説明

医薬組成物の調製

以下の工程:a)i)非水溶性オピオイド、ii)水溶性担体、及びiii)前記オピオイドと前記担体のそれぞれのための溶媒とを含む混合物を用意する工程:b)その混合物をスプレードライしてそれぞれの溶媒を除去して、前記担体中の前記オピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、を含む非水溶性オピオイド含有組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医薬組成物に関する改良に関連する。特に、本発明は、いわゆる「オピオイド」といわれる群に入る医薬活性組成物とそのための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
オピオイドは、体内でモルヒネ様作用を有する医薬活性剤である。これらの主要用途は、術後の痛みなどの急性疼痛、及び癌などの状態末期の激しく慢性的な、どうしようもない痛みを含めた、中程度から深刻な痛みを治療するための鎮痛剤としてである。それらはしばしば、手術前の鎮静のための麻酔剤としても使用される。いくつかのオピオイド類は下痢を治療するためにも用いられている。近年、この薬物を痛みの緩和に用いた場合には薬物依存は非常にまれであるという認識に続いて、非悪性の慢性疼痛の管理におけるオピオイド類の使用が増えてきている。
【0003】
鎮痛剤及び麻酔剤に加えて、オピオイド類は、咳の治療又は防止(特にコデイン、デキストロメトルファン、及びヒドロコドン)、下痢、不安の防止(特にオキシモルホン)、並びに解毒及び中毒のため(特に、メタドン、ブプレノルフィン、ナロキソン、及びナルトレキソン)に用いられている。
【0004】
オピオイド類には以下が含まれる:
内因性オピオイドペプチド類、例えば、エンドルフィン類、ダイノルフィン類、エンケファリン類;アヘンアルカロイド類、例えば、コデイン、モルヒネ、及びテバイン;半合成誘導体、例えば、ジアセチルモルフィン(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ニコモルフィン、オキシコドン、及びオキシモルフォン;アニリドピペリジン類、例えば、フェンタニル、アルファメチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、カーフェンタニル、及びオームフェンタニル;フェニルピペリジン類、例えば、ノカイン(nocaine)、ペチジン(メペリジン)、ケトベミドン、MPPP、アリルプロジン、プロジン、及びPEPAP;ジフェニルプロピルアミン誘導体、例えば、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、デキストロモラミド、ベジトラミド、ピリトラミド、メタドン、レボ-アルファセチルメタドール(LAAM)、ロペラミド、及びジフェノキシレート;ベンゾモルファン誘導体、例えば、ペンタゾシン及びフェナゾシン;オリパビン誘導体、例えば、ブプレノルフィン及びエトルフィン;モルフィナン誘導体、例えば、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、及びレボメトルファン;並びに、その他のオピオイド類、例えば、デゾシン、レフェタミン、チリジン、及びトラマドール。
【0005】
多くのオピオイド類は低い水溶性を示し、水には実質的に不溶性である。このことがそれらの有効な使用、特に塩基形態での経口デリバリーのための有効な使用を阻んでおり、したがって、水溶性塩形態が好ましく、水溶性塩形態は例えば、硫酸塩類(例えば、硫酸モルヒネ)、クエン酸塩類(例えば、フェンタニル塩及びスフェンタニル塩類)、酒石酸塩類(例えば、ヒドロコドン酸性酒石酸塩)、リン酸塩類(例えば、コデイン塩)、臭素酸塩類(例えば、デキストロメトルファン塩)、塩酸塩類(例えば、オキシコドン塩、オキシモルフォン塩、ヒドロモルホン塩、ブプレノルフィン塩、及びトラマドール塩)である。
【0006】
国際公開WO2004/011537号パンフレットは、水溶性高分子材料の三次元オープンセル格子(三次元連通気泡格子)を含む固体の多孔質ビーズの形成を記載している。これらは、典型的には、水相中に溶けた高分子を有する高度内部相エマルション(high internal phase emulstion, HIPE)から、水及び非水性分散相の両方の除去によって形成された「鋳型」材料(templated material)である。このビーズは、前記のHIPEエマルションを低温液体(例えば、液体窒素)中に滴下し、次に、形成された粒子を凍結乾燥して水相と分散相の大半を除去することによって形成される。これによって、後に、「骨格」構造の形態の高分子が残る。このビーズは水に速やかに溶け、凍結乾燥前にエマルションの前記の分散相中に分散されていた非水溶性成分も、ビーズの高分子の骨格が溶けたときには水に分散されうるという顕著な特性を有する。
【0007】
国際公開WO2005/011636号パンフレットは、高分子中の薬剤の「固体アモルファス分散体」を形成するための、非エマルションに基づいたスプレー乾燥法を開示している。この方法においては、高分子と低溶解性薬剤を溶媒に溶かし、スプレー乾燥して分散体を形成し、この分散体中で、薬剤は結晶形態よりむしろアモルファス形態で主に存在する。
【0008】
公開されていない同時係属出願(2005年1月28日のGB0501835及び2006年7月13日に出願されたGB0613925)は、水中のナノ分散体を形成する材料が、好ましくは、スプレー乾燥法によって調製できることを開示している。これらの出願の最初では、非水溶性材料はエマルションの溶媒相に溶かされる。第二には、その非水溶性材料は混合溶媒系に溶かされ、それと同じ相中に水溶性構造化剤として共存する。どちらの場合も、液体は環境温度より上(20℃より上)で、例えば、スプレー乾燥によって乾燥されて、担体としての構造化剤の粒子を生じ、これはその中に分散された非水溶性材料を伴う。これらの粒子が水に入れられた場合、それらが溶けて、典型的には300nm未満の粒子を含む、非水溶性材料のナノ分散体を形成する。この大きさはウイルス粒子の大きさと同程度であり、この非水溶性材料はそれがあたかも溶液中にあるかのように振るまう。
【0009】
本願において、「環境温度」とは20℃を意味し、全てのパーセント割合は別に指定がない限り質量パーセントである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2004/011537号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2005/011636号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、医薬組成物に関する改良に関連する。特に、本発明は、いわゆる「オピオイド」といわれる群に入る医薬活性組成物とそのための前駆体に関する。
【0012】
(本発明の簡単な説明)
我々は、エマルションに基づいた方法と単一相法の両方を、オピオイドの水溶性のナノ分散形態を作り出すために用いることができると判断している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、以下の工程:
a)i)非水溶性オピオイド
ii)水溶性担体、及び
iii)前記オピオイドと前記担体のそれぞれのための溶媒、
を含む混合物を準備する工程;並びに、
b)前記混合物をスプレー乾燥して前記すなわちそれぞれの溶媒を除去して、前記担体中の前記オピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、
を含む、非水溶性オピオイドを含有する組成物の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の分散生成物についての粒子径計測の好ましい方法は、動的光散乱装置(Nano S、Malvern Instruments社製、英国)を使用することである。詳細には、このMalvern Instruments社のNano Sは、赤色(633nm)の4mWヘリウム-ネオンレーザーを使用して、材料の分散体を含む標準規格の光学品質のUV容器に光照射する。本願に引用する粒径(粒子サイズ)は、標準手法を用いてこの装置で得ることができる。固体生成物中の粒径は、その固体の水溶液から得られる粒径の測定から推測した粒径と、粒径の測定から推測した粒径である。
【0015】
好ましくは、非水溶性オピオイドのピーク直径は1500nm未満である。さらに好ましくは、非水溶性オピオイドのピーク直径は1000nm未満であり、最も好ましくは800nm未満である。本発明の特に好ましい態様では、非水溶性オピオイドの中位径(メジアン直径)は、400〜1000nm、より好ましくは500〜800nmの範囲内である。
【0016】
本発明の方法によって得られる有利な組成物は、非水溶性オピオイドと水溶性担体とを含み、水溶性担体はその担体中に分散された750nm平均粒径のオピオイド粒子を含む。最終的なナノ分散体中での粒径の低減は、その非水溶性材料の利用性を向上させるのに顕著な利点を有すると考えられる。これは、向上した生物学的利用能が求められる場合、あるいはその材料の高い局所的濃度が避けられるべき同様の用途で、特に有利であると考えられる。そのうえ、小さな粒径をもつナノ分散体は、より大きな粒径を有する分散体よりもさらに安定であると考えられる。
【0017】
本発明との関連では、オピオイドに適用するときの「非水溶性」とは、水へのその溶解度が25g/L未満であることを意味する。「非水溶性オピオイド」はまた、その溶解度が20g/L未満、あるいは15g/L未満であることを意味しうる。好ましくは、この非水溶性オピオイドは、環境温度(20℃)での水への溶解度が5g/L未満、好ましくは1g/L未満、特に好ましくは150mg/L未満、なお、さらに好ましくは100mg/L未満である。この溶解度レベルは、本明細書の非水溶性が何を意味するかについての目的とする解釈を提供する。
【0018】
好ましい非水溶性オピオイドには、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、コデイン、デキストロメトルファン、ブプレノルフィン、モルヒネ、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、ジアモルフィン、モルフィン-6-グルクロニド、ノルオキシコドン、メタドン、ナロキソン、ナルブフィン、ナルトレキソン、ジヒドロコデイン、アルファメチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、カーフェンタニル、オームフェンタニル;ノカイン、ペチジン(メペリジン)、ケトベミドン、MPPP、アリルプロジン、プロジン、PEPAP、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、デキストロモラミド、ベンジトラミド、ピリトラミド、レボ-アルファセチルメタドール(LAAM)、ロペラミド、ジフェノキシレート、ペンタゾシン、フェナゾシン、エトルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、デゾシン、レフェタミン、チリジン、及びトラマドールの塩基形態、並びにこれらの化合物の非水溶性誘導体、が包含される。
【0019】
好ましい担体物質は、水溶性の有機物質及び無機物質、界面活性剤、高分子、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
本発明のさらなる側面は、非水溶性オピオイドと水溶性担体とを含むオピオイド組成物の製造法を提供し、その方法は以下の工程:
a)i)オピオイドのための水に非混和性の溶媒中のオピオイドの溶液と
ii)担体の水溶液と
を含むエマルションを形成させる工程;及び
b)そのエマルションを乾燥させて、水と、水に非混和性の溶媒とを除去して、担体中のオピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、
を含む。
【0021】
便宜のため、この群の方法を本明細書中では「エマルション」法という。
【0022】
本発明のさらなる側面は、非水溶性オピオイドと水溶性担体とを含むオピオイド組成物の製造方法を提供し、その方法は以下の工程:
a)i)少なくとも1種の非水溶媒、
ii)任意選択で水、
iii)(i)及び(ii)の混合物中に可溶性の水溶性担体物質、及び
iv)(i)及び(ii)の混合物中に可溶性の非水溶性オピオイド、
を含む単一相混合物を準備する工程;及び
b)この溶液を乾燥させて、水と、水に混和性の溶媒とを除去して、担体中のオピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、
を含む。
【0023】
便宜のため、この群の方法を本明細書中では「単一相」法という。
【0024】
本発明との関連では、実質的に溶媒を含まないとは、国際的な医薬品監督団体(例えば、FDA、EMEA)によって、医薬製品中の残存溶媒量に関して許容された限度内を意味し、及び/又は製品のフリーの溶媒量が15質量%未満、好ましくは10質量%未満、より好ましくは5質量%未満、最も好ましくは2質量%未満であることを意味する。
【0025】
本発明との関連では、担体物質とオピオイドの両方が、乾燥工程の前にそれらの各溶媒中に原則として完全に溶けていることが必要である。スラリーを乾燥させることを教示することは、本明細書の範囲内ではない。いなかる疑念をも避けるために、したがって、本願発明の場合は、エマルション又は混合物の固形分量は、その存在する可溶性物質のうちの90質量%より多くが、好ましくは95質量%より多くが、さらに好ましくは98質量%より多くが、乾燥工程の前に溶液であるような量である。
【0026】
上述した方法との関連では、好ましいオピオイド及び好ましい担体物質は上述したとおりであり、かつ、以下でさらに詳細に説明するとおりである。同様に、この物質の好ましい物理特性は、上述したとおりである。
【0027】
オピオイドと担体物質の両方が、少なくとも1種のその他の非水溶媒を(任意選択によっては水をも)含む相中に溶けている「単一相」法が好ましい。これは、ナノ分散オピオイドに対して、より小さな粒子径を得るためにさらに有効であると考えられる。乾燥工程は同時に水とその他の溶媒の両者を除去することが好ましく、かつ、より好ましくは、乾燥は環境温度より上においてスプレー乾燥によって行われることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の方法の側面によって得られる生成物は、鎮痛剤、麻酔剤、及び下痢の治療のための医薬の調製に用いるのに適している。
【0029】
本発明のさらなる側面は、鎮痛、麻酔、及び下痢の治療に使用するための医薬、特に、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、コデイン、デキストロメトルファン、ブプレノルフィン、モルヒネ、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、ジアモルフィン、モルフィン-6-グルクロニド、ノルオキシコドン、メタドン、ナロキソン、ナルブフィン、ナルトレキソン、ジヒドロコデイン、アルファメチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、カーフェンタニル、オームフェンタニル;ノカイン、ペチジン(メペリジン)、ケトベミドン、MPPP、アリルプロジン、プロジン、PEPAP、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、デキストロモラミド、ベンジトラミド、ピリトラミド、レボ-アルファセチルメタドール(LAAM)、ロペラミド、ジフェノキシレート、ペンタゾシン、フェナゾシン、エトルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、デゾシン、レフェタミン、チリジン、及びトラマドール、の製剤の調製法を提供し、その方法は本発明による組成物を調製する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(本発明の詳細な説明)
本発明の様々な好ましい特徴及び態様を、以下にさらに詳細に説明する。
【0031】
〔オピオイド類〕
上述したように、好ましい非水溶性オピオイドには、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、コデイン、デキストロメトルファン、ブプレノルフィン、モルヒネ、フェンタニル、スフェンタニル、アルフェンタニル、ジアモルフィン、モルフィン-6-グルクロニド、ノルオキシコドン、メタドン、ナロキソン、ナルブフィン、ナルトレキソン、ジヒドロコデイン、アルファメチルフェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、カーフェンタニル、オームフェンタニル;ノカイン、ペチジン(メペリジン)、ケトベミドン、MPPP、アリルプロジン、プロジン、PEPAP、プロポキシフェン、デキストロプロポキシフェン、デキストロモラミド、ベンジトラミド、ピリトラミド、レボ-アルファセチルメタドール(LAAM)、ロペラミド、ジフェノキシレート、ペンタゾシン、フェナゾシン、エトルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、レボルファノール、レボメトルファン、デゾシン、レフェタミン、チリジン、及びトラマドール、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物、が含まれる。これらは、本発明の組成物中の唯一の医薬活性成分として存在することができ、あるいはいわゆる「併用療法(コンビネーションセラピー)」をもたらすためのその他の薬剤とともに存在することができる。
【0032】
具体例として、オピオイド(例えば、オキシコドン)と、さらなる医薬活性剤との組み合わせを提供することは有利でありうる。そのようなさらなる薬剤も、鎮痛又は麻酔をもたらしてもよく、例えば、パラセタモールあるいはNSAID類、例えば、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナクである。あるいは、そのさらなる活性剤は、オピオイドの投与に伴う有害な副作用のいくらかを治療又は予防するものであってもよい。例えば、悪心は一つのそのような副作用であり、オピオイドは制吐剤(例えば、低用量のハロペリドール)と組み合わせてもよい。胃内容うっ滞による可能性のある嘔吐は時々経験することであり、これはオピオイドを胃腸運動促進剤(例えば、ドンペリドン又はメトクロプラミド)と組み合わせることによって対処することができる。便秘はオピオイドによって99%の患者に生じ、この問題に対する耐性が現れることはないので、オピオイドを処方されたほとんど全ての患者は緩下剤を必要とし、これはオピオイドと組み合わせて提供することができる。オキシダーゼ阻害剤(例えば、キニジンを含めたキニン誘導体、及びハイドロキノン)は、オピオイドと組み合わせて送達してもよい。
【0033】
〔水分散性生成物形態〕
本発明は、非水溶性物質の水分散可能な形態を得るための方法を提供する。これは、その中に水溶性担体物質と非水溶性オピオイドの両方が溶けている、完全には水性ではない中間エマルション又は溶液を形成することによって調製される。溶媒を除去すると、不溶性のオピオイドは、水溶性担体物質の中に分散されて残る。好適な担体物質は以下でさらに詳細に説明する。
【0034】
乾燥工程の後に得られる物質の構造は、充分には理解されていない。得られる乾燥した物質はカプセル化されてはいないと考えられ、なぜなら、非水溶性物質の分離した巨視的な物体は乾燥生成物中に存在しないからである。この乾燥物質は「無水エマルション」でもなく、なぜならエマルションの「オイル」相を含む揮発性溶媒は乾燥工程の後には殆ど又は全く残らないからである。この乾燥生成物に水を添加しても、「無水エマルション」ならそうなるであろうようには、エマルションは再形成しない。また、この組成物はいわゆる固溶体ではないと考えられ、なぜなら、本発明のように、利点を損ねることなく、存在する成分の比率を変動可能だからである。X線及びDSC研究からも、本発明の組成物は、固溶体ではなく、むしろナノスケールの相分離混合物を含んでいる。さらに、X線粉末回折研究からは、作り出されたオピオイド・ナノ粒子物質が結晶形で存在し、非晶質形態ではなく、主に又は完全に出発物質と同じ結晶形であると考えられている。
【0035】
好ましくは、上記乾燥工程後に生成する組成物は、オピオイドと担体とを、1:500〜1:1(オピオイド:担体)の質量比で含み、1:100〜1:1が好ましい。約10〜50質量%の非水溶性オピオイドと90〜50質量%の担体の典型量を、スプレー乾燥によって得ることができる。
【0036】
本発明の方法によって、オピオイド物質の粒径を1000nm未満に低下でき、約100nmにまで低下させうる。好ましい粒径は400〜800nmの範囲である。
【0037】
〔「エマルション」調製法〕
本発明の一つの好ましい方法では、非水溶性オピオイドのための溶媒は水と混和しない。水と混合すると、その溶媒はエマルションを形成できる。
【0038】
好ましくは、非水性相は、エマルションの約10〜約95体積%、より好ましくは約20〜約68体積%で含まれる。
【0039】
本エマルションは、典型的には、当業者に周知の条件下で、例えば、磁気式撹拌棒、ホモジナイザー、又は回転式機械式撹拌機を使用して調製される。エマルションは、それが乾燥前に顕著な相分離をすることがないことを条件として、特に安定である必要はない。
【0040】
高剪断混合装置を使用してのホモジナイズ(均質化)は、水性相が連続相であるエマルションを作るための特に好ましい方法である。粗いエマルションを避け且つエマルションの分散相の液滴径を低下させることは、乾燥生成物中での含有物質の改善された分散をもたらすと考えられる。
【0041】
本発明の好ましい方法では、水が連続相のエマルションは、500nm〜5000nmの平均分散相液滴径(マルバーン・ピーク強度を用いたもの)をもつように調製される。我々は、Ultra-Turrux T25タイプの実験室用ホモジナイザー(または同等品)を10000rpmよりも高速回転で、1分より長く操作した場合に、適切なエマルションが得られることを発見した。
【0042】
エマルションの液滴径と含有物質の粒径との間には方向性のある関係があり、これは本発明の物質を水溶液中に分散した後に検出可能である。我々は、前駆体エマルションのための均質化(ホモジナイズ)の速度の増大が、再溶解後の最終粒径を低下しうることを割り出した。
【0043】
この再溶解した粒径は、ホモジナイズの速度が13500rpmから21500rpmに増大したときに、ほぼ2分の1まで低下しうると考えられる。ホモジナイズの時間も、再溶解粒径を制御するのに役割を演じていると考えられる。粒径はここでも、ホモジナイズの時間の増加とともに低下し、粒径分布はそれと同時により広くなる。
【0044】
超音波照射(sonification)も、エマルション系の液滴径を低下させるための特に好ましい方法である。我々は、Hert System Sonicator XLをレベル10で2分間作動させることが適していることを発見している。
【0045】
溶媒及び/又は担体に対するオピオイドの相対的濃度を低下させる成分比が、より小さな粒径をもたらすと考えられる。
【0046】
〔「単一相」調製法〕
本発明の別の方法では、担体とオピオイドの両方が、非水性溶媒又はそのような溶媒と水との混合物に可溶性である。本明細書のこことその他のところの両方で、非水性溶媒は複数の非水性溶媒の混合物であってもよい。
【0047】
この場合、乾燥工程の原料は、水溶性担体と非水溶性オピオイドの両方が溶けている単一相物質であることができる。この原料はエマルションであることもできるが、但し、担体とオピオイドの両方が同じ相に溶けていることを条件とする。
【0048】
「単一相」法は、エマルション法よりも小さな粒径をもつより良いナノ分散物を与えると一般には考えられる。
【0049】
溶媒及び/又は担体に対するオピオイドの相対濃度を低下させる成分比は、より小さな粒径をもたらすと考えられる。
【0050】
〔乾燥〕
スプレー乾燥は当業者に周知である。本発明の場合、乾燥させるエマルション中に揮発性の非水性溶媒が存在するので、幾らかの注意を払わなければならない。可燃性溶媒を使用する場合、爆発の危険を低下させるために、不活性ガス、例えば窒素を、いわゆる密封スプレー乾燥システムにおける乾燥媒体として使用することができる。溶媒は回収して、再使用できる。
【0051】
我々は、Buchi B-290型ロータリースプレー乾燥装置が好適であることを発見している。
【0052】
乾燥温度は100℃以上、好ましくは120℃、最も好ましくは140℃より高いことが好ましい。高い乾燥温度は、再溶解したナノ分散物質に、より小さな粒子をもたらすことを発見している。
【0053】
〔担体物質〕
担体物質は水溶性であり、水溶性には、構造化された水相、並びに分子状に単分散した種の真のイオン性溶液の形成が含まれる。担体物質は、無機物質、界面活性剤、高分子、あるいはこれらの2つ以上の混合物を含むことが好ましい。
【0054】
その他の非高分子の有機の水溶性物質、例えば、糖類、が担体として使用できることが予想される。しかし、本明細書で特に言及した担体物質が好ましい。
【0055】
好適な担体物質(本明細書で「水溶性担体物質」という)には、好ましい水溶性高分子、好ましい水溶性界面活性剤、及び好ましい水溶性無機物質が含まれる。
【0056】
〔好ましい高分子担体物質〕
好適な水溶性高分子担体物質の例には以下のものが含まれる:
(a)天然高分子(例えば、天然ガム、例えば、グアーガム、アルギネート、ローカストビーンガム、又は多糖類、例えばデキストラン);
(b)セルロース誘導体、例えば、キサンタンガム、キシログルカン、セルロースアセテート、メチルセルロース、メチル-エチルセルロース、ヒドロキシ-エチルセルロース、ヒドロキシ-エチルメチル-セルロース、ヒドロキシ-プロピルセルロース、ヒドロキシ-プロプルメチルセルロース、ヒドロキシ-プロピルブチルセルロース、エチルヒドロキシ-エチルセルロース、カルボキシ-メチルセルロース及びその塩類(例えば、ナトリウム塩-SCMC)、あるいはカルボキシ-メチルヒドロキシエチルセルロース及びその塩類(例えば、ナトリウム塩);
(c)以下の群から選択される2種以上のモノマー類から調製されるホモポリマー又はコポリマー:ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミドメチルプロパンスルホネート類、アミノアルキルアクリレート類、アミノアルキル-メタクリレート類、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメチルアクリレート、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルアミン類、ビニルピリジン、エチレングリコール及びその他のアルキレングリコール類、エチレンオキシド及びその他のアルキレンオキシド類、エチレンイミン、スチレンスルホネート類、エチレングリコールアクリレート類、及びエチレングリコールメタクリレート;
(d)シクロデキストリン類、例えば、β-シクロデキストリン;並びに
(e)それらの混合物。
【0057】
高分子物質がコポリマーである場合は、統計コポリマー(従来、ランダムコポリマーとしても公知である)、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、又は超分岐コポリマーであってよい。上に列挙したもの以外のコモノマー類も、それらの存在が、得られる高分子物質の水溶性又は水分散性を損なわないならば、列挙したものに加えて含めることができる。
【0058】
適切かつ好適なホモポリマー類の例には、ポリ-ビニルアルコール、ポリ-アクリル酸、ポリ-メタクリル酸、ポリ-アクリルアミド類(例えば、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ-メタクリルアミド;ポリ-アクリルアミン類、ポリ-メチルアクリルアミン類(例えば、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート及びポリ-N-モルホリノエチルメタクリレート)、ポリビニルピロリドン、ポリ-スチレンスルホネート、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、ポリ-2-エチルオキサゾリン、ポリ-エチレンイミン、及びそれらのエトキシル化誘導体、が含まれる。
【0059】
ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピル-メチルセルロース(HPMC)、並びにアルギネート類が、好ましい高分子担体物質である。
【0060】
〔好ましい界面活性剤担体物質〕
担体物質が界面活性剤である場合は、この界面活性剤は、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性、又は双性イオン性であってよい。
【0061】
好適なノニオン性界面活性剤の例には、エトキシル化トリグリセリド類;脂肪アルコールエトキシレート類;アルキルフェノールエトキシレート類;脂肪酸エトキシレート類;脂肪アミドエトキシレート類;脂肪アミンエトキシレート類;ソルビタンアルカノエート類;エチル化ソルビタンアルカノエート類;アルキルエトキシレート類;Pluronic(プルロニック)(登録商標);アルキルポリグルコシド類;ステアロールエトキシレート類;及びアルキルポリグリコシド類、が含まれる。
【0062】
好適なアニオン性界面活性剤の例には、アルキルエーテルサルフェート類;アルキルエーテルカルボキシレート類;アルキルベンゼンスルホネート類;アルキルエーテルホスフェート類;ジアルキルスルホスクシネート類;サルコシネート類;アルキルスルホネート類;石鹸類;アルキルサルフェート類;アルキルカルボキシレート類;アルキルホスフェート類;パラフィンスルホネート類;二級n-アルカンスルホネート類;アルファ-オレフィンスルホネート類;及びイセチオネートスルホネート類、が含まれる。
【0063】
好適なカチオン性界面活性剤の例には、脂肪アミン塩類;脂肪ジアミン塩類;第四級アンモニウム化合物;ホスホニウム界面活性剤;スルホニウム界面活性剤;及びスルホンキソニウム界面活性剤、が含まれる。
【0064】
好適な双性イオン性界面活性剤の例には、アミノ酸(例えば、グリシン、ベタイン、アミノプロピオン酸)のN-アルキル誘導体;イミダゾリン界面活性剤;アミンオキシド類;及び、アミドベタイン類、が含まれる。
【0065】
界面活性剤の混合物も使用できる。そのような混合物中に、液状である個々の成分が存在してもよく、但し、担体物質全体として固体であることを条件とする。
【0066】
アルコキシル化ノニオン系(特にPEG/PPGプルロニック(Pluronic)(登録商標)物質)、フェノールエトキシレート類(特にトリトン(TRITON)(登録商標)物質)、アルキルスルホネート類(特にSDS)、エステル界面活性剤(好ましくは、スパン(Span)(登録商標)及びトゥイーン(Tween)(登録商標)タイプのソルビタンエステル類)、及びカチオン系(特にセチルトリメチルアンモニウムブロマイド-CTAB)は、界面活性剤担体物質として特に好ましい。
【0067】
〔好ましい無機担体物質〕
担体物質は、界面活性剤でも高分子でもない水溶性無機物質であることもできる。簡単な有機塩類が、特に、上述したとおりの高分子担体物質及び/又は界面活性剤担体物質と混合した簡単な有機塩類が、好適であることを発見している。好適な塩類には、炭酸塩、炭酸水素塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、及び酢酸塩、特に、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウムの水溶性塩類が含まれる。好ましい物質には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び硫酸ナトリウムが含まれる。これらの物質は、それらが安価であり且つ生理的に許容可能であるという利点をもっている。これらは、相対的に不活性であり、並びに、医薬製品中に存在する多くの物質と適合性でもある。
【0068】
担体物質の混合物が有利である。好ましい混合物には、界面活性剤と高分子との組み合わせ物が含まれ、それは、
a)ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びにアルギネート類、の少なくとも1つと、
b)アルコキシル化ノニオン界面活性剤(特に、PEG/PPGプルロニック(Pluronic)(登録商標)物質)、フェノールエトキシレート類(特に、トリトン(TRITON)(登録商標)物質)、アルキルスルホネート類(特に、SDS)、エステル界面活性剤(好ましくは、スパン(Span)(登録商標)及びトゥイーン(Tween)(登録商標)タイプのソルビタンエステル類)、及びカチオン界面活性剤(特に、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド - CTAB)、の少なくとも1つを含む。
【0069】
担体物質は、界面活性剤、高分子、あるいは無機担体物質のいずれでもない水溶性の低分子有機物質であることもできる。単純な有機糖類、特に上述したとおりの高分子及び/又は界面活性剤担体物質と混合した単純な有機糖類が、好適であることを発見している。好適な低分子有機物質には、マンニトール、ポリデキストロース、キシリトール、マルチトール、デキストロース、デキストリン、デキストラン、マルトデキストリン、及びイヌリンなどが含まれる。
【0070】
〔非水性溶媒〕
本発明の組成物は、揮発性の第二の非水性溶媒を含む。これは乾燥前のプレミックス中の他の溶媒と混和性であるか、あるいはこれらの溶媒と一緒になってエマルションを形成してもよい。
【0071】
本発明の一つの代替形態では単一の非水性溶媒が用いられ、その中にオピオイドと担体の存在下で水を用いて単一相を形成できる。これらの態様のための好ましい溶媒は、極性の、プロトン性又は非プロトン性の溶媒である。一般的に好ましい溶媒は、1より大きな双極子モーメントと、4.5より大きな誘電定数をもっている。
【0072】
特に好ましい溶媒は、ハロホルム類(好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム)、低級(C1〜C10)アルコール類(好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール)、有機酸(好ましくは、ギ酸、酢酸)、アミド類(好ましくは、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド)、ニトリル類(好ましくは、アセトニトリル)、エステル類(好ましくは、酢酸エチル)、アルデヒド及びケトン類(好ましくは、メチルエチルケトン、アセトン)、並びにその他の水と混和性の種類であって、ヘテロ原子結合を含み、適度に大きな双極子を有するもの(好ましくは、テトラヒドロフラン、ジアルキルスルホキシド)からなる群から選択される。
【0073】
ハロホルム類、低級アルコール類、ケトン類、及びジアルキルスルホキシド類が、最も好ましい溶媒である。
【0074】
本発明の別の形態では、非水性溶媒は水と混和性でなく、エマルションを形成する。
【0075】
このエマルションの非水性相は、以下の群の揮発性有機溶媒の1種以上から、好ましくは選択される:
・アルカン類、好ましくは、ヘプタン、n-ヘキサン、イソオクタン、ドデカン、デカン;
・環状炭化水素、好ましくは、トルエン、キシレン、シクロヘキサン;
・ハロゲン化アルカン類、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、フルオロトリクロロメタン、及びテトラクロロエタン;
・エステル類、好ましくは、酢酸エチル;
・ケトン類、好ましくは、2-ブタノン;
・エーテル類、好ましくは、ジエチルエーテル;
・揮発性環状シリコーン類、好ましくは、4〜6のシリコン単位を含む直鎖状又は環状いずれかのメチコーン類。好適な例には、DC245及びDC345が含まれ、これら両者はDowCorning社から入手できる。
【0076】
好ましい溶媒には、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドが含まれる。
【0077】
好ましい非水性溶媒は、混和性であろうとなかろうと、150℃未満の沸点を有し、より好ましくは100℃未満の沸点を有し、それによって実際的な条件下で、且つ特殊な装置を使用することなしに、乾燥、特にスプレー乾燥を容易にする。好ましくは、それらは不燃性であるか、あるいは本発明の方法で遭遇する温度よりも高い引火点を有する。
【0078】
好ましくは、上記非水性溶媒は、形成された任意のエマルションの約10体積%〜約95体積%(%v/v)、より好ましくは約20体積%〜約80体積%(%v/v)で含まれる。単一相法では、溶媒の量は20〜100体積%(%v/v)が好ましい。
【0079】
特に好ましい溶媒はアルコール類、特にエタノール、及びハロゲン化溶媒、特に好ましくは塩素含有溶媒、最も好ましくはジ-又はトリ-クロロメタンから選択される溶媒である。
【0080】
〔任意成分である共界面活性剤(cosurfactant)〕
非水性溶媒に加えて、乾燥工程前に、任意成分として共界面活性剤を用いてもよい。我々は、かなり少量の揮発性共界面活性剤の添加が、作り出される物質の粒子直径を低下させることを解明している。このことは、粒子体積に対して顕著な影響を有しうる。例えば、297nmから252nmへの低下は、約40%の粒子サイズの低下に相当する。したがって、少量の共界面活性剤の添加は、最終生成物の配合を変えることなく、本発明の物質の粒子サイズを低下させるための簡単且つ安価な方法をもたらす。
【0081】
好ましい共界面活性剤は、220℃未満の沸点をもつ短鎖のアルコール類又はアミンである。
【0082】
好ましい共界面活性剤は直鎖アルコール類である。好ましい共界面活性剤は一級のアルコール類又はアミン類である。特に好ましい共界面活性剤は、3〜6の炭素のアルコール類からなる群から選択される。好適なアルコール共界面活性剤には、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、ヘキシルアミン、及びそれらの混合物が含まれる。
【0083】
好ましくは、この共界面活性剤は、溶媒よりも少ない量(体積量)で存在し、溶媒と共界面活性剤との間の体積比は、100:40〜100:2、より好ましくは100:30〜100:5の範囲にはいる。
【0084】
〔好ましいスプレー乾燥原液〕
典型的なスプレー乾燥原液は、以下の:
a)界面活性剤;
b)少なくとも1種の低級アルコール;
c)原液中に溶けた0.1%より多い、少なくとも1種の非水溶性オピオイド;
d)高分子;及び
e)任意選択で存在してもよい水、
を含有する。
【0085】
好ましいスプレー乾燥原液は以下の:
a)ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の非水性溶媒;
b)PEGコポリマーノニオン界面活性剤(特にPEG/PPGプルロニック(Pluronic)(登録商標))、アルキルスルホネート類(特にSDS)、エステル界面活性剤(好ましくは、スパン(Span)(登録商標)及びトゥイーン(Tween)(登録商標)タイプのソルビタンエステル類)、及びカチオン界面活性剤(特に、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド-CTAB)、並びにこれらの混合物;
c)0.1%より多い、少なくとも1種の非水溶性オピオイド;
d)ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギネート類、及びそれらの混合物、から選択される高分子;並びに
e)任意選択で存在してもよい水、
を含有する。
【0086】
本発明で用いる乾燥原液は、好ましくはいかなる固体物質も含まない、特に好ましくはいかなる未溶解オピオイドも含まない、エマルションか溶液のいずれかである。
【0087】
本組成物中のオピオイドの量は、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下であってよい。本組成物中のオピオイドの量は、乾燥した組成物中の含量が40質量%未満、より好ましくは30質量%未満となる量であることが特に好ましい。そのような組成物は、上述したように、小さな粒径と高い有効性という利点を有する。
【0088】
〔水分散形〕
水溶性担体物質と水とを混合したとき、担体が溶け、非水溶性オピオイドは充分に微細な形態で水に分散し、それは多くの面で可溶性物質のようにふるまう。乾燥生成物中のこの非水溶性物質の粒径は、水溶液において、その非水溶性物質が本明細書に記載したMalvern法によって測定して1μm未満の粒径を有するようなものであることが好ましい。その固体形態を水に分散させたときに、オピオイドの粒径の顕著な低下はないと考えられる。
【0089】
本発明を適用することによって、顕著な量の「非水溶性」物質が、本当の溶液とほとんど同じ状態になりうる。乾燥生成物を水に溶かしたときに、0.1%より多い、好ましくは0.5%より多い、さらに好ましくは1%より多い非水溶性物質を含む光学的に透明な溶液を得ることができる。
【0090】
溶液形態は患者に「そのままで」又は更なる希釈の後での投与に適した形態であることが予想される。別の方法では、本発明の態様の溶液形態は別の活性物質と混合されて、併用治療での使用に適した医薬を作り出すことができる。
【0091】
〔実施例〕
本発明をさらに理解し且つ実施できるために、限定されない例を参照して、本発明を以下でさらに説明する。
【0092】
一連の配合物を、そのそれぞれにおいて40%の薬剤を用いて、様々な賦形剤と様々な賦形剤の添加量を基にして作った。用いた薬剤はオキシコドン塩基(Macfarlane Smith Ltd, エジンバラ)であった。
【0093】
賦形剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC 5cps粘度等級品- Methocel E5, Colorcon Ltd)、マルチトール(maltisorb P90, Roquette Ltd)、ポリデキストラン(Litesse II, Danisco Ltd)、ポリビニルピロリドン(PVP K30等級品、ISP)、Polysorbate 80(Tween 80, Merck社)、ポロキサマー(Pluronic F127等級、BASF社)、マンニトール(Mannogem EZ)、及びラウリル硫酸ナトリウム(Fluka社)から選択した。
【0094】
全ての例で用いたスプレー乾燥温度は100℃であり、噴霧圧は3.5barだった。オキシコドンを含有する複合物粒子の体積中央径(median volume diameter)は、2187μm〜3295μmの範囲内だった。
【0095】
これらの配合物の詳細を以下に列挙する。
【実施例1】
【0096】
〔実施例1:非イオン性界面活性剤混合物〕
1.8208 gのオキシコドンを、657mLのエタノール中で90分間、磁気撹拌棒を用いて撹拌しておいた。1.640 gのHPMCをこのエタノール溶液に添加し、磁気撹拌棒を用いて1時間撹拌しておいた。それとは別に、144mLの水に0.273gのマルチトール、0.273gのポリデキストラン、0.273gのプルロニック(Pluronic) F127、及び0.273gのTween 80を添加し、磁気撹拌棒を用いて約20分間撹拌しておくことによって、水溶液を調製した。次に、その水溶液をオキシコドンのエタノール溶液に添加し、約0.5時間撹拌しておいた。
その溶液をつぎにBUCHI Mini B-290スプレー乾燥機を用い、100℃で、2.326 ml/分の液体供給速度でスプレー乾燥させた。白色の自由流動性の粉体が得られた。
Malvern Mastersizer 2000を使用した粒径測定は、d(0,5)が2.665μmであることを示した。
【実施例2】
【0097】
〔実施例2:高HPMC含量及び高ポリソルベート含量〕
2.003gのオキシコドンを、磁気撹拌棒を用いて700mLのエタノール中で90分間撹拌しておいた。1.80gのHPMCをこのエタノール溶液に添加し、磁気撹拌棒を用いて1時間撹拌しておいた。それとは別に、0.3gのマルチトール、0.3gのポリデキストラン、及び0.6gのTween 80を158mLの水に添加し、磁気撹拌棒を用いて約20分間撹拌しておいた。次にこの水溶液を上記のオキシコドンのエタノール溶液に添加し、約0.5時間撹拌しておいた。
この溶液をつぎにBUCHI Mini B-290スプレー乾燥機を使用して、100℃において、2.028ml/分の液体供給速度でスプレー乾燥した。白色の自由流動性の粉体が得られた。
Malvern Mastersizer 2000を使用した粒径測定は、d(0,5)が2.187μmであることを示した。
【実施例3】
【0098】
〔実施例3:イオン性界面活性剤/高ポリオール含量〕
2.008gのオキシコドンを、磁気撹拌棒を用いて700mLのエタノール中で90分間撹拌しておいた。1.20gのHPMCをこのエタノール溶液に添加し、磁気撹拌棒を用いて1時間撹拌しておいた。それとは別に、0.1gのSLS及び1.7gのマニトールを158mLの水に添加し、撹拌棒を用いて約20分間撹拌しておいた。次にこの水溶液を上記のオキシコドンのエタノール溶液に添加し、約0.5時間撹拌しておいた。
この溶液をつぎにBUCHI Mini B-290スプレー乾燥機を使用して、100℃において、2.5ml/分の液体供給速度でスプレー乾燥した。白色の自由流動性の粉体が得られた。
Malvern Mastersizer 2000を使用した粒径測定は、d(0,5)が2.906μmであることを示した。
【実施例4】
【0099】
〔実施例4〕
1.80gのPVPを、磁気撹拌棒を用いて、700mLのエタノール中で20分間、完全に溶けるまで撹拌しておいた。2.00gのオキシコドンをそのエタノール溶液に添加し、磁気撹拌棒を用いて2時間撹拌しておいた。それとは別に、0.3gのマルチトール、0.3gのプルロニック(Pluronic)F127、0.300gのポリデキストラン、及び0.3gのTween 80を158mLの水に添加し、撹拌棒を用いて約20分間撹拌しておいた。次にこの水溶液を上記のオキシコドンのエタノール溶液に添加し、約0.5時間撹拌しておいた。
この溶液をつぎにBUCHI Mini B-290スプレー乾燥機を使用して、100℃において、2.47ml/分の液体供給速度でスプレー乾燥した。白色の自由流動性の粉体が得られた。
Malvern Mastersizer 2000を使用した粒径測定は、d(0,5)が3.295μmであることを示した。
【実施例5】
【0100】
2.00gのオキシコドンを、磁気撹拌棒を用いて700mLのエタノール中で90分間撹拌しておいた。1.50gのHPMCと0.5gのPVP K30をこのエタノール溶液に添加し、磁気撹拌棒を用いて1時間撹拌しておいた。それとは別に、0.3gのマルチトール、0.3gのポリデキストラン、及び0.6gのTween 80を158mLの水に添加し、磁気撹拌棒を用いて約20分間撹拌しておいた。次にこの水溶液を上記のオキシコドンのエタノール溶液に添加し、約0.5時間撹拌しておいた。
この溶液をつぎにBUCHI Mini B-290スプレー乾燥機を使用して、100℃において、2.384ml/分の液体供給速度でスプレー乾燥した。白色の自由流動性の粉体が得られた。
Malvern Mastersizer 2000を使用した粒径測定は、d(0,5)が2.499μmであることを示した。
【0101】
0.1M HClを用いるII型USP溶解装置を使用して、90%の薬剤が5分以内に溶けることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性オピオイドを含む組成物の製造方法であって、以下の工程:
a)i)非水溶性オピオイド
ii)水溶性担体、及び
iii)前記オピオイドと前記担体のそれぞれのための溶媒、
を含む混合物を準備する工程;並びに、
b)前記混合物をスプレー乾燥させて前記すなわちそれぞれの溶媒を除去し、前記担体中の前記オピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、
を含む、製造方法。
【請求項2】
以下の工程:
a)i)オピオイドのための水に非混和性の溶媒中のオピオイドの溶液と
ii)担体の水溶液、とを含むエマルションを準備する工程;及び
b)前記エマルションをスプレー乾燥させて、水と、水に非混和性の溶媒とを除去し、前記担体中のオピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、
を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
以下の工程:
a)i)少なくとも1種の非水性溶媒、
ii)任意選択で水、
iii)(i)及び(ii)の混合物中に可溶性の水溶性担体物質、及び
iv)(i)及び(ii)の混合物中に可溶性の非水溶性オピオイド、
を含む単一相混合物を準備する工程;並びに
b)前記の溶液をスプレー乾燥させて、水と、水に混和性の溶媒とを除去し、担体中のオピオイドの実質的に溶媒を含まないナノ分散体を得る工程、
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記スプレー乾燥を120℃以上の温度で行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記担体物質が高分子及び/又は界面活性剤を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記担体物質が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピル-メチルセルロース、並びにアルギネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記担体物質が、アルコキシル化ノニオン界面活性剤、エーテルサルフェート界面活性剤、カチオン界面活性剤、又はエステル界面活性剤のうち少なくとも1つを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記非水性溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、及びジメチルスルホキシドのうち少なくとも1種を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法によって組成物を調製する工程を含む、鎮痛に、麻酔に、又は下痢の治療に用いる医薬の調製方法。
【請求項10】
非水溶性オピオイドと水溶性担体とを含む組成物であって、前記担体中に分散された100〜1500nmの平均粒径をもつオピオイド粒子を含む組成物。
【請求項11】
前記組成物が、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたか又は得ることができる、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記オピオイド粒子の平均粒径が200〜1000nm、400〜1000nm、又は500〜800nmである、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記オピオイド粒子が実質的に結晶である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記オピオイド粒子が前記組成物を調製するために用いた当初のトリプタン物質の結晶性を保持している、請求項10〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記オピオイド粒子が実質的にアモルファス物質を含まない、請求項10〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
一種以上のさらなる医薬活性剤をさらに含有する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
鎮痛剤、例えば、パラセタモール又はNSAIDを含有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
制吐剤、例えば、ハロペリドールを含有する、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
胃腸運動促進剤、例えば、ドンペリドン又はメトクロプラミンを含有する、請求項16〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
緩下剤を含有する、請求項16〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
オキシダーゼ阻害剤、例えばキニン誘導体を含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
鎮痛に、麻酔に、又は下痢の治療に用いるための、請求項10〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項10〜21のいずれか一項に記載の組成物の治療上有効量を患者に投与する工程を含む、鎮痛、麻酔、又は下痢の治療を提供する方法。

【公表番号】特表2009−542795(P2009−542795A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518980(P2009−518980)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050409
【国際公開番号】WO2008/007152
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509011857)ユニリーバー・ピーエルシー (11)
【Fターム(参考)】