説明

化粧料組成物

【課題】 本発明は前記問題に鑑みて行なわれたものであり、優れた使用性、紫外線防御機能、耐水性を備え、且つ不快な匂いが極めて少ない化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、特定構造を有するシリコーン化合物で被覆した改質粉体と、
(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、
油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料組成物に関し、特にその匂いの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に粉体を配合することにより、肌や頭髪の彩色やシミ、ソバカス等を隠蔽したり、紫外線から肌を保護する等の機能を付与している。特に、近年では、耐水性や化粧もちを向上させたり、分散性を向上させる目的で、表面が疎水化処理された粉体が用いられている。
また、化粧もちを向上させることを目的として、疎水性である油性成分を連続相とさせた油中水型乳化化粧料に代表される、油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料が用いられている。そして、耐水性や化粧もちが特に強く求められるメーキャップ化粧料や紫外線防御乳液等においては、疎水化処理粉末を油中水型化粧料に配合する技術が多用されている。
このような疎水化処理粉末として、特に、オクチルトリエトキシシランに代表されるアルキルアルコキシシラン処理粉末を配合した化粧料が、市場において高評価を得ている。例えば、特許文献1において、アルキルアルコキシシランは、油っぽさやべたつきの無さなどの使用性において、他の疎水化処理剤に優れており、その処理粉末は日焼け止め化粧料などにおいて高い機能を発揮することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−217361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記アルキルアルコキシシラン処理粉末を配合した化粧料は、肌に塗布した直後から独特の匂いを発し、使用者に不快を与えることがあった。このような問題から、優れた使用性、UV防御効果、耐水性を備え、さらに匂いに関しても満足することのできる化粧料の開発が求められていた。
本発明は前記問題に鑑みて行なわれたものであり、優れた使用性、紫外線防御機能、耐水性を備え、且つ不快な匂いが極めて少ない化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、特定構造を有するシリコーン化合物により表面処理を施した改質粉体を配合することにより、使用性、紫外線防御能、及び耐水性が高く、且つ疎水化処理粉末による不快な匂いをほとんど生じない化粧料組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる化粧料組成物は、(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、下記一般式(1)で示される構造を有するシリコーン化合物で被覆した改質粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする。
(化1)

(上記式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。m、nは整数であり、0≦m+n≦1000である。また、p、qは整数であり、1≦p、q≦1000である。Rは下記一般式(2)で示される構造を有し、Rは水素基または下記一般式(3)で示される構造を有する。)
(化2)

(上記式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。r、sは整数であり、1≦r+s≦1000である。)
(化3)

(上記式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
前記化粧料組成物において、前記(A)改質粉体の基粉体が、さらにカチオン性界面活性剤で被覆されていることが好適である。
前記化粧料組成物において、前記(B)親水性粉末が、球状粉末であることが好適である。
前記化粧料組成物において、前記(B)親水性粉末が、水性成分中に分散されていることが好適である。
前記化粧料組成物において、前記(A)改質粉体の基粉体が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好適である。
前記化粧料組成物において、前記(A)改質粉体の配合量が0.1〜40質量%であり、前記(B)親水性粉末の配合量が0.1〜30質量%であることが好適である。
前記化粧料組成物において、前記(B)親水性粉末が、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される1種又は2種以上であることが好適である。
前記化粧料組成物において、化粧料組成物の粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性があることが好適である。
前記化粧料組成物において、前記(A)改質粉体の配合量が10〜40質量%であり、且つ化粧料の粘度が2000(mPa・s)以下であることが好適である。
前記化粧料組成物において、化粧料組成物が油中水型乳化組成物であることが好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紫外線防止効果、乳化安定性及び使用感触に優れ、しかも耐水性が高く、且つ使用中に感じられる好ましくない匂いの少ない化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による化粧料組成物の安定性評価に用いられる分散状態(1点)を示す図である。
【図2】本発明による化粧料組成物の安定性評価に用いられる分散状態(3点)を示す図である。
【図3】本発明による化粧料組成物の安定性評価に用いられる分散状態(5点)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
(油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料組成物)
油性成分中に水性成分が乳化または分散した化粧料とはすなわち油性成分を連続相とし、水性成分が乳化または分散している状態を指す。ここで、「乳化」とは、水性成分が乳化剤によって油性成分中に分散していることを指し、「分散」とは、乳化剤を使用せずに水性成分が油性成分中に分散していることを指す。また「水性成分」には、水、アルコール、多価アルコール、水溶性薬剤、水溶性界面活性剤、水溶性高分子などが含まれ、「油性成分」には、油分、油溶性界面活性剤、油溶性紫外線吸収剤などが含まれる。
【0009】
本発明の化粧料組成物は、代表的には油中水型乳化化粧料が挙げられるが、乳化剤を用いた乳化化粧料に限定されるものではない。水性成分の乳化または分散には通常乳化剤を用いるが、本発明においては、上記(A)成分が界面活性剤としての性質を有しており、このため乳化剤なしでも分散が可能である。また、前述(B)は水性成分に分散されていることが最も好ましいが、前述(B)に水性成分を含浸、吸着させた状態で油性成分中に分散する形態でも製剤は成立する。
【0010】
(A)改質粉体
本発明で用いられる(A)改質粉体は、紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、下記一般式(1)で示されるシリコーン化合物により疎水化処理したものである。
(化4)

上記式において、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっていてもよいが、特にメチル基、オクチル基であることが好ましい。また、Meはメチル基を示す。
n及びmは整数であり、0≦n+m≦1000である。
p及びqは整数であり、それぞれ1≦p≦1000、1≦q≦1000である。
また、Rは下記式(2)で示される構造を有し、Rは水素基または下記式(3)で示される構造を有する。
(化5)

上記構造において、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。R及びRの炭素数は同じであっても異なっていてもよいが、特にメチル基を含むことが好ましい。また、r、sは整数であり、1≦r+s≦1000である。
(化6)

上記構造において、R7は炭素数1〜5のアルキル基であり、特にエチル基であることが好ましい。
【0011】
前記構造を有するシリコーン化合物としては、例えば、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−9908、信越化学工業社製)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0012】
また、前記(A)改質粉体には、前記シリコーン化合物に加え、カチオン性界面活性剤による処理を施し、化粧料組成物に安定性及び洗浄性を付与することもできる。
カチオン性界面活性剤としては、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、C12モノヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ジヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ジヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ヤシ油ジアミドプロピルカチオン、ヤシ油ジカルボキシエチルカチオン、C16ジカルボキシエチルカチオン、C18ジカルボキシエチルカチオン、POP(15)ジエチルメチルカチオン、POP(25)ジエチルメチルカチオン、POP(40)ジエチルメチルカチオン、C12ジアミドプロピルメチルアミン、C14ジアミドプロピルメチルアミン、C16ジアミドプロピルメチルアミン、C18ジアミドプロピルメチルアミン、イソC18ジアミドプロピルメチルアミン、ジC18プロピルジメチルカチオン、ヒドロキシプロピル−ビス−ラウリルカチオン、ヒドロキシプロピル−ビス−ステアリルカチオン、ヒドロキシプロピル−ビス−ラウリルアミドカチオン、ヒドロキシプロピル−ビス−ステアリルアミドカチオン、C18モノヒドロキシアルキルエーテルカチオン、ビス−C18ヒドロキシアルキルエーテルカチオン、C22トリメチルアンモニウムブロマイド、C22プロピルジメチルアミン、クオタニウム−91、C22トリメチルアンモニウムメトサルフェート、ジココイルアミドエチルエチルヒドロキシカチオン、ジC18アミドエチルエチルヒドロキシカチオン、ジC16アミドエチルエチルヒドロキシカチオン、ジC18ジメチルアンモニウム塩、C18ジメチルベンジルアンモニウム塩、パーフルオロトリメチルアンモニウム塩、ジアシルアミドエチルエチルヒドロキシカチオンが挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
特に好ましいカチオン性界面活性剤は、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム塩、ジテトラデシルジメチルアンモニウム塩、ジドデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウムである。
【0013】
本発明において改質される粉体としては、紫外線防御作用を有し、化粧品一般に使用される粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されずに用いることができる。また、これらを複合化した粉末や、他の無機化合物(シリカやアルミナ等)で予め処理された粉末を用いることもできる。
具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、特に酸化チタン又は酸化亜鉛が好ましい。
【0014】
前述の改質される粉体としては、上記粉体の他、エチルヘキシルトリアゾン(ユビナールT150(登録商標))等の有機系粉体も含まれる。
【0015】
本発明において改質される粉体の大きさについて、特に制限はないが、紫外線防御効果と塗布時の透明性に優れている平均粒子径0.01〜0.2μmの微粒子であることが好ましい。
【0016】
本発明において、上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の被覆量は、基粉体の自重に対して3〜90質量%であることが好ましい。また、カチオン性界面活性剤を被覆する場合、基粉体の自重に対して0.2〜6質量%であることが好ましい。
また、カチオン性界面活性剤を被覆する場合、上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物の被覆量に対し、質量比が1:1〜15:1であることが好ましい。カチオン性界面活性剤の比率が上述の範囲よりも多いと耐水性が悪くなることがあり、少ないと洗浄性が悪くなることがある。
【0017】
本発明の改質粉体の製造方法としては、以下の方法が例示されるがこれに限定されない。
溶媒中に、基粉体に対して上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物を3〜90質量%と、必要に応じカチオン性界面活性剤を0.2〜6質量%加え溶解する。その後、基粉体を加え1時間室温で撹拌する。撹拌終了後、溶媒除去、乾燥、粉砕を行い、目的とする改質粉体を得る。
なお、溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を用いることができるが、特にイソプロピルアルコールが好ましい。
【0018】
また、本発明の改質粉体は、上記一般式(1)で示されるシリコーン化合物で処理された市販の処理粉体を用いることができ、必要に応じてこれをカチオン性界面活性剤で処理することによっても製造できる。また、本発明の改質粉体は、予め一般式(1)で示されるシリコーン化合物で処理した粉体を原料とし、必要に応じて化粧料の製造工程中においてカチオン性界面活性剤を添加して処理すること、あるいは、カチオン性界面活性剤処理粉体を原料とし、化粧料の製造工程中において一般式(1)で示されるシリコーン化合物を添加して処理すること、さらには未処理の粉体を原料とし、工程中で基粉体に一般式(1)で示されるシリコーン化合物と、必要に応じカチオン性界面活性剤を添加して処理することでも製造できる。
【0019】
従って本発明は、(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を一般式(1)で示されるシリコーン化合物で被覆した粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、特に粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性を有する油中水型乳化組成物を提供するものである。この構成により、優れた使用性、紫外線防御作用、耐水性を備え、且つ不快な匂いを伴わない化粧料を得ることができる。
【0020】
また本発明は、(A´)基粉体の表面を一般式(1)で示されるシリコーン化合物及びカチオン性界面活性剤で被覆した処理粉体と、(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする化粧料組成物を特に包含するものである。この構成により、前記効果に加え、組成物の安定性及び洗浄性を向上することができる。
【0021】
本発明において、(A)成分である改質粉体は、本発明の化粧料組成物中に0.1〜40質量%、1〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%配合される。0.1質量%より少ない場合は紫外線防御効果が十分に得られない。また40質量%より多い場合は使用感触が悪くなる。
【0022】
本発明品において(A)成分である改質粉体は、((A)改質粉体の配合量)/(改質粉体を含む油相全量)が0.7以下(質量比)であることが、最も安定性に優れ且つ使用感触が向上するために好ましい。
【0023】
本発明者らの検討により、疎水化処理剤として汎用されているオクチルトリエトキシシランにおいて、疎水化処理粉体の製造段階で一部のオクチル基とトリエトキシシリル基の結合が切断され、この際生じるC8化合物が、該処理粉体を配合した化粧料における不快な匂いの元となっていることが分かった。
一方、上記一般式(1)により示されるシリコーン化合物を疎水化処理剤とした場合、粉末ないし化粧料製造時に上記のような結合の切断よりC8化合物が生じることがないため、該化合物に起因する匂いを生じることがない。しかも、主鎖であるポリシロキサンに修飾されたアルキル基及びポリシロキサンにより、基粉体へ高い疎水化機能を保持させることができる。
【0024】
(B)無機または有機の親水性粉末
本発明で用いられる(B)無機または有機の親水性粉末は特に限定されない。かかる粉末としては、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸、マイカ、タルク、粘土鉱物等の無機粉末;セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプン等の有機粉末が挙げられる。親水性粉末以外の粉末のみを用いた場合は、使用感触向上のための効果が十分に得られない欠点がある。(B)成分を用いることで、使用感触を向上させることができると共に、紫外線防止効果もさらに高められる。
【0025】
(B)無機または有機の親水性粉末は、球状粉末であることが使用感触向上の点でさらに好ましい。また(B)の粒子径は特には限定されないが、使用性の観点から、平均粒子径が0.01〜100μmのものが好ましく、特に平均粒子径が1〜30μmのものが好ましい。
【0026】
前述(B)の親水性粉末は分散性や化粧持ちの観点から、吸水性・水分保持力のある、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される一種又は二種以上であることが好ましい。このような粉末としては、球状シリカとして、サンスフェア L−51(旭硝子社製)、微粒子シリカとしてアエロジル200(日本アエロジル社製)、セルロース粉末として、セルロフロー C−25(チッソ社製)、でんぷん粉末として、STスターチC(日澱化学社製)などが挙げられる。
【0027】
本発明においては、油性成分中に上記(A)の改質粉体を用いているので、水性成分に分散される(B)成分であっても凝集することなく、安定に存在させることができる。(A)の改質粉体以外の疎水化処理粉末を用いた場合には、カチオン性界面活性剤を同時に配合しないと(B)成分を水性成分中に安定に分散させることはできない。
(B)成分は水性成分中に分散されていても、あるいは油性成分中に分散されていてもかまわないが、水性成分中に分散されていた方が使用性の良いものが得られる。
【0028】
本発明において、(B)成分である親水性粉末は、本発明の化粧料組成物中に0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%配合される。0.1質量%より少ない場合は、使用感触が満足できるものではなくなる。また、30質量%より多い場合は、使用感触が粉っぽくなり好ましくない。
【0029】
本発明において(B)成分である無機または有機の親水性粉末は、((B)親水性粉末)/(親水性粉末を含む水相全量)が0.4以下(質量比)であることが、最も安定性に優れ且つ使用感触が向上するために好ましい。
【0030】
本発明の化粧料組成物は、さらに有機系の紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等);3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー;2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール;2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン;5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン、ジモルホリノピリダジノン等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる油分としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性シリコーン、アクリルシリコーン、架橋型シリコーン、メチルハイドロジェンポリシロキサン,高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、トリメチルシロキシシリケート、アミノ変性シリコーン、ピロリドン変性シリコーン等のシリコーン系オイルやシリコーンワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、イソプロピルミリステート、ミリスチルオクチルドデカノール、ジ−(2−エチルヘキシル)サクシネート、ジイソオクタン酸ネオペンチルグリコール、モノステアリン酸グリセリン、イソステアリン酸トリグリセライド、ヤシ油脂肪酸トリグリセライド、ヒマシ油、オクチルドデカノール、ヘキサデシルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラノリン、ミツロウ、オリーブ油のような炭化水素、エステル、グリセライド、高級アルコール、高級脂肪酸などが例示される。このような油分の合計量は、化粧料全量中の10.0〜95.0質量%が好ましい。
【0032】
本発明においてはアニオン界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤を用いることができ、特に非イオン界面活性剤が望ましい。かかる非イオン界面活性剤としては、炭化水素系のものやシリコーン系のものが用いられる。具体的にはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビット脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルや、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、(ポリ)グリセリン変性シリコーン、架橋型や分岐型のポリオキシアルキレン変性シリコーンやポリグリセリン変性シリコーンなどのシリコーン系活性剤が例示される。シリコーン活性剤の具体例としては、ABIL−EM−90(ゴールドシュミット社製)、信越化学社製の、KF−6000シリーズ(ペンダント型や分岐型などのポリエーテル変性シリコーンやポリエーテル・アルキル共変性シリコーン)、KF−6100シリーズ(ペンダント型や分岐型などのポリグリセリン変性シリコーンやポリグリセリン・アルキル共変性シリコーン)、KSG−210、310、710、810(架橋型ポリエーテルまたはポリグリセリン変性シリコーン)などが挙げられる。
【0033】
本発明の化粧料組成物には、上記した構成成分の他に本発明の効果を損なわない範囲において、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、他の粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、有機変性粘土鉱物、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することができる。
【0034】
本発明の化粧料組成物とは、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野にて、皮膚に適用される組成物を意味し、それも粉体を含む組成物であれば特に限定されないが、その主な性能である紫外線防止能や耐水性、使用感触が明確に知覚されるものとして、日焼け止め化粧料やメーキャップ化粧料としての用途が特に好ましい。
【0035】
本発明の化粧料組成物は製剤の形態は特に限定はされないが、より本発明の効果が発揮されるため、化粧料組成物の粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性があることが好ましい。
ここで、本発明の化粧料組成物の粘度は、VDH型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDH)或いはVDA型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDA)を用いて測定する。試験対象物の粘度により下記の通りに粘度計を使い分ける。すなわち試験物の粘度が0〜2500(mPa・s)の場合、VDA型を用いてビスメトロンローターNo2を使用し、回転数12rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が2500〜10000(mPa・s)の場合、VDA型を用いてビスメトロンローターNo3を使用し、回転数12rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が10000〜100000(mPa・s)の場合、VDH型を用いてビスメトロンローターNo6を使用し、回転数10rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が100000〜400000(mPa・s)の場合、VDH型を用いてビスメトロンローターNo7を使用し、回転数10rpm、1分間で測定する。試験物の粘度が400000〜1000000(mPa・s)の場合、VDH型を用いてビスメトロンローターNo7を使用し、回転数10rpm、1分間で測定する。測定対象物が2相分離している場合は、測定前に10回振とうし、測定に供するものとする。測定対象物の温度は30℃である。流動性がある本発明品とは本測定法に従って、粘度300000(mPa・s)以下のものをさす。本発明品の粘度は300000(mPa・s)以下で規定されるもの、好ましくは粘度200000(mPa・s)以下で規定されるもの、さらに好ましくは粘度100000(mPa・s)以下、特に粘度10000(mPa・s)以下で規定されるものが好ましい。
なお、(A)の改質粉体の配合量が10〜40質量%であり、且つ粘度を2000(mPa・s)以下としたものが、使用性の点で特に好適である。
【実施例】
【0036】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
初めに本発明における化粧料組成物の耐水性、紫外線防御効果、匂いに関する各試験法について説明する。
【0037】
<匂い判定>
20名の専門パネルにより、化粧料を塗布して15分乾燥した後における匂いの無さを以下の基準により評価した。
A:20人中、16人以上が不快な匂いを感じないと回答
B:20人中、12〜15人が不快な匂いを感じないと回答
C:20人中、6〜11人が不快な匂いを感じないと回答
D:20人中、5人以下が不快な匂いを感じないと回答
【0038】
<使用性>
前述で調整した目的化粧料を10名の専門パネルで感触評価を行った。特に油っぽさ、べたつきに関する使用感触の5段階評価を行った。各評価段階は表1の通りである。
(表1)


【0039】
<耐水性試験>
サンプル0.1mLを前腕内側部の10cm×5cmの範囲に塗布し(2μL/cm2)、15分間乾燥させる。
塗布部分(直径2cmの範囲)のサンプルを、アセトン5mLを用いて抽出する(洗浄前)。
前腕内側部を流水中に15分間当てた後、塗布部分(先程とは別の直径2cmの範囲)のサンプルをアセトン5mLを用いて抽出する(洗浄後)。
洗浄前後のアセトン溶液について、310nmの吸光度を比較し、洗浄前のアセトン溶液に対して、洗浄後のアセトン溶液中にサンプルがどれだけ残存しているかを試験する。評価基準は以下の通りである。
【0040】
A:85%以上残存
B:75%以上85%未満残存
C:65%以上75%未満残存
D:65%未満残存
【0041】
<紫外線防御効果>
専門パネル20人により、晴天の日に試料を使用してもらい、紫外線防御効果を評価する(前腕内側部に2μL/cm2のサンプルを塗布し、15分間乾燥させる)。評価基準は以下の通りである。
【0042】
A:20人中16人以上が、紫外線防御効果が良好と回答
B:20人中12〜15人が、紫外線防御効果が良好と回答
C:20人中6〜11人が、紫外線防御効果が良好と回答
D:20人中5人以下が、紫外線防御効果が良好と回答
【0043】
次に、本発明の実施例、比較例において用いられる改質粉体について説明する。
<実施例1:改質粉体1;トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)を6gを加え溶解した。その後、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンで被覆された酸化亜鉛(改質粉体1)を得た。
以下の説明においては、改質粉体1を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)酸化亜鉛と表記する。
【0044】
<実施例2:改質粉体2;トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)を6gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである二酸化チタン150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンで被覆された二酸化チタン(改質粉体2)を得た。
以下の説明においては、改質粉体2を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン)酸化チタンと表記する。
【0045】
<実施例3:改質粉体3;トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−9908、信越化学工業社製)を6gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである酸化亜鉛150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコンで被覆された酸化亜鉛(改質粉体3)を得た。
以下の説明においては、改質粉体3を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)酸化亜鉛と表記する。
【0046】
<実施例4:改質粉体4;トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−9908、信越化学工業社製)を6gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである二酸化チタン150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコンで被覆された二酸化チタン(処理粉末4)を得た。
以下の説明においては、改質粉体4を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)酸化チタンと表記する。
【0047】
<比較例1:改質粉体5; カチオン界面活性剤被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにジステアリルジメチルアンモニウムクロライド5gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.05μmの酸化亜鉛200gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、カチオン界面活性剤で被覆された酸化亜鉛(改質粉体5)を得た。
以下の説明においては、改質粉体5を(カチオン)酸化亜鉛と表記する。
【0048】
<比較例2:改質粉体6;オクチルトリエトキシシラン処理酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにオクチルトリエトキシシランを6gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.05μmである微粒子酸化亜鉛150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、オクチルトリエトキシシランで被覆された酸化亜鉛(改質粉体6)を得た。
以下の説明においては、改質粉体6を(オクチルトリエトキシシラン)酸化亜鉛と表記する。
【0049】
試験例1−1〜1−9
以下の表2に示す処方に基づき、油中水型乳化化粧料を調製し、上記評価を行った。その結果を表2に併せて示す。
なお、化粧料の調製は定法により行った。すなわち、油性成分を常温で均一に溶解・混合したのち、粘土鉱物、粉末部1(改質粉体および改質粉体以外の疎水性粉末)を油性成分中に分散させ、油相を調製する。分散はホモミキサーを用い、9000rpm 1分間で処理した。一方、水性成分も常温で均一に溶解・混合した後、粉末部2(親水性粉末)を水性成分中に分散させる。親水性粉末の分散は手攪拌で行うか、或いはホモミキサーを用いて分散を行い、水相を得た。このようにして調製した水相を、先に調整した油相に添加し、乳化或いは分散を行う。乳化或いは分散はホモミキサーを用い、9000rpm 1分間で処理した。
【0050】
(表2)

【0051】
表2に示すように、特定構造のシリコーン化合物による改質粉体を配合した試験例1−1〜1−6は、不快な匂いの無さ、対水性、UV防御性において、極めて優れた結果を示した。しかしながら、球状粉末を配合しなかった試験例1−1は、使用性に関し、やや油っぽく、べたついた感触を示し、球状粉末を油相に添加した試験例1−2は、無配合のものに比べ油っぽさやべたつきは改善されたものの、肌上でののびがやや重いものであった。
これらに対し、球状粉末を水相に添加した試験例1−3〜1−6は、肌上でののびが良好な低粘度の製剤となり、全ての機能において高い評価を得た。
一方、カチオン性界面活性剤で被覆した改質粉体は、耐水性とUV防御能に劣り、特に日焼け止めを目的とした化粧料としては機能的に不十分であった(試験例1−7)。
また、オクチルトリエトキシシランによる処理粉体を配合した化粧料は、使用性、耐水性、UV防御能においては優れていたが、使用中に好ましくない匂いを生じるものであった(試験例1−8)。
なお、改質粉体を配合しなかった試験例1−9では、不快な匂いを生じることはなかったが、使用性、耐水性、UV防御能のいずれも改質粉体を配合したものよりも劣る結果となった。
以上のことから、本発明にかかる化粧料組成物において、特定構造のシリコーン化合物で被覆した改質粉体と、親水性粉末とを含み、油性成分中に水性成分が乳化または分散していることが好適である。
【0052】
さらに、特定構造のシリコーン化合物及びカチオン性界面活性剤を被覆させた改質粉体について、上記評価項目ならびに化粧料組成物の安定性及び洗浄性について評価を行なった。まず、安定性及び洗浄性に関する各試験方法について説明する。
【0053】
<化粧料組成物の安定性>
化粧料組成物における粉末の分散状態、乳化状態は顕微鏡判定を通じて行い、以下の基準で化粧料組成物の安定性の評価とした。評価点は図1〜図3を基準として、1〜5段階で評価する。
1点:図1(粉末が凝集して安定性悪い)
3点:図2(粉末は若干凝集しているが安定性に問題はない)
5点:図3(粉末の分散状態は良好で安定)
【0054】
<洗浄性試験方法>
この試験は、メーキャップクレンジングなどの特殊な洗浄料ではなく、日常汎用に用いられている石鹸やボディソープなどに代表される通常の水性洗浄剤や洗顔料で、化粧料が除去可能であるかを評価するための試験であり、下記手順により評価を行った。
サンプル0.1mLを前腕内側部の10cm×5cmの範囲に塗布し(2μL/cm2)、15分間乾燥させ、塗布部分(直径2cmの範囲)のサンプルを、アセトン5mLを用いて抽出する(洗浄前)。その後、市販ボディーソープ2mLを十分に泡立て、サンプル塗布部を5回なでるように洗浄した後、水で洗い流し乾燥させ、塗布部分(先程とは別の直径2cmの範囲)のサンプルをアセトン5mLを用いて抽出する(洗浄後)。
洗浄前後のアセトン溶液について、ICP(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いて無機粉末量の定量を行い洗浄前のアセトン溶液に対して、洗浄後のアセトン溶液中に無機粉末がどれだけ残存しているかを試験し、次の基準で評価した。
【0055】
A:残存量20%未満
B:残存量20%以上30%未満
C:残存量30%以上40未満
D:残存量40%以上
【0056】
次に、本発明の実施例に用いた改質粉体について説明する。
<実施例5:改質粉体7;(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン+カチオン界面活性剤)被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)を6g、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライド2gを加え溶解した。その後、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンおよびカチオン界面活性剤で被覆された酸化亜鉛(改質粉体7)を得た。
以下の説明においては、改質粉体7を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン/カチオン)酸化亜鉛と表記する。
【0057】
<実施例6:改質粉体8;(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン+カチオン界面活性剤)被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)を6g、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライド2gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである二酸化チタン150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンおよびカチオン界面活性剤で被覆された二酸化チタン(改質粉体8)を得た。
以下の説明においては、改質粉体8を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン/カチオン)酸化チタンと表記する。
【0058】
<実施例7:改質粉体9;(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン+カチオン界面活性剤)被覆酸化亜鉛>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−9908、信越化学工業社製)を6g、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライド2gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである酸化亜鉛150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコンおよびカチオン界面活性剤で被覆された酸化亜鉛(改質粉体9)を得た。
以下の説明においては、改質粉体9を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/カチオン)酸化亜鉛と表記する。
【0059】
<実施例8:改質粉体10;(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン+カチオン界面活性剤)被覆二酸化チタン>
イソプロピルアルコール200mLにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−9908、信越化学工業社製)を6g、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライド2gを加え溶解した。その後、平均粒子径が0.03μmである二酸化チタン150gを加え1時間室温で攪拌後、溶媒除去、乾燥(70℃、一昼夜)し、粉砕を行い、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコンおよびカチオン界面活性剤で被覆された二酸化チタン(改質粉体10)を得た。
以下の説明においては、改質粉体10を(トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/カチオン)酸化チタンと表記する。
【0060】
試験例2−1〜2−9
以下の表3に示す処方に基づき、油中水型乳化化粧料を調製し、上記評価を行った。その結果を表3に併せて示す。
なお、化粧料の調製は定法により行った。すなわち、油性成分を常温で均一に溶解・混合したのち、粘土鉱物、粉末部1(改質粉体および改質粉体以外の疎水性粉末)を油性成分中に分散させ、油相を調製する。分散はホモミキサーを用い、9000rpm 1分間で処理した。一方、水性成分も常温で均一に溶解・混合した後、粉末部2(親水性粉末)を水性成分中に分散させる。親水性粉末の分散は手攪拌で行うか、或いはホモミキサーを用いて分散を行い、水相を得た。このようにして調製した水相を、先に調整した油相に添加し、乳化或いは分散を行う。乳化或いは分散はホモミキサーを用い、9000rpm 1分間で処理した。
【0061】
(表3)

【0062】
表3に示すように、特定構造のシリコーン化合物及びカチオン性界面活性剤で処理した改質粉体と、親水性粉末とを配合した化粧料は、全ての項目において優れた結果を示した(試験例2−2〜2−5)。
これに対し、球状粉末を油相に配合した試験例2−1は、使用性及び安定性がやや劣るものであった。
また、カチオン性界面活性剤による処理を施していない改質粉体は、使用性、耐水性、UV防御能に優れ、匂いにおいても十分なものであったが、安定性及び洗浄性については試験例2−2〜2−5に比べ低かった(試験例2−6〜2−9)。
以上の結果から、本発明にかかる化粧料組成物において、特定構造のシリコーン化合物及びカチオン性界面活性剤で被覆した改質粉体を用いることにより、化粧料の安定性及び洗浄性が向上することが明らかである。
【0063】
以下の表4に示す処方に基づき、化粧料組成物を調製し、上記評価を行った。なお、化粧料の調製は、試験例2と同様に行った。結果を表4に示す。
【0064】
(表4)

【0065】
表4に示すように、本発明の改質粉体(A)を5〜30質量%の範囲で使用し、親水性粉体(B)を0.5〜20質量%の範囲で使用することにより、全ての評価項目において優れた化粧料組成物を得ることができた。
【0066】
下記表5に示す処方の乳液状日焼け止め化粧料を調製した。得られた乳液状日焼け止め化粧料は、使用性、耐水性、UV防御能が高く、使用中における匂いにおいても満足できるものであり、さらには化粧料の安定性及び洗浄性にも優れたものであった。
【0067】
(表5)
(成分) (質量%)
水 25.71
アルコール 1
グリセリン 10
ジステアリルジアンモニウムヘクトライト 0.5
ジメチコンコポリオール 1.5
イソステアリン酸 0.7
ポリブチレングリコール/PPG−9/1コポリマー 5
イソノナン酸イソノニル 2
ジメチコン 3
シクロメチコン 20
トリメチルシロキシケイ酸 1
オクチルメトキシシンナメート 5
オクトクリレン 1
トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン/カチオン処理酸化亜鉛*1 15
ポリメチルシルセスキオキサン 1
シリカ 7
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
EDTA−3Na 0.05
フェノキシエタノール 0.5
香料 0.03
*1:イソプロピルアルコール200mlにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)を6g加えて溶解した。その後、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100gを加え1時間室温で撹拌後、溶媒を除去し、70℃で24時間乾燥し、粉砕して調製した粉末である。
【0068】
下記表5に示す処方のクリーム状日焼け止め化粧料を調製した。得られたクリーム状日焼け止め化粧料は、使用性、耐水性、UV防御能が高く、使用中における匂いにおいても満足できるものであり、さらには化粧料の安定性及び洗浄性にも優れたものであった。
【0069】
(表6)
(成分) (質量%)
水 35.71
アルコール 1
グリセリン 10
ジステアリルジアンモニウムヘクトライト 0.5
ジメチコンコポリオール 1.5
イソステアリン酸 0.7
ポリブチレングリコール/PPG−9/1コポリマー 5
イソノナン酸イソノニル 2
ジメチコン 3
シクロメチコン 10
トリメチルシロキシケイ酸 1
オクチルメトキシシンナメート 5
オクトクリレン 1
トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン/カチオン処理酸化亜鉛*2 15
ポリメチルシルセスキオキサン 1
シリカ 7
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
EDTA−3Na 0.05
フェノキシエタノール 0.5
香料 0.03
*2:イソプロピルアルコール200mlにトリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(KF−9909、信越化学工業社製)を6g加えて溶解した。その後、平均粒子径0.05μmの微粒子酸化亜鉛100gを加え1時間室温で撹拌後、溶媒を除去し、70℃で24時間乾燥し、粉砕して調製した粉末である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)紫外線防御効果を有する基粉体の表面を、下記一般式(1)で示される構造を有するシリコーン化合物で被覆した改質粉体と、
(B)無機または有機の親水性粉末とを含み、
油性成分中に水性成分が乳化または分散していることを特徴とする化粧料組成物。
(化1)

(上記式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。m、nは整数であり、0≦m+n≦1000である。また、p、qは整数であり、1≦p、q≦1000である。Rは下記一般式(2)で示される構造を有し、Rは水素基または下記一般式(3)で示される構造を有する。)
(化2)

(上記式中、R及びRは炭素数1〜8のアルキル基を示す。r、sは整数であり、1≦r+s≦1000である。)
(化3)

(上記式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記(A)改質粉体の基粉体が、さらにカチオン性界面活性剤で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記(B)親水性粉末が、球状粉末であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記(B)親水性粉末が、水性成分中に分散されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記(A)改質粉体の基粉体が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及びタングステン酸からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記(A)改質粉体の配合量が0.1〜40質量%であり、前記(B)親水性粉末の配合量が0.1〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記(B)親水性粉末が、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項8】
化粧料組成物の粘度が300000(mPa・s)以下で、流動性があることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記(A)改質粉体の配合量が10〜40質量%であり、且つ化粧料の粘度が2000(mPa・s)以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項10】
化粧料組成物が油中水型乳化組成物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の化粧料組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−270073(P2010−270073A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123993(P2009−123993)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】