説明

化粧料又は皮膚外用剤

【課題】米ぬか油脂肪酸フィトステリルを可溶化し、外観の透明性や経時安定性に優れ、さらに保湿感やべたつきのない使用感に優れる化粧料又は皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】成分(A)米ぬか油脂肪酸フィトステリルを成分(B)ピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤で可溶化したことを特徴とする化粧料又は皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料又は皮膚外用剤に関し、さらに詳細には、米ぬか油脂肪酸フィトステリルをピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤を用いて可溶化することで、外観の透明性や経時安定性に優れ、さらに保湿感やべたつきのない使用感に優れる可溶化型の化粧料又は皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米ぬかから得られる植物ステロールエステルは、皮膚の角質バリアを強化し、皮膚をしっとりしなやかにし、柔軟性のある皮膚を保つことで、皮膚の乾燥を防ぐことが知られており、化粧料及び皮膚用医薬品に広く使われている。また、その性質は水やエタノールに不溶である。最近の研究によると、ステロールエステル(好ましくは植物ステロールエステル)は、皮膚においてインターロイキンレベルを低下することで炎症を抑制する効果を及ぼすことが知られており、また、ヘアケア製品に配合すると、うるおい感やしっとり感を付与する効果、特にダメージケア効果を発揮することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、水(溶媒)に溶解しない物質(不溶性物質)を透明且つ均一に溶解させる可溶化の技術は、化粧料、医薬品、食品等の分野において広く用いられてきた。一般に、不溶性物質の可溶化には界面活性剤が用いられ、界面活性剤濃度が限界ミセル濃度を超えると、不溶性物質がミセル中に取り込まれて溶解することで可溶化が成る。系をこのような可溶化状態にすることで、組成物に熱力学的な安定性を付与するができる。
【0004】
可溶化の技術は、特に化粧料の分野では非常に重要な技術であり、化粧水の製造などに応用されている。不溶性物質を可溶化する方法としては、水中油型の乳化剤でHLB値13以上の可溶化剤を溶解した水に不溶性物質を加え、ホモミキサー又はホモジナイザー等の強力な攪拌装置で不溶性物質を機械的に微細に粉砕することにより可溶化することが一般的であった(特許文献2,3参照)。また、ポリオキシエチレン硬化ひまし油を活性剤として用い、多価アルコールやエタノールを可溶化補助溶媒として用いて油分を可溶化したものも報告されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−176422号公報
【特許文献2】特開2003−147201号公報
【特許文献3】特開平11−9187号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】油化学 第15巻 第6号(1966) P.23−33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、可溶化に用いる活性剤は、不溶性物質に応じた構造や配合量、さらにはHLBが大きく依存することから、特定の不溶性物質に対しては可溶化能を発揮するが、不溶性物質の種類を代えると可溶化能を発揮できなくなることが多く、数々の検討がされていた。
【0008】
例えば非特許文献1の技術では、エタノール不溶性物質は可溶化することができず、エタノール不溶性物質を可溶化するには更なる検討が必要であった。
また、特許文献2、3記載の技術で示したホモジナイザーのような機械的、物理的な粉砕方法は効率が悪く、微粒子化するのに数分から数十分も時間を要し、粒子の大きさも大小が混ざり一定でなかった。さらに、長期間経過後には水と不溶性物質が分離する場合があり、安定で透明な可溶化型の化粧料又は皮膚外用剤を得るのは困難であった。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、従来の可溶化技術では可溶化することが困難であった米ぬか油脂肪酸フィトステリルを可溶化させ、良好な保湿性を有すると共に、べたつきのないみずみずしい使用感を与え、外観の透明性や経時安定性に優れる可溶化型の化粧料又は皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる状況に鑑みて、本発明者らは水やエタノールに不溶である米ぬか油脂肪酸フィトステリルの新規可溶化技術を求めて鋭意研究を重ねた結果、米ぬか油脂肪酸フィトステリルとピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤を混合均一化して配合することで、可溶化できることを見出し、更なる検討を行い、本発明を完成させるに至った。
【0011】
また、米ぬか油脂肪酸フィトステリル及びピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤はそれぞれ単独で加温しても粘度が高く、製造時のハンドリングが悪いものであるが、両者を混合して加温することで粘度が低下し、それによって製造時のハンドリングが良好になり、さらには均一な可溶化型の化粧料や皮膚外用剤を製造することを可能にした。
【0012】
そのうえ、エタノールに不溶で可溶化が困難であった他の油剤においても、米ぬか油脂肪酸フィトステリル及びピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤と組み合わせることで、容易に可溶化できることを見出した。なお、本発明において「不溶」とは、25℃の溶媒100gに対して溶解量が0.1g以下であることを意味する。以下、本発明について、実施の形態を中心に更に詳細に説明を加える。
【0013】
すなわち、本発明は、成分(A)米ぬか油脂肪酸フィトステリルを成分(B)ピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤で可溶化したことを特徴とする化粧料又は皮膚外用剤を提供するものである。
【0014】
また、成分(A)と成分(B)の質量比が1:1〜1:50であることを特徴とする前記化粧料又は皮膚外用剤を提供するものである。
【0015】
さらに成分(C)としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする前記化粧料又は皮膚外用剤を提供するものである。
【0016】
成分(A)と成分(C)の質量比が1:2〜1:5であることを特徴とする前記化粧料又は皮膚外用剤を提供するものである。
【0017】
成分(B)と成分(C)の質量比が1:1〜20:1であることを特徴とする前記化粧料又は皮膚外用剤を提供するものである。
【0018】
さらに成分(D)としてエタノール不溶性油剤を含有することを特徴とする前記化粧料又は皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の化粧料又は皮膚外用剤は、米ぬか油脂肪酸フィトステリルを多量且つ安定に可溶化させ、外観の透明性や経時安定性に優れ、さらに保湿感やべたつきのない使用感に優れる可溶化型の化粧料又は皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に用いられる成分(A)の米ぬか油脂肪酸フィトステリルは、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)でPhytosteryl Rice Branateとして表され、植物ステロール及びトリテルペンアルコールと米ぬか油脂肪酸のエステル体であり、米胚芽及び米ぬかから抽出することができる。米ぬか油脂肪酸とは米ぬかから抽出される脂肪酸であり、主にミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸等が挙げられる。成分(A)の具体例として、ライステロールエステル(築野食品工業株式会社)等が挙げられる。
【0021】
本発明における成分(A)の含有量は、化粧料又は皮膚外用剤全体に対して、0.001〜10質量%(以下、質量%を単に「%」と略す)が好ましく、特に好ましくは0.1〜5%である。この範囲であれば、良好な保湿性を有すると共に、べたつきのない感触を与え、外観の透明性に優れたものとなる。
【0022】
本発明に用いられる成分(B)のピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤はポリオキシエチレン硬化ひまし油とピログルタミン酸及び脂肪酸とのジエステル化合物であり、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が例示され、市販品としてPYROTER CPI−30、CPI−40、CPI−60(日本エマルジョン社)等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明における成分(B)の含有量は、化粧料又は皮膚外用剤全体に対して0.001〜20%が好ましく、0.01〜8%が更に好ましい。この範囲であれば外観の透明性やべたつきのない使用感がより優れたものとなる。
【0024】
本発明で用いられる成分(A)及び成分(B)は25℃において高粘性の液状であるが、両者を組み合わて加温することにより粘度が低下するため、製造時のハンドリングに優れ可溶化を良好に行なうことができる。例えば、ライステロールエステル(築野食品工業株式会社)(成分(A))の25℃における粘度は55000mPa・s程度であり、PYROTER CPI−40(日本エマルジョン社)(成分(B))の25℃における粘度は6000mPa・s程度であり、これらを単独で加温しても粘度は高い。しかし、これらを1:1で混合し加温すると、25℃における粘度は500mPa・s程度になり、製造時のハンドリングに優れ均一な可溶化を行なうことができる。
【0025】
また、本発明に用いられる成分(A)と成分(B)の質量比は1:1〜1:50の範囲であることが好ましく、1:5〜1:40の範囲がより好ましい。この範囲であれば外観の透明性や経時安定性に優れたものとなる。
【0026】
本発明にはさらに成分(C)としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有することができ、成分(C)を含有することにより、更に経時安定性を向上することができる。本発明に用いられる成分(C)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、脂肪酸にポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンを付加重合等することで得られるものであり、市販品としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(10E.O.〜40E.O.)(10P.O.〜40P.O.)等が例示され、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
本発明に用いられる成分(A)と成分(C)の質量比は3:7〜3:13の範囲であることが好ましい。この範囲であれば外観の透明性や経時安定性、べたつきの無い使用感に優れたものとなる。
【0028】
本発明に用いられる成分(B)と成分(C)の質量比は1:1〜20:1の範囲であることが好ましく、2:1〜15:1であることが更に好ましい。この範囲であれば外観の透明性や経時安定性に優れたものとなる。
【0029】
また、従来の可溶化技術では溶媒にエタノールを用いることが多く、エタノールに不溶である油剤(成分(D))を可溶化することが困難であった。そのため、可溶化型の化粧料又は皮膚外用剤において、これらエタノール不溶性油剤が持つ様々な感触等を出すことは困難であり、課題であった。しかし、本発明では、従来の可溶化技術では可溶化することが困難であったエタノール不溶性油剤である成分(D)を、成分(A)と成分(B)に組み合わせることで、可溶化することができる。エタノール不溶性油剤とは、具体的には、植物油ではホホバ油やマカダミアナッツ油、コメサラダ油等、エステル油ではパルミチン酸オクチル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリルやオレイン酸オレイル等、炭化水素油では流動パラフィンや水添ポリイソブテン等が挙げられる。このような成分(D)の可溶化を可能にしたことにより、外観の透明性に優れながらも、保湿感やさっぱり感等の様々な感触調整を可能にする。
【0030】
また、本発明ではエタノールを必須としないため、エタノールフリーの可溶化型の化粧料又は皮膚外用剤を調製することができる。エタノールに敏感な消費者も一部存在するため、エタノールフリーの化粧料又は皮膚外用剤を調製し製品の幅を広げることは非常に有意義なものである。
【0031】
本発明の化粧料又は皮膚外用剤とは、外観が透明〜半透明状であり、波長700nmの光の透過率が80%以上である。好ましくは透過率が90%以上である。
【0032】
本発明の化粧料又は皮膚外用剤は、上述した成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤等の成分を適宜配合することができる。
【0033】
陰イオン性界面活性剤としては、直鎖あるいは分岐鎖脂肪酸塩、α−アシルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルアミドリン酸塩、アルキロイルアルキルタウリン塩、N−アシルアミノ酸塩、スルホコハク酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤としては、グリシン型、アミノプロピオン酸型、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、スルホン酸型、硫酸型、リン酸型、ホスホベタイン型等が上げられる。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0036】
油剤としては、通常化粧料又は皮膚外用剤に用いられる揮発性および不揮発性の油剤、溶剤および樹脂が挙げられ、常温で液体、ペースト、固体のいずれの形態であっても構わない。油剤の例としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸へキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、分岐脂肪酸コレステリル等のコレステロールエステル、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0037】
粉体の例としては、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号Alレーキ、黄色203号Baレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、シリコーンパウダー、セルロースパウダー、シリコーンエラストマー球状粉体、ポリエチレン末等の樹脂、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化亜鉛、酸化チタン等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料等の顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、アルミナ等の無機粉体、ベントナイト、スメクタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの粉体の形状球状、棒状、針状、板状、不定形状、燐片状、紡錘状等)に特に制限はない。
【0038】
生理活性成分としては、皮膚に塗布した場合に皮膚に何らかの生理活性を与える物質が挙げられる。例えば、老化防止剤、紫外線防御剤、ひきしめ剤、抗酸化剤、保湿剤、血行促進剤、乾燥剤、冷感剤、温感剤、ビタミン類、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素等が挙げられる。
【0039】
本発明の化粧料又は皮膚外用剤は常法に従って製造することができるものであり、化粧料の他に、医薬部外品、指定医薬部外品、外用医薬品等に使用することができ、基礎化粧料、ボデイ化粧料などとして好適に用いることができる。例えば、整肌化粧水、拭き取り化粧水、柔軟化粧水、美容液、アクネトリートメントローション、アフターシェーブローション、二層型コンディショニングローション、ヘアトニック等として有用である。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。
【0041】
〔実施例1〜10,比較例1〜13〕可溶化型化粧水
表1〜3に示す各化粧水を以下の製造方法に従って製造し、「外観の透明性」、「経時安定性」、「保湿感」、「べたつきのなさ」について下記の評価基準及び判定基準によって評価判定し、結果もあわせて表1〜3に示した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
(注1)PYROTER CPI−40 (日本エマルジョン社製)
(注2)PYROTER GPI−25 (日本エマルジョン社製)
(注3)エマレックスRWIS−150 (日本エマルジョン社製)
(注4)NIKKOL PEN−4620(日本サーファクタント工業社製)
(注5)ニッコールHCO−60(日本サーファクタント工業社製)
(注6)ニッコールPBC−44(日本サーファクタント工業社製)
(注7)ライステロールエステル(築野食品工業株式会社製)
(注8)米サラダ油(築野食品工業株式会社製)
(注9)YOFCO MAS(日本精化社製)
(注10)ビオデルマ SX−19(E)(一丸ファルコス社製)
(注11)PLANDOOL−S(日本精化社製)
【0046】
(製造方法)
1.成分(1)〜(14)を均一に混合し、80℃に加熱する。
2.成分(15)〜(18)を均一に混合し、70℃に加熱する。
3.2に1を添加し、均一に混合した後、40℃まで冷却し、可溶化型化粧水を得た。
【0047】
[外観の透明性]
各化粧水を1cmセルに入れ、分光光度計UV−2500PC(島津製作所社製)を用いて波長700nmの透過率を測定することにより評価した。蒸留水の透過率を100として、各化粧水の透過率を換算して透明性を評価した。
[透明性評価基準]
(判定) :(評価)
◎:90%以上
○:80%以上90%未満
△:70%以上80%未満
×:70%未満
【0048】
[経時安定性]
各化粧水を50℃にて1ヶ月静置し、上記[外観の透明性]と同様の条件にて透過率を測定し、評価判定も上記と同様に行った。
【0049】
[保湿感、べたつきのなさ]
各化粧水を化粧品評価専門パネル10名で使用し、「保湿感」、「べたつきのなさ」について下記絶対評価基準にて5段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0050】
<保湿感>
絶対評価基準
評価基準 点数
(評点):(評価)
5点:非常に保湿感を感じる
4点:かなり保湿感を感じる
3点:保湿感を感じる
2点:ほとんど保湿感を感じない
1点:保湿感を感じない
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎:4点を超える
○:3点を超える4点以下
△:2点を超える3点以下
×:2点以下
【0051】
<べたつきのなさ>
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:非常にみずみずしい
4点:みずみずしい
3点:どちらともいえない
2点:べたつく
1点:非常にべたつく
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎:4点を超える
○:3点を超える4点以下
△:2点を超える3点以下
×:2点以下
【0052】
表1〜3より、実施例1〜10の可溶化型化粧水は、外観の透明性や経時安定性に優れ、保湿感を有しながらもべたつきのなさに優れるものであった。一方、成分(B)の代わりに従来の可溶化に用いられる界面活性剤を用いた比較例1〜4は成分(A)を可溶化することができず、油相成分と水相成分が分離した状態であった。また、成分(C)を含有するが、成分(B)を含有しない比較例5及び比較例6も成分(A)を可溶化できなかった。次に、従来のエタノールを用いた可溶化技術と同様に、エタノールを用いて、成分(B)の代わりに従来の可溶化に用いられる界面活性剤を用いた比較例7〜9は成分(A)がエタノール内で凝集し可溶化ができなった。成分(A)を含まない比較例10〜13はエタノール不溶性油剤(成分(D))が成分(B)と相溶することできずに、可溶化することができず、油相成分と水相成分が分離した状態であった。
【0053】
実施例11
下記に示す組成の可溶化型化粧水を以下に示す方法により調製した。上記外観の透明性や経時安定性、保湿感及びべたつきのなさに関して評価したところ、全てにおいて優れていることが確認された。
(成分) (質量%)
(1)ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン
(40モル)硬化ヒマシ油 2.0
(2)米ぬか油脂肪酸フィトステリル 0.5
(3)トリイソステアリン酸グリセリル 0.01
(4)ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.0
(5)グリセリン 3.0
(6)1,3−ブチレングリコール 10.0
(7)ポリエチレングリコール1500 1.0
(8)リン酸水素ナトリウム 0.05
(9)リン酸二水素カリウム 0.05
(10)エデト酸二ナトリウム 0.05
(11)メチルパラベン 0.1
(12)香料 0.05
(13)精製水 残量
【0054】
(製造方法)
成分(1)〜(6)を加熱混合後、成分(7)〜(13)に加え、均一に混合分散し、可溶化型化粧水を得た。
【0055】
実施例12
下記に示す組成の可溶化型美容液を以下に示す方法により調製した。上記外観の透明性や経時安定性、保湿感及びべたつきのなさに関して評価したところ、全てにおいて優れていることが確認された。
(成分) (質量%)
(1)ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン
(60モル)硬化ヒマシ油 8.0
(2)米ぬか油脂肪酸フィトステリル 1.0
(3)スクワラン 2.0
(4)ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.0
(5)グリセリン 3.0
(6)1,3−ブチレングリコール 10.0
(7)ポリエチレングリコール1500 1.0
(8)リン酸水素ナトリウム 0.05
(9)リン酸二水素カリウム 0.05
(10)エデト酸二ナトリウム 0.05
(11)メチルパラベン 0.1
(12)香料 0.05
(13)キサンタンガム 0.1
(14)精製水 残量
【0056】
(製造方法)
成分(1)〜(6)を加熱混合後、成分(7)〜(14)に加え、均一に混合分散し、可溶化型美容液を得た。
【0057】
実施例13
下記に示す組成の可溶化型整肌化粧水を以下に示す方法により調製した。上記外観の透明性や経時安定性、保湿感及びべたつきのなさに関して評価したところ、全てにおいて優れていることが確認された。
(成分) (質量%)
(1)ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン
(30モル)硬化ヒマシ油 4.0
(2)米ぬか油脂肪酸フィトステリル 0.5
(3)オレイン酸オレイル 0.01
(4)ポリプロピレングリコール‐8セテス‐20 1.0
(5)カルボキシビニルポリマー 0.15
(6)香料 0.05
(7)メチルパラベン 0.1
(8)エタノール 10.0
(9)精製水 残量
【0058】
(製造方法)
成分(1)〜(4)を加熱混合後、成分(5)〜(9)に加え、均一に混合分散し、可溶化型整肌化粧水を得た。
【0059】
実施例14
下記に示す組成の可溶化型アフターシェーブローションを以下に示す方法により調製した。上記外観の透明性や経時安定性、保湿感及びべたつきに関して評価したところ、本アフターシェーブローションは、外観の透明性や経時安定性に優れ、ひげそり後に使用した時、保湿感が良好で、かつべたつきが少なく使用感に優れていることが確認された。
(成分) (質量%)
(1)ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン
(40モル)硬化ヒマシ油 4.0
(2)米ぬか油脂肪酸フィトステリル 1.0
(3)ポリプロピレングリコール‐8セテス‐20 0.05
(4)香料 0.05
(5)イソプロピルメチルフェノール 0.01
(6)ビタミンA 0.05
(7)ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.0
(8)1,3−ブチレングリコール 2.0
(9)カルボキシビニルポリマー 0.15
(10)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.15
(11)キサンタンガム 0.1
(12)精製水 残量
【0060】
(製造方法)
成分(1)〜(8)を加熱混合後、成分(9)〜(12)に加え、均一に混合分散し、可溶化型アフターシェーブローションを得た。
【0061】
実施例15
下記に示す組成の可溶化型二層コンディショニングローションを常法により調製した。ローションは振盪回数4回にして、分離していた粉体層と水層とが均一に混和し、懸濁液を生成した。さらに静置後1時間後、透明の水層部と淡赤色の粉体層部の二層に明瞭に分離した美しい外観を呈した。また、本ローションは、使用時に保湿感が良好で、かつべたつきが少なく経時安定性に優れていることが確認された。
【0062】
(成分) (質量%)
(1)ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン
(40モル)硬化ヒマシ油 4.0
(2)米ぬか油脂肪酸フィトステリル 1.0
(3)ポリプロピレングリコール‐8セテス‐20 0.05
(4)1,3−ブチレングリコール 10.0
(5)香料 0.1
(6)硫酸亜鉛 0.3
(7)亜鉛華 1.0
(8)ベンガラ 0.01
(9)タルク 1.0
(10)炭酸ナトリウム 0.2
(11)ポリエチレングリコール4000 1.0
(12)ポリオキシエチレン(20モル)メチルグルコシド 1.0
(13)カルボキシビニルポリマー 0.15
(14)アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.15
(15)エタノール 10.0
(16)精製水 残量
【0063】
実施例16
下記に示す組成の可溶化型ヘアートニックを常法により調製した。本ヘアートニックは、上記外観の透明性や経時安定性、保湿感及びべたつきに関して評価したところ、外観の透明性や経時安定性が良好で、頭皮及び毛髪がしっとりとなめらかに仕上がり、べたつき感がなく、良好な感触が得られた。
(成分) (質量%)
(1)ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレン
(40モル)硬化ヒマシ油 4.0
(2)米ぬか油脂肪酸フィトステリル 1.0
(3)エストラジオール 0.001
(4)1,3−ブチレングリコール 10.0
(5)香料 0.1
(6)D−パントテニルアルコール 0.1
(7)ポリエチレングリコール4000 1.0
(8)精製水 残量
【0064】
(製造方法)
成分(1)〜(5)を加熱混合後、成分(6)〜(8)に加え、均一に混合分散し、可溶化型ヘアートニックを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)米ぬか油脂肪酸フィトステリルを成分(B)ピログルタミン酸硬化ひまし油系界面活性剤で可溶化したことを特徴とする化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量比が1:1〜1:50であることを特徴とする請求項1記載の化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項3】
さらに成分(C)としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項4】
成分(A)と成分(C)の質量比が1:2〜1:5であることを特徴とする請求項3記載の化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項5】
成分(B)と成分(C)の質量比が1:1〜20:1であることを特徴とする請求項3又は4記載の化粧料又は皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに成分(D)としてエタノール不溶性油剤を含有することを特徴とする請求項1〜5に記載の化粧料又は皮膚外用剤。

【公開番号】特開2012−180298(P2012−180298A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43102(P2011−43102)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】