらに外袋で密封包装する、いわゆる、二重包装が行われ、その作業が結構煩雑であるという問題、あるいは、外袋の湿気に対するバリアー性が不足する場合には、外袋の内部に吸湿剤を封入しなけらばならないという問題もある。
【0004】
そこで、上記問題を解決するものとして、包装用クリーンフィルムを用いた包装袋が提案されると共に、使用に供されている(たとえば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2に開示された包装袋は、上記問題を解決するものであり、その効果は極めて大きいものであるが、たとえば、ハードディスク基板の場合、通常、複数枚がハードディスクケースに収容されて真空包装されるが、搬送中等の振動等の外力により、包装袋にピンホールが発生し、密封性が損なわれるという問題があり、また、ハードディスク基板を収容したハードディスクケースが密封包装された包装袋を、ハードディスク基板を製品に組み込むためのクリーンルームに搬入する際には、包装袋の表面に付着している塵や埃をクリームルームに持ち込まないために包装袋の最外面に設けられた保護フィルムを剥離した状態で搬入するが、この保護フィルムを剥離する作業が、剥離する切っ掛けがないために少々煩雑であるという問題があり、これらの解決が望まれていた。
【特許文献1】特許第3545456号公報
【特許文献2】特開平08−276527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐ピンホール性に優れ、また、最外面に設けられた保護フィルム層を簡単に剥離することができて保護フィルム層の剥離作業を極めて容易なものとすることができる、塵や埃を嫌うクリーンルーム用として好適な包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明の包装袋は、ガスバリアー性層の両側に耐突き刺し性層を備えた基材層の一方の面に剥離可能に積層してなる保護フィルム層と、他方の面に強固な接着力で積層してなる熱接着性樹脂層とからなると共に前記熱接着性樹脂層の表出面が清浄面からなる積層体の一対を前記積層体の前記熱接着性樹脂層同士を対向させて重ね合わせて周縁熱接着部で熱接着して袋状となした内面が清浄面からなることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の包装袋において、前記耐突き刺し性層が二軸延伸ナイロンフィルムであることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1、2のいずれかに記載の包装袋において、前記ガスバリアー性層が金属箔ないし無機物の蒸着層を備えた二軸延伸蒸着フィルムのいずれかであることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項4記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の包装袋が一つの辺に開口部を有する矩形状からなり、開口部の辺と対向する位置にある辺に設けられた周縁熱接着部に保護フィルム層を剥離するための切っ掛けとなる剥離開始手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項5記載の本発明は、請求項4記載の包装袋において、前記剥離開始手段が開口部の辺と対向する位置にある辺に設けられた前記周縁熱接着部の対向する角部にそれぞれ形成された角部を含む領域とそれ以外の領域とを区画するように設けられるハーフカットであって、一方の角部に設けられる前記ハーフカットは、包装袋の一方の面の保護フィルム層側から他方の面の保護フィルム層を少なくとも残して形成された少なくとも一つの刃止めを有するものであり、他方の角部に設けられる前記ハーフカットは、包装袋の他方の面の保護フィルム層側から一方の面の保護フィルム層を少なくとも残して形成された少なくとも一つの刃止めを有するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成とすることにより、耐ピンホール性に優れ、また、最外層に設けられた保護フィルム層を包装袋に設けた剥離開始手段から簡単に剥離することができて保護フィルム層の剥離作業を極めて容易なものとすることができる、塵や埃を嫌うクリーンルーム用として好適な包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明にかかる包装袋の一実施例を示す平面図、図2は図1のX−X線の断面を図解的に示す図、図3は図1のY−Y線の断面を図解的に示す図、図4は本発明にかかる包装袋の製造装置を図解的に示す図、図5は本発明にかかる包装袋を使用した包装体の一実施例を示す斜視図であり、図中の1は包装袋、2はガスバリアー性層、3は耐突き刺し性層、4は基材層、5は保護フィルム層、5’は内面保護フィルム層、6は熱接着性樹脂層、7は周縁熱接着部、8は剥離開始手段、8’,8”はハーフカット、11は包装袋製造装置、12はクリーンルーム、13は剥離ロール、14は押付けロール、15は流れ方向ヒートシール装置、16は幅方向ヒートシール装置、17は切断装置、18,19は給紙部、20は巻取りロール、21はハードディスクケース、22はハードディスク基板、23はハードディスク包装体、A,Bは積層体、Hは刃止め、Kは開口部をそれぞれ示す。
【0013】
図1は本発明にかかる包装袋の一実施例を示す平面図、図2は図1のX−X線の断面を図解的に示す図、図3は図1のY−Y線の断面を図解的に示す図であって、包装袋1はガスバリアー性層2の両側に耐突き刺し性層3を備えた基材層4の一方の面に剥離可能に積層してなる保護フィルム層5と、他方の面に強固な接着力で積層してなる熱接着性樹脂層6とからなると共に前記熱接着性樹脂層6の表出面が清浄面からなる矩形状の積層体Aの一対を前記積層体Aの前記熱接着性樹脂層6同士を対向させて重ね合わせて3周縁を周縁熱接着部7で熱接着して一辺に開口部Kを有する袋状となした内面が清浄面からなるものである。そして、包装袋1の開口部Kを設けた一辺と対向する位置にある辺に設けられた周縁熱接着部7には保護フィルム層を剥離するための切っ掛けとなる剥離開始手段8が設けられている。
【0014】
図1、3に示した剥離開始手段8は、包装袋1の開口部Kを設けた一辺と対向する位置にある辺に設けられた周縁熱接着部7の対向する角部にそれぞれ形成された角部を含む領域とそれ以外の領域とを区画するように設けられたハーフカット8’,8”であり、一方の角部(図1上の右下側)に設けられた前記ハーフカット8’は包装袋1の一方の面の保護フィルム層5側(図1上の紙面表側)から他方の面(図1上の紙面裏側)の保護フィルム層5を少なくとも残して形成された少なくとも一つの刃止めHを有するものであり、他方の角部(図1上の左下側)に設けられた前記ハーフカット8”は包装袋1の他方の面の保護フィルム層5側(図1上の紙面裏側)から一方の面(図1上の紙面表側)の保護フィルム層5を少なくとも残して形成された少なくとも一つの刃止めHを有するものである。なお、図1においては、前記ハーフカット8’,8”を包装袋1の開口部Kを設けた一辺と対向する位置にある辺に設けられた周縁熱接着部7の対向する角部にそれぞれ形成された角部を含む領域とそれ以外の領域とを区画するように設けたが、開口部K側に設けてもよいし、また、いずれかの角部の2箇所に設けてもよいものである。
【0015】
上記したように設けた前記ハーフカット8’は、前記ハーフカット8’を設けた包装袋1の角部(図1上の右下側)を手指で摘んで剥離することにより前記ハーフカット8’で切断されずに残された保護フィルム層5(図1上の紙面裏側)を容易に剥離することができるし、また、同様に前記ハーフカット8”は前記ハーフカット8”を設けた包装袋1の角部(図1上の左下側)を手指で摘んで剥離することにより前記ハーフカット8”で切断されずに残された保護フィルム層5(図1上の紙面表側)を容易に剥離することができる。要するに、前記ハーフカット8’,8”は包装袋1の両面に積層されている保護フィルム層を片面ずつ容易に、かつ、確実に剥離するために設けられているものである。また、前記ハーフカット8’,8”に少なくとも一つの刃止めHを設ける理由は、保護フィルム層5を剥離するという意思が働かない限りにおいては、前記ハーフカット8’,8”で区画された角部が千切れないようにするためである。なお、図1上は、前記ハーフカット8’において刃止めHを2箇所設けたものを示したが、前記ハーフカット8”においても同様に刃止めHを2箇所設けているが、図1上において紙面裏側からのハーフカットであり、破線で示しているために図示していない。また、刃止めHの個数は、ハーフカット8’,8”の長さにもよるが、1個よりも2個以上の複数個の方が千切れ防止という意味から好ましいものである。
【0016】
次に、本発明の包装袋1を構成する諸材料について説明する。最初に、前記ガスバリアー性層2に用いることができるものとしては、アルミニウム箔に代表される金属箔、あるいは、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機物の蒸着を施した二軸延伸蒸着フィルムを挙げることができる。
【0017】
また、前記耐突き刺し性層3に用いることができるものとしては、ポリエステル、ポリアミド等の二軸延伸フィルムが適当であるが、特に、全方向において略均一に延伸され、延伸バランスが良好な、チューブラー法で延伸された二軸延伸ナイロンフィルムが好適である。
【0018】
また、前記熱接着性樹脂層6としては、熱接着性を有する樹脂であれば特に限定するものではなく、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂が適当である。前記熱接着性樹脂層6の形成は、前記基材層4の一方の面にコロナ放電処理、アンカーコート剤を塗布する等の周知の易接着処理を施した後にTダイ押出機を用いて押出し形成してもよいし、また、上記樹脂を予めフィルム化し、これを周知のドライラミネーション法にて前記基材層4の一方の面に接着剤を介して積層形成してもよいものである。
【0019】
なお、前記熱接着性樹脂層6の表出面は、洗浄面である必要があり、前記熱接着性樹脂層6の表出面を洗浄面とする方法としては、前記基材層4の一方の面に前記熱接着性樹脂層6を形成する際に、前記基材層4と、たとえば、コロナ放電処理等の易接着処理を施していない未延伸ポリプロピレンフィルムとをTダイ押出機から低密度ポリエチレンを加熱溶融押出しして低密度ポリエチレン層を介して積層する、いわゆるサンドイッチラミネーション法にて積層し、包装袋1とする直前において前記未延伸ポリプロピレンフィルムを前記低密度ポリエチレン層との層間で剥離することにより得ることができるし、また、前記基材層4の一方の面に低密度ポリエチレン層とポリプロピレン層とからなる2層共押出しフィルム(低密度ポリエチレン層の表出面はコロナ放電処理が施されている)を低密度ポリエチレン層が前記基材層4側に位置するように接着剤を用いて積層する、いわゆるドライラミネーション法にて積層し、包装袋1とする直前において前記ポリプロピレン層を前記低密度ポリエチレン層との層間で剥離することにより得ることができる。いずれの場合も前記低密度ポリエチレン層が前記熱接着性樹脂層6となるものであり、前記未延伸ポリプロピレンフィルムないし前記ポリプロピレン層が前記熱接着性樹脂層6を製袋直前まで塵や埃から保護する内面保護層となるものである。
【0020】
次に、前記基材層4の他方の面に積層する前記保護フィルム層5について説明する。前記保護フィルム層5としては、前記基材層4の他方の面に剥離可能に積層するものであり、積層方法としては前記保護フィルム層5と前記基材層4の他方の面とをTダイ押出機から低密度ポリエチレンを加熱溶融押出しして低密度ポリエチレン層を介して積層する、いわゆるサンドイッチラミネーション法にて積層すればよいのであって、前記低密度ポリエチレン層と接する前記保護フィルム層5面ないしは前記低密度ポリエチレン層と接する前記基材層4の他方の面のいずれかの面にコロナ放電処理、アンカーコート剤を塗布する等の周知の易接着処理を施すことにより、剥離可能な前記保護フィルム層5を形成することができる。前記保護フィルム層5面に前記易接着処理を施せば、剥離界面は前記低密度ポリエチレン層と前記基材層5との層間となり、前記基材層4面に前記易接着処理を施せば、剥離界面は前記低密度ポリエチレン層と前記保護フィルム層5との層間となる。前記保護フィルム層5としては、加工適性や剥離時のフィルム強度を考慮すると二軸延伸フィルムが適当であり、コストを考慮すると二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましいものである。また、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムには静電気防止剤を添加したタイプを用いて、塵や埃の前記保護フィルム層5への付着を防止するようにしてもよいものである。
【0021】
次に、包装袋1を製造する方法について説明する。
予め保護フィルム層5/基材層4/熱接着性樹脂層6/内面保護フィルム層5’からなる積層体Bを準備する。図4は本発明にかかる包装袋の製造装置を図解的に示す図であって、包装袋製造装置11は、クラス100(0.5μm)程度に清浄化されたクリーンルーム12(図4上、破線から右側)と、このクリーンルーム12内に上流側(図4上の左側)から順に配置された内面保護フィルム層5’を剥離する剥離ロール13,13、一対の押付けロール14,14、流れ方向ヒートシール装置15(図1上の開口部の辺と対向する位置の辺に設けられる周縁熱接着部7を形成する装置)、幅方向ヒートシール装置16(図1上の対向する位置に設けられる周縁熱接着部7を形成する装置)および切断装置17と、クリーンルーム12の上流側に配置された一対の給紙部18,19および剥離された内面保護層を巻き取るための巻取りロール20,20とから構成される。
【0022】
包装袋1を積層体Bから製造するには、積層体B,Bを、一対の給紙部18,19に装着し、一対の給紙部18,19から引出される積層体B,Bを剥離ロール13,13に導き、この剥離ロール13,13において、積層体Bから内面保護フィルム層5’を剥離する。この剥離ロール13,13で剥離された内面保護フィルム層5’は、巻取りロール20,20に巻き取られると共に、内面保護フィルム層5’が剥離された積層体Bは清浄面が露出した熱接着性樹脂層6を有する一対の積層体A,Aとなる。
【0023】
前記積層体Aは熱接着性樹脂層6を内側にして一対の押付けロール14,14で互いに重ね合わされ、流れ方向ヒートシール装置15によって、図1上の開口部の辺と対向する位置の辺に設けられる周縁熱接着部7が熱接着され、次いで、幅方向ヒートシール装置によって、図1上の対向する位置に設けられる周縁熱接着部7となる熱接着部が熱接着され、その後に切断装置17により前記熱接着部が半裁されて、3周縁が周縁熱接着部7で熱接着されて一辺に開口部Kを有する袋状となした内面が清浄面からなる包装袋(図1参照)が製造され、次いで、図示はしないが、開口部の一辺と対向する位置にある辺に設けられた前記周縁熱接着部7の両角部にハーフカット装置でカットすることにより前記剥離開始手段8としてのハーフカット8’,8”がそれぞれの面に設けられた包装袋1(図1参照)が製造される。なお、包装袋の両面に設けられる前記ハーフカット8’,8”は、図示はしないが、たとえば、ロータリーダイカッターを包装袋製造装置11に組み込むことにより、切断装置17で切断することにより、前記ハーフカット8’,8”が設けられた包装袋1が製造されるようにしてもよいものである。また、前記ハーフカット8’,8”についても直線に限ることはなく、たとえば、手指で摘み易いように、包装袋1の収納部側に凸状となる円弧状に設けてもよいものである。
【0024】
このようにして製造された包装袋1は、クリーンルーム12の直前で内面保護フィルム層5’が剥離された一対の積層体A,Aからなるので、包装袋1の内面は清浄な状態に保たれる。包装袋1は、その後、所定枚数に纏められ、別途準備された清浄な大型袋(図示せず)内に収納されて出荷される。
【0025】
次に、包装袋1の使用方法について説明する。所定枚数に纏めて収納された大型袋(図示せず)から取り出された包装袋1は、クリーンルーム内で開口部Kを開き、ハードディスク基板22を収納したハードディスクケース21を開口部Kから挿入された後に、ハードディスクケース21を入れた包装袋1の内部に、孔径が0.1μm程度のガスフィルターを通して、乾燥したクリーン窒素ガスを吹き込み、包装袋1とハードディスクケース21の間の空気を窒素ガスと置換する。これにより包装袋1の内部の初期湿度が低下する。
【0026】
次に、窒素ガスと置換したハードディスクケース21を入れた包装袋1は、脱気シール装置に送られ、ここで、包装袋1とハードディスクケース21の間の窒素ガスを吸引し、包装袋1とハードディスクケース21が密着した状態とした後に、包装袋1の開口部をヒートシールすることにより図5に示すディスク包装体23とされる。
【0027】
次に、ディスク包装体23は、通常の搬送ルートを経てハードディスクを製造するためのクリーンルームへ搬送され、搬入直前に保護フィルム層5(図1、2参照)が包装袋1に設けられた剥離開始手段8(図1、3参照)としてのハーフカット8’,8”を用いて包装袋1のそれぞれの面から剥離され、その後に保護フィルム層5(図1、2参照)が剥離された包装袋が開封されてハードディスクケース21に収納されたハードディスク基板22が用いられるものである。
【0028】
なお、実施例においては、包装袋1の製造に当たって、保護フィルム層5と内面保護フィルム層5’を両外側に備えた積層体Bを用いたが、保護フィルム層5のみ設けた積層体Aを用いて包装袋1を製造してもよいものである。
【0029】
また、包装袋1から保護フィルム層5を剥離する剥離開始手段8として、ハーフカットを例に挙げて説明してきたが、剥離開始手段8としては、ハーフカットに限ることなく、
たとえば、剥離界面を保護フィルム層5と基材層4との間とする場合、基材層の前記周縁熱接着部7(図1上の開口部の辺と対向する位置の辺に設けられる周縁熱接着部7)となる予定部にストライプ状の離型層を設け、包装袋1とした際に前記周縁熱接着部7(図1上の開口部の辺と対向する位置の辺に設けられる周縁熱接着部7)を手指で摘んで擦ることにより表裏の保護フィルム層5を容易に基材層4から分離することができるために、ハーフカットと同様な効果を得ることができる。
【0030】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
予め、25μm厚さの二軸延伸ナイロンフィルム(以下、ONと呼称する)と7μm厚さのアルミニウム箔(以下、ALと呼称する)と15μm厚さのONと50μm厚さの無添加の低密度ポリエチレン層(以下、LDPEと呼称する)と50μm厚さのポリプロピレン層(以下、CPPと呼称する)とからなる100μm厚さの共押出しフィルム〔以下、共押出しフィルム(LDPE50/CPP50)と呼称する〕とを二液硬化型ウレタン系接着剤層(以下、DLと呼称する)を介して積層して中間積層体α〔ON25/DL/AL7/DL/ON15/DL/共押出しフィルム(LDPE50/CPP50)〕を作製した。なお、必要な面には当然にコロナ放電処理が施されているものである。
【0031】
また、25μm厚さのONフィルムと7μm厚さのALと12μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETと呼称する)と100μm厚さの共押出しフィルム(LDPE50/CPP50)とを二液硬化型ウレタン系接着剤層(以下、DLと呼称する)を介して積層して中間積層体β〔ON25/DL/AL7/DL/PET12/DL/共押出しフィルム(LDPE50/CPP50)〕を作製した。なお、必要な面には当然にコロナ放電処理が施されているものである。
【実施例1】
【0032】
20μm厚さの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPと呼称する)のコロナ放電処理面に一液汎用タイプの印刷インキを用いて墨文字一色印刷を施した後、二液硬化型ウレタン系アンカーコート剤(以下、ACと呼称する)を印刷面全面に施した後に、加熱溶融したポリエチレン(以下、PEと呼称する)を40μm厚さとなるようにAC面に押出し塗布して、上記で作製した中間積層体αのON面が加熱溶融押出ししたポリエチレン側に位置するように前記中間積層体αを積層、いわゆるサンドイッチラミネーションして本発明の積層体〔OPP20/印刷/AC/PE40/ON25/DL/AL7/DL/ON15/DL/共押出しフィルム(LDPE50/CPP50)〕を得た。
【0033】
[比較例1]
20μm厚さのOPPのコロナ放電処理面に一液汎用タイプの印刷インキを用いて墨文字一色印刷を施した後、二液硬化型ウレタン系アンカーコート剤(以下、ACと呼称する)を印刷面全面に施した後に、加熱溶融したポリエチレン(以下、PEと呼称する)を40μm厚さとなるようにAC面に押出し塗布して、上記で作製した中間積層体αのON面が加熱溶融押出ししたポリエチレン側に位置するように前記中間積層体βを積層、いわゆるサンドイッチラミネーションして比較例とする積層体〔OPP20/印刷/AC/PE40/ON25/DL/AL7/DL/PET12/DL/共押出しフィルム(LDPE50/CPP50)〕を得た。
【0034】
上記で作製した実施例1、および、比較例1の積層体について、共押出しフィルムのLDPEとCPP間でCPPを剥離した積層体をサンプルとして下記の評価方法で評価し、その結果を表1に纏めて示した。
【0035】
【表1】

【0036】
(※1)突き刺し強度:昭和34年厚生省告示第370号に準じる。
尚、LDPE側からの強度で、単位はN(ニュートン)である。
(※2)耐ピンホール性:テスター産業(株)製ゲルボテスター(商品名)にて、23℃
の条件下で1000回の時のピンホール個数である。
(※3)透湿度:JIS Z 0208に準拠(40℃、90%RH)して測定した
数値である。単位はg/m2・dayである。
(※4)剥離強度:テンシロンにて引張速度300mm/分で、50mm巾の
サンプルを90度の剥離角度で剥離した際の強度である。
単位はN/50mm巾である。
【0037】
表1からも明らかなように、実施例1は、比較例1と比較して耐突き刺し性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる包装袋の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1のX−X線の断面を図解的に示す図である。
【図3】図1のY−Y線の断面を図解的に示す図である。
【図4】本発明にかかる包装袋の製造装置を図解的に示す図である。
【図5】本発明にかかる包装袋を使用した包装体の一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 包装袋
2 ガスバリアー性層
3 耐突き刺し性層
4 基材層
5 保護フィルム層
5’ 内面保護フィルム層
6 熱接着性樹脂層
7 周縁熱接着部
8 剥離開始手段
8’,8” ハーフカット
11 包装袋製造装置
12 クリーンルーム
13 剥離ロール
14 押付けロール
15 流れ方向ヒートシール装置
16 幅方向ヒートシール装置
17 切断装置
18,19 給紙部
20 巻取りロール
21 ハードディスクケース
22 ハードディスク基板
23 ハードディスク包装体
A,B 積層体
H 刃止め
K 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリアー性層の両側に耐突き刺し性層を備えた基材層の一方の面に剥離可能に積層してなる保護フィルム層と、他方の面に強固な接着力で積層してなる熱接着性樹脂層とからなると共に前記熱接着性樹脂層の表出面が清浄面からなる積層体の一対を前記積層体の前記熱接着性樹脂層同士を対向させて重ね合わせて周縁熱接着部で熱接着して袋状となした内面が清浄面からなることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記耐突き刺し性層が二軸延伸ナイロンフィルムであることを特徴とする請求項1記載の包装袋。
【請求項3】
前記ガスバリアー性層が金属箔ないし無機物の蒸着層を備えた二軸延伸蒸着フィルムのいずれかであることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の包装袋。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の包装袋が一つの辺に開口部を有する矩形状からなり、開口部の辺と対向する位置にある辺に設けられた周縁熱接着部に保護フィルム層を剥離するための切っ掛けとなる剥離開始手段が設けられていることを特徴とする包装袋。
【請求項5】
前記剥離開始手段が開口部の辺と対向する位置にある辺に設けられた前記周縁熱接着部の対向する角部にそれぞれ形成された角部を含む領域とそれ以外の領域とを区画するように設けられるハーフカットであって、一方の角部に設けられる前記ハーフカットは、包装袋の一方の面の保護フィルム層側から他方の面の保護フィルム層を少なくとも残して形成された少なくとも一つの刃止めを有するものであり、他方の角部に設けられる前記ハーフカットは、包装袋の他方の面の保護フィルム層側から一方の面の保護フィルム層を少なくとも残して形成された少なくとも一つの刃止めを有するものであることを特徴とする請求項4記載の包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−247417(P2008−247417A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90181(P2007−90181)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】