医用ガイドシステム
【課題】診断中もしくは診断後に、術者が超音波走査を行った範囲を容易に確認することが可能な医用ガイドシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る医用ガイドシステムは、被検体との間で超音波の送受信を行う超音波振動子の位置及び配向を検出し出力する検出部と、人体の器官の解剖学的な位置情報を有する参照画像データを記憶する参照画像記憶部と、前記検出部からの出力と前記参照画像データとに基づいて、人体の器官の解剖学的なモデル画像と、該モデル画像に対する最新の前記超音波断層像の位置及び配向の少なくとも一方を示す超音波断層像マーカと、前記モデル画像に対する過去において前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴マーカと、からなるガイド画像を作成し表示装置に出力するガイド画像作成部と、を具備する。
【解決手段】本発明に係る医用ガイドシステムは、被検体との間で超音波の送受信を行う超音波振動子の位置及び配向を検出し出力する検出部と、人体の器官の解剖学的な位置情報を有する参照画像データを記憶する参照画像記憶部と、前記検出部からの出力と前記参照画像データとに基づいて、人体の器官の解剖学的なモデル画像と、該モデル画像に対する最新の前記超音波断層像の位置及び配向の少なくとも一方を示す超音波断層像マーカと、前記モデル画像に対する過去において前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴マーカと、からなるガイド画像を作成し表示装置に出力するガイド画像作成部と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官に対する超音波断層像の位置を示すガイド画像を作成する医用ガイドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波診断装置においては、超音波振動子を用いて生成された現在の超音波断層像や記録後の超音波断層像が被検体のどの部位の走査によって得られたものであるかを術者等に認識させる技術が提案されている。
【0003】
例えば、特開2004−121488号公報には、位置センサを搭載した超音波プローブを用い、検査中に取得した超音波断層像を3次元座標上に配置して表示させる技術が開示されている。また、特開2006−149481号公報には、位置センサを搭載した超音波プローブを使用し、位置センサにより検出した超音波断層像位置を超音波断層像マーカとして、人体の模式図データから作成した立体画像上に合成して表示させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−121488号公報
【特許文献2】特開2006−149481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2004−121488号公報の超音波断層像を3次元座標上に配置する表示では、配置された一連の超音波断層像の位置関係を補助として、術者が超音波断層像を解釈することで、初めて超音波断層像と臓器の位置関係を知ることが可能である。そのため、検査対象部位の全体を見落とし無く検査できたかを確認するためには、取得した超音波断層像からボリュームデータを作成して画像の解釈をする必要があり、検査時間が長くなってしまうという問題点があった。
【0005】
また、特開2006−149481号公報の立体画像上に超音波断層像マーカを合成表示する方法では、表示されている1枚の超音波断層像の位置しか表示されないため、超音波検査開始からこれまでに検査した範囲を確認することができない。そのため、検査中に超音波検査を行った範囲を判断することができず、検査対象部位の全体を見落とし無く、短時間で検査するのが困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、診断中もしくは診断後に、術者が超音波走査を行った範囲を容易に確認することが可能な医用ガイドシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る医用ガイドシステムは、被検体との間で超音波の送受信を行う超音波振動子を具備し、該超音波振動子から出力される超音波信号に基づいて超音波断層像を撮像する超音波診断装置の、前記超音波振動子の位置及び配向の少なくとも一方を検出し出力する検出部と、人体の器官の解剖学的な位置情報を有する参照画像データを記憶する参照画像記憶部と、前記検出部からの出力と前記参照画像データとに基づいて、人体の器官の解剖学的なモデル画像と、該モデル画像に対する最新の前記超音波断層像の位置及び配向の少なくとも一方を示す超音波断層像マーカと、前記モデル画像に対する過去において前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴マーカと、からなるガイド画像を作成し表示装置に出力するガイド画像作成部と、を具備することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、医用器具として超音波内視鏡を使用し、医用ガイドシステムは該超音波内視鏡の操作の支援を行うガイド画像を生成するものとして、説明を行う。
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図14を参照して説明する。図1は医用ガイドシステムの構成を示すブロック図である。図2は被検体の標本点に装着された4個の体表検出用コイルを示す図である。図3は、参照画像記憶部に記憶されている参照画像データを概念的に示す図である。図4は、ボクセル空間の構成を示す図である。
【0010】
本実施形態の医用ガイドシステム1は、医用器具としての超音波内視鏡2による診断操作を支援するためのガイドを行うシステムである。本実施形態の医用ガイドシステム1は、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、位置配向算出装置4と、画像処理装置5と、表示装置8と、光学観察装置10と、入力装置11とを備えてなり、各装置は有線又は無線の通信手段により接続されている。
【0011】
また、医用ガイドシステム1は、該医用ガイドシステム1の外部に設けられた光ファイバ、電気ケーブル、無線通信等を用いたネットワーク14に接続されている。該ネットワーク14には、X線3次元ヘリカルCT装置(X−ray 3−dimensional computed tomography system)16、3次元MRI装置(3−dimensional magnetic resonance imaging system)15、外部記憶装置17が接続されている。医用ガイドシステム1は、ネットワーク14を介して、3次元MRI装置15、X線3次元ヘリカルCT装置16及び外部記憶装置17とデータの授受が可能である。
【0012】
医用器具としての超音波内視鏡2は、食道、胃、十二指腸などの体腔内に挿入される挿入部の先端に配設されステンレス等の硬質な材料で構成された硬性部21と、硬性部21の基端側に配設され可撓性のある材料で構成された長尺の可撓部22と、可撓部22の基端側に配設され硬質な材料で構成された操作部23とからなる。術者は、該操作部23を把持して超音波内視鏡2の操作を行う。また、超音波内視鏡2は、超音波観測装置3、光学観察装置10、及び位置配向算出装置4に図示しない接続コネクタを介して電気的に接続されている。
【0013】
硬性部21は、撮像装置27と、超音波振動子アレイ31と、画像位置配向検出用コイル44を具備して構成されている。撮像装置27は、撮像素子としてのCCD(Charge Coupled Device)26と、該CCD26の受光面上に被写体像を結像するレンズ25等を具備してなり、ガラス製の光学観察窓24を介して体腔内を光学的に撮像する装置である。硬性部21には、該撮像装置27の視野方向に照明光を照射する図示しない照明装置が配設されており、撮像装置27は、照明装置により照明された体腔内の光学的な画像を取得し、CCD信号として光学観察装置10へ出力する。
【0014】
超音波振動子アレイ31は、いわゆる電子ラジアル走査型の超音波振動子アレイであり、硬性部21を体腔内に挿入する方向に沿う挿入軸周りに環状に配設された、複数の超音波振動子により構成されている。超音波振動子アレイ31は、挿入軸に直交する平面上において超音波ビームを放射方向に所定の時間間隔で走査しながら送受することにより、超音波断層像を得るために必要なエコー信号を取得し、超音波観測装置3へ出力する。
【0015】
超音波振動子アレイ31は、超音波観測装置3に電気的に接続されている。超音波観測装置3は、超音波振動子アレイ31が送信する超音波ビームの強度、角度、フォーカス等を制御すると共に、超音波振動子アレイ31により取得されたエコー信号から走査面における超音波断層像データを生成し、出力する。
【0016】
なお、以下において、実空間において固定された座標系を直交座標軸O−xyzとして定義する。本実施形態では、例えば図2に示すように、直交座標軸O−xyzは、超音波診断時に被検体100が横たわる診察台に対する位置が固定されている。
【0017】
また、超音波振動子アレイ31により走査が行われる平面を、ラジアル走査面SPと称するものとする。また、硬性部21に固定した正規直交基底(各方向の単位ベクトル)V、V3、V12を図1に示すように定義する。すなわち、基底ベクトルVを硬性部21の挿入軸方向と平行、すなわちラジアル走査面SPの法線方向ベクトルとし、超音波振動子21の所定の走査方向を12時方向とした場合に、3時方向に向く基底ベクトルをV3、12時方向に向く基底ベクトルをV12とする。なお、ベクトルについては太字のイタリック体で表記するのが一般的であるが、本実施形態においては通常の英数字を用いて標記するものとする。また、超音波振動子アレイ31が走査を行う面上における超音波振動子アレイ31による走査範囲を、超音波断層像データの撮像範囲Rと称するものとする。
【0018】
画像位置配向検出用コイル44は、環状の超音波振動子アレイ31の中心近傍に、超音波振動子アレイ31との位置関係が固定されて硬性部21内に配設されている。画像位置配向検出用コイル44は、基底ベクトルV及びV3と平行な軸周りにそれぞれ巻かれた2つのコイルが一体に組み合わされて構成されている。また、該画像位置配向検出用コイル44の中心を位置O”とする。なお、図1においては、説明のため、画像位置配向検出用コイル44と、超音波振動子アレイ32の中心とを離間して示している。
【0019】
すなわち、画像位置配向検出用コイル44の位置O”は、超音波振動子アレイ31の走査中心の位置と略一致するものであり、本実施形態においては超音波断層像データの撮像範囲Rの中心位置を示すものである。また、基底ベクトルV、V3、V12は、超音波断層像データの配向を示すものである。
【0020】
検出部である位置配向算出装置4は、超音波内視鏡2の硬性部21に配設された画像位置配向検出用コイル44とA/D変換装置46を介して接続されているとともに、送信アンテナ41に電気的に接続されている。位置配向算出装置4は、体表検出用コイル42とA/D変換装置45を介して接続されている。また、位置配向算出装置4は、例えばRS−232C規格のケーブル等を介して画像処理装置5に電気的に接続されている。
【0021】
送信アンテナ41は、図示しないそれぞれ巻線軸の配向が異なる複数個の磁場発生用コイルを具備して構成されており、位置配向算出装置4からの出力に応じて交番磁場を発生する装置である。
【0022】
送信アンテナ41は、実空間上において位置が固定されて設置されるものであり、本実施形態では、送信アンテナ41は、超音波診断時に被検体100が横たわる診察台に対して位置が固定されている。すなわち、本実施形態では、直交座標軸O−xyz上において送信アンテナ41はその位置が固定されている。
【0023】
A/D変換装置45及び46は、入力された信号を増幅する図示しないアンプと、増幅された信号をサンプリングしてデジタルデータへ変換する図示しないアナログデジタル変換回路とを具備して構成されている。
【0024】
超音波内視鏡2の硬性部21に配設された画像位置配向検出用コイル44は、送信アンテナ41により発生された交番磁場を検出し、位置電気信号に変換してA/D変換装置46へ出力する。
【0025】
また、複数の体表検出用コイル42は、送信アンテナ41により発生された交番磁場を検出するためのコイルをそれぞれ具備して構成されおり、コイルが検出した交番磁場を位置電気信号に変換してA/D変換装置45へ出力する。
【0026】
位置配向算出装置4は、画像位置配向検出用コイル44及び体表検出用コイル42からそれぞれ出力されA/D変換装置45及び46によりデジタルデータに変換された、位置電気信号に基づいて、画像位置配向検出用コイル44及び複数の体表検出用コイル42の、送信アンテナ41に対するそれぞれの位置及び配向を算出する構成を有するものである。
【0027】
具体的には、位置配向算出装置4は、基底ベクトルV及びV3と平行な軸周りにそれぞれ巻かれた2つのコイルからなる画像位置配向検出用コイル44から出力される位置電気信号に基づいて、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の中心の位置O”と、基底ベクトルV及びV3とを算出し、該情報を画像処理装置5へ出力する。
【0028】
また、位置配向算出装置4は、体表検出用コイル42から出力される位置電気信号に基づいて、直交座標軸O−xyz上における体表検出用コイル42の位置及び配向を算出し、該情報を画像処理装置5へ出力する。
【0029】
本実施形態では、4個の体表検出用コイル42が、被検体100の体表の特徴のある4箇所の点(以下、被検体100の体表の特徴のある点を、単に標本点と称する)の近傍にテープ、ベルト、バンド、接着剤、負圧吸引等により装着され固定される。
【0030】
なお、本実施形態においては、4箇所の標本点A1〜A4を以下のように定める。すなわち、標本点A1を「剣状突起」(xiphoid process)、標本点A2を骨盤(pelvis)の左側の「左上前腸骨棘」(left anterior superior iliac spine)、標本点A3を骨盤の右側の「右上前腸骨棘」(right anterior superior iliac spine)、標本点A4を左右の上前腸骨棘の中間で脊椎上の「腰椎椎体棘突起」(spinous process of vertebral body)と定義する(図2参照)。
【0031】
4点の標本点A1〜A4は同一平面上には存在しない位置関係のものが採用される。このため、図2に示すように、剣状突起(標本点A1)を原点として他の標本点A2〜A4へ向かう3本のベクトルを基本ベクトルとした斜交座標系(un-orthogonal reference frame)を直交座標軸O−xyz上において算出する事が可能である。
【0032】
なお、4点の標本点A1〜A4は、本実施形態で示したものに限られるものではなく、使用する医用器具の形態及び該医用器具を使用する部位に応じて、適宜に変更されるものである。また、4点の標本点A1〜A4は、被検体100の骨格の特徴のある箇所であり、術者が触診により位置を特定可能な位置であることが好ましい。
【0033】
上述した位置配向算出装置4による、画像位置配向検出用コイル44の位置O”及び基底ベクトルV、V3の算出と、4個の体表検出用コイル42の位置及び配向の算出とは、超音波観測装置3による超音波断層像データの取得タイミングと同期して行われる。
【0034】
以下、位置配向算出装置4により算出され画像処理装置5へ出力されるデータのうち、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の位置O”のx座標、y座標及びz座標の値と、基底ベクトルVのx座標成分、y座標成分、z座標成分の値と、基底ベクトルV3のx座標成分、y座標成分、z座標成分の値と、を「画像位置配向検出用コイル位置配向データ」と称するものとする。
【0035】
また、位置配向算出装置4により算出され画像処理装置5へ出力されるデータのうち、直交座標軸O−xyz上における4個の体表検出用コイル42のそれぞれのx座標、y座標及びz座標の値を「体表検出用コイル位置データ」と称するものとする。
【0036】
また、上記「画像位置配向検出用コイル位置配向データ」と「体表検出用コイル位置データ」とを組み合わせたデータを単に「位置配向データ」と称するものとする。
【0037】
次に画像処理回路5の構成を説明する。画像処理装置5は、図1に示すように、通信回路51と、参照画像記憶部52と、検査範囲記憶部53と、シネメモリ54と、保存用断層像記憶部55と、3次元ガイド画像作成回路65と、混合回路67と、表示回路68と、制御回路60とを具備して構成されている。
【0038】
制御部である制御回路60は、演算装置、記憶装置、入出力装置等を具備して構成され、画像処理装置5の動作を制御するものであり、画像処理装置5内の各部や各回路と図示しない信号線を介して電気的に接続されている。また、本実施形態においては、制御回路60は、超音波観測装置3及び位置配向算出装置4の動作の制御も行うものである。
【0039】
制御回路60には、指示部である入力装置11が電気的に接続されている。本実施形態の入力装置11は、キーボード12およびマウス13により構成されている。制御回路60は、入力装置11を介して入力される術者からの指示に基づいて、医用ガイドシステム1の動作を制御する。本実施形態においては、キーボード12には、断層像1枚像保存キー12a、断層像連続保存キー12b、走査開始終了キー12c等からなるスイッチ群が配設されている。
【0040】
なお、入力装置11は、本実施形態においてはキーボード12及びマウス13により構成されるものとしているが、これは入力装置の一例として挙げたものであり、本実施形態に限られるものではない。入力装置11は、例えばトラックボール、タッチパネル等のポインティングデバイスや、プッシュスイッチ、ロータリースイッチ等のスイッチにより構成されるものであってもよい。また、入力装置11は、音声やジェスチャーにより術者が操作指示の入力を行うことが可能なものであってもよい。
【0041】
参照画像記憶部52は、大容量のデータを記憶することが可能な例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、テープドライブ等からなる。参照画像記憶部52には、人体の解剖学的な3次元の画像情報である参照画像データ群GRDが記憶されている。
【0042】
参照画像データ群GRDは、X線3次元ヘリカルCT装置16、3次元MRI装置15等によりある所定の人体から取得され、外部記憶装置17に記憶されていた人体の断層像のデータが、ネットワーク14を介して画像処理装置5に入力されたものである。図3に示すように、参照画像データ群GRDは、人体の体軸(頭から足に抜ける直線軸)に略直交する断面の一辺数十cmの正方形の領域における断層像RDの集合からなるデータであり、該断層像RDは、体軸に沿って0.5mm〜数mmピッチで取得されたものである。ここで、図3に示した参照画像データ群GRDにおいて、図面に正対して図面の下方向が人体の背方向であり、図面の手前から奥方向が人体の頭部方向である。
【0043】
なお、参照画像データ群GRDは、被検体100本人から取得されるものであってもよいし、異なる一人又は複数人の人体から取得されるものであってもよい。また、参照画像データ群GRDは、身長や体格等の人体の身体的特徴や性別等の条件ごとに、あらかじめ異なる人体から取得されるものであってもよい。また、参照画像データ群GRDは、X線3次元ヘリカルCT装置16、3次元MRI装置15から、直接ネットワーク14経由で画像処理装置5に入力され、参照画像記憶部52に記憶されるものであってもよい。
【0044】
また、図3に示すように、参照画像データ群GRDに対して固定された直交座標軸O’−x’y’z’を定義する。ここで、原点O’を最も脚部側である参照画像データRDの左下に定義し、x’軸を横辺に平行、y’軸を縦辺に平行に定義する。すなわち、z’軸は体軸と平行となる。
【0045】
本実施形態では、一例として参照画像データ群GRDは、X線3次元ヘリカルCT装置16により取得された、人体の腹部の複数の断層像RDから構成されており、X線造影剤の作用により、大動脈等の血管111は高輝度に、膵臓(pancreas)110等の末梢血管を多く含む器官は中輝度に、十二指腸(duodenum)112等は低輝度に造影されている。
【0046】
3次元ガイド画像作成回路65は、3次元画像処理を高速に行うための演算装置、抽出回路、ボリュームメモリ等を具備して構成されている。
【0047】
ボリュームメモリは、大容量のデータを格納可能に構成されたメモリである。このボリュームメモリが備える記憶領域の少なくとも一部には、ボクセル空間が割り当てられている。ボクセル空間は、図4に概略的に示すように、参照画像データ群GRDに設定した直交座標軸O’−x’y’z’に対応するアドレスを持つメモリセル(以下、ボクセル)から構成されている。
【0048】
抽出回路は、参照画像記憶部52に記憶された参照画像データ群GRDから、人体の所定の器官である関心器官のデータを抽出し、ボリュームメモリのボクセル空間に抽出データとして書き出すものである。該抽出データは、ボクセル空間上において関心器官の3次元モデル画像を構成するデータである。
【0049】
また、詳しくは後述するが、3次元ガイド画像作成回路65は、実空間における超音波断層像データの撮像範囲Rの位置及び配向をボクセル空間上において表現する3次元画像データである指標データを、位置配向データ等に基づいて公知の座標変換等により算出し、さらに該指標データを抽出データと合成した合成データを作成する。
【0050】
指標データは、直交座標軸O’−x’y’z’上における最新の超音波断層像データの撮像範囲Rを示す超音波断層像マーカと、直交座標軸O’−x’y’z’上において過去において超音波断層像データの取得が行われた領域を示す撮像履歴マーカとの少なくとも一方により構成される画像データである。
【0051】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、ボリュームメモリ内のボクセル空間から合成データを読み出し、該合成データに対して陰面消去、陰影付加、視線変換に伴う座標変換等の公知の3次元画像処理を施し、3次元ガイド画像データを作成する構成を有する。
【0052】
混合回路67は、超音波観測装置3から出力された超音波断層像データと、3次元ガイド画像作成回路65から出力された3次元ガイド画像データとを合成した混合データを生成するものである。
【0053】
表示回路68は、混合回路67から出力された混合データをビデオ信号に変換し、表示装置8に出力するものである。また、表示回路68は、光学観察装置10から出力された光学像データをビデオ信号に変換し、表示装置8へ出力する構成も有する。
【0054】
表示装置8は、ブラウン管モニタ、液晶モニタ等の画像表示部を具備し、該画像表示部にビデオ信号に基づいた画像を表示する構成を有するものである。
【0055】
シネメモリ54は、高速に読み書き可能な記憶装置であるメモリ等により構成されている。シネメモリ54は、超音波振動子アレイ31の連続したラジアル走査により得られる一連の複数の超音波断層像データと、該複数の超音波断層像データのそれぞれの取得に同期して算出した複数の位置配向データと、複数の超音波断層像データのそれぞれに付された通し番号と、を互いに関連付けて記憶するものである。
【0056】
撮像範囲記憶部53は、高速に読み書き可能な記憶装置であるメモリ等により構成されている。
【0057】
保存用断層像記憶部55は、大容量のデータを記憶することが可能な例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、テープドライブ等からなる。保存用断層像記憶部55は、シネメモリ54に記憶されている複数の超音波断層像データと、該複数の超音波断層像データに関連付けられたデータとのうちの、入力装置11を介して術者から保存の命令がなされたものを記憶するものである。
【0058】
ここで、術者からの保存の命令は、超音波内視鏡2の超音波振動子アレイ31による走査中に、術者がキーボード12の断層像1枚像保存キー12a又は断層像連続保存キー12bを押下することによりなされるものである。
【0059】
本実施形態では、術者により断層像1枚像保存キー12aが押下された場合には、その時点における最新の1つの超音波断層像データと、該超音波断層像データの取得時の位置配向データとが、シネメモリ54から読み出されて、静止画像の保存用断層像データとして保存用断層像記憶部55に記憶される。
【0060】
また、術者により断層像連続保存キー12bが押下された場合には、断層像連続保存キー12bが押下された時点においてシネメモリ54に記憶されている全ての超音波断層像データが読み出され、動画像の保存用断層像データとして保存用断層像記憶部55に記憶される。すなわち、術者により断層像連続保存キー12bが押下された場合には、保存用断層像データは、所定の時間間隔で連続して取得された複数の超音波断層像データにより構成された動画像となる。また、同時にシネメモリ54に記憶されている全ての超音波断層像データに関連付けられた位置配向データも保存用断層像記憶部55に記憶される。
【0061】
次に、上述した構成を有する本実施形態の医用ガイドシステム1の診断時の動作について術者の実際の使用形態に沿って説明する。図5は、医用ガイドシステムの全体の動作を表すメインルーチンのフローチャートである。図6は、超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理のフローチャートである。図7は、撮像範囲データの一例を示す表である。図8は、3次元ガイド画像を説明する図である。図9は、表示装置に表示される混合データを説明する図である。図10は、保存用断層像記憶部に保存されるファイルの一例を示す表である。図11は、3次元ガイド画像データ作成処理のフローチャートである。図12は、関心器官の3次元モデル画像の一例である。図13は、座標変換の概念を説明する図である。図14は、撮像履歴再生画像を説明する図である。
【0062】
なお、以下においては、被検体100の体腔内に超音波内視鏡2の硬性部21及び可撓部22を挿入して診断を行うものとし、診断を行う際の関心器官として膵臓を抽出して表示する場合を例に挙げて説明する。
【0063】
まず、制御回路60は、これから診断を行う関心器官の種類を示す関心器官情報を取得する(ステップS01)。ここで、制御回路60は、術者に人体の器官の選択を促す表示を表示装置8に提示する。そして、術者が、表示装置8に表示された器官の選択肢から、一つ又は複数の関心器官を入力装置11を介して指定することにより、関心器官情報が制御回路60に入力される。本実施形態では、上述のように関心器官として膵臓が指定される。
【0064】
なお、ステップS01における、表示装置8に表示される関心器官の選択画面は、人体の器官の情報が2次元画像又は3次元画像により表示されるものであって、術者が該画像中から関心器官を視覚的に選択するものであってもよいし、人体の器官が文字列として表示されるものであって、術者が該文字列から選択を行うものであってもよい。
【0065】
次に、制御回路60は、術者による指示入力により、または自動的な算出により、参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’を設定し、該複数の特徴点A’の直交座標軸O’−x’y’z’上の座標を取得する処理を実行する(ステップS02)。参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’は、被検体100の体表もしくは体腔内における複数の標本点Aに解剖学的に対応した点である。
【0066】
本実施形態においては、特徴点A’は4箇所の標本点A1〜A4にそれぞれ対応した下記の4点の特徴点A1’〜A4’である。すなわち、特徴点A1’、A2’、A3’及びA4’は、それぞれ剣状突起、左上前腸骨棘、右上前腸骨棘及び腰椎椎体棘突起に対応した参照画像データ群GRDの画素である。
【0067】
ステップS02においては、例えば、入力装置11を介した術者からの入力によって、参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A1’〜A4’に対応する画素が指定され
ることで、複数の特徴点A1’〜A4’のそれぞれの直交座標軸O’−x’y’z’上の座標が取得され記憶される。
【0068】
次に、制御回路60は、表示装置8に、体表検出用コイル42の被検体100への装着を術者に促す表示を行う(ステップS03)。術者は、被検体100の標本点近傍の体表上に、体位検出用コイル42を装着し固定する。
【0069】
本実施形態では、術者によって4個の体表検出用コイル42が、それぞれ被検体100の標本点A1(剣状突起)、標本点A2(左上前腸骨棘)、標本点A3(右上前腸骨棘)及び標本点A4(腰椎椎体棘突起)の近傍に装着される。
【0070】
次に、制御回路60は、詳しくは後述する超音波断層像及びガイド画像表示処理を実行する(ステップS04)。ステップS04では、術者は超音波内視鏡2の硬性部21及び可撓部22を被検体100の体腔内に挿入し、表示装置8に表示される超音波断層像データと3次元ガイド画像データとを参照しながら診断を行う。
【0071】
制御回路60は、術者によりキーボード12の図示しない検査終了キーが押下されるまでステップS04を繰り返し実行する(ステップS05)。ステップS05において、術者により検査終了キーが押下されたと判定した場合には、制御回路60は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70と、保存用断層像記憶部55に記憶されている超音波断層像データとを関連付け、終了処理を実行する。
【0072】
次に、図5に示したフローチャートのステップS04における、超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理の詳細について、図6のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0073】
まず、制御回路60は、キーボード12の走査開始終了キー12cが術者により押下されラジアル走査を開始する命令がなされるまで待機する(ステップS11)。キーボード12の走査開始終了キー12cが押下され、ラジアル走査の開始指示が入力されたと判定した場合には、超音波振動子アレイ31によるラジアル走査を開始するための初期処理を実行し、ステップS12へ移行する。
【0074】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、位置配向算出装置4から出力された位置配向データを取得する(ステップS12)。位置配向データは、上述のように、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の位置O”及び配向のデータと、4個の体表検出用コイル42のそれぞれの位置のデータと、により構成されている。
【0075】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、ステップS12において取得した位置配向データに通し番号を付し、該通し番号と位置配向データとを撮像範囲記憶部53に撮像範囲データ70として記憶する(ステップS13)。撮像範囲データ70は、図7の表に示すような行列状のデータである。
【0076】
撮像範囲データ70の列方向は、「通し番号71」、「画像位置配向検出用コイル位置配向データ72」、「体表検出用コイル位置データ73」、「断層像1枚保存フラグ74」及び「断層像連続保存フラグ75」の5種類のデータで構成されている。
【0077】
そして、撮像範囲データ70は、その行方向に、ステップS13が実行されるたびに、上記列方向のデータ種類に関しての最新のものが時系列に追記されていくものである。
【0078】
通し番号71は1以上の自然数であり、ラジアル走査の開始指示直後の最初の値を1とし、以降ステップS13が実行されるたびに2、3、4、・・・と1ずつ増加されるデータである。すなわち、通し番号71は、データの取得順序を示す値である。
【0079】
画像位置配向検出用コイル位置配向データ72は、上述のように、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の位置O”のx座標、y座標及びz座標の値と、基底ベクトルVのx座標成分、y座標成分、z座標成分の値と、基底ベクトルV3のx座標成分、y座標成分、z座標成分の値が、この表記順に記述されたものである。
【0080】
体表検出用コイル位置データ73は、直交座標軸O−xyz上における4個の体表検出用コイル42のそれぞれのx座標、y座標及びz座標の値が記述されたものである。本実施形態では、被検体100の標本点A1〜A4に装着された体表検出用コイル42のそれぞれのx座標、y座標及びz座標の値が、標本点A1、A2、A3、A4の順に記述されたものである。
【0081】
断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75は、詳しくは後述するが、それぞれ0又は1の2値のデータであり、新たに記述される場合には0が書き込まれる。
【0082】
具体的には、ステップS13において、3次元ガイド画像作成回路65は、まず撮像範囲データ70の通し番号71の最大の値を読み取る。そして、通し番号71の最大の値に1を足した値となる新たな通し番号のデータ行を作成して追記し、さらにこの新たな通し番号のデータ行に、直前のステップS12において取得した最新の画像位置配向検出用コイル位置配向データ72及び体表検出用コイル位置データ73を書き込む。また、この新たな通し番号のデータ行に、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75をそれぞれの値を0として書き込む。
【0083】
なお、もしステップS13において、撮像範囲記憶部53に撮像範囲データ70が記憶されていなければ、3次元ガイド画像作成回路65は撮像範囲データ70のファイルを新たに作成し、この新たな撮像範囲データ70内に通し番号71の値が1のデータ行を書き込む。そして通し番号71の値が1のデータ行に、直前のステップS12において取得した最新の画像位置配向検出用コイル位置配向データ72及び体表検出用コイル位置データ73を書き込む。さらに、この通し番号71の値が1のデータ行に、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75をそれぞれの値を0として書き込む。
【0084】
次に、混合回路67は、超音波観測装置3から出力された超音波断層像データを取得する(ステップS14)。超音波断層像データは、上記位置配向データと同期して取得されるものである。
【0085】
次に、制御回路60は、ステップS14において混合回路67が取得した超音波断層像データと、ステップS12において取得した位置配向データと、ステップS13において
位置配向データに付した通し番号と、を関連付けてシネメモリ54に記憶する(ステップS15)。
【0086】
すなわち、ステップS15が実行される度に、シネメモリ54に、超音波断層像データ、画像位置配向検出用コイル位置配向データ、体表検出用コイル位置データ、及び通し番号の4種類のデータが新たな1つの組データとして互いに関連付けられて記憶される。
【0087】
ステップS15において、新たな組データを記憶するための記憶容量がシネメモリ54に残されていない場合には、通し番号が一番小さい値である組データを1つ削除した後に上記新たな組データを記憶する。
【0088】
次に、3次元画像作成回路65は、詳しくは後述する方法により、図8に示すような3次元ガイド画像データを作成し、混合回路67へ出力する(ステップS16)。3次元ガイド画像は、概略的に説明すれば、関心器官に対する過去及び最新の超音波断層像データの撮像範囲Rの位置を示す3次元画像データである。なお、3次元画像データである3次元ガイド画像データの視点は、術者からの指示入力により任意の位置に設定可能である。
【0089】
次に、混合回路67は、ステップS14で取得した超音波断層像データと、ステップS16で入力された3次元ガイド画像データとを合成した、図9に示すような表示用の混合データを作成する。そして、表示回路68は、混合回路67により作成された混合データをビデオ信号に変換し、表示装置8に出力する。そして、表示装置8は、このビデオ信号を基に超音波断層像データと3次元ガイド画像データとを並べて表示する(ステップS17)。
【0090】
次に、制御回路60は、上記ステップS12からステップS17を実行する間に、術者によりキーボード12の断層像1枚像保存キー12aが押下されたか否かを判定する(ステップS18)。
【0091】
ステップS18において、断層像1枚像保存キー12aは押下されたと判定した場合には、ステップS19へ移行する。一方、ステップS18において、断層像1枚像保存キー12aは押下されていないと判定した場合には、ステップS21へ移行する。
【0092】
ステップS19において、制御回路60は、シネメモリ54に記憶されている最新の超音波断層像データと画像位置配向検出用コイル位置配向データと体表検出用コイル位置データとを関連付けて、保存用断層像記憶部55に保存する。
【0093】
次に、ステップS20において、制御回路60は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70内の、最新のデータ行の断層像1枚保存フラグ74の値を1に書き換え、撮像範囲データ70を更新する。言い換えれば、ステップS20では、撮像範囲データ70内のステップS19において保存用断層像記憶部55に保存された超音波断層像データに対応する通し番号の値が含まれたデータ行が書き換えられる。そしてステップS21へ移行する。
【0094】
ステップS21において、制御回路60は、上記ステップS12からステップS17を実行する間に、術者によりキーボード12の断層像連続保存キー12bが押下されたか否かを判定する。
【0095】
ステップS21において、断層像連続保存キー12bは押下されたと判定した場合には、ステップS22へ移行する。一方、ステップS21において、断層像連続保存キー12bは押下されていないと判定した場合には、ステップS24へ移行する。
【0096】
ステップS22において、制御回路60は、シネメモリ54に記憶されている全ての超音波断層像データと画像位置配向検出用コイル位置配向データと体表検出用コイル位置データとを関連付けて、保存用断層像記憶部55に保存する。
【0097】
例えば、ステップS22の実行時において、シネメモリ54には通し番号の値4〜8に対応する5枚の超音波断層像データと、該5枚の超音波断層像に対応する位置配向データが記憶されていた場合、ステップ22の処理によってこれら全てのデータが保存用断層像記憶部55に保存される。
【0098】
この場合、具体的には、5枚の超音波断層像データと共に、該5枚の超音波断層像に対応する通し番号及び位置配向データが記述された図10に示すような一つのファイルが保存用断層像記憶部55に保存される。また、5枚の超音波断層像データは、それぞれ対応する通し番号と同じファイル名で保存される。すなわち、超音波断層像データは、ファイル名によって通し番号及び位置配向データとの関連付けがなされる。
【0099】
次にステップS23において、制御回路60は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70の、ステップS22で保存した超音波断層像に対応するデータ行の断層像連続保存フラグ75の値を1に書き換え、撮像範囲データ70を更新する。言い換えれば、ステップS23では、撮像範囲データ70内のステップS22において保存用断層像記憶部55に保存された超音波断層像データに対応する通し番号の値が含まれたデータ行が書き換えられる。そしてステップS24へ移行する。
【0100】
次に、ステップS24において、制御回路60は、上記ステップS12からステップS23を実行する間に、術者によりキーボード12の走査開始終了キー12cが押下されたか否かを判定する。
【0101】
ステップS24において、走査開始終了キー12cは押下されていないと判定した場合には、ステップS12へ戻り、上記処理を繰り返す。
【0102】
このように、本実施形態の医用ガイドシステム1は、走査開始終了キー12cが再び押下されるまでの間、ステップS12〜ステップS23を所定の周期で繰り返し実行することにより、逐次新たな3次元ガイド画像データを作成し、新たな超音波断層像データと共に表示装置8の画像表示部にリアルタイムに表示する。
【0103】
一方、ステップS24において、走査開始終了キー12cは押下されたと判定した場合には、ステップS25へ移行し、制御回路60は、超音波振動子アレイ31によるラジアル走査を停止するための信号を超音波観測装置3へ出力してラジアル走査を終了し、超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理を終了する。
【0104】
次に、図6に示したフローチャートのステップS16における、3次元ガイド画像データ作成処理の詳細について、図11のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0105】
まず、3次元画像作成回路65は、参照画像記憶部52に記憶された参照画像データ群GRDを読み込む(ステップS31)。
【0106】
次に、3次元画像作成回路65は、参照画像データ群GRDから関心器官のデータを抽出し、ボリュームメモリのボクセル空間に抽出データとして書き出す(ステップS32)。3次元画像作成回路65は、例えば図12に示すような、関心器官である膵臓110や血管111のみを表示する3次元モデル画像を抽出データとして作成し、ボクセル空間に書き出す。
【0107】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、内部に記憶する変数iを設定し、変数iの値を0に設定する(ステップS33)。
【0108】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、内部に記憶している変数iに1を足す(ステップS34)。すなわち、i=i+1の計算を実行する。
【0109】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70から、通し番号71の値が変数iと等しいデータ行を読み込む(ステップS35)。
【0110】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、超音波走査レンジの設定値、すなわち正方形である超音波断層像データの1辺の長さの設定値と、ステップS35で読み込んだデータのうちの画像位置配向検出用コイル位置配向データとから、実空間である直交座標軸O−xyz上における超音波断層像データの撮像範囲Rを算出する(ステップS36)。
【0111】
具体的には、ステップS36において、3次元ガイド画像作成回路65は、画像位置配向検出用コイル位置配向データ、すなわち画像位置配向検出用コイル44の位置O”と画像位置配向検出用コイル44の配向を示す基底ベクトルV及びV3とに基づいて、正方形である超音波断層像データの撮像範囲Rの4つの頂点R1〜R4の直交座標軸O−xyz上における座標を算出する。
【0112】
ステップ36においては、まず、基底ベクトルVとV3との外積を求めることにより、基底ベクトルV12が算出される。そして、超音波断層像データの1辺の長さがaであるとして、1つ目の頂点R1の座標はO”+a/2・(V12)+a/2・(V3)、2つ目の頂点R2の座標はO”−a/2・(V12)+a/2・(V3)、3つ目の頂点R3の座標はO”+a/2・(V12)−a/2・(V3)、4つ目の頂点R4の座標はO”−a/2・(V12)−a/2・(V3)の計算により算出される。
【0113】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、ステップS35で読み込んだデータのうちの、体表検出用コイル位置データ、すなわち複数の体表検出用コイル42の直交座標軸O−xyz上の座標と、ステップS02において取得した参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’の直交座標軸O’−x’y’z’上の座標と、に基づいて、直交座標軸O−xyz上の座標を直交座標軸O’−x’y’z’上の座標へ写像する座標変換式を算出する。そして、図13に概念的に示すように、該座標変換式を用いて、ステップS36において算出した直交座標軸O−xyz上における超音波断層像データの撮像範囲Rを、直交座標軸O’−x’y’z’上に写像する(ステップS37)。
【0114】
以下において、直交座標軸O’−x’y’z’上に写像された撮像範囲Rを写像撮像範囲R’と称するものとする。該写像撮像範囲R’は、具体的には、ステップS36で算出した4つの頂点R1〜R4を座標変換式により直交座標軸O’−x’y’z’上に写像した4つの点R1’〜R4’により定義される、四辺形状の平面の領域である。
【0115】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、ステップS37で直交座標軸O’−x’y’z’上における写像撮像範囲R’に対応する領域を示す指標データである撮像履歴マーカ80を作成し、該撮像履歴マーカ80をボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出し、合成データを作成する(ステップS38)。
【0116】
撮像履歴マーカ80は、ステップS37において算出した4つの点R1’〜R4’を頂点とした図8に示すような半透明の四辺形状の平面を表す3次元画像データである。ここで、ボクセル空間には既にステップS32において関心器官の抽出データが書き出されているため、ボクセル空間内の合成データは図8に示すように、関心器官の抽出データに撮像履歴マーカ80が重ね合わせられたものとなる。
【0117】
また、ステップS38において、3次元ガイド画像作成回路65は、四辺形状の撮像履歴マーカ80の外辺を示す境界線の線種を、ステップS35で読み込んだデータのうちの「断層像1枚保存フラグ74」及び「断層像連続保存フラグ75」の値に応じて異ならせて描画する。
【0118】
本実施形態では、図8に示すように、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値がともに0の場合には境界線の線種を点線とし(図8中の符号81)、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値がともに1の場合には境界線の線種を破線とし(図8中の符号82)、断層像1枚保存フラグ74の値が0かつ断層像連続保存フラグ75の値が1の場合には境界線の線種を鎖線とし(図8中の符号83)、断層像1枚保存フラグ74の値が1かつ断層像連続保存フラグ75の値が0の場合には境界線の線種を実線とする(図8中の符号84)。
【0119】
なお、撮像履歴マーカ80は、対応する断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値に応じて異なった表示がなされるものであればよく、本実施形態のように線種により区別して表示する形態に限られるものではない。例えば、撮像履歴マーカ80は、対応する断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値に応じて異なる色により表示される形態であってもよいし、例えば明度差や周期的な明滅により区別して表示されるものであってもよい。
【0120】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70の通し番号71の最大値Nと、変数iとの大小関係を判定する(ステップS39)。
【0121】
ステップS39判定の結果、変数iの方が通し番号71の最大値Nよりも小さい場合には、ステップS34に戻り、ステップS34〜ステップS38までの処理を繰り返す。すなわち、撮像範囲データ70に記述されたデータ行が複数である場合には、ステップS34〜ステップS38までの処理を全てのデータ行について繰り返すことにより、図8に示すような、複数の撮像履歴マーカ80が、指標データとしてボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出される。
【0122】
一方、ステップS39判定の結果、変数iの方が通し番号71の最大値Nと等しい場合には、ステップS40へ移行する。
【0123】
ステップS40においては、3次元ガイド画像作成回路65は、最後に作成した撮像履歴マーカ80を撮像領域マーカ85として強調表示するように変更する。ここで、最後に作成した撮像範囲マーカ80とは、撮像範囲データ70の通し番号71が最大値Nであるデータ行に対応した撮像範囲マーカ80のことである。本実施形態では、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像領域マーカ85の外辺を示す境界線の線種を太線に変更してボクセル空間に書き出す。
【0124】
言い換えれば、ステップS40において作成された撮像領域マーカ85とは、最新の超音波断層像データの直交座標軸O’−x’y’z’上における写像撮像範囲R’を示す指標である。
【0125】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、最新の超音波断層像データの直交座標軸O’−x’y’z’上における写像撮像範囲R’の配向を示す指標である先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を作成し、ボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出す(ステップS41)。
【0126】
先端方向マーカ86は、上記撮像領域マーカ85の重心位置から、撮像領域マーカ85に直交し、かつ直交座標軸O’−x’y’z’上における硬性部21の挿入方向に延出する矢印状(錘状)の3次元オブジェクトである。また12時方向マーカ87は、直交座標軸O’−x’y’z’上におけるラジアル走査の12時方向を示すための、撮像領域マーカ85と同一平面上に描画された矢印状の画像である。
【0127】
具体的には、ステップS41において、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像範囲データ70の通し番号71が最大値Nであるデータ行の体表検出用コイル位置データと、参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’の直交座標軸O’−x’y’z’上の座標と、に基づいて、直交座標軸O−xyz上の座標を直交座標軸O’−x’y’z’上の座標へ写像する座標変換式を算出する。
【0128】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、該座標変換式を用いて、撮像範囲データ70の通し番号71が最大値Nであるデータ行の、基底ベクトルV及びV3を、直交座標軸O’−x’y’z’上に写像した基底ベクトルV’及びV3’を算出する。そして、該基底ベクトルV’とV3’との外積を求めることにより、基底ベクトルV12’を算出する。
【0129】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、直交座標軸O’−x’y’z’上において基底ベクトルV’及びV12’の方向を示す矢印状の画像データである先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を作成し、ボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出す。
【0130】
なお、上記撮像領域マーカ85、先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87により、本実施形態の直交座標軸O’−x’y’z’上における最新の超音波断層像データの撮像範囲Rを示す超音波断層像マーカが構成される。
【0131】
上記ステップS31からステップS41の処理を実行することにより、3次元ガイド画像作成回路65により3次元ガイド画像データが作成されるのである。
【0132】
次に、本実施形態の医用ガイドシステム1の撮像履歴の再生時の動作を説明する。
【0133】
本実施形態の医用ガイドシステム1は、上述したような超音波診断装置による診断時において、被検体の臓器に対する超音波断層像の現在の撮像位置及び過去の撮像位置の履歴を3次元ガイド画像としてリアルタイムに変化させて表示する動作のみでなく、術者が診断後に、超音波断層像とその超音波断層像が撮像された位置とを同時に確認しながら観察できるように、超音波断層像の撮像位置の履歴を再生表示する動作も可能である。
【0134】
術者により、キーボード12の図示しない撮像履歴再生キーが押下された場合、超音波断層像再生部としての画像処理装置5は、図14に示すような撮像履歴再生画像を作成し、表示装置8の画像表示部に表示する。
【0135】
撮像履歴再生画像は、本実施形態では表示装置8の画像表示部の右側に超音波断層像データを表示し、左側には、現在表示中の超音波断層像データの関心器官に対する位置を表示する画像である。
【0136】
具体的には、術者によりキーボード12の撮像履歴再生キーが押下された場合、制御回路60は、保存用断層像記憶部55に記憶されている全ての超音波断層像データから、術者により入力装置11を介して指定された1枚の所定の超音波断層像データを読み出す。
【0137】
また、術者によりキーボード12の撮像履歴再生キーが押下された場合、3次元ガイド画像作成回路65が、上述したステップS31〜ステップS39と同様の処理を実行し、関心器官の3次元モデル画像と、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70に記録されている全ての全てのデータ行に基づいた複数の撮像履歴マーカ80とを重畳した撮像履歴画像データを作成する。すなわち、撮像履歴マーカ80は、診断中に取得された全ての超音波断層像データの撮像範囲の位置及び配向を示す3次元の画像データである。
【0138】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像履歴マーカ80のうち、術者により指定された1枚の所定の超音波断層像データに対応する撮像履歴マーカ80の外辺を示す境界線の線種を太線に変更して強調する(図14中の符号89)。さらに3次元ガイド画像作成回路65は、術者により指定された1枚の所定の超音波断層像データの配向を示す先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を作成する。
【0139】
次に、混合回路67は、制御回路60により読み出された1枚の所定の超音波断層像データと、3次元ガイド画像作成回路65により作成された撮像履歴画像データとを図14に示すように合成した混合データを生成し、出力する。そして、表示装置8は、画像表示部に、混合データを基にした撮像履歴再生画像を表示する。
【0140】
本実施形態では、撮像履歴再生画像を表示している状態において、術者により表示中の超音波断層像データを他の超音波断層像データに切替える旨の指示が入力装置11を介して入力された場合には、3次元ガイド画像作成回路65は、強調表示しさらに先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を付加する撮像履歴マーカ80を、切替により新たに表示される超音波断層像データに対応したものに変更する。
【0141】
例えば、本実施形態の医用ガイドシステム1では、撮像履歴再生画像を表示している状態において、術者がキーボード12の所定のキーを押下する度に、表示装置8の画像表示部には、検査中に保存した時刻順に超音波断層像データが順次が切替表示される。
【0142】
そして、この表示する超音波断層像データの切替に応じて、撮像履歴再生画像中の、強調表示されかつ先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87が付加される撮像履歴マーカ80も切替えられて表示される。ここで、表示中の超音波断層像データが、連続保存による動画像の一部である場合には、術者により図示しない再生キーが押下されることにより、表示装置8の画像表示部においてその動画像が再生表示される。
【0143】
なお、撮像履歴再生画像において表示される撮像履歴マーカ80は、検査中に取得された超音波断層像データ全てに対応したものが表示される形態に限らず、例えば撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70のうちの断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の少なくとも一方の値が1であるデータ行に対応するもののみが表示される形態であってもよい。
【0144】
このように、選択的に撮像履歴マーカ80を表示することにより、表示に必要な処理の負荷を軽減することができる。また、撮像履歴マーカ80の視認性が向上するため、術者による関心臓器と撮像履歴マーカ80との位置関係の把握が容易となる。
【0145】
以上に説明した本実施形態の医用ガイドシステム1の効果を以下に説明する。
【0146】
本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波内視鏡2の超音波走査中において、過去に超音波断層像データの取得が行われた領域の履歴を示す撮像履歴マーカ80が、関心器官の3次元モデル画像に重畳されて表示される。
【0147】
このため、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、関心器官に対する過去の撮像領域の位置関係、すなわち関心器官にについて既に超音波診断を行った領域の履歴、を視覚的に容易に認識することが可能となり、関心器官に対して見落としのない超音波診断を確実に行うことが可能となる。
【0148】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、関心器官にについて既に超音波診断を行った領域の履歴、を視覚的に容易に認識することが可能となるため、同じ領域を繰り返して走査することが無くなり診断時間が短縮されるため、術者及び被検者の負担が軽減される。
【0149】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波内視鏡2の超音波走査中において、保存用断層像データの撮像位置も撮像履歴マーカ80として関心器官の3次元モデル画像に重畳されて表示される。
【0150】
このため、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、保存した超音波断層像データの関心器官に対する撮像位置を視覚的に確認することが可能となり、診断に必要な超音波断層像データを忘れることなく確実に保存することが可能となる。
【0151】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波診断を行った領域と保存用断層像データと保存用断層像データの撮像位置は保存され、診断後に撮像履歴再生画像として再生表示される。したがって、術者は診断後にこれらのデータを撮像履歴再生画像として確認することにより、カルテの整理等の作業を容易かつ短時間に行うことが可能となる。
【0152】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波診断を行った領域と保存用断層像データと保存用断層像データの撮像位置は保存され、診断後に撮像履歴再生画像として再生表示される。このため、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、診断後に撮像履歴再生画像を確認し、超音波断層像データと超音波断層像データの関心器官に対する撮像位置を対比することにより、腫瘍等の病変の位置を立体的に容易に確認することができ、正確な手術計画を立案することが可能となる。
【0153】
なお、上述した本実施形態においては、位置配向データと超音波断層像データとの関連付けを、通し番号とファイル名により行っているが、関連付けの方法はこの方法に限られるものではない。例えば、位置配向データと超音波断層像データとの関連付けは、それぞれが取得され生成された時刻のデータにより行われるものであってもよい。
【0154】
また、本実施形態においては、超音波断層像データの撮像範囲Rの1辺の長さaは固定された値としている。すなわち撮像範囲Rの形状及び面積は固定されたものとして扱っているが、本発明はこの形態に限られるものではない。例えば超音波振動子アレイ31が送信する超音波ビームの強度や走査範囲を変更することにより超音波断層像データの撮像範囲Rの形状及び面積が可変である場合には、走査範囲情報も撮像範囲データ70として超音波断層像データと関連付けて記憶され、撮像履歴マーカ80は、超音波ビームの強度や走査範囲の変化に応じた大きさ及び形状により表示されるものとする。
【0155】
また、本実施形態では、医用器具である超音波診断装置として電子ラジアル走査型の超音波内視鏡2を用いているが、超音波診断装置の形態は本実施形態に限られるものではない。例えば、超音波診断装置は、機械走査型の超音波内視鏡や、超音波振動子群を扇状に設けた電子コンベックス走査型超音波内視鏡であってもよく、本発明は超音波の走査方式により限定されるものではない。
【0156】
また、超音波診断装置は、光学観察窓を具備しない超音波プローブ型のものであってもよいし、カプセル型の超音波ゾンデでもよい。また、超音波診断装置は、被検体の体表面上から体腔内に向けて超音波走査を行ういわゆる体外式の超音波診断装置であってもよい。
【0157】
また、本実施形態では位置検出手段として送信アンテナ41と受信コイルとを用い、磁場で位置と配向とを検出するよう構成、作用させたが、磁場の送受は逆でも良く、また、磁場ではなく加速度や他の手段で位置と配向とを検出するよう構成、作用させても良い。
【0158】
また、本実施形態では、画像位置配向検出用コイル44は、環状の超音波振動子アレイ31の中心近傍に配設されるものとしているが両者の位置関係はこの形態に限られるものではない。すなわち、画像位置配向検出用コイル44の位置及び配向から超音波断層像の走査中心の座標と配向を求めるためには、超音波振動子アレイ31と画像位置配向検出用コイル44との相対的な位置が固定されたものであればよい。
【0159】
また、本実施形態では、参照画像データ群GRDを構成するデータとして、X線3次元ヘリカルCT装置16、3次元MRI装置15により撮像された複数枚の2次元CT画像や2次元MRI画像を用いるよう構成したが、例えばPET(Positron Emission Tomography)のような他のモダリティーを用いて事前に取得した3次元画像データを参照画像データ群GRDとして用いてもよい。また、参照画像データ群GRDは、体外から超音波走査を行う体外式の超音波診断装置により事前に取得された3次元画像データにより構成されてもよい。
【0160】
また、本実施形態では、1軸に巻かれたコイルからなる4個の体表検出用コイル42を被検体100の装着し、4箇所の標本点A1〜A4の位置配向データを取得するよう構成したが、被検体100を左側臥位にした後に、一つの体表検出用コイルを4箇所の標本点A1〜A4に順次接触させて4箇所の標本点A1〜A4の位置配向データを取得するような構成であってもよい。
【0161】
また、本実施形態では、位置配向算出装置4は、体表検出用コイル42に関してはその位置のみを算出するものであるが、位置の代わりに体表検出用コイル42の巻線軸の方向を算出する構成であってもよい。また、体表検出用コイル42の位置と巻線軸の方向との両方を算出してもよい。1個の体表検出用コイル42に関して位置配向算出装置4が算出する自由度が増えることにより、体表検出用コイル42の個数を減らすことができ、被検体100に体表検出用コイル42を装着する際や超音波内視鏡2による診断中の術者や被検体100の負担を減らすことができる。
【0162】
また、本実施の形態では、標本点を剣状突起、左上前腸骨棘、右上前腸骨棘、腰椎椎体棘突起としたが、この例に限らず、胸部体表や胸部体腔内の特徴のある点や他の例でもよい。
【0163】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図15は本実施形態の3次元ガイド画像を説明する図である。
【0164】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、撮像履歴マーカの表示形態のみが異なるものであり、その他の構成は同一である、よって以下ではこの相違点のみを説明するものとする。
【0165】
本実施形態の医用ガイドシステムは、図15に示すように、3次元ガイド画像データ中において、超音波走査が行われた領域を示すための撮像履歴マーカ90を、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡として表示する。
【0166】
本実施形態の撮像履歴マーカ90は、第1の実施形態と同様の方法により作成された複数の四辺形状の平面である撮像履歴マーカ80の輪郭線を繋げることにより形成される立体形状である。
【0167】
本実施形態の撮像履歴マーカ90は、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡を表す立体形状の輪郭線であるワイヤフレームで表現される。
【0168】
そして、本実施形態の撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及び該ワイヤフレーム内側の領域は、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値の変化に応じて、異なる透過率及び色の画素により着色される。
【0169】
すなわち、本実施形態の撮像領域マーカ90は、その色の変化により、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡と、超音波断層像データが1枚保存された領域と、超音波断層像データが連続保存された領域と、を区別して表現するものである。
【0170】
例えば、超音波走査は行われたが超音波断層像データの保存が行われていない領域においては、撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及びその内側の領域は、半透明の白色として表現される。また、超音波断層像データが1枚保存された領域においては、撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及びその内側の領域は、緑色として表現される(図15中の符号91)。また、超音波断層像データが連続枚保存された領域においては、撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及びその内側の領域は、水色として表現される(図15中の符号92)。
【0171】
さらに、最新の超音波断層像データの撮像範囲Rの位置に相当する領域は、黒色の太線で強調された四辺形の枠として表現される(図15中の符号93)。
【0172】
上記撮像履歴マーカ90の透過率及び輝度は、関心器官の3次元モデル画像との位置関係の把握を容易とするために、術者の操作により任意の透過率及び輝度に変更可能である。
【0173】
上述した本実施形態の医用ガイドシステムは、第1の実施形態と同様の効果を有することに加え、さらに、3次元ガイド画像データの撮像履歴マーカの表現がより簡素なものとなるため、術者は直感的に素早く、関心器官にについて既に超音波診断を行った領域の履歴を認識することが可能となる。
【0174】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図16は、本実施形態の3次元ガイド画像を説明する図である。
【0175】
本実施形態は、第2の実施形態に対して、撮像履歴マーカの表示形態のみが異なるものであり、その他の構成は同一である、よって以下ではこの相違点のみを説明するものとする。
【0176】
本実施形態の医用ガイドシステムは、第2の実施形態と同様に、3次元ガイド画像データ中において、超音波走査が行われた領域を示すための撮像履歴マーカ90aを、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡として表示する。
【0177】
本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、第2の実施形態と同様に、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡を表す立体形状の輪郭線であるワイヤフレームで表現される。また、第2の実施形態と同様に、撮像履歴マーカ90aのワイヤフレーム及び該ワイヤフレーム内側の領域は、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値の変化に応じて、異なる透過率及び色の画素により着色される。
【0178】
さらに、本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、所定の枚数の超音波断層像データを取得する期間中に撮像範囲Rが移動した距離に応じて、ワイヤフレーム及び該ワイヤフレーム内側の領域が異なる色に着色される。
【0179】
すなわち、本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、その色の変化により、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡と、超音波断層像データが1枚保存された領域と、超音波断層像データが連続保存された領域と、を区別して表現すると共に、さらに取得した超音波断層像データの取得間隔の粗密を表現するものである。
【0180】
例えば、超音波観測装置3が超音波断層像データをフレームレートを10Hzとして作成している場合には、超音波断層像データは、1秒間に10枚取得される。3次元ガイド画像作成回路65は、1秒間に撮像範囲Rが動いた距離、すなわち画像位置配向検出用コイル44の位置及び配向の変化量と、撮像範囲Rの面積とから、1秒間に超音波走査が行われた領域の体積を算出する。
【0181】
3次元ガイド画像作成回路65は、1秒間に超音波走査が行われた領域の体積が予め与えられた所定のしきい値以上であった場合には、撮像履歴マーカ90aの該当する領域を赤色に着色する。
【0182】
すなわち、本実施形態においては、取得した超音波断層像データの取得距離間隔が大きい場合、つまり、超音波断層像データのフレームレートに対して超音波振動子アレイ31の移動速度が高すぎる場合に、術者に対する警告として撮像履歴マーカ90aのワイヤフレーム及びその内側の領域が、赤色として表現される(図16中の符号94)。
【0183】
以上のように構成された本実施形態の医用ガイドシステムによれば、第2の実施形態と同様の効果に加え、さらに、術者は超音波断層像データが取得された間隔が粗い領域を素早く認識することが可能となるため、診断時の見落としを防止することが可能となる。
【0184】
超音波内視鏡による診断においては、診断中に硬性部(超音波振動子アレイ)が一瞬で大きく移動してしまう場合がある。例えば、超音波内視鏡を引きながら十二指腸球部を観察していて、そのまま引いていくと、十二指腸球部と胃を隔てている幽門に硬性部が引っかかる。そのままさらに引いていくと幽門から硬性部が抜け、その反動で硬性部が大きく移動してしまうことがある。
【0185】
本実施形態の医用ガイドシステムによれば、このように超音波振動子アレイが短時間に大きく移動してしまった場合において、術者は、その短時間の大きな移動が関心臓器に対してどの位置で発生したか、さらにどの位置から再度超音波走査を行えばよいのか、を素早く容易に把握することが可能となるため、診断時間を短縮することができる。すなわち、術者及び被検者の負担が軽減される。
【0186】
なお、本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、超音波断層像データが保存された領域と、超音波断層像データが取得された間隔の粗密とを、同時に色の違いにより表現するものであるが、両者はそれぞれ単独に表現され、術者の指示により切替えられて表示されるものであってもよい。
【0187】
また、撮像履歴マーカ90aは、超音波断層像データが保存された領域を線種の違いのみにより表現し、超音波断層像データが取得された間隔の粗密を、色の違いにより表現する形態であってもよい。
【0188】
また、本実施形態においては、超音波断層像データが取得された間隔の粗密の判定を、1つのしきい値により行う形態としているが、しきい値は2つ以上設定されるものであって、撮像履歴マーカ90aの色分けが3色以上とされる形態であってもよい。
【0189】
また、超音波断層像データが取得された間隔の粗密の判定は、超音波振動子アレイの単位時間当たりの移動量ではなく、超音波振動子アレイの単位時間当たりの配向の変化量、すなわち角速度を用いて行われるものであってもよい。また、超音波断層像データが取得された間隔の粗密の判定は、超音波振動子アレイの移動速度及び角速度の双方に基づいて行われてもよい。
【0190】
上述した実施形態に基づいて、以下の構成を提案することができる。すなわち、
(付記1)
生体内へ超音波を送受して得られる超音波信号に基づき超音波断層像を作成する超音波断層像作成手段と、
前記超音波断層像の位置および/または配向を検出する検出手段と、
人体の3次元データからなる参照データを保持する参照データ保持手段と、
を具備したことを特徴とする超音波診断装置において、
超音波検査中に作成した超音波断層像の前記位置および/または配向を用いて、前記参照データ上に、超音波検査中に作成した超音波断層像の解剖学的な位置および/または配向を示す検査完了範囲画像を作成する検査完了範囲画像作成手段と、
前記検査完了範囲画像を表示する表示手段と、
を設けたことを特徴とした超音波診断装置。
【0191】
(付記2)
超音波検査中に作成した超音波断層像の前記位置および/または配向を検査範囲データとして保存できるようにしたことを特徴とした付記1に記載の超音波診断装置。
【0192】
(付記3)
検査完了範囲画像作成手段が前期検査範囲データを用いて、前記検査完了範囲画像を作成できることを特徴とした付記2に記載の超音波診断装置。
【0193】
(付記4)
生体内へ超音波を送受して得られる超音波信号に基づき超音波断層像を作成する超音波断層像作成手段と、
前記超音波断層像の位置および/または配向を検出する検出手段と、
人体の3次元データからなる参照データを保持する参照データ保持手段と、
前記超音波断層像の保存を指示する操作手段と、
を具備したことを特徴とする超音波診断装置において、
前記操作手段により保存を指示された超音波断層像の前記位置および/または配向を用いて、前記参照データに基づき、前記操作手段により保存を指示された超音波断層像の解剖学的な位置および/または配向を示す保存領域画像を作成する保存領域画像作成手段と、
前記保存領域画像を表示する表示手段と、
を設けたことを特徴とした超音波診断装置。
【0194】
(付記5)
前記操作手段の指示に基づき、超音波断層像を前記位置および/または配向と関連付けて保存することを特徴とした付記4に記載の超音波診断装置。
【0195】
(付記6)
前記操作手段の指示に基づき、複数の超音波断層像を、ぞれぞれの前記位置および/または配向と関連づけて保存したことを特徴とする付記4に記載の超音波診断装置。
【0196】
(付記7)
前記複数の超音波断層像に対する前記位置および/または配向を1つのファイルとして保存したことを特徴とする付記6に記載の超音波診断装置。
【0197】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う医用ガイドシステムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0198】
例えば気管支内視鏡や腹腔鏡等の内視鏡による診断や手術、さらには体外式の超音波診断装置にも本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】医用ガイドシステムの構成を示す図である。
【図2】被検体の標本点に装着された4個の体表検出用コイルを示す図である。
【図3】参照画像記憶部に記憶されている参照画像データを概念的に示す図である。
【図4】ボクセル空間の構成を示す図である。
【図5】医用ガイドシステムの全体の動作を表すメインルーチンのフローチャートである。
【図6】超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理のフローチャートである。
【図7】撮像範囲データの一例を示す表である。
【図8】3次元ガイド画像を説明する図である。
【図9】表示装置に表示される混合データを説明する図である。
【図10】保存用断層像記憶部に保存されるファイルの一例を示す表である。
【図11】3次元ガイド画像データ作成処理のフローチャートである。
【図12】関心器官の3次元モデル画像の一例である。
【図13】座標変換の概念を説明する図である。
【図14】撮像履歴再生画像を説明する図である。
【図15】第2の実施形態の撮像履歴マーカを説明する図である。
【図16】第3の実施形態の撮像履歴マーカを説明する図である。
【符号の説明】
【0200】
1 医用ガイドシステム、 2 超音波内視鏡、 3 超音波観測装置、 4 位置配向算出装置、 5 画像処理装置、 8 表示装置、 10 光学観察装置、 11 入力装置、 14 ネットワーク、 15 3次元MRI装置、 16 X線3次元ヘリカルCT装置、 31 超音波振動子アレイ、 撮像装置 27、 41 送信アンテナ、 42 体表検出用コイル、 44 画像位置配向検出用コイル、 52、参照画像記憶部、 53 撮像範囲記憶部、 55 保存用断層像記憶部、 54 シネメモリ、 60 制御回路、 65 3次元ガイド画像作成回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官に対する超音波断層像の位置を示すガイド画像を作成する医用ガイドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超音波診断装置においては、超音波振動子を用いて生成された現在の超音波断層像や記録後の超音波断層像が被検体のどの部位の走査によって得られたものであるかを術者等に認識させる技術が提案されている。
【0003】
例えば、特開2004−121488号公報には、位置センサを搭載した超音波プローブを用い、検査中に取得した超音波断層像を3次元座標上に配置して表示させる技術が開示されている。また、特開2006−149481号公報には、位置センサを搭載した超音波プローブを使用し、位置センサにより検出した超音波断層像位置を超音波断層像マーカとして、人体の模式図データから作成した立体画像上に合成して表示させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−121488号公報
【特許文献2】特開2006−149481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2004−121488号公報の超音波断層像を3次元座標上に配置する表示では、配置された一連の超音波断層像の位置関係を補助として、術者が超音波断層像を解釈することで、初めて超音波断層像と臓器の位置関係を知ることが可能である。そのため、検査対象部位の全体を見落とし無く検査できたかを確認するためには、取得した超音波断層像からボリュームデータを作成して画像の解釈をする必要があり、検査時間が長くなってしまうという問題点があった。
【0005】
また、特開2006−149481号公報の立体画像上に超音波断層像マーカを合成表示する方法では、表示されている1枚の超音波断層像の位置しか表示されないため、超音波検査開始からこれまでに検査した範囲を確認することができない。そのため、検査中に超音波検査を行った範囲を判断することができず、検査対象部位の全体を見落とし無く、短時間で検査するのが困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、診断中もしくは診断後に、術者が超音波走査を行った範囲を容易に確認することが可能な医用ガイドシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る医用ガイドシステムは、被検体との間で超音波の送受信を行う超音波振動子を具備し、該超音波振動子から出力される超音波信号に基づいて超音波断層像を撮像する超音波診断装置の、前記超音波振動子の位置及び配向の少なくとも一方を検出し出力する検出部と、人体の器官の解剖学的な位置情報を有する参照画像データを記憶する参照画像記憶部と、前記検出部からの出力と前記参照画像データとに基づいて、人体の器官の解剖学的なモデル画像と、該モデル画像に対する最新の前記超音波断層像の位置及び配向の少なくとも一方を示す超音波断層像マーカと、前記モデル画像に対する過去において前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴マーカと、からなるガイド画像を作成し表示装置に出力するガイド画像作成部と、を具備することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態においては、医用器具として超音波内視鏡を使用し、医用ガイドシステムは該超音波内視鏡の操作の支援を行うガイド画像を生成するものとして、説明を行う。
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図14を参照して説明する。図1は医用ガイドシステムの構成を示すブロック図である。図2は被検体の標本点に装着された4個の体表検出用コイルを示す図である。図3は、参照画像記憶部に記憶されている参照画像データを概念的に示す図である。図4は、ボクセル空間の構成を示す図である。
【0010】
本実施形態の医用ガイドシステム1は、医用器具としての超音波内視鏡2による診断操作を支援するためのガイドを行うシステムである。本実施形態の医用ガイドシステム1は、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、位置配向算出装置4と、画像処理装置5と、表示装置8と、光学観察装置10と、入力装置11とを備えてなり、各装置は有線又は無線の通信手段により接続されている。
【0011】
また、医用ガイドシステム1は、該医用ガイドシステム1の外部に設けられた光ファイバ、電気ケーブル、無線通信等を用いたネットワーク14に接続されている。該ネットワーク14には、X線3次元ヘリカルCT装置(X−ray 3−dimensional computed tomography system)16、3次元MRI装置(3−dimensional magnetic resonance imaging system)15、外部記憶装置17が接続されている。医用ガイドシステム1は、ネットワーク14を介して、3次元MRI装置15、X線3次元ヘリカルCT装置16及び外部記憶装置17とデータの授受が可能である。
【0012】
医用器具としての超音波内視鏡2は、食道、胃、十二指腸などの体腔内に挿入される挿入部の先端に配設されステンレス等の硬質な材料で構成された硬性部21と、硬性部21の基端側に配設され可撓性のある材料で構成された長尺の可撓部22と、可撓部22の基端側に配設され硬質な材料で構成された操作部23とからなる。術者は、該操作部23を把持して超音波内視鏡2の操作を行う。また、超音波内視鏡2は、超音波観測装置3、光学観察装置10、及び位置配向算出装置4に図示しない接続コネクタを介して電気的に接続されている。
【0013】
硬性部21は、撮像装置27と、超音波振動子アレイ31と、画像位置配向検出用コイル44を具備して構成されている。撮像装置27は、撮像素子としてのCCD(Charge Coupled Device)26と、該CCD26の受光面上に被写体像を結像するレンズ25等を具備してなり、ガラス製の光学観察窓24を介して体腔内を光学的に撮像する装置である。硬性部21には、該撮像装置27の視野方向に照明光を照射する図示しない照明装置が配設されており、撮像装置27は、照明装置により照明された体腔内の光学的な画像を取得し、CCD信号として光学観察装置10へ出力する。
【0014】
超音波振動子アレイ31は、いわゆる電子ラジアル走査型の超音波振動子アレイであり、硬性部21を体腔内に挿入する方向に沿う挿入軸周りに環状に配設された、複数の超音波振動子により構成されている。超音波振動子アレイ31は、挿入軸に直交する平面上において超音波ビームを放射方向に所定の時間間隔で走査しながら送受することにより、超音波断層像を得るために必要なエコー信号を取得し、超音波観測装置3へ出力する。
【0015】
超音波振動子アレイ31は、超音波観測装置3に電気的に接続されている。超音波観測装置3は、超音波振動子アレイ31が送信する超音波ビームの強度、角度、フォーカス等を制御すると共に、超音波振動子アレイ31により取得されたエコー信号から走査面における超音波断層像データを生成し、出力する。
【0016】
なお、以下において、実空間において固定された座標系を直交座標軸O−xyzとして定義する。本実施形態では、例えば図2に示すように、直交座標軸O−xyzは、超音波診断時に被検体100が横たわる診察台に対する位置が固定されている。
【0017】
また、超音波振動子アレイ31により走査が行われる平面を、ラジアル走査面SPと称するものとする。また、硬性部21に固定した正規直交基底(各方向の単位ベクトル)V、V3、V12を図1に示すように定義する。すなわち、基底ベクトルVを硬性部21の挿入軸方向と平行、すなわちラジアル走査面SPの法線方向ベクトルとし、超音波振動子21の所定の走査方向を12時方向とした場合に、3時方向に向く基底ベクトルをV3、12時方向に向く基底ベクトルをV12とする。なお、ベクトルについては太字のイタリック体で表記するのが一般的であるが、本実施形態においては通常の英数字を用いて標記するものとする。また、超音波振動子アレイ31が走査を行う面上における超音波振動子アレイ31による走査範囲を、超音波断層像データの撮像範囲Rと称するものとする。
【0018】
画像位置配向検出用コイル44は、環状の超音波振動子アレイ31の中心近傍に、超音波振動子アレイ31との位置関係が固定されて硬性部21内に配設されている。画像位置配向検出用コイル44は、基底ベクトルV及びV3と平行な軸周りにそれぞれ巻かれた2つのコイルが一体に組み合わされて構成されている。また、該画像位置配向検出用コイル44の中心を位置O”とする。なお、図1においては、説明のため、画像位置配向検出用コイル44と、超音波振動子アレイ32の中心とを離間して示している。
【0019】
すなわち、画像位置配向検出用コイル44の位置O”は、超音波振動子アレイ31の走査中心の位置と略一致するものであり、本実施形態においては超音波断層像データの撮像範囲Rの中心位置を示すものである。また、基底ベクトルV、V3、V12は、超音波断層像データの配向を示すものである。
【0020】
検出部である位置配向算出装置4は、超音波内視鏡2の硬性部21に配設された画像位置配向検出用コイル44とA/D変換装置46を介して接続されているとともに、送信アンテナ41に電気的に接続されている。位置配向算出装置4は、体表検出用コイル42とA/D変換装置45を介して接続されている。また、位置配向算出装置4は、例えばRS−232C規格のケーブル等を介して画像処理装置5に電気的に接続されている。
【0021】
送信アンテナ41は、図示しないそれぞれ巻線軸の配向が異なる複数個の磁場発生用コイルを具備して構成されており、位置配向算出装置4からの出力に応じて交番磁場を発生する装置である。
【0022】
送信アンテナ41は、実空間上において位置が固定されて設置されるものであり、本実施形態では、送信アンテナ41は、超音波診断時に被検体100が横たわる診察台に対して位置が固定されている。すなわち、本実施形態では、直交座標軸O−xyz上において送信アンテナ41はその位置が固定されている。
【0023】
A/D変換装置45及び46は、入力された信号を増幅する図示しないアンプと、増幅された信号をサンプリングしてデジタルデータへ変換する図示しないアナログデジタル変換回路とを具備して構成されている。
【0024】
超音波内視鏡2の硬性部21に配設された画像位置配向検出用コイル44は、送信アンテナ41により発生された交番磁場を検出し、位置電気信号に変換してA/D変換装置46へ出力する。
【0025】
また、複数の体表検出用コイル42は、送信アンテナ41により発生された交番磁場を検出するためのコイルをそれぞれ具備して構成されおり、コイルが検出した交番磁場を位置電気信号に変換してA/D変換装置45へ出力する。
【0026】
位置配向算出装置4は、画像位置配向検出用コイル44及び体表検出用コイル42からそれぞれ出力されA/D変換装置45及び46によりデジタルデータに変換された、位置電気信号に基づいて、画像位置配向検出用コイル44及び複数の体表検出用コイル42の、送信アンテナ41に対するそれぞれの位置及び配向を算出する構成を有するものである。
【0027】
具体的には、位置配向算出装置4は、基底ベクトルV及びV3と平行な軸周りにそれぞれ巻かれた2つのコイルからなる画像位置配向検出用コイル44から出力される位置電気信号に基づいて、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の中心の位置O”と、基底ベクトルV及びV3とを算出し、該情報を画像処理装置5へ出力する。
【0028】
また、位置配向算出装置4は、体表検出用コイル42から出力される位置電気信号に基づいて、直交座標軸O−xyz上における体表検出用コイル42の位置及び配向を算出し、該情報を画像処理装置5へ出力する。
【0029】
本実施形態では、4個の体表検出用コイル42が、被検体100の体表の特徴のある4箇所の点(以下、被検体100の体表の特徴のある点を、単に標本点と称する)の近傍にテープ、ベルト、バンド、接着剤、負圧吸引等により装着され固定される。
【0030】
なお、本実施形態においては、4箇所の標本点A1〜A4を以下のように定める。すなわち、標本点A1を「剣状突起」(xiphoid process)、標本点A2を骨盤(pelvis)の左側の「左上前腸骨棘」(left anterior superior iliac spine)、標本点A3を骨盤の右側の「右上前腸骨棘」(right anterior superior iliac spine)、標本点A4を左右の上前腸骨棘の中間で脊椎上の「腰椎椎体棘突起」(spinous process of vertebral body)と定義する(図2参照)。
【0031】
4点の標本点A1〜A4は同一平面上には存在しない位置関係のものが採用される。このため、図2に示すように、剣状突起(標本点A1)を原点として他の標本点A2〜A4へ向かう3本のベクトルを基本ベクトルとした斜交座標系(un-orthogonal reference frame)を直交座標軸O−xyz上において算出する事が可能である。
【0032】
なお、4点の標本点A1〜A4は、本実施形態で示したものに限られるものではなく、使用する医用器具の形態及び該医用器具を使用する部位に応じて、適宜に変更されるものである。また、4点の標本点A1〜A4は、被検体100の骨格の特徴のある箇所であり、術者が触診により位置を特定可能な位置であることが好ましい。
【0033】
上述した位置配向算出装置4による、画像位置配向検出用コイル44の位置O”及び基底ベクトルV、V3の算出と、4個の体表検出用コイル42の位置及び配向の算出とは、超音波観測装置3による超音波断層像データの取得タイミングと同期して行われる。
【0034】
以下、位置配向算出装置4により算出され画像処理装置5へ出力されるデータのうち、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の位置O”のx座標、y座標及びz座標の値と、基底ベクトルVのx座標成分、y座標成分、z座標成分の値と、基底ベクトルV3のx座標成分、y座標成分、z座標成分の値と、を「画像位置配向検出用コイル位置配向データ」と称するものとする。
【0035】
また、位置配向算出装置4により算出され画像処理装置5へ出力されるデータのうち、直交座標軸O−xyz上における4個の体表検出用コイル42のそれぞれのx座標、y座標及びz座標の値を「体表検出用コイル位置データ」と称するものとする。
【0036】
また、上記「画像位置配向検出用コイル位置配向データ」と「体表検出用コイル位置データ」とを組み合わせたデータを単に「位置配向データ」と称するものとする。
【0037】
次に画像処理回路5の構成を説明する。画像処理装置5は、図1に示すように、通信回路51と、参照画像記憶部52と、検査範囲記憶部53と、シネメモリ54と、保存用断層像記憶部55と、3次元ガイド画像作成回路65と、混合回路67と、表示回路68と、制御回路60とを具備して構成されている。
【0038】
制御部である制御回路60は、演算装置、記憶装置、入出力装置等を具備して構成され、画像処理装置5の動作を制御するものであり、画像処理装置5内の各部や各回路と図示しない信号線を介して電気的に接続されている。また、本実施形態においては、制御回路60は、超音波観測装置3及び位置配向算出装置4の動作の制御も行うものである。
【0039】
制御回路60には、指示部である入力装置11が電気的に接続されている。本実施形態の入力装置11は、キーボード12およびマウス13により構成されている。制御回路60は、入力装置11を介して入力される術者からの指示に基づいて、医用ガイドシステム1の動作を制御する。本実施形態においては、キーボード12には、断層像1枚像保存キー12a、断層像連続保存キー12b、走査開始終了キー12c等からなるスイッチ群が配設されている。
【0040】
なお、入力装置11は、本実施形態においてはキーボード12及びマウス13により構成されるものとしているが、これは入力装置の一例として挙げたものであり、本実施形態に限られるものではない。入力装置11は、例えばトラックボール、タッチパネル等のポインティングデバイスや、プッシュスイッチ、ロータリースイッチ等のスイッチにより構成されるものであってもよい。また、入力装置11は、音声やジェスチャーにより術者が操作指示の入力を行うことが可能なものであってもよい。
【0041】
参照画像記憶部52は、大容量のデータを記憶することが可能な例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、テープドライブ等からなる。参照画像記憶部52には、人体の解剖学的な3次元の画像情報である参照画像データ群GRDが記憶されている。
【0042】
参照画像データ群GRDは、X線3次元ヘリカルCT装置16、3次元MRI装置15等によりある所定の人体から取得され、外部記憶装置17に記憶されていた人体の断層像のデータが、ネットワーク14を介して画像処理装置5に入力されたものである。図3に示すように、参照画像データ群GRDは、人体の体軸(頭から足に抜ける直線軸)に略直交する断面の一辺数十cmの正方形の領域における断層像RDの集合からなるデータであり、該断層像RDは、体軸に沿って0.5mm〜数mmピッチで取得されたものである。ここで、図3に示した参照画像データ群GRDにおいて、図面に正対して図面の下方向が人体の背方向であり、図面の手前から奥方向が人体の頭部方向である。
【0043】
なお、参照画像データ群GRDは、被検体100本人から取得されるものであってもよいし、異なる一人又は複数人の人体から取得されるものであってもよい。また、参照画像データ群GRDは、身長や体格等の人体の身体的特徴や性別等の条件ごとに、あらかじめ異なる人体から取得されるものであってもよい。また、参照画像データ群GRDは、X線3次元ヘリカルCT装置16、3次元MRI装置15から、直接ネットワーク14経由で画像処理装置5に入力され、参照画像記憶部52に記憶されるものであってもよい。
【0044】
また、図3に示すように、参照画像データ群GRDに対して固定された直交座標軸O’−x’y’z’を定義する。ここで、原点O’を最も脚部側である参照画像データRDの左下に定義し、x’軸を横辺に平行、y’軸を縦辺に平行に定義する。すなわち、z’軸は体軸と平行となる。
【0045】
本実施形態では、一例として参照画像データ群GRDは、X線3次元ヘリカルCT装置16により取得された、人体の腹部の複数の断層像RDから構成されており、X線造影剤の作用により、大動脈等の血管111は高輝度に、膵臓(pancreas)110等の末梢血管を多く含む器官は中輝度に、十二指腸(duodenum)112等は低輝度に造影されている。
【0046】
3次元ガイド画像作成回路65は、3次元画像処理を高速に行うための演算装置、抽出回路、ボリュームメモリ等を具備して構成されている。
【0047】
ボリュームメモリは、大容量のデータを格納可能に構成されたメモリである。このボリュームメモリが備える記憶領域の少なくとも一部には、ボクセル空間が割り当てられている。ボクセル空間は、図4に概略的に示すように、参照画像データ群GRDに設定した直交座標軸O’−x’y’z’に対応するアドレスを持つメモリセル(以下、ボクセル)から構成されている。
【0048】
抽出回路は、参照画像記憶部52に記憶された参照画像データ群GRDから、人体の所定の器官である関心器官のデータを抽出し、ボリュームメモリのボクセル空間に抽出データとして書き出すものである。該抽出データは、ボクセル空間上において関心器官の3次元モデル画像を構成するデータである。
【0049】
また、詳しくは後述するが、3次元ガイド画像作成回路65は、実空間における超音波断層像データの撮像範囲Rの位置及び配向をボクセル空間上において表現する3次元画像データである指標データを、位置配向データ等に基づいて公知の座標変換等により算出し、さらに該指標データを抽出データと合成した合成データを作成する。
【0050】
指標データは、直交座標軸O’−x’y’z’上における最新の超音波断層像データの撮像範囲Rを示す超音波断層像マーカと、直交座標軸O’−x’y’z’上において過去において超音波断層像データの取得が行われた領域を示す撮像履歴マーカとの少なくとも一方により構成される画像データである。
【0051】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、ボリュームメモリ内のボクセル空間から合成データを読み出し、該合成データに対して陰面消去、陰影付加、視線変換に伴う座標変換等の公知の3次元画像処理を施し、3次元ガイド画像データを作成する構成を有する。
【0052】
混合回路67は、超音波観測装置3から出力された超音波断層像データと、3次元ガイド画像作成回路65から出力された3次元ガイド画像データとを合成した混合データを生成するものである。
【0053】
表示回路68は、混合回路67から出力された混合データをビデオ信号に変換し、表示装置8に出力するものである。また、表示回路68は、光学観察装置10から出力された光学像データをビデオ信号に変換し、表示装置8へ出力する構成も有する。
【0054】
表示装置8は、ブラウン管モニタ、液晶モニタ等の画像表示部を具備し、該画像表示部にビデオ信号に基づいた画像を表示する構成を有するものである。
【0055】
シネメモリ54は、高速に読み書き可能な記憶装置であるメモリ等により構成されている。シネメモリ54は、超音波振動子アレイ31の連続したラジアル走査により得られる一連の複数の超音波断層像データと、該複数の超音波断層像データのそれぞれの取得に同期して算出した複数の位置配向データと、複数の超音波断層像データのそれぞれに付された通し番号と、を互いに関連付けて記憶するものである。
【0056】
撮像範囲記憶部53は、高速に読み書き可能な記憶装置であるメモリ等により構成されている。
【0057】
保存用断層像記憶部55は、大容量のデータを記憶することが可能な例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、テープドライブ等からなる。保存用断層像記憶部55は、シネメモリ54に記憶されている複数の超音波断層像データと、該複数の超音波断層像データに関連付けられたデータとのうちの、入力装置11を介して術者から保存の命令がなされたものを記憶するものである。
【0058】
ここで、術者からの保存の命令は、超音波内視鏡2の超音波振動子アレイ31による走査中に、術者がキーボード12の断層像1枚像保存キー12a又は断層像連続保存キー12bを押下することによりなされるものである。
【0059】
本実施形態では、術者により断層像1枚像保存キー12aが押下された場合には、その時点における最新の1つの超音波断層像データと、該超音波断層像データの取得時の位置配向データとが、シネメモリ54から読み出されて、静止画像の保存用断層像データとして保存用断層像記憶部55に記憶される。
【0060】
また、術者により断層像連続保存キー12bが押下された場合には、断層像連続保存キー12bが押下された時点においてシネメモリ54に記憶されている全ての超音波断層像データが読み出され、動画像の保存用断層像データとして保存用断層像記憶部55に記憶される。すなわち、術者により断層像連続保存キー12bが押下された場合には、保存用断層像データは、所定の時間間隔で連続して取得された複数の超音波断層像データにより構成された動画像となる。また、同時にシネメモリ54に記憶されている全ての超音波断層像データに関連付けられた位置配向データも保存用断層像記憶部55に記憶される。
【0061】
次に、上述した構成を有する本実施形態の医用ガイドシステム1の診断時の動作について術者の実際の使用形態に沿って説明する。図5は、医用ガイドシステムの全体の動作を表すメインルーチンのフローチャートである。図6は、超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理のフローチャートである。図7は、撮像範囲データの一例を示す表である。図8は、3次元ガイド画像を説明する図である。図9は、表示装置に表示される混合データを説明する図である。図10は、保存用断層像記憶部に保存されるファイルの一例を示す表である。図11は、3次元ガイド画像データ作成処理のフローチャートである。図12は、関心器官の3次元モデル画像の一例である。図13は、座標変換の概念を説明する図である。図14は、撮像履歴再生画像を説明する図である。
【0062】
なお、以下においては、被検体100の体腔内に超音波内視鏡2の硬性部21及び可撓部22を挿入して診断を行うものとし、診断を行う際の関心器官として膵臓を抽出して表示する場合を例に挙げて説明する。
【0063】
まず、制御回路60は、これから診断を行う関心器官の種類を示す関心器官情報を取得する(ステップS01)。ここで、制御回路60は、術者に人体の器官の選択を促す表示を表示装置8に提示する。そして、術者が、表示装置8に表示された器官の選択肢から、一つ又は複数の関心器官を入力装置11を介して指定することにより、関心器官情報が制御回路60に入力される。本実施形態では、上述のように関心器官として膵臓が指定される。
【0064】
なお、ステップS01における、表示装置8に表示される関心器官の選択画面は、人体の器官の情報が2次元画像又は3次元画像により表示されるものであって、術者が該画像中から関心器官を視覚的に選択するものであってもよいし、人体の器官が文字列として表示されるものであって、術者が該文字列から選択を行うものであってもよい。
【0065】
次に、制御回路60は、術者による指示入力により、または自動的な算出により、参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’を設定し、該複数の特徴点A’の直交座標軸O’−x’y’z’上の座標を取得する処理を実行する(ステップS02)。参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’は、被検体100の体表もしくは体腔内における複数の標本点Aに解剖学的に対応した点である。
【0066】
本実施形態においては、特徴点A’は4箇所の標本点A1〜A4にそれぞれ対応した下記の4点の特徴点A1’〜A4’である。すなわち、特徴点A1’、A2’、A3’及びA4’は、それぞれ剣状突起、左上前腸骨棘、右上前腸骨棘及び腰椎椎体棘突起に対応した参照画像データ群GRDの画素である。
【0067】
ステップS02においては、例えば、入力装置11を介した術者からの入力によって、参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A1’〜A4’に対応する画素が指定され
ることで、複数の特徴点A1’〜A4’のそれぞれの直交座標軸O’−x’y’z’上の座標が取得され記憶される。
【0068】
次に、制御回路60は、表示装置8に、体表検出用コイル42の被検体100への装着を術者に促す表示を行う(ステップS03)。術者は、被検体100の標本点近傍の体表上に、体位検出用コイル42を装着し固定する。
【0069】
本実施形態では、術者によって4個の体表検出用コイル42が、それぞれ被検体100の標本点A1(剣状突起)、標本点A2(左上前腸骨棘)、標本点A3(右上前腸骨棘)及び標本点A4(腰椎椎体棘突起)の近傍に装着される。
【0070】
次に、制御回路60は、詳しくは後述する超音波断層像及びガイド画像表示処理を実行する(ステップS04)。ステップS04では、術者は超音波内視鏡2の硬性部21及び可撓部22を被検体100の体腔内に挿入し、表示装置8に表示される超音波断層像データと3次元ガイド画像データとを参照しながら診断を行う。
【0071】
制御回路60は、術者によりキーボード12の図示しない検査終了キーが押下されるまでステップS04を繰り返し実行する(ステップS05)。ステップS05において、術者により検査終了キーが押下されたと判定した場合には、制御回路60は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70と、保存用断層像記憶部55に記憶されている超音波断層像データとを関連付け、終了処理を実行する。
【0072】
次に、図5に示したフローチャートのステップS04における、超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理の詳細について、図6のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0073】
まず、制御回路60は、キーボード12の走査開始終了キー12cが術者により押下されラジアル走査を開始する命令がなされるまで待機する(ステップS11)。キーボード12の走査開始終了キー12cが押下され、ラジアル走査の開始指示が入力されたと判定した場合には、超音波振動子アレイ31によるラジアル走査を開始するための初期処理を実行し、ステップS12へ移行する。
【0074】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、位置配向算出装置4から出力された位置配向データを取得する(ステップS12)。位置配向データは、上述のように、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の位置O”及び配向のデータと、4個の体表検出用コイル42のそれぞれの位置のデータと、により構成されている。
【0075】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、ステップS12において取得した位置配向データに通し番号を付し、該通し番号と位置配向データとを撮像範囲記憶部53に撮像範囲データ70として記憶する(ステップS13)。撮像範囲データ70は、図7の表に示すような行列状のデータである。
【0076】
撮像範囲データ70の列方向は、「通し番号71」、「画像位置配向検出用コイル位置配向データ72」、「体表検出用コイル位置データ73」、「断層像1枚保存フラグ74」及び「断層像連続保存フラグ75」の5種類のデータで構成されている。
【0077】
そして、撮像範囲データ70は、その行方向に、ステップS13が実行されるたびに、上記列方向のデータ種類に関しての最新のものが時系列に追記されていくものである。
【0078】
通し番号71は1以上の自然数であり、ラジアル走査の開始指示直後の最初の値を1とし、以降ステップS13が実行されるたびに2、3、4、・・・と1ずつ増加されるデータである。すなわち、通し番号71は、データの取得順序を示す値である。
【0079】
画像位置配向検出用コイル位置配向データ72は、上述のように、直交座標軸O−xyz上における画像位置配向検出用コイル44の位置O”のx座標、y座標及びz座標の値と、基底ベクトルVのx座標成分、y座標成分、z座標成分の値と、基底ベクトルV3のx座標成分、y座標成分、z座標成分の値が、この表記順に記述されたものである。
【0080】
体表検出用コイル位置データ73は、直交座標軸O−xyz上における4個の体表検出用コイル42のそれぞれのx座標、y座標及びz座標の値が記述されたものである。本実施形態では、被検体100の標本点A1〜A4に装着された体表検出用コイル42のそれぞれのx座標、y座標及びz座標の値が、標本点A1、A2、A3、A4の順に記述されたものである。
【0081】
断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75は、詳しくは後述するが、それぞれ0又は1の2値のデータであり、新たに記述される場合には0が書き込まれる。
【0082】
具体的には、ステップS13において、3次元ガイド画像作成回路65は、まず撮像範囲データ70の通し番号71の最大の値を読み取る。そして、通し番号71の最大の値に1を足した値となる新たな通し番号のデータ行を作成して追記し、さらにこの新たな通し番号のデータ行に、直前のステップS12において取得した最新の画像位置配向検出用コイル位置配向データ72及び体表検出用コイル位置データ73を書き込む。また、この新たな通し番号のデータ行に、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75をそれぞれの値を0として書き込む。
【0083】
なお、もしステップS13において、撮像範囲記憶部53に撮像範囲データ70が記憶されていなければ、3次元ガイド画像作成回路65は撮像範囲データ70のファイルを新たに作成し、この新たな撮像範囲データ70内に通し番号71の値が1のデータ行を書き込む。そして通し番号71の値が1のデータ行に、直前のステップS12において取得した最新の画像位置配向検出用コイル位置配向データ72及び体表検出用コイル位置データ73を書き込む。さらに、この通し番号71の値が1のデータ行に、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75をそれぞれの値を0として書き込む。
【0084】
次に、混合回路67は、超音波観測装置3から出力された超音波断層像データを取得する(ステップS14)。超音波断層像データは、上記位置配向データと同期して取得されるものである。
【0085】
次に、制御回路60は、ステップS14において混合回路67が取得した超音波断層像データと、ステップS12において取得した位置配向データと、ステップS13において
位置配向データに付した通し番号と、を関連付けてシネメモリ54に記憶する(ステップS15)。
【0086】
すなわち、ステップS15が実行される度に、シネメモリ54に、超音波断層像データ、画像位置配向検出用コイル位置配向データ、体表検出用コイル位置データ、及び通し番号の4種類のデータが新たな1つの組データとして互いに関連付けられて記憶される。
【0087】
ステップS15において、新たな組データを記憶するための記憶容量がシネメモリ54に残されていない場合には、通し番号が一番小さい値である組データを1つ削除した後に上記新たな組データを記憶する。
【0088】
次に、3次元画像作成回路65は、詳しくは後述する方法により、図8に示すような3次元ガイド画像データを作成し、混合回路67へ出力する(ステップS16)。3次元ガイド画像は、概略的に説明すれば、関心器官に対する過去及び最新の超音波断層像データの撮像範囲Rの位置を示す3次元画像データである。なお、3次元画像データである3次元ガイド画像データの視点は、術者からの指示入力により任意の位置に設定可能である。
【0089】
次に、混合回路67は、ステップS14で取得した超音波断層像データと、ステップS16で入力された3次元ガイド画像データとを合成した、図9に示すような表示用の混合データを作成する。そして、表示回路68は、混合回路67により作成された混合データをビデオ信号に変換し、表示装置8に出力する。そして、表示装置8は、このビデオ信号を基に超音波断層像データと3次元ガイド画像データとを並べて表示する(ステップS17)。
【0090】
次に、制御回路60は、上記ステップS12からステップS17を実行する間に、術者によりキーボード12の断層像1枚像保存キー12aが押下されたか否かを判定する(ステップS18)。
【0091】
ステップS18において、断層像1枚像保存キー12aは押下されたと判定した場合には、ステップS19へ移行する。一方、ステップS18において、断層像1枚像保存キー12aは押下されていないと判定した場合には、ステップS21へ移行する。
【0092】
ステップS19において、制御回路60は、シネメモリ54に記憶されている最新の超音波断層像データと画像位置配向検出用コイル位置配向データと体表検出用コイル位置データとを関連付けて、保存用断層像記憶部55に保存する。
【0093】
次に、ステップS20において、制御回路60は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70内の、最新のデータ行の断層像1枚保存フラグ74の値を1に書き換え、撮像範囲データ70を更新する。言い換えれば、ステップS20では、撮像範囲データ70内のステップS19において保存用断層像記憶部55に保存された超音波断層像データに対応する通し番号の値が含まれたデータ行が書き換えられる。そしてステップS21へ移行する。
【0094】
ステップS21において、制御回路60は、上記ステップS12からステップS17を実行する間に、術者によりキーボード12の断層像連続保存キー12bが押下されたか否かを判定する。
【0095】
ステップS21において、断層像連続保存キー12bは押下されたと判定した場合には、ステップS22へ移行する。一方、ステップS21において、断層像連続保存キー12bは押下されていないと判定した場合には、ステップS24へ移行する。
【0096】
ステップS22において、制御回路60は、シネメモリ54に記憶されている全ての超音波断層像データと画像位置配向検出用コイル位置配向データと体表検出用コイル位置データとを関連付けて、保存用断層像記憶部55に保存する。
【0097】
例えば、ステップS22の実行時において、シネメモリ54には通し番号の値4〜8に対応する5枚の超音波断層像データと、該5枚の超音波断層像に対応する位置配向データが記憶されていた場合、ステップ22の処理によってこれら全てのデータが保存用断層像記憶部55に保存される。
【0098】
この場合、具体的には、5枚の超音波断層像データと共に、該5枚の超音波断層像に対応する通し番号及び位置配向データが記述された図10に示すような一つのファイルが保存用断層像記憶部55に保存される。また、5枚の超音波断層像データは、それぞれ対応する通し番号と同じファイル名で保存される。すなわち、超音波断層像データは、ファイル名によって通し番号及び位置配向データとの関連付けがなされる。
【0099】
次にステップS23において、制御回路60は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70の、ステップS22で保存した超音波断層像に対応するデータ行の断層像連続保存フラグ75の値を1に書き換え、撮像範囲データ70を更新する。言い換えれば、ステップS23では、撮像範囲データ70内のステップS22において保存用断層像記憶部55に保存された超音波断層像データに対応する通し番号の値が含まれたデータ行が書き換えられる。そしてステップS24へ移行する。
【0100】
次に、ステップS24において、制御回路60は、上記ステップS12からステップS23を実行する間に、術者によりキーボード12の走査開始終了キー12cが押下されたか否かを判定する。
【0101】
ステップS24において、走査開始終了キー12cは押下されていないと判定した場合には、ステップS12へ戻り、上記処理を繰り返す。
【0102】
このように、本実施形態の医用ガイドシステム1は、走査開始終了キー12cが再び押下されるまでの間、ステップS12〜ステップS23を所定の周期で繰り返し実行することにより、逐次新たな3次元ガイド画像データを作成し、新たな超音波断層像データと共に表示装置8の画像表示部にリアルタイムに表示する。
【0103】
一方、ステップS24において、走査開始終了キー12cは押下されたと判定した場合には、ステップS25へ移行し、制御回路60は、超音波振動子アレイ31によるラジアル走査を停止するための信号を超音波観測装置3へ出力してラジアル走査を終了し、超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理を終了する。
【0104】
次に、図6に示したフローチャートのステップS16における、3次元ガイド画像データ作成処理の詳細について、図11のフローチャートを参照して以下に説明する。
【0105】
まず、3次元画像作成回路65は、参照画像記憶部52に記憶された参照画像データ群GRDを読み込む(ステップS31)。
【0106】
次に、3次元画像作成回路65は、参照画像データ群GRDから関心器官のデータを抽出し、ボリュームメモリのボクセル空間に抽出データとして書き出す(ステップS32)。3次元画像作成回路65は、例えば図12に示すような、関心器官である膵臓110や血管111のみを表示する3次元モデル画像を抽出データとして作成し、ボクセル空間に書き出す。
【0107】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、内部に記憶する変数iを設定し、変数iの値を0に設定する(ステップS33)。
【0108】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、内部に記憶している変数iに1を足す(ステップS34)。すなわち、i=i+1の計算を実行する。
【0109】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70から、通し番号71の値が変数iと等しいデータ行を読み込む(ステップS35)。
【0110】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、超音波走査レンジの設定値、すなわち正方形である超音波断層像データの1辺の長さの設定値と、ステップS35で読み込んだデータのうちの画像位置配向検出用コイル位置配向データとから、実空間である直交座標軸O−xyz上における超音波断層像データの撮像範囲Rを算出する(ステップS36)。
【0111】
具体的には、ステップS36において、3次元ガイド画像作成回路65は、画像位置配向検出用コイル位置配向データ、すなわち画像位置配向検出用コイル44の位置O”と画像位置配向検出用コイル44の配向を示す基底ベクトルV及びV3とに基づいて、正方形である超音波断層像データの撮像範囲Rの4つの頂点R1〜R4の直交座標軸O−xyz上における座標を算出する。
【0112】
ステップ36においては、まず、基底ベクトルVとV3との外積を求めることにより、基底ベクトルV12が算出される。そして、超音波断層像データの1辺の長さがaであるとして、1つ目の頂点R1の座標はO”+a/2・(V12)+a/2・(V3)、2つ目の頂点R2の座標はO”−a/2・(V12)+a/2・(V3)、3つ目の頂点R3の座標はO”+a/2・(V12)−a/2・(V3)、4つ目の頂点R4の座標はO”−a/2・(V12)−a/2・(V3)の計算により算出される。
【0113】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、ステップS35で読み込んだデータのうちの、体表検出用コイル位置データ、すなわち複数の体表検出用コイル42の直交座標軸O−xyz上の座標と、ステップS02において取得した参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’の直交座標軸O’−x’y’z’上の座標と、に基づいて、直交座標軸O−xyz上の座標を直交座標軸O’−x’y’z’上の座標へ写像する座標変換式を算出する。そして、図13に概念的に示すように、該座標変換式を用いて、ステップS36において算出した直交座標軸O−xyz上における超音波断層像データの撮像範囲Rを、直交座標軸O’−x’y’z’上に写像する(ステップS37)。
【0114】
以下において、直交座標軸O’−x’y’z’上に写像された撮像範囲Rを写像撮像範囲R’と称するものとする。該写像撮像範囲R’は、具体的には、ステップS36で算出した4つの頂点R1〜R4を座標変換式により直交座標軸O’−x’y’z’上に写像した4つの点R1’〜R4’により定義される、四辺形状の平面の領域である。
【0115】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、ステップS37で直交座標軸O’−x’y’z’上における写像撮像範囲R’に対応する領域を示す指標データである撮像履歴マーカ80を作成し、該撮像履歴マーカ80をボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出し、合成データを作成する(ステップS38)。
【0116】
撮像履歴マーカ80は、ステップS37において算出した4つの点R1’〜R4’を頂点とした図8に示すような半透明の四辺形状の平面を表す3次元画像データである。ここで、ボクセル空間には既にステップS32において関心器官の抽出データが書き出されているため、ボクセル空間内の合成データは図8に示すように、関心器官の抽出データに撮像履歴マーカ80が重ね合わせられたものとなる。
【0117】
また、ステップS38において、3次元ガイド画像作成回路65は、四辺形状の撮像履歴マーカ80の外辺を示す境界線の線種を、ステップS35で読み込んだデータのうちの「断層像1枚保存フラグ74」及び「断層像連続保存フラグ75」の値に応じて異ならせて描画する。
【0118】
本実施形態では、図8に示すように、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値がともに0の場合には境界線の線種を点線とし(図8中の符号81)、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値がともに1の場合には境界線の線種を破線とし(図8中の符号82)、断層像1枚保存フラグ74の値が0かつ断層像連続保存フラグ75の値が1の場合には境界線の線種を鎖線とし(図8中の符号83)、断層像1枚保存フラグ74の値が1かつ断層像連続保存フラグ75の値が0の場合には境界線の線種を実線とする(図8中の符号84)。
【0119】
なお、撮像履歴マーカ80は、対応する断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値に応じて異なった表示がなされるものであればよく、本実施形態のように線種により区別して表示する形態に限られるものではない。例えば、撮像履歴マーカ80は、対応する断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値に応じて異なる色により表示される形態であってもよいし、例えば明度差や周期的な明滅により区別して表示されるものであってもよい。
【0120】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70の通し番号71の最大値Nと、変数iとの大小関係を判定する(ステップS39)。
【0121】
ステップS39判定の結果、変数iの方が通し番号71の最大値Nよりも小さい場合には、ステップS34に戻り、ステップS34〜ステップS38までの処理を繰り返す。すなわち、撮像範囲データ70に記述されたデータ行が複数である場合には、ステップS34〜ステップS38までの処理を全てのデータ行について繰り返すことにより、図8に示すような、複数の撮像履歴マーカ80が、指標データとしてボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出される。
【0122】
一方、ステップS39判定の結果、変数iの方が通し番号71の最大値Nと等しい場合には、ステップS40へ移行する。
【0123】
ステップS40においては、3次元ガイド画像作成回路65は、最後に作成した撮像履歴マーカ80を撮像領域マーカ85として強調表示するように変更する。ここで、最後に作成した撮像範囲マーカ80とは、撮像範囲データ70の通し番号71が最大値Nであるデータ行に対応した撮像範囲マーカ80のことである。本実施形態では、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像領域マーカ85の外辺を示す境界線の線種を太線に変更してボクセル空間に書き出す。
【0124】
言い換えれば、ステップS40において作成された撮像領域マーカ85とは、最新の超音波断層像データの直交座標軸O’−x’y’z’上における写像撮像範囲R’を示す指標である。
【0125】
次に、3次元ガイド画像作成回路65は、最新の超音波断層像データの直交座標軸O’−x’y’z’上における写像撮像範囲R’の配向を示す指標である先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を作成し、ボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出す(ステップS41)。
【0126】
先端方向マーカ86は、上記撮像領域マーカ85の重心位置から、撮像領域マーカ85に直交し、かつ直交座標軸O’−x’y’z’上における硬性部21の挿入方向に延出する矢印状(錘状)の3次元オブジェクトである。また12時方向マーカ87は、直交座標軸O’−x’y’z’上におけるラジアル走査の12時方向を示すための、撮像領域マーカ85と同一平面上に描画された矢印状の画像である。
【0127】
具体的には、ステップS41において、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像範囲データ70の通し番号71が最大値Nであるデータ行の体表検出用コイル位置データと、参照画像データ群GRDにおける複数の特徴点A’の直交座標軸O’−x’y’z’上の座標と、に基づいて、直交座標軸O−xyz上の座標を直交座標軸O’−x’y’z’上の座標へ写像する座標変換式を算出する。
【0128】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、該座標変換式を用いて、撮像範囲データ70の通し番号71が最大値Nであるデータ行の、基底ベクトルV及びV3を、直交座標軸O’−x’y’z’上に写像した基底ベクトルV’及びV3’を算出する。そして、該基底ベクトルV’とV3’との外積を求めることにより、基底ベクトルV12’を算出する。
【0129】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、直交座標軸O’−x’y’z’上において基底ベクトルV’及びV12’の方向を示す矢印状の画像データである先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を作成し、ボリュームメモリ内のボクセル空間に書き出す。
【0130】
なお、上記撮像領域マーカ85、先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87により、本実施形態の直交座標軸O’−x’y’z’上における最新の超音波断層像データの撮像範囲Rを示す超音波断層像マーカが構成される。
【0131】
上記ステップS31からステップS41の処理を実行することにより、3次元ガイド画像作成回路65により3次元ガイド画像データが作成されるのである。
【0132】
次に、本実施形態の医用ガイドシステム1の撮像履歴の再生時の動作を説明する。
【0133】
本実施形態の医用ガイドシステム1は、上述したような超音波診断装置による診断時において、被検体の臓器に対する超音波断層像の現在の撮像位置及び過去の撮像位置の履歴を3次元ガイド画像としてリアルタイムに変化させて表示する動作のみでなく、術者が診断後に、超音波断層像とその超音波断層像が撮像された位置とを同時に確認しながら観察できるように、超音波断層像の撮像位置の履歴を再生表示する動作も可能である。
【0134】
術者により、キーボード12の図示しない撮像履歴再生キーが押下された場合、超音波断層像再生部としての画像処理装置5は、図14に示すような撮像履歴再生画像を作成し、表示装置8の画像表示部に表示する。
【0135】
撮像履歴再生画像は、本実施形態では表示装置8の画像表示部の右側に超音波断層像データを表示し、左側には、現在表示中の超音波断層像データの関心器官に対する位置を表示する画像である。
【0136】
具体的には、術者によりキーボード12の撮像履歴再生キーが押下された場合、制御回路60は、保存用断層像記憶部55に記憶されている全ての超音波断層像データから、術者により入力装置11を介して指定された1枚の所定の超音波断層像データを読み出す。
【0137】
また、術者によりキーボード12の撮像履歴再生キーが押下された場合、3次元ガイド画像作成回路65が、上述したステップS31〜ステップS39と同様の処理を実行し、関心器官の3次元モデル画像と、撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70に記録されている全ての全てのデータ行に基づいた複数の撮像履歴マーカ80とを重畳した撮像履歴画像データを作成する。すなわち、撮像履歴マーカ80は、診断中に取得された全ての超音波断層像データの撮像範囲の位置及び配向を示す3次元の画像データである。
【0138】
そして、3次元ガイド画像作成回路65は、撮像履歴マーカ80のうち、術者により指定された1枚の所定の超音波断層像データに対応する撮像履歴マーカ80の外辺を示す境界線の線種を太線に変更して強調する(図14中の符号89)。さらに3次元ガイド画像作成回路65は、術者により指定された1枚の所定の超音波断層像データの配向を示す先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を作成する。
【0139】
次に、混合回路67は、制御回路60により読み出された1枚の所定の超音波断層像データと、3次元ガイド画像作成回路65により作成された撮像履歴画像データとを図14に示すように合成した混合データを生成し、出力する。そして、表示装置8は、画像表示部に、混合データを基にした撮像履歴再生画像を表示する。
【0140】
本実施形態では、撮像履歴再生画像を表示している状態において、術者により表示中の超音波断層像データを他の超音波断層像データに切替える旨の指示が入力装置11を介して入力された場合には、3次元ガイド画像作成回路65は、強調表示しさらに先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87を付加する撮像履歴マーカ80を、切替により新たに表示される超音波断層像データに対応したものに変更する。
【0141】
例えば、本実施形態の医用ガイドシステム1では、撮像履歴再生画像を表示している状態において、術者がキーボード12の所定のキーを押下する度に、表示装置8の画像表示部には、検査中に保存した時刻順に超音波断層像データが順次が切替表示される。
【0142】
そして、この表示する超音波断層像データの切替に応じて、撮像履歴再生画像中の、強調表示されかつ先端方向マーカ86及び12時方向マーカ87が付加される撮像履歴マーカ80も切替えられて表示される。ここで、表示中の超音波断層像データが、連続保存による動画像の一部である場合には、術者により図示しない再生キーが押下されることにより、表示装置8の画像表示部においてその動画像が再生表示される。
【0143】
なお、撮像履歴再生画像において表示される撮像履歴マーカ80は、検査中に取得された超音波断層像データ全てに対応したものが表示される形態に限らず、例えば撮像範囲記憶部53に記憶されている撮像範囲データ70のうちの断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の少なくとも一方の値が1であるデータ行に対応するもののみが表示される形態であってもよい。
【0144】
このように、選択的に撮像履歴マーカ80を表示することにより、表示に必要な処理の負荷を軽減することができる。また、撮像履歴マーカ80の視認性が向上するため、術者による関心臓器と撮像履歴マーカ80との位置関係の把握が容易となる。
【0145】
以上に説明した本実施形態の医用ガイドシステム1の効果を以下に説明する。
【0146】
本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波内視鏡2の超音波走査中において、過去に超音波断層像データの取得が行われた領域の履歴を示す撮像履歴マーカ80が、関心器官の3次元モデル画像に重畳されて表示される。
【0147】
このため、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、関心器官に対する過去の撮像領域の位置関係、すなわち関心器官にについて既に超音波診断を行った領域の履歴、を視覚的に容易に認識することが可能となり、関心器官に対して見落としのない超音波診断を確実に行うことが可能となる。
【0148】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、関心器官にについて既に超音波診断を行った領域の履歴、を視覚的に容易に認識することが可能となるため、同じ領域を繰り返して走査することが無くなり診断時間が短縮されるため、術者及び被検者の負担が軽減される。
【0149】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波内視鏡2の超音波走査中において、保存用断層像データの撮像位置も撮像履歴マーカ80として関心器官の3次元モデル画像に重畳されて表示される。
【0150】
このため、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、保存した超音波断層像データの関心器官に対する撮像位置を視覚的に確認することが可能となり、診断に必要な超音波断層像データを忘れることなく確実に保存することが可能となる。
【0151】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波診断を行った領域と保存用断層像データと保存用断層像データの撮像位置は保存され、診断後に撮像履歴再生画像として再生表示される。したがって、術者は診断後にこれらのデータを撮像履歴再生画像として確認することにより、カルテの整理等の作業を容易かつ短時間に行うことが可能となる。
【0152】
また、本実施形態の医用ガイドシステム1では、超音波診断を行った領域と保存用断層像データと保存用断層像データの撮像位置は保存され、診断後に撮像履歴再生画像として再生表示される。このため、本実施形態の医用ガイドシステム1を使用することにより、術者は、診断後に撮像履歴再生画像を確認し、超音波断層像データと超音波断層像データの関心器官に対する撮像位置を対比することにより、腫瘍等の病変の位置を立体的に容易に確認することができ、正確な手術計画を立案することが可能となる。
【0153】
なお、上述した本実施形態においては、位置配向データと超音波断層像データとの関連付けを、通し番号とファイル名により行っているが、関連付けの方法はこの方法に限られるものではない。例えば、位置配向データと超音波断層像データとの関連付けは、それぞれが取得され生成された時刻のデータにより行われるものであってもよい。
【0154】
また、本実施形態においては、超音波断層像データの撮像範囲Rの1辺の長さaは固定された値としている。すなわち撮像範囲Rの形状及び面積は固定されたものとして扱っているが、本発明はこの形態に限られるものではない。例えば超音波振動子アレイ31が送信する超音波ビームの強度や走査範囲を変更することにより超音波断層像データの撮像範囲Rの形状及び面積が可変である場合には、走査範囲情報も撮像範囲データ70として超音波断層像データと関連付けて記憶され、撮像履歴マーカ80は、超音波ビームの強度や走査範囲の変化に応じた大きさ及び形状により表示されるものとする。
【0155】
また、本実施形態では、医用器具である超音波診断装置として電子ラジアル走査型の超音波内視鏡2を用いているが、超音波診断装置の形態は本実施形態に限られるものではない。例えば、超音波診断装置は、機械走査型の超音波内視鏡や、超音波振動子群を扇状に設けた電子コンベックス走査型超音波内視鏡であってもよく、本発明は超音波の走査方式により限定されるものではない。
【0156】
また、超音波診断装置は、光学観察窓を具備しない超音波プローブ型のものであってもよいし、カプセル型の超音波ゾンデでもよい。また、超音波診断装置は、被検体の体表面上から体腔内に向けて超音波走査を行ういわゆる体外式の超音波診断装置であってもよい。
【0157】
また、本実施形態では位置検出手段として送信アンテナ41と受信コイルとを用い、磁場で位置と配向とを検出するよう構成、作用させたが、磁場の送受は逆でも良く、また、磁場ではなく加速度や他の手段で位置と配向とを検出するよう構成、作用させても良い。
【0158】
また、本実施形態では、画像位置配向検出用コイル44は、環状の超音波振動子アレイ31の中心近傍に配設されるものとしているが両者の位置関係はこの形態に限られるものではない。すなわち、画像位置配向検出用コイル44の位置及び配向から超音波断層像の走査中心の座標と配向を求めるためには、超音波振動子アレイ31と画像位置配向検出用コイル44との相対的な位置が固定されたものであればよい。
【0159】
また、本実施形態では、参照画像データ群GRDを構成するデータとして、X線3次元ヘリカルCT装置16、3次元MRI装置15により撮像された複数枚の2次元CT画像や2次元MRI画像を用いるよう構成したが、例えばPET(Positron Emission Tomography)のような他のモダリティーを用いて事前に取得した3次元画像データを参照画像データ群GRDとして用いてもよい。また、参照画像データ群GRDは、体外から超音波走査を行う体外式の超音波診断装置により事前に取得された3次元画像データにより構成されてもよい。
【0160】
また、本実施形態では、1軸に巻かれたコイルからなる4個の体表検出用コイル42を被検体100の装着し、4箇所の標本点A1〜A4の位置配向データを取得するよう構成したが、被検体100を左側臥位にした後に、一つの体表検出用コイルを4箇所の標本点A1〜A4に順次接触させて4箇所の標本点A1〜A4の位置配向データを取得するような構成であってもよい。
【0161】
また、本実施形態では、位置配向算出装置4は、体表検出用コイル42に関してはその位置のみを算出するものであるが、位置の代わりに体表検出用コイル42の巻線軸の方向を算出する構成であってもよい。また、体表検出用コイル42の位置と巻線軸の方向との両方を算出してもよい。1個の体表検出用コイル42に関して位置配向算出装置4が算出する自由度が増えることにより、体表検出用コイル42の個数を減らすことができ、被検体100に体表検出用コイル42を装着する際や超音波内視鏡2による診断中の術者や被検体100の負担を減らすことができる。
【0162】
また、本実施の形態では、標本点を剣状突起、左上前腸骨棘、右上前腸骨棘、腰椎椎体棘突起としたが、この例に限らず、胸部体表や胸部体腔内の特徴のある点や他の例でもよい。
【0163】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図15は本実施形態の3次元ガイド画像を説明する図である。
【0164】
本実施形態は、第1の実施形態に対して、撮像履歴マーカの表示形態のみが異なるものであり、その他の構成は同一である、よって以下ではこの相違点のみを説明するものとする。
【0165】
本実施形態の医用ガイドシステムは、図15に示すように、3次元ガイド画像データ中において、超音波走査が行われた領域を示すための撮像履歴マーカ90を、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡として表示する。
【0166】
本実施形態の撮像履歴マーカ90は、第1の実施形態と同様の方法により作成された複数の四辺形状の平面である撮像履歴マーカ80の輪郭線を繋げることにより形成される立体形状である。
【0167】
本実施形態の撮像履歴マーカ90は、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡を表す立体形状の輪郭線であるワイヤフレームで表現される。
【0168】
そして、本実施形態の撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及び該ワイヤフレーム内側の領域は、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値の変化に応じて、異なる透過率及び色の画素により着色される。
【0169】
すなわち、本実施形態の撮像領域マーカ90は、その色の変化により、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡と、超音波断層像データが1枚保存された領域と、超音波断層像データが連続保存された領域と、を区別して表現するものである。
【0170】
例えば、超音波走査は行われたが超音波断層像データの保存が行われていない領域においては、撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及びその内側の領域は、半透明の白色として表現される。また、超音波断層像データが1枚保存された領域においては、撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及びその内側の領域は、緑色として表現される(図15中の符号91)。また、超音波断層像データが連続枚保存された領域においては、撮像履歴マーカ90のワイヤフレーム及びその内側の領域は、水色として表現される(図15中の符号92)。
【0171】
さらに、最新の超音波断層像データの撮像範囲Rの位置に相当する領域は、黒色の太線で強調された四辺形の枠として表現される(図15中の符号93)。
【0172】
上記撮像履歴マーカ90の透過率及び輝度は、関心器官の3次元モデル画像との位置関係の把握を容易とするために、術者の操作により任意の透過率及び輝度に変更可能である。
【0173】
上述した本実施形態の医用ガイドシステムは、第1の実施形態と同様の効果を有することに加え、さらに、3次元ガイド画像データの撮像履歴マーカの表現がより簡素なものとなるため、術者は直感的に素早く、関心器官にについて既に超音波診断を行った領域の履歴を認識することが可能となる。
【0174】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図16は、本実施形態の3次元ガイド画像を説明する図である。
【0175】
本実施形態は、第2の実施形態に対して、撮像履歴マーカの表示形態のみが異なるものであり、その他の構成は同一である、よって以下ではこの相違点のみを説明するものとする。
【0176】
本実施形態の医用ガイドシステムは、第2の実施形態と同様に、3次元ガイド画像データ中において、超音波走査が行われた領域を示すための撮像履歴マーカ90aを、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡として表示する。
【0177】
本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、第2の実施形態と同様に、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡を表す立体形状の輪郭線であるワイヤフレームで表現される。また、第2の実施形態と同様に、撮像履歴マーカ90aのワイヤフレーム及び該ワイヤフレーム内側の領域は、断層像1枚保存フラグ74及び断層像連続保存フラグ75の値の変化に応じて、異なる透過率及び色の画素により着色される。
【0178】
さらに、本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、所定の枚数の超音波断層像データを取得する期間中に撮像範囲Rが移動した距離に応じて、ワイヤフレーム及び該ワイヤフレーム内側の領域が異なる色に着色される。
【0179】
すなわち、本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、その色の変化により、超音波断層像データの撮像範囲Rの移動した軌跡と、超音波断層像データが1枚保存された領域と、超音波断層像データが連続保存された領域と、を区別して表現すると共に、さらに取得した超音波断層像データの取得間隔の粗密を表現するものである。
【0180】
例えば、超音波観測装置3が超音波断層像データをフレームレートを10Hzとして作成している場合には、超音波断層像データは、1秒間に10枚取得される。3次元ガイド画像作成回路65は、1秒間に撮像範囲Rが動いた距離、すなわち画像位置配向検出用コイル44の位置及び配向の変化量と、撮像範囲Rの面積とから、1秒間に超音波走査が行われた領域の体積を算出する。
【0181】
3次元ガイド画像作成回路65は、1秒間に超音波走査が行われた領域の体積が予め与えられた所定のしきい値以上であった場合には、撮像履歴マーカ90aの該当する領域を赤色に着色する。
【0182】
すなわち、本実施形態においては、取得した超音波断層像データの取得距離間隔が大きい場合、つまり、超音波断層像データのフレームレートに対して超音波振動子アレイ31の移動速度が高すぎる場合に、術者に対する警告として撮像履歴マーカ90aのワイヤフレーム及びその内側の領域が、赤色として表現される(図16中の符号94)。
【0183】
以上のように構成された本実施形態の医用ガイドシステムによれば、第2の実施形態と同様の効果に加え、さらに、術者は超音波断層像データが取得された間隔が粗い領域を素早く認識することが可能となるため、診断時の見落としを防止することが可能となる。
【0184】
超音波内視鏡による診断においては、診断中に硬性部(超音波振動子アレイ)が一瞬で大きく移動してしまう場合がある。例えば、超音波内視鏡を引きながら十二指腸球部を観察していて、そのまま引いていくと、十二指腸球部と胃を隔てている幽門に硬性部が引っかかる。そのままさらに引いていくと幽門から硬性部が抜け、その反動で硬性部が大きく移動してしまうことがある。
【0185】
本実施形態の医用ガイドシステムによれば、このように超音波振動子アレイが短時間に大きく移動してしまった場合において、術者は、その短時間の大きな移動が関心臓器に対してどの位置で発生したか、さらにどの位置から再度超音波走査を行えばよいのか、を素早く容易に把握することが可能となるため、診断時間を短縮することができる。すなわち、術者及び被検者の負担が軽減される。
【0186】
なお、本実施形態の撮像履歴マーカ90aは、超音波断層像データが保存された領域と、超音波断層像データが取得された間隔の粗密とを、同時に色の違いにより表現するものであるが、両者はそれぞれ単独に表現され、術者の指示により切替えられて表示されるものであってもよい。
【0187】
また、撮像履歴マーカ90aは、超音波断層像データが保存された領域を線種の違いのみにより表現し、超音波断層像データが取得された間隔の粗密を、色の違いにより表現する形態であってもよい。
【0188】
また、本実施形態においては、超音波断層像データが取得された間隔の粗密の判定を、1つのしきい値により行う形態としているが、しきい値は2つ以上設定されるものであって、撮像履歴マーカ90aの色分けが3色以上とされる形態であってもよい。
【0189】
また、超音波断層像データが取得された間隔の粗密の判定は、超音波振動子アレイの単位時間当たりの移動量ではなく、超音波振動子アレイの単位時間当たりの配向の変化量、すなわち角速度を用いて行われるものであってもよい。また、超音波断層像データが取得された間隔の粗密の判定は、超音波振動子アレイの移動速度及び角速度の双方に基づいて行われてもよい。
【0190】
上述した実施形態に基づいて、以下の構成を提案することができる。すなわち、
(付記1)
生体内へ超音波を送受して得られる超音波信号に基づき超音波断層像を作成する超音波断層像作成手段と、
前記超音波断層像の位置および/または配向を検出する検出手段と、
人体の3次元データからなる参照データを保持する参照データ保持手段と、
を具備したことを特徴とする超音波診断装置において、
超音波検査中に作成した超音波断層像の前記位置および/または配向を用いて、前記参照データ上に、超音波検査中に作成した超音波断層像の解剖学的な位置および/または配向を示す検査完了範囲画像を作成する検査完了範囲画像作成手段と、
前記検査完了範囲画像を表示する表示手段と、
を設けたことを特徴とした超音波診断装置。
【0191】
(付記2)
超音波検査中に作成した超音波断層像の前記位置および/または配向を検査範囲データとして保存できるようにしたことを特徴とした付記1に記載の超音波診断装置。
【0192】
(付記3)
検査完了範囲画像作成手段が前期検査範囲データを用いて、前記検査完了範囲画像を作成できることを特徴とした付記2に記載の超音波診断装置。
【0193】
(付記4)
生体内へ超音波を送受して得られる超音波信号に基づき超音波断層像を作成する超音波断層像作成手段と、
前記超音波断層像の位置および/または配向を検出する検出手段と、
人体の3次元データからなる参照データを保持する参照データ保持手段と、
前記超音波断層像の保存を指示する操作手段と、
を具備したことを特徴とする超音波診断装置において、
前記操作手段により保存を指示された超音波断層像の前記位置および/または配向を用いて、前記参照データに基づき、前記操作手段により保存を指示された超音波断層像の解剖学的な位置および/または配向を示す保存領域画像を作成する保存領域画像作成手段と、
前記保存領域画像を表示する表示手段と、
を設けたことを特徴とした超音波診断装置。
【0194】
(付記5)
前記操作手段の指示に基づき、超音波断層像を前記位置および/または配向と関連付けて保存することを特徴とした付記4に記載の超音波診断装置。
【0195】
(付記6)
前記操作手段の指示に基づき、複数の超音波断層像を、ぞれぞれの前記位置および/または配向と関連づけて保存したことを特徴とする付記4に記載の超音波診断装置。
【0196】
(付記7)
前記複数の超音波断層像に対する前記位置および/または配向を1つのファイルとして保存したことを特徴とする付記6に記載の超音波診断装置。
【0197】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う医用ガイドシステムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0198】
例えば気管支内視鏡や腹腔鏡等の内視鏡による診断や手術、さらには体外式の超音波診断装置にも本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】医用ガイドシステムの構成を示す図である。
【図2】被検体の標本点に装着された4個の体表検出用コイルを示す図である。
【図3】参照画像記憶部に記憶されている参照画像データを概念的に示す図である。
【図4】ボクセル空間の構成を示す図である。
【図5】医用ガイドシステムの全体の動作を表すメインルーチンのフローチャートである。
【図6】超音波断層像及び3次元ガイド画像表示処理のフローチャートである。
【図7】撮像範囲データの一例を示す表である。
【図8】3次元ガイド画像を説明する図である。
【図9】表示装置に表示される混合データを説明する図である。
【図10】保存用断層像記憶部に保存されるファイルの一例を示す表である。
【図11】3次元ガイド画像データ作成処理のフローチャートである。
【図12】関心器官の3次元モデル画像の一例である。
【図13】座標変換の概念を説明する図である。
【図14】撮像履歴再生画像を説明する図である。
【図15】第2の実施形態の撮像履歴マーカを説明する図である。
【図16】第3の実施形態の撮像履歴マーカを説明する図である。
【符号の説明】
【0200】
1 医用ガイドシステム、 2 超音波内視鏡、 3 超音波観測装置、 4 位置配向算出装置、 5 画像処理装置、 8 表示装置、 10 光学観察装置、 11 入力装置、 14 ネットワーク、 15 3次元MRI装置、 16 X線3次元ヘリカルCT装置、 31 超音波振動子アレイ、 撮像装置 27、 41 送信アンテナ、 42 体表検出用コイル、 44 画像位置配向検出用コイル、 52、参照画像記憶部、 53 撮像範囲記憶部、 55 保存用断層像記憶部、 54 シネメモリ、 60 制御回路、 65 3次元ガイド画像作成回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体との間で超音波の送受信を行う超音波振動子を具備し、該超音波振動子から出力される超音波信号に基づいて超音波断層像を撮像する超音波診断装置の、前記超音波振動子の位置及び配向の少なくとも一方を検出し出力する検出部と、
人体の器官の解剖学的な位置情報を有する参照画像データを記憶する参照画像記憶部と、
前記検出部からの出力と前記参照画像データとに基づいて、人体の器官の解剖学的なモデル画像と、該モデル画像に対する最新の前記超音波断層像の位置及び配向の少なくとも一方を示す超音波断層像マーカと、前記モデル画像に対する過去において前記超音波断層像データが撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴マーカと、からなるガイド画像を作成し表示装置に出力するガイド画像作成部と、
を具備することを特徴とする医用ガイドシステム。
【請求項2】
前記超音波診断装置は、連続して前記超音波断層像を撮像するものであって、
前記ガイド画像作成部は、前記検出部からの出力に基づいて前記超音波振動子の移動速度を算出し、該移動速度が所定の値以上である場合には警告となる指標を作成して前記撮像履歴マーカ上に重畳することを特徴とする請求項1に記載の医用ガイドシステム。
【請求項3】
前記モデル画像に対する全ての前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方の情報からなる撮像範囲データを記憶する撮像範囲記憶部を具備し、
前記ガイド画像作成部は、診断後において前記撮像範囲データに基づいて、前記モデル画像に対する全ての前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴画像を作成し前記表示装置に出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の医用ガイドシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記超音波断層像と、該超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方の情報とを関連付けて記憶する保存用断層像記憶部と、
診断後において前記保存用断層像記憶部から所定の1つの前記超音波断層像を選択して読み出して再生し前記表示装置に出力する超音波断層像再生部と、を具備し、
前記ガイド画像作成部は、前記モデル画像に対する前記超音波断層像再生部が再生している前記所定の1つの前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す指標を作成し前記撮像履歴画像上に重畳することを特徴とする請求項3に記載の医用ガイドシステム。
【請求項1】
被検体との間で超音波の送受信を行う超音波振動子を具備し、該超音波振動子から出力される超音波信号に基づいて超音波断層像を撮像する超音波診断装置の、前記超音波振動子の位置及び配向の少なくとも一方を検出し出力する検出部と、
人体の器官の解剖学的な位置情報を有する参照画像データを記憶する参照画像記憶部と、
前記検出部からの出力と前記参照画像データとに基づいて、人体の器官の解剖学的なモデル画像と、該モデル画像に対する最新の前記超音波断層像の位置及び配向の少なくとも一方を示す超音波断層像マーカと、前記モデル画像に対する過去において前記超音波断層像データが撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴マーカと、からなるガイド画像を作成し表示装置に出力するガイド画像作成部と、
を具備することを特徴とする医用ガイドシステム。
【請求項2】
前記超音波診断装置は、連続して前記超音波断層像を撮像するものであって、
前記ガイド画像作成部は、前記検出部からの出力に基づいて前記超音波振動子の移動速度を算出し、該移動速度が所定の値以上である場合には警告となる指標を作成して前記撮像履歴マーカ上に重畳することを特徴とする請求項1に記載の医用ガイドシステム。
【請求項3】
前記モデル画像に対する全ての前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方の情報からなる撮像範囲データを記憶する撮像範囲記憶部を具備し、
前記ガイド画像作成部は、診断後において前記撮像範囲データに基づいて、前記モデル画像に対する全ての前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す撮像履歴画像を作成し前記表示装置に出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の医用ガイドシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの前記超音波断層像と、該超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方の情報とを関連付けて記憶する保存用断層像記憶部と、
診断後において前記保存用断層像記憶部から所定の1つの前記超音波断層像を選択して読み出して再生し前記表示装置に出力する超音波断層像再生部と、を具備し、
前記ガイド画像作成部は、前記モデル画像に対する前記超音波断層像再生部が再生している前記所定の1つの前記超音波断層像が撮像された領域の位置及び配向の少なくとも一方を示す指標を作成し前記撮像履歴画像上に重畳することを特徴とする請求項3に記載の医用ガイドシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−34225(P2009−34225A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199744(P2007−199744)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]