説明

医療画像の利用可能性を自動的に改善するための方法およびシステム

医療画像の利用可能性を自動的に改善する方法が開示されている。少なくとも1つの強度パラメータ、例えば輝度または強度を自動的に制御し、強度データのアレイのうちの少なくとも一部のエントロピーを大きくすることにより、強度データのアレイを含む入力医療画像を改善する。よって、特に軟質組織内の種々の部分の強度解像度の顕著な改善が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医療画像の利用可能性を自動的に改善するための方法およびシステムに関し、更に本発明は、かかる方法の種々の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
医療画像は、膨大な数の異なる医療方法および治療で使用されている。例えば腫瘍、血管の変形および脳における同様な障害の神経外科治療を準備し、これを行うときに、医療画像を使用することは公知である。このタイプの応用に対し、一般に目標となるる空間の二次元または三次元の可視化および投与薬の分布だけでなく、撮像技術、例えばコンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)および血管造影撮像などの撮像技術によって得られる脳の断層画像の蓄積を可能にするコンピュータプログラム、例えば市販されているガンマプラン(GammaPlan)プログラムを使用することは一般的なことであり、このプログラムでは、照射ポイントの選択を手動で実行できる。更に、自動化されたツール、例えば手術プラニングシステム、例えばレクセルサージプラン(Leksell SurgiPlan)を使用することも知られている。しかしながら、他の多くの分野でも医療画像が使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療画像、例えばCT画像およびMR画像からの有効な情報を推定する上での共通する問題は、通常の強度のレンジが極めて広いということである。例えばCT画像の強度レンジは一般に約4000ハウンズフィールド(Hounsfield)であり、このハウンズフィールドは空気から極めて高密度の部分、例えば骨および骨格部分までの範囲であり、他方、軟質組織は通常、これら部分の間の密度の変動がより少ないため、一般に約100ハウンズフィールドの極めて狭い強度範囲に撮影される。しかしながら、多くのタイプの手術および治療に対する主要または単独の関心は、軟質組織の種々の部分の間の差異にあるが、このような差異を知ることは、ほとんどの医療画像からは極めて困難なこととなっている。
【0004】
従って、かかる画像から軟質組織に関する医療上有益な情報を推定するためには、画像の強度のパラメータ、特に輝度およびコントラストを正しく制御し、画像のグレイスケールのウィンドーを有効なレンジに制限することが最も重要なことである。同時に、有効なデータが失われないように強度パラメータを制御することも重要である。しかしながら、強度パラメータをこのように適正に制御することは困難であり、面倒で、かつ時間のかかる作業であり、オペレータの高度な技術を必要とする。各画像の質および有効性は担当のオペレータの個々の技能に極めて大きく依存するので、担当のオペレータによって極めて異なる結果となることがある。更に、人が誤りを犯す危険性が高い結果、医者にも問題が生じ、治療を受ける患者に対する健康への危険性も高まる。
【0005】
入力情報として、医療画像を使用する異なるツール、例えば上記ガンマプランおよびレクセルサージプランによって得られる結果の質および有効性は、画像の画質および種々の軟質組織部分を区別できる能力に大きく依存する。
【0006】
更に、医療画像から有効かつ医療上適切な情報を推定する際に頻繁に使用される技術は、画像を組み合わせること、いわゆる画像をマージしたり、または相互整合を行うことがある。これらの技術は、特に異なるタイプの画像、例えばCT画像とMR画像とを組み合わせるために使用できる。しかしながら、正しい同時位置合わせを行うには、類似性に関する計量値を計算しなければならず、これを行うには、画像に対する適当な強度パラメータが分かっていなければならない。従って、このような用途でも、画像にされた軟質組織に対応する当該画像部分の良好な強度の解像度を提供することが最も重要なことである。
【0007】
同じ条件は、他の多くのタイプの医療に関連した画像分析および画像操作、例えばセグメント化およびパターン認識にも適用される。
【0008】
従って、医療画像の利用可能性を自動的に改善するというニーズが存在する。
【0009】
(発明の概要)
従って、本発明の目的は、医療画像の有効可能性を自動的に改善するための方法、システムおよびコンピュータソフトウェアを提供することにある。
【0010】
この目的は、特許請求の範囲に記載の方法、システムおよびコンピュータソフトウェアによって達成される。本発明はこの新規な方法を使用するための所定の用途にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の様相によれば、本発明は、医療画像の利用可能性を自動的に改善する方法であって、強度データのアレイを含む医療画像を入力信号として提供するステップと、強度データのアレイのうちの少なくとも一部のエントロピーを高めるよう、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御するステップと、改善された医療画像として強度データの処理されたアレイを提供するステップとを備えた方法に関する。
【0012】
この方法によれば、医療画像、例えばCTおよびMR画像の利用可能性を自動的に改善できる。画像の少なくとも所定部分におけるエントロピーを高めることにより、強度の解像度および、例えば表示された軟質組織の異なる部分を区別できる可能性が大幅に改善される。しかしながら、全プロセスにわたって画像データは変化していないままであるので、この方法を医療上信頼できるものにできる。更にこの方法は、例えばどんな対象が表示されているか、画像がどのように作成されたかに関する、画像に関する特定の知識を予め必要としない。むしろ逆にこの方法は、入力画像にかかわらず、画像の追加的情報を持っていなくても医療上の利用可能性を自動的に改善できる。
【0013】
更に、上記利点とは別に、本発明を極めて短時間で、かつコスト的に有効に実現することも可能である。
【0014】
画像の改善を自動的に実行できるので、オペレータに対し、特定の技能は必要とされない。更に、最終結果はオペレータには少なくとも相対的に依存しないので、極めて信頼性があり、安全な最終結果が得られ、よって人が誤りを犯す恐れが解消され、患者に対する医療上の危険性が生じない。
【0015】
更に、改善された医療画像によって、かかる画像を使用する方法はより効果的、かつより信頼できるものとなっている。
【0016】
本願では、医療画像を人または動物の体の一部を示すデータのアレイに対する名称として使用する。これら画像は種々の方法、例えばディスプレイおよびプリントアウトによりユーザーに提示できる。更に、画像はスタティックでもダイナミックでもよい。例えば画像は、特定の時間におけるステータスの表示でもよいし、または好ましくはリアルタイムで連続的に更新してもよい。
【0017】
本願での利用可能性は画像の医療上の有効性、特に診断または治療用途における有効性に関連したものである。
【0018】
エントロピーは、本願では画像、好ましくはデジタル画像の認識可能な情報コンテントの尺度または定量化のための単位名称である。例えば、本願ではエントロピーの推定を行うためにC.シャノンによって提案された情報エントロピー推定理論を使用できる。より大きいエントロピー値は画像内のより大きい認識可能な情報コンテントに対応する。
【0019】
エントロピーH[X]は、事後または条件エントロピーH[X/Y](このエントロピーはYの知識で提供されたXにおける不確定性として記述できる)と混同しないように、「Xにおける不確定性」として記述できる。
【0020】
好ましい実施例において、本発明は、例えば3つ以上のモードを含むことができる、画像に対する強度レンジを探すためにエントロピーを使用するものである。このことは、全強度エリアのサブレンジに対するエントロピーを決定することによって行うことができる。この結果得られる画像は、最大のエントロピーを提供するサブレンジ、またはこのサブレンジに関連するサブレンジを含むことが好ましい。従って、画像に対する全強度レンジのうちのサブレンジに対してエントロピーが計算され、このサブレンジの境界が定められると、このサブレンジ内で解像度が高まり、この結果、不確定性/エントロピーが高まる(従って、出力画像の観察者に対し、より多くの情報を提供できる)。これと同時に、このサブレンジ外の画像コンテントに対し、不確定性/エントロピーが低下する。従って、これら2つの効果をバランスさせるのにエントロピーが使用される。
【0021】
入力医療画像は、コンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、血管造影撮像、X線撮像、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)、単一フォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)、機能磁気共鳴撮像(fMRI)および超音波撮像のうちの少なくとも1つによって発生することが好ましい。
【0022】
自動的に制御すべき少なくとも1つの強度パラメータは、輝度およびコントラストのうちの少なくとも1つ、好ましくはそれらの双方であることが好ましい。
【0023】
自動的に制御すべき強度パラメータは、強度データの前記アレイのグレイスケールウィンドーを縮小するように制御することが好ましい。例えば、CT画像のグレイスケールウィンドーは、500ハウンズフィールド未満、好ましくは250ハウンズフィールド未満、最も好ましくは約100ハウンズフィールドのレンジに制御できる。
【0024】
グレイスケールを縮小する機能上の結果は、画像エリアのダイナミックレンジを高めることである。従って、カラーのばらつきが極めて限られた、例えばダークグレイからライトグレイまでのレンジ内で変化する画像エリアは、グレイスケールが縮小される際により広いダイナミックレンジに拡張され、例えば全黒色と全白色との間および、これらの間のあらゆるニュアレスごとに変化する。
【0025】
しかしながら、制御すべき強度パラメータを強度データのアレイ内の強度データ値に影響するパラメータとすることができる。前記強度パラメータは、例えばグレイスケールウィンドーを制御することにより、輝度および/またはコントラストを直接または間接的に影響できることが好ましい。
【0026】
本願において、ハウンズフィールドは特にCT撮像のために使用される水を0とした場合の、約−1000(空気)から約+1000(骨)までのスケールにおける放射線(例えばX線)の減衰の正規化されたインデックスの名称として示される単位である。
【0027】
強度データのアレイのうちの前記少なくとも一部のエントロピーを最適にするように、前記少なくとも1つの強度パラメータを自動制御することが好ましい。しかしながら、所定の条件が満たされるまでエントロピーを自動的に高めることも可能である。例えばスレッショルド値を越えるようにエントロピーを増加することができる。更に、最大に達成可能な値よりも若干少なくなるよう、例えば最大値の90%となるようにエントロピーを制御できる。
【0028】
エントロピーの最適化は他の1つまたは数個の条件が満たされるという前提のもとでも行うことができる。例えばグレイスケールウィンドーが少なくとも所定のレンジ内にあるか、または所定の値よりも低い下限値および/または所定の値よりも高い上限値を有するという二次的な条件のもとで、エントロピーを最適化できる。
【0029】
エントロピーEを最大に、または実質的に最大にすることにより、すなわちmax[E]とすることにより、強度データのアレイのうちの前記少なくとも一部のエントロピーを最適にし、エントロピーは、次の式で推定される。
【0030】
【数1】

【0031】
ここで、1...Nに対するH(w)1...Nは強度パラメータwに対して計算された画像I(x)のヒストグラムであり、Nはヒストグラムにおけるビン(bin)の数である。
【0032】
エントロピーの上記推定値は、エントロピーのシャノンの概念に対応する。しかしながら、他のエントロピーの概念も使用できる。例えばエントロピーEを次のように推定できるように、レニイ(Renyi)のエントロピーの概念も使用できる。
【0033】
【数2】

【0034】
他の可能性は、エントロピーのハブルダ−シャルヴァ(Havrda−Charvat)の概念を使用することであり、この概念に基づくと本発明におけるエントロピーを次のように推定できる。
【0035】
【数3】

【0036】
上記エントロピーの定義におけるNは改善された医療画像に対して必要とされるグレイスケールの値の数として選択されることが好ましい。この値は、例えば所定のメディア上、対して使用すべき所定のディスプレイまたはプリンタに再現するのに可能なグレイスケール値の数または人の眼によって区別できるグレイスケールの値の数とすることができる。
【0037】
上記エントロピーを推定する上で、wは上の値および下の値を有するものとして定義することが好ましく、ここで、wは上の値および下の値を有するものとして定義され、ビンH(w)に対して値I(x)<下の値が割り当てられ、ビンH(W)に対して値I(X)>上の値が割り当てられている。
【0038】
少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御する前記ステップは、表示された対象の所定のサブセットに対応する、好ましくは当該表示された構造、例えば軟質組織に対応する強度データのアレイのうちの一部のエントロピーを高めるようになっている。よって、このように選択された強度の解像度および医学的に重要な部分を大幅に増加することが可能である。どの部分を選択するかは自動的に行うこともできるし、またはマニュアルで制御することも可能である。しかしながら、画像の全エントロピーも高めるように強度パラメータを制御することも可能である。
【0039】
本発明の別の様相によれば、本発明は、医療画像の利用可能性を自動的に高めるためのシステムであって、強度データのアレイを含む医療画像を提供するための入力手段と、強度データのアレイの少なくとも一部のエントロピーを高めるように、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御するための手段と、こうして改善された強度データのアレイを、改善された医療画像として提供するための出力手段とを備えたシステムに関する。
【0040】
本発明のこの様相によれば、第1の様相に関連してこれまで説明したものと同様な利点が得られる。
【0041】
本発明の別の様相によれば、本発明は、強度データのアレイを含む医療画像を入力信号として提供するステップと、強度データのアレイの全エントロピーを高めるよう、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御するステップと、強度データのこのように処理されたアレイを改善された医療画像として提供するステップを実行するためのコンピュータコードを備えた、医療画像の利用可能性を自動的に改善するためのコンピュータプログラムに関する。本発明の更に別の様相によれば、本発明は上記コンピュータプログラムを含むデータキャリアに関する。
【0042】
本発明のこれら様相によれば、第1の様相に関連してこれまで説明したものと同様な利点が得られる。
【0043】
本発明は、種々の用途、すなわち画像処理、例えば画像マージまたは相互整合、セグメント化またはパターン認識のための医療画像を作成するための方法、自動化された治療のプラニング、好ましくは神経外科治療のプラニングのための医療画像を作成するための、治療中のリアルタイムのモニタおよび/または制御、および好ましくは神経外科治療のために医療画像を作成するための上記方法の使用法に関する。
【0044】
以下説明する実施例を参照すれば、本発明の上記およびそれ以外の特徴が明らかとなろう。
例示するために、添付図面に示された実施例を参照し、以下、本発明についてより詳細に説明する。
【実施例】
【0045】
(好ましい実施例の説明)
例により目的をより詳細に提示するための次の記載で、本発明について説明する。
【0046】
まず図1を参照する。一実施例にかかわる医療画像の利用可能性を自動的に改善するための方法は次のステップを含む。第1ステップS1において、処理手段、例えばコンピュータ、好ましくは従来のパソコンに医療画像が入力される。
【0047】
この医療画像は強度データのアレイを備えたデジタル画像であることが好ましい。しかしながら、アナログ医療画像を使用することも可能であり、この場合、当業者に知られているように、アナログ画像情報を強度データのデジタルアレイに変換するための追加変換ステップS2を使用することができる。画像は種々の方法、例えばCTおよびMR撮像で提供できるが、入力画像を得るために基本的には公知の任意の医療撮像技術を使用できる。例えば血管造影、X線撮像、PET、SPECT、fMRIおよび超音波撮像により入力画像を提供することを実現することもできる。
【0048】
その後、下記により完全に説明するように、ステップS3においてデジタル画像のエントロピーを推定する。
【0049】
その後、最適化ステップS4において、より高いエントロピーの値を得て、好ましくは所定の状況において、最大の達成可能なエントロピー値を得るように、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御する。制御する強度パラメータは、輝度およびコントラストのうちの少なくとも1つであることが好ましく、その双方であることが最も好ましい。しかしながら、このパラメータの別の値または相補的な値として、他の強度パラメータと同じよう制御できる。強度データの前記アレイのグレイスケールウィンドーを縮小するように強度パラメータを制御することが好ましい。例えばCT画像のグレイスケールウィンドーは500ハウンズフィールド未満、好ましくは250ハウンズフィールド未満、最も好ましくは約100ハウンズフィールドの範囲まで制御できる。
【0050】
最適化されたデータアレイはその後、ステップS5において改善された出力医療画像として使用される。
【0051】
次に図2を参照し、エントロピーの推定および強度パラメータの最適化のためのプロセスについてより完全に説明する。エントロピーとは、画像または信号における情報コンテントの尺度である。本明細書では白黒画像に関してエントロピーを説明するが、当然ながらカラー画像についても同じようなアプローチを使用できる。エントロピーEは種々の方法で定義できる。例えばエントロピーのシャノンの定義を使用できる。この場合、医療画像のエントロピーの推定は次のように行うことができる。
【0052】
まずステップS31において、ヒストグラム内のビン(bin)の数Nを選択する。Nは使用される表示手段、例えばディスプレイまたはプリンタによって表示できるか、または眼が解像できるグレイスケール値の数に対応するように選択することが好ましい。ステップS32において、強度パラメータW=(下の値、上の値)の初期の組を定める。その後、次に説明するように、エントロピーを最適にするように強度パラメータを制御する。次に入力画像I(x)および強度パラメータWに対してヒストグラムH(w)1...Nを計算する。ここで、ビンH(w)に対して値I(x)<下の値が割り当てられ、ビンH(w)に対して値I(x)>上の値が割り当てられる(ステップS33)。
【0053】
次に、H(w)がそのビンに属す画像の値I(x)の確率となるようにH(w)1...Nを正規化する(ステップS34)。
【0054】
次に、下記のようにエントロピーを計算できる(ステップS35)。
【0055】
【数4】

【0056】
次にエントロピーが所定の条件に一致するか、例えば最適化された条件、最適に達成できる条件のうちの少なくとも90%であるか、所定の予め設定された値より上であるか、などをテストする(ステップS41)。そうでない場合、wを調節し、ステップS32からのプロセスを繰り返す(ステップS42)。
【0057】
次に説明するような強度値を自動制御するために、エントロピーEを最大にするようにグレイスケールウィンドーI(w)を最適化することが好ましい。この最適化プロセスは多くの異なる態様で実行できる。例えば制御すべき強度パラメータの可能な値ごとに、またはいくつかのパラメータを同時に制御するケースでは、値の可能な組み合わせごとにエントロピーを計算し、最大のエントロピーを与えるパラメータの値を選択することが可能である。しかしながら、種々の最適化アルゴリズム、例えば繰り返し最適化方法を使用することも可能であり、かかる数種の自動化最適化方法は当業者には公知のものであろう。例えば次の最適化方法:すなわちシミュレートされたアニーリング、エボリューションアルゴリズム、ジェネティックアルゴリズム、シンプレクス(simplex)方法、ダイレクションセット方法、共役勾配方法(conjvgate gradient method)および準ニュートン方法のうちの1つまたはいくつかを使用することも可能である。
【0058】
上で説明した方法は、上に関連したステップを実行するためのコンピュータコードを含むコンピュータプログラムとして実現することが好ましい。コンピュータプログラムは任意のタイプのデータキャリア、例えばRAM、ROM、CD、DVD、フラッシュメモリなどに記憶できる。
【0059】
この方法は、医療画像を入力するための入力手段により、データ処理装置、例えば汎用コンピュータで実行できる。入力手段はモバイルデータ記憶装置、例えばディスクリーダー、スキャナ、ネットワーク接続、撮像デバイスに接続すべきポートまたは同様な手段とすることができる。更に、装置には改善された医療画像として強度データの改善されたアレイを提供するための出力手段も設けられる。出力デバイスとして、ディスプレイ、プリンタ、データ記憶装置データを記憶するためのライター、および好ましくはモバイルデータ記憶装置例えばCD−ROMライターなどを挙げることができる。画像データ処理はソフトウェアで実現できることが好ましいが、特別な専用ハードウェアにおいてソフトウェアの少なくとも一部を実現することも可能である。更に上記部分は単一ユニットに含まれてもよいし、または上記部分は分散された相互接続部分を含んでもよい。しかしながら、この方法は特別な機器、例えば超音波装置、X線装置などで実現することもできる。
【0060】
上記方法の結果得られる出力された医療画像は種々の用途および特に異なるタイプの自動化された治療またはマニュアルによる治療、および診断方法のために使用できる。例えば出力画像は、本願出願人による国際特許第WO00/42928号(この特許明細書を参考例として援用する)に開示されているような、ステロ−手術器具を制御するのに使用でき、よって出力画像は切開プロセス中に組織の破壊された容積を測定するのにも使用できる。しかしながら、新しい方法では、他のタイプの手術、特に神経外科、例えば前記治療中のリアルアイムのモニタおよび/または制御のためにも使用できる。
【0061】
医療画像の利用可能性を改善するための上記方法は、特に自動化された治療プランで使用すべき画像を作成するのに、好ましくは本願出願人による国際特許第WO98/57705号(この特許明細書の内容を参考例として援用する)に開示されているような神経手術治療のプラニングのためにも有効である。
【0062】
改善された医療画像は他のタイプの、または自動化された方法のための画像を作成するための、他のタイプの用途にも使用できる。例えば前記画像は画像処理、例えば画像マージまたは相互整合、セグメント化またはパターン認識のための医療画像を作成するのにも使用できる。
【0063】
図3〜5には本発明の用途の例が示されている。図3aでは、1.907の初期エントロピーを有する入力画像が示されており、上記のように処理された後に、図3bに示されるように3.034のエントロピーを有し、従って軟質組織部分の視覚性および強度解像度が明らかに増感された出力画像が得られる。同様に、図4aは1.335の初期エントロピーを有する入力画像を示し、図4bは3.155のエントロピーを有する改善された画像を示し、図5aでは入力画像は3.610の初期エントロピーを有するが、改善された画像は4.002のエントロピーを有する。
【0064】
以上で、本発明の特定の実施例について説明した。しかしながら、当業者には明らかなように、いくつかの別の実施例が可能である。例えばエントロピーを推定するための種々の方法を実現することが可能であり、多くの異なる方法で最適化を実行できる。
【0065】
上記およびそれ以外の明らかな変形例は特許請求の範囲に定められるような本発明の範囲内に入るものと見なすべきである。上記実施例は発明を限定するものではなく、発明を説明するためのものであり、当業者であれば、特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの別の実施例を想到できると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係わる方法の一実施例の該略図である。
【図2】本発明の一実施例に係わる医療画像のエントロピーを推定するためのプロセスの該略図である。
【図3】本発明に係わる処理前の画像の例を示す。
【図4】本発明に係わる処理前の画像の例を示す。
【図5】本発明に係わる処理前の画像の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療画像の利用可能性を自動的に改善する方法において、
強度データのアレイを含む医療画像を入力信号として提供するステップと、
強度データのアレイのうちの少なくとも一部のエントロピーを高めるよう、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御するステップと、
改善された医療画像として強度データの処理されたアレイを提供するステップとを備えた方法。
【請求項2】
自動的に制御すべき少なくとも1つの強度パラメータが、輝度およびコントラストのうちの少なくとも1つ、好ましくはそれらの双方である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
強度データの前記アレイのグレイスケールウィンドーを縮小するように、前記自動的に制御すべき少なくとも1つの強度パラメータを制御する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記グレイスケールウィンドーを500ハウンズフィールド未満、好ましくは250ハウンズフィールド未満、最も好ましくは約100ハウンズフィールドのレンジに制御する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
強度データのアレイのうちの前記少なくとも一部のエントロピーを最適にするように、前記少なくとも1つの強度パラメータを自動制御する、前の請求項のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
エントロピーEを最大に、または実質的に最大にすることにより、すなわちmax[E]とすることにより、強度データのアレイのうちの前記少なくとも一部のエントロピーを最適にし、エントロピーが次の式で推定される。
【数1】


ここで、H(w)1...Nは強度パラメータwに対して計算された画像I(x)のヒストグラムであり、Nはヒストグラムにおけるビンの数である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
Nは改善された医療画像に対して必要なグレイスケールの値の数に選択されたものである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
wは上の値および下の値を有するものとして定義され、ビンH(w)に対して値I(x)<下の値が割り当てられ、ビンH(W)に対して値I(X)>上の値が割り当てられている、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
入力医療画像がコンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、血管造影撮像、X線撮像、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)、単一フォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)、機能磁気共鳴撮像(fMRI)および超音波撮像のうちの少なくとも1つによって発生される、前の請求項のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御する前記ステップが、表示された対象の所定のサブセットに対応する、好ましくは当該表示された構造に対応する強度データのアレイのうちの一部のエントロピーを高めるようになっている、前の請求項のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
医療画像の利用可能性を自動的に高めるためのシステムにおいて、
強度データのアレイを含む医療画像を提供するための入力手段と、
強度データのアレイの少なくとも一部のエントロピーを高めるように、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御するための手段と、
こうして改善された強度データのアレイを、改善された医療画像として提供するための出力手段とを備えたシステム。
【請求項12】
自動的に制御すべき少なくとも1つの強度パラメータが、輝度およびコントラストのうちの少なくとも1つ、好ましくはそれらの双方である、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの強度パラメータを制御するための前記手段が、強度データの前記アレイのグレイスケールのウィンドーを縮小するように、前記パラメータを制御するようになっている、請求項11または12記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの強度パラメータを制御するための前記手段が、強度データのアレイのうちの前記少なくとも一部のエントロピーを最適にするように前記パラメータを制御するようになっている、請求項11〜13のうちのいずれか1つに記載のシステム。
【請求項15】
入力医療画像がコンピュータトモグラフィ(CT)、磁気共鳴撮像(MRI)、血管造影撮像、X線撮像、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)、単一フォトンエミッションコンピュータトモグラフィ(SPECT)、機能磁気共鳴撮像(fMRI)および超音波撮像のうちの少なくとも1つによって発生される、請求項11〜14のうちのいずれか1つに記載のシステム。
【請求項16】
強度データのアレイを含む医療画像を入力信号として提供するステップと、
強度データのアレイのうちの少なくとも一部のエントロピーを高めるよう、少なくとも1つの強度パラメータを自動的に制御するステップと、
強度データのこのように処理されたアレイを改善された医療画像として提供するステップを実行するためのコンピュータコードを備えた、医療画像の利用可能性を自動的に改善するためのコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラムを記憶するためのデータキャリア。
【請求項18】
画像処理、例えば画像マージまたは相互整合、セグメント化またはパターン認識のための医療画像を作成するための、請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載の方法の使用法。
【請求項19】
自動化された治療のプラニング、好ましくは神経外科治療のプラニングのための医療画像を作成するための、請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載の方法の使用法。
【請求項20】
治療中のリアルタイムのモニタおよび/または制御、および好ましくは神経外科治療のために医療画像を作成するための、請求項1〜10のうちのいずれか1つに記載の方法の使用法。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2007−535359(P2007−535359A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510659(P2007−510659)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000611
【国際公開番号】WO2005/106791
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(505005500)エレクタ アクチボラゲット(パブル) (8)
【Fターム(参考)】