説明

医療用チューブの製造装置、製造方法および医療用チューブ

【課題】 一端部の硬さを設定通りにしながら正確な長さの医療用チューブを得ることのできる医療用チューブの製造装置、製造方法および医療用チューブを提供すること。
【解決手段】 硬度が変化する医療用チューブTPを製造するための医療用チューブの製造装置10を、成形機11と、引取機14と、エンコーダ17と、分光器18と、切断機15と、切断用コントローラ19とで構成した。成形機11は、硬度と色が異なる二つの成形材料の配合比を一定周期で変化させて硬度および色が一定周期で変化するチューブ16を成形する。エンコーダ17は、引取機14の駆動ローラ14cの回転に応じたパルスを発生し、分光器18は、チューブ16の色の特性を検出して原点を決定する。切断用コントローラ19は、分光器18が色の特性を検出して決定した原点と、エンコーダ17が発生するパルス数に基づいて切断機15を作動させてチューブ16を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩やかに硬度が変化する医療用チューブの製造装置、製造方法および医療用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療用チューブを成形するための材料として、種々の樹脂が用いられている。これらの樹脂からなる医療用チューブには、軟らかく柔軟性があるもの、硬いが挿入性に優れるとともに裂け難いものなどがあり、用途に応じていずれかの材料が選択される。しかしながら、どれもすべての点で優れたものではないため、異なる特性を備えた複数の材料で複数の層を形成することにより互いの欠点を補うようにした医療用チューブが用いられている。このような医療用チューブの中に、硬度が異なる複数の材料の配合比を変化させながら成形することにより得られる医療用チューブがある(例えば、特許文献1参照)。この医療用チューブ(カテーテル)を成形する際には、2以上の硬度の異なる材料の配合比を一定周期で変化させながら長いチューブを成形したのちに、最も軟らかい部分と最も硬い部分とを切断することが行われる。これにより、複数の医療用チューブが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−23398号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、前述したチューブを切断する方法では、単に長いチューブの最も軟らかい部分と最も硬い部分とを切断するようにしているため、得られる複数の医療用チューブの長さにばらつきが生じやすくなる。また、硬度の変化に応じて色を変化させることにより目視で硬さを確認できる医療用チューブもあるが、この場合も色の変化が緩やかであるため、正確な位置で切断することは難しい。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものでその目的は、一端部の硬さを設定通りにしながら正確な長さの医療用チューブを得ることのできる医療用チューブの製造装置、製造方法および医療用チューブを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用チューブの製造装置の構成上の特徴は、材料供給部(11a,11b)と成形金型(11c)とを備え、硬度および色が異なる二つの成形材料の配合比を一定周期で変化させながら二つの成形材料を材料供給部から成形金型に供給して硬度および色が一定周期で変化するチューブ(16,26)を成形する成形機(11)と、成形機の下流に配置され成形機から送り出されるチューブを引き取って下流側に搬送する駆動ローラ(14c,14d)を有するコンベア(14a,14b)からなる引取機(14)と、駆動ローラの回転速度に応じたパルスを発生するエンコーダ(17)と、引取機から下流側に搬送されるチューブの色の特性を検出する検出部(18a)と、チューブの原点として設定する位置の色特性を記憶する原点記憶部(18d)とを備え、検出部が色特性を検出したときに原点信号を発生する分光器(18)と、引取機の下流に配置され引取機から搬送されるチューブを順次切断して予め設定された長さの医療用チューブ(TP)にする切断機(15)と、分光器が原点信号を発生してからエンコーダが発生する任意のパルス数として設定された第1のパルス数と、さらにチューブが医療チューブの設定長さ分搬送されるまでにエンコーダが発生する第2のパルス数とを記憶する記憶部(19b)と、エンコーダが発生するパルス数が第1のパルス数になったときと、第2のパルス数になったときとに、切断機を作動させてチューブを切断する制御部(19a)とを含む制御装置(19)とを備えたことにある。
【0007】
本発明に係る医療用チューブの製造装置は、成形機によって成形された硬度および色が一定周期で変化するチューブを引き取って下流に搬送する引取機の駆動ローラの回転速度を検出し、その回転速度に応じたパルスを発生するエンコーダと、引取機から下流側に搬送されるチューブの色の特性を検出する分光器とを備えている。このため、まず、成形された長尺のチューブにおける一周期の中の所定位置の色を予め原点とする色として設定しておくことにより、成形されたチューブが分光器の検出部を通過するときに、分光器が原点となる色の特性を検出するとその位置をチューブの原点として認識できる。この場合の原点としては、色の変化が大きい部分を選択し、分光器の検出部が検出し易い位置に設定しておくことが好ましい。
【0008】
そして、分光器が原点を検出してからエンコーダが発生する任意のパルス数を、第1のパルス数として予め設定しておき、その第1のパルス数に基づいて切断機を作動させることにより医療用チューブの一端を切断できる。この場合、チューブは、硬度と色とが異なる二つの成形材料の配合比を一定周期で変化させながら成形されているため、チューブを構成する各部分の硬度と色とが一致するようになる。これによって、医療用チューブの一端は、色を一致させることにより硬度も一定になる。
【0009】
また、医療用チューブの長さは予め設定されているため、エンコーダによる駆動ローラの回転速度の検出により、分光器がチューブの原点を検出してから医療用チューブの他端が切断機の切断部に到達するまでにエンコーダが発生するパルス数も予め設定することができる。この場合、分光器が原点を検出してから医療用チューブの他端が切断機の切断部に到達するまでにエンコーダが発生するパルス数を第2のパルス数としている。すなわち、医療用チューブの長さに対応するパルス数は、第2のパルス数から第1のパルス数を差し引いた値になる。
【0010】
このため、医療用チューブの一端が切断された後に、第2のパルス数の発生に基づいて切断機を作動させることにより医療用チューブの他端を正確に切断できる。これによって、一端の色と硬さおよび全体の長さが均一になった複数の医療用チューブを得ることができる。なお、ここでいう医療用チューブの一端は、医療用チューブの搬送方向から見れば先端で、他端は後端になるが、得られた医療用チューブでの先端や後端とは異なる場合がある。なお、第2のパルス数が発生してチューブが切断されたのちに、再度、原点が検出したときに、エンコーダが発生するパルスのカウントは、リセットされて「0」となり、カウント数は最初からカウントされる。
【0011】
また、本発明に係る医療用チューブの製造装置の他の構成上の特徴は、検出部が検出する色の特性が、光をチューブに照射したときの反射光または透過光の強度を測定して、色度、反射率または透過率を数値として表したことにある。これによると、製造される各医療用チューブの一端の色と硬さとを正確に一致させることができる。この場合の反射率は、入射光に対する反射光の割合であり、透過率は、入射光の強度からチューブが吸収する光の強度を差し引いた強度を有する透過光の入射光に対する割合である。そして、色度は、明度を無視した色の特性であり、JIS Z8729で規格され「C*ab」の記号で表されるものである。また、反射率や透過率は、割合%で示される数値とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る医療用チューブの製造方法の構成上の特徴は、硬度および色が異なる二つの成形材料の配合比を一定周期で変化させながら二つの成形材料を成形金型に供給して硬度および色が一定周期で変化するチューブを成形する成形工程と、駆動ローラを有するコンベアでチューブを搬送する搬送工程と、駆動ローラの回転速度に応じたパルスをエンコーダに発生させるパルス発生工程と、搬送されるチューブの色の特性を分光器で検出することによりチューブの原点を決定する原点決定工程と、原点決定工程において原点が決定されてから、エンコーダが発生するパルス数が、任意のパルス数として設定された第1のパルス数になったときにチューブを切断する第1切断工程と、第1切断工程の後に、エンコーダが発生するパルス数が、チューブが医療チューブの設定長さ分搬送されるまでにエンコーダが発生する第2のパルス数になったときに、チューブを切断することにより設定長さの医療用チューブを得る第2切断工程とを備えたことにある。
【0013】
本発明に係る医療用チューブの製造方法では、成形工程で成形されたチューブを搬送するコンベアの駆動ローラの回転速度を検出し、その回転速度に応じたパルスをエンコーダに発生させるパルス発生工程と、搬送されるチューブの色の特性を分光器で検出してチューブの原点を決定する原点決定工程とが備わっている。このため、分光器が原点を検出してからエンコーダが発生する任意のパルス数を、第1のパルス数として予め設定しておき、その第1のパルス数に基づいて切断機を作動させることにより医療用チューブの一端を切断できる。
【0014】
また、医療用チューブの設定長さに、エンコーダが発生するパルスを対応させて、パルス数を求め、このパルス数に第1のパルス数を加算した値を、第2のパルス数として予め設定しておくことができる。そして、第1のパルス数の発生によりチューブが切断されたのちにエンコーダが第2のパルス数のパルスを発生したときに再度チューブを切断することにより医療用チューブの他端を正確に切断できる。これによって、一端の色と硬さおよび全体の長さが均一になった複数の医療用チューブを得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る医療用チューブの製造方法の他の構成上の特徴は、原点決定工程において、分光器が行う色の特性の検出が、光をチューブに照射したときの反射光または透過光の強度を測定して、色度、反射率または透過率を数値として表すことにある。これによると、製造される各医療用チューブの一端の色と硬さとを正確に一致させることができる。
【0016】
また、本発明に係る医療用チューブの構成上の特徴は、前述した医療用チューブの製造方法によって製造されることにある。これによると、一端の色と硬さおよび全体の長さについて均一な品質の複数の医療用チューブを得ることができる。また、本発明に係る医療用チューブは、内層が硬い成形材料からなり、外層が内層よりも軟らかい成形材料からなっていることが好ましいが、外層が内層よりも硬い成形材料からなっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る医療用チューブの製造装置の概略を示した構成図である。
【図2】医療用チューブを示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】医療用チューブの断面を示しており、(a)は図2(b)のa−a断面図、(b)は図2(b)のb−b断面図、(c)は図2(b)のc−c断面図である。
【図4】分光器が検出するチューブの長さと色度との関係を示したグラフである。
【図5】医療用チューブの製造装置の要部を示した構成図である。
【図6】チューブの切断位置を示した説明図である。
【図7】他の実施形態に係る医療用チューブを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る医療用チューブの製造装置10を示している。この医療用チューブの製造装置10は、成形機11と、冷却タンク12と、外径測定器13と、引取機14と、切断機15とを備えている。成形機11は、一対の押出機11a,11bからなる材料供給部と、成形金型11cとを備えている。図示は省略するが、成形金型11cには、押出機11a,11bにそれぞれ連通する材料供給路と、押出機11a,11bから供給される成形材料を成形するために通過させる成形通路と、成形されたチューブを外部に送り出す押出口とが備わっている。
【0019】
また、成形金型11cには、一方の押出機11aからは軟質の樹脂材料、例えば、軟質のポリウレタンからなる樹脂材料が成形材料として供給され、他方の押出機11bからは硬質の樹脂材料、例えば、硬質のポリウレタンからなる樹脂材料が成形材料として供給される。これらの成形材料は、180℃程度に加熱されて溶融した状態で成形金型11cに供給される。成形金型11cの成形通路は、内周側に形成された内周通路と外周側に形成された外周通路との二つの通路で構成されており、ともに後部(図1の右側)が大径で前部が小径になった円錐状に形成されている。そして、内周通路と外周通路とは、成形金型11cの前部で合流している。
【0020】
押出機11aに連通する材料供給路は、外周通路を介して押出口に連通しており、押出機11bに連通する材料供給路は、内周通路を介して押出口に連通している。このため、押出機11a,11bからそれぞれ成形金型11cに成形材料を供給して、押出加工を行うと、内層が硬質の成形材料からなり、外層が軟質の成形材料からなる2層のチューブが成形される。また、押出機11a,11bはそれぞれ成形材料の供給速度を変更することができ、これによって、硬質の成形材料と軟質の成形材料との配合比を変更できる。また、押出機11aから供給される軟質の成形材料には白色の着色が施され、押出機11bから供給される硬質の成形材料には青色の着色が施されている。このため、硬質の成形材料と軟質の成形材料との配合比を変更することにより成形されたチューブの色は白色から青色の間で変化する。
【0021】
図2(a),(b)は、成形機11によって成形されたチューブ16を示している。このチューブ16を成形する際には、最初は、押出機11aからだけ成形材料を成形金型11cに供給し、徐々に押出機11aから供給される成形材料を減少させながら押出機11bから供給される成形材料を増加させていく。そして、成形金型11cに供給される成形材料が押出機11bから供給される成形材料だけになると、徐々に押出機11bから供給される成形材料を減少させながら押出機11aから供給される成形材料を増加させていくといったことが繰り返される。
【0022】
このようにして成形されたチューブ16は、一定周期で硬さが変化しており、1周期には、軟質の成形材料が多い白色部16aと、軟質の成形材料と硬質の成形材料とが半々程度である中間部16bと、硬質の成形材料が多い青色部16cと、中間部16bとが順に並んで含まれており、この周期が繰り返し配置されるように形成されている。また、チューブ16の各部分の長さは適宜設定できるが、例えば、外径を5.0mm、内径を3.0mm、白色部16aの長さを200mm、中間部16bの長さを50mm、青色部16cの長さを200mmとすることができる。
【0023】
ただし、白色部16aと中間部16bとの間や中間部16bと青色部16cとの間等の各部分間には目視で認識できる境界があるのではなく、チューブ16は、全体として緩やかに色が変化している。そして、その色の変化にしたがって硬度も緩やかに変化している。また、図3(a)は、白色部16aのa−a断面を示しており、この場合、内層Bが薄肉で外層Wが厚肉に形成されている。図3(b)は、中間部16bのb−b断面、図3(c)は、青色部16cのc−c断面をそれぞれ示しており、中間部16b側から青色部16c側に行くにしたがって内層Bが厚くなり外層Wが薄くなっている。
【0024】
成形機11によって成形されたチューブ16は、引取機14によって引き取られるが、引取機14に到達する前に、まず、成形機11の下流に配置された冷却タンク12に送られる。冷却タンク12の内部には冷却水が貯留されており、成形金型11cの押出口から送り出されるチューブ16は冷却タンク12内を通過して冷却されたのちに下流側に送られる。チューブ16は、成形金型11cから送り出されるときには、200℃程度の温度になっているが、冷却タンク12を通過する際に、20℃程度に冷却される。これによって、チューブ16は、安定した変形し難い状態になる。
【0025】
冷却タンク12で冷却されたチューブ16は、冷却タンク12の下流に配置された外径測定器13によって、外径を測定される。この外径測定器13としては、例えば、レーザースキャンによってチューブ16の外径を測定する装置を用いることができる。この装置は、レーザー光を発信する発信器と受光器とを備えており、発信器が発信するレーザー光で受光器をスキャンすると受光器が受光して受光器に備わっている受光素子が電圧を発生する。このため、発信器と受光器との間にチューブ16が位置すると、レーザー光がチューブ16に妨げられている間、受光素子が発生する電圧が下がるため、電圧が下がった時間からチューブ16の外径を算出することができる。これによって、チューブ16の太さに異常が生じているか否かの検査をすることができる。
【0026】
引取機14は、前述したように、成形機11によって成形されたチューブ16を下流側に引き取る装置で、外径測定器13の下流に配置されている。この引取機14は、上下に対向して配置された一対のコンベア14a,14bで構成されており、コンベア14a,14bのそれぞれ下流側には駆動ローラ14c,14dが配置され、コンベア14a,14bのそれぞれ上流側には従動ローラ14e,14fが配置されている。コンベア14aは、駆動ローラ14cが、図1の状態で時計回り方向に回転することにより下部が上流側から下流側に移動するように作動し、コンベア14bは、駆動ローラ14dが、図1の状態で反時計回り方向に回転することにより上部が上流側から下流側に移動するように作動する。また、コンベア14a,14bは互いの間隔を調節可能に設置されており、チューブ16を上下から挟んで作動することによりチューブ16を引き取ることができる。
【0027】
切断機15は、引取機14の下流に配置されて引取機14から送られるチューブ16を切断する。切断機15は、移動可能な回転切断刃(図示せず)を備えており、チューブ16が切断位置に到達したときに、切断刃を回転させるとともに、チューブ16に対して進退させることによりチューブ16を切断する。また、医療用チューブの製造装置10には、前述した各装置の他、エンコーダ17、分光器18、本発明に係る制御装置としての切断用コントローラ19および引取用コントローラ21を備えている。
【0028】
エンコーダ17は、駆動ローラ14cの近傍に設置されており、駆動ローラ14cの回転を検出しその回転速度に応じたパルスを発生する。このエンコーダ17は、発光部と、受光部とを対向させて配置し、その間に、駆動ローラ14cの軸に取り付けられ発光部が発生する光を断続させるスリットが形成された円盤を配置して構成されている。そして、受光部が検知する円盤によって生じる光の断続に応じた数のパルスをエンコーダは出力する。このため、このパルス数を時間で割れば駆動ローラ14cの回転速度が求められ、回転速度と、駆動ローラ14cの直径とで搬送速度が求められる。これによって、引取機14が搬送するチューブ16の搬送距離をパルス数に置き換えて表すことができる。
【0029】
分光器18は、引取機14と切断機15との間に設置されており、光源と、光源から発生する光がチューブ16を照射したときのその反射光を受光する受光部とを備えた検出部18aと、分光器本体18bとで構成されている。受光部は、チューブ16からの反射光をスペクトル(波長成分)に分ける機能を備えている。スペクトルは、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順に並んでいるが、これらはそれぞれ波長の長さが異なり、波長の長い方から短い方に前述した順になっている。このため、波長から色を特定することができる。分光器本体18bは、検出部18aの測定結果を処理する処理部18cと、チューブ16の原点として設定する位置の色特性を記憶する原点記憶部18dとを備えている。処理部18cは、検出部18aが測定した各波長の光の強度から図4に示した関係を導き出す。
【0030】
図4の曲線は、チューブ16、すなわち青色を帯びた色の被検査物を測定した場合の波形を示しており、図4の横軸はチューブ16の長さを示し、図4の縦軸は、チューブ16の各部分における照射光に対する反射光から算出された色度を数値として示している。この色度は、JIS Z8729の規格に基づいて求められたもので、「C*ab」の記号で表されるものである。この値は、チューブ16の各部分によって異なり、チューブ16に形成された白色部16a、中間部16b、青色部16cおよび中間部16bの周期にしたがって、一定周期で変化する。この場合、曲線の下部側部分が白色で上部側部分が青色になる。
【0031】
また、処理部18cは、図4に「0」で示した位置の色の特性を、チューブ16の一定周期の原点として設定し、これを設定値として原点記憶部18dに記憶させる。この場合の原点は、色度が「8」になる位置で、チューブ16における色の変化が大きな位置である。この場合の原点は、チューブ16における色の変化が最も大きな位置に設定することが好ましい。なお、チューブに他の色を施した場合には、その波形は、図4に示した曲線とは異なる曲線になる。また、図示は省略するが、検出部18aの近傍には、チューブ16が振動することを防止する振動防止機構が設けられている。この振動防止機構としては、例えば、チューブ16における検出部18aの光源によって光を照射される部分を挟んで搬送方向の上流側と下流側とに、それぞれ一対のローラを配置した機構を用いることができる。
【0032】
この場合の各一対のローラはそれぞれ軸方向を水平にして上下に配置されて、一対のローラのそれぞれのローラ間にチューブ16が通るように構成されている。これによって、チューブ16の上下方向の移動が制限される。光源によるチューブ16への光の照射は、水平方向から行われる。なお、ローラの向きと光の照射方向とは逆にしてもよく、各一対のローラをそれぞれ軸方向を縦にして左右に配置し、光源によるチューブ16への光の照射を、垂直方向から行うようにしてもよい。また、検出部18aと、切断機15の切断刃との間の距離は、チューブ16から取り出される製品としての医療用チューブTP(図6参照)の長さよりも短く設定しておく。これによって、検出部18aと、切断機15との間の距離が長すぎてチューブ16の切断位置に誤差が生じることを防止できる。さらに、検出部18aと切断機15との間には、チューブ16を内部に通して直線状に維持させるための円筒状のガイド部を設けておく。これによって、チューブ16の搬送に直進性がでる。
【0033】
切断用コントローラ19は、図5に示したように、CPU19a、記憶部19bおよびタイマ19cを備えている。この切断用コントローラ19は、接続配線を介して、エンコーダ17、分光器18の分光器本体18bおよび切断機15の駆動部(図示せず)に接続され、エンコーダ17および分光器本体18bから送られる信号に基づいて切断機15の作動を制御する。記憶部19bには、CPU19aが実行するためのプログラムが記憶されるとともに、CPU19aによるプログラムの実行時に一時的に各種のデータが記憶される。
【0034】
記憶部19bが記憶するデータには、分光器18が原点を検出してからエンコーダ17が発生する任意のパルス数として予め設定した第1のパルス数、医療用チューブTPの設定長さに対応するパルス数と第1のパルス数とを加算した第2のパルス数、エンコーダ17が検出する回転速度の検出値および経過時間等が含まれる。第1のパルス数は、任意に設定されるが、検出部18aと切断機15の切断刃との間の距離に対応するパルス数として設定してもよい。なお、CPU19aは、記憶部19bに記憶されたプログラムにしたがって切断機15の作動を制御する。このCPU19aで本発明に係る制御部が構成され、記憶部19bで本発明に係る記憶部が構成される。また、引取用コントローラ21は、CPU、ROM、RAMおよびタイマを備えており、適宜、引取機14の搬送速度を制御したり、コンベア14a,14bの間隔を調節する制御をしたりする。
【0035】
このように構成された医療用チューブの製造装置10を用いて、医療用チューブTPを成形する場合には、まず、押出機11aに軟質のポリウレタン樹脂からなる成形材料を投入するとともに、押出機11bに硬質のポリウレタン樹脂からなる成形材料を投入する。つぎに、成形金型11cを200℃程度に加熱したのちに、押出機11a,11bに投入した成形用材料をそれぞれ200℃程度に加熱しながらスクリューで送り出して、成形金型11cに供給する。この場合、押出機11aから供給する成形材料と、押出機11bから供給する成形材料との配合比を一定周期で変更しながら2種類の成形材料を成形金型11cに供給する。これによって、2層からなり、硬度が一定周期で滑らかに変化するチューブ16が成形金型11cの押出口から外部に押し出される。
【0036】
外部に押し出されたチューブ16の先端部は、引取機14のコンベア14a,14b間に配置され、チューブ16は、引取機14によって引き取り可能な状態になる。そして、押出機11a,11bと引取機14とを同期して作動させ、一定速度で成形され成形金型11cから出て行くチューブ16を引取機14が引き取っていく。その間、チューブ16は、冷却タンク12内を通過して冷却されたのちに、外径測定器13によって、外径を測定される。そして、チューブ16は、引取機14を通過して、切断機15の切断位置に到達したときに、切断機15の作動により切断される。
【0037】
このときのチューブ16の切断位置は、例えば、図6に示したように設定することができる。図6において、線が施されていない部分は白色部16a、縦線が施された部分は中間部16b、横線が施された部分は青色部16cをそれぞれ示しており、「切断1」はそれぞれ医療用チューブTPの一端となる位置を示し、「切断2」は、医療用チューブTPの他端となる位置を示している。
【0038】
図4に示したように、例えば、曲線が下り傾斜になるときに、値「8」になる位置を原点「0」として選んだ。これによると、原点「0」と次の原点「0」との間を1周期として、この周期が略同じ長さで繰り返されていく。そして、この1周期の中に、1つの医療用チューブTPと1つの廃棄チューブTN(図6参照)とが位置するようになる。ここで、エンコーダ17が発生する第1のパルス数に対応する点が「切断1」となる。
【0039】
そして、「切断2」は、「切断1」から医療用チューブTPの設定長さ分離れた位置であり、予め決定されている。このようにして求められた「切断1」および「切断2」の位置が図6に示されている。この「切断1」と「切断2」との間の距離は、前述した第2のパルス数から第1のパルス数を引いた値に対応する。また、第1のパルス数および第2のパルス数は、記憶部19bに記憶されている。
【0040】
分光器18は、順次送られてくるチューブ16の色の特性を検出する。そして、分光器18は、値「8」に対応する色の特性を検出すると、最初の原点「0」の位置に対応する原点信号を切断用コントローラ19に発信する。これによって、CPU19aは、エンコーダ17が発生するパルスのカウントを開始し、カウントしたパルスの数が第1のパルス数になったときに切断機15を作動させる。これによって、チューブ16は「切断1」の位置で切断される。つぎに、CPU19aは、チューブ16が「切断1」の位置で切断された後に、カウントしたパルスの数が第2のパルス数になったときに切断機15を作動させる。これによって、チューブ16は「切断2」の位置で切断され、医療用チューブTPが得られる。
【0041】
そして、再度、分光器18が値「8」に対応する色の特性を検出すると、次の原点「0」の位置に対応する原点信号を切断用コントローラ19に発信する。そして、切断用コントローラ19がこの原点信号を受信すると、カウントしたパルス数をリセットして前述した処理が行われ、次の医療用チューブTPが得られる。医療用チューブTPの他端とつぎの医療用チューブTPの一端との間に位置する部分は廃棄チューブTNとして廃棄される。この場合、チューブ16に含まれる各1周期の長さにばらつきが生じていれば、廃棄チューブTNの長さがそのばらつきに応じた長さになり、医療用チューブTPの長さは一定のままになる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る医療用チューブの製造装置10は、引取機14の駆動ローラ14cの回転速度に応じたパルスを発生するエンコーダ17と、引取機14の下流側に搬送されるチューブ16の色の特性を検出する分光器18とを備えている。このため、チューブ16における原点とする色に対応する値を予め設定しておくことにより、分光器18がその原点となる色の特性を検出したときにその位置をチューブ16の1周期の原点になる位置として認識できる。
【0043】
そして、任意の第1のパルス数と、医療用チューブTPの設定長に対応する第2のパルス数を予め設定しておき、エンコーダ17が発生するパルス数がそれらの設定値になったときに、切断機15を作動させることにより医療用チューブTPの一端と他端とを正確に切断することができる。これによって、一端の色と硬さおよび全体の長さが均一になった複数の医療用チューブTPを得ることができる。また、分光器18が検出する色の特性が、光をチューブ16に照射したときの反射光を測定して数値として表したものであるため、各医療用チューブTPの一端の色および硬さを正確に一致させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、チューブ16の原点が、硬度の小さな白色部16aの中に設定されている。このため、硬い部分から軟らかい部分に移行する成形の際に細くなり易い部分は廃棄チューブTNとして廃棄することができる。さらに、分光器18の検出部18aの近傍には、チューブ16が振動することを防止する振動防止機構が設けられているため、チューブ16が振動することを防止でき、分光器18による測定をより正確に行える。また、また、検出部18aと、切断機15の切断刃との間の距離は、医療用チューブTPの長さよりも短く設定されているため、切断機15が「切断1」および「切断2」でチューブ16を切断する際の位置誤差が生じ難くなる。
【0045】
なお、本発明は、前述した各実施形態に限るものでなく適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、チューブ16として単純な管状の形状のものを成形しているが、図7に示した、外層26a、内層26bおよび隔壁部26cからなるチューブ26を、図3に示したチューブ16と同様に配合比を変えながら成形することもできる。また、軟質の成形材料と、硬質の成形材料とにそれぞれ硬度の異なるポリウレタン樹脂を用いているが、これらの成形材料としては、他の樹脂材料を用いることができる。
【0046】
例えば、軟質の成形材料としては、SEBSブレンド材料(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリプロピレン、ポリウレタンおよび鉱物油を混合した成形材料)、ナイロン、ポリ塩化ビニル等を用いることができる。要は、成形材料としては、硬度が異なり、かつ相溶性を有する2つの樹脂材料を用いていればよい。また、チューブ16に施す色も青に限らず、どのような色を施してもよい。さらに、チューブ16の各部分のサイズも適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0047】
10…医療用チューブの製造装置、11…成形機、11a,11b…押出機、11c…成形金型、14…引取機、14c…駆動ローラ、15…切断機、16,26…チューブ、17…エンコーダ、18…分光器、18a…検出部、18d…原点記憶部、19…切断用コントローラ、19a…CPU、19b…記憶部、TP…医療用チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料供給部と成形金型とを備え、硬度および色が異なる二つの成形材料の配合比を一定周期で変化させながら前記二つの成形材料を前記材料供給部から前記成形金型に供給して硬度および色が一定周期で変化するチューブを成形する成形機と、
前記成形機の下流に配置され前記成形機から送り出される前記チューブを引き取って下流側に搬送する駆動ローラを有するコンベアからなる引取機と、
前記駆動ローラの回転速度に応じたパルスを発生するエンコーダと、
前記引取機から下流側に搬送されるチューブの色の特性を検出する検出部と、前記チューブの原点として設定する位置の色特性を記憶する原点記憶部とを備え、前記検出部が前記色特性を検出したときに、原点信号を発生する分光器と、
前記引取機の下流に配置され前記引取機から搬送される前記チューブを順次切断して予め設定された長さの医療用チューブにする切断機と、
前記分光器が原点信号を発生してから前記エンコーダが発生する任意のパルス数として設定された第1のパルス数と、さらに前記チューブが前記医療チューブの設定長さ分搬送されるまでに前記エンコーダが発生する第2のパルス数とを記憶する記憶部と、前記エンコーダが発生するパルス数が前記第1のパルス数になったときと、前記第2のパルス数になったときとに、前記切断機を作動させて前記チューブを切断する制御部とを含む制御装置とを備えたことを特徴とする医療用チューブの製造装置。
【請求項2】
前記検出部が検出する色の特性が、光を前記チューブに照射したときの反射光または透過光の強度を測定して、色度、反射率または透過率を数値として表したものである請求項1に記載の医療用チューブの製造装置。
【請求項3】
硬度および色が異なる二つの成形材料の配合比を一定周期で変化させながら前記二つの成形材料を成形金型に供給して硬度および色が一定周期で変化するチューブを成形する成形工程と、
駆動ローラを有するコンベアで前記チューブを搬送する搬送工程と、
前記駆動ローラの回転速度に応じたパルスをエンコーダに発生させるパルス発生工程と、
搬送されるチューブの色の特性を分光器で検出することにより前記チューブの原点を決定する原点決定工程と、
前記原点決定工程において前記原点が決定されてから、前記エンコーダが発生するパルス数が、任意のパルス数として設定された第1のパルス数になったときに前記チューブを切断する第1切断工程と、
前記第1切断工程の後に、前記エンコーダが発生するパルス数が、前記チューブが前記医療チューブの設定長さ分搬送されるまでに前記エンコーダが発生する第2のパルス数になったときに、前記チューブを切断することにより設定長さの医療用チューブを得る第2切断工程と
を備えたことを特徴とする医療用チューブの製造方法。
【請求項4】
前記原点決定工程において、前記分光器が行う色の特性の検出が、光を前記チューブに照射したときの反射光または透過光の強度を測定して、色度、反射率または透過率を数値として表すものである請求項3に記載の医療用チューブの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の医療用チューブの製造方法によって製造される医療用チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75524(P2012−75524A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221521(P2010−221521)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000228888)日本コヴィディエン株式会社 (170)
【Fターム(参考)】