説明

半導体デバイスの製造方法およびレーザー加工装置

【課題】デバイス裏面のダイボンディング用接着フィルムをデバイス毎にレーザで切断するに当たり、デバイスに欠けがあっても切断位置を正しく認識し切断する半導体デバイスの製造方法およびレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】先ダイシングにて分割されたウエーハの裏面に接着フィルムを貼着する接着フィルム装着工程と、分割溝に沿って接着フィルムにレーザー光線を照射し接着フィルムを分割する接着フィルム分割工程とを含み、接着フィルム分割工程では、各デバイス22間の分割溝210の溝幅を検出し、溝幅が許容範囲である場合には溝幅の中心座標値を求め、溝幅が許容範囲を超える場合には中心座標値を求めることなく隣接する次のデバイス間の溝幅の中心座標値を求め、中心座標値を結ぶ一次関数を算出し、それをレーザー光線照射位置211とし、レーザー光線照射位置211に沿って接着フィルムを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に格子状に形成されたストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って個々のデバイスに分割するとともに、各デバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着する半導体デバイスの製造方法およびウエーハの裏面に装着された接着フィルムを個々のデバイスに沿ってアブレーション加工することによって分割するためのレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に形成された分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイスを形成し、該デバイスが形成された各領域をストリートに沿って分割することにより個々の半導体デバイスを製造している。半導体ウエーハを分割する分割装置としては一般に切削装置が用いられており、この切削装置は厚さが20μm程度の切削ブレードによって半導体ウエーハをストリートに沿って切削する。このようにして分割された半導体デバイスは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
個々に分割された半導体デバイスは、その裏面にポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等で形成された厚さ20〜40μmのダイアタッチフィルムと呼ばれるダイボンディング用の接着フィルムが装着され、この接着フィルムを介して半導体デバイスを支持するダイボンディングフレームに加熱することによりボンディングされる。半導体デバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着する方法としては、半導体ウエーハの裏面に接着フィルムを貼着し、この接着フィルムを介して半導体ウエーハをダイシングテープに貼着した後、半導体ウエーハの表面に形成されたストリートに沿って切削ブレードにより接着フィルムと共に切断することにより、裏面に接着フィルムが装着された半導体デバイスを形成している。
【0004】
近年、携帯電話やパソコン等の電気機器はより軽量化、小型化が求められており、より薄い半導体デバイスが要求されている。より薄く半導体デバイスを分割する技術として所謂先ダイシング法と呼ばれる分割技術が実用化されている。この先ダイシング法は、半導体ウエーハの表面からストリートに沿って所定の深さ(半導体デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の分割溝を形成し、その後、半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着して半導体ウエーハの裏面を研削することにより裏面に分割溝を表出させ個々の半導体デバイスに分割する技術であり、半導体デバイスの厚さを50μm以下に加工することが可能である。
【0005】
しかるに、先ダイシング法によって半導体ウエーハを個々の半導体デバイスに分割する場合には、半導体ウエーハの表面からストリートに沿って所定の深さの分割溝を形成した後に半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着して裏面を研削して該裏面に分割溝を表出させるので、ダイボンディング用の接着フィルムを前もって半導体ウエーハの裏面に装着することができない。従って、先ダイシング法によって半導体デバイスを支持するダイボンディングフレームにボンディングする際には、半導体デバイスとダイボンディングフレームとの間にボンド剤を挿入しながら行わなければならず、ボンディング作業を円滑に実施することができないという問題がある。
【0006】
このような問題を解消するために、先ダイシング法によって個々の半導体デバイスに分割されたウエーハの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着し、この接着フィルムを介して半導体デバイスをダイシングテープに貼着した後、各半導体デバイス間の間隙に露出された該接着フィルムの部分に、半導体デバイスの表面側から上記間隙を通してレーザー光線を照射し、接着フィルムの上記間隙に露出された部分を除去するようにした半導体デバイスの製造方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−118081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に開示された半導体デバイスの製造方法においては、切削溝が形成されたウエーハの表面に保護テープを貼着しウエーハの裏面を研削してウエーハを個々の半導体デバイスに分割すると、個々に分割された半導体デバイスが移動して切削溝が蛇行する。従って、個々に分割された半導体デバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着した後に、各半導体デバイス間の間隙を通してレーザー光線を照射することが困難であり、レーザー光線が各半導体デバイス間の間隙から外れて半導体デバイスに照射され、半導体デバイスが損傷されるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、先ダイシング法によって分割された個々のデバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムをデバイスの品質を低下させることなく装着することができる半導体デバイスの製造方法およびレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って個々のデバイスに分割するとともに、各デバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着する半導体デバイスの製造方法であって、
ウエーハの表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
該分割溝形成工程が実施されたウエーハの裏面を研削して裏面に該分割溝を表出させ、ウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハ分割工程と、
該ウエーハ分割工程が実施されたウエーハの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着するとともに接着フィルム側を環状のフレームに装着されたダイシングテープによって支持せしめる接着フィルム装着工程と、
該接着フィルム装着工程を実施した後に、ウエーハの表面側から該分割溝に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、該接着フィルムを該分割溝に沿って分割する接着フィルム分割工程と、を含み、
該接着フィルム分割工程は、分割溝における各デバイス間の検出領域における溝幅を検出する溝幅検出工程と、
該溝幅検出工程によって検出されたデバイス間の溝幅が許容範囲である場合には検出領域の溝幅の中心座標値を求めるとともに、溝幅が許容範囲の上限値を超える場合には中心座標値を求めることなく次の検出領域の溝幅の中心座標値を求める中心座標検出工程と、
該中心座標検出工程によって求められた隣接する中心座標値を結ぶ一次関数を算出してレーザー光線照射位置を求めるレーザー光線照射位置算出工程と、
該レーザー光線照射位置算出工程によって求められた一次関数からなるレーザー光線照射位置に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、該接着フィルムを該レーザー光線照射位置に沿って分割するレーザー光線照射工程とを含んでいる、
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成され複数のストリートに沿って分割溝が形成されたウエーハの裏面に装着されたダイボンディング用の接着フィルムを該分割溝に沿って分割するためのレーザー加工装置であって、
ウエーハを保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを該加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハの加工すべき領域を撮像するための撮像手段と、該撮像手段によって撮像された撮像信号に基づいて該レーザー光線照射手段と該加工送り手段と割り出し送り手段を制御する制御手段とを具備し、
該制御手段は、該撮像手段を作動して各分割溝における各デバイス間の検出領域における溝幅を検出する溝幅検出工程と、
該溝幅検出工程によって検出されたデバイス間の溝幅が許容範囲である場合には検出領域の溝幅の中心座標値を求めるとともに、溝幅が許容範囲の上限値を超える場合には中心座標値を求めることなく次の検出領域の溝幅の中心座標値を求める中心座標検出工程と、
該中心座標検出工程によって求められた隣接する中心座標値を結ぶ一次関数を算出してレーザー光線照射位置を求めるレーザー光線照射位置算出工程と、
該レーザー光線照射位置算出工程によって求められた一次関数からなるレーザー光線照射位置に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、該接着フィルムを該レーザー光線照射位置に沿って分割するレーザー光線照射工程と、を実行する、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0012】
上記制御手段は、上記溝幅検出工程によって検出された各デバイス間の溝幅が許容範囲の下限値より小さい場合には、表示手段にエラー表示する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による半導体デバイスの製造方法およびレーザー加工装置における接着フィルム分割工程は、分割溝における各デバイス間の検出領域にける溝幅を検出する溝幅検出工程と、該溝幅検出工程によって検出されたデバイス間の溝幅が許容範囲である場合には検出領域の溝幅の中心座標値を求めるとともに、溝幅が許容範囲の上限値を超える場合には中心座標値を求めることなく次の検出領域の溝幅の中心座標値を求める中心座標検出工程と、該中心座標検出工程によって求められた隣接する中心座標値を結ぶ一次関数を算出してレーザー光線照射位置を求めるレーザー光線照射位置算出工程と、該レーザー光線照射位置算出工程によって求められた一次関数からなるレーザー光線照射位置に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、接着フィルムを該レーザー光線照射位置に沿って分割するレーザー光線照射工程とを含んでいるので、接着フィルムは、分割溝の幅方向中心に沿って分割される。そして、分割溝におけるデバイス間の溝幅が許容範囲を超える場合には中心座標値を求めることなく次の検出領域の溝幅の中心座標値を求め、隣接する中心座標値を結ぶ一次関数からなるレーザー光線照射位置を設定しているので、例えばデバイスに欠けが発生してデバイス間の溝幅が大きくなった場合に一次関数に異常な勾配が生ずることが無い。従って、デバイスに欠けが発生してデバイス間の溝幅が大きくなった場合に、その中心座標値を結ぶ一次関数の勾配が大きくなることにより、デバイスにレーザー光線が照射されることによってデバイスが損傷するという問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ウエーハとしての半導体ウエーハを示す斜視図。
【図2】本発明によるデバイスの製造方法における分割溝形成工程の説明図。
【図3】本発明によるデバイスの製造方法における保護テープ貼着工程の説明図。
【図4】本発明によるデバイスの製造方法におけるウエーハ分割工程の説明図。
【図5】本発明によるデバイスの製造方法における接着フィルム装着工程の説明図。
【図6】本発明によるデバイスの製造方法における接着フィルム装着工程の他の実施形態を示す説明図。
【図7】本発明によるデバイスの製造方法における接着フィルム分割工程を実施するためのレーザー加工装置の斜視図。
【図8】図7に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図9】図4に示すウエーハ分割工程によって個々のデバイスに分割された半導体ウエーハに形成された分割溝の状態を示す説明図。
【図10】本発明によるデバイスの製造方法において設定されるレーザー光線照射位置の説明図。
【図11】図7に示すレーザー加工装置に装備される制御手段が実行するレーザー光線照射位置検出工程のフローチャート。 本発明によるデバイスの製造方法において設定されるレーザー光線照射位置の説明図。
【図12】本発明によるデバイスの製造方法においてレーザー光線照射工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による半導体デバイスの製造方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1には、ウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ2は、例えば厚さが600μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aには複数のストリート21が格子状に形成されている。そして、半導体ウエーハ2の表面2aには、格子状に形成された複数のストリート21によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス22が形成されている。この半導体ウエーハ2を先ダイシング法によって個々の半導体デバイスに分割する手順について説明する。
【0017】
半導体ウエーハ2を先ダイシング法によって個々の半導体デバイスに分割するには、先ず半導体ウエーハ2の表面2aに形成されたストリート21に沿って所定深さ(各デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の分割溝を形成する(分割溝形成工程)。この分割溝形成工程は、図示の実施形態においては図2の(a)に示す切削装置3を用いて実施する。図2の(a)に示す切削装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を切削する切削手段32と、該チャックテーブル31に保持された被加工物を撮像する撮像手段33を具備している。チャックテーブル31は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない切削送り機構によって図2の(a)において矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り機構によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0018】
上記切削手段32は、実質上水平に配置されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に支持された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322の先端部に装着された切削ブレード323を含んでおり、回転スピンドル322がスピンドルハウジング321内に配設された図示しないサーボモータによって矢印322aで示す方向に回転せしめられるようになっている。なお、切削ブレード323の厚みは、図示の実施形態においては20μmに設定されている。上記撮像手段33は、スピンドルハウジング321の先端部に装着されており、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0019】
上述した切削装置3を用いて分割溝形成工程を実施するには、図2の(a)に示すようにチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2の裏面2b側を載置し、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2をチャックテーブル31上に保持する。従って、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2は、表面2aが上側となる。このようにして、半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない切削送り機構によって撮像手段33の直下に位置付けられる。
【0020】
チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、撮像手段33および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ2のストリート21に沿って分割溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段33および図示しない制御手段は、半導体ウエーハ2の所定方向に形成されているストリート21と、切削ブレード323との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ2に形成されている上記所定方向に対して直角に延びるストリート21に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0021】
以上のようにしてチャックテーブル31上に保持されている半導体ウエーハ2の切削領域を検出するアライメントが行われたならば、半導体ウエーハ2を保持したチャックテーブル31を切削領域の切削開始位置に移動する。そして、切削ブレード323を図2の(a)において矢印322aで示す方向に回転しつつ下方に移動して切り込み送りを実施する。この切り込み送り位置は、切削ブレード323の外周縁が半導体ウエーハ2の表面からデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば、50μm)に設定されている。このようにして、切削ブレード323の切り込み送りを実施したならば、切削ブレード323を回転しつつチャックテーブル31を図2の(a)において矢印Xで示す方向に切削送りすることによって、図2の(b)に示すようにストリート21に沿って幅が20μmでデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば、50μm)の分割溝210が形成される(分割溝形成工程)。
【0022】
上述した分割溝形成工程を実施することにより半導体ウエーハ2の表面2aにストリート21に沿って所定深さの分割溝210を形成したら、図3の(a)および(b)に示すように半導体ウエーハ2の表面2a(デバイス22が形成されている面)に、保護テープ4を貼着する(保護テープ貼着工程)。
【0023】
次に、保護テープ4が貼着された半導体ウエーハ2の裏面2bを研削し、分割溝210を裏面2bに表出させて半導体ウエーハ2を個々のデバイス22に分割するウエーハ分割工程を実施する。このウエーハ分割工程は、図4の(a)に示す研削装置5を用いて実施する。図4の(a)に示す研削装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研削するための研削砥石52を備えた研削手段53を具備している。この研削装置5を用いて上記ウエーハ分割工程を実施するには、チャックテーブル51上に半導体ウエーハ2の保護テープ4側を載置し、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2をチャックテーブル51上に保持する。従って、チャックテーブル51に保持された半導体ウエーハ2は、裏面2bが上側となる。このようにして、チャックテーブル51上に半導体ウエーハ2を保持したならば、チャックテーブル51を矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段53の研削砥石52を矢印52aで示す方向に例えば6000rpmで回転しつつ半導体ウエーハ2の裏面2bに接触せしめて研削し、図4の(b)に示すように分割溝210が裏面2bに表出するまで研削する。このように分割溝210が表出するまで研削することによって、図4の(c)に示すように半導体ウエーハ2は個々のデバイス22に分割される。なお、分割された複数のデバイス22は、その表面に保護テープ4が貼着されているので、バラバラにはならず半導体ウエーハ2の形態が維持されている。
【0024】
上述したウエーハ分割工程を実施したならば、個々のデバイス22に分割された半導体ウエーハ2の裏面2bにダイボンディング用の接着フィルムを装着するとともに該接着フィルム側を環状のフレームに装着されたダイシングテープによって支持せしめる接着フィルム装着工程を実施する。即ち、図5の(a)および(b)に示すように個々のデバイス22に分割された半導体ウエーハ2の裏面2bに接着フィルム6を装着する。このとき、80〜200°Cの温度で加熱しつつ接着フィルム6を半導体ウエーハ2の裏面2bに押圧して装着する。なお、接着フィルム6は、エポキシ系樹脂で形成されており、厚さが20μmのフィルム材からなっている。このようにして半導体ウエーハ2の裏面2bに接着フィルム6を装着したならば、図5の(c)に示すように接着フィルム6が装着された半導体ウエーハ2の接着フィルム6側を環状のフレームFに装着された伸張可能なダイシングテープTに貼着する。従って、半導体ウエーハ2の表面2aに貼着された保護テープ4は上側となる。そして、半導体ウエーハ2の表面2aに貼着されている保護テープ4を剥離する。
【0025】
上述した接着フィルム装着工程の他の実施形態について、図6を参照して説明する。
図6に示す実施形態は、ダイシングテープTの表面に予め接着フィルム6が貼着された接着フィルム付きのダイシングテープを使用する。即ち、図6の(a)、(b)に示すように環状のフレームFの内側開口部を覆うように外周部が装着されたダイシングテープTの表面に貼着された接着フィルム6に、個々のデバイス22に分割された半導体ウエーハ2の裏面2bを装着する。このとき、80〜200°Cの温度で加熱しつつ接着フィルム6を半導体ウエーハ2の裏面2bに押圧して装着する。なお、上記ダイシングテープTは、図示の実施形態においては厚さが95μmのポリオレフィンシートかならっている。このように接着フィルム付きのダイシングテープを使用する場合には、ダイシングテープTの表面に貼着された接着フィルム6に半導体ウエーハ2の裏面2bを装着することにより、接着フィルム6が装着された半導体ウエーハ2が環状のフレームFに装着されたダイシングテープTによって支持される。そして、図6の(b)に示すように半導体ウエーハ2の表面2aに貼着されている保護テープ4を剥離する。
【0026】
上述した接着フィルム装着工程を実施したならば、半導体ウエーハ2の表面2a側から分割溝210に沿って接着フィルム6にレーザー光線を照射し、接着フィルム6を分割溝210に沿って分割する接着フィルム分割工程を実施する。この接着フィルム分割工程は、図7に示すレーザー加工装置を用いて実施する。図7に示すレーザー加工装置7は、静止基台70と、該静止基台70に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物であるウエーハを保持するチャックテーブル機構8と、静止基台70に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構9と、該レーザー光線照射ユニット支持機構9に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット10とを具備している。
【0027】
上記チャックテーブル機構8は、静止基台70上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール81、81と、該案内レール81、81上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック82と、該第1の滑動ブロック82上にY軸方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック83と、該第2の滑動ブロック83上に円筒部材84によって支持された支持テーブル85と、チャックテーブル86を具備している。このチャックテーブル86は多孔性材料から形成された吸着チャック861を具備しており、吸着チャック861の上面である保持面上に被加工物である例えば円形形状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル86は、円筒部材84内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル86には、上記環状のフレームFを固定するためのクランプ862が配設されている。
【0028】
上記第1の滑動ブロック82は、その下面に上記一対の案内レール81、81と嵌合する一対の被案内溝821、821が設けられているとともに、その上面にX軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール822、822が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック82は、被案内溝821、821が一対の案内レール81、81に嵌合することにより、一対の案内レール81、81に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構8は、第1の滑動ブロック82を一対の案内レール81、81に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段87を具備している。加工送り手段87は、上記一対の案内レール81と81の間に平行に配設された雄ネジロッド871と、該雄ネジロッド871を回転駆動するためのパルスモータ872等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド871は、その一端が上記静止基台70に固定された軸受ブロック873に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ872の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド871は、第1の滑動ブロック82の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ872によって雄ネジロッド871を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック82は案内レール81、81に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0029】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置7は、上記チャックテーブル86の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段874を備えている。加工送り量検出手段874は、案内レール81に沿って配設されたリニアスケール874aと、第1の滑動ブロック82に配設され第1の滑動ブロック82とともにリニアスケール874aに沿って移動する読み取りヘッド874bとからなっている。この加工送り量検出手段874の読み取りヘッド874bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル86の加工送り量を検出する。
【0030】
上記第2の滑動ブロック83は、その下面に上記第1の滑動ブロック82の上面に設けられた一対の案内レール822、822と嵌合する一対の被案内溝831、831が設けられており、この被案内溝831、831を一対の案内レール822、822に嵌合することにより、Y軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構8は、第2の滑動ブロック83を第1の滑動ブロック82に設けられた一対の案内レール822、822に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段88を具備している。第1の割り出し送り手段88は、上記一対の案内レール822と822の間に平行に配設された雄ネジロッド881と、該雄ネジロッド881を回転駆動するためのパルスモータ882等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド881は、その一端が上記第1の滑動ブロック82の上面に固定された軸受ブロック883に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ882の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド881は、第2の滑動ブロック83の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ882によって雄ネジロッド881を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック83は案内レール822、822に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0031】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置7は、上記第2の滑動ブロック83の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段884を備えている。割り出し送り量検出手段884は、案内レール822に沿って配設されたリニアスケール884aと、第2の滑動ブロック83に配設され第2の滑動ブロック83とともにリニアスケール884aに沿って移動する読み取りヘッド884bとからなっている。この割り出し送り量検出手段884の読み取りヘッド884bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル86の割り出し送り量を検出する。
【0032】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構9は、静止基台70上にY軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール91、91と、該案内レール91、91上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台92を具備している。この可動支持基台92は、案内レール91、91上に移動可能に配設された移動支持部921と、該移動支持部921に取り付けられた装着部922とからなっている。装着部922は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール923、923が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構9は、可動支持基台92を一対の案内レール91、91に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段93を具備している。第2の割り出し送り手段93は、上記一対の案内レール91、91の間に平行に配設された雄ネジロッド931と、該雄ネジロッド931を回転駆動するためのパルスモータ932等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド931は、その一端が上記静止基台70に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ932の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド931は、可動支持基台92を構成する移動支持部921の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ932によって雄ネジロッド931を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台92は案内レール91、91に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0033】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット10は、ユニットホルダ101と、該ユニットホルダ101に取り付けられたレーザー光線照射手段102を具備しており、ユニットホルダ101が上記可動支持基台92の装着部922に一対の案内レール923、923に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。レーザー光線照射手段102は、ユニットホルダ101に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング103と、該ケーシング103内に配設されたYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器等のレーザー光線発振手段(図示せず)と、ケーシング103の先端に配設されレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して上記チャックテーブル86に保持された被加工物に照射する集光器104を具備している。
【0034】
上記レーザー光線照射手段102を構成するケーシング103の前端部には、上記レーザー光線照射手段102によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段105が配設されている。この撮像手段105は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0035】
図7に基づいて説明を続けると、図示の実施形態におけるレーザー加工装置7は、ユニットホルダ101を可動支持基台92の装着部922に設けられた一対の案内レール923、923に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)即ちチャックテーブル86の保持面に対して垂直な方向に移動させるための集光点位置調整手段106を具備している。集光点位置調整手段106は、一対の案内レール923、923の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ106a等の駆動源を含んでおり、パルスモータ106aによって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、上記レーザー光線照射ユニット10を案内レール923、923に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ106aを正転駆動することによりレーザー光線照射ユニット10を上方に移動し、パルスモータ106aを逆転駆動することによりレーザー光線照射ユニット10を下方に移動するようになっている。
【0036】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置7は、図8に示す制御手段11を具備している。制御手段11はマイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)111と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)112と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)113と、入力インターフェース114および出力インターフェース115とを備えている。このように構成された制御手段11の入力インターフェース114には、加工送り量検出手段874、割り出し送り量検出手段884、撮像手段105等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース115からは、上記加工送り手段87のパルスモータ872、第1の割り出し送り手段88のパルスモータ882、第2の割り出し送り手段93のパルスモータ932、レーザー光線照射手段102、集光点位置調整手段106のパルスモータ106a、表示手段116等に制御信号を出力する。
【0037】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置7は以上のように構成されており、以下、レーザー加工装置7を用いて実施する半導体ウエーハ2の表面2a側から分割溝210に沿って接着フィルム6にレーザー光線を照射し、接着フィルム6を分割溝210に沿って分割する接着フィルム分割工程について説明する。
接着フィルム分割工程を実施するには、上記図5および図6に示すように環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持された半導体ウエーハ2(個々のデバイス22に分割されているとともに裏面2bに接着フィルム6が装着されている)は、図7に示すレーザー加工装置7のチャックテーブル86上にダイシングテープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ2は、ダイシングテープTを介してチャックテーブル86上に吸引保持される。また、環状のフレームFは、クランプ862によって固定される。
【0038】
上述したようにチャックテーブル86上に半導体ウエーハ2を吸引保持したならば、加工送り手段87を作動してチャックテーブル86を撮像手段105の直下の撮像領域に位置付ける。そして、チャックテーブル86に保持された半導体ウエーハ2の裏面に装着された接着フィルム6のレーザー加工すべきレーザー光線照射位置を検出するレーザー光線照射位置検出工程を実施する。
【0039】
ここで、チャックテーブル86上にダイシングテープTを介して保持された半導体ウエーハ2の個々に分割されたデバイス22の配列について説明する。
上記図2に示す分割溝形成工程において半導体ウエーハ2の表面側に形成された分割溝210はストリート21に沿って正確に形成されているが、上記図4に示すウエーハ分割工程において半導体ウエーハ2の裏面を研削して半導体ウエーハ2を個々のデバイス22に分割すると、図9に示すようにデバイス22がズレて分割溝210が蛇行したり、一部のデバイス22に欠け22aが発生している場合がある。
【0040】
図9に示す半導体ウエーハ2の裏面に装着された接着フィルム6のレーザー加工すべきレーザー光線照射位置を検出するレーザー光線照射位置検出工程は、図10に示すように分割溝210における各デバイス22間を撮像手段105の撮像領域に順次位置付けて実施する。即ち、図10においてNo.1〜No.6の検出領域を順次撮像手段105の撮像領域に位置付ける。そして、撮像手段105は、各検出領域においてデバイス22間を含む撮像領域を撮像し、撮像信号を制御手段11に送る。この撮像手段105からの撮像信号に基づいて制御手段11が実行するレーザー光線照射位置の検出手順について、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。制御手段11は、ステップS1において撮像手段105からの撮像信号を入力する。次に制御手段11はステップS2に進んで、撮像手段105からの撮像信号に基づいてデバイス22間の溝幅(B)を検出し、この溝幅(B)が許容範囲の下限値(A1:たとえば10μm)以下であるか否かをチェックする。溝幅(B)が下限値(A1:たとえば10μm)以下である場合には、制御手段11は溝幅(B)が狭く、溝幅(B)を通してレーザー光線を照射することが難しく、デバイス22を損傷させる虞があると判断し、ステップS3に進んで表示手段116にエラー表示してこのルーチンを終了する。このようにエラー表示された半導体ウエーハ2は、レーザー加工による接着フィルム6の分割が困難であるため、チャックテーブル86から除去し、次の半導体ウエーハ2をチャックテーブル86に保持してレーザー光線照射位置検出工程を実施する。
【0041】
上記ステップS2において溝幅(B)が下限値(A1:たとえば10μm)より大きい場合には、制御手段11はステップS4に進んで溝幅(B)が許容範囲の上限値(A2:たとえば50μm)以下であるか否かをチェックする。溝幅(B)が許容範囲の上限値(A2:たとえば50μm)より大きい場合は、制御手段11はデバイス22の単なるズレではなく図10におけるNo.4の検出位置のようにデバイス22に欠け22aが発生していると判断し、ステップS6に進む。ステップS4において溝幅(B)が許容範囲の上限値(A2:たとえば50μm)以下の場合には、制御手段11はステップS5に進んで図10に示すように溝幅(B)の中心座標値(x、y)を求め、この座標値をランダムアクセスメモリ(RAM)113に格納する。なお、上記ステップS4において溝幅(B)が許容範囲の上限値(A2:たとえば50μm)より大きい場合(図10においてNo.4の検出位置)には、溝幅(B)の中心座標値(x、y)を求めずに、この検出位置を飛ばして次の検出位置における溝幅を検出するためにステップS6に進む。
【0042】
次に、制御手段11はステップS6に進んで次の検出位置があるか否かをチェックし、次の検出位置がある場合には、制御手段11はステップS7に進んで次の検出領域を撮像手段105の撮像領域に位置付けて、上記ステップS1に戻る。一方、ステップS6において次の検出位置が無い場合には、制御手段11はステップS8に進んで、隣接する中心座標値を結ぶ一次関数を算出し、この一次関数を連結することによってレーザー光線照射位置211を求め、ランダムアクセスメモリ(RAM)113に格納する。なお、上記溝幅(B)の中心座標値(x、y)はデバイス22のX軸方向における中間位置を検出しているので、レーザー光線照射位置211の両端である始点と終点は溝幅(B)の両端の中心座標値(x、y)をY軸と平行に結んだ位置とする。
【0043】
次に、上述したレーザー光線照射位置検出工程によって求められたレーザー光線照射位置211に沿ってレーザー光線を照射し接着フィルム6を分割するレーザー光線照射工程を実施する。
レーザー光線照射工程は、先ずチャックテーブル86をレーザー光線照射手段102の集光器104が位置するレーザー光線照射領域に移動し、図12の(a)に示すように所定の分割溝210に沿って求めた上記レーザー光線照射位置211の一端(図12の(a)において左端)をレーザー光線照射手段102の集光器104の直下に位置付ける。そして、レーザー光線照射手段102を作動して集光器104から接着フィルム6に対して吸収性を有する波長のレーザー光線LBを照射しつつチャックテーブル86を図12の(a)において矢印X1で示す方向に移動せしめる。このとき、制御手段11は、加工送り手段87および第1の割り出し送り手段88を制御して上記レーザー光線照射位置211に沿ってチャックテーブル86を移動する。そして、図12の(b)に示すように分割溝210の他端(図12の(b)において右端)が集光器104の照射位置に達したら、レーザー光線照射手段102の作動を停止するとともに加工送り手段87および第1の割り出し送り手段88の作動を停止する。この結果、接着フィルム6は、図12の(c)に示すように分割溝210の幅方向中心に沿って分割され分断溝60が形成される。なお、上記図10におけるNo.4の検出位置のように分割溝210におけるデバイス22間の溝幅(B)が上限値を超える場合には中心座標値は検出せず、次の検出位置の中心座標値を検出して隣接する中心座標値を結ぶ一次関数からなるレーザー光線照射位置211を設定しているので、一次関数に異常な勾配が生ずることが無い。従って、デバイス22に欠けが発生してデバイス22間の溝幅(B)が大きくなった場合に、その中心座標値を結ぶ一次関数の勾配が大きくなることにより、デバイス22にレーザー光線が照射されることによってデバイス22が損傷するという問題を解消することができる。
【0044】
なお、上記レーザー光線照射工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
レーザー光線の種類 :固体レーザー(YVO4レーザー、YAGレーザー)
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :0.5W
集光スポット径 :φ5μm
加工送り速度 :200mm/秒
【0045】
上記レーザー光線照射工程を半導体ウエーハ2の所定方向に形成された全ての分割溝210に沿って実施する。次に、チャックテーブル86を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直交する方向に形成された分割溝210に沿って上記第1の接着フィルム分割工程および第2の接着フィルム分割工程を交互に実行することにより、半導体ウエーハ2の裏面に装着された接着フィルム26は分割溝210によって分割されたデバイス22毎に切断され分割される。
【符号の説明】
【0046】
2:半導体ウエーハ
21:ストリート
210:分割溝
3:切削装置
31:切削装置のチャックテーブル
32:切削手段
323:切削ブレード
4:保護テープ
5:研削装置
51:研削装置のチャックテーブル
53:研削手段
6:接着フィルム
7:レーザー加工装置
8:チャックテーブル機構
86:チャックテーブル
87:加工送り手段
874:加工送り量検出手段
88:第1の割り出し送り手段
884:割り出し送り量検出手段
9:レーザー光線照射ユニット支持機構
10:レーザー光線照射ユニット
102:レーザー光線照射手段
104:集光器
105:撮像手段
106:集光点位置調整手段
11:制御手段
F:環状のフレーム
T:ダイシングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って個々のデバイスに分割するとともに、各デバイスの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着する半導体デバイスの製造方法であって、
ウエーハの表面側からストリートに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの分割溝を形成する分割溝形成工程と、
該分割溝形成工程が実施されたウエーハの裏面を研削して裏面に該分割溝を表出させ、ウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハ分割工程と、
該ウエーハ分割工程が実施されたウエーハの裏面にダイボンディング用の接着フィルムを装着するとともに接着フィルム側を環状のフレームに装着されたダイシングテープによって支持せしめる接着フィルム装着工程と、
該接着フィルム装着工程を実施した後に、ウエーハの表面側から該分割溝に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、該接着フィルムを該分割溝に沿って分割する接着フィルム分割工程と、を含み、
該接着フィルム分割工程は、分割溝における各デバイス間の検出領域にける溝幅を検出する溝幅検出工程と、
該溝幅検出工程によって検出されたデバイス間の溝幅が許容範囲である場合には検出領域の溝幅の中心座標値を求めるとともに、溝幅が許容範囲の上限値を超える場合には中心座標値を求めることなく次の検出領域の溝幅の中心座標値を求める中心座標検出工程と、
該中心座標検出工程によって求められた隣接する中心座標値を結ぶ一次関数を算出してレーザー光線照射位置を求めるレーザー光線照射位置算出工程と、
該レーザー光線照射位置算出工程によって求められた一次関数からなるレーザー光線照射位置に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、該接着フィルムを該レーザー光線照射位置に沿って分割するレーザー光線照射工程とを含んでいる、
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成され複数のストリートに沿って分割溝が形成されたウエーハの裏面に装着されたダイボンディング用の接着フィルムを該分割溝に沿って分割するためのレーザー加工装置であって、
ウエーハを保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを該加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、該チャックテーブルに保持されたウエーハの加工すべき領域を撮像するための撮像手段と、該撮像手段によって撮像された撮像信号に基づいて該レーザー光線照射手段と該加工送り手段と割り出し送り手段を制御する制御手段とを具備し、
該制御手段は、該撮像手段を作動して各分割溝における各デバイス間の検出領域にける溝幅を検出する溝幅検出工程と、
該溝幅検出工程によって検出されたデバイス間の溝幅が許容範囲である場合には検出領域の溝幅の中心座標値を求めるとともに、溝幅が許容範囲の上限値を超える場合には中心座標値を求めることなく次の検出領域の溝幅の中心座標値を求める中心座標検出工程と、
該中心座標検出工程によって求められた隣接する中心座標値を結ぶ一次関数を算出してレーザー光線照射位置を求めるレーザー光線照射位置算出工程と、
該レーザー光線照射位置算出工程によって求められた一次関数からなるレーザー光線照射位置に沿って該接着フィルムにレーザー光線を照射し、該接着フィルムを該レーザー光線照射位置に沿って分割するレーザー光線照射工程と、を実行する、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項3】
該制御手段は、該溝幅検出工程によって検出された各デバイス間の溝幅が許容範囲の下限値より小さい場合には、表示手段にエラー表示する、請求項2記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−174732(P2012−174732A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32426(P2011−32426)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】