医用画像撮影装置
【課題】撮影時点で読影に必要なキー画像との比較対象画像を確実に撮影することができる医用画像診断装置を提供すること。
【解決手段】一実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体の撮影に関して、過去の撮影における撮影シーケンスを今回の撮影シーケンスとした撮影計画を設定する設定手段と、前記過去の撮影で取得された診断の根拠画像の撮影時相に基づいて、前記撮影計画が今回の撮影において適正か否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合、前記撮影計画の変更処理を実行する変更手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合には、変更された前記撮影計画に従って撮影を実行し、前記判定手段が適切であると判定した場合には、前記設定手段によって設定された前記撮影計画に従って撮影を実行する撮影手段と、を具備する。
【解決手段】一実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体の撮影に関して、過去の撮影における撮影シーケンスを今回の撮影シーケンスとした撮影計画を設定する設定手段と、前記過去の撮影で取得された診断の根拠画像の撮影時相に基づいて、前記撮影計画が今回の撮影において適正か否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合、前記撮影計画の変更処理を実行する変更手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合には、変更された前記撮影計画に従って撮影を実行し、前記判定手段が適切であると判定した場合には、前記設定手段によって設定された前記撮影計画に従って撮影を実行する撮影手段と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医用画像撮影装置における撮影計画の設定方法に関する技術、例えばCT撮影装置やMRI画像診断装置において、前回検査と比較可能な画像を収集するために十分な撮影条件を設定できるようにしつつ、不要な被曝を回避して医療被曝を低減するために使用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療行為の専門分野は細分化されている。例えば、画像診断においては、患者の検査オーダー作成、作成されたオーダーに基づく診断画像の取得、取得された診断画像の読影及びレポート作成、レポート結果に基づく診断結果や治療方針の説明、等の各作業に分割される。各作業は、各専門家(担当の医師又は担当技師)によって担当され、これら全ての作業によって、患者に対する診断等の医療行為が達成される。各専門家は、前段の作業において他の専門家が作成した情報に基づいて、且つ適宜過去の診断情報等を参照することにより、各作業を実行する。
【0003】
例えば、撮影技師等は、診療科において発行される撮影オーダに従って撮影計画を立てる。この撮影計画では、患者情報、検査目的、撮影条件、スキャンシーケンス、撮影範囲、画像条件等を含む撮影計画が設定される。ここで、撮影条件とは、撮影部位、方向、位置決め画像の取得範囲等の他、管電流値(KvmA)、ヘリカルピッチ、造影条件等を含む情報である。また、画像条件とは、スキャンしたデータを用いて画像再構成する際のスライス厚、スライスピッチ、再構成関数等を含む情報である。撮影計画は、通常シリーズ単位で設定され、また、撮影オーダに具体的に指示があればそれに従う。一方、指示が十分でない場合(例えば、部位のみの指定)には、検査目的、過去の検査レポート、過去画像、RIS(放射線部門情報システム)から取得される過去の検査の撮影条件等を参照しながら決定される。撮影計画の設定が終了すると、例えばX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)では患者を寝台に乗せてから、撮影範囲を設定するために体全体をあらわす位置決め画像(スキャノグラム)を撮影する。撮影技師等は、スキャノグラム上で撮影範囲、FOV(Field of View)、再構成スライス厚、間隔等を設定し、実際の撮影を開始する。
【0004】
また、読影医は、上記撮影によって取得された画像を観察しながら読影を実行し、レポートを作成する。最近は、電子化された画像システム(PACS)やレポートシステムを使って読影レポート作成することが多い。これらのシステムは、大量の画像を発生するX線CT装置や磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)を用いる画像診断では必要不可欠なものとなっている。
【0005】
読影においては、レポートに診断した内容を記載するが、同時にキー画像(診断の根拠となる画像)を指定して作成したレポートと関連づけて保存することが多い。レポートを参照する依頼科の医師は、キー画像を見ながら検査結果レポートを読むことでより診断の内容を理解しやすいというメリットがある。最近では、レポートの文章にハイパーリンクとしてキー画像を関連付けるハイパーリンクレポートシステムがある。読影医は、前回レポートと関連付けられたキー画像を参照しながら、今回の検査を読影する。特にキー画像は診断上有用な画像であり、同じ位置同じ条件で撮影した今回画像と比較することで、病態の変化を詳細に把握することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−164442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のシステムにおいては、例えば次のような問題がある。
【0008】
上述した様に、撮影技師等は、撮影部位、方向や範囲を検査オーダから判断して設定する。あるいは、あらかじめ検査装置にプリセットされている手順(撮影プロトコル)を選択する。しかし、この方法では撮影された画像に、前回のキー画像の比較対象とすることができる画像が含まれる保証はない。従って、比較できる画像が撮影できているか否かは撮影終了後読影の時点にならないと判明せず、仮に撮影できていなかった場合には、実質的に比較読影ができない状態になる可能性がある。
【0009】
これらの問題を回避するために、撮影範囲を広くとって多くの画像を撮影しておくという対策が考えられる。しかしながら、例えばX線CT装置を使用する場合には、この手法では患者への被曝を増やすという問題がある。
【0010】
また、同じ部位・方向の画像が含まれていたとしても、撮影条件が異なると画質が異なってくるため、同じ画像条件で観察できないという問題がある。
【0011】
上記事情を鑑みてなされたもので、過去のキー画像との比較対象画像を確実に撮影することができる医用画像診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本一実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体の撮影に関して、過去の撮影における撮影シーケンスを今回の撮影シーケンスとした撮影計画を設定する設定手段と、前記過去の撮影で取得された診断の根拠画像の撮影時相に基づいて、前記撮影計画が今回の撮影において適正か否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合、前記撮影計画の変更処理を実行する変更手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合には、変更された前記撮影計画に従って撮影を実行し、前記判定手段が適切であると判定した場合には、前記設定手段によって設定された前記撮影計画に従って撮影を実行する撮影手段と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。
【図3】図3は、共有オブジェクトの人体基準座標の概念を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るX線CT装置1が有する撮影範囲の適正化機能を説明するための図である。
【図5】図5は、撮影範囲の雛形の一例を示した図である。
【図6】図6は、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う処理(撮影範囲の適正化処理)の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施形態に係るX線CT装置1が有する撮影範囲の適正化機能を説明するための図である。
【図8】図8は、撮影範囲の雛形の一例を示した図である。
【図9】図9は、第1のX線CT装置の撮影範囲の適正化処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、本X線CT装置が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。
【図11】図11は、肝臓造影検査において画像取得を省略する時相を指示するためのインタフェースの一例を示した図である。
【図12】図12は、第3の実施形態に係るX線CT装置の撮影時相の適正化機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第3の実施形態に係るX線CT装置の撮影時相の適正化機能に従う処理の流れの変形例を示したフローチャートである。
【図14】図14は、第3の実施形態に係るMRI装置5の構成を示したブロック図である。
【図15】図15は、本MRI装置5が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。
【図16】図16は、撮影計画の適正化を行うか否かの判定に用いられる対応テーブルの一例を示した図である。
【図17】図17は、本X線CT装置の撮影計画の適正化機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置1の構成を説明するための図である。なお、本実施形態では、説明を具体的にするため、医用画像診断装置1がX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)である場合を例とする。同図に示すように、本X線CT装置1は、架台2、情報処理部3から構成される。
【0016】
架台2は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、スリップリング11、架台駆動部12、X線管球13、X線検出器15、回転フレーム16、データ収集部17、非接触データ電送装置18を具備している。情報処理部3は、架台2におけるデータ収集動作の制御、及び架台2において収集されたデータに所定の処理を施すことで、X線CT画像及びこれを用いた各種臨床情報を生成するものであり、高電圧発生装置19、前処理部20、メモリ部21、再構成部23、画像処理部24、記憶部25、制御部27、表示部29、入力部31、スキャンプラン設定部33、送受信部35を具備している。
【0017】
架台駆動部12は、回転フレーム16を回転駆動する。この回転駆動により、X線管球13とX線検出器15とが対向しながら、被検体Pの体軸を中心に螺旋状に回転することになる。
【0018】
X線管球13は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム16に設けられている。当該X線管球13には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生装置19からスリップリング11を介して供給される。X線管球13は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された被検体に対してX線を曝射する。
【0019】
X線検出器15は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球13に対向する向きで回転フレーム16に取り付けられている。当該X線検出器15は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じて一次元的又は二次元的に配列されている。
【0020】
回転フレーム16は、Z軸を中心として回転駆動されるリングであり、X線管球13とX線検出器15とを搭載している。この回転フレーム16の中央部分は開口されており、この開口部に、寝台(図示せず)上に載置された被検体Pが挿入される。
【0021】
データ収集装置17は、一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれ、検出器15からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は、非接触データ伝送装置18を介して情報処理装置3に取り込まれる。
【0022】
高電圧発生装置19は、スリップリング11を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管球13に供給する装置であり、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等から成る。
【0023】
前処理部20は、非接触データ伝送装置18を介してデータ収集装置17から生データを受け取り、感度補正やX線強度補正を実行する。各種補正を受けた360度分の生データは、記憶部25に一旦記憶される。なお、当該前処理部20によって前処理が施された生データは、「投影データ」と呼ばれる。
【0024】
再構成部23は、複数種類の再構成法を装備し、操作者から選択された再構成法により画像データを再構成する。複数種類の再構成法には、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、再構成面に対して投影レイが斜めに交差する場合の再構成法として、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法としてのフェルドカンプ法、フェルドカンプ法よりもコーン角エラーを抑える方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正するコーンビーム再構成法等が含まれる。
【0025】
画像処理部24は、再構成部23により生成された再構成画像データに対して、ウィンドウ変換、RGB処理等の表示のための画像処理を行い、表示部29に出力する。また、画像処理部24は、オペレータの指示に基づき、任意断面の断層像、任意方向からの投影像、3次元表面画像等のいわゆる疑似3次元画像の生成を行い、表示部29に出力する。
【0026】
記憶部25は、生データ、投影データ、スキャノグラムデータ、断層像データ等の画像データや、検査計画のためのプログラム等を記憶する。また、記憶部25は、後述する撮影計画の適正化機能を実現するための専用プログラムを格納する。
【0027】
制御部27は、スキャン処理、信号処理、画像生成処理、画像表示処理等において、本X線CT装置1の統括的な制御を行う。例えば、制御部27は、スキャン処理においては、予め入力されたスライス厚等のスキャン条件をメモリ部21に格納し、患者ID等によって自動的に選択されたスキャン条件(あるいは、マニュアルモードにおいて、入力部31から直接設定されたスキャン条件)に基づいて、高電圧発生装置19、寝台駆動部12、及び寝台天板aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管球13及びX線検出器15の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像のデータ収集(スキャン)処理を行う。
【0028】
また、制御部27は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開し、撮影計画の適正化機能を実現させる。
【0029】
表示部29は、画像処理部24から入力したコンピュータ断層画像、スキャノグラム像等のCT画像を表示する出力装置である。ここで、CT値とは、物質のX線吸収係数を、基準物質(例えば、水)からの相対値として表したものである。また、表示部29は、図示していない計画補助システムによって実現されるスキャン計画画面等を表示する。
【0030】
入力部31は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータを介してスライス厚やスライス数等の各種スキャン条件を入力可能な装置である。
【0031】
スキャンプラン設定部33は、入力部31からの入力指示、診療科からのオーダ情報、初期条件、過去の情報、後述する共有オブジェクト等に従って、撮影条件、撮影範囲、画像条件のうちの少なくとも一つを含む撮影計画(スキャンプラン)を設定する。また、スキャンプラン設定部33は、撮影計画の適正化機能に基づいて、撮影範囲、スキャンシーケンス等を適正化する。なお、撮影範囲とは、実際に医用画像診断装置がX線や高周波等によりエネルギーを供給し、検出器が供給されたエネルギーに基づく信号検出の対象とする物理範囲である。例えば、X線CT装置1の場合、実際にX線管球で発生させたX線を照射して検出器で検出する体軸方向の範囲(スキャン範囲)である。撮影範囲は、一般的に撮影前に全身像を撮影することで取得される位置決め画像上に、点線等で明示される。
【0032】
送受信部40は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部40は、ネットワークNに接続されたRISサーバ(図示せず)から、当該被検体の撮影に関する情報(患者情報、診断部位等を含むオーダ情報)を受信する。ここで、RISサーバとは、放射線情報システム(Radiology Information System)における種々の情報管理を行うためのサーバであり、例えば、医師端末からのオーダ発行支援情報の取得要求に応答してオーダ発行支援情報を生成し、本医用画像診断装置にこれを転送する。
【0033】
さらに、送受信部40は、ネットワークNを介して、共有オブジェクトサーバ(図示せず)と共有オブジェクトを送受信する。ここで、共有オブジェクトとは、過去の医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、キー画像情報、画像生成条件等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成されるものである。この共有オブジェクトは、通常の画像データとは分離した情報の実体(例えばファイル)として生成され、保存・管理される。
【0034】
図2は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。同図に示すように、共有オブジェクトは、画像情報と付帯情報とを具備している。画像情報は、撮影範囲を示す一つまたは複数の位置決め画像である。また、付帯情報は、大きくオブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報の5種類に分類することができる。以下、各情報について説明する。
【0035】
[付帯情報1:オブジェクト固有情報]
オブジェクト固有情報とは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するため、又は当該オブジェクトと他のオブジェクトとの関連性を示すための情報であり、オブジェクト識別子(オブジェクトUID)、親オブジェクト識別子(親オブジェクトUID)、関係シリーズ識別子(関係シリーズUID)、当該シリーズ識別子(当該シリーズUID)を含む。
【0036】
オブジェクトUIDは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するための情報であり、各装置のオブジェクト生成部により、共有オブジェクト生成時に重複しない体系で発番される。親オブジェクトUIDは、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクト(親オブジェクト)を特定するための情報である。関係シリーズUIDは、当該共有オブジェクトと同一の条件(例えば、撮影条件、位置決め画像等)を用いたシリーズを特定するための情報である。この関係シリーズUIDは、その性質上、オブジェクト固有情報内において複数個存在する場合がある。このとき、同時にそのシリーズの付帯情報(シリーズ日時、シリーズ番号、シリーズ記述、造影種別)などもシリーズUIDと関連付けて付帯させることが好ましい。この様な構成により、共有オブジェクトを参照するだけで、実際の画像群の画像を検索することなく操作者が識別する情報を取得することができるようになる。当該シリーズUIDは、当該共有オブジェクトにより撮影条件等が示されるシリーズを特定するための識別子である。
【0037】
なお、各UIDによって特定されるデータとは、リンクが張られている、従って、各UIDに基づいてリンク先のデータにアクセスすることで、その画像群の派生の検査経過を迅速に辿ることが可能になる。
【0038】
[付帯情報2:人体座標情報]
人体座標情報とは、スキャンによって取得された画像群が持つ座標系(一般的には、絶対寝台位置または相対寝台位置を基準とする装置毎の座標)とは異なり、画像上の人体構造を基準とした座標(人体基準座標)に関する情報である。この人体基準座標は、各装置の共有オブジェクト生成部において生成される。
【0039】
図3は、人体基準座標の概念を説明するための図である。同図において、前回人体座標系における基準点(例えば、OMライン、骨盤、みぞおち(心窩)等)O1から距離Lの位置にある断層が撮影断層位置であるとする。係る場合には、基準点O1及び今回座標系の基準O2(解剖学的に基準点O1と同一位置)との間のずれ量である座標校正量(Δx、 Δy、 Δz)と、基準点からの距離Lとに基づいて、前回撮影断層と同じ位置を特定することができる。従って、この人体座標情報により、撮影範囲やキー画像情報のキー画像座標など、次の検査や読影で再現が必要な位置を解剖学的に一致させることができる。
【0040】
なお、この人体座標情報を構成する位置情報は、上記例に拘泥されない。例えば、座標系の校正量(Δx, Δy, Δz)以外に、拡大や回転も含めて校正を行う場合には、拡大率αや回転角(β,θ)を、或いは一つの基準点に拘泥されず、別の基準点からの位置ずれ量(Δx2, Δy2, Δz2)を、人体座標情報にさらに含めるようにしてもよい。
【0041】
また、座標の基準点を解剖学的な構造物の名称と位置決め画像座標系(画像データの左上を(0,0)とする)の組合せを、前述の校正量とは別な情報として持ってもよい。この解剖学的基準点は、モダリティあるいはPACSの画像参照装置等の画像表示手段をもち、操作者が指定する位置情報を取得して保存する機能によって付加することができる。これを用いると、前回検査の位置決め画像上に解剖学的な基準点を描画によって図示することが可能になる。操作者はこれを見ながら今回検査の位置決め画像で同じ解剖学的構造物を指定することで、検査装置は容易に前回の座標系とのずれ=座標系校正量を認識することができるようになる。
【0042】
解剖学基準点は、呼吸や拍動といった生理的な体動による位置の変化が少ない部分を選択するのが好ましい。具体例としては、第12胸椎椎体下縁中央、腸骨棘、腸骨陵、恥骨結合下縁、気管分岐部下縁などがある。ここでは構造物を人間が判断するため名称を格納しているが、体内臓器を画像から自動的に識別する技術を用いる場合は計算機によって識別できる構造物の識別子としてもよい。このような技術は、「科研費特定領域研究プロジェクト 多次元医用画像の知的診断支援(http://www.future-cad.org/fcad/index_j.htm)」によって研究・開示されている。
【0043】
[付帯情報3:撮影条件]
撮影条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の撮影条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、撮影条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を撮影条件に含める構成としてもよい。
【0044】
また、例えばMRI装置の場合は、撮影範囲、患者の挿入方向や体位、磁場強度、パルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位、装着位置といったパラメータを撮影条件に含めることができる。
【0045】
[付帯情報4:画像生成条件]
画像生成条件とは、撮影によって得られた物理データから画像を再構成するするためのパラメータであり、例えば再構成範囲、時相、画像の位置、方向、厚さ、FOV(拡大率)、再構成関数等のフィルタ処理パラメータなどである。また、この画像生成条件には、各種医用画像診断装置や画像参照装置において実行されるボリュームレンダリングやMPR処理等の画像処理において使用される条件も含まれる。例えば、MPR処理の場合は、基準座標と法線ベクトル、スライス厚、範囲などが相当する。
【0046】
なお、再構成条件の範囲については、再構成範囲を示した位置決め画像を付帯することにより定義してもよい。係る場合は、一つの共有オブジェクトの中に、複数の再構成範囲を示す複数の位置決め画像が格納されることになる。
【0047】
[付帯情報5:キー画像情報]
キー画像情報は、PACS側のコンポーネントで読影や画像診断の段階で付されるキー画像の位置、方向、画像処理に関する情報等である。各装置の共有オブジェクト生成部は、PACSの画像参照装置に表示して特定の画像をキー画像として指定したタイミング、あるいはレポートへの貼り付け操作、レポート文章との関連付け操作(ハイパーリンク)等を行ったタイミングで、該当する画像をキー画像として認識する。画像参照装置は、認識した画像が含まれるシリーズの共有オブジェクトを検索して特定する。その画像の識別子たとえばDICOM規格のSOPInstanceUID、z軸座標位置あるいは、観察時の方向、拡大率、WW/WLといった情報をキー画像情報として保持する。また、MPRを作成した場合は、画像生成条件と同様にキー画像となるMPR画像についての位置や方向、生成条件を用いてもよい.
以上の付帯情報を保持することによって、検査読影開始時に前回画像と比較可能な画像を漏れなく適正に撮影することができるようになる.
なお、共有オブジェクトサーバは、ネットワーク上に単独で設置する他、RISサーバ、PACSサーバ、医用画像診断装置等の他の医用機器に内蔵する構成としてもよい。
【0048】
(撮影範囲の適正化機能)
次に、本X線CT装置1が有する撮影範囲の適正化機能について説明する。この機能は、過去の撮影おけるキー画像の位置情報を利用して、過去のキー画像と同一位置の断層像を確実に取得しつつ余分な被爆を与えないように、今回の撮影範囲を
自動的に設定するものである。この様な撮影範囲の設定は、例えば、経過観察を目的とする今回撮影で、キー画像と同じ位置にある断層画像を取得しようとする場合等に実益がある。
【0049】
なお、過去の撮影におけるキー画像の位置情報とは、当該被検体上でのキー画像に対応する断層の位置を、直接的又は間接的に特定するための情報である。具体例としては、当該被検体におけるキー画像の人体座標情報、キー画像取得に用いられたスキャノグラム上における位置(座標情報、画像上のマーカ表示等)等が挙げられる。この様な位置情報は、例えば共有オブジェクト、キー画像の付帯情報、キー画像と対応付けた管理されるデータベース等から取得することができる。
【0050】
前回撮影(胸部撮影)での撮影範囲R1が図4(a)に示すように設定され、且つ画像診断におけるキー画像K1が撮影範囲R1中の同図に示す位置に存在したとする。係る場合には、キー画像K1に関する位置情報を取得し、これに基づいて、図4(b)に示すように今回撮影において取得されたスキャノグラム上にキー画像K1の位置に対応する断層位置K2を明示的に表示する。今回の撮影範囲は、断層位置K2を含むように且つ余分な被爆を与えないように、自動的に又は人為的に設定される。
【0051】
今回の撮影範囲を設定する手法としては、例えば次のようなものがある。
【0052】
第1の手法は、予め用意された雛形の中から、最も好適なもの(例えば、断層位置K2を含む最も面積の小さなもの)を選択することで、撮影範囲を設定するものである。すなわち、例えば胸部撮影について予め図5(a)〜(c)に示すような撮影範囲の雛形r1、r2、r3が登録されているとする。係る場合において、図4(b)に示す位置にキー画像K1に対応する断層位置K2が設定された場合には、断層位置K2を含み最も面積の小さい撮影範囲r3を選択する。この選択は、ユーザ自身が行ってもよいし、スキャンプラン設定部33が自動的に行ってもよい。
【0053】
第2の手法は、被検体の解剖学的構造に基づいて撮影領域を自動設定するものである。すなわち、本撮影に先立って取得されるスキャノグラムにより、当該被検体の頭部、胸部、腹部、下腹部、全身等の解剖学的構造を判別することができる。この解剖学的構造に基づいてスキャノグラムを小領域に分割し、キー画像K1に対応する断層位置K2が含まれる小領域(解剖学的領域(例えば胸部))を判定し、その領域を撮影範囲として設定する。
【0054】
第3の手法は、過去のキー画像に対応する断層位置を中心とする一定領域を撮影範囲として自動設定するものである。例えば、過去のキー画像に対応する断層位置を中心として体軸方向(すなわち、キー画像に垂直な方向)に±acmの領域を撮影範囲として設定する。
【0055】
第4の手法は、提示されたキー画像に対応する断層位置に基づいて、ユーザが手動で設定するものである。
【0056】
なお、上記第1の手法乃至第4の手法によって設定される撮影範囲は、さらに微調整できることが好ましい。例えば、第1の手法又は第2の手法によりスキャノグラム上に設定された撮影範囲の位置とキー画像に対応する断層位置の相対的な位置関係を解析する。その結果、さらに撮影範囲の限縮が可能である場合には当該撮影範囲を所定量だけ狭くするように変形し、一方、キー画像が撮影範囲の境界に近い場合には所定量だけ当該撮影範囲を広くするように変形する。係る所定量は、入力部31からの入力指示により、任意に制御できることが好ましい。
【0057】
(動作)
次に、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う動作について説明する。
【0058】
図6は、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う処理(撮影範囲の適正化処理)の流れを示したフローチャートである。同図において、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS1)。この検査オーダには、患者情報、検査目的、撮影部位、方向、前回キー画像、前回キー画像の位置情報等、或いはこれらを含む共有オブジェクトが含まれるものとする。
【0059】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS2)。スキャンプラン設定部33は、前回キー画像の位置情報に基づいて、今回スキャノグラム上に前回キー画像に対応する断層の位置を設定する。前回キー画像に対応する断層位置が設定されたスキャノグラムは、表示部29において表示される(ステップS3)なお、このとき、必要に応じて、今回のスキャノグラムと過去のスキャノグラムとを同時に表示(例えば重畳表示又は並列表示)するようにしてもよい。これにより、過去の撮影と現在の撮影との対応関係をより具体的に視認することができる。
【0060】
次に、スキャンプラン設定部33は、今回のスキャノグラム上の前回キー画像に対応する断層の位置に基づいて、スキャノグラム上に今回の撮影範囲を設定し表示する(ステップS4)。また、スキャンプラン設定部33は、検査オーダの内容に基づいて、撮影条件、画像条件等を設定する(ステップS5)。なお、検査オーダによって指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。制御部27は、ステップS4、ステップS5において設定された撮影範囲等に従って、スキャンを実行する。(ステップS6)。
【0061】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0062】
本X線CT装置によれば、過去のキー画像を今回のスキャノグラム上に設定し、これに基づいて、過去のキー画像と同一位置の断層像を確実に取得しつつ余分な被爆を与えないように、撮影範囲を決定する。従って、診断に必要のない範囲についてのX線被曝、及び撮影範囲内に過去のキー画像に対応する断層位置がが含まれていない等のミスを防止することができる。その結果、より安全性と品質の高い医療行為の提供に寄与することができる。
【0063】
また、本X線CT装置によれば、過去のキー画像に対応する断層位置及び撮影範囲が、今回のスキャノグラム上に自動的に設定される。従って、ユーザ自身は過去のキー画像に対応する断層位置の確認、及び撮影範囲の設定を行う必要がない。その結果、従って、撮影時間を短縮することができると共に、撮影時の作業負担を軽減させることができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、初期設定や過去の撮影における撮影範囲及びキー画像の位置情報を利用して自動的に設定される空間的条件(撮影範囲)を、必要に応じて所定の基準に従い変更(限縮)することで適正化するものである。
【0065】
例えば、前回撮影(胸部撮影)での撮影範囲R1が図7(a)に示すように設定され、且つ画像診断におけるキー画像K1が撮影範囲R1中の同図に示す位置に存在したとする。この様な前回撮影での条件を今回撮影において利用する場合には、本X線CT装置1により、撮影範囲R1が自動的に設定されることになる。
【0066】
しかしながら、例えば経過観察を目的とする今回撮影で、キー画像K1と同じ位置にある断層画像を取得しようとする場合には、腹部領域等は今回の診断では非対象の領域であるため、係る領域についての撮影を行う必要がない。そこで、スキャンプラン設定部33は、例えば図7(a)に示す撮影範囲R1を図7(b)に示す撮影範囲R2に変形する。これにより、過去の撮影に比して、現在の撮影での被爆低減を実現することができる。
【0067】
なお、撮影範囲の変形手法としては、例えば次のようなものがある。
【0068】
第1の手法は、予め用意された雛形の中から、最も好適なものを変形後の撮影範囲として選択することで、撮影範囲を変形するものである。すなわち、図8(a)〜(c)に示すような変形後の撮影範囲に対応する複数の雛形を準備しておき、基準とするキー画像を含む雛形のうち、最も面積の小さな雛形を変形後の撮影範囲として選択する。このとき、選択された雛形が前回撮影範囲と同範囲であれば、撮影範囲の変形は実行されない。
【0069】
第2の手法は、被検体の解剖学的構造に基づいて撮影領域を変形するものである。すなわち、今回キャノ像を解析することにより、当該被検体の頭部、胸部、腹部、下腹部、全身等の解剖学的構造を判別する。この解剖学的構造に基づいてスキャノグラムを小領域に分割し、基準とするキー画像が含まれる小領域(解剖学的領域(例えば胸部))を判定し、その領域を撮影範囲として選択する。この場合においても、このとき、選択された解剖学的領域が前回撮影範囲と同範囲であれば、撮影範囲の変形は実行されない。
【0070】
第3の手法は、上記第1の手法又は第2の手法によって選択された撮影範囲を、さらに微調整するものである。すなわち、位置決め画像上における第1の手法又は第2の手法により選択された撮影範囲の位置と、当該撮影範囲内のキー画像の位置関係を解析する。その結果、さらに撮影範囲の限縮が可能である場合には当該撮影範囲を所定量だけ狭くするように変形し、一方、キー画像が撮影範囲の境界に近い場合には所定量だけ当該撮影範囲を広くするように変形する。係る所定量は、入力部31からの入力指示により、任意に制御できることが好ましい。
【0071】
なお、以上述べた説明では、撮影範囲を変形するための所定の基準として、上記例で示した様な前回撮影における撮影範囲とキー画像との位置関係を例とした。しかしながら、これに拘泥されず、例えば撮影範囲を変形するための他の基準として、撮影条件として入力される撮影部位を採用するようにしてもよい。
【0072】
(動作)
次に、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う動作について説明する。
【0073】
図9は、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う処理(撮影範囲の適正化処理)の流れを示したフローチャートである。同図において、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS11)。この検査オーダには、患者情報、検査目的、撮影部位、方向、前回キー画像等、或いはこれらを含む共有オブジェクトが含まれるものとする。
【0074】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS12)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、画像条件等を設定する(ステップS13)。なお、検査オーダによって指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。
【0075】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS14)、スキャンプラン設定部33は、当該微調整後の撮影範囲と前回検査のキー画像との相対的位置関係から、ステップS14において調整され設定された撮影範囲を限縮可能か否かを判定する(ステップS15)。撮影範囲を限縮可能と判定した場合には、スキャンプラン設定部33は、撮影範囲をさらに小さい領域に変更する(ステップS16)。
【0076】
次に、制御部27は、撮影範囲が限縮不可能と判定された場合にはステップS14において設定された撮影範囲を、撮影範囲が限縮可能と判定された場合には、ステップS16において変更された撮影範囲を含む撮影計画に従って、スキャンを実行する。(ステップS17)。
【0077】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0078】
本X線CT装置によれば、必要に応じて撮影範囲を限縮しつつ、今回の撮影において前回診断におけるキー画像に対応する画像を取得する。従って、診断に必要のない範囲についてのX線被曝をなくすと共に、診断に必要な情報を確実に取得することができる。その結果、より安全性と品質の高い医療行為の提供に寄与することができる。
【0079】
また、本X線CT装置によれば、今回診断に関係のない範囲についての画像取得を行わないため、不用な画像が生成されない。従って、撮影時間を短縮することができると共に、不用な画像データの保存をする必要ながなくなる。その結果、画像記憶領域を有効に使用できると共に、画像管理の手間を低減させることができる。
【0080】
(第3の実施形態)
画像診断においては、一回の検査において種々の時相に関する画像が取得される場合がある。例えば肝臓造影検査においては、動脈相、実質相、静脈相、平衡相といった具合に、造影剤の流入状況によって複数の時相に関する画像が取得される。
【0081】
ところで、検査目的によっては、これらの全ての時相に関する画像を必要としない場合がある。そこで、本実施形態では、検査目的、過去の診断情報、操作者からの指示等に基づいて不用な時相に対応する画像の取得を省略し、撮影計画を時間的な側面から適正化するX線CT装置について説明する。
【0082】
図10は、本X線CT装置が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。肝臓造影検査においては、同図に示すように造影剤投与からの時間経過に応じて、動脈相、実質相、静脈相、平衡相等の時相が区別される。係る検査において前回診断におけるキー画像が動脈相及び平衡相にのみ存在する場合には、実質相及び静脈相に関する画像は必要ではない。
【0083】
そこで、本実施形態に係るX線CT装置では、不用な時相に対応する画像の取得を省略し、撮影計画を時間的な側面から適正化する。画像取得を省略する時相の判定は、例えば検査目的、過去の診断情報、操作者からの指示等に基づいて実行される。また、前回診断におけるキー画像がいずれの時相であるかを示す情報が、共有オブジェクトや前回キー画像の付帯情報に記録されている場合には、これらの情報に基づいて判定するようにしてもよい。
【0084】
図11は、肝臓造影検査において画像取得を省略する時相を指示するためのインタフェースの一例を示した図である。今回検査において画像取得が必要のない時相については(例えば、前回検査におけるキー画像に対応しない時相については)、対応する「省略」の欄に入力部31を介してチェックを入れることにより、その時相についての画像取得を省略することができる。
【0085】
次に、本X線CT装置の撮影シーケンスの適正化機能に従う動作について説明する。
【0086】
図12は、本X線CT装置の撮影シーケンスの適正化機能に従う処理(撮影シーケンスの適正化処理)の流れを示したフローチャートである。同図において、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS21)。
【0087】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS22)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、撮影シーケンス、画像条件等を設定する(ステップS23)。なお、検査オーダにおいて指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。
【0088】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS24)、制御部27は、表示部29に図11に示すような時相選択のためのインタフェースを表示し、操作者に対して今回診断に必要な時相の選択を促す(ステップS25)。
【0089】
次に、スキャンプラン設定部33は、例えば「confirm」ボタン等の操作に応答して必要な撮影時相を決定し、スキャンシーケンスを変更する(ステップS26)。制御部27は、決定された撮影時相に対応する画像のみを取得するようにX線曝射タイミングを制御することで、スキャンを実行する。(ステップS27)。
【0090】
以上述べた本X線CT装置によれば、不用な撮影時相に対応する画像取得を省略しつつ、今回の撮影において前回診断におけるキー画像の時相に対応する画像を取得する。従って、診断に必要な時相に対応する画像を取得する場合にのみX線被曝を行うため、患者に対する被爆を低減させることができる。その結果、より安全性の高い医療行為の提供に寄与することができる。
【0091】
また、本X線CT装置によれば、今回診断に関係のない範囲についての画像取得を行わないため、不用な画像が生成されない。従って、撮影時間を短縮することができると共に、不用な画像データの保存をする必要ながなくなる。その結果、画像記憶領域を有効に使用できると共に、画像管理の手間を低減させることができる。
【0092】
さらに、例えば図13に示すように、本実施形態で述べた撮影時相の最適化と共に、第2の実施形態において説明した撮影範囲の適正化を行うことも可能である。すなわち、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得し(ステップS21)、当該検査オーダに従って今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS22)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、撮影シーケンス、画像条件等を設定する(ステップS23)。
【0093】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS24a)、スキャンプラン設定部33は、当該微調整後の撮影範囲と前回検査のキー画像との相対的位置関係から、撮影範囲を限縮可能か否か判定する(ステップS24b)。撮影範囲を限縮可能と判定した場合には、スキャンプラン設定部33は、撮影範囲をさらに小さい領域に変更する(ステップS24c)。
【0094】
撮影範囲の変更後又は撮影範囲を限縮不可能と判定した場合には、制御部27は、操作者に対して今回診断に必要な時相の選択を促す(ステップS25)。スキャンプラン設定部33は、例えば「confirm」ボタン等の操作に応答して必要な撮影時相を決定し、スキャンシーケンスを変更する(ステップS26)。制御部27は、決定された撮影時相に対応する画像のみを取得するようにX線曝射タイミングを制御することで、スキャンを実行する。(ステップS27)。
【0095】
以上述べた構成によれば、従来に比して大幅な被爆低減を実現できると共に、さらなる撮影時間の短縮、画像管理の手間の低減を実現することができる。
【0096】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第2の実施形態及び第3の実施形態で述べた撮影計画の適正化機能を有するMRI装置5について説明する。
【0097】
図14は、本実施形態に係るMRI装置5の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本MRI装置5は、静磁場磁石511、冷却系制御部512、傾斜磁場コイル513、高周波送信コイル514、高周波受信コイル515、送信部518、受信部519、データ処理部500、第1表示部524を具備している。
【0098】
静磁場磁石511は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。
【0099】
冷却系制御部512は、静磁場磁石511の冷却機構を制御する。
【0100】
傾斜磁場コイル513は、静磁場磁石11の内側に設けられ、且つ静磁場磁石511よりも短軸であり、傾斜磁場コイル装置電源517から供給されるパルス電流を傾斜磁場に変換する。この傾斜磁場コイル513が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
【0101】
なお、Z軸方向は、本実施形態では静磁場の方向と同方向にとるものとする。また、本実施形態において、傾斜磁場コイル513及び静磁場磁石511は円筒形をしているものとする。また、傾斜磁場コイル513は、所定の支持機構によって真空中に配置される。これは、静音化の観点から、パルス電流の印加によって発生する傾斜磁場コイル13の振動を、音波として外部に伝播させないためである。
【0102】
高周波送信コイル(RF送信コイル)514は、被検体の撮像領域に対して、磁気共鳴信号を発生させるための高周波パルスを印加するためのコイルである。この高周波送信コイル514は全身用RFコイルであり、例えば腹部等を撮影する場合には、受信コイルとしても使用することができる。
【0103】
高周波受信コイル(RF受信コイル)515は、被検体の近傍、好ましくは密着させた状態で当該被検体を挟むように設置され、被検体から磁気共鳴を受信するためのコイルである。当該高周波受信コイル515は、一般的には、部位別に専用の形状を有する。
【0104】
なお、図14では、高周波送信コイルと高周波受信コイルとを別体とするクロスコイル方式を例示したが、これらを一つのコイルで兼用するシングルコイル方式を採用する構成であってもよい。
【0105】
傾斜磁場コイル装置電源517は、傾斜磁場を形成するためのパルス電流を発生し、傾斜磁場コイル513に供給する。また、傾斜磁場コイル装置電源517は、後述する制御部502の制御に従って、傾斜磁場コイル513に供給するパルス電流の向きを切替えることにより、傾斜磁場の極性を制御する。
【0106】
送信部518は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用高周波コイルに送信する。当該送信によって高周波送信コイル514から発生した高周波によって、被検体の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
【0107】
受信部519は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ、A/D変換器(それぞれ図示せず)を有する。受信部519は、高周波コイル514から受信した、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
【0108】
データ処理部500は、受信後のデータを処理して磁気共鳴画像を生成する計算機システムであり、記憶部501、制御部502、データ収集部503、再構成部504、スキャンプラン設定部505、操作部507、送受信部508を有している。
【0109】
記憶部501は、本MIR装置5によって取得されたMR画像、位置決め画像(スカウト画像)、ネットワークNを介して取得した各種情報等を記憶する。記憶部501は、後述する撮影計画の適正化機能を実現するための専用プログラムを格納する。
【0110】
制御部502は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、本磁気共鳴イメージング装置を静的又は動的に制御する。また、制御部502は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、撮影計画の適正化機能を実現させる。
【0111】
データ収集部503は、受信部519によってサンプリングされたディジタル信号を収集する。
【0112】
再構成部504は、データ収集部503によって収集されたデータに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成等を実行し、被検体内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0113】
スキャンプラン設定部505は、入力部507からの入力指示、初期条件、過去の情報等に従ってス撮影計画を設定する。また、スキャンプラン設定部505は、撮影計画の適正化機能に基づいて、撮影範囲、スキャンシーケンス等を適正化する。
【0114】
操作部507は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
【0115】
送受信部508は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0116】
表示部524は、データ処理部503から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力手段である。
【0117】
次に、本MRI装置5が具備する撮影計画の適正化機能について説明する。本MRI装置5は、この機能により、第1及び第2の実施形態において説明したX線CT装置1と同様に、空間的な撮影計画の適正化(第2の実施形態の例では、撮影範囲の限縮)、時間的な撮影計画の適正化(第3の実施形態の例では、撮影時相の省略)を実現することができる。
【0118】
図15は、本MRI装置5が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。例えば、前回の画像診断においては同図に示すようにT1強調画像、T2強調画像、拡散画像の三種の画像が取得され、且つ、キー画像がT1強調画像である場合を想定する。係る場合において、今回の診断においてT1強調画像としてのキー画像を取得するときには、T2強調画像及び拡散画像の画像取得時相を省略することができる。省略の指示は、第3の実施形態と同様に、共有オブジェクトや前回キー画像の付帯情報に含まれる画像特性情報(すなわち、当該キー画像がT1強調画像であることを示す情報)、又は例えば図11に示すような所定のインタフェースによる入力指示によって実現することができる。
【0119】
なお、撮影範囲の適正化についても、例えば第2の実施形態で示した様に、前回キー画像と前回撮影範囲との相対的な位置関係に基づいて実現することができる。
【0120】
以上述べた構成によれば、MRI装置においても、撮影範囲や撮影時相の適正化を行うことができる。従って、撮影時間を短縮することができると共に、不用な画像データの保存をする必要ながなくなる。その結果、画像記憶領域を有効に使用できると共に、画像管理の手間を低減させることができる。
【0121】
(第5の実施形態)
本実施形態では、第2乃至第4の実施形態に係る撮影計画の適正化機能の必要性の有無を所定の基準に従って判定し、必要と判定した場合にのみ、撮影計画の適正化機能を実行するものである。以下、説明を具体的にするため、当該機能を有するX線CT装置1を例とする。しかしながら、これに拘泥されず、MRI装置5についても適用可能である。
【0122】
記憶部25は、例えば図16に示すような、撮影計画の適正化を行うか否かの判定に基準とする対応テーブルを記憶する。この対応テーブルは、基準とされる過去の診断における検査目的と今回の診断における検査目的との関係毎に、撮影計画の適正化の実行の有無を分類するものである。なお、同テーブルのマルの有無は、撮影条件の適正化実行の有無に対応している。
【0123】
スキャンプラン設定部33は、記憶部25に記憶された対応テーブルと今回の診断の検査目的とを比較することで、撮影計画の適正化を行うか否かの判定を実行する。
【0124】
図17は、本X線CT装置の撮影計画の適正化機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS31)。
【0125】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS32)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、画像条件等を設定する(ステップS33)。なお、検査オーダにおいて撮影時相が指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。
【0126】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS34)、スキャンプラン設定部33は、記憶部25に記憶された対応テーブルと今回の診断の検査目的とを比較することで、撮影計画の適正化を行うか否かの判定を実行する(ステップS35)。すなわち、例えば、前回(過去)の検査目的がスクリーニングであり、今回の検査目的がフォローである場合には、前回キー画像に含まれる診断部位及びその近傍を同じ時相によって観察すれば済むと考えられる。従って、前回と今回との検査目的が係る関係である場合には、スキャンプラン設定部33によって対応テーブルに従って既述の撮影計画の適正化が実行され、適正化後の撮影計画に従ったスキャンが実行される(ステップS36〜ステップS40)。
【0127】
一方、例えば、前回の検査目的がスクリーニングであり、今回の検査目的が転移チェックである場合には、診断部位に限らず広域な範囲を種々の面から画像診断する必要がある。従って、前回と今回との検査目的が係る関係である場合には、スキャンプラン設定部33は、対応テーブルに従って撮影計画の適正化を実行を実行せず、ステップS22において設定された撮影条件等に従うスキャンを実行する(ステップS40)。
【0128】
以上述べた構成によれば、参照する過去の診断と現在の診断との検査目的の関係に従ってその必要性を判定し、必要があると判定された場合にのみ、撮影計画の適正化処理を実行する。従って、撮影領域の限縮や撮影時相の省略に起因する診断ミスの発生を防止しつつ、被検体の被爆低減、撮影時間の短縮、装置の記憶領域の有効利用、画像データ管理の労力の低減を実現することができる。
【0129】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0130】
(1)上記各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0131】
(2)第5の実施形態においては、参照する過去の診断と現在の診断との検査目的の関係に従って、撮影範囲及び撮影時相の双方の適正化を行う場合を例とした。しかしながら、これに拘泥されず、検査目的応じて撮影範囲及び撮影時相のいずれか一方を適正化する構成としてもよい。
【0132】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…X線CT装置、2…架台、3…情報処理部、11…スリップリング、12…架台駆動部、13…X線管球、15…X線検出器、16…回転フレーム、17…データ収集部、18…非接触データ電送装置、18…高電圧発生装置、20…前処理部、21…メモリ部、23…再構成部、25…記憶部、27…制御部、29…表示部、31…入力部、33…スキャンプラン設定部
【技術分野】
【0001】
医用画像撮影装置における撮影計画の設定方法に関する技術、例えばCT撮影装置やMRI画像診断装置において、前回検査と比較可能な画像を収集するために十分な撮影条件を設定できるようにしつつ、不要な被曝を回避して医療被曝を低減するために使用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療行為の専門分野は細分化されている。例えば、画像診断においては、患者の検査オーダー作成、作成されたオーダーに基づく診断画像の取得、取得された診断画像の読影及びレポート作成、レポート結果に基づく診断結果や治療方針の説明、等の各作業に分割される。各作業は、各専門家(担当の医師又は担当技師)によって担当され、これら全ての作業によって、患者に対する診断等の医療行為が達成される。各専門家は、前段の作業において他の専門家が作成した情報に基づいて、且つ適宜過去の診断情報等を参照することにより、各作業を実行する。
【0003】
例えば、撮影技師等は、診療科において発行される撮影オーダに従って撮影計画を立てる。この撮影計画では、患者情報、検査目的、撮影条件、スキャンシーケンス、撮影範囲、画像条件等を含む撮影計画が設定される。ここで、撮影条件とは、撮影部位、方向、位置決め画像の取得範囲等の他、管電流値(KvmA)、ヘリカルピッチ、造影条件等を含む情報である。また、画像条件とは、スキャンしたデータを用いて画像再構成する際のスライス厚、スライスピッチ、再構成関数等を含む情報である。撮影計画は、通常シリーズ単位で設定され、また、撮影オーダに具体的に指示があればそれに従う。一方、指示が十分でない場合(例えば、部位のみの指定)には、検査目的、過去の検査レポート、過去画像、RIS(放射線部門情報システム)から取得される過去の検査の撮影条件等を参照しながら決定される。撮影計画の設定が終了すると、例えばX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)では患者を寝台に乗せてから、撮影範囲を設定するために体全体をあらわす位置決め画像(スキャノグラム)を撮影する。撮影技師等は、スキャノグラム上で撮影範囲、FOV(Field of View)、再構成スライス厚、間隔等を設定し、実際の撮影を開始する。
【0004】
また、読影医は、上記撮影によって取得された画像を観察しながら読影を実行し、レポートを作成する。最近は、電子化された画像システム(PACS)やレポートシステムを使って読影レポート作成することが多い。これらのシステムは、大量の画像を発生するX線CT装置や磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)を用いる画像診断では必要不可欠なものとなっている。
【0005】
読影においては、レポートに診断した内容を記載するが、同時にキー画像(診断の根拠となる画像)を指定して作成したレポートと関連づけて保存することが多い。レポートを参照する依頼科の医師は、キー画像を見ながら検査結果レポートを読むことでより診断の内容を理解しやすいというメリットがある。最近では、レポートの文章にハイパーリンクとしてキー画像を関連付けるハイパーリンクレポートシステムがある。読影医は、前回レポートと関連付けられたキー画像を参照しながら、今回の検査を読影する。特にキー画像は診断上有用な画像であり、同じ位置同じ条件で撮影した今回画像と比較することで、病態の変化を詳細に把握することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−164442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のシステムにおいては、例えば次のような問題がある。
【0008】
上述した様に、撮影技師等は、撮影部位、方向や範囲を検査オーダから判断して設定する。あるいは、あらかじめ検査装置にプリセットされている手順(撮影プロトコル)を選択する。しかし、この方法では撮影された画像に、前回のキー画像の比較対象とすることができる画像が含まれる保証はない。従って、比較できる画像が撮影できているか否かは撮影終了後読影の時点にならないと判明せず、仮に撮影できていなかった場合には、実質的に比較読影ができない状態になる可能性がある。
【0009】
これらの問題を回避するために、撮影範囲を広くとって多くの画像を撮影しておくという対策が考えられる。しかしながら、例えばX線CT装置を使用する場合には、この手法では患者への被曝を増やすという問題がある。
【0010】
また、同じ部位・方向の画像が含まれていたとしても、撮影条件が異なると画質が異なってくるため、同じ画像条件で観察できないという問題がある。
【0011】
上記事情を鑑みてなされたもので、過去のキー画像との比較対象画像を確実に撮影することができる医用画像診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本一実施形態に係る医用画像診断装置は、被検体の撮影に関して、過去の撮影における撮影シーケンスを今回の撮影シーケンスとした撮影計画を設定する設定手段と、前記過去の撮影で取得された診断の根拠画像の撮影時相に基づいて、前記撮影計画が今回の撮影において適正か否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合、前記撮影計画の変更処理を実行する変更手段と、前記判定手段が適切でないと判定した場合には、変更された前記撮影計画に従って撮影を実行し、前記判定手段が適切であると判定した場合には、前記設定手段によって設定された前記撮影計画に従って撮影を実行する撮影手段と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。
【図3】図3は、共有オブジェクトの人体基準座標の概念を説明するための図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るX線CT装置1が有する撮影範囲の適正化機能を説明するための図である。
【図5】図5は、撮影範囲の雛形の一例を示した図である。
【図6】図6は、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う処理(撮影範囲の適正化処理)の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施形態に係るX線CT装置1が有する撮影範囲の適正化機能を説明するための図である。
【図8】図8は、撮影範囲の雛形の一例を示した図である。
【図9】図9は、第1のX線CT装置の撮影範囲の適正化処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、本X線CT装置が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。
【図11】図11は、肝臓造影検査において画像取得を省略する時相を指示するためのインタフェースの一例を示した図である。
【図12】図12は、第3の実施形態に係るX線CT装置の撮影時相の適正化機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第3の実施形態に係るX線CT装置の撮影時相の適正化機能に従う処理の流れの変形例を示したフローチャートである。
【図14】図14は、第3の実施形態に係るMRI装置5の構成を示したブロック図である。
【図15】図15は、本MRI装置5が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。
【図16】図16は、撮影計画の適正化を行うか否かの判定に用いられる対応テーブルの一例を示した図である。
【図17】図17は、本X線CT装置の撮影計画の適正化機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態乃至第5実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置1の構成を説明するための図である。なお、本実施形態では、説明を具体的にするため、医用画像診断装置1がX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)である場合を例とする。同図に示すように、本X線CT装置1は、架台2、情報処理部3から構成される。
【0016】
架台2は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、スリップリング11、架台駆動部12、X線管球13、X線検出器15、回転フレーム16、データ収集部17、非接触データ電送装置18を具備している。情報処理部3は、架台2におけるデータ収集動作の制御、及び架台2において収集されたデータに所定の処理を施すことで、X線CT画像及びこれを用いた各種臨床情報を生成するものであり、高電圧発生装置19、前処理部20、メモリ部21、再構成部23、画像処理部24、記憶部25、制御部27、表示部29、入力部31、スキャンプラン設定部33、送受信部35を具備している。
【0017】
架台駆動部12は、回転フレーム16を回転駆動する。この回転駆動により、X線管球13とX線検出器15とが対向しながら、被検体Pの体軸を中心に螺旋状に回転することになる。
【0018】
X線管球13は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム16に設けられている。当該X線管球13には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生装置19からスリップリング11を介して供給される。X線管球13は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された被検体に対してX線を曝射する。
【0019】
X線検出器15は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管球13に対向する向きで回転フレーム16に取り付けられている。当該X線検出器15は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じて一次元的又は二次元的に配列されている。
【0020】
回転フレーム16は、Z軸を中心として回転駆動されるリングであり、X線管球13とX線検出器15とを搭載している。この回転フレーム16の中央部分は開口されており、この開口部に、寝台(図示せず)上に載置された被検体Pが挿入される。
【0021】
データ収集装置17は、一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれ、検出器15からチャンネルごとに出力される信号を電圧信号に変換し、増幅し、さらにディジタル信号に変換する。このデータ(生データ)は、非接触データ伝送装置18を介して情報処理装置3に取り込まれる。
【0022】
高電圧発生装置19は、スリップリング11を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管球13に供給する装置であり、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等から成る。
【0023】
前処理部20は、非接触データ伝送装置18を介してデータ収集装置17から生データを受け取り、感度補正やX線強度補正を実行する。各種補正を受けた360度分の生データは、記憶部25に一旦記憶される。なお、当該前処理部20によって前処理が施された生データは、「投影データ」と呼ばれる。
【0024】
再構成部23は、複数種類の再構成法を装備し、操作者から選択された再構成法により画像データを再構成する。複数種類の再構成法には、例えば、ファンビーム再構成法(ファンビーム・コンボリューション・バックプロジェクション法ともいう)、再構成面に対して投影レイが斜めに交差する場合の再構成法として、コーン角が小さいことを前提として畳み込みの際にはファン投影ビームとみなして処理し、逆投影はスキャンの際のレイに沿って処理する近似的画像再構成法としてのフェルドカンプ法、フェルドカンプ法よりもコーン角エラーを抑える方法として再構成面に対するレイの角度に応じて投影データを補正するコーンビーム再構成法等が含まれる。
【0025】
画像処理部24は、再構成部23により生成された再構成画像データに対して、ウィンドウ変換、RGB処理等の表示のための画像処理を行い、表示部29に出力する。また、画像処理部24は、オペレータの指示に基づき、任意断面の断層像、任意方向からの投影像、3次元表面画像等のいわゆる疑似3次元画像の生成を行い、表示部29に出力する。
【0026】
記憶部25は、生データ、投影データ、スキャノグラムデータ、断層像データ等の画像データや、検査計画のためのプログラム等を記憶する。また、記憶部25は、後述する撮影計画の適正化機能を実現するための専用プログラムを格納する。
【0027】
制御部27は、スキャン処理、信号処理、画像生成処理、画像表示処理等において、本X線CT装置1の統括的な制御を行う。例えば、制御部27は、スキャン処理においては、予め入力されたスライス厚等のスキャン条件をメモリ部21に格納し、患者ID等によって自動的に選択されたスキャン条件(あるいは、マニュアルモードにおいて、入力部31から直接設定されたスキャン条件)に基づいて、高電圧発生装置19、寝台駆動部12、及び寝台天板aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管球13及びX線検出器15の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像のデータ収集(スキャン)処理を行う。
【0028】
また、制御部27は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開し、撮影計画の適正化機能を実現させる。
【0029】
表示部29は、画像処理部24から入力したコンピュータ断層画像、スキャノグラム像等のCT画像を表示する出力装置である。ここで、CT値とは、物質のX線吸収係数を、基準物質(例えば、水)からの相対値として表したものである。また、表示部29は、図示していない計画補助システムによって実現されるスキャン計画画面等を表示する。
【0030】
入力部31は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータを介してスライス厚やスライス数等の各種スキャン条件を入力可能な装置である。
【0031】
スキャンプラン設定部33は、入力部31からの入力指示、診療科からのオーダ情報、初期条件、過去の情報、後述する共有オブジェクト等に従って、撮影条件、撮影範囲、画像条件のうちの少なくとも一つを含む撮影計画(スキャンプラン)を設定する。また、スキャンプラン設定部33は、撮影計画の適正化機能に基づいて、撮影範囲、スキャンシーケンス等を適正化する。なお、撮影範囲とは、実際に医用画像診断装置がX線や高周波等によりエネルギーを供給し、検出器が供給されたエネルギーに基づく信号検出の対象とする物理範囲である。例えば、X線CT装置1の場合、実際にX線管球で発生させたX線を照射して検出器で検出する体軸方向の範囲(スキャン範囲)である。撮影範囲は、一般的に撮影前に全身像を撮影することで取得される位置決め画像上に、点線等で明示される。
【0032】
送受信部40は、ネットワークNを介して、他の装置と画像データ、患者情報等を送受信する。特に、送受信部40は、ネットワークNに接続されたRISサーバ(図示せず)から、当該被検体の撮影に関する情報(患者情報、診断部位等を含むオーダ情報)を受信する。ここで、RISサーバとは、放射線情報システム(Radiology Information System)における種々の情報管理を行うためのサーバであり、例えば、医師端末からのオーダ発行支援情報の取得要求に応答してオーダ発行支援情報を生成し、本医用画像診断装置にこれを転送する。
【0033】
さらに、送受信部40は、ネットワークNを介して、共有オブジェクトサーバ(図示せず)と共有オブジェクトを送受信する。ここで、共有オブジェクトとは、過去の医療行為実施時において使用された情報(例えば、位置決め画像、撮影位置、撮影範囲、撮影条件、キー画像情報、画像生成条件等)を有効に利用するために、画像情報と付帯(文字または数値)情報とから構成されるものである。この共有オブジェクトは、通常の画像データとは分離した情報の実体(例えばファイル)として生成され、保存・管理される。
【0034】
図2は、共有オブジェクトの構成の一例を示した図である。同図に示すように、共有オブジェクトは、画像情報と付帯情報とを具備している。画像情報は、撮影範囲を示す一つまたは複数の位置決め画像である。また、付帯情報は、大きくオブジェクト固有情報、人体座標情報、撮影条件、画像生成条件、キー画像情報の5種類に分類することができる。以下、各情報について説明する。
【0035】
[付帯情報1:オブジェクト固有情報]
オブジェクト固有情報とは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するため、又は当該オブジェクトと他のオブジェクトとの関連性を示すための情報であり、オブジェクト識別子(オブジェクトUID)、親オブジェクト識別子(親オブジェクトUID)、関係シリーズ識別子(関係シリーズUID)、当該シリーズ識別子(当該シリーズUID)を含む。
【0036】
オブジェクトUIDは、当該オブジェクトと他のオブジェクトを区別するための情報であり、各装置のオブジェクト生成部により、共有オブジェクト生成時に重複しない体系で発番される。親オブジェクトUIDは、当該オブジェクトを生成する場合に参照されたオブジェクト(親オブジェクト)を特定するための情報である。関係シリーズUIDは、当該共有オブジェクトと同一の条件(例えば、撮影条件、位置決め画像等)を用いたシリーズを特定するための情報である。この関係シリーズUIDは、その性質上、オブジェクト固有情報内において複数個存在する場合がある。このとき、同時にそのシリーズの付帯情報(シリーズ日時、シリーズ番号、シリーズ記述、造影種別)などもシリーズUIDと関連付けて付帯させることが好ましい。この様な構成により、共有オブジェクトを参照するだけで、実際の画像群の画像を検索することなく操作者が識別する情報を取得することができるようになる。当該シリーズUIDは、当該共有オブジェクトにより撮影条件等が示されるシリーズを特定するための識別子である。
【0037】
なお、各UIDによって特定されるデータとは、リンクが張られている、従って、各UIDに基づいてリンク先のデータにアクセスすることで、その画像群の派生の検査経過を迅速に辿ることが可能になる。
【0038】
[付帯情報2:人体座標情報]
人体座標情報とは、スキャンによって取得された画像群が持つ座標系(一般的には、絶対寝台位置または相対寝台位置を基準とする装置毎の座標)とは異なり、画像上の人体構造を基準とした座標(人体基準座標)に関する情報である。この人体基準座標は、各装置の共有オブジェクト生成部において生成される。
【0039】
図3は、人体基準座標の概念を説明するための図である。同図において、前回人体座標系における基準点(例えば、OMライン、骨盤、みぞおち(心窩)等)O1から距離Lの位置にある断層が撮影断層位置であるとする。係る場合には、基準点O1及び今回座標系の基準O2(解剖学的に基準点O1と同一位置)との間のずれ量である座標校正量(Δx、 Δy、 Δz)と、基準点からの距離Lとに基づいて、前回撮影断層と同じ位置を特定することができる。従って、この人体座標情報により、撮影範囲やキー画像情報のキー画像座標など、次の検査や読影で再現が必要な位置を解剖学的に一致させることができる。
【0040】
なお、この人体座標情報を構成する位置情報は、上記例に拘泥されない。例えば、座標系の校正量(Δx, Δy, Δz)以外に、拡大や回転も含めて校正を行う場合には、拡大率αや回転角(β,θ)を、或いは一つの基準点に拘泥されず、別の基準点からの位置ずれ量(Δx2, Δy2, Δz2)を、人体座標情報にさらに含めるようにしてもよい。
【0041】
また、座標の基準点を解剖学的な構造物の名称と位置決め画像座標系(画像データの左上を(0,0)とする)の組合せを、前述の校正量とは別な情報として持ってもよい。この解剖学的基準点は、モダリティあるいはPACSの画像参照装置等の画像表示手段をもち、操作者が指定する位置情報を取得して保存する機能によって付加することができる。これを用いると、前回検査の位置決め画像上に解剖学的な基準点を描画によって図示することが可能になる。操作者はこれを見ながら今回検査の位置決め画像で同じ解剖学的構造物を指定することで、検査装置は容易に前回の座標系とのずれ=座標系校正量を認識することができるようになる。
【0042】
解剖学基準点は、呼吸や拍動といった生理的な体動による位置の変化が少ない部分を選択するのが好ましい。具体例としては、第12胸椎椎体下縁中央、腸骨棘、腸骨陵、恥骨結合下縁、気管分岐部下縁などがある。ここでは構造物を人間が判断するため名称を格納しているが、体内臓器を画像から自動的に識別する技術を用いる場合は計算機によって識別できる構造物の識別子としてもよい。このような技術は、「科研費特定領域研究プロジェクト 多次元医用画像の知的診断支援(http://www.future-cad.org/fcad/index_j.htm)」によって研究・開示されている。
【0043】
[付帯情報3:撮影条件]
撮影条件とは、撮影動作によって患者から画像生成の元となる物理的なデータを収集するために必要な物理的条件である。この条件の内容は、モダリティの種類に依存する。例えば、X線CT装置の撮影条件は、スキャンの開始位置と範囲(寝台移動量)、X線管球のKV/mA、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(ビームピッチ)といった物理量である。しかしながら、撮影条件の内容は、この例に拘泥されない。例えば、検査時の被検体挿入方向(装置に足から入るか頭から入るかの情報)、造影剤投与の有無、投与量、薬剤の種類、患者の体位(診断上で寝る方向、姿勢)等を含める構成としてもよい。さらに、最近は被曝低減のために一定の画質になるようにKV/mAを自動制御する機能があるが、そのような場合は、制御量である画像ノイズ(SD値)を撮影条件に含める構成としてもよい。
【0044】
また、例えばMRI装置の場合は、撮影範囲、患者の挿入方向や体位、磁場強度、パルスシーケンス、検出コイル種類、検出コイルの設置場所、心電同期、呼吸同期の有無、寝台送風の有無、撮影中心の身体部位、装着位置といったパラメータを撮影条件に含めることができる。
【0045】
[付帯情報4:画像生成条件]
画像生成条件とは、撮影によって得られた物理データから画像を再構成するするためのパラメータであり、例えば再構成範囲、時相、画像の位置、方向、厚さ、FOV(拡大率)、再構成関数等のフィルタ処理パラメータなどである。また、この画像生成条件には、各種医用画像診断装置や画像参照装置において実行されるボリュームレンダリングやMPR処理等の画像処理において使用される条件も含まれる。例えば、MPR処理の場合は、基準座標と法線ベクトル、スライス厚、範囲などが相当する。
【0046】
なお、再構成条件の範囲については、再構成範囲を示した位置決め画像を付帯することにより定義してもよい。係る場合は、一つの共有オブジェクトの中に、複数の再構成範囲を示す複数の位置決め画像が格納されることになる。
【0047】
[付帯情報5:キー画像情報]
キー画像情報は、PACS側のコンポーネントで読影や画像診断の段階で付されるキー画像の位置、方向、画像処理に関する情報等である。各装置の共有オブジェクト生成部は、PACSの画像参照装置に表示して特定の画像をキー画像として指定したタイミング、あるいはレポートへの貼り付け操作、レポート文章との関連付け操作(ハイパーリンク)等を行ったタイミングで、該当する画像をキー画像として認識する。画像参照装置は、認識した画像が含まれるシリーズの共有オブジェクトを検索して特定する。その画像の識別子たとえばDICOM規格のSOPInstanceUID、z軸座標位置あるいは、観察時の方向、拡大率、WW/WLといった情報をキー画像情報として保持する。また、MPRを作成した場合は、画像生成条件と同様にキー画像となるMPR画像についての位置や方向、生成条件を用いてもよい.
以上の付帯情報を保持することによって、検査読影開始時に前回画像と比較可能な画像を漏れなく適正に撮影することができるようになる.
なお、共有オブジェクトサーバは、ネットワーク上に単独で設置する他、RISサーバ、PACSサーバ、医用画像診断装置等の他の医用機器に内蔵する構成としてもよい。
【0048】
(撮影範囲の適正化機能)
次に、本X線CT装置1が有する撮影範囲の適正化機能について説明する。この機能は、過去の撮影おけるキー画像の位置情報を利用して、過去のキー画像と同一位置の断層像を確実に取得しつつ余分な被爆を与えないように、今回の撮影範囲を
自動的に設定するものである。この様な撮影範囲の設定は、例えば、経過観察を目的とする今回撮影で、キー画像と同じ位置にある断層画像を取得しようとする場合等に実益がある。
【0049】
なお、過去の撮影におけるキー画像の位置情報とは、当該被検体上でのキー画像に対応する断層の位置を、直接的又は間接的に特定するための情報である。具体例としては、当該被検体におけるキー画像の人体座標情報、キー画像取得に用いられたスキャノグラム上における位置(座標情報、画像上のマーカ表示等)等が挙げられる。この様な位置情報は、例えば共有オブジェクト、キー画像の付帯情報、キー画像と対応付けた管理されるデータベース等から取得することができる。
【0050】
前回撮影(胸部撮影)での撮影範囲R1が図4(a)に示すように設定され、且つ画像診断におけるキー画像K1が撮影範囲R1中の同図に示す位置に存在したとする。係る場合には、キー画像K1に関する位置情報を取得し、これに基づいて、図4(b)に示すように今回撮影において取得されたスキャノグラム上にキー画像K1の位置に対応する断層位置K2を明示的に表示する。今回の撮影範囲は、断層位置K2を含むように且つ余分な被爆を与えないように、自動的に又は人為的に設定される。
【0051】
今回の撮影範囲を設定する手法としては、例えば次のようなものがある。
【0052】
第1の手法は、予め用意された雛形の中から、最も好適なもの(例えば、断層位置K2を含む最も面積の小さなもの)を選択することで、撮影範囲を設定するものである。すなわち、例えば胸部撮影について予め図5(a)〜(c)に示すような撮影範囲の雛形r1、r2、r3が登録されているとする。係る場合において、図4(b)に示す位置にキー画像K1に対応する断層位置K2が設定された場合には、断層位置K2を含み最も面積の小さい撮影範囲r3を選択する。この選択は、ユーザ自身が行ってもよいし、スキャンプラン設定部33が自動的に行ってもよい。
【0053】
第2の手法は、被検体の解剖学的構造に基づいて撮影領域を自動設定するものである。すなわち、本撮影に先立って取得されるスキャノグラムにより、当該被検体の頭部、胸部、腹部、下腹部、全身等の解剖学的構造を判別することができる。この解剖学的構造に基づいてスキャノグラムを小領域に分割し、キー画像K1に対応する断層位置K2が含まれる小領域(解剖学的領域(例えば胸部))を判定し、その領域を撮影範囲として設定する。
【0054】
第3の手法は、過去のキー画像に対応する断層位置を中心とする一定領域を撮影範囲として自動設定するものである。例えば、過去のキー画像に対応する断層位置を中心として体軸方向(すなわち、キー画像に垂直な方向)に±acmの領域を撮影範囲として設定する。
【0055】
第4の手法は、提示されたキー画像に対応する断層位置に基づいて、ユーザが手動で設定するものである。
【0056】
なお、上記第1の手法乃至第4の手法によって設定される撮影範囲は、さらに微調整できることが好ましい。例えば、第1の手法又は第2の手法によりスキャノグラム上に設定された撮影範囲の位置とキー画像に対応する断層位置の相対的な位置関係を解析する。その結果、さらに撮影範囲の限縮が可能である場合には当該撮影範囲を所定量だけ狭くするように変形し、一方、キー画像が撮影範囲の境界に近い場合には所定量だけ当該撮影範囲を広くするように変形する。係る所定量は、入力部31からの入力指示により、任意に制御できることが好ましい。
【0057】
(動作)
次に、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う動作について説明する。
【0058】
図6は、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う処理(撮影範囲の適正化処理)の流れを示したフローチャートである。同図において、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS1)。この検査オーダには、患者情報、検査目的、撮影部位、方向、前回キー画像、前回キー画像の位置情報等、或いはこれらを含む共有オブジェクトが含まれるものとする。
【0059】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS2)。スキャンプラン設定部33は、前回キー画像の位置情報に基づいて、今回スキャノグラム上に前回キー画像に対応する断層の位置を設定する。前回キー画像に対応する断層位置が設定されたスキャノグラムは、表示部29において表示される(ステップS3)なお、このとき、必要に応じて、今回のスキャノグラムと過去のスキャノグラムとを同時に表示(例えば重畳表示又は並列表示)するようにしてもよい。これにより、過去の撮影と現在の撮影との対応関係をより具体的に視認することができる。
【0060】
次に、スキャンプラン設定部33は、今回のスキャノグラム上の前回キー画像に対応する断層の位置に基づいて、スキャノグラム上に今回の撮影範囲を設定し表示する(ステップS4)。また、スキャンプラン設定部33は、検査オーダの内容に基づいて、撮影条件、画像条件等を設定する(ステップS5)。なお、検査オーダによって指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。制御部27は、ステップS4、ステップS5において設定された撮影範囲等に従って、スキャンを実行する。(ステップS6)。
【0061】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0062】
本X線CT装置によれば、過去のキー画像を今回のスキャノグラム上に設定し、これに基づいて、過去のキー画像と同一位置の断層像を確実に取得しつつ余分な被爆を与えないように、撮影範囲を決定する。従って、診断に必要のない範囲についてのX線被曝、及び撮影範囲内に過去のキー画像に対応する断層位置がが含まれていない等のミスを防止することができる。その結果、より安全性と品質の高い医療行為の提供に寄与することができる。
【0063】
また、本X線CT装置によれば、過去のキー画像に対応する断層位置及び撮影範囲が、今回のスキャノグラム上に自動的に設定される。従って、ユーザ自身は過去のキー画像に対応する断層位置の確認、及び撮影範囲の設定を行う必要がない。その結果、従って、撮影時間を短縮することができると共に、撮影時の作業負担を軽減させることができる。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、初期設定や過去の撮影における撮影範囲及びキー画像の位置情報を利用して自動的に設定される空間的条件(撮影範囲)を、必要に応じて所定の基準に従い変更(限縮)することで適正化するものである。
【0065】
例えば、前回撮影(胸部撮影)での撮影範囲R1が図7(a)に示すように設定され、且つ画像診断におけるキー画像K1が撮影範囲R1中の同図に示す位置に存在したとする。この様な前回撮影での条件を今回撮影において利用する場合には、本X線CT装置1により、撮影範囲R1が自動的に設定されることになる。
【0066】
しかしながら、例えば経過観察を目的とする今回撮影で、キー画像K1と同じ位置にある断層画像を取得しようとする場合には、腹部領域等は今回の診断では非対象の領域であるため、係る領域についての撮影を行う必要がない。そこで、スキャンプラン設定部33は、例えば図7(a)に示す撮影範囲R1を図7(b)に示す撮影範囲R2に変形する。これにより、過去の撮影に比して、現在の撮影での被爆低減を実現することができる。
【0067】
なお、撮影範囲の変形手法としては、例えば次のようなものがある。
【0068】
第1の手法は、予め用意された雛形の中から、最も好適なものを変形後の撮影範囲として選択することで、撮影範囲を変形するものである。すなわち、図8(a)〜(c)に示すような変形後の撮影範囲に対応する複数の雛形を準備しておき、基準とするキー画像を含む雛形のうち、最も面積の小さな雛形を変形後の撮影範囲として選択する。このとき、選択された雛形が前回撮影範囲と同範囲であれば、撮影範囲の変形は実行されない。
【0069】
第2の手法は、被検体の解剖学的構造に基づいて撮影領域を変形するものである。すなわち、今回キャノ像を解析することにより、当該被検体の頭部、胸部、腹部、下腹部、全身等の解剖学的構造を判別する。この解剖学的構造に基づいてスキャノグラムを小領域に分割し、基準とするキー画像が含まれる小領域(解剖学的領域(例えば胸部))を判定し、その領域を撮影範囲として選択する。この場合においても、このとき、選択された解剖学的領域が前回撮影範囲と同範囲であれば、撮影範囲の変形は実行されない。
【0070】
第3の手法は、上記第1の手法又は第2の手法によって選択された撮影範囲を、さらに微調整するものである。すなわち、位置決め画像上における第1の手法又は第2の手法により選択された撮影範囲の位置と、当該撮影範囲内のキー画像の位置関係を解析する。その結果、さらに撮影範囲の限縮が可能である場合には当該撮影範囲を所定量だけ狭くするように変形し、一方、キー画像が撮影範囲の境界に近い場合には所定量だけ当該撮影範囲を広くするように変形する。係る所定量は、入力部31からの入力指示により、任意に制御できることが好ましい。
【0071】
なお、以上述べた説明では、撮影範囲を変形するための所定の基準として、上記例で示した様な前回撮影における撮影範囲とキー画像との位置関係を例とした。しかしながら、これに拘泥されず、例えば撮影範囲を変形するための他の基準として、撮影条件として入力される撮影部位を採用するようにしてもよい。
【0072】
(動作)
次に、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う動作について説明する。
【0073】
図9は、本X線CT装置の撮影範囲の適正化機能に従う処理(撮影範囲の適正化処理)の流れを示したフローチャートである。同図において、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS11)。この検査オーダには、患者情報、検査目的、撮影部位、方向、前回キー画像等、或いはこれらを含む共有オブジェクトが含まれるものとする。
【0074】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS12)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、画像条件等を設定する(ステップS13)。なお、検査オーダによって指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。
【0075】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS14)、スキャンプラン設定部33は、当該微調整後の撮影範囲と前回検査のキー画像との相対的位置関係から、ステップS14において調整され設定された撮影範囲を限縮可能か否かを判定する(ステップS15)。撮影範囲を限縮可能と判定した場合には、スキャンプラン設定部33は、撮影範囲をさらに小さい領域に変更する(ステップS16)。
【0076】
次に、制御部27は、撮影範囲が限縮不可能と判定された場合にはステップS14において設定された撮影範囲を、撮影範囲が限縮可能と判定された場合には、ステップS16において変更された撮影範囲を含む撮影計画に従って、スキャンを実行する。(ステップS17)。
【0077】
以上述べた構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0078】
本X線CT装置によれば、必要に応じて撮影範囲を限縮しつつ、今回の撮影において前回診断におけるキー画像に対応する画像を取得する。従って、診断に必要のない範囲についてのX線被曝をなくすと共に、診断に必要な情報を確実に取得することができる。その結果、より安全性と品質の高い医療行為の提供に寄与することができる。
【0079】
また、本X線CT装置によれば、今回診断に関係のない範囲についての画像取得を行わないため、不用な画像が生成されない。従って、撮影時間を短縮することができると共に、不用な画像データの保存をする必要ながなくなる。その結果、画像記憶領域を有効に使用できると共に、画像管理の手間を低減させることができる。
【0080】
(第3の実施形態)
画像診断においては、一回の検査において種々の時相に関する画像が取得される場合がある。例えば肝臓造影検査においては、動脈相、実質相、静脈相、平衡相といった具合に、造影剤の流入状況によって複数の時相に関する画像が取得される。
【0081】
ところで、検査目的によっては、これらの全ての時相に関する画像を必要としない場合がある。そこで、本実施形態では、検査目的、過去の診断情報、操作者からの指示等に基づいて不用な時相に対応する画像の取得を省略し、撮影計画を時間的な側面から適正化するX線CT装置について説明する。
【0082】
図10は、本X線CT装置が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。肝臓造影検査においては、同図に示すように造影剤投与からの時間経過に応じて、動脈相、実質相、静脈相、平衡相等の時相が区別される。係る検査において前回診断におけるキー画像が動脈相及び平衡相にのみ存在する場合には、実質相及び静脈相に関する画像は必要ではない。
【0083】
そこで、本実施形態に係るX線CT装置では、不用な時相に対応する画像の取得を省略し、撮影計画を時間的な側面から適正化する。画像取得を省略する時相の判定は、例えば検査目的、過去の診断情報、操作者からの指示等に基づいて実行される。また、前回診断におけるキー画像がいずれの時相であるかを示す情報が、共有オブジェクトや前回キー画像の付帯情報に記録されている場合には、これらの情報に基づいて判定するようにしてもよい。
【0084】
図11は、肝臓造影検査において画像取得を省略する時相を指示するためのインタフェースの一例を示した図である。今回検査において画像取得が必要のない時相については(例えば、前回検査におけるキー画像に対応しない時相については)、対応する「省略」の欄に入力部31を介してチェックを入れることにより、その時相についての画像取得を省略することができる。
【0085】
次に、本X線CT装置の撮影シーケンスの適正化機能に従う動作について説明する。
【0086】
図12は、本X線CT装置の撮影シーケンスの適正化機能に従う処理(撮影シーケンスの適正化処理)の流れを示したフローチャートである。同図において、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS21)。
【0087】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS22)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、撮影シーケンス、画像条件等を設定する(ステップS23)。なお、検査オーダにおいて指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。
【0088】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS24)、制御部27は、表示部29に図11に示すような時相選択のためのインタフェースを表示し、操作者に対して今回診断に必要な時相の選択を促す(ステップS25)。
【0089】
次に、スキャンプラン設定部33は、例えば「confirm」ボタン等の操作に応答して必要な撮影時相を決定し、スキャンシーケンスを変更する(ステップS26)。制御部27は、決定された撮影時相に対応する画像のみを取得するようにX線曝射タイミングを制御することで、スキャンを実行する。(ステップS27)。
【0090】
以上述べた本X線CT装置によれば、不用な撮影時相に対応する画像取得を省略しつつ、今回の撮影において前回診断におけるキー画像の時相に対応する画像を取得する。従って、診断に必要な時相に対応する画像を取得する場合にのみX線被曝を行うため、患者に対する被爆を低減させることができる。その結果、より安全性の高い医療行為の提供に寄与することができる。
【0091】
また、本X線CT装置によれば、今回診断に関係のない範囲についての画像取得を行わないため、不用な画像が生成されない。従って、撮影時間を短縮することができると共に、不用な画像データの保存をする必要ながなくなる。その結果、画像記憶領域を有効に使用できると共に、画像管理の手間を低減させることができる。
【0092】
さらに、例えば図13に示すように、本実施形態で述べた撮影時相の最適化と共に、第2の実施形態において説明した撮影範囲の適正化を行うことも可能である。すなわち、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得し(ステップS21)、当該検査オーダに従って今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS22)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、撮影シーケンス、画像条件等を設定する(ステップS23)。
【0093】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS24a)、スキャンプラン設定部33は、当該微調整後の撮影範囲と前回検査のキー画像との相対的位置関係から、撮影範囲を限縮可能か否か判定する(ステップS24b)。撮影範囲を限縮可能と判定した場合には、スキャンプラン設定部33は、撮影範囲をさらに小さい領域に変更する(ステップS24c)。
【0094】
撮影範囲の変更後又は撮影範囲を限縮不可能と判定した場合には、制御部27は、操作者に対して今回診断に必要な時相の選択を促す(ステップS25)。スキャンプラン設定部33は、例えば「confirm」ボタン等の操作に応答して必要な撮影時相を決定し、スキャンシーケンスを変更する(ステップS26)。制御部27は、決定された撮影時相に対応する画像のみを取得するようにX線曝射タイミングを制御することで、スキャンを実行する。(ステップS27)。
【0095】
以上述べた構成によれば、従来に比して大幅な被爆低減を実現できると共に、さらなる撮影時間の短縮、画像管理の手間の低減を実現することができる。
【0096】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第2の実施形態及び第3の実施形態で述べた撮影計画の適正化機能を有するMRI装置5について説明する。
【0097】
図14は、本実施形態に係るMRI装置5の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本MRI装置5は、静磁場磁石511、冷却系制御部512、傾斜磁場コイル513、高周波送信コイル514、高周波受信コイル515、送信部518、受信部519、データ処理部500、第1表示部524を具備している。
【0098】
静磁場磁石511は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。
【0099】
冷却系制御部512は、静磁場磁石511の冷却機構を制御する。
【0100】
傾斜磁場コイル513は、静磁場磁石11の内側に設けられ、且つ静磁場磁石511よりも短軸であり、傾斜磁場コイル装置電源517から供給されるパルス電流を傾斜磁場に変換する。この傾斜磁場コイル513が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
【0101】
なお、Z軸方向は、本実施形態では静磁場の方向と同方向にとるものとする。また、本実施形態において、傾斜磁場コイル513及び静磁場磁石511は円筒形をしているものとする。また、傾斜磁場コイル513は、所定の支持機構によって真空中に配置される。これは、静音化の観点から、パルス電流の印加によって発生する傾斜磁場コイル13の振動を、音波として外部に伝播させないためである。
【0102】
高周波送信コイル(RF送信コイル)514は、被検体の撮像領域に対して、磁気共鳴信号を発生させるための高周波パルスを印加するためのコイルである。この高周波送信コイル514は全身用RFコイルであり、例えば腹部等を撮影する場合には、受信コイルとしても使用することができる。
【0103】
高周波受信コイル(RF受信コイル)515は、被検体の近傍、好ましくは密着させた状態で当該被検体を挟むように設置され、被検体から磁気共鳴を受信するためのコイルである。当該高周波受信コイル515は、一般的には、部位別に専用の形状を有する。
【0104】
なお、図14では、高周波送信コイルと高周波受信コイルとを別体とするクロスコイル方式を例示したが、これらを一つのコイルで兼用するシングルコイル方式を採用する構成であってもよい。
【0105】
傾斜磁場コイル装置電源517は、傾斜磁場を形成するためのパルス電流を発生し、傾斜磁場コイル513に供給する。また、傾斜磁場コイル装置電源517は、後述する制御部502の制御に従って、傾斜磁場コイル513に供給するパルス電流の向きを切替えることにより、傾斜磁場の極性を制御する。
【0106】
送信部518は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用高周波コイルに送信する。当該送信によって高周波送信コイル514から発生した高周波によって、被検体の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
【0107】
受信部519は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ、A/D変換器(それぞれ図示せず)を有する。受信部519は、高周波コイル514から受信した、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
【0108】
データ処理部500は、受信後のデータを処理して磁気共鳴画像を生成する計算機システムであり、記憶部501、制御部502、データ収集部503、再構成部504、スキャンプラン設定部505、操作部507、送受信部508を有している。
【0109】
記憶部501は、本MIR装置5によって取得されたMR画像、位置決め画像(スカウト画像)、ネットワークNを介して取得した各種情報等を記憶する。記憶部501は、後述する撮影計画の適正化機能を実現するための専用プログラムを格納する。
【0110】
制御部502は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、本磁気共鳴イメージング装置を静的又は動的に制御する。また、制御部502は、専用プログラムを図示していないメモリ上に展開することで、撮影計画の適正化機能を実現させる。
【0111】
データ収集部503は、受信部519によってサンプリングされたディジタル信号を収集する。
【0112】
再構成部504は、データ収集部503によって収集されたデータに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成等を実行し、被検体内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0113】
スキャンプラン設定部505は、入力部507からの入力指示、初期条件、過去の情報等に従ってス撮影計画を設定する。また、スキャンプラン設定部505は、撮影計画の適正化機能に基づいて、撮影範囲、スキャンシーケンス等を適正化する。
【0114】
操作部507は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
【0115】
送受信部508は、ネットワークNを介して、画像、共有オブジェクト等の医療情報を、他の機器から受信し又は他の機器へ送信する。
【0116】
表示部524は、データ処理部503から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力手段である。
【0117】
次に、本MRI装置5が具備する撮影計画の適正化機能について説明する。本MRI装置5は、この機能により、第1及び第2の実施形態において説明したX線CT装置1と同様に、空間的な撮影計画の適正化(第2の実施形態の例では、撮影範囲の限縮)、時間的な撮影計画の適正化(第3の実施形態の例では、撮影時相の省略)を実現することができる。
【0118】
図15は、本MRI装置5が具備する撮影計画の適正化機能を説明するための図である。例えば、前回の画像診断においては同図に示すようにT1強調画像、T2強調画像、拡散画像の三種の画像が取得され、且つ、キー画像がT1強調画像である場合を想定する。係る場合において、今回の診断においてT1強調画像としてのキー画像を取得するときには、T2強調画像及び拡散画像の画像取得時相を省略することができる。省略の指示は、第3の実施形態と同様に、共有オブジェクトや前回キー画像の付帯情報に含まれる画像特性情報(すなわち、当該キー画像がT1強調画像であることを示す情報)、又は例えば図11に示すような所定のインタフェースによる入力指示によって実現することができる。
【0119】
なお、撮影範囲の適正化についても、例えば第2の実施形態で示した様に、前回キー画像と前回撮影範囲との相対的な位置関係に基づいて実現することができる。
【0120】
以上述べた構成によれば、MRI装置においても、撮影範囲や撮影時相の適正化を行うことができる。従って、撮影時間を短縮することができると共に、不用な画像データの保存をする必要ながなくなる。その結果、画像記憶領域を有効に使用できると共に、画像管理の手間を低減させることができる。
【0121】
(第5の実施形態)
本実施形態では、第2乃至第4の実施形態に係る撮影計画の適正化機能の必要性の有無を所定の基準に従って判定し、必要と判定した場合にのみ、撮影計画の適正化機能を実行するものである。以下、説明を具体的にするため、当該機能を有するX線CT装置1を例とする。しかしながら、これに拘泥されず、MRI装置5についても適用可能である。
【0122】
記憶部25は、例えば図16に示すような、撮影計画の適正化を行うか否かの判定に基準とする対応テーブルを記憶する。この対応テーブルは、基準とされる過去の診断における検査目的と今回の診断における検査目的との関係毎に、撮影計画の適正化の実行の有無を分類するものである。なお、同テーブルのマルの有無は、撮影条件の適正化実行の有無に対応している。
【0123】
スキャンプラン設定部33は、記憶部25に記憶された対応テーブルと今回の診断の検査目的とを比較することで、撮影計画の適正化を行うか否かの判定を実行する。
【0124】
図17は、本X線CT装置の撮影計画の適正化機能に従う処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、送受信部35を介して診療科によって発行された検査オーダを取得する(ステップS31)。
【0125】
次に、今回のスキャノグラムが撮影される(ステップS32)。スキャンプラン設定部33は、当該検査オーダに従って撮影条件、画像条件等を設定する(ステップS33)。なお、検査オーダにおいて撮影時相が指定されていない条件については、本X線CT装置1において予め準備されている初期条件(推奨条件)が自動的に設定される。
【0126】
次に、入力部31からの入力指示に従って設定された撮影範囲の微調整が実行された後(ステップS34)、スキャンプラン設定部33は、記憶部25に記憶された対応テーブルと今回の診断の検査目的とを比較することで、撮影計画の適正化を行うか否かの判定を実行する(ステップS35)。すなわち、例えば、前回(過去)の検査目的がスクリーニングであり、今回の検査目的がフォローである場合には、前回キー画像に含まれる診断部位及びその近傍を同じ時相によって観察すれば済むと考えられる。従って、前回と今回との検査目的が係る関係である場合には、スキャンプラン設定部33によって対応テーブルに従って既述の撮影計画の適正化が実行され、適正化後の撮影計画に従ったスキャンが実行される(ステップS36〜ステップS40)。
【0127】
一方、例えば、前回の検査目的がスクリーニングであり、今回の検査目的が転移チェックである場合には、診断部位に限らず広域な範囲を種々の面から画像診断する必要がある。従って、前回と今回との検査目的が係る関係である場合には、スキャンプラン設定部33は、対応テーブルに従って撮影計画の適正化を実行を実行せず、ステップS22において設定された撮影条件等に従うスキャンを実行する(ステップS40)。
【0128】
以上述べた構成によれば、参照する過去の診断と現在の診断との検査目的の関係に従ってその必要性を判定し、必要があると判定された場合にのみ、撮影計画の適正化処理を実行する。従って、撮影領域の限縮や撮影時相の省略に起因する診断ミスの発生を防止しつつ、被検体の被爆低減、撮影時間の短縮、装置の記憶領域の有効利用、画像データ管理の労力の低減を実現することができる。
【0129】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0130】
(1)上記各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0131】
(2)第5の実施形態においては、参照する過去の診断と現在の診断との検査目的の関係に従って、撮影範囲及び撮影時相の双方の適正化を行う場合を例とした。しかしながら、これに拘泥されず、検査目的応じて撮影範囲及び撮影時相のいずれか一方を適正化する構成としてもよい。
【0132】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…X線CT装置、2…架台、3…情報処理部、11…スリップリング、12…架台駆動部、13…X線管球、15…X線検出器、16…回転フレーム、17…データ収集部、18…非接触データ電送装置、18…高電圧発生装置、20…前処理部、21…メモリ部、23…再構成部、25…記憶部、27…制御部、29…表示部、31…入力部、33…スキャンプラン設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮影に関して、過去の撮影における撮影シーケンスを今回の撮影シーケンスとした撮影計画を設定する設定手段と、
前記過去の撮影で取得された診断の根拠画像の撮影時相に基づいて、前記撮影計画が今回の撮影において適正か否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、
前記判定手段が適切でないと判定した場合、前記撮影計画の変更処理を実行する変更手段と、
前記判定手段が適切でないと判定した場合には、変更された前記撮影計画に従って撮影を実行し、前記判定手段が適切であると判定した場合には、前記設定手段によって設定された前記撮影計画に従って撮影を実行する撮影手段と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記設定手段は、予め設定される初期条件又は過去の画像収集に関する特性を示すための情報である共有オブジェクトに基づいて、前記撮影計画を決定することを特徴とする請求項1載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記過去の撮影における撮影範囲及び当該過去の撮影で取得された診断の根拠画像との相対的位置関係に基づいて、前記判定処理を実行すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
位置決め画像上における複数の撮影範囲雛形を記憶する記憶手段をさらに具備し、
前記変更手段は、前記位置決め画像上の前記根拠画像の位置に基づいて、前記撮影範囲を前記複数のうちのいずれかの撮影範囲雛形に変更することで、前記変更処理を実行すること、
を特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記被検体に関する位置決め画像を、解剖学的情報に基づいて複数の領域に分割する分割手段をさらに具備し、
前記変更手段は、前記位置決め画像上における前記根拠画像の位置に基づいて、前記撮影範囲を前記複数の領域のうちのいずれかの領域に変更することで、前記変更処理を実行すること、
を特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記変更手段は、前記根拠画像に対応しない撮影時相に関する画像取得を省略することで、前記変形処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記変更処理の実行の有無と、過去の撮影における目的と今回の撮影における目的との組み合わせとの対応テーブルを記憶する記憶手段と、
過去の撮影における目的及び今回の撮影における目的を取得する取得手段と、をさらに具備し、
前記判定手段は、
取得される前記過去及び今回の撮影における目的と前記対応テーブルとに基づいて、前記変更処理の実行有無を判定し、
前記変更処理の実行有と判定した場合にのみ、前記撮影計画が適正か否かを判定する前記判定処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記医用画像診断装置は、X線コンピュータ断層装置又は磁気共鳴イメージング装置であることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項1】
被検体の撮影に関して、過去の撮影における撮影シーケンスを今回の撮影シーケンスとした撮影計画を設定する設定手段と、
前記過去の撮影で取得された診断の根拠画像の撮影時相に基づいて、前記撮影計画が今回の撮影において適正か否かを判定する判定処理を実行する判定手段と、
前記判定手段が適切でないと判定した場合、前記撮影計画の変更処理を実行する変更手段と、
前記判定手段が適切でないと判定した場合には、変更された前記撮影計画に従って撮影を実行し、前記判定手段が適切であると判定した場合には、前記設定手段によって設定された前記撮影計画に従って撮影を実行する撮影手段と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記設定手段は、予め設定される初期条件又は過去の画像収集に関する特性を示すための情報である共有オブジェクトに基づいて、前記撮影計画を決定することを特徴とする請求項1載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記過去の撮影における撮影範囲及び当該過去の撮影で取得された診断の根拠画像との相対的位置関係に基づいて、前記判定処理を実行すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
位置決め画像上における複数の撮影範囲雛形を記憶する記憶手段をさらに具備し、
前記変更手段は、前記位置決め画像上の前記根拠画像の位置に基づいて、前記撮影範囲を前記複数のうちのいずれかの撮影範囲雛形に変更することで、前記変更処理を実行すること、
を特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記被検体に関する位置決め画像を、解剖学的情報に基づいて複数の領域に分割する分割手段をさらに具備し、
前記変更手段は、前記位置決め画像上における前記根拠画像の位置に基づいて、前記撮影範囲を前記複数の領域のうちのいずれかの領域に変更することで、前記変更処理を実行すること、
を特徴とする請求項3記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記変更手段は、前記根拠画像に対応しない撮影時相に関する画像取得を省略することで、前記変形処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記変更処理の実行の有無と、過去の撮影における目的と今回の撮影における目的との組み合わせとの対応テーブルを記憶する記憶手段と、
過去の撮影における目的及び今回の撮影における目的を取得する取得手段と、をさらに具備し、
前記判定手段は、
取得される前記過去及び今回の撮影における目的と前記対応テーブルとに基づいて、前記変更処理の実行有無を判定し、
前記変更処理の実行有と判定した場合にのみ、前記撮影計画が適正か否かを判定する前記判定処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記医用画像診断装置は、X線コンピュータ断層装置又は磁気共鳴イメージング装置であることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の医用画像診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−218220(P2011−218220A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173360(P2011−173360)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2006−188283(P2006−188283)の分割
【原出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2006−188283(P2006−188283)の分割
【原出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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