説明

医用画像処理装置及びプログラム

【課題】医用画像撮影装置における照射線量不足による医用画像の画質の低下を、ユーザが容易に確認するための装置を提供する。
【解決手段】検像装置10は、モダリティ40において生成された医用画像データを受信する。そして、検像装置10は、受信した医用画像データに含まれるS値を集計して集計情報(S値集計テーブル、基準値算出用テーブル)を生成する。検像装置10は、集計情報(基準値算出用テーブル)に基づいて、S値の基準値を算出する。検像装置10は、この基準値に基づいて、新たにモダリティ40から取得した医用画像データに含まれるS値の値が適正であるか否かを判定する。検像装置10は、S値の値が適正でないと判定すると、警告情報を検像画面に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院や診療所等の医療施設では、X線撮影装置等の医用画像撮影装置(モダリティ)を用いた検査が行われる。通常、このような検査では、撮影業務を専門に行う撮影技師による操作に基づき、モダリティが医用画像(医用画像データ)を生成する。そして、撮影技師は、モダリティが生成した医用画像を画面に表示させ、検像を行う。ここで、検像とは、医用画像に不具合が無いことの確認や不具合があった場合に、それを修正する行為である。
【0003】
そして、撮影技師による検像が完了した医用画像は、PACS(Picture Archiving and Communication System)等の医用画像管理システム内のデータベースシステムへと転送されて保管される。そして、PACSに保管された医用画像は、医師によって参照される。このようなシステムでは、撮影技師による検像が適切かつ迅速に行われることが求められる。
【0004】
検像を行うためのシステムとして、例えば、通信ネットワークを介してPACSのような医用画像管理システム内のデータベースにモダリティで生成された医用画像データを記憶させる際、画面確認によるデータの必要性のチェック、登録済みデータとの整合性のチェック、RIS(Radiological Information System)やHIS(Hospital Information System)から送信されるオーダ情報との整合性のチェック等の作業を可能とする検像システムが開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−290329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、検像時に修正するべき不具合の一つに、モダリティおける照射線量不足による医用画像の画質の低下がある。しかし、この照射線量不足による医用画像の画質の低下は、モニタ等の画面上では確認されにくく、フィルム等の媒体に出力されて初めて確認される場合が多い。そのため、撮影技師等のユーザにとって不便であった。
【0007】
本発明は、上述したような課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、医用画像撮影装置における照射線量不足による医用画像の画質の低下を、ユーザが容易に確認するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の医用画像処理装置は、
医用画像撮影装置で生成された医用画像データを取得する取得手段と、
前記医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値を集計して集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、前記取得手段により新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定し、当該システム感度の値が適正でない場合、警告情報を画面に表示させる制御手段と、
を備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記制御手段は、前記集計情報に基づいて前記システム感度の基準値を算出し、当該基準値に基づいて前記新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
基準値算出用係数を設定する設定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記基準値算出用係数と前記集計情報に基づいて、前記基準値を算出する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、
前記制御手段は、前記基準値と前記新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値とを比較し、当該システム感度の値が前記基準値以上の場合に、当該システム感度の値が適正でないと判定する。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、
前記取得手段は、1又は複数の医用画像撮影装置から医用画像データを取得し、
前記制御手段は、前記医用画像撮影装置の種別毎に前記集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、前記取得手段により新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを、前記医用画像撮影装置の種別に応じて判定する。
【0013】
請求項6に記載のプログラムは、
コンピュータを、
医用画像撮影装置で生成された医用画像データを取得する取得手段、
前記医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値を集計して集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、前記取得手段により新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定し、当該システム感度の値が適正でない場合、警告情報を画面に表示させる制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、6に記載の発明によれば、医用画像撮影装置で生成された医用画像データを取得し、当該医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値を集計して集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定し、当該システム感度の値が適正でない場合、警告情報を画面に表示させる。
【0015】
そのため、医用画像撮影装置における照射線量不足による医用画像の画質の低下を、ユーザが容易に確認することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、集計情報に基づいて前記システム感度の基準値を算出し、当該基準値に基づいて前記新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定する。そのため、システム感度の値が適正であるか否かを適切に判定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、ユーザ操作等により設定される基準値算出用係数と前記集計情報に基づいて、基準値を算出する。そのため、そのため、システム感度の値が適正であるか否かを柔軟に判定することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、前記基準値と前記新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値とを比較し、当該システム感度の値が前記基準値以上の場合に、当該システム感度の値が適正でないと判定する。そのため、システム感度の値が適正であるか否かを更に適切に判定することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、1又は複数の医用画像撮影装置で生成された医用画像データを取得し、医用画像撮影装置の種別毎に集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを、前記医用画像撮影装置の種別に応じて判定する。
【0020】
そのため、異なる種類の医用画像撮影装置と医用画像処理装置が接続されている場合でも、システム感度の値が適正であるか否かの判定を、医用画像撮影装置の種別に応じて適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】放射線科システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】医用画像データのデータ構成図である。
【図3】検像装置のブロック図である。
【図4】S値集計テーブルのデータ構成図である。
【図5】基準値算出用テーブルのデータ構成図である。
【図6】基準値算出用テーブル更新処理を示すフローチャート図である。
【図7】基準値算出処理を示すフローチャート図である。
【図8】S値画質判定処理を示すフローチャート図である。
【図9】検像画面の画面例である。
【図10】警告ダイアログの例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の医用画像処理装置を図1の検像装置10に適用した場合の実施形態について図1〜図10を参照して説明する。
【0023】
[放射線科システムのシステム構成]
先ず、検像装置10を有する放射線科システム100の概要について図1を用いて説明する。
【0024】
図1は、放射線科システム100のシステム構成の一例を示すブロック図である。図1によれば、放射線科システム100は、検像装置10と、PACS20と、イメージャ30と、モダリティ40aと、モダリティ40bと、モダリティ40cと、から構成されている。
【0025】
検像装置10と各モダリティ40a〜40cとは、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワークを介して、データ通信可能に接続されている。また、検像装置10はPACS20とデータ通信可能に接続されている。そのため、各モダリティ40a〜40cとPACS20とのデータ通信は、検像装置10を介して行われる。また、検像装置10は、イメージャ30とデータ通信可能に接続されている。そのため、各モダリティ40a〜40cとイメージャ30とのデータ通信は、検像装置10を介して行われる。
【0026】
ここで、説明の都合上、各モダリティ40a〜40cを総じてモダリティ40と称す。モダリティ40は、撮影技師の操作に従って撮影して得られた画像のデータ信号をDICOM規格に則したデジタルデータに変換して医用画像データを生成する医用画像撮影装置である。モダリティ40は、生成した医用画像データを検像装置10に送信する。モダリティ40としては、CR装置、FPD装置等が適用可能である。
【0027】
例えば、CR装置は、被写体に放射線を照射して、その被写体を透過した放射線をプレート状の輝尽性蛍光体に吸収させる。そして、この輝尽性蛍光体を例えばレーザ光で走査しながら励起することにより、この輝尽性蛍光体が蓄積している放射線エネルギを発光させ、その発光を光電変換して得られた放射線画像のデータ信号をデジタル変換して被写体の実画像データを生成する。
【0028】
本実施形態において、モダリティ40aはCR装置(A社製)、モダリティ40bはFPD装置(A社製)、モダリティ40cはFPD装置(B社製)である。
【0029】
図2に、医用画像データの1フレームのデータ構造の一例を示す。図2によれば、1フレームの医用画像データは、付帯情報のデータブロックと、実画像データのデータブロックとを有して構成される。付帯情報のデータブロックは、患者情報のデータブロックと、検査情報のデータブロックと、シリーズ情報のデータブロックと、画像情報のデータブロックとを含む。医用画像データの1フレームは、医用画像1枚分に相当する。
【0030】
患者情報、検査情報及びシリーズ情報は、図示しないRISによって作成されたオーダ情報等に基づいて設定される。ここで、RISとは、放射線科内の情報を管理する放射線科情報システムである。また、オーダ情報とは、撮影や診察のオーダの内容を示すデータである。
【0031】
患者情報は、撮影を行う患者の受付番号や氏名、患者ID、性別等の患者毎に設定されたデータである。
【0032】
検査情報は、医師がオーダした検査を識別する検査ID、モダリティ種別、検査部位、撮影方向及び体位といった検査条件を示すデータである。検査情報D22は、S値を含む。S値(Sensitivity)とは、医用画像データを生成したCR装置、FPD装置等の医用画像撮影装置のシステム感度を示すパラメータである。S値は、画質管理や被爆線量管理の為に、照射線量の目安として使用される。S値は、モダリティ種別毎、撮影する検査部位毎に独立別個の値となる。即ち、各モダリティ40(モダリティ40a、30b、30c)は、それぞれ独立別個のS値を持つ。ここでいうモダリティ種別とは、モダリティの種類(CR装置、FPD装置)の他に、モダリティのベンダ(A社、B社)、モダリティの製品のバージョン等を含む。
【0033】
シリーズ情報は、一つの検査の中で生成されるモダリティ40毎の一連の医用画像データの単位を示すシリーズID、撮影を行った撮影技師を識別する技師IDを含むデータである。
【0034】
画像情報は、この画像情報に対応付けられたシリーズ情報のシリーズIDと、医用画像が生成された際に付された医用画像データの画像IDと、画像が生成された画像生成時刻等の画像管理や画像生成に関する各種情報とを含んで構成される。
【0035】
図1に戻り、検像装置10は、RISによって作成されたオーダ情報と、モダリティ40から送信される医用画像データとを受信して、データベースに医用画像データを蓄積していき、撮影技師の検像を待機する。
【0036】
本実施形態における「検像」とは、オーダ情報通りの撮影を行ったか、実画像データに基づく医用画像が診断に適した画質であるか、オーダ情報と付帯情報との整合性が取れているか等を医用画像データのPACS20への送信前に確認及び修正する行為である。
【0037】
撮影技師は、各医用画像データの検像を行った後、検像対象となった医用画像データを診断用として使用してもよいと判断した場合、この医用画像データを診断用としてPACS20に登録するように承認するための、検像装置10への承認操作を行う。この承認操作に従って、医用画像データがPACS20に転送される。
【0038】
また、検像装置10は、ユーザ操作に基づいて、医用画像データをPACS20に転送する他に、イメージャ30に転送することもできる。このとき、検像装置10は、医用画像データと共に、イメージャ出力要求信号をイメージャ30に送信する。
【0039】
PACS20は、モダリティ40において生成された医用画像データを保存管理し、検索やデータ解析を行うデータベースシステムである。PACS20は、制御部や記憶部、通信部等を備えて構成され、検像装置10から受信した医用画像データに含まれる付帯情報に基づいて当該医用画像データを、例えば、リレーショナルデータベースに蓄積記憶していく。そして、PACS20は、読影医等の操作指示に応じて指定された患者IDや検査ID等を検索キーとして医用画像データを検索し、図示しないビューア等に出力する。
【0040】
イメージャ30は、モダリティ40において生成された医用画像データに基づいて、医用画像をフィルムにプリント出力(イメージャ出力)する装置である。イメージャ30は、検像装置10からイメージャ出力要求信号と医用画像データを受信すると、受信した画像データに基づいて、医用画像をイメージャ出力する。
【0041】
[検像装置の機能的構成]
図3に、検像装置10の機能的構成を示す。
【0042】
図3に示すように、検像装置10は、制御部11、操作部12、表示部13、通信部14、記憶部15を備えて構成され、各部はバス16により接続されている。
【0043】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、検像装置10の各部の処理動作を統括的に制御する。具体的には、CPUは、操作部12から入力される操作信号又は通信部14により受信される指示信号に応じて、記憶部15に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0044】
操作部12は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号を制御部11に出力する。
【0045】
表示部13は、1又は複数台のLCD(Liquid Crystal Display)により構成され、制御部11から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。
【0046】
通信部14は、LANアダプタ、ルータ、TA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークを介して接続されたRIS、モダリティ40、PACS20、イメージャ30等の外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0047】
記憶部15は、ハードディスク等から構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。また、記憶部15は、モダリティ40から送信された検像待ちの医用画像データを一時的に記憶する。記憶部15は、S値集計テーブル151、基準値算出用テーブル152を記憶する。
【0048】
S値集計テーブル151は、医用画像データのモダリティ種別、検査部位毎に、S値を月単位で集計したテーブル(集計情報)である。制御部11が、12ヶ月間S値を集計した場合、S値集計テーブル151は12テーブル生成される。制御部11は、生成したS値集計テーブル151を記憶部15に蓄積記憶させていく。
【0049】
図4にS値集計テーブル151のデータ構成を示す。図4に示すように、S値集計テーブル151は、「モダリティ」「検査部位」「画像数」「最大値」「最小値」「平均値」の項目から成る。項目「モダリティ」は、医用画像データを生成したモダリティ種別を示す。項目「検査部位」は、医用画像データにおける検査部位を示す。項目「画像数」は、1ヶ月間で集計された(されている)医用画像データのフレーム数である。項目「最大値」は、1ヵ月間で集計された(されている)医用画像データの各フレームに含まれるS値のうちの最大値を示す。項目「最小値」は、1ヵ月間で集計された(されている)医用画像データの各フレームに含まれるS値のうちの最小値を示す。項目「平均値」は、1ヵ月間で集計された(されている)医用画像データの各フレームに含まれるS値の平均値を示す。制御部11は、これらの項目の値を更新する。
【0050】
基準値算出用テーブル152は、モダリティ種別、検査部位毎の医用画像データにおける(に関する)S値の最近3ヶ月の集計情報に基づき、S値の基準値を求める為のテーブルである。
【0051】
図5に基準値算出用テーブル152のデータ構成を示す。図5に示すように、基準値算出用テーブル152は、「モダリティ」「検査部位」「3ヶ月間平均値」「基準値算出用係数」の項目から成る。項目「モダリティ」は、S値集計テーブル151の項目「モダリティ」と同様、医用画像データを生成したモダリティ種別を示す。項目「検査部位」は、S値集計テーブル151の項目「検査部位」と同様、医用画像データにおける検査部位を示す。項目「3ヶ月間平均値」は、最近3ヶ月間で集計された医用画像データの各フレームに含まれるS値の平均値を示す。項目「基準値算出用係数」は、S値の基準値を求める際に用いられる係数である。制御部11は、これらの項目の値を更新する。
【0052】
図3に戻り、制御部11は、通信部14を介して、モダリティ40から医用画像データを受信すると、この医用画像データを記憶部15に記憶させる。また、制御部11は、通信部14を介して、図示しないRISからオーダ情報を受信すると、このオーダ情報を記憶部15に記憶させる。そして、制御部11は、撮影技師等による操作部12からの操作信号に基づき、表示部13に医用画像と付帯情報、オーダ情報等を表示させる。即ち、制御部11は、検像画面(図9参照)を表示部13に表示させる。撮影技師は、表示されたこれらの情報を参照し、検像を行う。
【0053】
制御部11は、月の初めの所定時刻に基準値算出用テーブル更新処理を行う(図6参照)。また、制御部11は、検像装置10の起動時、もしくは、ユーザ操作による操作部12からの操作信号に基づいて、基準値算出処理を行う(図7参照)。また、制御部11は、モダリティ40から医用画像データを通信部14を介して受信した場合、S値画質判定処理を行う(図8参照)。
【0054】
[基準値算出用テーブル更新処理]
次に、検像装置10の制御部11が行う基準値算出用テーブル更新処理の具体的な処理内容について、図6を用いて説明する。
【0055】
月の初めの所定時刻になると、制御部11は、直近の3ヶ月分のS値集計テーブル151から、医用画像データのモダリティ種別、検査部位毎に、S値の平均値を取得する。例えば、2009年2月1日の午前1時00分に、制御部11は、2008年11月分のS値集計テーブル151、2008年12月分のS値集計テーブル151、2009年1月分のS値集計テーブル151からモダリティ種別、検査部位毎のS値の平均値を取得する(ステップS1)。
【0056】
制御部11は、取得した3ヶ月分のS値の平均値に基づき、モダリティ種別、検査部位毎にS値の3ヶ月平均値を算出する(ステップS2)。
【0057】
制御部11は、算出したモダリティ種別、検査部位毎のS値の3ヶ月平均値を、基準値算出用テーブル152の対応するレコードの項目「3ヶ月間平均値」に反映する(ステップS3)。以上で処理が終了する。
【0058】
[基準値算出処理]
次に、検像装置10の制御部11が行う基準値算出処理の具体的な処理内容について、図7を用いて説明する。
【0059】
検像装置10が起動すると、もしくは、ユーザ操作による操作部12からの操作信号が入力されると、制御部11は、基準値算出用テーブル152から、モダリティ種別、検査部位毎の項目「3ヶ月間平均値」と項目「基準値算出用係数」の値を取得する(ステップS101)。
【0060】
制御部11は、モダリティ種別、検査部位毎に、3ヶ月間平均値に基準値算出用係数を乗じてS値の基準値を算出する(ステップS102)。制御部11は、モダリティ種別、検査部位毎のS値の基準値をRAMに保持する。以上で処理が終了する。
【0061】
また、制御部11は、ユーザ操作による操作部12からの操作信号に基づいて、モダリティ種別、検査部位毎の基準値算出用係数を設定する。ユーザは、この基準値算出用係数を制御部11に設定させることにより、S値の基準値の調整を行う。そのため、制御部11は、S値の値が適正であるか否かを柔軟に判定することができる。
【0062】
[S値画質判定処理]
次に、検像装置10の制御部11が行うS値画質判定処理の具体的な処理内容について、図8を用いて説明する。
【0063】
制御部11は、通信部14を介してモダリティ40から医用画像データを受信(取得)すると(ステップS201)、この医用画像データに含まれる付帯情報から医用画像データの種別情報(モダリティ種別、検査部位)を抽出(取得)する(ステップS202)。
【0064】
また、制御部11は、ステップS201において受信した医用画像データに含まれる付帯情報からS値を抽出(取得)する(ステップS203)。
【0065】
制御部11は、ステップS202において取得した種別情報、ステップS203において取得したS値に基づいて、S値集計テーブル151の該当するレコードの「画像数」「最大値」「最小値」「平均値」のうち該当する項目を更新する(ステップS204)。具体的に、該当するレコードとは、ステップS202において取得した種別情報(モダリティ種別、検査部位)と、S値集計テーブル151の項目「モダリティ」「検査部位」とが一致するレコードのことである。制御部11は、該当するレコードがない場合は、新たにレコードを生成する。
【0066】
制御部11は、RAMに記憶されているモダリティ種別、検査部位毎のS値の基準値のうち、ステップS202において取得した種別情報に対応するモダリティ種別、検査部位のS値の基準値を参照し(ステップS205)、この基準値と、ステップS201において受信した医用画像データに含まれるS値と、の大きさを比較する(ステップS206)。
【0067】
比較の結果、基準値よりも、受信した医用画像データに含まれるS値の方が大きい場合(ステップS206;YES)、制御部11は、画面に警告情報を表示する(ステップS207)。警告情報を表示する画面例等は後述する。
【0068】
一方、比較の結果、受信した医用画像データに含まれるS値が、基準値以下の場合(ステップS206;NO)、制御部11は、画面に警告情報を出さない。以上で、処理が終了する。
【0069】
[画面例]
次に、検像装置10の制御部11が表示部13に表示させる検像画面の画面例を、図9を用いて説明する。この検像画面において、図8のステップS207における警告情報が表示される。
【0070】
検査画面には、検像リストd1と、検像対象医用画像表示領域e1と、OKボタンb1と、イメージャ出力ボタンb2とから構成される。検像リストd1は、記憶部15に蓄積された検像待ちの医用画像データのリストである。検像リストd1は、「S値」「受信日時」「受付番号」「患者ID」「氏名」「状態」等の項目から成る。ここで、S値画質判定処理において、基準値よりも受信した医用画像データに含まれるS値の方が大きいと判定された医用画像データを含むレコードの項目「S値」は、文字が太字になり警告情報(第1警告情報)として表示される。具体的に、検像リストd1の2レコード目と6レコード目の項目「S値」の値「1500」が太字となり表示される。
【0071】
検像対象医用画像表示領域e1には、検像リストd1において選択された医用画像データに基づいて、付帯情報、医用画像が表示される。ここで、表示される付帯情報には、S値が含まれる。警告情報が表示されている(文字が太字となっている)レコードの医用画像データが選択されると、検像対象医用画像表示領域e1には、付帯情報、医用画像の他に、警告情報(第2警告情報)d2が表示される。
【0072】
OKボタンb1が押下される(承認操作)と、検像リストd1で選択されている医用画像データが、PACS20に転送される。
【0073】
イメージャ出力ボタンb2が押下されると、検像リストd1で選択されている医用画像データがイメージャ出力要求信号と共にイメージャ30に転送される。
【0074】
第1警告情報が表示されている(文字が太字となっている)レコードの医用画像データが選択された状態で、OKボタンb1、又はイメージャボタンb2が押下されると、図10に示す警告情報ダイアログ(第3警告情報)d3が表示されて、PACS20又はイメージャ30に医用画像データを送信してもよいか否かを再確認する。
【0075】
以上、本実施形態によれば、検像装置10の制御部11は、モダリティ40において生成された医用画像データを受信する。そして、制御部11は、受信した医用画像データに含まれるS値を集計して集計情報(S値集計テーブル151、基準値算出用テーブル152)を生成する。制御部11は、集計情報(基準値算出用テーブル152)に基づいて、S値の基準値を算出する。制御部11は、この基準値に基づいて、新たにモダリティ40から取得した医用画像データに含まれるS値の値が適正であるか否かを判定する。制御部11は、S値の値が適正でないと判定すると、警告情報を表示部13の検像画面に表示する。
【0076】
そのため、フィルム等の媒体に医用画像を出力せずに、検像画面上で、モダリティ40における照射線量不足による医用画像の画質の低下を、ユーザが容易に確認することができる。
【0077】
また、制御部11は、モダリティ40a、40b、30cのように複数の種類のモダリティ40から医用画像データを受信する。そして、制御部11は、モダリティ種別、検査部位毎にS値を集計する。そして、制御部11は、医用画像データを生成したモダリティの種別、医用画像データの検査部位に応じてS値の値が適正であるか否かを判定する。
【0078】
そのため、異なる種類の複数のモダリティ40と検像装置10が接続されている場合でも、S値が適正であるか否かの判定を、モダリティ40の種別、検査部位に応じて適切に行うことができる。
【0079】
尚、本実施形態における記述は、本発明に係る医用画像処理装置の一例であり、これに限定されるものではない。システム及び各装置の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0080】
また、本実施の形態では、プログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクを使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、可搬型記憶媒体やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ等を適用することが可能である。また、プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 検像装置
11 制御部
12 操作部
13 表示部
14 通信部
15 記憶部
16 バス
20 PACS
30 イメージャ
40 モダリティ
40a モダリティ
40b モダリティ
40c モダリティ
151 S値集計テーブル
152 基準値算出用テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像撮影装置で生成された医用画像データを取得する取得手段と、
前記医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値を集計して集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、前記取得手段により新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定し、当該システム感度の値が適正でない場合、警告情報を画面に表示させる制御手段と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記集計情報に基づいて前記システム感度の基準値を算出し、当該基準値に基づいて前記新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
基準値算出用係数を設定する設定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記基準値算出用係数と前記集計情報に基づいて、前記基準値を算出する、
請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記基準値と前記新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値とを比較し、当該システム感度の値が前記基準値以上の場合に、当該システム感度の値が適正でないと判定する、
請求項2又は3に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記取得手段は、1又は複数の医用画像撮影装置から医用画像データを取得し、
前記制御手段は、前記医用画像撮影装置の種別毎に前記集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、前記取得手段により新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを、前記医用画像撮影装置の種別に応じて判定する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
医用画像撮影装置で生成された医用画像データを取得する取得手段、
前記医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値を集計して集計情報を生成し、当該集計情報に基づいて、前記取得手段により新たに取得される医用画像データに含まれる前記医用画像撮影装置のシステム感度の値が適正であるか否かを判定し、当該システム感度の値が適正でない場合、警告情報を画面に表示させる制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−188041(P2010−188041A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37734(P2009−37734)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】