半導体加速度センサ、半導体加速度センサの評価方法及び半導体加速度センサの製造方法
【課題】新たな外力付与方法を適用可能な半導体加速度センサを提供する。
【解決手段】半導体加速度センサ1は、重り部9、重り部9を囲繞する枠状の固定部13、及び、一方端が重り部9に連結され、他方端が固定部13に連結された梁部11を有するセンサ素子3を有する。また、加速度センサ1は、固定部13の開口方向の一方側においてセンサ素子3に対向する第1規制板5と、固定部13の開口方向の他方側においてセンサ素子3に対向する第2規制板7とを有する。そして、第1規制板5には、第1規制板5とセンサ素子3との対向方向に見て、重り部9に重なり、重り部9よりも小さい孔部5hが形成されている。
【解決手段】半導体加速度センサ1は、重り部9、重り部9を囲繞する枠状の固定部13、及び、一方端が重り部9に連結され、他方端が固定部13に連結された梁部11を有するセンサ素子3を有する。また、加速度センサ1は、固定部13の開口方向の一方側においてセンサ素子3に対向する第1規制板5と、固定部13の開口方向の他方側においてセンサ素子3に対向する第2規制板7とを有する。そして、第1規制板5には、第1規制板5とセンサ素子3との対向方向に見て、重り部9に重なり、重り部9よりも小さい孔部5hが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加速度センサ、半導体加速度センサの評価方法及び半導体加速度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピエゾ抵抗式の半導体加速度センサや静電容量式の半導体加速度センサなどの半導体加速度センサが知られている(例えば特許文献1)。これらの加速度センサは、シリコン基板等の半導体に対する加工により形成されたセンサ素子を有する。センサ素子は、重り部、重り部を支持する梁部、及び、梁部を支持する固定部を有する。加速度センサに加速度が付与されると、梁部の変形を伴って重り部が固定部に対して変位する。そして、梁部の変形が、ピエゾ抵抗の抵抗値の変化やコンデンサの容量の変化として検出されることにより、加速度が検出される。
【0003】
特許文献1の加速度センサは、過大な加速度が加えられたときに、センサ素子の破損が生じることを抑制するために、重り部の振動方向において、重り部を挟んで互いに対向する2枚の規制板を有している。重り部とそれぞれの規制板との間には、重り部が変位可能となるように、比較的微小な隙間が確保されている。そして、加速度センサに過大な加速度が加えられたときには、重り部は規制板に当接し、変位が規制される。
【0004】
これらの加速度センサの感度等を評価する方法としては、例えば、重力を利用するものや遠心力を利用するものが知られている。重力を利用する評価方法では、重力方向に対する加速度センサの向きを変化させ、重力によって1G以内の加速度を加速度センサの測定方向に付与しつつ、加速センサの出力値を取得する。そして、その出力値が付与した加速度に対して適正な値を示しているか否かを判定する。遠心力を利用する評価方法では、回転テーブルに加速度センサを配置し、遠心力によって任意の加速度を加速度センサに付与しつつ、加速センサの出力値を取得する。そして、その出力値が付与した加速度に対して適正な値を示しているか否かを判定する。
【特許文献1】特開平04−274005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、重力を利用する加速度センサの評価方法では、1G以内の加速度に対する出力電圧しか測定することができない。遠心力を利用する加速度センサの評価方法は、比較的大きな加速度を印加できるものの、印加する加速度が数千Gを越えると出力電圧の検出が難しくなってくる。また、複数の加速度センサを有する半導体ウェハを回転させて加速度センサに遠心力を付与した状態で出力電圧を測定することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、新たな外力付与方法を適用可能な半導体加速度センサ、並びに、当該半導体加速度センサの評価方法及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体加速度センサは、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、を有し、前記第1規制部材には、当該第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部が形成されている。
【0008】
好適には、前記第1規制部材は、前記固定部の前記一方側の面に固定され、前記第2規制部材は、前記固定部の前記他方側の面に固定されている。
【0009】
好適には、前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部の中央に位置している。
【0010】
好適には、前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に対して偏心している。
【0011】
好適には、前記重り部は、前記梁部の前記一方端が連結される主部と、前記主部に連結され、前記梁部の前記一方端よりも前記他方端側へ突出する付属部と、を有し、前記孔部として、前記主部に対向する孔部と、前記付属部に対向する孔部とが形成されている。
【0012】
本発明の半導体加速度センサの評価方法は、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、を有する半導体加速度センサの評価方法であって、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより、前記半導体加速度センサを評価する。
【0013】
好適には、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する。
【0014】
好適には、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を押圧して前記重り部を前記第2規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する。
【0015】
好適には、前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する。
【0016】
本発明の半導体加速度センサの製造方法は、半導体ウェハに対する加工により、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子を作成する工程と、前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材を設ける工程と、前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材を設ける工程と、前記重り部に力を加えることにより品質を評価する工程と、を有し、前記第1規制部材を設ける工程では、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、前記評価する工程では、前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより品質を評価する。
【0017】
好適には、前記評価する工程では、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する。
【0018】
好適には、前記評価する工程では、前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する。
【0019】
好適には、前記センサ素子を作成する工程では、前記半導体ウェハを切断することにより複数の前記センサ素子が作成され、前記第1規制部材を設ける工程、前記第2規制部材を設ける工程及び前記評価する工程は、前記半導体ウェハの切断よりも前に行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体加速度センサを評価するにあたり、新たな加速度付与方法を適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、本発明に係る半導体加速度センサ及び当該半導体加速度センサの製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、半導体加速度センサの製造方法には、半導体加速度センサの評価方法が含まれている。また、以下の実施の形態で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0022】
<半導体加速度センサ>
図1は、本実施形態に係る半導体加速度センサ1(以下、単に「加速度センサ1」ということがある。)の斜視図である。
【0023】
加速度センサ1は、例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した三次元加速度センサとして構成されている。加速度センサ1は、センサ素子3と、センサ素子3の一方側の面に積層された第1規制板5と、センサ素子3の他方側の面に積層された第2規制板7とを有している。センサ素子3は、加速度を検出する部分であり、第1規制板5及び第2規制板7は、センサ素子3を保護するためのものである。
【0024】
図2は、センサ素子3を第1規制板5側から見た斜視図である。図3は、センサ素子3を第2規制板7側から見た斜視図である。
【0025】
センサ素子3は、例えば、半導体基板に加工が施されることにより構成されている。半導体基板は、例えば、SOI基板である。センサ素子3は、センサ素子3に加えられた加速度をセンサ素子3の変形に変換するために、重り部9と、固定部13と、重り部9を固定部13に対して揺動可能に支持する梁部11(図2)とを有している。また、センサ素子3は、梁部11の変形を電気的変化に変換して出力するために、梁部11の変形に伴って抵抗値が変化する抵抗素子15(図2)と、抵抗素子15に接続され、端子として機能する電極パッド17(図2)とを有している。
【0026】
重り部9は、梁部11に連結された主部19と、主部19の外周に連結された複数(本実施形態では4つを例示)の付属部21とを有している。主部19及び付属部21は、例えば、平面視において(Z軸方向に見て)概ね正方形の直方体状(立方体含む)に形成されている。付属部21は、例えば、主部19の4隅にそれぞれ連結されている。付属部21は、梁部11の主部19側の端部よりも梁部11の固定部13側の端部側へ突出している。
【0027】
主部19の平面視における一辺の長さは、例えば、0.25mm〜0.5mmである。また、主部19の厚みは、例えば、0.2mm〜0.625mmである。付属部21の平面視における一辺の長さは例えば0.1mm〜0.4mmである。また、付属部21の厚みは、例えば、主部19の厚みと同じである。
【0028】
固定部13は、例えば、平面視において概ね略正方形の枠状に形成されており、重り部9が収容される、概ね正方形の開口部23が形成されている。固定部13の平面視における一辺の長さは、例えば、0.8mm〜3.0mmである。固定部13の平面視における各辺の幅は、例えば0.1mm〜1.8mmである。固定部13の厚みは、例えば、0.2mm〜0.625mmである。
【0029】
梁部11は、開口部23の開口方向の一方側において設けられ、一端が重り部9の主部19に連結され、他端が固定部13に連結されている。梁部11は、例えば、X軸方向において主部19を挟んで2本、Y軸方向において主部19を挟んで2本、合計4本設けられている。各梁部11は、主部19及び固定部13の互いに対向する辺の中央位置に連結されている。梁部11の長さは、例えば、0.1mm〜0.8mmである。梁部11の幅は、例えば、0.01mm〜0.2mmである。梁部11の厚さは、例えば、5μm〜20μmである。
【0030】
抵抗素子15は、変形に伴って抵抗値が変化するピエゾ抵抗である。抵抗素子15は、計測対象とする方向に応じて適宜な数で適宜な位置に設けられる。例えば、抵抗素子15は、3軸方向(3次元直交座標系におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の加速度を検出可能に複数の梁部11に複数設けられている。
【0031】
複数の抵抗素子15は、例えば、梁部11に形成された不図示の配線により接続されて、ブリッジ回路を構成している。ブリッジ回路の出力電圧は、梁部11の変形に伴う抵抗素子15の抵抗値の変化により変化する。
【0032】
電極パッド17は、固定部13の第1規制板5側の面に設けられている。電極パッド17は、梁部11に形成された不図示の配線を介して、抵抗素子15を含むブリッジ回路と接続されている。抵抗素子15を含むブリッジ回路は、電極パッド17を介して電圧の印加及び出力電圧の取得がなされる。
【0033】
図1に示すように、第1規制板5は、開口部23の開口方向(Z軸方向)の一方側において、センサ素子3に対向して配置されている。第1規制板5は、例えば、開口部23よりも広く形成されており、開口部23を塞いでいる。第1規制板5は、例えば、センサ素子3の平面形状と概ね同様の形状において、電極パッド17を露出させるための切り欠き部5cが形成された形状となっている。第1規制板5は、例えば、ガラス基板により構成されている。
【0034】
第1規制板5の中央には、第1規制板5を貫通する孔部5hが形成されている。孔部5hは、例えば、平面視において、重り部9の主部19と重なる。より好ましくは、孔部5hは、平面視において、主部19の中央に位置する。孔部5hの開口形状は適宜に設定されてよいが、例えば円形である。孔部5hは、平面視において、重り部9よりも小さく、より好ましくは、主部19よりも小さく形成されている。孔部5hの径は、例えば、60μm〜500μmである。
【0035】
第2規制板7は、開口部23の開口方向の、第1規制板5とは反対側において、センサ素子3に対向して配置されている。第2規制板7は、例えば、開口部23よりも広く形成されており、開口部23を塞いでいる。第2規制板7は、例えば、センサ素子3の平面形状と概ね同様の形状となっている。第2規制板7は、例えば、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板などにより構成されている。
【0036】
図4は、図1のIV−IV線における断面図である。
【0037】
第1規制板5及び第2規制板7は、例えば、接着剤25により、センサ素子3と固定されている。接着剤25は、平面視において、センサ素子3の固定部13の適宜な位置に塗布される。例えば、接着剤25は、平面視において、固定部13の4隅に塗布される。接着剤25は、例えば、シリコン樹脂やエポキシ樹脂により形成されている。
【0038】
接着剤25は、複数のスペーサ27を含有している。複数のスペーサ27は、例えば、所定の径を有する球状部材である。従って、スペーサ27によって、固定部13と第1規制板5とのギャップ、並びに、固定部13と第2規制板7とのギャップが一定に保たれる。ひいては、重り部9が、一定の隙間で、第1規制板5及び第2規制板7に対向する。そして、重り部9は、第1規制板5と第2規制板7との間の範囲内で、Z軸方向における変位が許容される。スペーサ27の直径は、例えば、4〜30μmである。
【0039】
加速度センサ1に加速度が加えられると、梁部11の変形を伴って重り部9が固定部13に対して変位する。また、梁部11の変形に伴って、抵抗素子15も変形し、抵抗素子15の抵抗値が変化する。これにより、電極パッド17の出力値(例えば出力電圧)が変化し、加速度検出が可能となる。
【0040】
加速度センサ1に過大な加速度が加えられたときには、重り部9が第1規制板5又は第2規制板7に当接することにより、重り部9の変位が規制される。ひいては、梁部11や抵抗素子15の変形が規制される。これにより、センサ素子3の破損が抑制される。
【0041】
<半導体加速度センサの製造方法>
半導体加速度センサの製造方法は、概略、センサ素子3を作製する工程と、センサ素子3に対向する第1規制板5及び第2規制板7を設ける工程と、センサ素子3の感度等を評価する工程とを有している。具体的には、以下のとおりである。
【0042】
(センサ素子を作成する工程)
図5(a)及び図5(b)は、センサ素子3を作成する工程を説明する断面図である。
【0043】
センサ素子3は、図5(a)に示すSOI基板29に対して加工を行うことにより形成される。SOI基板29は、絶縁層31と、絶縁層31の一方側に積層された半導体層33と、絶縁層31の他方側に積層された支持層35とを有する。絶縁層31は、例えばSiO2により形成されている。半導体層33は、例えばシリコンにより形成されている。支持層35は、例えば、シリコン等の半導体により形成されている。
【0044】
SOI基板29の加工では、図5(a)に示すように、まず、抵抗素子15の形成が行われる。具体的には、半導体層33にイオン注入法により不純物を注入することでピエゾ抵抗からなる抵抗素子15が形成される。不純物としては、n型のSOI基板を用いた場合にはB(ボロン)が例示でき、p型のSOI基板を用いた場合にはP(リン)、As(ヒ素)などが例示できる。
【0045】
抵抗素子15の形成後、半導体層33には、ピエゾ抵抗素子に接続される配線が形成される。配線は、金属スパッター、CVD、蒸着などによりアルミなどの金属材料を成膜した後、成膜した金属材料をドライエッチング、ウェットエッチングなどによりパターニングすることにより形成される。
【0046】
次に、図5(b)に示すように、SOI基板29の一部を除去する加工により、重り部9、梁部11及び固定部13が形成される。SOI基板29の一部を除去する加工は、例えば、フォトリソグラフィ法や誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:ICP-RIE)である。
【0047】
(第1規制板及び第2規制板を設ける工程)
図5(c)及び図5(d)は、センサ素子3に対して第1規制板5を設ける工程を説明する断面図である。なお、第2規制板7を設ける工程は、第1規制板5を設ける工程と同様であることから説明を省略する。第1規制板5及び第2規制板7は、いずれが先にセンサ素子3に対して配置されてもよい。
【0048】
第1規制板5には、例えば、センサ素子3に対して配置される前に、孔部5hや切り欠き部5cが形成される(図6参照)。また、図5(c)に示すように、センサ素子3には、スペーサ27を含有する接着剤25が塗布される。そして、図5(d)に示すように、第1規制板5及びセンサ素子3は、接着剤25により固定される。
【0049】
なお、図5(a)及び図5(b)に示した加工は、SOI基板29により構成される半導体ウェハ37(図6(a)参照)の複数の領域に対して行なわれる。そして、図5(a)及び図5(b)に示した加工が施された半導体ウェハ37が、ダイシングなどにより切断されることにより、一枚の半導体ウェハ37から複数のセンサ素子3が形成される。
【0050】
また、第1規制板5及び第2規制板7も、一枚のガラス基板39(図6(a)参照)から多数個取りされる。孔部5hは、例えば、ガラス基板39の切断前に形成される。切り欠き部5cは、ガラス基板39の切断前に形成され、又は、ガラス基板39の切断において形成される。
【0051】
図6は、センサ素子3に対する第1規制板5(第2規制板7)の配置の時期を半導体ウェハ37の切断等との関係において例示する模式的な平面図である。
【0052】
図6(a)の例では、切断される前のセンサ素子3に対して切断される前の第1規制板5が配置されている。そして、センサ素子3と第1規制板5との接着後、加速度センサ1は切断される。
【0053】
図6(b)の例では、切断される前のセンサ素子3に対して切断された後の第1規制板5が配置されている。そして、センサ素子3と第1規制板5との接着後、加速度センサ1は切断される。
【0054】
図6(c)の例では、切断された後のセンサ素子3に対して切断された後の第1規制板5が配置されている。従って、加速度センサ1は、最初から切断された状態で形成される。
【0055】
第1規制板5(第2規制板7)の配置の時期は、図6(a)〜図6(c)におけるいずれの時期が採用されてもよい。
【0056】
(半導体加速度センサを評価する工程)
図7は、半導体加速度センサ1の評価を行うための評価装置41の構成を示す模式的な断面図である。
【0057】
評価装置41は、例えば、試料の硬度を測定するナノインデンタ装置を応用して構成されている。具体的には、評価装置41は、検査対象を押圧可能な押圧部材43と、押圧部材43を駆動するアクチュエータ45と、押圧部材43の押圧力を検出する荷重検出器47と、押圧部材43の変位を検出する変位検出器49とを有している。また、評価装置41は、種々の演算を行う演算部51を有している。
【0058】
押圧部材43は、例えば、比較的細い棒状(ニードル状)に形成されており、孔部5hに挿通可能である。また、押圧部材43は、例えば、不図示のケーシングに対して不図示の板バネを介して押圧部材43の延びる方向に移動可能に支持されている。アクチュエータ45は、例えば、リニアモータにより構成されており、押圧部材43を押圧部材43の延びる方向において駆動可能である。そして、押圧部材43は、アクチュエータ45によって駆動され、孔部5hを介して重り部9を第2規制板7側へ押圧する。
【0059】
荷重検出器47は、ひずみゲージ式、圧電式、容量式、電磁式、音叉式等の適宜な検出器により構成されており、押圧部材43が重り部9に加える荷重を検出し、その検出結果を演算部51に出力する。また、変位検出器49は、容量式、磁気式、光学式等の適宜な検出器により構成されており、押圧部材43の変位を検出し、その検出結果を演算部51に出力する。
【0060】
演算部51は、例えば、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を有するコンピュータにより構成されている。演算部51は、所望の荷重を重り部9に付与するように、荷重検出器47の検出結果に基づいてアクチュエータ45を制御する。
【0061】
また、演算部51は、加速度センサ1と接続される。例えば、演算部51は、演算部51に接続されたケーブルの先端に設けられたニードル状の端子(プローバー)が電極パッド17に当接されることにより、加速度センサ1と接続される。そして、演算部51は、変位検出器49の検出結果と、加速度センサ1の出力値とに基づいて、加速度センサ1の感度を評価する。
【0062】
図8は、評価装置41による加速度センサ1の評価方法を説明する図である。横軸は、重り部9に加えられる荷重を示している。縦軸は、加速度センサ1の出力値(出力電圧)を示している。
【0063】
押圧部材43によって重り部9に荷重が加えられると、図7に示すように、梁部11の変形を伴って重り部9が変位する。従って、図8に示すように、重り部9に加える荷重を変化させると、抵抗素子15の抵抗値が変化し、加速度センサ1の出力電圧が変化する。すなわち、押圧部材43により重り部9に加える荷重を変化させることにより、加速度センサ1に加えられる加速度を変化させるのと同様の作用が生じる。
【0064】
そこで、押圧部材43により重り部9を押圧しつつ加速度センサ1の出力電圧を取得し、図8において実線L1で示すように、所定の荷重に対する出力電圧を得る。取得した出力電圧が、点線L2及び点線L3により示される基準範囲内に収まっているか否か判定することにより、加速度センサ1が一定の品質を有するか否か判定できる。
【0065】
なお、図8は、荷重の増加とともに出力電圧が一定の増加量で増加する特性を示しているが、抵抗素子15の配置、抵抗素子15と電極パッド17とを接続する回路構成等は、このような特性を示すものに限定されない。荷重の増加とともに出力電圧が低下してもよいし、荷重の増加量に対して出力電圧の増加量が変化してもよい。
【0066】
図9は、演算部51が実行する加速度センサ1の評価処理の手順を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS1において、演算部51は、アクチュエータ45を駆動して、押圧部材43により所定の破損検査用荷重で重り部9を押圧する。この押圧は、加速度センサ1に過大な加速度が加えられたときに、第2規制板7が重り部9の変位を適正に規制して、センサ素子3等の破損を抑制することができるか試すためのものである。従って、破損検査用荷重は、重り部9が第2規制板7に当接する荷重以上の範囲において、加速度センサ1の用途等を考慮して適宜に設定される。
【0068】
ステップS2では、演算部51は、重り部9の押圧を一旦解除する。ステップS1に押圧によって、破損が生じたか否かの判定は、後述するように、後のステップS7において、感度の評価とともに行われる。
【0069】
ステップS3では、演算部51は、アクチュエータ45を駆動して、押圧部材43により所定の感度検査用初期荷重で重り部9を押圧する。感度検査用初期荷重は、図8に示した実線L1を得るための荷重の最小値である。感度検査用初期荷重は、加速度センサ1の用途等を考慮して適宜に設定される。
【0070】
ステップS4では、演算部51は、現在の加速度センサ1の出力電圧を取得する。
【0071】
ステップS5では、演算部51は、押圧部材43により重り部9に加えている荷重が、所定の感度検査用最大荷重に到達したか否かを判定する。なお、感度検査用最大荷重は、加速度センサ1の用途等を考慮して、感度検査用初期荷重以上、且つ、破損検査用荷重未満の範囲で適宜に設定される。演算部51は、実際の荷重が感度検査用最大荷重に到達していないと判定した場合はステップS6に進み、実際の荷重が感度検査用最大荷重に到達したと判定した場合はステップS7に進む。
【0072】
ステップS6では、演算部51は、押圧部材43により重り部9に加える荷重を増加する。増加量は、適宜に設定されてよい。また、増加量は、一定量であっても可変量であってもよい。そして、演算部51は、ステップS4に戻る。
【0073】
ステップS7では、演算部51は、図8を参照して説明したように、加速度センサ1の感度の評価を行う。すなわち、演算部51は、ステップS3及びステップS6において設定された荷重毎に、取得された出力電圧が、その荷重に対応して予め設定された基準範囲に収まるか否かを判定する。
【0074】
なお、基準範囲は、パラメータが代入される数式により与えられてもよいし、データ(チャート)により与えられてもよい。また、計測された出力電圧に基づいて、実線L1で示すような直線や曲線が算出されて判定されてもよい。ステップS7は、ステップS4〜S6のループ内において実行されてもよい。
【0075】
ここで、ステップS1において、第2規制板7が有効に機能せずに、センサ素子3等が破損した場合には、ステップS7における感度評価において、センサ素子3は、一定の品質を有しないと判定される可能性が高い。従って、ステップS7は、ステップS1の押圧によって破損が生じたか否かを判定するステップともなっている。
【0076】
なお、ステップS1において、変位検出器49の検出値が一定の基準値を超えたか否かにより、破損の有無を判定してもよい。この場合において、ステップS3以降を省略してもよい。
【0077】
図7に示す評価処理の終了後、加速度センサ1の製造工程においては、ステップS7の評価結果に応じた処理がなされる。例えば、演算部51は、一定の品質を有さないと判定された加速度センサ1を特定する情報を、加速度センサ1を搬送する搬送装置に出力する。搬送装置では、演算部51から出力された情報に基づいて、搬送する複数の加速度センサ1を、一定の品質を有するものと有さないものとに仕分けする。
【0078】
なお、図6(a)又は図6(b)に示したように、センサ素子3に第1規制板5及び第2規制板7が接着された後に半導体ウェハ37が切断される場合、加速度センサ1の評価は、半導体ウェハ37が切断される前に行われてもよいし、後に行われてもよい。加速度センサ1の評価が、半導体ウェハの切断の前に行われる場合、当該評価は、複数の加速度センサ1に対して、順次行われてもよいし、並列に行われてもよい。
【0079】
以上の実施形態によれば、半導体加速度センサ1は、重り部9、重り部9を囲繞する枠状の固定部13、及び、一方端が重り部9に連結され、他方端が固定部13に連結された梁部11を有するセンサ素子3を有する。また、加速度センサ1は、固定部13の開口方向の一方側においてセンサ素子3に対向する第1規制板5と、固定部13の開口方向の他方側においてセンサ素子3に対向する第2規制板7とを有する。そして、第1規制板5には、第1規制板5とセンサ素子3との対向方向(Z軸方向)に見て、重り部9に重なり、重り部9よりも小さい孔部5hが形成されている。
【0080】
従って、図7を参照して説明したように、孔部5hを介して重り部9を押圧することにより、加速度センサ1に加速度が加えられたのと同様の作用を生じさせることができる。すなわち、加速度センサ1は、新たな外力付与方法を適用可能であり、加速度センサ1の評価方法の選択の自由度が向上する。
【0081】
さらに、この外力付与方法は、遠心力を利用した外力付与方法以上の外力、例えば、数十万G程度の加速度に相当する外力を付与可能である。また、第1規制板5等をセンサ素子3に固定した後に評価を行うことができるから、評価後の種々の工程によって、センサ素子3等の特性が変化してしまうことが抑制される。遠心力を付与する場合のように加速度センサ1を移動させる必要がないことから、例えば、装置が小型化され、また、ウェハ状態での評価も容易化される。
【0082】
第1規制板5は、固定部13の一方側の面に固定され、第2規制板7は、固定部13の他方側の面に固定されている。従って、図6(a)及び図6(b)を参照して説明したように、ウェハ状態のセンサ素子3に対して、第1規制板5及び第2規制板7を固定することができる。そして、ウェハ状態の加速度センサ1の評価を行うことができる。その結果、例えば、評価時期の選択の自由度が向上する。また、例えば、評価装置に対してウェハを位置決めすればよいから、個々の加速度センサ1を評価装置に対して個別に位置決めする必要がなくなる。また、例えば、一定の品質を有さない加速度センサ1を特定する情報を、ウェハ内の位置とし、簡便に管理することができる。
【0083】
孔部5hは、第1規制板5及びセンサ素子3の対向方向(Z軸方向)に見て、重り部9の中央に位置している。重り部9は、少なくとも、センサ素子3と第1規制板5との対向方向における加速度を検出することを想定されているところ、当該対向方向において、重り部9に偏りのない外力を付与することができる。その結果、Z軸方向における感度評価が適正になされる。
【0084】
半導体加速度センサ1の評価方法では、第1規制板5の、重り部9に対向する位置に孔部5hを形成し、孔部5hに挿通された押圧部材43により重り部9を所定の力で押圧しつつ、加速度センサ1の出力値を取得する。そして、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する。従って、加速度センサ1の孔部5hを利用して、新たな外力付与方法によって加速度センサ1の評価を行うことができる。しかも、押圧部材43を駆動する駆動力と重り部9に加えられる荷重との相関が明確であることから、任意の外力を付与して、当該任意の外力における感度を測定することが容易である。
【0085】
半導体加速度センサ1の製造方法は、半導体ウェハ37に対する加工により、重り部9、重り部9を囲繞する枠状の固定部13、一方端が重り部9に連結され、他方端が固定部13に連結された梁部11を有するセンサ素子3を作成する工程を含む。また、当該製造方法は、固定部13の開口方向の一方側においてセンサ素子3に対向し、重り部9に孔部5hが対向する第1規制板5を設ける工程と、固定部13の開口方向の他方側においてセンサ素子3に対向する第2規制板7を設ける工程とを含む。さらに、当該製造方法は、孔部5hに挿通された押圧部材43により重り部9を所定の力で押圧しつつ、加速度センサ1の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する工程を含む。従って、上述した新たな外力付与方法による評価に基づいて、一定の品質を有さない加速度センサ1を排除することが可能となる。
【0086】
<評価装置の変形例>
図10は、本発明の変形例に係る評価装置53の変形例を示す模式的な断面図である。
【0087】
評価装置53は、加速度センサ1に過大な加速度が加えられたときに、第1規制板5が重り部9の変位を適正に規制して、センサ素子3等の破損を抑制することができるか試すためのものである。
【0088】
評価装置53は、例えば、製品を吸着保持する保持装置を応用して構成されている。具体的には、評価装置53は、筒状部材55と、筒状部材55に接続された流路57と、流路57を開閉可能なバルブ59と、流路57に接続された真空タンク61と、真空タンク61を排気するポンプ63と、ポンプ63を駆動するモータ65と、真空タンク61の圧力を検出する圧力検出器67と、種々の演算を行う演算部69とを有している。
【0089】
筒状部材55は、例えば、いわゆるコレットにより構成されており、先端に吸引口が形成されている。そして、筒状部材55は、先端が第1規制板5に当接されることにより、吸引口が孔部5hに接続される。なお、コレットの先端又は全体は、コレットと第1規制板5との間の密閉性が向上するようにゴム等の弾性体により形成されていてもよい。
【0090】
ポンプ63は、真空タンク61内の気体を排出して、真空タンク61内部の圧力を大気圧よりも低くする。演算部69は、圧力検出器67の検出値に基づいて、モータ65を制御することにより、真空タンク61内の圧力を所望の圧力とする。
【0091】
真空タンク61が減圧された状態において、演算部69の制御によりバルブ59が開かれると、重り部9と第1規制板5との隙間に存在する気体が、孔部5h、筒状部材55及び流路57を介して、真空タンク61に吸引される。そして、重り部9は、第1規制板5側へ引き寄せられ、第1規制板5に衝突する。
【0092】
この後、センサ素子3等における破損の有無を判定することにより、第1規制板5が重り部9の変位を適正に規制できたか否かを評価できる。なお、破損の有無は、例えば、実施形態と同様に、実施形態の評価装置41による感度の評価(ステップS3〜S7)により行うことができる。
【0093】
この変形例によれば、加速度センサ1の孔部5hを利用して、新たな外力付与方法によって加速度センサ1の評価を行うことができる。また、半導体加速度センサ1をコレットによって吸着して搬送する搬送装置を評価装置53として兼用し、設備の縮小化を図ることができる。さらには、半導体加速度センサ1をコレット(筒状部材55)によって搬送すると同時に、重り部9を第1規制板5に衝突させ、その後、破損の有無を評価することにより、評価の工程の一部を搬送工程と重複させ、短縮化を図ることができる。
【0094】
なお、一定の品質が保証された加速度センサ1に対して、真空タンク61の圧力を変化させながら評価装置53の試運転を行い、加速度センサ1の出力電圧を取得すれば、真空タンク61の真空度と、重り部9に加えられる力との相関が把握される。従って、評価装置53は、任意の外力を重り部9に加えることも可能である。そして、評価装置53は、実施形態の評価装置41と同様に、加速度センサ1の任意の外力に対する感度評価を行うことも可能である。
【0095】
<加速度センサの第1の変形例>
図11は、本発明の変形例に係る加速度センサ101を示す模式的な断面図である。
【0096】
加速度センサ101は、重り部9の過大な変位を規制する部材の構成が実施形態と相違する。また、加速度センサ101は、適宜な電子部品(102)を含んでモジュール化されている点が実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0097】
加速度センサ101は、センサ素子3と、センサ素子3を収容するケース106と、ケース106に取り付けられた蓋体105と、ケース106に保持されるIC102とを有している。
【0098】
ケース106は、例えば、第1基板107A〜第5基板107Eが積層されて構成されている。そして、第1基板107A及び第2基板107Bに孔部が形成されることにより、ケース106の一方側には、センサ素子3が収容される第1収容空間123が形成されている。また、第4基板107D及び第5基板107Eに孔部が形成されることにより、ケース106の他方側には、IC102が収容される第2収容空間124が形成されている。
【0099】
ケース106の蓋体105とは反対側の表面には、端子117が設けられている。加速度センサ101は、例えば、端子117が不図示の回路基板等に半田により固定されることにより、回路基板に実装される。
【0100】
センサ素子3は、固定部13と第3基板107Cとが接着剤25により接着されることにより、ケース106に固定されている。重り部9は、第3基板107Cに対して所定の隙間で対向する。従って、第3基板107Cは、重り部9の第3基板107C側への過大な変位を規制する第2規制部材として機能する。
【0101】
蓋体105は、第1収容空間123の開口を塞ぐように配置され、接着剤125によりケース106に固定されている。これによりセンサ素子3が気密封止されている。
【0102】
IC102は、半田121により、第3基板107Cのセンサ素子3とは反対側に実装されている。そして、IC102は、センサ素子3と接続されている。具体的には、センサ素子3の電極パッド17は、ボンディングワイヤ118により、第2基板107Bに設けられた電極119に接続されている。そして、電極119は、ケース106に形成されたビア導体等の配線導体120、及び、半田121を介してIC102に接続されている。また、IC102は、配線導体120を介して端子117に接続されている。
【0103】
従って、IC102は、センサ素子3に適宜に電圧を印加して出力値を取得し、その出力値に基づく処理を実行し、その処理結果を端子117に出力することができる。IC102の処理は、例えば、電極パッド17から得られる出力値を3軸の加速度に変換する処理である。
【0104】
以上の変形例に係る加速度センサ101によれば、実施形態の加速度センサ1と同様の効果が得られる。すなわち、孔部5hが形成されていることから、新たな外力付与方法を適用して加速度センサ101の評価を行うことができる。
【0105】
<加速度センサの第2の変形例>
図12は、本発明の変形例に係る加速度センサ201の構成を示す模式的な斜視図である。
【0106】
加速度センサ201は、第1規制板の構成が実施形態の加速度センサ1と相違する。具体的には、加速度センサ201の第1規制板205は、第1規制板205の平面視において、重り部9の主部19(図2)に重なる位置だけでなく、付属部21(図2)に重なる位置においても孔部5hが形成されている。なお、付属部21に重なる位置に設けられた孔部5hは、重り部9に対して偏心した孔部(中心が重り部9の重心からずれた孔部)を構成している。
【0107】
この変形例によれば、例えば、孔部5hを介して、1以上の付属部21を選択的に押圧又は吸引することにより、加速度センサ201にX軸方向又はY軸方向に加速度が加えられたときにおける梁部11の撓みに類似した梁部11の撓みを再現することができる。その結果、X軸方向又はY軸方向における感度を好適に評価することができる。
【0108】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0109】
半導体加速度センサは、ピエゾ抵抗式のものに限定されない。例えば、半導体加速度センサは、静電容量式のものであってもよい。半導体加速度センサは、3軸の加速度を計測するものに限定されない。また、重り部の形状や梁部の数等の具体的な構成は、適宜に設定されてよい。例えば、半導体加速度センサは、梁部を1本のみ又は2本のみ有し、1軸の加速度を計測するものであってもよい。また、例えば、半導体加速度センサは、重り部が単純な立方体状に形成された、3軸の加速度を計測するものであってもよい。
【0110】
第1規制部材及び第2規制部材は、実施形態のように、センサ素子に直接的に固定されていてもよいし、変形例に係るケース106に取り付けることにより、センサ素子に対して間接的に固定されていてもよい。
【0111】
第1規制部材に設けられる孔部は、適宜な位置に適宜な大きさで適宜な数だけ設けられてよい。例えば、孔部は、実施形態において、付属部21に重なる位置にのみ設けられていてもよい。孔部は、孔部を介して重り部を押圧するのであれば、押圧部材を通過させるのに十分な径を、孔部を介して真空引きするのであれば、重り部を第1規制部材側へ引き寄せるのに十分な径を有していればよい。従って、例えば、押圧による評価を行わず、真空引きによる評価を行うだけであるならば、孔部は比較的小さくすることが可能であり、第1規制部材を多孔質体によって構成することにより孔部が形成されてもよい。
【0112】
また孔部の開口形状としては、円形以外にも、三角形、四角形などの多角形、楕円形、十字形なども例示できる。また孔部の一方側の開口と他方側の開口とは、径の大きさや形状が異なっていてもよい。
【0113】
孔部は、第1規制部材だけでなく、第2規制部材にも設けられてもよい。この場合、実施形態に示した押圧を利用した評価方法により、重り部(9)の第2規制部材(7)側への感度や衝突だけでなく、重り部(9)の第1規制部材(5)側への感度や衝突も評価することができる。すなわち、一の評価装置により、2方向における評価が可能となる。同様に、変形例に示した吸引を利用した評価方法により、重り部(9)の第1規制部材(5)側への感度や衝突だけでなく、重り部(9)の第2規制部材(7)側への感度や衝突も評価することができる。
【0114】
なお、実施形態に示した押圧を利用した評価方法と、変形例に示した吸引を利用した評価方法とを組み合わせた場合には、第1規制部材側に孔部が設けられているだけで、重り部(9)の第1規制部材(5)側への感度や衝突と、重り部(9)の第2規制部材(7)側への感度や衝突との双方を評価可能である。これは、第2規制部材に孔部を形成することが困難な場合等に有効である。
【0115】
破損の有無の判定は、感度の評価に基づくものに限定されない。例えば、破損の有無の判定は、画像認識や目視によってなされてもよいし、加速度センサに超音波を照射して加速度センサの共振周波数が適正範囲に収まるか否かによってなされてもよい。破損の有無の判定が感度の評価に基づいて行われる場合、重力を利用した評価方法や遠心力を利用した評価方法等の、孔部を利用しない感度の評価に基づいてなされてもよい。
また孔部から重り部を押圧する方法としては、空気圧を利用することも可能である。
また第1規制板および第2規制板とセンサ素子との固定は、陽極接合により行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態に係る加速度センサの斜視図。
【図2】図1の加速度センサのセンサ素子を第1規制板側から見た斜視図。
【図3】図2のセンサ素子を第2規制板側から見た斜視図。
【図4】図1のIV−IV線における断面図。
【図5】図1の加速度センサの製造方法を説明する断面図。
【図6】図2のセンサ素子を含む半導体ウェハの切断時期を説明する平面図。
【図7】図1の加速度センサを評価する評価装置を示す断面図。
【図8】図7の評価装置による加速度センサの評価方法を説明する図。
【図9】図7の評価装置の演算部が実行する評価処理の手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の変形例に係る評価装置を示す模式的な断面図。
【図11】本発明の変形例に係る加速度センサを示す模式的な断面図。
【図12】本発明の変形例に係る他の加速度センサを示す模式的な斜視図。
【符号の説明】
【0117】
1…半導体加速度センサ、3…センサ素子、5…第1規制板(第1規制部材)、5h…孔部、7…第2規制板(第2規制部材)、9…重り部、11…梁部、13…固定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体加速度センサ、半導体加速度センサの評価方法及び半導体加速度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピエゾ抵抗式の半導体加速度センサや静電容量式の半導体加速度センサなどの半導体加速度センサが知られている(例えば特許文献1)。これらの加速度センサは、シリコン基板等の半導体に対する加工により形成されたセンサ素子を有する。センサ素子は、重り部、重り部を支持する梁部、及び、梁部を支持する固定部を有する。加速度センサに加速度が付与されると、梁部の変形を伴って重り部が固定部に対して変位する。そして、梁部の変形が、ピエゾ抵抗の抵抗値の変化やコンデンサの容量の変化として検出されることにより、加速度が検出される。
【0003】
特許文献1の加速度センサは、過大な加速度が加えられたときに、センサ素子の破損が生じることを抑制するために、重り部の振動方向において、重り部を挟んで互いに対向する2枚の規制板を有している。重り部とそれぞれの規制板との間には、重り部が変位可能となるように、比較的微小な隙間が確保されている。そして、加速度センサに過大な加速度が加えられたときには、重り部は規制板に当接し、変位が規制される。
【0004】
これらの加速度センサの感度等を評価する方法としては、例えば、重力を利用するものや遠心力を利用するものが知られている。重力を利用する評価方法では、重力方向に対する加速度センサの向きを変化させ、重力によって1G以内の加速度を加速度センサの測定方向に付与しつつ、加速センサの出力値を取得する。そして、その出力値が付与した加速度に対して適正な値を示しているか否かを判定する。遠心力を利用する評価方法では、回転テーブルに加速度センサを配置し、遠心力によって任意の加速度を加速度センサに付与しつつ、加速センサの出力値を取得する。そして、その出力値が付与した加速度に対して適正な値を示しているか否かを判定する。
【特許文献1】特開平04−274005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、重力を利用する加速度センサの評価方法では、1G以内の加速度に対する出力電圧しか測定することができない。遠心力を利用する加速度センサの評価方法は、比較的大きな加速度を印加できるものの、印加する加速度が数千Gを越えると出力電圧の検出が難しくなってくる。また、複数の加速度センサを有する半導体ウェハを回転させて加速度センサに遠心力を付与した状態で出力電圧を測定することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、新たな外力付与方法を適用可能な半導体加速度センサ、並びに、当該半導体加速度センサの評価方法及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体加速度センサは、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、を有し、前記第1規制部材には、当該第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部が形成されている。
【0008】
好適には、前記第1規制部材は、前記固定部の前記一方側の面に固定され、前記第2規制部材は、前記固定部の前記他方側の面に固定されている。
【0009】
好適には、前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部の中央に位置している。
【0010】
好適には、前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に対して偏心している。
【0011】
好適には、前記重り部は、前記梁部の前記一方端が連結される主部と、前記主部に連結され、前記梁部の前記一方端よりも前記他方端側へ突出する付属部と、を有し、前記孔部として、前記主部に対向する孔部と、前記付属部に対向する孔部とが形成されている。
【0012】
本発明の半導体加速度センサの評価方法は、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、を有する半導体加速度センサの評価方法であって、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより、前記半導体加速度センサを評価する。
【0013】
好適には、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する。
【0014】
好適には、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を押圧して前記重り部を前記第2規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する。
【0015】
好適には、前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する。
【0016】
本発明の半導体加速度センサの製造方法は、半導体ウェハに対する加工により、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子を作成する工程と、前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材を設ける工程と、前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材を設ける工程と、前記重り部に力を加えることにより品質を評価する工程と、を有し、前記第1規制部材を設ける工程では、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、前記評価する工程では、前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより品質を評価する。
【0017】
好適には、前記評価する工程では、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する。
【0018】
好適には、前記評価する工程では、前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する。
【0019】
好適には、前記センサ素子を作成する工程では、前記半導体ウェハを切断することにより複数の前記センサ素子が作成され、前記第1規制部材を設ける工程、前記第2規制部材を設ける工程及び前記評価する工程は、前記半導体ウェハの切断よりも前に行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体加速度センサを評価するにあたり、新たな加速度付与方法を適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に図面を参照して、本発明に係る半導体加速度センサ及び当該半導体加速度センサの製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、半導体加速度センサの製造方法には、半導体加速度センサの評価方法が含まれている。また、以下の実施の形態で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0022】
<半導体加速度センサ>
図1は、本実施形態に係る半導体加速度センサ1(以下、単に「加速度センサ1」ということがある。)の斜視図である。
【0023】
加速度センサ1は、例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した三次元加速度センサとして構成されている。加速度センサ1は、センサ素子3と、センサ素子3の一方側の面に積層された第1規制板5と、センサ素子3の他方側の面に積層された第2規制板7とを有している。センサ素子3は、加速度を検出する部分であり、第1規制板5及び第2規制板7は、センサ素子3を保護するためのものである。
【0024】
図2は、センサ素子3を第1規制板5側から見た斜視図である。図3は、センサ素子3を第2規制板7側から見た斜視図である。
【0025】
センサ素子3は、例えば、半導体基板に加工が施されることにより構成されている。半導体基板は、例えば、SOI基板である。センサ素子3は、センサ素子3に加えられた加速度をセンサ素子3の変形に変換するために、重り部9と、固定部13と、重り部9を固定部13に対して揺動可能に支持する梁部11(図2)とを有している。また、センサ素子3は、梁部11の変形を電気的変化に変換して出力するために、梁部11の変形に伴って抵抗値が変化する抵抗素子15(図2)と、抵抗素子15に接続され、端子として機能する電極パッド17(図2)とを有している。
【0026】
重り部9は、梁部11に連結された主部19と、主部19の外周に連結された複数(本実施形態では4つを例示)の付属部21とを有している。主部19及び付属部21は、例えば、平面視において(Z軸方向に見て)概ね正方形の直方体状(立方体含む)に形成されている。付属部21は、例えば、主部19の4隅にそれぞれ連結されている。付属部21は、梁部11の主部19側の端部よりも梁部11の固定部13側の端部側へ突出している。
【0027】
主部19の平面視における一辺の長さは、例えば、0.25mm〜0.5mmである。また、主部19の厚みは、例えば、0.2mm〜0.625mmである。付属部21の平面視における一辺の長さは例えば0.1mm〜0.4mmである。また、付属部21の厚みは、例えば、主部19の厚みと同じである。
【0028】
固定部13は、例えば、平面視において概ね略正方形の枠状に形成されており、重り部9が収容される、概ね正方形の開口部23が形成されている。固定部13の平面視における一辺の長さは、例えば、0.8mm〜3.0mmである。固定部13の平面視における各辺の幅は、例えば0.1mm〜1.8mmである。固定部13の厚みは、例えば、0.2mm〜0.625mmである。
【0029】
梁部11は、開口部23の開口方向の一方側において設けられ、一端が重り部9の主部19に連結され、他端が固定部13に連結されている。梁部11は、例えば、X軸方向において主部19を挟んで2本、Y軸方向において主部19を挟んで2本、合計4本設けられている。各梁部11は、主部19及び固定部13の互いに対向する辺の中央位置に連結されている。梁部11の長さは、例えば、0.1mm〜0.8mmである。梁部11の幅は、例えば、0.01mm〜0.2mmである。梁部11の厚さは、例えば、5μm〜20μmである。
【0030】
抵抗素子15は、変形に伴って抵抗値が変化するピエゾ抵抗である。抵抗素子15は、計測対象とする方向に応じて適宜な数で適宜な位置に設けられる。例えば、抵抗素子15は、3軸方向(3次元直交座標系におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の加速度を検出可能に複数の梁部11に複数設けられている。
【0031】
複数の抵抗素子15は、例えば、梁部11に形成された不図示の配線により接続されて、ブリッジ回路を構成している。ブリッジ回路の出力電圧は、梁部11の変形に伴う抵抗素子15の抵抗値の変化により変化する。
【0032】
電極パッド17は、固定部13の第1規制板5側の面に設けられている。電極パッド17は、梁部11に形成された不図示の配線を介して、抵抗素子15を含むブリッジ回路と接続されている。抵抗素子15を含むブリッジ回路は、電極パッド17を介して電圧の印加及び出力電圧の取得がなされる。
【0033】
図1に示すように、第1規制板5は、開口部23の開口方向(Z軸方向)の一方側において、センサ素子3に対向して配置されている。第1規制板5は、例えば、開口部23よりも広く形成されており、開口部23を塞いでいる。第1規制板5は、例えば、センサ素子3の平面形状と概ね同様の形状において、電極パッド17を露出させるための切り欠き部5cが形成された形状となっている。第1規制板5は、例えば、ガラス基板により構成されている。
【0034】
第1規制板5の中央には、第1規制板5を貫通する孔部5hが形成されている。孔部5hは、例えば、平面視において、重り部9の主部19と重なる。より好ましくは、孔部5hは、平面視において、主部19の中央に位置する。孔部5hの開口形状は適宜に設定されてよいが、例えば円形である。孔部5hは、平面視において、重り部9よりも小さく、より好ましくは、主部19よりも小さく形成されている。孔部5hの径は、例えば、60μm〜500μmである。
【0035】
第2規制板7は、開口部23の開口方向の、第1規制板5とは反対側において、センサ素子3に対向して配置されている。第2規制板7は、例えば、開口部23よりも広く形成されており、開口部23を塞いでいる。第2規制板7は、例えば、センサ素子3の平面形状と概ね同様の形状となっている。第2規制板7は、例えば、ガラス基板、シリコン基板、セラミック基板などにより構成されている。
【0036】
図4は、図1のIV−IV線における断面図である。
【0037】
第1規制板5及び第2規制板7は、例えば、接着剤25により、センサ素子3と固定されている。接着剤25は、平面視において、センサ素子3の固定部13の適宜な位置に塗布される。例えば、接着剤25は、平面視において、固定部13の4隅に塗布される。接着剤25は、例えば、シリコン樹脂やエポキシ樹脂により形成されている。
【0038】
接着剤25は、複数のスペーサ27を含有している。複数のスペーサ27は、例えば、所定の径を有する球状部材である。従って、スペーサ27によって、固定部13と第1規制板5とのギャップ、並びに、固定部13と第2規制板7とのギャップが一定に保たれる。ひいては、重り部9が、一定の隙間で、第1規制板5及び第2規制板7に対向する。そして、重り部9は、第1規制板5と第2規制板7との間の範囲内で、Z軸方向における変位が許容される。スペーサ27の直径は、例えば、4〜30μmである。
【0039】
加速度センサ1に加速度が加えられると、梁部11の変形を伴って重り部9が固定部13に対して変位する。また、梁部11の変形に伴って、抵抗素子15も変形し、抵抗素子15の抵抗値が変化する。これにより、電極パッド17の出力値(例えば出力電圧)が変化し、加速度検出が可能となる。
【0040】
加速度センサ1に過大な加速度が加えられたときには、重り部9が第1規制板5又は第2規制板7に当接することにより、重り部9の変位が規制される。ひいては、梁部11や抵抗素子15の変形が規制される。これにより、センサ素子3の破損が抑制される。
【0041】
<半導体加速度センサの製造方法>
半導体加速度センサの製造方法は、概略、センサ素子3を作製する工程と、センサ素子3に対向する第1規制板5及び第2規制板7を設ける工程と、センサ素子3の感度等を評価する工程とを有している。具体的には、以下のとおりである。
【0042】
(センサ素子を作成する工程)
図5(a)及び図5(b)は、センサ素子3を作成する工程を説明する断面図である。
【0043】
センサ素子3は、図5(a)に示すSOI基板29に対して加工を行うことにより形成される。SOI基板29は、絶縁層31と、絶縁層31の一方側に積層された半導体層33と、絶縁層31の他方側に積層された支持層35とを有する。絶縁層31は、例えばSiO2により形成されている。半導体層33は、例えばシリコンにより形成されている。支持層35は、例えば、シリコン等の半導体により形成されている。
【0044】
SOI基板29の加工では、図5(a)に示すように、まず、抵抗素子15の形成が行われる。具体的には、半導体層33にイオン注入法により不純物を注入することでピエゾ抵抗からなる抵抗素子15が形成される。不純物としては、n型のSOI基板を用いた場合にはB(ボロン)が例示でき、p型のSOI基板を用いた場合にはP(リン)、As(ヒ素)などが例示できる。
【0045】
抵抗素子15の形成後、半導体層33には、ピエゾ抵抗素子に接続される配線が形成される。配線は、金属スパッター、CVD、蒸着などによりアルミなどの金属材料を成膜した後、成膜した金属材料をドライエッチング、ウェットエッチングなどによりパターニングすることにより形成される。
【0046】
次に、図5(b)に示すように、SOI基板29の一部を除去する加工により、重り部9、梁部11及び固定部13が形成される。SOI基板29の一部を除去する加工は、例えば、フォトリソグラフィ法や誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング(Inductively Coupled Plasma Reactive Ion Etching:ICP-RIE)である。
【0047】
(第1規制板及び第2規制板を設ける工程)
図5(c)及び図5(d)は、センサ素子3に対して第1規制板5を設ける工程を説明する断面図である。なお、第2規制板7を設ける工程は、第1規制板5を設ける工程と同様であることから説明を省略する。第1規制板5及び第2規制板7は、いずれが先にセンサ素子3に対して配置されてもよい。
【0048】
第1規制板5には、例えば、センサ素子3に対して配置される前に、孔部5hや切り欠き部5cが形成される(図6参照)。また、図5(c)に示すように、センサ素子3には、スペーサ27を含有する接着剤25が塗布される。そして、図5(d)に示すように、第1規制板5及びセンサ素子3は、接着剤25により固定される。
【0049】
なお、図5(a)及び図5(b)に示した加工は、SOI基板29により構成される半導体ウェハ37(図6(a)参照)の複数の領域に対して行なわれる。そして、図5(a)及び図5(b)に示した加工が施された半導体ウェハ37が、ダイシングなどにより切断されることにより、一枚の半導体ウェハ37から複数のセンサ素子3が形成される。
【0050】
また、第1規制板5及び第2規制板7も、一枚のガラス基板39(図6(a)参照)から多数個取りされる。孔部5hは、例えば、ガラス基板39の切断前に形成される。切り欠き部5cは、ガラス基板39の切断前に形成され、又は、ガラス基板39の切断において形成される。
【0051】
図6は、センサ素子3に対する第1規制板5(第2規制板7)の配置の時期を半導体ウェハ37の切断等との関係において例示する模式的な平面図である。
【0052】
図6(a)の例では、切断される前のセンサ素子3に対して切断される前の第1規制板5が配置されている。そして、センサ素子3と第1規制板5との接着後、加速度センサ1は切断される。
【0053】
図6(b)の例では、切断される前のセンサ素子3に対して切断された後の第1規制板5が配置されている。そして、センサ素子3と第1規制板5との接着後、加速度センサ1は切断される。
【0054】
図6(c)の例では、切断された後のセンサ素子3に対して切断された後の第1規制板5が配置されている。従って、加速度センサ1は、最初から切断された状態で形成される。
【0055】
第1規制板5(第2規制板7)の配置の時期は、図6(a)〜図6(c)におけるいずれの時期が採用されてもよい。
【0056】
(半導体加速度センサを評価する工程)
図7は、半導体加速度センサ1の評価を行うための評価装置41の構成を示す模式的な断面図である。
【0057】
評価装置41は、例えば、試料の硬度を測定するナノインデンタ装置を応用して構成されている。具体的には、評価装置41は、検査対象を押圧可能な押圧部材43と、押圧部材43を駆動するアクチュエータ45と、押圧部材43の押圧力を検出する荷重検出器47と、押圧部材43の変位を検出する変位検出器49とを有している。また、評価装置41は、種々の演算を行う演算部51を有している。
【0058】
押圧部材43は、例えば、比較的細い棒状(ニードル状)に形成されており、孔部5hに挿通可能である。また、押圧部材43は、例えば、不図示のケーシングに対して不図示の板バネを介して押圧部材43の延びる方向に移動可能に支持されている。アクチュエータ45は、例えば、リニアモータにより構成されており、押圧部材43を押圧部材43の延びる方向において駆動可能である。そして、押圧部材43は、アクチュエータ45によって駆動され、孔部5hを介して重り部9を第2規制板7側へ押圧する。
【0059】
荷重検出器47は、ひずみゲージ式、圧電式、容量式、電磁式、音叉式等の適宜な検出器により構成されており、押圧部材43が重り部9に加える荷重を検出し、その検出結果を演算部51に出力する。また、変位検出器49は、容量式、磁気式、光学式等の適宜な検出器により構成されており、押圧部材43の変位を検出し、その検出結果を演算部51に出力する。
【0060】
演算部51は、例えば、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を有するコンピュータにより構成されている。演算部51は、所望の荷重を重り部9に付与するように、荷重検出器47の検出結果に基づいてアクチュエータ45を制御する。
【0061】
また、演算部51は、加速度センサ1と接続される。例えば、演算部51は、演算部51に接続されたケーブルの先端に設けられたニードル状の端子(プローバー)が電極パッド17に当接されることにより、加速度センサ1と接続される。そして、演算部51は、変位検出器49の検出結果と、加速度センサ1の出力値とに基づいて、加速度センサ1の感度を評価する。
【0062】
図8は、評価装置41による加速度センサ1の評価方法を説明する図である。横軸は、重り部9に加えられる荷重を示している。縦軸は、加速度センサ1の出力値(出力電圧)を示している。
【0063】
押圧部材43によって重り部9に荷重が加えられると、図7に示すように、梁部11の変形を伴って重り部9が変位する。従って、図8に示すように、重り部9に加える荷重を変化させると、抵抗素子15の抵抗値が変化し、加速度センサ1の出力電圧が変化する。すなわち、押圧部材43により重り部9に加える荷重を変化させることにより、加速度センサ1に加えられる加速度を変化させるのと同様の作用が生じる。
【0064】
そこで、押圧部材43により重り部9を押圧しつつ加速度センサ1の出力電圧を取得し、図8において実線L1で示すように、所定の荷重に対する出力電圧を得る。取得した出力電圧が、点線L2及び点線L3により示される基準範囲内に収まっているか否か判定することにより、加速度センサ1が一定の品質を有するか否か判定できる。
【0065】
なお、図8は、荷重の増加とともに出力電圧が一定の増加量で増加する特性を示しているが、抵抗素子15の配置、抵抗素子15と電極パッド17とを接続する回路構成等は、このような特性を示すものに限定されない。荷重の増加とともに出力電圧が低下してもよいし、荷重の増加量に対して出力電圧の増加量が変化してもよい。
【0066】
図9は、演算部51が実行する加速度センサ1の評価処理の手順を示すフローチャートである。
【0067】
ステップS1において、演算部51は、アクチュエータ45を駆動して、押圧部材43により所定の破損検査用荷重で重り部9を押圧する。この押圧は、加速度センサ1に過大な加速度が加えられたときに、第2規制板7が重り部9の変位を適正に規制して、センサ素子3等の破損を抑制することができるか試すためのものである。従って、破損検査用荷重は、重り部9が第2規制板7に当接する荷重以上の範囲において、加速度センサ1の用途等を考慮して適宜に設定される。
【0068】
ステップS2では、演算部51は、重り部9の押圧を一旦解除する。ステップS1に押圧によって、破損が生じたか否かの判定は、後述するように、後のステップS7において、感度の評価とともに行われる。
【0069】
ステップS3では、演算部51は、アクチュエータ45を駆動して、押圧部材43により所定の感度検査用初期荷重で重り部9を押圧する。感度検査用初期荷重は、図8に示した実線L1を得るための荷重の最小値である。感度検査用初期荷重は、加速度センサ1の用途等を考慮して適宜に設定される。
【0070】
ステップS4では、演算部51は、現在の加速度センサ1の出力電圧を取得する。
【0071】
ステップS5では、演算部51は、押圧部材43により重り部9に加えている荷重が、所定の感度検査用最大荷重に到達したか否かを判定する。なお、感度検査用最大荷重は、加速度センサ1の用途等を考慮して、感度検査用初期荷重以上、且つ、破損検査用荷重未満の範囲で適宜に設定される。演算部51は、実際の荷重が感度検査用最大荷重に到達していないと判定した場合はステップS6に進み、実際の荷重が感度検査用最大荷重に到達したと判定した場合はステップS7に進む。
【0072】
ステップS6では、演算部51は、押圧部材43により重り部9に加える荷重を増加する。増加量は、適宜に設定されてよい。また、増加量は、一定量であっても可変量であってもよい。そして、演算部51は、ステップS4に戻る。
【0073】
ステップS7では、演算部51は、図8を参照して説明したように、加速度センサ1の感度の評価を行う。すなわち、演算部51は、ステップS3及びステップS6において設定された荷重毎に、取得された出力電圧が、その荷重に対応して予め設定された基準範囲に収まるか否かを判定する。
【0074】
なお、基準範囲は、パラメータが代入される数式により与えられてもよいし、データ(チャート)により与えられてもよい。また、計測された出力電圧に基づいて、実線L1で示すような直線や曲線が算出されて判定されてもよい。ステップS7は、ステップS4〜S6のループ内において実行されてもよい。
【0075】
ここで、ステップS1において、第2規制板7が有効に機能せずに、センサ素子3等が破損した場合には、ステップS7における感度評価において、センサ素子3は、一定の品質を有しないと判定される可能性が高い。従って、ステップS7は、ステップS1の押圧によって破損が生じたか否かを判定するステップともなっている。
【0076】
なお、ステップS1において、変位検出器49の検出値が一定の基準値を超えたか否かにより、破損の有無を判定してもよい。この場合において、ステップS3以降を省略してもよい。
【0077】
図7に示す評価処理の終了後、加速度センサ1の製造工程においては、ステップS7の評価結果に応じた処理がなされる。例えば、演算部51は、一定の品質を有さないと判定された加速度センサ1を特定する情報を、加速度センサ1を搬送する搬送装置に出力する。搬送装置では、演算部51から出力された情報に基づいて、搬送する複数の加速度センサ1を、一定の品質を有するものと有さないものとに仕分けする。
【0078】
なお、図6(a)又は図6(b)に示したように、センサ素子3に第1規制板5及び第2規制板7が接着された後に半導体ウェハ37が切断される場合、加速度センサ1の評価は、半導体ウェハ37が切断される前に行われてもよいし、後に行われてもよい。加速度センサ1の評価が、半導体ウェハの切断の前に行われる場合、当該評価は、複数の加速度センサ1に対して、順次行われてもよいし、並列に行われてもよい。
【0079】
以上の実施形態によれば、半導体加速度センサ1は、重り部9、重り部9を囲繞する枠状の固定部13、及び、一方端が重り部9に連結され、他方端が固定部13に連結された梁部11を有するセンサ素子3を有する。また、加速度センサ1は、固定部13の開口方向の一方側においてセンサ素子3に対向する第1規制板5と、固定部13の開口方向の他方側においてセンサ素子3に対向する第2規制板7とを有する。そして、第1規制板5には、第1規制板5とセンサ素子3との対向方向(Z軸方向)に見て、重り部9に重なり、重り部9よりも小さい孔部5hが形成されている。
【0080】
従って、図7を参照して説明したように、孔部5hを介して重り部9を押圧することにより、加速度センサ1に加速度が加えられたのと同様の作用を生じさせることができる。すなわち、加速度センサ1は、新たな外力付与方法を適用可能であり、加速度センサ1の評価方法の選択の自由度が向上する。
【0081】
さらに、この外力付与方法は、遠心力を利用した外力付与方法以上の外力、例えば、数十万G程度の加速度に相当する外力を付与可能である。また、第1規制板5等をセンサ素子3に固定した後に評価を行うことができるから、評価後の種々の工程によって、センサ素子3等の特性が変化してしまうことが抑制される。遠心力を付与する場合のように加速度センサ1を移動させる必要がないことから、例えば、装置が小型化され、また、ウェハ状態での評価も容易化される。
【0082】
第1規制板5は、固定部13の一方側の面に固定され、第2規制板7は、固定部13の他方側の面に固定されている。従って、図6(a)及び図6(b)を参照して説明したように、ウェハ状態のセンサ素子3に対して、第1規制板5及び第2規制板7を固定することができる。そして、ウェハ状態の加速度センサ1の評価を行うことができる。その結果、例えば、評価時期の選択の自由度が向上する。また、例えば、評価装置に対してウェハを位置決めすればよいから、個々の加速度センサ1を評価装置に対して個別に位置決めする必要がなくなる。また、例えば、一定の品質を有さない加速度センサ1を特定する情報を、ウェハ内の位置とし、簡便に管理することができる。
【0083】
孔部5hは、第1規制板5及びセンサ素子3の対向方向(Z軸方向)に見て、重り部9の中央に位置している。重り部9は、少なくとも、センサ素子3と第1規制板5との対向方向における加速度を検出することを想定されているところ、当該対向方向において、重り部9に偏りのない外力を付与することができる。その結果、Z軸方向における感度評価が適正になされる。
【0084】
半導体加速度センサ1の評価方法では、第1規制板5の、重り部9に対向する位置に孔部5hを形成し、孔部5hに挿通された押圧部材43により重り部9を所定の力で押圧しつつ、加速度センサ1の出力値を取得する。そして、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する。従って、加速度センサ1の孔部5hを利用して、新たな外力付与方法によって加速度センサ1の評価を行うことができる。しかも、押圧部材43を駆動する駆動力と重り部9に加えられる荷重との相関が明確であることから、任意の外力を付与して、当該任意の外力における感度を測定することが容易である。
【0085】
半導体加速度センサ1の製造方法は、半導体ウェハ37に対する加工により、重り部9、重り部9を囲繞する枠状の固定部13、一方端が重り部9に連結され、他方端が固定部13に連結された梁部11を有するセンサ素子3を作成する工程を含む。また、当該製造方法は、固定部13の開口方向の一方側においてセンサ素子3に対向し、重り部9に孔部5hが対向する第1規制板5を設ける工程と、固定部13の開口方向の他方側においてセンサ素子3に対向する第2規制板7を設ける工程とを含む。さらに、当該製造方法は、孔部5hに挿通された押圧部材43により重り部9を所定の力で押圧しつつ、加速度センサ1の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する工程を含む。従って、上述した新たな外力付与方法による評価に基づいて、一定の品質を有さない加速度センサ1を排除することが可能となる。
【0086】
<評価装置の変形例>
図10は、本発明の変形例に係る評価装置53の変形例を示す模式的な断面図である。
【0087】
評価装置53は、加速度センサ1に過大な加速度が加えられたときに、第1規制板5が重り部9の変位を適正に規制して、センサ素子3等の破損を抑制することができるか試すためのものである。
【0088】
評価装置53は、例えば、製品を吸着保持する保持装置を応用して構成されている。具体的には、評価装置53は、筒状部材55と、筒状部材55に接続された流路57と、流路57を開閉可能なバルブ59と、流路57に接続された真空タンク61と、真空タンク61を排気するポンプ63と、ポンプ63を駆動するモータ65と、真空タンク61の圧力を検出する圧力検出器67と、種々の演算を行う演算部69とを有している。
【0089】
筒状部材55は、例えば、いわゆるコレットにより構成されており、先端に吸引口が形成されている。そして、筒状部材55は、先端が第1規制板5に当接されることにより、吸引口が孔部5hに接続される。なお、コレットの先端又は全体は、コレットと第1規制板5との間の密閉性が向上するようにゴム等の弾性体により形成されていてもよい。
【0090】
ポンプ63は、真空タンク61内の気体を排出して、真空タンク61内部の圧力を大気圧よりも低くする。演算部69は、圧力検出器67の検出値に基づいて、モータ65を制御することにより、真空タンク61内の圧力を所望の圧力とする。
【0091】
真空タンク61が減圧された状態において、演算部69の制御によりバルブ59が開かれると、重り部9と第1規制板5との隙間に存在する気体が、孔部5h、筒状部材55及び流路57を介して、真空タンク61に吸引される。そして、重り部9は、第1規制板5側へ引き寄せられ、第1規制板5に衝突する。
【0092】
この後、センサ素子3等における破損の有無を判定することにより、第1規制板5が重り部9の変位を適正に規制できたか否かを評価できる。なお、破損の有無は、例えば、実施形態と同様に、実施形態の評価装置41による感度の評価(ステップS3〜S7)により行うことができる。
【0093】
この変形例によれば、加速度センサ1の孔部5hを利用して、新たな外力付与方法によって加速度センサ1の評価を行うことができる。また、半導体加速度センサ1をコレットによって吸着して搬送する搬送装置を評価装置53として兼用し、設備の縮小化を図ることができる。さらには、半導体加速度センサ1をコレット(筒状部材55)によって搬送すると同時に、重り部9を第1規制板5に衝突させ、その後、破損の有無を評価することにより、評価の工程の一部を搬送工程と重複させ、短縮化を図ることができる。
【0094】
なお、一定の品質が保証された加速度センサ1に対して、真空タンク61の圧力を変化させながら評価装置53の試運転を行い、加速度センサ1の出力電圧を取得すれば、真空タンク61の真空度と、重り部9に加えられる力との相関が把握される。従って、評価装置53は、任意の外力を重り部9に加えることも可能である。そして、評価装置53は、実施形態の評価装置41と同様に、加速度センサ1の任意の外力に対する感度評価を行うことも可能である。
【0095】
<加速度センサの第1の変形例>
図11は、本発明の変形例に係る加速度センサ101を示す模式的な断面図である。
【0096】
加速度センサ101は、重り部9の過大な変位を規制する部材の構成が実施形態と相違する。また、加速度センサ101は、適宜な電子部品(102)を含んでモジュール化されている点が実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
【0097】
加速度センサ101は、センサ素子3と、センサ素子3を収容するケース106と、ケース106に取り付けられた蓋体105と、ケース106に保持されるIC102とを有している。
【0098】
ケース106は、例えば、第1基板107A〜第5基板107Eが積層されて構成されている。そして、第1基板107A及び第2基板107Bに孔部が形成されることにより、ケース106の一方側には、センサ素子3が収容される第1収容空間123が形成されている。また、第4基板107D及び第5基板107Eに孔部が形成されることにより、ケース106の他方側には、IC102が収容される第2収容空間124が形成されている。
【0099】
ケース106の蓋体105とは反対側の表面には、端子117が設けられている。加速度センサ101は、例えば、端子117が不図示の回路基板等に半田により固定されることにより、回路基板に実装される。
【0100】
センサ素子3は、固定部13と第3基板107Cとが接着剤25により接着されることにより、ケース106に固定されている。重り部9は、第3基板107Cに対して所定の隙間で対向する。従って、第3基板107Cは、重り部9の第3基板107C側への過大な変位を規制する第2規制部材として機能する。
【0101】
蓋体105は、第1収容空間123の開口を塞ぐように配置され、接着剤125によりケース106に固定されている。これによりセンサ素子3が気密封止されている。
【0102】
IC102は、半田121により、第3基板107Cのセンサ素子3とは反対側に実装されている。そして、IC102は、センサ素子3と接続されている。具体的には、センサ素子3の電極パッド17は、ボンディングワイヤ118により、第2基板107Bに設けられた電極119に接続されている。そして、電極119は、ケース106に形成されたビア導体等の配線導体120、及び、半田121を介してIC102に接続されている。また、IC102は、配線導体120を介して端子117に接続されている。
【0103】
従って、IC102は、センサ素子3に適宜に電圧を印加して出力値を取得し、その出力値に基づく処理を実行し、その処理結果を端子117に出力することができる。IC102の処理は、例えば、電極パッド17から得られる出力値を3軸の加速度に変換する処理である。
【0104】
以上の変形例に係る加速度センサ101によれば、実施形態の加速度センサ1と同様の効果が得られる。すなわち、孔部5hが形成されていることから、新たな外力付与方法を適用して加速度センサ101の評価を行うことができる。
【0105】
<加速度センサの第2の変形例>
図12は、本発明の変形例に係る加速度センサ201の構成を示す模式的な斜視図である。
【0106】
加速度センサ201は、第1規制板の構成が実施形態の加速度センサ1と相違する。具体的には、加速度センサ201の第1規制板205は、第1規制板205の平面視において、重り部9の主部19(図2)に重なる位置だけでなく、付属部21(図2)に重なる位置においても孔部5hが形成されている。なお、付属部21に重なる位置に設けられた孔部5hは、重り部9に対して偏心した孔部(中心が重り部9の重心からずれた孔部)を構成している。
【0107】
この変形例によれば、例えば、孔部5hを介して、1以上の付属部21を選択的に押圧又は吸引することにより、加速度センサ201にX軸方向又はY軸方向に加速度が加えられたときにおける梁部11の撓みに類似した梁部11の撓みを再現することができる。その結果、X軸方向又はY軸方向における感度を好適に評価することができる。
【0108】
本発明は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0109】
半導体加速度センサは、ピエゾ抵抗式のものに限定されない。例えば、半導体加速度センサは、静電容量式のものであってもよい。半導体加速度センサは、3軸の加速度を計測するものに限定されない。また、重り部の形状や梁部の数等の具体的な構成は、適宜に設定されてよい。例えば、半導体加速度センサは、梁部を1本のみ又は2本のみ有し、1軸の加速度を計測するものであってもよい。また、例えば、半導体加速度センサは、重り部が単純な立方体状に形成された、3軸の加速度を計測するものであってもよい。
【0110】
第1規制部材及び第2規制部材は、実施形態のように、センサ素子に直接的に固定されていてもよいし、変形例に係るケース106に取り付けることにより、センサ素子に対して間接的に固定されていてもよい。
【0111】
第1規制部材に設けられる孔部は、適宜な位置に適宜な大きさで適宜な数だけ設けられてよい。例えば、孔部は、実施形態において、付属部21に重なる位置にのみ設けられていてもよい。孔部は、孔部を介して重り部を押圧するのであれば、押圧部材を通過させるのに十分な径を、孔部を介して真空引きするのであれば、重り部を第1規制部材側へ引き寄せるのに十分な径を有していればよい。従って、例えば、押圧による評価を行わず、真空引きによる評価を行うだけであるならば、孔部は比較的小さくすることが可能であり、第1規制部材を多孔質体によって構成することにより孔部が形成されてもよい。
【0112】
また孔部の開口形状としては、円形以外にも、三角形、四角形などの多角形、楕円形、十字形なども例示できる。また孔部の一方側の開口と他方側の開口とは、径の大きさや形状が異なっていてもよい。
【0113】
孔部は、第1規制部材だけでなく、第2規制部材にも設けられてもよい。この場合、実施形態に示した押圧を利用した評価方法により、重り部(9)の第2規制部材(7)側への感度や衝突だけでなく、重り部(9)の第1規制部材(5)側への感度や衝突も評価することができる。すなわち、一の評価装置により、2方向における評価が可能となる。同様に、変形例に示した吸引を利用した評価方法により、重り部(9)の第1規制部材(5)側への感度や衝突だけでなく、重り部(9)の第2規制部材(7)側への感度や衝突も評価することができる。
【0114】
なお、実施形態に示した押圧を利用した評価方法と、変形例に示した吸引を利用した評価方法とを組み合わせた場合には、第1規制部材側に孔部が設けられているだけで、重り部(9)の第1規制部材(5)側への感度や衝突と、重り部(9)の第2規制部材(7)側への感度や衝突との双方を評価可能である。これは、第2規制部材に孔部を形成することが困難な場合等に有効である。
【0115】
破損の有無の判定は、感度の評価に基づくものに限定されない。例えば、破損の有無の判定は、画像認識や目視によってなされてもよいし、加速度センサに超音波を照射して加速度センサの共振周波数が適正範囲に収まるか否かによってなされてもよい。破損の有無の判定が感度の評価に基づいて行われる場合、重力を利用した評価方法や遠心力を利用した評価方法等の、孔部を利用しない感度の評価に基づいてなされてもよい。
また孔部から重り部を押圧する方法としては、空気圧を利用することも可能である。
また第1規制板および第2規制板とセンサ素子との固定は、陽極接合により行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態に係る加速度センサの斜視図。
【図2】図1の加速度センサのセンサ素子を第1規制板側から見た斜視図。
【図3】図2のセンサ素子を第2規制板側から見た斜視図。
【図4】図1のIV−IV線における断面図。
【図5】図1の加速度センサの製造方法を説明する断面図。
【図6】図2のセンサ素子を含む半導体ウェハの切断時期を説明する平面図。
【図7】図1の加速度センサを評価する評価装置を示す断面図。
【図8】図7の評価装置による加速度センサの評価方法を説明する図。
【図9】図7の評価装置の演算部が実行する評価処理の手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の変形例に係る評価装置を示す模式的な断面図。
【図11】本発明の変形例に係る加速度センサを示す模式的な断面図。
【図12】本発明の変形例に係る他の加速度センサを示す模式的な斜視図。
【符号の説明】
【0117】
1…半導体加速度センサ、3…センサ素子、5…第1規制板(第1規制部材)、5h…孔部、7…第2規制板(第2規制部材)、9…重り部、11…梁部、13…固定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、
前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、
前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、
を有し、
前記第1規制部材には、当該第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部が形成されている
半導体加速度センサ。
【請求項2】
前記第1規制部材は、前記固定部の前記一方側の面に固定され、
前記第2規制部材は、前記固定部の前記他方側の面に固定されている
請求項1に記載の半導体加速度センサ。
【請求項3】
前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部の中央に位置している
請求項1又は2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項4】
前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に対して偏心している
請求項1又は2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項5】
前記重り部は、
前記梁部の前記一方端が連結される主部と、
前記主部に連結され、前記梁部の前記一方端よりも前記他方端側へ突出する付属部と、
を有し、
前記孔部として、
前記主部に対向する孔部と、
前記付属部に対向する孔部と
が形成されている
請求項1又は2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項6】
重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、
前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、
前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、
を有する半導体加速度センサの評価方法であって、
前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、
前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより、前記半導体加速度センサを評価する
半導体加速度センサの評価方法。
【請求項7】
前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する
請求項6に記載の半導体加速度センサの評価方法。
【請求項8】
前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を押圧して前記重り部を前記第2規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する
請求項6又は7に記載の半導体加速度センサの評価方法。
【請求項9】
前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する
請求項6〜8のいずれか1項に記載の半導体加速度センサの評価方法。
【請求項10】
半導体ウェハに対する加工により、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子を作製する工程と、
前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材を設ける工程と、
前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材を設ける工程と、
前記重り部に力を加えることにより品質を評価する工程と、
を有し、
前記第1規制部材を設ける工程では、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、
前記評価する工程では、前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより品質を評価する
半導体加速度センサの製造方法。
【請求項11】
前記評価する工程では、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する
請求項10に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【請求項12】
前記評価する工程では、前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する
請求項10又は11に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【請求項13】
前記センサ素子を作成する工程では、前記半導体ウェハを切断することにより複数の前記センサ素子が作成され、
前記第1規制部材を設ける工程、前記第2規制部材を設ける工程及び前記評価する工程は、前記半導体ウェハの切断よりも前に行われる
請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【請求項1】
重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、
前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、
前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、
を有し、
前記第1規制部材には、当該第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部が形成されている
半導体加速度センサ。
【請求項2】
前記第1規制部材は、前記固定部の前記一方側の面に固定され、
前記第2規制部材は、前記固定部の前記他方側の面に固定されている
請求項1に記載の半導体加速度センサ。
【請求項3】
前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部の中央に位置している
請求項1又は2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項4】
前記孔部は、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に対して偏心している
請求項1又は2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項5】
前記重り部は、
前記梁部の前記一方端が連結される主部と、
前記主部に連結され、前記梁部の前記一方端よりも前記他方端側へ突出する付属部と、
を有し、
前記孔部として、
前記主部に対向する孔部と、
前記付属部に対向する孔部と
が形成されている
請求項1又は2に記載の半導体加速度センサ。
【請求項6】
重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、及び、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子と、
前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材と、
前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材と、
を有する半導体加速度センサの評価方法であって、
前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、
前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより、前記半導体加速度センサを評価する
半導体加速度センサの評価方法。
【請求項7】
前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する
請求項6に記載の半導体加速度センサの評価方法。
【請求項8】
前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を押圧して前記重り部を前記第2規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する
請求項6又は7に記載の半導体加速度センサの評価方法。
【請求項9】
前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する
請求項6〜8のいずれか1項に記載の半導体加速度センサの評価方法。
【請求項10】
半導体ウェハに対する加工により、重り部、前記重り部を囲繞する枠状の固定部、一方端が前記重り部に連結され、他方端が前記固定部に連結された梁部を有するセンサ素子を作製する工程と、
前記固定部の開口方向の一方側において前記センサ素子に対向する第1規制部材を設ける工程と、
前記固定部の開口方向の他方側において前記センサ素子に対向する第2規制部材を設ける工程と、
前記重り部に力を加えることにより品質を評価する工程と、
を有し、
前記第1規制部材を設ける工程では、前記第1規制部材及び前記センサ素子の対向方向に見て、前記重り部に重なり、前記重り部よりも小さい孔部を前記第1規制部材に形成し、
前記評価する工程では、前記孔部を介して前記重り部に力を加えることにより品質を評価する
半導体加速度センサの製造方法。
【請求項11】
前記評価する工程では、前記孔部に挿通された押圧部材により前記重り部を所定の力で押圧しつつ、前記センサ素子の出力値を取得し、取得された出力値が所定の要件を満たすか否かを判定する
請求項10に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【請求項12】
前記評価する工程では、前記孔部を介して前記第1規制部材と前記重り部との間の真空引きを行って前記重り部を前記第1規制部材に衝突させ、その衝突による前記センサ素子の破損の有無を判定する
請求項10又は11に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【請求項13】
前記センサ素子を作成する工程では、前記半導体ウェハを切断することにより複数の前記センサ素子が作成され、
前記第1規制部材を設ける工程、前記第2規制部材を設ける工程及び前記評価する工程は、前記半導体ウェハの切断よりも前に行われる
請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体加速度センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−127842(P2010−127842A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304915(P2008−304915)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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