説明

半導体チップの外観検査方法

【課題】半導体チップの外観検査において、電極部やメサエッチ部の製造上の大きさのばらつきや位置ずれに拘わらず、検査精度の高い半導体チップの外観検査方法を提供する。
【解決手段】半導体ウエハ22全体よりは十分に小さく且つその所定のLEDチップ10を含む局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンを、予め記憶する周辺パターン記憶工程( S5)と、半導体ウエハ22内の複数のLEDチップ10のうちの所定のLEDチップ10の被検査面を選択するための検査パターンを、上記局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンに基づいて決定する検査パターン決定工程( S3、S4)とを、含む。検査パターンは、検査すべき所定のLEDチップ10が有する局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映されたものとなり、外観検査精度が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップの外観を撮像して、その撮像画像から外観検査を行うことのできる半導体チップの外観検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの表面の画像情報を光電変換器或いは撮像カメラを用いて明度に対応する電気信号に変換し、その電気信号を所定の閾値と比較してその画像情報にきず、割れ、欠け、などの欠陥が含まれるか否かを判定する半導体チップの外観検査方法が提案されている。たとえば、特許文献1に記載された半導体チップの外観検査装置がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−082377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記半導体チップの表面に配置される電極部やメサエッチ部は、製造上のばらつきによって大きさのばらつきや位置ずれが発生するが、規格内の大きさのばらつきや位置ずれであれば、その半導体チップを合格品と判定することが望まれる。しかしながら、上記のような従来の半導体チップの外観検査方法では、所定の半導体チップの画像中から予め設定された検査パターンを通して選択された被検査面内の明度と所定の閾値と比較して、半導体チップの外観の良否を判定することから、上記のように電極部やメサエッチ部の製造上の大きさのばらつきや位置ずれが存在すると誤った良否判定が行われて、検査精度が得られない場合があった。たとえば、不合格品と判定すべき半導体チップであっても合格品と判定したり、或いは合格品と判定すべき半導体チップであっても不合格品と判定したりするという不都合があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、半導体チップの外観検査において、電極部やメサエッチ部の製造上の大きさのばらつきや位置ずれに拘わらず、検査精度の高い半導体チップの外観検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) 半導体ウエハから製造され且つ該半導体ウエハにおける配列位置を維持する複数の半導体チップを順次撮像し、該撮像された所定の半導体チップの画像中から予め設定された検査パターンを通して選択された被検査面内の明度変化に基づいて、前記半導体チップの外観の良否を逐次判定する半導体チップの外観検査方法であって、(b) 前記複数の半導体チップのうちの所定の半導体チップの外観を検査するに際して、前記半導体ウエハ全体よりは十分に小さく且つ該所定の半導体チップを含む局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンを、予め記憶する周辺パターン記憶工程と、(c) 前記複数の半導体チップのうちの外観検査を行う所定の半導体チップの被検査面を選択するための検査パターンを、前記周辺パターン記憶工程において予め記憶された前記局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンに基づいて決定する検査パターン決定工程とを、含むことにある。
【0007】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(d) 前記検査パターン決定工程は、前記半導体ウエハの局所領域内の複数個の半導体チップのパターンを平均することにより、前記所定の半導体チップの被検査面を選択するための検査パターンを設定するものであることにある。
【0008】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1または請求項2に係る発明において、(e) 前記周辺パターン記憶工程は、前記所定の半導体チップに隣接する半導体チップを含む前記半導体ウエハの前記局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンを予め記憶するものであることにある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明の外観検査方法によれば、前記複数の半導体チップのうちの所定の半導体チップの外観を検査するに際して、前記半導体ウエハ全体よりは十分に小さく且つ該所定の半導体チップを含む局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンを、予め記憶する周辺パターン記憶工程と、前記複数の半導体チップのうちの外観検査を行う所定の半導体チップの被検査面を選択するための検査パターンを、前記周辺パターン記憶工程において予め記憶された前記局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンに基づいて決定する検査パターン決定工程とを、含むことから、検査パターンは、検査すべき所定の半導体チップが有する局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映されたものとなるので、その検査パターンを用いて行われる所定の半導体チップの外観の良否判定の検査精度が高められる。すなわち、半導体ウエハ内の局所的な位置ずれや大きさのばらつきに起因する誤った良否判定が回避されて、高い検査精度が得られる。
【0010】
また、請求項2に係る発明の外観検査方法によれば、前記検査パターン決定工程は、前記半導体ウエハの局所領域内の複数個の半導体チップのパターンを平均することにより、前記所定の半導体チップの被検査面を選択するための検査パターンを設定するものであることから、その検査パターンは、検査すべき所定の半導体チップが有する半導体ウエハ内の局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映されたものとなる。加えて、検査パターンを複数個から平均で設定するため、比較的簡単に設定処理をすることができる。
【0011】
また、請求項3に係る発明の外観検査方法によれば、前記周辺パターン記憶工程は、前記所定の半導体チップに隣接する半導体チップを含む前記半導体ウエハの局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンを予め記憶するものであることから、それら予め記憶された局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンに基づいて、検査すべき所定の半導体チップが有する半導体ウエハ内の局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映された検査パターンを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例である外観検査方法を実施する外観検査装置の主要部を模式的に示した構成図である。
【図2】図1の外観検査装置で検査される、チップ状で示されるLEDチップの側面図である。
【図3】図1の外観検査装置で検査される、チップ状で示されるLEDチップの平面図である。
【図4】図1の外観検査装置で実施される半導体ウエハ内のLEDチップの検査順序を示す図である。
【図5】図1の外観検査装置で検査されるLEDチップの外観検査方法を説明する図である。
【図6】半導体ウエハにおけるメサエッチングの深さの局所的傾向の一例を示す図である。
【図7】半導体ウエハにおけるメサエッチングの深さの局所的傾向の一例を示す図である。
【図8】半導体ウエハにおいてLEDチップの上部電極部が正規の位置である場合を示す図である。
【図9】半導体ウエハにおいてLEDチップの上部電極部の位置が、角度位置θのばらつきによりずれた場合を示す図である。
【図10】破線内に示される検査対象領域Aを通して選択される被検査面が実際の上部電極部よりも小さく、その検査対象領域Aすなわち被検査面の外側の上部電極部上に欠点Ka が存在するときに、不良品であるにも拘わらず良品と判定してしまう場合を示す図である。
【図11】破線内に示される検査対象領域Aを通して選択される被検査面が実際の上部電極部10c よりも大きいときには、上部電極部よりも明度の低い光出力面がその被検査面内に含まれるため、良品であるにも拘わらず不良品と判定してしまう場合を示す図である。
【図12】破線内に示される検査対象領域Aを通して選択される被検査面が実際の上部電極部に対してずれているため、その検査対象領域Aすなわち被検査面の外側の上部電極部上を検査できないだけでなく、上部電極部よりも明度の低い光出力面がその被検査面内に含まれるため、良品であるにも拘わらず不良品と判定してしまう場合を示す図である。
【図13】破線に示される検査対象領域Cを通して選択される被検査面に対して実際のメサ部がたとえば−Y方向へずれているときは、その検査対象領域Cの内側に位置するメサ部上に欠点Kc が存在しても、不良品であるにも拘わらず良品と判定してしまう場合を示している。
【図14】図1の外観検査装置で実施される外観検査のためのコンピュータの制御作動の要部を説明するためのフローチャートである。
【図15】図14のフローチャートの初期処理ルーチンの作動を詳しく説明するフローチャートである。
【図16】本発明の他の実施例における予め記憶された半導体ウエハ内の局所領域を構成する複数個のLEDチップを示す図である。
【図17】本発明の他の実施例における予め記憶された半導体ウエハ内の局所領域を構成する複数個のLEDチップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の外観検査方法の一例を、ウエハ状態の多数個の半導体発光素子10を被検査物とする場合について、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は本実施例の外観検査方法を実施するための外観検査装置12の主要部を模式的に示した構成図である。図2および図3は、その外観検査装置12の外観検査対象であるLEDチップ10の側面図および平面図である。このLEDチップ10は、たとえば、MOCVD等による半導体基板からの結晶成長、不純物拡散、ホトリソグラフィー等を用いて半導体ウエハ22の状態で一体的に製造され、その半導体ウエハ22から切り出される或いは切り出されたチップ状のLED発光素子であるが、レーザ発光素子や半導体回路素子などの半導体チップであってもよい。
【0015】
図1に示すように、外観検査装置12は、可動ステージ14、顕微鏡カメラ16、照明装置18、図示しないマーキング装置等を備えており、それらは、図示しない基台上に固定具を用いてその位置がそれぞれ固定されている。上記可動ステージ14は、その積載面20に、被検査チップである多数のLEDチップ10から形成された半導体ウエハ22を載置するためのものであり、載置された半導体ウエハ22を図示しないサーボモータやパルスモータ等を用いてX方向およびY方向へ移動させ、顕微鏡カメラ16下にLEDチップ10を1個ずつ位置決めすることができる。上記半導体ウエハ22は、個々のLEDチップ10が分離される前の状態であってもよいが、それらLEDチップ10が分離された後のものであってもよい。すなわち、LEDチップ10が、半導体ウエハ22における相互の配列位置を維持するように載置されていればよい。
【0016】
顕微鏡カメラ16は、LEDチップ10の表面を個々に撮像するためのものであり、顕微鏡カメラ16の対物レンズ24が可動ステージ14の積載面20に対し所定距離離れて相対向するように、すなわち対物レンズ24の光軸がLEDチップ10の表面に対して垂直となるように配置されている。
【0017】
照明装置18は、LEDチップ10を撮像するために必要な照明を提供するためのものであり、顕微鏡カメラ16によって撮像されるLEDチップ10を照射可能且つ顕微鏡カメラ16の撮像に干渉しないように、投射光がLEDチップ10の表面に対して斜めとなる位置に設置されている。
【0018】
画像取込装置26は、顕微鏡カメラ16により撮像されたLEDチップ10を含む画像を取込み、個々の画像を表わす画像信号をコンピュータ28へ順次出力する。図2および図3に示すように、LEDチップ10は、半導体基板から積層された本体部10a と、その本体部10a の下面全体に蒸着またはスパッタにより固着された下部電極部10b と、その本体部10a の上面中央に蒸着またはスパッタにより固着され且つホトリソグラフィー( 感光性レジストを局部的に露光させることで所定パターンで局部的に露出したレジストを成膜する技術) およびエッチングにより所定のパターンとなるように局部的に形成された上部電極部10c と、ホトリソグラフィーおよびエッチングにより所定の深さでLEDチップ10間の境界線に溝状に形成されたメサ部10d とを備え、上記下部電極部10b と上部電極部10c との間に電流が流されることにより本体部10a 内の活性層すなわちpn接合層が発光させられ、その発光が本体部10a の上面の上部電極部10c を除く光出力面10e から出力されるようになっている。
【0019】
コンピュータ28は、画像取込装置26から入力された入力画像において顕微鏡カメラ16の焦点調節が不適切と判断される場合には、顕微鏡カメラ16の焦点調節を行うことを指示する顕微鏡調節信号を顕微鏡コントローラ30に出力する。上記入力画像においてその明度が不適切と判断される場合には、コンピュータ28は、顕微鏡カメラ16の絞りを調節することを指示する絞り調節信号や照明装置18の照明量の調節を行うことを指示する照明調節信号を照明コントローラ32に出力する。そして、コンピュータ28は、適切となった上記入力画像に基づいて、被検査物であるLEDチップ10の良否判定を、後述する図14のフローチャートで説明される外観検査方法に従って実行する。被検査物であるLEDチップ10についてその良否判定が終了すると、隣接する別のLEDチップ10を検査するために、半導体ウエハ22を所定距離移動させることを指示する移動指示信号をステージコントローラ34に出力し、不良判定された不良品のLEDチップ10に対してはマーキング装置を用いて不良マークを所定のインクを用いて付す。
【0020】
顕微鏡コントローラ30は、前記コンピュータ28から出力された顕微鏡調節信号および絞り調節信号に従って、顕微鏡カメラ16の焦点調節および絞り調節を行う。照明コントローラ32は、前記コンピュータ28から出力された照明調節信号に従って、照明装置18の照明量を調節する。
【0021】
ステージコントローラ34は、前記コンピュータ28から出力された移動指示信号に従って、可動ステージ14の積載面20に載置されている半導体ウエハ22をそのなかで、顕微鏡カメラ16の撮像位置の軌跡がたとえば図4に示す予め設定された検査順序の方向に沿うように所定距離ずつ移動させることにより、相互に隣接するLEDチップ10を1つずつ顕微鏡カメラ16の撮像位置に位置させる。なお、本実施例では、可動ステージ14を、1つずつのLEDチップ10の位置に合わせて移動させるものとしたが、可動ステージ14の移動自体は複数個毎であってもよい。例えば、顕微鏡カメラ16内に4個のLEDチップ10が写るように設定し、画像処理の上で4個のLEDチップ10を1つずつ検査するものとしてもよい。
【0022】
上記コンピュータ28による良否判定は、半導体ウエハ22から製造され且つその半導体ウエハ22における配列位置を維持する複数のLEDチップ10を撮像し、それら撮像された所定のLEDチップ10の画像中から予め設定された検査パターンを通して選択された検査対象領域( 被検査面) 内の明度変化に基づいて、明度が予め設定された判定値( 閾値) を下回る部分或いは上回る部分が存在するか否かに基づいて実行される。たとえば、LEDチップ10の画像では、その中央に位置する上部電極部10c は金または金合金などの金属層から構成されているためにその明度(明るさの相対値、輝度率) が最も高く、その上部電極部10c を囲む光出力面10e の明度が次に高く、周縁部に位置するメサ部10d が最も明度が低い性質がある。このため、コンピュータ28は、図5に示すように、上部電極部10c を検査するに際しては、その上部電極部10c のための検査対象領域A内の上部電極部10c の明度と上限判定値( 上側閾値) Lauおよび下限判定値( 下側閾値) Ladとを各走査線においてそれぞれ比較し、明度が上限判定値( 上側閾値) Lauを上回る部分或いは下限判定値( 下側閾値) Ladを下回る部分があれば、キズ或いはゴミ( 異物) 等の欠点Ka が上部電極部10cに存在していると考えられることから不良と判定する。また、コンピュータ28は、図5に示すように、メサ部10d を検査するに際しては、そのメサ部10d のための検査対象領域C内のメサ部10d の明度と上限判定値( 上側閾値) Lcuおよび下限判定値( 下側閾値) Lcdとを各走査線において比較し、明度が上限判定値( 上側閾値) Lcuを上回る部分或いは下限判定値( 下側閾値) Lcdを下回る部分があれば、欠け、キズ等の欠点Kc がメサ部10dに存在していると考えられることから不良と判定する。また、コンピュータ28は、図5に示すように、光出力面10e の検査を実行し、その光出力面10e のための検査対象領域B内の光出力面10e の明度と上限判定値( 上側閾値) Lbuおよび下限判定値( 下側閾値) Lbdとを各走査線において比較し、明度が上限判定値( 上側閾値) Lbuを上回る部分或いは下限判定値( 下側閾値) Lbdを下回る部分があれば、キズ或いはゴミ等の欠点Kb が光出力面10eに存在していると考えられることから不良と判定する。
【0023】
ここで、たとえば数千個乃至数万個のLEDチップ10の結合体である円板状の半導体ウエハ22では、その製造時のホトリソグラフィーのパターンのばらつき、エッチングのばらつきによって上部電極部10c の大きさやメサ部10d の深さがばらついたり、X方向の位置決め、Y方向の位置決め、半導体ウエハ22の中心まわりの角度θの位置決めのばらつきにより、上部電極部10c とメサ部10dとの相対位置のばらつきが発生する。それらばらつきは、半導体ウエハ22内においてランダムなものではなく、局所的に同じ傾向を示す特性がある。
【0024】
たとえば図6および図7は、製造工程において発生するエッチング( メサエッチング)の深さの分布を概略示しており、1つの半導体ウエハ22内において、目標値に対して浅い側にばらつく浅い領域、目標値に対して深い側にばらつく深い領域が、局所的に発生する。また、図8および図9は、製造工程において発生する半導体ウエハ22の中心まわりの角度θの位置決めのばらつきによる、1つの半導体ウエハ22内の上部電極部10c の位置のばらつき傾向を説明するためのものであり、図8は半導体ウエハ22の中心まわりの角度θの位置決めが目標値どおりである場合であるが、図9は半導体ウエハ22の中心まわりの角度θの位置決めが目標値に対してずれた場合を示している。図9において、半導体ウエハ22の上部に位置する領域内のLEDチップ10における上部電極部10c は局所的に左側へずれ、半導体ウエハ22の下部に位置する領域内のLEDチップ10における上部電極部10c は局所的に右側へずれ、半導体ウエハ22の左部に位置する領域内のLEDチップ10における上部電極部10c は局所的に下側へずれ、半導体ウエハ22の右部に位置する領域内のLEDチップ10における上部電極部10c は局所的に上側へずれている。上記のばらつきのあるLEDチップ10は、製品としては必ずしも不良品ではなく、使用に耐えるものであるので、良品として判定することが望まれる。
【0025】
しかし、上記のばらつきの存在により、図10、図11、図12、図13に示すように、たとえば上部電極部10c に対する良否判定において検査パターン( テンプレート)として用いる検査対象領域Aが適切な大きさでない場合や、メサ部10d に対する良否判定において検査パターン( テンプレート)として用いる検査対象領域Cが適切な大きさでない場合には、良否判定の精度が十分に得られない場合がある。図10は、破線内に示される検査対象領域Aを通して選択される被検査面が実際の上部電極部10c よりも小さく、その検査対象領域Aすなわち被検査面の外側の上部電極部10c 上に欠点Ka が存在するときに、不良品であるにも拘わらず良品と判定してしまう場合を示している。図11は、破線内に示される検査対象領域Aを通して選択される被検査面が実際の上部電極部10c よりも大きいときには、上部電極部10c よりも明度の低い光出力面10e がその被検査面内に含まれるため、良品であるにも拘わらず不良品と判定してしまう場合を示している。図12は、破線内に示される検査対象領域Aを通して選択される被検査面が実際の上部電極部10c に対してずれているため、その検査対象領域Aすなわち被検査面の外側の上部電極部10c 上を検査できないだけでなく、上部電極部10c よりも明度の低い光出力面10e がその被検査面内に含まれるため、良品であるにも拘わらず不良品と判定してしまう場合を示している。図13は、破線に示される検査対象領域Cを通して選択される被検査面に対して実際のメサ部10d がたとえば−Y方向へずれているときは、その検査対象領域Cの内側に位置するメサ部10d 上に欠点Kc が存在しても、不良品であるにも拘わらず良品と判定してしまう場合を示している。
【0026】
図14は、外観検査装置12で実施される外観検査のためのコンピュータ28の制御作動の要部を説明するためのフローチャートである。
【0027】
図14において、まず、ステップS1(以下、「ステップ」を省略する)の初期処理ルーチンが実行される。この初期処理ルーチンはたとえば図15に示すものである。図15のS11では、可動ステージ14上にセットされた半導体ウエハ22の位置すなわちX方向位置およびY方向位置、中心点回り角度位置θを、図示しないエンコーダからの信号および画像信号から検出し、顕微鏡カメラ16の焦点調節が行われる。S12では、可動ステージ14が移動させられることにより、顕微鏡カメラ16が検査開始位置のLEDチップ10上に位置させられる。S13では、顕微鏡カメラ16により撮像されたLEDチップ10の画像から、検査パターン( テンプレート) として用いるデフォルト値の検査対象領域A’、B’およびC’を通して選択された被検査面内の明度と予め設定された判定値( 閾値) LauおよびLad、LbuおよびLbd、LcuおよびLcdとを比較することにより、上記LEDチップ10の外観の良否が判定されるとともに、そのLEDチップ10の画像が記憶される。なお、デフォルト値の検査対象領域A’、B’およびC’としては、LEDチップ10の設計寸法が用いられる。S14では、可動ステージ14が移動させられることにより、顕微鏡カメラ16が検査開始位置のLEDチップ10からたとえば図4に示される予め定められた検査順序方向に隣接する次のLEDチップ10上に位置させられる。S15では、上記S13により良品と判定されたLEDチップ10の個数が予め設定された設定数Ns に到達したか否かが判断される。この設定数Ns は、上記検査開始位置付近の局所的傾向を反映した初期検査パターンを算出するための個数であり、たとえば10乃至15程度に設定される。当初は上記S15の判断が否定されるのでS13以下が繰り返し実行されるが、そのS15の判断が肯定されると、図14のS2以下が実行される。
【0028】
図14のS2では、可動ステージ14が移動させられることにより、顕微鏡カメラ16が検査開始位置のLEDチップ10上に再び位置させられる。S3では、予め記憶された複数個すなわちNs 個の良品のLEDチップ10の画像が読み込まれ、S4では、それらNs 個の良品のLEDチップ10の画像パターンの平均が算出されることにより、検査パターン( テンプレート)として用いる検査対象領域A、BおよびCが算出される。画像パターンの平均とは、画像パターンを構成する各画素の位置( X,Y)を平均演算した位置をそれぞれ算出し、平均演算した位置で特定される画素から検査パターンを構成することである。上記S3およびS4は検査パターン決定工程に対応している。
【0029】
続いて、周辺パターン記憶工程および検査工程に対応するS5では、顕微鏡カメラ16により撮像された検査開始位置のLEDチップ10の画像から、S3およびS4において算出された検査パターン( テンプレート) として用いる検査対象領域A、BおよびCをそれぞれ通して選択された被検査面内の明度と予め設定された判定値( 閾値) LauおよびLad、LbuおよびLbd、LcuおよびLcdとを比較することにより、上記LEDチップ10の外観の良否が判定されるとともに、そのLEDチップ10の画像が記憶される。S6では、可動ステージ14が移動させられることにより、顕微鏡カメラ16が検査開始位置のLEDチップ10からたとえば図4に示される予め定められた検査順序方向に隣接する次のLEDチップ10上に位置させられる。そしてS7では、予め定められた検査順序方向の終端に到達したか否かに基づいて検査終了か否かが判断される。
【0030】
当初は上記S7の判断が否定されるので、S3以下が繰り返し実行される。このS3では、最新のNs 個の良品のLEDチップ10の画像が読み込まれ、S4では、それらNs 個の良品のLEDチップ10の画像パターンの平均が算出されることにより、検査パターン( テンプレート)として用いる検査対象領域A、BおよびCが逐次算出され、このように算出された検査パターンをそれぞれ通して選択された被検査面内の明度と予め設定された判定値( 閾値) LauおよびLad、LbuおよびLbd、LcuおよびLcdとをそれぞれ比較することにより、上記LEDチップ10の外観の良否が逐次判定される。このようにS3以下が繰り返し実行されるうち、S7の判断が肯定されると、S8の検査終了処理が実行され、可動ステージ14等が元位置に復帰させられる。
【0031】
上述のように、本実施例の外観検査方法によれば、半導体ウエハ22内の複数のLEDチップ10のうちの所定のLEDチップ10の外観を検査するに際して、前記半導体ウエハ22全体よりは十分に小さく且つその所定のLEDチップ10を含む局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンを、予め記憶する周辺パターン記憶工程( S5)と、半導体ウエハ22内の複数のLEDチップ10のうちの所定のLEDチップ10の被検査面を選択するための検査パターンを、上記周辺パターン記憶工程において予め記憶された前記局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンに基づいて、好適にはそれら複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンのうちの良品判定された撮像パターンに基づいて決定する検査パターン決定工程( S3、S4)とを、含むことから、検査パターンは、検査すべき所定のLEDチップ10が有する局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映されたものとなるので、その検査パターンを用いて行われる所定のLEDチップ10の外観の良否判定の検査精度が高められる。すなわち、半導体ウエハ22内の局所的な位置ずれや大きさのばらつきに起因する誤った良否判定が回避されて、高い検査精度が得られる。
【0032】
また、本実施例の外観検査方法によれば、検査パターン決定工程( S3、S4)は、半導体ウエハ22内の局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10のパターンを平均することにより、所定のLEDチップ10の被検査面を選択するための検査パターンを設定するものであることから、その検査パターンは、検査すべき所定のLEDチップ10が有する半導体ウエハ22内の局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映されたものとなる。
【0033】
また、本実施例の外観検査方法によれば、周辺パターン記憶工程( S5)は、所定のLEDチップ10に隣接するLEDチップ10を含む半導体ウエハ22内の局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンを予め記憶するものであることから、それら予め記憶された半導体ウエハ22内の局所領域内の複数のNs 個のLEDチップ10の撮像パターンに基づいて、検査すべき所定のLEDチップ10が有する半導体ウエハ22内の局所的な位置ずれや大きさのばらつきが反映された検査パターンを設定することができる。
【0034】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0035】
例えば、前述の半導体ウエハ22内のLEDチップ10を全部撮像してそれらの画像を記憶した後で、所定のLEDチップ10の外観検査( 良否判定) をするに際して、その所定のLEDチップ10の被検査面を選択するための検査パターンを、その所定のLEDチップ10の周辺に位置する局所領域の複数個のLEDチップ10の画像から算出するようにしてもよい。この場合には、所定のLEDチップ10を取り囲む所定領域内のNs 個のLEDチップ10のパターンを平均することにより検査パターンを設定可能となる。
【0036】
また、前述の実施例では、所定のLEDチップ10の被検査面を選択する検査パターン( テンプレート)として、検査対象領域A、BおよびCが用いられていたが、それら検査対象領域A、BおよびCのうちのいずれか1または2が必要に応じて用いられてもよい。また、それら検査対象領域A、BおよびCの形状は、LEDチップ10における表面のパターン等に応じて適宜変更され得る。
【0037】
また、前述の実施例では、所定のLEDチップ10の被検査面を選択するための検査パターンは、検査順序方向に沿って位置することで局所領域を構成する複数のNs 個のLEDチップ10のパターンを平均することにより算出されていたが、その局所領域は、たとえば図16に示すものや図17に示すものであってもよい。図16に示すものは、所定のLEDチップ10の位置が( X,Y)により示され、局所領域を構成する複数のLEDチップ10はその所定のLEDチップ10に隣接するものを含む15個の4列のLEDチップ10から構成される。また、図17に示すものは、所定のLEDチップ10の位置が( X,Y)により示され、局所領域を構成する複数のLEDチップ10はその所定のLEDチップ10に隣接するものを含む11個の2列のLEDチップ10から構成される。
【0038】
また、本実施例では、複数のLEDチップ10のパターンを平均することで検査パターンが設定されていたが、これに限られない。例えば、平均することに替えて、最大頻度を利用してもよい。具体的には、良品判定された10乃至15個のLEDチップ10のパターンの特徴寸法( 例えば、外観の1辺の長さや円形の上部電極部10c の直径など) に対する度数分布を作成し、最大頻度( 最大度数) と認定される一の良品LEDチップ10のパターンを検査パターンとして設定すればよい。この場合であっても、撮像パターンに基づいて検査パターンを設定するため、外観良否判定の精度を向上させることができる。また、より一層、検査対象の良品LEDチップ10のパターンを反映させた検査パターンを得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
10:LEDチップ( 半導体チップ)
22:半導体ウエハ
S3、S4:検査パターン決定工程
S5:周辺パターン記憶工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハから製造され且つ該半導体ウエハにおける配列位置を維持する複数の半導体チップを順次撮像し、該撮像された所定の半導体チップの画像中から予め設定された検査パターンを通して選択された被検査面内の明度変化に基づいて、前記半導体チップの外観の良否を逐次判定する半導体チップの外観検査方法であって、
前記複数の半導体チップのうちの所定の半導体チップの外観を検査するに際して、前記半導体ウエハ全体よりは十分に小さく且つ該所定の半導体チップを含む局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンを、予め記憶する周辺パターン記憶工程と、
前記複数の半導体チップのうちの外観検査を行う所定の半導体チップの被検査面を選択するための検査パターンを、前記周辺パターン記憶工程において予め記憶された前記局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンに基づいて決定する検査パターン決定工程と
を、含むことを特徴とする半導体チップの外観検査方法。
【請求項2】
前記検査パターン決定工程は、前記半導体ウエハの局所領域内の複数個の半導体チップのパターンを平均することにより、所定の半導体チップの被検査面を選択するための検査パターンを設定するものであることを特徴とする請求項1の半導体チップの外観検査方法。
【請求項3】
前記周辺パターン記憶工程は、前記所定の半導体チップに隣接する半導体チップを含む前記半導体ウエハの局所領域内の複数個の半導体チップの撮像パターンを予め記憶するものであることを特徴とする請求項1または請求項2の半導体チップの外観検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−164534(P2010−164534A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9221(P2009−9221)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】