説明

半導体受光素子及び半導体受光素子の製造方法

【課題】素子抵抗の低減を図ることができる半導体受光素子を提供する。
【解決手段】
n型の基板10と、基板10上に積層されたn型の第1半導体層11と、第1半導体層11上に積層されたノンドープの光吸収層12上に積層され、Alを含有するp型の第2半導体層13と、第2半導体層13上に積層されたキャップ層14と、を備え、キャップ層14の一部が第2半導体層13を露出するようにエッチングされ、第2半導体層13の露出面から基板10側の界面まで第2半導体層13の一部が酸化されることで、Al酸化物を含有する酸化領域15に囲まれたp型の半導体領域13aが形成されていることにより、pi接合面を露出させずに受光部を形成することで、エッチングに起因した結晶欠陥がpi接合面に発生することを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、受光素子として、積層体からなる半導体受光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の半導体受光素子は、ノンドープ層をドープ層間に配置してなるpin構造を有する半導体受光素子であって、以下の手法で作成される。まず、n型半導体基板(n−InP)上に、n型光閉じ込め層(n−AlInGaAs)、i型光吸収層(ノンドープAlInGaAs)、p型光閉じ込め層(p−AlInGaAs)、p型クラッド層(p−InP)、p型コンタクト層(p−GaInAsP)を順次積層した後、n型光閉じ込め層までエッチングしてメサストライプを形成する。そして、メサストライプの側面に露出したAlを含有する半導体層の露出面を酸化させ、AlOy領域に転化させる。このように、特許文献1記載の半導体受光素子では、メサストライプ側面の長手方向又はメサポスト側面の周方向に電気抵抗の高いAl領域が形成されており、暗電流(リーク電流)の発生の抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−330531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の半導体受光素子にあっては、pin構造の受光部(pin接合領域)がメサエッチングにより形成されるので、メサストライプ側面又はメサポスト側面のpin接合部の露出面にエッチングによる結晶欠陥が発生する場合がある。このため、Al領域を形成する場合であっても、リーク電流を十分抑制することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、リーク電流の抑制を図ることができる半導体受光素子及び半導体受光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る半導体受光素子は、第1導電型の基板と、基板上に積層された第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層上又は第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に積層され、Alを含有する第2導電型の第2半導体層と、第2半導体層上に積層されたキャップ層と、を備え、キャップ層の一部が第2半導体層を露出するようにエッチングされ、第2半導体層の露出面から基板側の界面まで第2半導体層の一部が酸化されることで、Al酸化物を含有する酸化領域に囲まれた第2導電型の半導体領域が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る半導体受光素子では、第1半導体層上又は光吸収層上に、Alを含有する第2導電型の第2半導体層及びキャップ層が順次積層され、第2半導体層を露出するように該キャップ層の一部がエッチングされ、露出した第2半導体層が露出面から基板側の界面まで酸化されて構成される。このように、本発明に係る半導体受光素子では、エッチングによりpn接合面あるいはpi接合面を露出させずに、pn接合面あるいはpi接合面を酸化領域で覆うことができる。そして、酸化領域で半導体領域を囲むことで受光部を形成することが可能となる。このため、エッチングに起因した結晶欠陥がpn接合面あるいはpi接合面に発生することを抑制できるので、リーク電流の抑制を図ることが可能となる。
【0008】
ここで、キャップ層は第2導電型の半導体層であることが好適である。このように構成することで、キャップ層を受光部として機能させることができる。また、半導体領域の基板側の界面は、pn接合面又はpi接合面として構成されてもよい。
【0009】
また、上記半導体受光素子は、キャップ層の上面側であって半導体積層方向においてキャップ層と重なる位置に配置された電極部を有することが好適である。このように構成することで、電極部が剥離することを回避することができる。
【0010】
また、本発明に係る半導体受光素子は、第1導電型の基板と、基板上に積層された第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層上又は第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に積層され、Alを含有する第2導電型の第2半導体層と、を備え、第2半導体層は、含有されたAlが酸化されてなる酸化領域、及び、酸化領域に囲まれ、第1半導体層又は光吸収層とpn接合面又はpi接合面として接合する第2導電型の半導体領域を有することを特徴として構成される。
【0011】
本発明に係る半導体受光素子によれば、第2導電型の半導体領域の周囲が、含有されたAlを酸化してなる酸化領域で囲まれるため、pn接合面又はpi接合面を露出させるエッチングをすることなく受光部を形成することができる。このため、エッチングに起因した結晶欠陥がpn接合面あるいはpi接合面に発生することを抑制できるので、リーク電流の抑制を図ることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る半導体受光素子の製造方法は、第1導電型の基板上に第1導電型の第1半導体層を積層する第1半導体層積層ステップと、第1半導体層上又は第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に、Alを含有する第2導電型の第2半導体層を積層する第2半導体層積層ステップと、第2半導体層上にキャップ層を積層するキャップ層積層ステップと、キャップ層の一部を、第2半導体層を露出するようにエッチングするエッチングステップと、露出した第2半導体層の露出面から基板側の界面まで第2半導体層の一部を酸化する酸化ステップとを備えることを特徴として構成される。
【0013】
本発明に係る半導体受光素子の製造方法では、第1半導体層形成ステップで、第1導電型の基板上に第1導電型の第1半導体層が積層され、第2半導体層積層ステップで、第1半導体層上又は第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に、Alを含有する第2導電型の第2半導体層が積層され、キャップ層積層ステップで、第2半導体層上にキャップ層が積層され、エッチングステップで、キャップ層の一部が、第2半導体層を露出するようにエッチングされ、酸化ステップで、露出した第2半導体層の露出面から基板側の界面まで第2半導体層の一部が酸化される。このように、本発明に係る製造方法では、エッチングによりpn接合面あるいはpi接合面を露出させずに、pn接合面あるいはpi接合面を酸化領域で覆うことができる。したがって、例えば酸化領域を環状に形成することで、酸化領域に囲まれた半導体領域を形成することができるので、酸化工程で受光部を形成することが可能となる。このため、エッチングに起因した結晶欠陥がpn接合面あるいはpi接合面に発生することを抑制できるので、リーク電流の抑制を図ることが可能となる。
【0014】
また、キャップ層は第2導電型の半導体層であってもよい。このように構成することで、キャップ層を除去することなく受光部として機能させることができるので、効率的に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体受光素子においてリーク電流の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る半導体受光素子の構成を示す上面図である。
【図2】図1の半導体受光素子のII−II線における側断面図である。
【図3】図1の半導体受光素子の製造工程を説明する概要図である。
【図4】図1の半導体受光素子の製造工程を説明する概要図である。
【図5】図1の半導体受光素子の製造工程を説明する概要図である。
【図6】エッチング深さが異なる場合の酸化領域を説明する概要図である。
【図7】第2実施形態に係る半導体受光素子の構成を示す上面図である。
【図8】図7の半導体受光素子のVIII−VII線における側断面図である。
【図9】図7の半導体受光素子の製造工程を説明する概要図である。
【図10】図7の半導体受光素子の製造工程を説明する概要図である。
【図11】図7の半導体受光素子の製造工程を説明する概要図である。
【図12】実施形態に係る半導体受光素子の変形例の構成を示す上面図である。
【図13】実施形態に係る半導体受光素子の変形例の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る半導体受光素子の構成を示す上面図、図2は、図1に示した半導体受光素子のII−II線における側断面図である。図1及び図2に示した半導体受光素子1は、pin接合部を有する化合物半導体受光素子であり、例えば受光器や光検出器の単素子として好適に採用されるものである。
【0019】
図1に示すように、半導体受光素子1は、素子内部に半導体接合部を有する積層体からなる受光素子であって、受光部20を備えている。受光部20は、水平断面が円形のメサ状に形成されており、メサ部の上面側から光を受光し、素子内部へ光を入射させる。ここでは、半導体接合部としてpin接合の積層体が採用され、素子内部に入射された光によって光電流を出力可能に構成されている。受光部20の側方には、受光部20の周囲を囲む酸化領域15が形成されている。
【0020】
図2に示すように、受光部20は、基板10上に形成されている。基板10は、半導体基板であり、例えばn型のInAs基板が用いられる。また、基板10の一方の主面上には、基板10と同一の導電型を有する第1半導体層11、ノンドープの光吸収層12、基板10とは異なる導電型を有する第2半導体層13が順次積層されている。第1半導体層11としては、例えば、n型のInAsSbが用いられ、光吸収層12としては、例えば、i型(ノンドープ)のInAsSbが用いられる。また、第2半導体層13は、半導体層を構成する元素の一つがAlであるIII−V族化合物半導体層である。第2半導体層13としては、例えばp型のAlInAsSbが用いられる。
【0021】
第2半導体層13の一部は、含有されたAlが酸化され高抵抗化された酸化領域15に転化されている。Alを含有する酸化領域15は、環状に形成されており、この酸化領域の内周側には光吸収層12とpi接合する半導体領域13aが形成されている。すなわち、酸化領域15に取り囲まれる領域が半導体領域13aとされる。半導体領域13aは、メサ状に形成された受光部20を構成する半導体層の一つであり、受光部20を構成する半導体層の中では最も下側に位置している。酸化領域15は、第2半導体層13上に積層されたキャップ層14の一部が、第2半導体層13を露出するように環状にエッチングされ、第2半導体層13の露出面から基板10側の界面まで第2半導体層13の一部が酸化されることで形成される。キャップ層14は、第2半導体層13と同一の導電型を有する半導体層であり、例えばp型のInPSbが用いられる。
【0022】
キャップ層14上には、入射光の反射を防止するためのAR層(Anti-Reflection coat:反射防止膜)16が形成されている。AR層として、例えば、SiN/Alが用いられる。上述した半導体領域13a、キャップ層14、AR層16は、メサ状の受光部20を構成する。また、図1,2に示すように、半導体受光素子1の上面側には、上部電極部17が形成されている。上部電極部17は、受光部20を囲むように形成された環状の電極部材17aと、電極部材17aと電気的に接続されたボンディングパッド(電極パッド)17bとを備えている。この環状の電極部材17aによってメサ部の上面側に受光窓部20aが形成される。受光窓部20aは、水平断面が円形の開口であり、その半径は受光部20の半径より小さく形成されている。さらに、基板10の他方の主面である裏面には、下部電極部18が形成されている。上部電極部17として、例えばTi/Pt/Auが用いられ、下部電極部18として、例えばAuGe/Ni/Auが用いられる。
【0023】
次に、本実施形態に係る半導体受光素子1について、作用効果を説明する。図2に示す半導体受光素子1に、上部電極部17及び下部電極部18を介して電圧を印加し、半導体領域13a、光吸収層12、第1半導体層11のpin接合に逆バイアスをかけることで、光吸収層12の空乏層が拡大される。この状態で、受光部20に光が入射され光吸収層12に到達すると、空乏層で電子‐正孔対が形成されて光電流が発生する。ここで、上記受光部20は、環状に形成された酸化領域15によりその外縁が形成さている。すなわち、光吸収層12上に、Alを含有する半導体層13が形成されることで、エッチングによって物理的に受光部20の外縁が形成されるのではなく、化学反応により第2半導体層13の一部を絶縁層として機能する酸化領域15へ転化し、半導体領域13aを電気的に分離することで受光部20の外縁を形成することができる構成とされている。このため、エッチングによりpn接合面あるいはpi接合面を露出させずに、pn接合面あるいはpi接合面を酸化領域15で覆うことができる。そして、酸化領域15で半導体領域13aを囲むことで受光部20を形成することが可能となる。このため、エッチングに起因した結晶欠陥がpn接合面あるいはpi接合面に発生することを抑制できるので、リーク電流の抑制を図ることが可能となる。
【0024】
次に、本実施形態に係る半導体受光素子1の製造方法について説明する。図3〜図5は、図1に示す半導体受光素子1の製造工程を示す側断面図である。
【0025】
まず、図3の(a)に示すように、半導体層形成工程(第1半導体積層ステップ、第2半導体積層ステップ、キャップ層積層ステップ)を行う。基板10上にpin接合構造をエピタキシャル成長技術により形成する。エピタキシャル成長は、例えば膜厚制御に優れた有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)や、分子線成長法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)によって行う。
【0026】
n型の導電型を有する基板10として使用する場合、基板10上に、n型の第1半導体層11、i型の光吸収層12、Alを含有したp型の第2半導体層13、p型のキャップ層14を順にエピタキシャル成長させる。このように、光吸収層12とキャップ層14との間にバンドギャップの広いAlを含有する第2半導体層13を形成する。それぞれの組成および膜厚は、例えば、基板10がn型InAsで250μm、第1半導体層11がn型InAsSbで1.5μm、光吸収層12がi型InAsSbで8.0μm、第2半導体層13がp型AlInAsSbで0.1μm、キャップ層14がp型InPSbで0.1μmである。
【0027】
次に、図3の(b)に示すように、メサ部形成工程(エッチングステップ)を行う。第2半導体層13が上面に露出するように、少なくともキャップ層14をエッチングして受光部20の円柱状のメサ部を形成する。このとき、図中に示すようにキャップ層14と共に第2半導体層13の一部をエッチングしてもよい。まず、フォトワークにより受光部20のパターンを作成し、そしてレジストを塗布し、その後エッチング及びレジスト除去を行うことで、キャップ層14に環状の開口14a、第2半導体層13に環状の開口13bを形成し、第2半導体層13及びキャップ層14からなるメサ部を形成する。エッチングは、メサ部の大きさを均一性よく形成するために、好ましくはドライエッチング法が用いられる。また、ウェットエッチング法で行われても良い。なお、メサ部以外の第2半導体層13及びキャップ層14を除去しないことにより、後工程で形成される上部電極部17の剥がれを防止することができる。すなわち、積層方向において上部電極部17と重なる位置の第2半導体層13及びキャップ層14については除去せずに残しておく。
【0028】
次に、図3の(c)に示すように、酸化工程(酸化ステップ)を行う。例えば、高温雰囲気中に水蒸気を供給することにより、露出された第2半導体層13を酸化して酸化領域15を形成する。ここで、図6を用いて、酸化領域15の詳細を説明する。図6は、エッチング深さが異なる場合の酸化領域15の形態を示す概要図であり、図6の(a)は、キャップ層14のみをエッチングして露出された第2半導体層13を酸化した場合を示し、図6の(b)はキャップ層14と共に第2半導体層13の一部をエッチングして露出された第2半導体層13を酸化した場合を示している。図6の(a),(b)に示すように、何れの場合であっても、第2半導体層13の露出面から基板10側の界面(ここでは光吸収層12との界面)まで第2半導体層13の一部が酸化される。これにより、酸化領域15をpi接合界面まで到達させて酸化領域15の内側をpi接合界面とすることができる。このため、リーク電流の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
次に、図4の(d)に示すように、AR層形成工程を行う。AR層16の組成および膜厚は、例えばSiN/Alで0.8μmである。次に、図4の(e)に示すように、スルーホール形成工程を行う。まず、レジストを塗布し、フォトワークにより環状のスルーホールのパターンを作成し、その後エッチング及びレジスト除去を行うことで、キャップ層14の一部が上面に露出するように、環状のスルーホール16aを形成する。次に、図4の(f)に示すように、上部電極形成工程を行う。蒸着により上部電極用膜を積層し、リフトオフ法により環状の電極部材17a及びボンディングパッド17bを形成して上部電極部17を形成する。これにより、受光部20の受光窓部20aが形成される。上部電極部17の組成および膜厚は、例えばTi/Pt/Auで1.2μmである。
【0030】
次に、図5の(g)に示すように、基板裏面研磨工程を行う。基板10の裏面10a側を研磨する。そして、図5の(h)に示すように、研磨した裏面10a側に、下部電極部18を蒸着により形成する。下部電極部18の組成および膜厚は、例えばAuGe/Ni/Auで0.7μmである。
【0031】
以上、図3〜図5に示す工程を行うことで、受光部20のメサ部形成時にpi接合界面が露出されることなく、Alを含む第2半導体層13が酸化され、pi接合界面まで到達する。エッチングによりpi接合面とni接合面を形成する場合に比べて、酸化領域15を形成する方がpi接合面とni接合面に与えるダメージは低い。そして、エッチングによりpi接合面とni接合面に結晶欠陥が発生することを回避することができるので、リーク電流を適切に抑制することが可能となる。このように、従来に比べて浅いエッチングで受光部20を形成することができるので、半導体受光素子1がアイソレーションをする必要のない単素子として採用される場合に特に有効である。
【0032】
上述したように、第1実施形態に係る半導体受光素子1の製造方法では、半導体層形成工程で、n型の基板10上にn型の第1半導体層11、ノンドープの光吸収層12、Alを含有するp型の第2半導体層13、p型のキャップ層14が順次積層され、メサ部形成工程でキャップ層14の一部が、第2半導体層13を上面側に露出するようにエッチングされ、酸化工程で、露出された第2半導体層13の露出面から基板10側の界面まで第2半導体層13の一部が酸化される。このように、エッチングによりpn接合面あるいはpi接合面を露出させずに、pn接合面あるいはpi接合面を酸化領域15で覆うことができる。そして、酸化領域15を環状に形成することで、酸化領域15に囲まれた半導体領域13aを形成することができるので、酸化工程で受光部20を形成することが可能となる。このため、エッチングに起因した結晶欠陥がpn接合面あるいはpi接合面に発生することを抑制できるので、リーク電流の抑制を図ることが可能となる。
【0033】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る半導体受光素子の構成を示す上面図、図8は、図7に示した半導体受光素子のVIII−VIII線における側断面図である。図7及び図8に示した半導体受光素子2は、第1実施形態に係る半導体受光素子1とほぼ同様に構成されており、主に上部電極部17の形状及び半導体層の材料が相違する。以下では、説明理解の容易性を考慮して、半導体受光素子1と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0034】
図7,8に示すように、半導体受光素子2は、素子内部に半導体接合部を有する積層体からなる受光素子であって、基板10上に受光部20が形成されている。受光部20の側方には、受光部20の周囲を囲む酸化領域15が形成されている。基板10の一方の主面上には、半導体受光素子1と同様に、第1半導体層11、ノンドープの光吸収層12、Alを含有する第2半導体層13が順次積層されている。基板10としては、例えばn型のInPが用いられ、第1半導体層11としては、例えばn型のInPが用いられ、光吸収層12としては、例えばi型のInGaAsが用いられ、第2半導体層13としては、例えばp型のInAlAsが用いられる。
【0035】
第2半導体層13の一部は、含有されたAlが酸化され高抵抗化された酸化領域15に転化されている。Alを含有する酸化領域15は、受光部20のパターンに沿って円形領域を囲むように形成されており、酸化領域15に囲まれて光吸収層12とpi接合する半導体領域13aが形成されている。半導体領域13aは、メサ状に形成された受光部20を構成する半導体層の一つであり、受光部20を構成する半導体層の中では最も下側に位置している。酸化領域15は、第2半導体層13上に積層されたキャップ層14の一部が、第2半導体層13を露出するようにエッチングされ、第2半導体層13の露出面から基板10側の界面まで第2半導体層13の一部が酸化されることで形成される。キャップ層14は、第2半導体層13と同一の導電型を有する半導体層であり、例えばp型のInPが用いられる。
【0036】
キャップ層14上には、入射光の反射を防止するためのAR層16が形成されている。上述した半導体領域13a、キャップ層14、AR層16は、メサ状の受光部20を構成する。また、半導体受光素子1の上面側には、上部電極部17が形成されている。上部電極部17は、受光部20を囲むように形成されており、メサ部の上面側に受光窓部20aが形成される。さらに、基板10の他方の主面である裏面には、下部電極部18が形成されている。AR層16として、例えばSiN/Alが用いられ、上部電極部17として、例えばTi/Pt/Auが用いられ、下部電極部18として、例えばAuGe/Ni/Auが用いられる。
【0037】
本実施形態に係る半導体受光素子2の作用効果は、第1実施形態に係る半導体受光素子1と同様である。
【0038】
次に、本実施形態に係る半導体受光素子2の製造方法について説明する。図9〜図11は、図7に示す半導体受光素子2の製造工程を示す側断面図である。
【0039】
まず、図9の(a)に示すように、半導体層形成工程(第1半導体積層ステップ、第2半導体積層ステップ、キャップ層積層ステップ)を行う。この工程は第1実施形態での説明と同様であり、半導体層の材料のみが相違する。それぞれの組成および膜厚は、例えば、基板10がn型InPで250μm、第1半導体層11がn型InPで1.5μm、光吸収層12がi型InGaAsで8.0μm、第2半導体層13がp型InAlAsで0.1μm、キャップ層14がp型InPで0.1μmである。
【0040】
次に、図9の(b)に示すように、メサ部形成工程(エッチングステップ)を行う。第2半導体層13が上面に露出するように、少なくともキャップ層14をエッチングして受光部20の円柱状のメサ部を形成する。このとき、図中に示すようにキャップ層14と共に第2半導体層13の一部をエッチングしてもよい。まず、レジストを塗布し、フォトワークにより受光部20のパターンを作成し、その後エッチング及びレジスト除去を行うことで、第2半導体層13及びキャップ層14からなるメサ部を形成する。
【0041】
次に、図9の(c)に示すように、酸化工程(酸化ステップ)を行う。この工程は第1実施形態での説明と同様に行う。次に、図10の(d)に示すように、AR層形成工程を行う。AR層16の組成および膜厚は、例えばSiN/Alで0.8μmである。次に、図10の(e)に示すように、スルーホール形成工程を行う。この工程は第1実施形態での説明と同様に行う。次に、図10の(f)に示すように、上部電極形成工程を行う。蒸着により上部電極用膜を積層し、リフトオフ法により上部電極部17を形成する。これにより、受光部20の受光窓部20aが形成される。上部電極部17の組成および膜厚は、例えばTi/Pt/Auで1.2μmである。
【0042】
次に、図11の(g)に示すように、基板裏面研磨工程を行う。この工程は第1実施形態での説明と同様に行う。そして、図10の(h)に示すように、研磨した裏面10a側に、下部電極部18を蒸着により形成する。下部電極部18の組成および膜厚は、例えばAuGe/Ni/Auで0.7μmである。
【0043】
以上、図9〜図11に示す工程を行うことで、受光部20のメサ部形成時にpi接合界面が露出されることなく、Alを含む第2半導体層13が酸化され、pi接合界面まで到達する。エッチングによりpi接合面とni接合面を形成する場合に比べて、酸化領域15を形成する方がpi接合面とni接合面に与えるダメージは低い。そして、エッチングによりpi接合面とni接合面に結晶欠陥が発生することを回避することができるので、リーク電流を適切に抑制することが可能となる。このように、従来に比べて浅いエッチングで受光部20を形成することができるので、半導体受光素子2がアイソレーションをする必要のない単素子として採用される場合に特に有効である。
【0044】
上述したように、第2実施形態に係る半導体受光素子2の製造方法では、第1実施形態に係る半導体受光素子1と同様に、エッチングによりpn接合面あるいはpi接合面を露出させずに、pn接合面あるいはpi接合面を酸化領域15で覆うことができる。したがって、酸化領域15に囲まれた半導体領域13aを形成することができるので、酸化工程で受光部20を形成することが可能となる。このため、エッチングに起因した結晶欠陥がpn接合面あるいはpi接合面に発生することを抑制できるので、リーク電流の抑制を図ることが可能となる。
【0045】
なお、上述した実施形態は、本発明に係る半導体受光素子の一例を示すものである。本発明に係る半導体受光素子は、各実施形態に係る半導体受光素子に限られるものではなく、各実施形態に係る半導体受光素子を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0046】
例えば、上述した実施形態では、受光部20の形状が円柱状である半導体受光素子について説明したが、受光部20の水平方向の断面は円形であるものに限られず、例えば図12,図13に示す半導体受光素子3,4の受光部20のように、矩形であってもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、上部電極部17が受光部20を囲む電極形状である例を説明したが、上記電極形状に限られるものではない。なお、上部電極部17が受光部20を囲む電極形状の方が、ユニフォーミティの点から望ましい。
【0048】
また、上述した実施形態では、キャップ層14として半導体層を用いる例を説明したが、酸化工程後に除去するのであればキャップ層14は、半導体層でなくてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、pin接合を有する半導体受光素子について説明したが、例えば光吸収層12を備えずに、n型の第1半導体層11上にAlを含有するp型の第2半導体層13を直接積層させたpn接合面を有する半導体受光素子であってもよい。このように構成した場合であっても、酸化領域15を形成してリーク電流の抑制を図ることができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、第2半導体層が第2導電型である例を説明したが、厚さ方向全てが第2導電型でなくてもよい。例えば、第2半導体層の光吸収層に近い部分は、空乏層が光吸収層に達する厚さであるならば、ノンドープとしてもよい。この場合、バンド不連続をおこさないので好適である。
【0051】
さらに、上述した実施形態では、n型の基板10を用いた半導体受光素子について説明したが、p型の基板を用いて、実施形態のn型とp型を入れ替えて構成される半導体受光素子に適用した場合であっても、リーク電流の抑制を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…半導体受光素子、10…基板、11…第1半導体層、12…光吸収層、13…第2半導体層、13a…半導体領域、14…キャップ層、15…酸化領域、20…受光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体受光素子であって、
第1導電型の基板と、
前記基板上に積層された第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上又は前記第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に積層され、Alを含有する第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に積層されたキャップ層と、
を備え、
前記キャップ層の一部が前記第2半導体層を露出するようにエッチングされ、前記第2半導体層の露出面から前記基板側の界面まで前記第2半導体層の一部が酸化されることで、Al酸化物を含有する酸化領域に囲まれた第2導電型の半導体領域が形成されていること、
を特徴とする半導体受光素子。
【請求項2】
前記キャップ層は第2導電型の半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の半導体受光素子。
【請求項3】
前記半導体領域の前記基板側の界面は、pn接合面又はpi接合面として構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体受光素子。
【請求項4】
前記キャップ層の上面側であって半導体積層方向において前記キャップ層と重なる位置に配置された電極部を有すること、
を特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の半導体受光素子。
【請求項5】
半導体受光素子であって、
第1導電型の基板と、
前記基板上に積層された第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層上又は前記第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に積層され、Alを含有する第2導電型の第2半導体層と、
を備え、
前記第2半導体層は、含有されたAlが酸化されてなる酸化領域、及び、前記酸化領域に囲まれ、前記第1半導体層又は前記光吸収層とpn接合面又はpi接合面として接合する第2導電型の半導体領域を有すること、
を特徴とする半導体受光素子。
【請求項6】
半導体受光素子の製造方法であって、
第1導電型の基板上に第1導電型の第1半導体層を積層する第1半導体層積層ステップと、
前記第1半導体層上又は前記第1半導体層上に積層されたノンドープの光吸収層上に、Alを含有する第2導電型の第2半導体層を積層する第2半導体層積層ステップと、
前記第2半導体層上にキャップ層を積層するキャップ層積層ステップと、
前記キャップ層の一部を、前記第2半導体層を露出するようにエッチングするエッチングステップと、
露出した前記第2半導体層の露出面から前記基板側の界面まで前記第2半導体層の一部を酸化する酸化ステップと、
を備えることを特徴とする半導体受光素子の製造方法。
【請求項7】
前記キャップ層は第2導電型の半導体層であることを特徴とする請求項6に記載の半導体受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−60077(P2012−60077A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204679(P2010−204679)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】