説明

半導体ウェーハの研削方法、研削用定盤および研削装置

【課題】大口径化したウェーハであっても、従来と同様の平坦度を有するシリコンウェーハを、優れた生産効率で得ることができる方法および装置を提供する。
【解決手段】複数の被処理ウェーハをキャリアに保持して上下の回転定盤間で回転させることにより、前記半導体ウェーハの両面を同時に研削する半導体ウェーハ研削方法。前記キャリアにおける前記ウェーハ保持位置が、前記複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置するとともに、 前記複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定し、前記回転定盤の固定砥粒表面は格子状に設けられたペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの研削方法に関する。特に、450mm前後の直径を有する大型のウェーハを好適に研削できる、上下の定盤間でキャリアを用いてウェーハの両面を同時研削するウェーハの研削方法およびこの方法に用いられる半導体ウェーハ研削用定盤および研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等からなる半導体ウェーハ製造時におけるウェーハの両面同時研削において、ワーク(半導体ウェーハ)を保持するキャリアに挿入するワークの枚数は、従来1枚から多くて10枚程度にて研磨を行うものが一般的である。そのワーク枚数については装置サイズ、ワーク直径等から生産性を加味したもの、またはワークの軌道、砥液の行き渡りを考慮した仕様等さまざまなものが存在する。
【0003】
このような半導体ウェーハの両面研磨装置としては遊星歯車方式のものが使用される。しかし、遊星歯車方式の研磨装置を用いると、外周ダレ(周縁部ダレ)が生じ、高平坦度のウェーハを得ることが出来ないという問題がある。この外周ダレの対策として、キャリアデザインによる平坦度改善を狙った手法が、特許文献1に提案されている。この手法は、その厚みを高精度にコントロールしワークの最終厚みにキャリアの厚みを近づけ、ワーク外周部への応力をキャリアにも分散させ、平坦なワークを得る技術(定寸研磨)である。
【0004】
しかし、この特許文献に記載された手法では、依然として、ウェーハ周辺ダレの発生が防止できないという問題があった。
【特許文献1】特開2002−254299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本願発明者らは、ワークである半導体ウェーハと該半導体ウェーハを収納しているキャリアにかかる圧力との関係について種々検討し、その結果、キャリアにおけるホール中心を通る円半径としてホール間隔を規定する円半径(PCD)、および/または、ワーク間距離を所定の範囲に設定したキャリアを用いて研磨することにより、定盤からの圧力をウェーハ面内で均一に分散でき、生産性を低下させずにかつキャリアの短命化を発生させることなく上記問題点を解決できることを見いだした。
【0006】
見出された解決手段として、半導体ウェーハの両面研磨装置であって、上下一対の回転定盤と、回転定盤間の回転中心部に設けられた太陽歯車と、回転定盤間の外周部に設けられた環状の内歯歯車と、前記上下の回転定盤間に設けられ前記太陽歯車及び前記内歯歯車にそれぞれ噛み合う遊星歯車となるキャリアと、を備え、前記キャリアには被処理ウェーハ収容孔となるホールが複数設けられ、前記複数のホールはその中心が同一の円周上に位置するとともに、この前記複数のホール中心を通る円と単一の前記被処理ウェーハとの面積比が、1.33以上2.0未満とされてなる半導体ウェーハ研磨装置を発明し、特許出願した(特願2007-165039号)。
【0007】
さらに、複数の被処理ウェーハをキャリアに保持して上下の回転定盤間で回転させることにより、前記半導体ウェーハの両面を同時に研磨するウェーハ研磨方法において、前記キャリアにおける前記ウェーハ保持位置が、前記複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置するとともに、この前記複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定する半導体ウェーハ研磨方法を発明し、特許出願した(同上)。
【0008】
ところで、シリコン単結晶から切り出されるシリコンウェーハのサイズは、約10年のサイクルで大口径化している。デバイスメーカーでは、シリコンウェーハのサイズを大口径化することで、デバイスの製造効率を挙げることが望まれている。このような状況から、近い将来現状の直径300mmの1.5倍程度の大口径の直径を有する約450mmのシリコンウェーハを製造することが計画されている。
【0009】
直径が450mmのシリコンウェーハの研磨は、ウェーハの面積が従来の300mm以下のシリコンウェーハに比べて2倍以上になるので、従来と同様の手法では、生産効率を維持しながら従来と同様の平坦度にシリコンウェーハを研磨することは困難であろうと予想された。
【0010】
特に、従来用いられていた遊離砥粒を用いたラップと固定砥粒を用いた研削の組み合わせで、生産効率を維持しながら従来と同様の平坦度を有するシリコンウェーハを得ることは困難であった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、大口径化したウェーハであっても、従来と同様の平坦度を有するシリコンウェーハを、優れた生産効率で得ることができる方法および装置を提供することである。
【0012】
ところで、従来の加工機構は内周ギア外周ギアを有したものが主流であり、そのような機構では将来の大口径化に対しては、内周と外周の収束差による品質の劣化が懸念された。
【0013】
前記特許出願中の半導体ウェーハ研磨装置は、内周ギアを有さない機構を有し、ウェーハの大型化にともなう装置の大型化を抑制できる。さらに、ウェーハ自体は内周と外周の周速差をカバーするためウェーハを揺動させ、各種ペレットを定盤寸法などから、ウェーハエリア毎に配置する。
【0014】
そこで、本発明は上記問題を解決することを課題とするものであり、前記特許出願中の半導体ウェーハ研磨装置を固定砥粒を用いた研削に転用して、次世代のシリコンウェーハである、大型の直径が450mmのシリコンウェーハの研削について種々検討を行った。その結果、従来の固定砥粒研削におけるペレットの配置は一様であり、ウェーハの外側だけ削れて、内側が削れにくく、ウェーハ中心部の表面が盛り上がってしまうという問題があることが判明した。そして、この問題を解決すべく種々検討し、解決手段を見出して本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討した結果、研削に用いる固定砥粒定盤の中心部のエッジの数と周辺部のエッジの数を調整することで、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
【0016】
本発明の第1の態様は複数の被処理ウェーハをキャリアに保持して上下の回転定盤間で回転させることにより、前記半導体ウェーハの両面を同時に研削する半導体ウェーハ研削方法において、
前記キャリアにおける前記ウェーハ保持位置が、前記複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置するとともに、
前記複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定し、
前記回転定盤の固定砥粒表面は格子状に設けられたペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする半導体ウェーハ研削方法である。
【0017】
本発明の第2の態様は、半導体ウェーハ研削用定盤であって、ウェーハ表面と対向する固定砥粒表面は格子状のペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする定盤である。
【0018】
本発明の第3の態様は、上下一対の回転定盤と、回転定盤間の回転中心部に設けられた太陽歯車と、回転定盤間の外周部に設けられた環状の内歯歯車と、前記上下の回転定盤間に設けられ前記太陽歯車及び前記内歯歯車にそれぞれ噛み合う遊星歯車となるキャリアと、を備え、
前記キャリアには被処理ウェーハ収容孔となるホールが複数設けられ、
前記複数のホールはその中心が同一の円周上に位置し、前記複数のホール中心を通る円と単一の前記被処理ウェーハとの面積比が、1.33以上2.0未満とされてなり、
前記回転定盤の定盤が上記本発明の定盤である半導体ウェーハ研削装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次世代ウェーハである直径が450mmの大型のシリコンウェーハであっても、固定砥粒定盤を用いた両面研磨によって高い平坦度で研削できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[半導体ウェーハ研削方法]
本発明の第1の態様である半導体ウェーハ研削方法は、複数の被処理ウェーハをキャリアに保持して上下の回転定盤間で回転させることにより、前記半導体ウェーハの両面を同時に研削する半導体ウェーハ研削方法である。この方法は、
前記キャリアにおける前記ウェーハ保持位置が、前記複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置すること、
前記複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定すること、
前記回転定盤の固定砥粒表面は格子状に設けられたペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいこと
を特徴とする。
【0021】
本発明の半導体ウェーハ研削方法は、例えば、以下の半導体ウェーハの両面研削装置(第3の態様)を用いて実施できる。
この装置は、上下一対の回転定盤と、回転定盤間の回転中心部に設けられた太陽歯車と、回転定盤間の外周部に設けられた環状の内歯歯車と、前記上下の回転定盤間に設けられ前記太陽歯車及び前記内歯歯車にそれぞれ噛み合う遊星歯車となるキャリアと、を備え、
前記キャリアには被処理ウェーハ収容孔となるホールが複数設けられ、
前記複数のホールはその中心が同一の円周上に位置し、前記複数のホール中心を通る円と単一の前記被処理ウェーハとの面積比が、1.33以上2.0未満とされてなるものである。
【0022】
本発明の半導体ウェーハ研削方法の特徴である、キャリアにおけるウェーハ保持位置が複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置すること、および記複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定することについては、上記研削装置の詳細とともに後述する。
【0023】
本発明の半導体ウェーハ研削方法は、回転定盤の固定砥粒表面が格子状に設けられたペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする。本発明の半導体ウェーハ研削方法は、半導体ウェーハ研削用定盤であって、ウェーハ表面と対向する固定砥粒表面は格子状のペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする定盤(本発明の第2の態様)を用いて実施できる。
【0024】
通常の半導体ウェーハ研削用定盤は、ウェーハ表面と対向する固定砥粒表面に格子状のペレットが設けられた、ペレットの大きさや配置は一様である。それに対して本発明で用いる半導体ウェーハ研削用定盤(本発明の第2の態様)は、ウェーハ表面と対向する固定砥粒表面は格子状のペレットから構成される点は、通常の半導体ウェーハ研削用定盤と同様であるが、ペレットの大きさは一様ではなく、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中間部(中心部および周辺部の間)に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする。
【0025】
中心部および周辺部に設けられたペレットの大きさと中間部に設けられたペレットの大きさは、研削の際に回転するウェーハ表面の各位置における周速を考慮して適宜決定できる。研削の際に回転するウェーハ表面の各位置における周速は、用いられる研削装置のウェーハの運動様式によって異なるが、本発明のキャリアにおけるウェーハ保持位置が複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置し、かつ複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定する、方法においては、450mmウェーハについて測定の結果、条件により幅はあるが、図4−1に示すように、ウェーハ中心の周速をωとすると、R(半径)/2における周速は1.2〜1.6ωの範囲、外周における周速は1.7〜2ωの範囲である。この周速の違いにより、研削用定盤のペレットの大きさが一様な場合、外周における研削が中心部における研削より促進されて、即ち、外周における研削効率が中心部における研削効率より高いので、前述のような平坦度不良を生じる。
【0026】
さらに、上記本発明の研削方法では、ウェーハ自体は内周と外周の周速差をカバーするために揺動させているが、中心部は定盤との接触時間が長いことから、周速に基づく研削効率は低いが、研削量は、外周における研削量とほぼ同等になり、結果として、中間部(中心部および周辺部の間)における研削量が最も低くなることが判明した。
【0027】
そこで本発明では、上記研削効量の中心部、中間部および外周部における違いを補正するために、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中間部に設けられたペレットより寸法を大きくする。例えば、図4−2に示すように、中心部および周辺部に設けられたペレットは、右上に示す大きめのとし、中間部に設けられたペレットは、左上に示す小さめのペレットにする。ペレットの寸法が大きい程、研削効率は低くなるので、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中間部に設けられたペレットより寸法を大きくすることで、平坦度を高くすることができる。図中の面積比が、中心部6%、中間部52%および外周部42%である。
【0028】
定盤の固定砥粒表面にはペレットを格子状に設けるが、ペレットの平面形状は、例えば、方形、矩形、多角形(三角、六角、八角等)、円形、楕円形等、限定はない。これら形状のペレットを所定の間隔を空けて格子状に設ける。ペレットとペレットの間隔は、研削屑の排出性能や、ペレットの密度を考慮して適宜決定できる。また、1つの定盤の固定砥粒表面に、ペレットの形状に依存する切削効率の違いを考慮して、平面形状の異なるペレットを設けることもできる。
【0029】
例えば、ペレットの平面形状が正方形の場合、中心部および周辺部に設けられたペレットの一辺の長さは、中間部に設けられたペレットの一辺の長さの1.1倍〜10倍の範囲から、切削効率を考慮して適宜決定できる。
【0030】
異なる寸法を有するペレットを設ける定盤の固定砥粒表面の領域は、中心部、中間部および周辺部の半径の比率(中心部:中間部:周辺部)が、例えば、1:0.5〜2:0.5〜2の範囲であることができる。中心部、中間部および周辺部における研削量は、研削方法の設定条件によっても異なるし、ウェーハの直径によっても異なる。上記比率は、これらの要素を勘案して、適宜決定できる。
【0031】
以下、本発明に用いる半導体ウェーハ研削装置および研削方法の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、半導体ウェーハ研削装置を説明するための正面図であり、図2は図1におけるA−A線矢視平面図である。
【0032】
半導体ウェーハ研削装置は、図1,図2に示すように、水平に支持された環状の下定盤(回転定盤)1と、下定盤1に上方から対向する環状の上定盤(回転定盤)2と、環状の下定盤1の内側に配置された太陽歯車3と、下定盤1の外側に配置されたリング状の内歯歯車4とを備えている。
【0033】
下定盤1は、モータ11により回転駆動される。上定盤2は、シリンダ5にジョイント6を介して吊り下げられ、下定盤1を駆動するモータ11とは別のモータにより逆方向に回転駆動される。また、下定盤1との間に研削液を供給するためのタンク7を含む研削液供給系統を装備している。太陽歯車3及び内歯歯車4も、定盤を駆動するモータとは別のモータ12により独立に回転駆動される。
【0034】
下定盤1及び上定盤2の対向面には、前記本発明の第2の態様の固定砥粒表面を有する定盤が設置される。
【0035】
下定盤1上には、複数のキャリア8が太陽歯車3を取り囲むようにセットされる。セットされた各キャリア8は、内側の太陽歯車3及び外側の内歯歯車4にそれぞれ噛み合う。各キャリア8には、半導体ウェーハ(ワーク)10を収容するホール9が偏心して設けられている。そして、各キャリア8の厚みは、ウェーハ10の最終仕上がり厚みの目標値と同一か、これより僅かに小さく設定されている。
【0036】
ウェーハ10の研削を行うには、上定盤2を上昇させた状態で、下定盤1上に複数のキャリア8をセットし、各キャリア8のホール9にウェーハ10をセットする。上定盤2を下降させ、各ウェーハ10に所定の加圧力を付加する。この状態で、下定盤1と上定盤2の間に研削液を供給しながら、下定盤1、上定盤2、太陽歯車3及び内歯歯車4を所定の方向に所定の速度で回転させる。
【0037】
これにより、下定盤1と上定盤2の間で複数のキャリア8が自転しながら太陽歯車3の周囲を公転するいわゆる遊星運動をおこなう。各キャリア8に保持されたウェーハ10は、研削液の存在下で上下の固定砥粒と摺接し、上下両面が同時に研削される。研削条件は、ウェーハ10の両面が均等にかつ複数のウェーハ10が均等に研削されるように設定される。
【0038】
研削中、下定盤1を駆動するモータ11のトルク、或いは上定盤2を駆動するモータのトルクが監視される。そして、そのトルクが安定値から、予め設定した比率、例えば10%低下した時点で、上定盤2を上昇させて研削を終了する。これにより、ウェーハ10の最終仕上がり厚さは、研削前キャリア厚みより僅かに薄いか同一の厚みに高精度かつ安定的に管理される。
【0039】
各キャリア8の材質としては、定盤との摩擦で劣化するので、耐磨耗性が高く固定砥粒との摩擦係数が小さい材質で、且つ例えば、pH12〜15のアルカリ溶液中での耐薬品性が高いものが好ましい。このような条件を満足するキャリア材としては、ステンレス鋼、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド等の樹脂、あるいはこれら樹脂にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の強化繊維を複合したFRPを挙げることができる。またキャリア8はウェーハ10保持のために使用することからあまり強度を落とすことはできない。
【0040】
図3は、本実施形態における半導体ウェーハ研削方法およびキャリアにおけるホール配置を説明するための平面図である。
キャリア8には、図3に示すように複数のホール9が設けられ、本実施形態では3カ所とされている。
【0041】
本実施形態のキャリア8では、3つのホール9はその中心C9が、キャリア8と同心状である円周P上に位置するとともに、それぞれ円Pの中心(キャリア8中心の中心)CPに対して回転点対称であるように、円P上で等間隔に配置されている。また、ホール9の大きさは、このホール9中心C9を通る円Pとウェーハ10とほぼ等しいホール9との面積比が、1.33以上2.0未満とされ、より好ましくは、1.33以上1.5以下とされている。
【0042】
つまり、円Pの半径Rとホール9の半径rとが、
1.33…<(R/r)2 ≦1.5
となるように設定されている。
なお、この面積比(半径比自乗)の規定範囲の下限は、1.3333…以上であればよく、1.334以上でもかまわない。
【0043】
キャリア8におけるホール9中心C9を通る円Pとホール9との面積比が上記の範囲以下であると、キャリア8にホール9を2つしか設けることができず、同一キャリア8で処理したウェーハ10の処理が均等にならない上、ウェーハ10のダレ防止に効果を奏さないため好ましくない。また、この面積比の上限を2以上とした場合で、キャリア8に3カ所のホール9を設けた際には、ウェーハ10間の距離が長くなりすぎ、ウェーハ10のダレ防止に効果を奏さないため好ましくない。また、面積比の上限を2以上とした場合で、キャリア8に4カ所以上のホール9を設けた際には、圧力集中の分散が充分なされないため、ウェーハ10のダレ防止に効果を奏さないため好ましくない。また、面積比の上限が1.5以上2未満とした場合にダレ防止を呈することは可能であるが、製品ウェーハとして十分な平坦度を得るためには1.5以下とすることがより好ましい。
【0044】
なお、ウェーハ10とホール9との大きさは、ほぼ同一とされ、ウェーハ10がφ200mmの場合にホール9径は201mm、ウェーハ10がφ300mmの場合にホール9径は302mmとされる。
【0045】
本実施形態においては、上記のように、ホール9の形成されたキャリア8を用いてウェーハ10を両面研削することで、高平坦度なポリッシュドウェーハを製造することが可能となる。
【0046】
本実施形態によれば、両面研削される半導体ウェーハ10間の距離を減少してウェーハ10どうしを接近させることで、1つのキャリア8において、3カ所のホール9内に配置された各ウェーハ10をあたかも一枚のウェーハ10のように研削する状態に近づけることができる。このため、本実施形態では、1枚のウェーハ10の周縁全長に対して、圧力集中の起こる長さを部分的にすること、つまり、可撓性のある定盤1,2表面のパッド15,25がウェーハ10とキャリア8との厚みの差から、パッド15,25からの圧力がウェーハ10周縁部に集中して、ウェーハ10周縁部での研削状態が大きくなる部分を減少することが可能となる。これにより、研削終了時における1枚のウェーハ10に対する周縁部全周への研削圧力集中を緩和することが可能となり、各ウェーハ10周縁部におけるダレ発生を低減することが可能になると考えられる。
【0047】
なお、本実施形態においては、キャリア8が3枚の構成としたが、他の枚数でもよく、また、これ以外にも、各キャリア8内でのホール9またはウェーハ10の配置が上述した構成であれば、研削装置の各構成はどのようなものでも適応可能である。
【0048】
また、ウェーハ10は、シリコンウェーハやそれ以外の半導体からなるものでよく、また、φ200mm、φ300mm、その他、φ450mm等どのような口径のウェーハにも適応可能である。しかし、特に、大型化した、直径400〜500mmの範囲にあるシリコンウェーハの洗浄に、本発明の方法および装置は好適である。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明する。
上記のように構成された研削装置および円Pとホール9との面積比の異なるキャリアを用意し、それぞれのキャリアによって、半導体ウェーハ(シリコンウェーハ)10の研削をおこない、研削後の平坦度を測定した。
研削条件等の諸元を以下に示す。
【0050】
研削ウェーハ:450mmシリコンウェーハ
研削装置:Speed Fam 社製20B両面研削装置
研削用固定砥粒:ダイヤモンド
研削液:pH14
研削圧:200g/cm2
キャリア:ステンレス鋼製
研削枚数:3ホールキャリア5枚使用(15枚バッチ)
円Pとホール9との面積比;138%、144%,150%、163%
【0051】
研削後ADE(静電容量型表面平坦度測定器)にてフラットネス(TTV;Total Thickness Variation(μm))を測定した。これらの結果を図5に示す。本発明の例を右(good)に示し、従来の例を左(bad)に示す。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明はシリコン製造分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明に用いる半導体ウェーハ研削装置の一実施形態を説明するための正面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A線矢視平面図である。
【図3】図3は、本発明に係る半導体ウェーハ研削方法の一実施形態およびキャリアにおけるホール配置を説明するための平面図である。
【図4】図4−1および4−2は、ウェーハ表面と固定砥粒表面についての説明図である。
【図5】図5は、実施例における平坦度測定結果である。
【符号の説明】
【0054】
1…下定盤
2…上定盤
3…太陽歯車
4…内歯歯車
8…キャリア
9…ホール
10…半導体ウェーハ(ウェーハ)
P…円(円周)
C9,CP…中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被処理ウェーハをキャリアに保持して上下の回転定盤間で回転させることにより、前記半導体ウェーハの両面を同時に研削する半導体ウェーハ研削方法において、
前記キャリアにおける前記ウェーハ保持位置が、前記複数のウェーハの中心を同一の円周上に位置するとともに、
前記複数のウェーハ中心を通る円と単一の前記ウェーハとの面積比を、1.33以上2.0未満となるよう設定し、
前記回転定盤の固定砥粒表面は格子状に設けられたペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする半導体ウェーハ研削方法。
【請求項2】
中心部および周辺部に設けられたペレットの一辺の長さは、中間部に設けられたペレットの一辺の長さの1.1倍〜10倍の範囲である、請求項1に記載の研削方法。
【請求項3】
中心部、中間部および周辺部の半径の比率(中心部:中間部:周辺部)が1:0.5〜2:0.5〜2の範囲である請求項1または2に記載の研削方法。
【請求項4】
前記ウェーハの直径が400〜500mmの範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の研削方法。
【請求項5】
半導体ウェーハ研削用定盤であって、
ウェーハ表面と対向する固定砥粒表面は格子状のペレットから構成され、中心部および周辺部に設けられたペレットは、中心部および周辺部の間の中間部に設けられたペレットより寸法が大きいことを特徴とする定盤。
【請求項6】
中心部および周辺部に設けられたペレットの一辺の長さは、中間部に設けられたペレットの一辺の長さの1.1倍〜10倍の範囲である、請求項5に記載の定盤。
【請求項7】
中心部、中間部および周辺部の半径の比率(中心部:中間部:周辺部)が1:0.5〜2:0.5〜2の範囲である請求項5または6に記載の定盤。
【請求項8】
上下一対の回転定盤と、回転定盤間の回転中心部に設けられた太陽歯車と、回転定盤間の外周部に設けられた環状の内歯歯車と、前記上下の回転定盤間に設けられ前記太陽歯車及び前記内歯歯車にそれぞれ噛み合う遊星歯車となるキャリアと、を備え、
前記キャリアには被処理ウェーハ収容孔となるホールが複数設けられ、
前記複数のホールはその中心が同一の円周上に位置し、前記複数のホール中心を通る円と単一の前記被処理ウェーハとの面積比が、1.33以上2.0未満とされてなり、
前記回転定盤の定盤が請求項5〜7のいずれかに記載の定盤である半導体ウェーハ研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−289925(P2009−289925A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140018(P2008−140018)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】