説明

化粧板転写用離型紙、その製造方法およびその用途

【課題】 加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することのできる、化粧板転写用離型紙の提供。
【解決手段】 この課題は、木材パルプを主体とした、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより抄造された原紙の片面に顔料とバインダーからなるマット調の転写用塗工層を有し、マット調の転写用塗工層上にシリコーンをオーバーコートすることを特徴とする、化粧板転写用離型紙によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与するのに好適な化粧板転写用離型紙、および単層または多層抄きにより抄造された原紙の片面に顔料とバインダーを主体とするマット調の転写用塗工層を設け、その塗工層上にシリコーンのオーバーコート層を設ける該化粧板転写用離型紙の製造方法に関するものである。さらに、加熱押圧による化粧板の製造において、該化粧板転写用離型紙を用いることによって熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と該離型紙が貼り付かないことを特徴とする化粧板転写用離型紙の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁材、床材などの建材や家具などのインテリア材料として使用される化粧板としては、一般にメラミン化粧板、ポリエステル化粧板、ジアリルフタレート(以下、「DAP」と略す。)化粧板、エポキシ化粧板、グアナミン化粧板などの熱硬化性樹脂化粧板が用いられている。これは、化粧板原紙を熱硬化性樹脂で含浸し、乾燥したものを、コア紙、オーバーレイ紙、基材フィルムと共に積層し、これを上下熱盤間に金属鏡面板を介して挟み、加熱押圧したものである。
化粧板原紙としては、チタン混抄紙、クラフト紙、薄葉紙、綿布、またはガラス繊維や合成樹脂繊維の織布や不織布などが挙げられるが、主に含浸成型用チタン混抄紙が使用されている。チタン混抄紙は樹脂がよく含浸するように、パルプ繊維のからみを粗にして透気度を低くしているうえに、填料にチタンホワイトや着色顔料を多量に混合して抄紙したものであり、印刷適性と熱硬化性樹脂含浸適性の両面に優れている。
また、熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、DAP樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。
【0003】
成形前の化粧板の模式図(図1)を使用して、離型紙を使用した化粧板の一般的製造方法を説明する。
図1に示す通り、ステンレス板上に転写用離型紙を置き、その上に化粧板基材を構成する熱硬化性樹脂を含浸したチタン混抄紙(印刷面下側)と熱硬化性樹脂を含浸したクラフトベース(板状)よりなる一組を載せ、この様な構成の一組を1ユニット(unit)とする。これを多数ユニット重ね、熱プレスによる加熱押圧(140℃、70〜80kg/cm、60分)にて熱成形する。
【0004】
図1に示すような転写用離型紙を挟まない場合には、化粧板基材となる熱硬化性樹脂含浸チタン混抄紙が直接SUS板に接するため、凹凸のない平坦、かつ、光沢感のある表面をもつ化粧板が得られる。
【0005】
化粧板の色やデザインは化粧板基材となるチタン混抄紙にグラビア印刷し、加熱押圧することで化粧板基材を製造する方法と、ポリエステル、ポリオレフィン、ビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの合成樹脂フィルムをベースとする転写用シートにグラビア印刷やオフセット印刷し、その後、化粧板基材と加熱押圧して、色やデザインを化粧板基材に転写する方法がある(例えば、特許文献1および2参照)。
SUS板に模様をエッチングで作成すれば、艶消し面は得られるが、微細な凹凸のあるマット調の面感を得ることは困難であり、かつ、コストが大幅にかかる。また、転写用離型紙は化粧板には全く残らず、一度使用したら廃棄されるため、環境面やコスト面を考慮すると合成樹脂フィルムなどのフィルムよりも安価で廃棄処理も容易に出来る紙を用いた転写用離型紙が求められていた。
【0006】
そのため、化粧板基材に凹凸のあるマット調の塗工面を転写し、かつ、化粧板基材との離型性に優れた、化粧板転写用離型紙の検討が行なわれている。紙に顔料とバインダーを主体とする塗工液を塗工することで、比較的容易にマット調の塗工面を形成できるが、加熱押圧における化粧板製造時において、熱硬化性樹脂を含浸した化粧板基材との離型性が悪い欠点があった。
【0007】
このように、化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板用基材と化粧板転写用離型紙を重ねて加熱押圧し、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材に凹凸のあるマット調の塗工面を転写し、かつ、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材との離型性に優れた化粧板転写用離型紙はなかった。
【0008】
【特許文献1】特開平6−23746号公報
【特許文献2】特開平2002−264288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することのできる、化粧板転写用離型紙およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は鋭意検討の結果、下記の手段により達成されることを見出した。
【0011】
本発明は、木材パルプを主体とした、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより抄造された原紙の片面に顔料とバインダーからなる塗工層を有し、この転写用塗工層上にシリコーンをオーバーコートすることを特徴とする、化粧板転写用離型紙に関する。
【0012】
本発明は、木材パルプを主体とし、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせで原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の片面に顔料およびバインダーを主体とする塗工液を塗工し、キャレンダー温度40〜100℃、キャレンダー線圧40〜150kg/cmのキャレンダー加工を行ない、その後、シリコーンをオーバーコートすることを特徴とする、上記化粧板用離型紙の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧板転写用離型紙は、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することのできる化粧板転写用離型紙であり、その製造方法は、木材パルプを主体とする、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の片面に顔料とバインダーを主体とする塗工液を塗工し、キャレンダー加工処理を行ない、シリコーンをオーバーコートする化粧板転写用離型紙を供給することを可能ならしめるものである。本発明の化粧板転写用離型紙は、化粧板基材となるチタン混抄紙の表面の形状にのみ影響を及ぼす。
【0014】
本発明の有利な一つの実施態様においては、塗工層が顔料およびバインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜20g/mの範囲にある。
【0015】
本発明の有利な一つの実施態様においては、加熱押圧による化粧板の製造において、マット調の塗工面を得るために、塗工層の全顔料100重量部の内、シリカを0〜100重量部配合する。
【0016】
本発明の有利な一つの実施態様においては、オーバーコートするシリコーンの浸透を抑えるために、塗工層を構成するバインダーが溶剤バリア性の高いSBRであり、該バインダーの量が顔料100重量部に対して50〜300重量部である。
【0017】
本発明の有利な一つの実施態様においては、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙との貼り付きをなくすため、塗工層上にオーバーコートするシリコーンの塗工量が固形分で片面当たり0.1〜5g/mの範囲にある。
【0018】
本発明の有利な一つの実施態様においては、上記化粧板転写用離型紙の製造方法において、原紙の抄造、顔料とバインダーを主体とする塗工液の塗工・乾燥、キャレンダー加工をオンマシンによる一貫した工程で行ない、その後、シリコーンをオーバーコートする。
【0019】
このような構成をとることにより、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することのできる化粧板転写用離型紙およびその製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、木材パルプを主体とした、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより化粧板転写用離型紙の原紙を抄造する。木材パルプとしては、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)やLBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)に代表される木材漂白化学パルプが主に使用される。必要に応じて、GP(砕木パルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、BCTMP(晒ケミカルサーモメカニカルパルプ)等の機械パルプやDIP(脱墨古紙パルプ)、さらには、登録商標SWP(ポリオレフィン系合成パルプ)やケナフ、麻等の非木材パルプなどを適宜配合することも出来る。その叩解度は特に限定されるものではない。また、本発明では単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより化粧板転写用離型紙の原紙を抄造するが、多層抄きすることにより、幅方向で坪量や紙厚および紙密度がコントロールでき、均一性の高い原紙を供給できるため、化粧板転写用離型紙の原紙抄造は多層抄き、好ましくは2層以上が好ましい。
化粧板転写用離型紙の原紙について、坪量や紙厚、紙密度は特に限定されるものではないが、坪量が小さく、紙厚が薄い原紙では塗工液を塗工後のしわやカールなどが問題となり、坪量が大きく、紙厚が厚すぎる原紙ではコストがかかる。化粧板転写用離型紙の原紙の坪量は80〜200g/m程度が好ましく、紙厚は80〜250μm程度が好ましい。
【0021】
本発明では、塗工層が顔料およびバインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜20g/m、好ましくは10〜20g/m、特に好ましくは10〜15g/mである。5g/m以下では十分に原紙の表面を塗工することができず、塗工層上にオーバーコートするシリコーンに対する高いバリア性が得られず、加熱押圧による化粧板製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板原紙と化粧板転写用離型紙が貼り付くこととなる。20g/m以上では製造コストのアップに繋がる。好ましくは塗工量10〜15g/mがオーバーコートするシリコーンに対する高いバリア性が得られ、望ましい。
また、塗工液においては、主体となる顔料およびバインダー以外にも耐水化剤、消泡剤、分散剤、保水剤、増粘剤、潤滑剤、湿潤剤、防腐剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、印刷適性向上剤等を適宜使用できる。助剤については特に限定されるものではない。
【0022】
本発明の有利な一つの実施態様において、塗工層の全顔料100重量部の内、シリカを0〜100重量部、好ましくは50〜100重量部、特に好ましくは80〜100重量部、なかでも100重量部使用する。塗工用顔料にはシリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、サチンホワイトやカオリン・クレー等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料があるが、本発明では、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することができる顔料として、シリカが最も適していることを見出した。
好ましくは、シリカ100重量部が望ましいが、シリカとタルク、カオリン、炭酸カルシウムなどの他の顔料と併用しても差し支えなく、併用する場合の他の顔料およびその部数は特に規定するものではない。
【0023】
本発明の有利な一つの実施態様において、オーバーコートするシリコーンの浸透を抑えるために、塗工層を構成するバインダーが溶剤バリア性の高いSBRであり、該バインダーの量が顔料100重量部に対して50〜300重量部、好ましくは70〜250重量部、特に好ましくは100〜150重量部である。バインダーとしては、SBR以外にも、アクリル系ラテックスやウレタン系ラテックス、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、水溶性高分子等、さまざまな種類のバインダーがあるが、本発明においては、塗工層を構成するバインダーがSBRの場合に、オーバーコートするシリコーンに対する高い表面バリア性が得られることが判明した。なお、SBRは単独または上記他バインダーとの併用も可能である。
該バインダーの量は顔料100重量部に対し、SBRが50部未満では塗工層強度が弱いうえ、オーバーコートするシリコーンに対する表面バリア性が不十分となり、加熱押圧による化粧板製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板原紙と化粧板転写用離型紙が貼り付くこととなる。また、バインダーが300部より多い場合には、バインダーによるマシンコーターの汚れが多くなるなどの問題が生じやすく、かつブロッキング現象も生じ、製造コストのアップにも繋がる。該バインダー量は顔料100重量部に対して、特に100〜150重量部が好ましい。
【0024】
本発明の有利な一つの実施態様においては、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙との貼り付きをなくすため、塗工層上にオーバーコートするシリコーンの塗工量が固形分で片面当たり0.1〜5g/m、特に好ましくは1〜3g/mある。加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙との貼り付きをなくすためのオーバーコート剤としては、シリコーン以外にフッ素系化合物等もあるが、本発明においては、シリコーンをオーバーコートした場合に、最も熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙との貼り付きがないことが判明した。これは、シリコーンが化粧板原紙の含浸に用いられる熱硬化性樹脂と最も相互作用がなく、かつ、化粧板製造における加熱押圧において最も熱的に安定だからであると考えている。
塗工層上にオーバーコートするシリコーンの塗工量が固形分で片面当たり0.1g/m未満では、シリコーンのオーバーコート量が不十分で熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付くことになる。5g/mより多い場合には製造コストのアップに繋がる。特に好ましくは、シリコーンのオーバーコート量が1〜3g/mである。
【0025】
また、加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することのできる化粧板転写用離型紙を製造する方法においては、木材パルプを主体とした、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより原紙を抄造し、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙に塗工液を塗工し、キャレンダー温度40〜100℃、キャレンダー線圧40〜150kg/cmのキャレンダー加工を行ない、その後、シリコーンをオーバーコートする。さらに、上記化粧板転写用離型紙の原紙の抄造からキャレンダー加工までの製造過程をオンマシンによる一貫した工程で行なうことも特徴とする、化粧板転写用離型紙の製造方法を提供するものである。
塗工液は、一般の塗工方式、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、カーテンコーター、リップコーター、ロッドコーター、ダイコーター、グラビアコーター、チャンプフレックスコーターなどの塗工方式によってオフマシンコーターあるいはオンマシンコーターで塗工する。塗工方式は特に限定されるものではない。
【0026】
加熱押圧による化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かず、化粧板表面に凹凸のあるマット調の塗工面を付与することのできる化粧板転写用離型紙を製造する方法においては、木材パルプを主体とする、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせによる原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の片面に塗工液を塗工し、キャレンダー加工処理を行ない、その後、シリコーンのオーバーコートを行なう。化粧板転写用離型紙の原紙の抄造は丸網抄紙機、長網抄紙機、トップワイヤーの付いた長網抄紙機、短網抄紙機あるいはそれらのコンビネーション抄紙機等で行なわれるが、これらに限定されるもではない。
具体的に上記の一般的操作を以下に例示する:
パルプはNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)/LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)=0/100〜50/50(重量比)、内添サイズ剤としてロジン系エマルジョン(星光PMC社製、商品名:AL1200)を対パルプ0.05〜0.5%(有効成分)、定着剤として硫酸バンドを対パルプ0.1〜2%(有効成分)、カチオン化澱粉を対パルプ0.5〜2%(有効成分)を添加し、さらに、内添填料としてタルク(太平タルク社製、商品名:Tライト83)を対パルプ1〜5%(有効成分)、カオリン(PT.YUDIAN SEJAHTERA製、商品名:YUDIAN)を対パルプ1〜5%(有効成分)添加し、3層抄き合わせにより抄紙し、サイズプレスにて、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(星光PMC社製、商品名:ST5000)1〜7%液および表面サイズ剤としてアニオン性スチレンアクリル樹脂(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロン1343S)0.01〜0.3%からなるサイズプレス液を両面で20〜50ml/m塗布し、ドライヤーで乾燥し、引き続き該丸網抄紙機に設備されているエアーナイフコーターにて抄造した原紙の片面に、顔料とバインダーを主体とする塗工液を片面当たり5〜20g/m(固形分)でオンマシン塗工し、一方の面にはカール止め用液をオンマシン塗布し、乾燥後、引き続き該丸網抄紙機に設備されているキャレンダーにて温度40〜100℃、線圧40〜150kg/cmで平滑性を与えるためオンマシンキャレンダー処理するまでを一貫した工程で行ない、その後、シリコーン(信越シリコーン社製、商品名:KS−847)をオフコーターマシンにてオーバーコートし、ドライヤーで乾燥して、化粧板転写用離型紙を製造する。
なお、本発明はこの一般的操作に限定されるものではない。
実施例:
【0027】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。なお、部および%は固形分換算での重量部、重量%を示す。
【実施例1】
【0028】
<原紙の抄造>
NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)/LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)=40%/60%配分のパルプを混合叩解してカナディアンスタンダードフリーネス(以下CSFと略す)500mlのパルプを得、内添サイズ剤としてロジン系エマルジョン(星光PMC社製、商品名:AL1200)を対パルプ0.1%、硫酸バンドを対パルプ0.85%、カチオン化澱粉を対パルプ1%、内添填料としてタルク(太平タルク社製、商品名:Tライト83)を対パルプ3%、および、カオリン(PT.YUDIAN SEJAHTERA製、商品名:YUDIAN)を対パルプ3%逐次添加し、丸網抄紙機にて各層坪量60g/mの3層抄き合わせにより、坪量180g/mの紙を抄紙し、サイズプレスにて、表面紙力剤として変性ポリアクリルアミド系樹脂(星光PMC(株)製、商品名:ST5000)6%(有効成分)および表面サイズ剤としてアニオン性スチレンアクリル樹脂(荒川化学工業社製、商品名:ポリマロン1343S)0.03%(有効成分)からなるサイズプレス液を両面で40ml/m塗布し、ドライヤーで乾燥して原紙を抄造した。
<化粧板転写用離型紙の製造>
上記サイズプレス液を塗布し、乾燥して得た原紙は巻き取ることなく、該丸網抄紙機に設備されているエアーナイフコーターにて下記に示す塗工液を該原紙の片面に10g/m(固形分)でオンマシン塗工し、一方の面には、カール止め用液をオンマシン塗布し、乾燥させた後、引き続き該丸網抄紙機に設備されているキャレンダーにて温度45℃、線圧60kg/cmの条件でオンマシンキャレンダー処理し、坪量190g/m、紙厚0.22mm、密度0.86g/cmの塗工紙を得た後、オフマシンコーターにてシリコーンの20%濃度トルエン溶液(信越シリコーン社製、商品名:KS−847)を塗工面に1g/m(固形分)オーバーコートし、乾燥して、坪量191g/m、紙厚0.22mm、密度0.87g/cmの凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
<塗工液調製>
水に分散剤(日本触媒社製、商品名:アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、シリカ(トクヤマ社製、商品名:トクシールGU−N)100部をカウレス分散機にて分散し、20%濃度のシリカスラリーを調製した。このシリカスラリーにSBR(旭化成社製、商品名:A−5832)をシリカに対して100部添加、攪拌し、その後、消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度28%の塗工液を調製した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【実施例2】
【0029】
塗工液の調製を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にして、凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
<塗工液調製>
水に分散剤(日本触媒社製、商品名:アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、シリカ(トクヤマ社製、商品名:トクシールGU−N)100部をカウレス分散機にて分散し、20%濃度のシリカスラリーを調製した。このシリカスラリーにSBR(旭化成社製、商品名:A−5832)をシリカに対して70部添加、攪拌し、その後、消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度26%の塗工液を調製した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【実施例3】
【0030】
原紙の抄造後、実施例1と同様の塗工液を該原紙の片面に5g/m(固形分)塗工した以外は、実施例1と同様にして坪量186g/m、紙厚0.22mm、密度0.85g/cmの凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【実施例4】
【0031】
実施例1と同様のシリコーンを塗工紙の塗工面に0.1g/m(固形分)オーバーコートした以外は、実施例1と同様にして坪量190.1g/m、紙厚0.22mm、密度0.86g/cmの凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【実施例5】
【0032】
原紙の抄造後、実施例2と同様の塗工液を該原紙の片面に5g/m(固形分)塗工し、この塗工面に実施例1と同様のシリコーンを0.1g/m(固形分)オーバーコートした以外は、実施例1と同様にして坪量185.1g/m、紙厚0.22mm、密度0.84g/cmの凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【0033】
比較例1:
化粧板転写用離型紙の製造でシリコーンの20%濃度トルエン溶液の代わりに20%固形分濃度のフッ素化合物(TKガード285:高松油脂株式会社)原液を1.5g/m(固形分)の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にして、凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【0034】
比較例2:
化粧板転写用離型紙の製造でシリコーンの20%濃度トルエン溶液の代わりにフッ素樹脂(LODYNEE2000:チバスペシャリティーケミカルズ株式会社)16.9%濃度原液を1g/m(固形分)の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にして、凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【0035】
比較例3:
化粧板転写用離型紙の製造でシリコーンの20%濃度トルエン溶液の代わりに35%固形分濃度ポリエチレンワックスエマルジョン(ハイテックE2000:東邦化学株式会社)を1g/m(固形分)の塗工量で塗工した以外は、実施例1と同様にして、凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての下記試験の結果を表1に記載した。
【0036】
評価方法:
得られた凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙について、下記の方法による評価を行なった。
化粧板転写用離型紙適性:
チタン混抄紙に熱硬化性樹脂であるメラミン樹脂を含浸して、メラミン樹脂含浸チタン混抄紙を作成し、5×5cmにカットしたメラミン樹脂含浸チタン混抄紙と実施例1〜5、比較例1〜3の凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を、混抄紙を下に混抄紙/離型紙/混抄紙/離型紙の順で各5枚重ね合わせ、熱圧プレス機(東洋精機社製、ミニテストプレス)にて150℃、100kg/cmで30分間加熱押圧後の化粧板転写用離型紙とメラミン樹脂含浸チタン混抄紙の剥離性を下記の基準で評価した。
◎ : 全く貼り付かない(化粧板転写用離型紙としての適性が十分ある)
○ : ほとんど貼り付かない(化粧板転写用離型紙として問題ないレベル)
△ : 若干貼り付きがある(化粧板転写用離型紙としてやや難あり)
× : 貼り付く(化粧板転写用離型紙としての適性がない)
【0037】
実施例1〜5、比較例1〜3の凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙の評価結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1から判る通り、オーバーコート樹脂としてフッ素化合物、フッ素樹脂またはポリエチレンワックスエマルジョンを使用して製造された比較例1〜3の化粧板転写用離型紙の場合には、化粧板転写用離型紙とメラミン樹脂含浸チタン混抄紙とが貼り付いてしまい、オーバーコート樹脂としての適性がないことが判った。これに対してオーバーコート樹脂としてシリコーンを使用した場合には、実施例4および5におけるごとく、比較例1〜3に比べ著しく少ない0.1g/mという塗工量であっても優れた適性があることが判る。
【0040】
比較例4:
塗工液の調製を下記のように行なった以外は、実施例1と同様にして、凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
<塗工液調製>
水に分散剤(日本触媒社製、商品名:アクアリックDL−40)を顔料に対して0.05%添加し、シリカ(トクヤマ社製、商品名:トクシールGU−N)100部をカウレス分散機にて分散し、20%濃度のシリカスラリーを調製した。このシリカスラリーにSBR(旭化成社製、商品名:A−5832)をシリカに対して30部添加、攪拌し、その後、消泡剤等の助剤を添加、攪拌して濃度25%の塗工液を調製した。得られた離型紙についての試験結果を表2に記載した。
【0041】
比較例5:
原紙の抄造後、実施例1と同様の塗工液を該原紙の片面に3g/m(固形分)塗工した以外は、実施例1と同様にして坪量184g/m、紙厚0.22mm、密度0.84g/cmの凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。得られた離型紙についての試験結果を表2に記載した。
【0042】
比較例6:
実施例1と同様のシリコーンを塗工紙の塗工面に0.05g/m(固形分)オーバーコートした以外は、実施例1と同様にして坪量190.05g/m、紙厚0.22mm、密度0.86g/cmの凹凸のあるマット調の化粧板転写用離型紙を製造した。
得られた離型紙についての試験結果を表2に記載した。
【0043】
【表2】

【0044】
上記表2のデータによると、実施例1ではシリカ100部に対し、SBR100部の塗工液を塗工することで、オーバーコートする溶剤系シリコーンに対する高い表面バリア性が得られ、化粧板転写用離型紙の凹凸のあるマット調の転写用塗工面を転写し、かつ、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かないこと、即ち化粧板転写用離型紙適性が十分あることが判る。これは実施例2のようにSBR70部でも化粧板転写用離型紙として問題ないレベルの適性があることが判る。これに対して、比較例4ではシリカ100部に対して、SBR30部であり、オーバーコートする溶剤系シリコーンに対する表面バリア性がなく、化粧板転写用離型紙適性がないことが判る。
このように、塗工液におけるSBRの添加量はシリカ100部に対して50〜300部の範囲内の70部である場合には化粧板転写用離型紙適性が得られる。十分な化粧板転写用離型紙適性を得るためには、比較例4を考慮すれば顔料100部に対して50〜300部のSBR添加量が必要である。
【0045】
表1の実施例3では、シリカとSBRからなる塗工液の塗工量が5g/mであり、実施例1の塗工量10g/mに比べると少なく、化粧板転写用離型紙適性もやや劣るものの、化粧板転写用離型紙として問題ないレベルであることが判る。これに対し、比較例5ではシリカとSBRからなる塗工液の塗工量が3g/mであり、オーバーコートする溶剤系シリコーンに対する表面バリア性が低く、化粧板転写用離型紙適性がないことが判る。
このように、顔料とバインダーを主体とする塗工液の塗工量は5g/m以上でないと化粧板転写用離型紙適性が得られない。十分な化粧板転写用離型紙適性を得るためには、顔料とバインダーを主体とする塗工液の塗工量は5〜20g/mである。
【0046】
表1に記載の実施例4では、オーバーコートするシリコーンの塗工量が0.1g/mであり、実施例1のシリコーン塗工量1g/mに比べると少なく、化粧板転写用離型紙適性も劣るものの、化粧板転写用離型紙として問題ないレベルであることが判る。これに対し、比較例6ではオーバーコートするシリコーンの塗工量が0.05g/mであり、シリコーンのオーバーコート量が不十分のため、化粧板転写用離型紙適性がないことが判る。
このように、オーバーコートするシリコーンの塗工量は0.1g/m以上でないと化粧板転写用離型紙適性が得られない。
【0047】
表1に記載の実施例5では、実施例2と同様の塗工液を実施例3と同様に紙の片面に5g/m(固形分)塗工し、この塗工面にシリコーンを実施例4と同様に0.1g/mオーバーコートしており、SBRの部数、シリカとSBRを主体とする塗工液の塗工量、オーバーコートするシリコーンの塗工量のいずれも下限であるが、化粧板転写用離型紙適性として問題ないレベルであることが判る。これに対し、比較例4〜6では、SBRの部数、シリカとSBRを主体とする塗工液の塗工量、オーバーコートするシリコーンの塗工量のいずれか1つでも規定値より少ないと化粧板転写用離型紙適性が得られないことが判る。
実施例1〜5は、化粧板転写用離型紙適性として問題ないレベルであり、特に実施例1に示すように、SBRの部数が100部以上、シリカとSBRを主体とする塗工液の塗工量が10g/m以上、オーバーコートするシリコーンの塗工量が1g/m以上の場合に十分に良好な化粧板転写用離型紙適性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、成形前の化粧板の模式図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプを主体とした、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせにより抄造された原紙の片面に顔料とバインダーからなるマット調の転写用塗工層を有し、マット調の転写用塗工層上にシリコーンをオーバーコートすることを特徴とする、化粧板転写用離型紙。
【請求項2】
転写用離型紙のマット調の転写用塗工層が顔料およびバインダーを主体としており、塗工量が固形分で片面当たり5〜20g/mの範囲にある、請求項1または2に記載の化粧板転写用離型紙。
【請求項3】
転写用離型紙のマット調の転写用塗工層を構成する前記バインダーがスチレン−ブタジエン系ラテックス(以下、「SBR」と略す。)であり、該バインダーの量が顔料100重量部に対して50〜300重量部である、請求項1または2に記載の化粧板転写用離型紙。
【請求項4】
転写用離型紙のマット調の転写用塗工層上にオーバーコートするシリコーンの塗工量が固形分で片面当たり0.1〜5g/mの範囲にある、請求項1〜3に記載の化粧板転写用離型紙。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板転写用離型紙を製造する方法において、木材パルプを主体とし、単層または少なくとも2層以上の抄き合わせで原紙の抄造を行ない、サイズプレス処理を施し、そして乾燥し、得られる原紙の片面に顔料およびバインダーを主体とする塗工液を塗工し、キャレンダー温度40〜100℃、キャレンダー線圧40〜150kg/cmのキャレンダー加工を行ない、その後、シリコーンをオーバーコートすることを特徴とする、上記化粧板転写用離型紙の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の化粧板転写用離型紙の製造方法において、原紙の抄造、塗工液の塗工、キャレンダー温度40〜100℃、キャレンダー線圧40〜150kg/cmのキャレンダー加工をオンマシンによる一貫した工程で行なうことを特徴とし、その後、シリコーンをオーバーコートする、上記化粧板転写用離型紙の製造方法。
【請求項7】
化粧板の製造において、熱硬化性樹脂含浸化粧板用基材と請求項1〜4のいずれか一つに記載の化粧板転写用離型紙を重ねて加熱押圧し、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材に化粧板転写用離型紙の凹凸のあるマット調の転写用塗工面を転写し、かつ、熱硬化性樹脂含浸化粧板基材と化粧板転写用離型紙が貼り付かないことを特徴とする、化粧板転写用離型紙の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−7875(P2007−7875A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187900(P2005−187900)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000241810)北越製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】