説明

化学分析装置及び化学分析カートリッジ

【課題】
構造が簡単なカートリッジとそれを用いた化学分析装置を提供する。
【解決手段】
化学分析装置は、モータ、モータにより回転可能な保持ディスク、保持ディスク上に配置された複数の検査カートリッジ、検査カートリッジに穿孔するための穿孔機、加温装置及び検出装置を有する。検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板を含む、基板には、容器及び流路を覆うカバーが装着される。保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、回転軸線に対して内周側の容器から流路を経由して回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心力を利用して溶液の移動、混合等を行う化学分析装置に関し、特に、取り外し可能なカートリッジを使用する化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAを含む液体試料からDNAを抽出する方法としては、特表2003−502656号公報に、小型化されたインビトロ増幅アッセイを行うための装置および方法が記載されている。この装置では、DNA混合液を無機基体としてのガラスフィルタに通過させた後、洗浄液及び溶離液を通過させてDNAのみを回収している。ガラスフィルタは回転可能な構造体に設けてあり、洗浄液や溶離液等の試薬は同じ構造体内の各試薬リザーバに保持してある。各試薬は構造体が回転することにより発生する遠心力で流動し、各試薬リザーバとガラスフィルタを結ぶ微細流路に設けたバルブを開くことにより試薬がガラスフィルタを通過する。
【0003】
複数の化学物質を含む試料から核酸等の特定の化学物質を抽出し分析する化学分析装置としては、特表2001−527220号公報に、一体型流体操作カートリッジが記載されている。この装置では、一体型カートリッジ内部に溶解液や洗浄液や溶離液等の試薬、及び核酸を捕獲する捕獲構成部品を備え、核酸を含む試料をカートリッジ内部に注入した後、前記試料と溶離液を混合させて前記捕獲構成部品に通過させ、さらに捕獲構成部品に洗浄液を通過させ、さらに捕獲構成部品に溶離液を通過させ、捕獲構成部品を通過した後の溶離液をPCR試薬に接触させ反応チャンバへと流している。
【0004】
【特許文献1】特表2003−502656号公報
【特許文献2】特表2001−527220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特表2003−502656号公報記載の装置では、バルブには加熱することで溶けるワックス等を使用しているので、通過した試薬がバルブ部に残り回収したDNAを汚染する可能性がある。すなわちDNA混合液や洗浄液がバルブ部に残り、遠心力で溶離液をガラスフィルタに通過させている工程で、バルブ部に残ったDNA混合液や洗浄液が流れ込む可能性がある。
【0006】
また前記特表2001−527220号公報記載の一体型流体操作カートリッジでは、各試薬をポンプで送液する際、各試薬チャンバと捕獲構成部品を結ぶ微細流路に設けたバルブ等を開くことで試薬が捕獲構成部品を通過する。さらに捕獲構成部品を通過した試薬のうち洗浄液は廃液チャンバへ、溶離液は反応チャンバへと流れるように捕獲構成部品と各チャンバとの間の流路に設けたバルブ等で切り替えている。ポンプで複数の試薬を送液する場合流路壁に試薬が残り、特にバルブ等の障害物があると液が残りやすく、一旦液が残ると流動することがないため、別の試薬との合流部で汚染する可能性がある。また、捕獲構成部品を通過した洗浄液と溶離液とをバルブ等で切り替えて別々のチャンバに流動させる場合、先に廃液チャンバへと流動した洗浄液が反応チャンバへ切り替えるバルブ等の上流流路を汚染するため、溶離液に洗浄液が混入する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題の少なくとも一つを解決することができ、液体試料中の特定の化学物質を高精度に抽出し検出する簡易な化学分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
化学分析装置は、モータ、モータにより回転可能な保持ディスク、保持ディスク上に配置された複数の検査カートリッジ、検査カートリッジに穿孔するための穿孔機、加温装置及び検出装置を有する。検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板を含む。基板には、容器及び流路を覆うカバーが装着される。保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、回転軸線に対して内周側の容器から流路を経由して回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させる。
【0009】
内周側の容器から外周側の容器へ溶液を移動させる流路は、内周側の容器の外周側端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、外周側の容器の内周側端にて終わる。検査カートリッジには、空気流路及び通気孔が設けられ、該通気孔を覆うカバーを穿孔することによって容器は通気孔及び空気流路を介して大気圧に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、バルブ成分や複数の試薬を備えた場合の試薬間コンタミネーションを抑制できる高性能の分析装置及び分析用構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明による化学分析装置の例を示す図である。化学分析装置1は、モータ11、モータ11により回転可能な保持ディスク12、保持ディスク12上に配置された複数の検査カートリッジ2、検査カートリッジ2に穿孔するための穿孔機13、加温装置14及び検出装置15を有する。操作者は検査項目ごとに検査カートリッジ2を用意し、保持ディスク12に装着し、化学分析装置1を起動させる。
【0012】
本例の化学分析装置では、加温装置14と検出装置15はそれぞれ別の場所に設けられているが例えば両者を一体化し、加温と検出を同一の位置で行ってもよい。また、加温装置、及び、検出装置は、保持ディスク12の上面に位置されているが、どちらか一方又は両方を保持ディスク12の下面に配置してもよい。
【0013】
図2は検査カートリッジ2の斜視図である。検査カートリッジ2は略6角形の薄い基板21からなる。6角形の短辺が保持ディスクの回転中心の内周側に配置され、6角形の長辺が外周側に配置される。従って、以下に、6角形の短辺側を内周側、6角形の長辺側を外周側と称する。
【0014】
検査カートリッジ2には、溶解液容器220、追加液容器230、洗浄液容器240、250、270、溶離液容器260、及び、検出試薬容器280、290が形成されている。これらの試薬容器には予め所定量の試薬が分注されている。
【0015】
検査カートリッジ2には、更に、試料容器210、血球貯蔵容器211、血清定量容器212、全血廃棄容器215、核酸捕捉部301、混合容器310、反応容器320、溶離液回収容器390、廃液貯蔵容器502が設けられている。核酸捕捉部301は、石英やガラスの多孔質材や繊維フィルタ等を有する。これらの容器等は互いに流路によって接続されている。これらの容器、及び、流路は、検査カートリッジ2の上面に形成された凹部である。流路の深さは、容器の深さより小さい。
【0016】
検査カートリッジ2の上面には、フィルム又は薄板等で構成されるカートリッジカバー22がカートリッジ上面の全体を覆うように、接着又は接合されている。従って、容器、及び、流路は、密閉空間を形成している。
【0017】
本例では、遠心力を利用して、流路によって互いに接続されている2つの容器間にて試薬又は溶液を移動させる。先ず、2つの容器を覆うカートリッジカバー22を穿孔し、2つの容器を大気圧に開放する。次に、保持ディスク12を回転させることにより、容器内の試薬又は溶液は、遠心力の作用によって、内周側の容器から外周側の容器に移動する。このような操作を順次繰り返すことにより、所定の処理を実行することができる。
【0018】
以下全血を試料として用いた場合のウイルス核酸の抽出及び分析動作を説明する。図3に示すように、ステップaにて、操作者は、真空採血管等によって採血した全血を検査カートリッジ2に分注する。ステップbにて、検査カートリッジ2を図1の保持ディスク12に必要な数だけ装着する。ステップcにて、化学分析装置1を稼動する。それによって、全血からウイルスの遺伝子が抽出され、最終的に遺伝子が検出される。
【0019】
図4は化学分析装置の動作の概略を示す。図5は各動作の内容を示す。ステップS1にて、カートリッジカバー22を穿孔し、試料容器210、血清定量容器212、血球貯蔵容器211及び全血廃棄容器215を大気圧に接続する。ステップS2にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS100にて、全血の血清が血球より分離する。ステップS100の血清分離は、図5に示すように、2つの工程を含む。ステップS101の全血流動では、試料容器210の全血は血清定量容器212及び血球貯蔵容器211に移動する。ステップS102の血清分離では、血清と血球は、それぞれ血清定量容器212と血球貯蔵容器211に分離される。ステップS3にて、保持ディスク12の回転を停止する。ステップS150にて、血清定量容器212内の血清の一部は、表面張力による毛細管力によって、血清毛細管内を移動する。
【0020】
ステップS4にて、カートリッジカバー22を穿孔し、溶解液容器220及び反応容器320を大気圧に接続する。ステップS5にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS200にて、血清と溶解液が反応容器320にて混合する。ステップS200の混合は、図5に示すように3つの工程を含む。ステップS201の血清定量流動及び溶解液流動では、溶解液容器220の溶解液及び血清定量容器212の血清は反応容器320に移動する。ステップS202の血清及び溶解液混合では、血清と溶解液は混合する。ステップS203にて、血清と溶解液は反応する。ステップS6にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0021】
ステップS7にて、カートリッジカバー22を穿孔し、追加液容器230、溶離液回収容器390及び廃液貯蔵容器502を大気圧に接続する。ステップS8にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS300にて、核酸捕捉がなされる。ステップS300の核酸捕捉は、図5に示すように4つの工程を含む。ステップS301の追加液流動では、追加液容器230の追加液は反応容器320に移動する。ステップS302の混合液流動では、反応容器320の混合液は、追加液によって押し出され核酸捕捉部301に移動する。ステップS303の核酸捕捉部通過では、混合液は核酸捕捉部を通過する。ステップS304にて、核酸捕捉部を通過した混合液は溶離液回収容器390を経由して廃液貯蔵容器502に移動する。ステップS9にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0022】
次に、洗浄工程を説明する。洗浄工程は、第1、第2、及び第3洗浄工程を含む。これらの洗浄工程毎に、ステップS10〜ステップS12及びステップS400の動作を繰り返す。先ず、第1洗浄工程を説明する。ステップS10にて、カートリッジカバー22を穿孔し、第1洗浄液容器240を大気圧に接続する。ステップS11にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS400にて、洗浄がなされる。ステップS400の洗浄は、図5に示すように3つの工程を含む。ステップS401の洗浄液流動では、第1洗浄液容器240の洗浄液は核酸捕捉部301に移動する。ステップS402にて、第1洗浄液容器240の洗浄液は核酸捕捉部301を洗浄する。ステップS403にて、核酸捕捉部301を洗浄した洗浄液は、廃液貯蔵容器502に移動する。ステップS12にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0023】
次に、第2洗浄工程を説明する。ステップS10にて、カートリッジカバー22を穿孔し、第2洗浄液容器250を大気圧に接続する。以下は、第1洗浄工程と同様である。第3洗浄工程を説明する。ステップS10にて、カートリッジカバー22を穿孔し、第3洗浄液容器270を大気圧に接続する。ステップS11にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS400にて、洗浄がなされる。ステップS401の洗浄液流動では、第3洗浄液容器270の洗浄液は溶離液回収容器390に移動する。ステップS402にて、第3洗浄液容器270の洗浄液は溶離液回収容器390を洗浄する。ステップS403にて、溶離液回収容器390を洗浄した洗浄液は、廃液貯蔵容器502に移動する。ステップS12にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0024】
ステップS13にて、カートリッジカバー22を穿孔し、溶離液容器260及び第1検出試薬容器280を大気圧に接続する。ステップS14にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS500にて、溶離溶解がなされる。ステップS500の溶離溶解は、図5に示すように3つの工程を含む。ステップS501の溶離液流動では、溶離液容器260の溶離液は核酸捕捉部301に移動する。ステップS502にて、溶離液は核酸捕捉部301を通過し、核酸捕捉部301に捕捉された核酸を溶離する。ステップS503にて、核酸を溶離した溶離液は、第1検出試薬容器280に移動し、乾燥第1検査試薬を溶解する。ステップS15にて、保持ディスク12の回転を停止する。
【0025】
ステップS16にて、カートリッジカバー22を穿孔し、第2検出試薬容器290を大気圧に接続する。ステップS17にて、保持ディスク12を回転させる。それによって、ステップS600にて、溶解検出がなされる。ステップS600の溶解検出は、図5に示すように3つの工程を含む。ステップS601の検出液流動では、第1検出試薬容器280の溶液は第2検出試薬容器290に移動する。ステップS602にて、第2検出試薬容器290内の第2検出試薬は溶解し、保持される。ステップS603にて、第2検出試薬容器290は加温される。第2検出試薬容器290内の核酸を検査装置によって検査する。以下に、化学分析装置の動作の詳細を説明する。
【0026】
図6を参照して説明する。溶解液容器220には血清中のウイルスの膜蛋白を溶解して核酸を溶出させるための溶解液621が分注されている。溶解液621は、血清中のウイルスや細菌の膜であるタンパク質を溶解し、さらに核酸捕捉部301への核酸の吸着を促進させる。溶解液621は、例えば、DNAの溶出及び吸着には塩酸グアニジン、RNAの溶出及び吸着にはグアニジンチオシアネートであってよい。
【0027】
追加液容器230には、溶解液を補充するための追加液631が分注されている。追加液631は、例えば、溶解液621そのものであってよい。第1洗浄液容器240には、核酸捕捉部301に付着した蛋白等の不要成分を洗浄するための第1洗浄液641が分注されている。第1洗浄液641は、例えば溶解液621或いは溶解液621の塩濃度を低減した液であってよい。第2洗浄液容器250には、核酸捕捉部301に付着した塩等の不要成分を洗浄するための第2洗浄液651が分注されている。第2洗浄液651は、例えばエタノール或いはエタノール水溶液であってよい。溶離液容器260には核酸捕捉部301から核酸を溶離するための溶離液661が分注されている。溶離液661は、滅菌水又はpHを7から9に調整した水溶液であってよい。
【0028】
第3洗浄液容器270には、溶離液回収容器390に付着した塩等の成分を洗浄するための第3洗浄液671が分注されている。第3洗浄液671は、例えば滅菌水又はpHを7から9に調整した水溶液であってよい。
【0029】
第1検出試薬容器280および第2検出試薬容器290には、それぞれ乾燥状態の乾燥第1検出試薬681および乾燥第2検出試薬691が保存されている。乾燥第1検出試薬は、例えば、プライマー、プローブ、デオキシヌクレオシド三リン酸であり、乾燥第2検出試薬は酵素であってよい。2つの検出試薬に含まれる全ての試薬成分を一種類の乾燥試薬として第2検出試薬容器290に保持してもよい。その場合には第1検出試薬容器280は不要となる。
【0030】
検出試薬を乾燥状態にして保存することで、長期間かつ常温あるいは冷蔵での保存が可能となる。しかし、乾燥状態での保存が不要な場合には、溶離液661に予め検出試薬を溶解しておけばよい。
【0031】
試薬容器220、230、240、250、260、270、280、290の内周端には、通気孔222、232、242、252、262、272、282、292が設けられている。全血廃棄容器215の内周端には、空気流路216を介して通気孔217が設けられている。反応容器320、溶離液回収容器390、廃液貯蔵容器502の内周端には、通気孔323、394、503が設けられている。これらの通気孔の上側にて、カバーを穿孔することにより、これらの容器は大気圧に接続される。
【0032】
試料容器210には試料注入口201が設けられている。操作者は、検査カートリッジ2の試料注入口201の上側にてカートリッジカバー22を穿孔し、真空採血管等で採血した全血610を試料注入口201より試料容器210に注入する。
【0033】
先ず、ステップS100の血清分離処理について説明する。穿孔機13によって全血廃棄容器通気孔217の上側にてカバーを穿孔する。それによって、全血廃棄容器215は、全血廃棄容器通気孔217を介して大気圧に接続される。尚、試料容器210は試料注入口201を介して大気圧に接続されている。
【0034】
モータ11を駆動し、保持ディスク12を回転させる。図7に示すように、試料容器210内の全血は、遠心力の作用により、外周方向に移動し、血球貯蔵容器211および血清定量容器212に流れる。
【0035】
血清定量容器212と全血廃棄容器215の間には、血清定量容器212の内周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を有するオーバーフロー流路が設けられている。オーバーフロー流路は、血清定量容器212から折り返し部までの断面積が小さいオーバーフロー細管流路213と折り返し部から全血廃棄容器215までの断面積が大きいオーバーフロー太管流路214を含む。即ち、折り返し部にて、オーバーフロー細管流路213とオーバーフロー太管流路214は接続されている。従って、血球貯蔵容器211および血清定量容器212が全血によって満たされると、全血は、オーバーフロー流路を介して、全血廃棄容器215に流れる。
【0036】
保持ディスク12を回転し続けると、血球612は外周側の血球貯蔵容器211へ移動し血清613は内周側の血清定量容器212に残る。即ち、全血610は血球と血清に分離する。所定の時間回転させ血清遠心分離動作が終了すると保持ディスク12の回転を停止させる。
【0037】
図8は、全血610が血球と血清に分離し、血球612は外周側の血球貯蔵容器211へ移動し、血清613は内周側の血清定量容器212に残った状態を示す。血清定量容器212と血球貯蔵容器211の間に堰が設けられており、血球貯蔵容器211内の血球612が血清定量容器212内に戻ることはできない。
【0038】
ステップS150の血清毛細管流動を説明する。血清定量容器212と混合容器310の間には、血清定量容器212の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を有する血清毛細管218が設けられている。血清定量容器212内の血清613の一部は、表面張力による毛細管力によって、血清毛細管218内を移動し、混合容器310と血清毛細管218の境界である混合容器入り口311に達する。しかしながら、混合容器310では、断面積が拡大するので、毛細管力は減少し、血清がそれ以上移動することはない。同様に、血清定量容器212内の血清613の一部は、表面張力による毛細管力によって、オーバーフロー細管流路213内を移動するが、オーバーフロー太管流路214では、断面積が拡大するので、毛細管力は減少し、血清がそれ以上移動することはない。半径方向位置401は、血清定量容器212、及び、オーバーフロー細管流路213における液面レベルを示す。
【0039】
本例では、血清定量容器212は所定量の血清を定量する機能を有する。例えば、血球貯蔵容器212の容積が250マイクロリットル、必要血清量が200マイクロリットルであると仮定する。試料容器210に500マイクロリットルの全血を分注すれば、全血廃棄容器215へ50マイクロリットルの全血がオーバーフローし、残りの450マイクロリットルの全血が血清と血球に分離する。このうち200マイクロリットルの血清が混合容器310へ流出する。本例では、450マイクロリットルの全血より、200マイクロリットル以上の血清を得ることができる。血清の比率が小さい全血の場合には、血球貯蔵容器の容積を大きくし全血試料を多くすればよい。
【0040】
試薬容器220、230、240、250、260、270の外周側には、出口流路221、231、241、251、261、271が設けられている。出口流路には、試薬容器の外周端から始まり内周側に折り返した後に外周側に延びる折り返し部223、233、243、253、263、273が形成されている。
【0041】
検査カートリッジ2の上面にはカートリッジカバー22が装着されているから、通気孔の位置にてカートリッジカバー22に穿孔しない限り、試薬容器220、230、240、250、260、270、及び、出口流路221、231、241、251、261、271は、密閉され、そこに空気が流入することはない。しかしながら、これらの試薬容器、及び、出口流路には、カートリッジカバーを装着したときに封入された微量の空気が存在する。遠心力が作用すると、各試薬は試薬容器の外周側に移動し、出口流路内に押し込まれるが、試薬容器内に初期に封入された微量の空気が膨張し、試薬容器内に負圧が生成される。この負圧が遠心力と釣り合って試薬は試薬容器より流出することができない。
【0042】
回転数が増加し遠心力が大きくなると、試薬容器内の圧力は更に低下し、試薬の飽和蒸気圧以下になると気泡が発生する。それによって、負圧が減少し、遠心力との釣り合いが破れる。しかしながら、本例では、各試薬容器の出口流路221、231、241、251、261、271に、内周側に戻る折り返し部223、233、243、253、263、273が設けられているから、遠心力が大きくなっても、試薬容器内の負圧の減少を抑制し、試薬が出口流路から流出することが防止される。
【0043】
以下、穿孔機13によって、各試薬容器の通気孔の位置にて、カートリッジカバー22に穿孔し、各試薬容器を大気圧に接続する。モータ11によって保持ディスクを回転させることにより、遠心力によって、各試薬を遠心力で流動させる。
【0044】
次にステップS200の混合処理を説明する。穿孔機13によって、溶解液容器220の通気孔222の位置にて、カートリッジカバー22に穿孔する。反応容器320の通気孔323の位置にて、カートリッジカバー22に穿孔する。それによって、溶解液容器220及び反応容器320は大気圧に接続される。
【0045】
モータ11を駆動し、保持ディスク12を回転させる。溶解液容器220内の溶解液621は、遠心力の作用で外周側に流動し、折り返し部を有する溶解液容器出口流路221、混合容器310、及び、流路拡大部312を経由して、反応容器320に移動する。
【0046】
図9に示すように、溶解液容器220の出口の半径方向位置401は、混合容器入り口311の半径方向位置402より内周側にあるから、サイホン効果により、溶解液容器220内の全ての溶解液621は混合容器310に流出する。
【0047】
図10に示すように、血清定量容器212と血清毛細管218の接続位置を通る半径方向位置403は、混合容器入り口311の半径方向位置402より内周側にある。従って、サイホン効果により血清定量容器212内の血清のうち半径方向位置403より内周側にある血清は全て混合容器310に流れ出る。混合容器310に流出した溶解液及び血清は、流路拡大部312を経由して反応容器320に移動する。反応容器320では、血清と溶解液621が混合され、反応する。
【0048】
混合容器310は溶解液と血清を混合するための空間であるが、そこに血清と溶解液の混合を促進させる部材を設けてもよい。混合を促進させる部材には、樹脂、ガラス、紙等からなる多孔性フィルタ、繊維、エッチングや機械加工等で製作したシリコンや金属等の突起物などがある。
【0049】
反応容器320と核酸捕捉部301の間には、反応容器320の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を有する反応容器出口流路321が設けられている。回転中、反応容器320内の液面レベルは、反応容器出口流路321の折り返し部の最内周端の半径方向位置404よりも外周側にある。従って、反応容器320内の混合液は、反応容器出口流路321の折り返し部を越えて核酸捕捉部301へ移動することはない。回転中、混合液は反応容器320に保持される。
【0050】
所定の時間回転させ、血清と溶解液の混合処理が終了するとモータ11を停止し、保持ディスク12の回転を停止させる。
【0051】
尚、流路拡大部312は、保持ディスクの回転が停止したとき、反応容器320内の混合液が毛細管力によって、混合容器310に流れ出ることを防止するために設けた。即ち、反応容器320内の混合液が毛細管力によって、混合容器310方向に流れるとき、流路拡大部312によって毛細管力が減少し、それ以上、混合液が進むことはない。
【0052】
次に、スタップS300の核酸捕捉処理を説明する。図10に示すように、追加液容器230と反応容器320の間には、追加液容器230の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を有する追加液容器出口流路231が設けられている。
【0053】
穿孔機13によって、追加液容器230の通気孔232の位置にて、カートリッジカバー22に穿孔し、追加液容器230を大気圧に接続する。溶離液回収容器390の通気孔394の位置にて、カートリッジカバー22に穿孔し、溶離液回収容器390を大気圧に接続する。廃液貯蔵容器502の通気孔503の位置にて、カートリッジカバー22に穿孔し、廃液貯蔵容器502を大気圧に接続する。
【0054】
モータ11を駆動し、保持ディスク12を回転させる。遠心力の作用により、追加液容器230内の追加液631は追加液出口流路231を経て、反応容器320に移動する。それによって、反応容器320内の混合液の液面レベルは内周方向に移動する。図11に示すように、混合液の液面が反応容器出口流路321の最内周部の位置404に達すると、混合液は反応容器出口流路321の折り返し部を越えて流れ出し、核酸捕捉部301へ流れ込む。
【0055】
血清と溶解液の混合液の壁面に対する濡れ性がよい場合、遠心力が作用しないときでも、毛細管現象によって血清反応容器出口流路421内を混合液が逆流する場合がある。このような場合には、追加液631を必要としない。
【0056】
核酸捕捉部301に導かれた混合液は、遠心力の作用によって外周方向に移動し、核酸捕捉部301を通過する。混合液が核酸捕捉部を通過すると、混合液中の核酸は核酸捕捉部301に吸着し、残りの廃液は溶離液回収容器390へ流れ込む。
【0057】
溶離液回収容器390と廃液貯蔵容器502の間には、溶離液回収容器390の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部393を有する溶離液回収容器出口流路391が設けられている。第3洗浄液容器270と溶離液回収容器出口流路391の間には、第3洗浄液容器270の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を有する第3洗浄液容器出口流路271が設けられている。
【0058】
溶離液回収容器390と第1検出試薬容器280の間には、溶離液回収容器390の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部283を有する第1検出液流入流路281が設けられている。第1検出試薬容器280と第2検出試薬容器290の間には、第1検出試薬容器280の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部293を有する第1検出液流入流路291が設けられている。
【0059】
溶離液回収容器390及び廃液貯蔵容器502は大気圧に接続されているが、第3洗浄液容器270、第1検出試薬容器280及び第2検出試薬容器290は大気圧に接続されていない。
【0060】
溶離液回収容器390の容積は、反応容器320の混合液の体積より小さい。従って、溶離液回収容器390に流れ込んだ廃液は、溶離液回収容器出口流路391に流れ込み、折り返し部393を越えて廃液貯蔵容器502に流れる。全ての廃液が廃液貯蔵容器502へ移動すると、次の洗浄工程を実行する。
【0061】
ステップS400の洗浄工程を説明する。図12を参照して説明する。洗浄工程は第1、第2及び第3洗浄工程を含む。先ず、第1及び第2洗浄工程を説明する。モータ11を停止し、穿孔機13によって第1洗浄液容器240の通気孔242の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、第1洗浄液容器240は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第1洗浄液は第1洗浄液容器240から第1洗浄液容器出口流路241を経て、核酸捕捉部301に流れ込み、核酸捕捉部301に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する。洗浄後の廃液は、溶離液回収容器出口流路391を経て、廃液貯蔵容器502へと流出する。
【0062】
モータ11を停止し、穿孔機13によって第2洗浄液容器250の通気孔252の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、第2洗浄液容器250は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第2洗浄液は第2洗浄液容器250から第2洗浄液容器出口流路251を経て、核酸捕捉部301に流れ込み、核酸捕捉部301に付着した塩等の不要成分を洗浄する。洗浄後の廃液は、溶離液回収容器出口流路391を経て、廃液貯蔵容器502へと流出する。
【0063】
第3洗浄工程を説明する。モータ11を停止し、穿孔機13によって第3洗浄液容器270の通気孔272の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、第3洗浄液容器270は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第3洗浄液は第3洗浄液容器270から第3洗浄液容器出口流路271を外周方向に移動し、溶離液回収容器出口流路391を満たし、更に、溶離液回収容器390内に逆流する。第3洗浄液容器270内の第3洗浄液が全て流出すると、溶離液回収容器390内の第3洗浄液の液面レベルと溶離液回収容器出口流路391内の液面レベルは半径方向位置405になる。溶離液回収容器390内は逆流した第3洗浄液によって洗浄される。洗浄後の廃液は、溶離液回収容器出口流路391を経て、廃液貯蔵容器502へと流出する。洗浄工程の次に、核酸の溶離工程を実行する。
【0064】
ステップS500の溶離溶解工程を説明する。図13に示すように、モータ11を停止し、穿孔機13によって溶離液容器260の通気孔262の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、溶離液容器260は大気圧に接続される。第1検出試薬容器280の通気孔282の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、第1検出試薬容器280は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、溶離液661は溶離液容器260から出口流路261を経て核酸捕捉部301に流れ込む。核酸捕捉部301にて、捕捉された核酸は、溶離液によって溶離される。溶離した核酸を含む溶離液は、核酸捕捉部301から溶離液回収容器390に流れ込む。
【0065】
第1検出液流入流路281の折り返し部283の最内周部の半径方向位置406は、溶離液回収容器出口流路391の最内周部の半径方向位置405より外周側にあるため、核酸を溶離した溶離液は第1検出液流入流路281を通って第1検出試薬容器280に流入し、乾燥第1検出試薬を溶解する。
【0066】
このとき、第2検出試薬容器290は未だ大気圧に接続されていないので、第1検出液試薬容器280に流入した溶離液は、第2検出試薬容器290へ流出することはできない。即ち、第1検出容器280内の溶離液は、その液面レベルが第2検出液流入流路291の折り返し部293の最内周部の半径方向位置407より内周側にあっても、第1検出試薬容器280内に保持される。
【0067】
最後にステップS600の溶解検出を説明する。図14に示すように、モータ11を停止し、第2検出試薬容器290の通気孔292の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、第2検出試薬容器290は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第1検出試薬容器280内の液が第2検出液流入流路291を経て第2検出試薬容器290に流入し乾燥第2検出試薬を溶解する。
【0068】
増幅検出方法に応じて、加温装置14を用いて、第1検出試薬容器280あるいは第2検出試薬容器290の上から光を照射して加温する。次に検出装置15を第2検出試薬容器290の上に移動させ、例えば蛍光発光量を検出する。
【0069】
本発明によれば、試薬の分注操作が不要となり作業不備による試薬の汚染が起きることがない。また各試薬の流動を制御するためのバルブを流路途中に設ける必要がなく、流路途中でのバルブ部での液残りは発生せず、前工程での試薬による汚染を防止でき、液体試料中の核酸等の特定成分を高純度に抽出でき、高精度に分析できる。
【0070】
図15は本発明による検査カートリッジの他の例を示す。図6〜図14に示した第1の例と比較すると、本例では、第3洗浄液容器270の代わりに、追い出し液731を収納する追い出し液容器330が設けられている点が異なる。追い出し液731は水より比重が大きく水に溶けないシリコンオイル等の液体である。更に、第1検出試薬容器280及び第2検出試薬容器290の代わりに、乾燥第1検出試薬681を保存する検出容器340、乾燥第2検出試薬691を収納する第2検出試薬容器350、及び、第2検出試薬溶解試薬761を収納する第2検出試薬溶解試薬容器360が設けられている点が異なる。
【0071】
追い出し液容器330と溶離液回収容器390の間には、追い出し液容器330の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部333を有し、溶離液回収容器390の内周端にて終わる追い出し液容器出口流路331が設けられている。溶離液回収容器390と検出容器340の間には、溶離液回収容器390の内周端近傍より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部343を有し、検出容器340の内周端にて終わる溶離液流出流路341が設けられている。第2検出液溶解試薬容器360と乾燥第2試薬容器350の間には、第2検出液溶解試薬容器360の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部363を有する第2検出液溶解試薬流路361が設けられている。乾燥第2試薬容器350と検出容器340の間には、乾燥第2試薬容器350の外周端より始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部353を有する第2試薬流出流路351が設けられている。溶離液回収容器390の外周側に接続されている流路は折り返し部393を有する溶離液回収容器出口流路391のみである。
【0072】
第2洗浄工程までの動作は、図6〜図14に示した第1の例の場合と同様である。溶離液流出流路341の折り返し部343の最内周部の半径方向位置408は、溶離液回収容器出口流路391の折り返し部393の最内周部の半径方向位置405より内周側にあるため、溶離液回収容器390に流入した第1及び第2洗浄液は溶離液回収容器出口流路391を経て廃液貯蔵容器502に流出する。
【0073】
本例では、第3洗浄工程の代わりに、追い出し液731の充填工程を行う。モータ11を停止し、穿孔機13によって追い出し液容器330の通気孔332の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、追い出し液容器330は大気圧に接続される。溶離液回収容器390は既に大気圧に接続されている。
【0074】
図16に示すように、モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、追い出し液731は追い出し液容器330から出口流路331を経て溶離液回収容器390に流れ込む。溶離液回収容器390と溶離液流出流路341の接続部は、溶離液回収容器出口流路391の折り返し部393の最内周部の半径方向位置405より外周側にある。追い出し液731の液量は、それが溶離液回収容器390に流入した時に液面レベルが丁度この接続部の位置になるように、設定されている。従って、溶離液回収容器390に流入した追い出し液731は、溶離液回収容器390に留まり、溶離液回収容器出口流路391を介して流出することはない。
【0075】
ステップS500の溶離工程を説明する。モータ11を停止し、穿孔機13によって溶離液容器260の通気稿262の位置にて、カートリッジカバー22を穿孔する。それによって、溶離液容器260は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、溶離液661は溶離液容器260から出口流路261を経て核酸捕捉部301に流れ込む。核酸捕捉部301にて、捕捉された核酸は、溶離液によって溶離される。溶離した核酸を含む溶離液は、核酸捕捉部301から溶離液回収容器390に流れ込む。
【0076】
溶離液回収容器390には、既に、水より比重が大きく水に溶けない追い出し液731が充填されている。従って、図17に示すように、溶離液回収容器390に流れ込んだ溶離液は、追い出し液731の上を流れ、溶離液流出流路341を介して、検出容器340に流出し、乾燥第1検出試薬681を溶解する。
【0077】
モータ11を停止し、第2検出試薬溶解試薬容器360の通気孔362を穿孔する。それによって、第2検出試薬溶解試薬容器360は大気圧に接続される。モータ11を回転させると、遠心力の作用によって、第2検出試薬溶解試薬761は第2検出試薬溶解試薬容器360から乾燥第2試薬容器350に流出し、乾燥第2試薬691を溶解する。第2検出試薬溶解試薬761によって溶解された第2試薬691は、検出容器340に流入し、溶解した第1試薬と混合する。
【0078】
増幅検出方法に応じて、加温装置14を用いて、検出容器340の上から光を照射して加温する。次に検出装置15を検出容器340の上に移動させ、例えば蛍光発光量を検出する。
【0079】
本発明によれば、試薬の分注操作が不要となり作業不備による試薬の汚染の心配がない。また各試薬の流動を制御するためのバルブを流路途中に設ける必要がなく、流路途中でのバルブ部での液残りは発生せず、前工程での試薬による汚染を防止でき、液体試料中の核酸等の特定成分を高純度に抽出でき、高精度に分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による化学分析装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明による検査カートリッジの外観を示す斜視図である。
【図3】本発明による化学分析装置を用いて全血からウイルス核酸の抽出処理を行う場合の操作手順の概略を説明するための説明図である。
【図4】本発明による化学分析装置を用いて全血からウイルス核酸の抽出処理を行う場合の操作手順を説明するための説明図である。
【図5】本発明による化学分析装置を用いて全血からウイルス核酸の抽出処理を行う場合の手順の詳細を説明するための説明図である。
【図6】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図7】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図8】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図9】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図10】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図11】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図12】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図13】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図14】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図15】本発明による検査カートリッジの動作説明図である。
【図16】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部の構成図である。
【図17】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部のフィルタフォルダの構成図である。
【図18】本発明による検査カートリッジの核酸捕捉部のフィルタフォルダの構成図である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・化学分析装置、2・・・検査カートリッジ、11・・・モータ、12・・・保持ディスク、13・・・穿孔機、14・・・加温装置、15・・・検出装置、
210・・・試料容器、211・・・血球貯蔵容器、212・・・血清定量容器、215・・・全血廃棄容器、220・・・溶解液容器、230・・・追加液容器、240・・・第1洗浄液容器、250・・・第2洗浄液容器、260・・・溶離液容器、270・・・第3洗浄液容器、280・・・第1検出試薬容器、290・・・第2検出試薬容器、301・・・核酸捕捉部、310・・・混合容器、320・・・反応容器、330・・・追い出し液容器、340・・・検出容器、350・・・第2検出試薬容器、360・・・第2検出試薬溶解試薬容器、390・・・溶離液回収容器、502・・・廃液貯蔵容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、
上記基板には、試料を収容する試料容器と、上記試料に含まれる特定の物質を捕捉するための捕捉部と、上記捕捉部に捕捉された上記物質を溶離するための溶離液を収容する溶離液容器と、上記捕捉部から排出された上記物質を含む溶離液を収容する溶離液回収容器と、上記物質を検出するために上記溶離液回収容器からの上記物質を含む溶離液を保持するための検出容器と、上記捕捉部及び上記溶離液回収容器を経由して排出された溶液を回収する廃液貯蔵容器と、が設けられ、
内周側の上記溶離液回収容器と外周側の上記廃液貯蔵容器の間には、上記溶離液回収容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記廃液貯蔵容器の内周側端にて終わる廃液流出流路が設けられ、
内周側の上記溶離液回収容器と外周側の上記検出容器の間には、上記溶離液回収容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記検出容器の内周側端にて終わる溶離液流出流路が設けられていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の化学分析装置において、上記廃液流出流路の折り返し部の最内周位置は上記溶離液流出流路の最内周位置より内周側に配置され、それによって上記溶離液容器からの溶離液は上記捕捉部を通過してから上記溶離液回収容器に導かれ、更に上記溶離液流出流路を経由して上記検出容器に導かれることを特徴とする化学分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の化学分析装置において、上記基板には、上記捕捉部を洗浄するための洗浄液を収容する捕捉部洗浄液容器が設けられ、上記検出容器を大気圧に接続しないで密閉することによって、上記捕捉部洗浄液容器からの洗浄液を上記捕捉部、上記溶離液回収容器、及び上記廃液流出流路を経由して上記廃液貯蔵容器に導くように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の化学分析装置において、上記基板には、上記溶離液回収容器を洗浄するための洗浄液を収容する溶離液回収容器洗浄液容器が設けられ、上記検出容器を大気圧に接続しないで密閉することによって、上記溶離液回収容器洗浄液容器からの洗浄液を上記溶離液回収容器に導き、更に、上記廃液流出流路を経由して上記廃液貯蔵容器に導くように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の化学分析装置において、上記検出容器には乾燥された検査試薬が収容され、該検出容器に導入された溶離液によって上記検査試薬が溶解されるように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の化学分析装置において、上記検出容器の外周側には乾燥された第2の検査試薬を収容する第2の検出容器が設けられ、上記検出容器と上記第2の検出容器の間には、上記検出容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記第2の検出容器の内周側端にて終わる検査試薬流出流路が設けられ、上記検出容器からの上記検査試薬を溶解した溶離液は上記検査試薬流出流路を経由して上記第2の検出容器に導かれ、上記第2の検出容器に導入された溶離液によって上記第2の検査試薬が溶解されるように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項7】
中心を通る回転軸線周りに回転可能な保持ディスクと、該保持ディスクに保持された取り外しが可能な検査カートリッジと、を有し、上記検査カートリッジは、凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記保持ディスクの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析装置において、
上記基板には、試料を収容する試料容器と、上記試料に含まれる特定の物質を捕捉するための捕捉部と、上記捕捉部に捕捉された上記物質を溶離するための溶離液を収容する溶離液容器と、上記溶離液より比重が大きく且つ上記溶離液に溶解しない追い出し液を収容する追い出し液容器と、上記捕捉部から排出された上記物質を含む溶離液を収容する溶離液回収容器と、上記物質を検出するために上記溶離液回収容器からの上記物質を含む溶離液を保持するための検出容器と、上記捕捉部及び上記溶離液回収容器を経由して排出された溶液を回収する廃液貯蔵容器と、が設けられ、
内周側の上記溶離液回収容器と外周側の上記廃液貯蔵容器の間には、上記溶離液回収容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記廃液貯蔵容器の内周側端にて終わる廃液流出流路が設けられ、
上記溶離液回収容器と上記検出容器の間には、上記溶離液回収容器から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記検出容器の内周側端にて終わる溶離液流出流路が設けられ、
上記追い出し液容器からの追い出し液を上記溶離液回収容器に導き、そこに保持することによって、上記捕捉部から排出され上記溶離液回収容器に導かれた上記物質を含む溶離液は、上記溶離液回収容器内の上記追い出し液の上を通り、上記溶離液流出流路を経由して上記検出容器に導かれることを特徴とする化学分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の化学分析装置において、上記溶離液回収容器に導かれた上記追い出し液の液面レベルは、上記廃液流出流路の折り返し部の最内周位置より外周側にあることを特徴とする化学分析装置。
【請求項9】
請求項7に記載の化学分析装置において、上記廃液流出流路の折り返し部の最内周位置は上記溶離液流出流路の最内周位置より外周側に配置され、それによって上記溶離液回収容器に上記追い出し液が保持されていないとき、上記捕捉部及び上記溶離液回収容器を経由して排出された溶液は上記廃液貯蔵容器によって回収されることを特徴とする化学分析装置。
【請求項10】
請求項7に記載の化学分析装置において、上記検出容器には乾燥された検査試薬が収容され、該検出容器に導入された溶離液によって上記検査試薬が溶解されるように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項11】
請求項7に記載の化学分析装置において、上記検出容器の内周側には乾燥された第2の検査試薬を収容する第2の検出容器が設けられ、該第2の検出容器の内周側には上記第2の検出試薬を溶解するための溶解試薬を収容する溶解試薬容器が設けられ、上記溶解試薬容器からの溶解液は流路を経由して上記第2の検出容器に導かれて上記第2の検査試薬を溶解し、該第2の検査試薬を溶解した溶解液は流路を経由して上記検出容器に導かれるように構成されていることを特徴とする化学分析装置。
【請求項12】
請求項1又は7に記載の化学分析装置において、上記検出容器内の溶液を加温するための加温装置と上記検出容器内の溶液より所定の物質を検出するための検出装置とを有することを特徴とする化学分析装置。
【請求項13】
凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記基板に垂直な回転軸線周りの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析カートリッジにおいて、
上記基板には、試料を収容する試料容器と、上記試料に含まれる特定の物質を捕捉するための捕捉部と、上記捕捉部に捕捉された上記物質を溶離するための溶離液を収容する溶離液容器と、上記捕捉部から排出された上記物質を含む溶離液を収容する溶離液回収容器と、上記物質を検出するために上記溶離液回収容器からの上記物質を含む溶離液を保持するための検出容器と、上記捕捉部及び上記溶離液回収容器を経由して排出された溶液を回収する廃液貯蔵容器と、が設けられ、
内周側の上記溶離液回収容器と外周側の上記廃液貯蔵容器の間には、上記溶離液回収容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記廃液貯蔵容器の内周側端にて終わる廃液流出流路が設けられ、
内周側の上記溶離液回収容器と外周側の上記検出容器の間には、上記溶離液回収容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記検出容器の内周側端にて終わる溶離液流出流路が設けられていることを特徴とする化学分析カートリッジ。
【請求項14】
凹部によって形成された容器及び流路を有する基板と、該容器及び流路を覆うカバーと、を有し、上記基板に垂直な回転軸線周りの回転によって生成される遠心力を利用して、上記回転軸線に対して内周側の容器から上記流路を経由して上記回転軸線に対して外周側の容器へ溶液を移動させるように構成された化学分析カートリッジにおいて、
上記基板には、試料を収容する試料容器と、上記試料に含まれる特定の物質を捕捉するための捕捉部と、上記捕捉部に捕捉された上記物質を溶離するための溶離液を収容する溶離液容器と、上記溶離液より比重が大きく且つ上記溶離液に溶解しない追い出し液を収容する、上記捕捉部から排出された上記物質を含む溶離液を収容する溶離液回収容器と、上記物質を検出するために上記溶離液回収容器からの上記物質を含む溶離液を保持するための検出容器と、上記捕捉部及び上記溶離液回収容器を経由して排出された溶液を回収する廃液貯蔵容器と、が設けられ、
内周側の上記溶離液回収容器と外周側の上記廃液貯蔵容器の間には、上記溶離液回収容器の外周端から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記廃液貯蔵容器の内周側端にて終わる廃液流出流路が設けられ、
上記溶離液回収容器と上記検出容器の間には、上記溶離液回収容器から始まり、内周方向に延びてから再び外周方向に延びる折り返し部を経由して、上記検出容器の内周側端にて終わる溶離液流出流路が設けられ、
上記追い出し液容器からの追い出し液を上記溶離液回収容器に導き、そこに保持することによって、上記捕捉部から排出され上記溶離液回収容器に導かれた上記物質を含む溶離液は、上記溶離液回収容器内の上記追い出し液の上を通り、上記溶離液流出流路を経由して上記検出容器に導かれることを特徴とする化学分析カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−189374(P2006−189374A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2647(P2005−2647)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】