説明

半導体封止樹脂中の有害元素管理方法

【課題】 蛍光X線分析装置による半導体封止樹脂中の有害元素管理方法において、誤差の少ない測定方法を用いて管理を行なう。
【解決手段】 本発明は、半導体封止樹脂中の有害元素管理方法であって、蛍光X線分析装置により定性分析を行ない含有判定する工程と、試料の上下面を一致させてX線照射面全体に試料を並べる試料準備工程と、試料の一方面およびその対向面を蛍光X線分析装置により測定し定量分析を行なう工程と、前記定量分析工程から得られた2つのデータのうち共存元素の影響が少ない方の定量結果を用いて閾値判定をする工程、を有することを特徴とする有害元素管理方法である。この方法によれば、半導体製品の封止樹脂中の有害元素を精度よく測定・管理することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止樹脂中の有害元素管理方法に関するものであり、蛍光X線分析装置を用いた精度の高い有害元素の管理方法に関する。

【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する配慮から、有害物質の使用を排除する動きが強まり、例えば欧州においては「特定有害物質の使用制限(RoHS)」のような規制が実施されている。この規制によれば、電子材料において、特定の有害物質が含まれていないことを確認することが求められており、このRoHS指令に伴い、製品中の有害元素(Br、Sb、As、Bi、Pb等)を簡易にかつ高精度に測定できる方法の実現と、この分析方法を用いて精度の高い有害元素の管理方法の実現が望まれている。
【0003】
半導体封止樹脂中の有害元素を管理するためには、蛍光X線分析装置を用いるのが簡易であり有効である。蛍光X線分析においては、金属試料においてはファンダメンタルパラメータ(FP)法を採用し、樹脂試料においては検量線法を用いるのが一般的であるが、検量線の作成には測定対象元素が添加された樹脂標準試料を用いる必要がある。この標準試料としては、ポリエチレンやABS樹脂、塩化ビニル樹脂などをマトリックス樹脂とするものが市販されている。
【0004】
ところで、半導体封止樹脂は圧縮成型されており、上記標準試料におけるこれらの樹脂と比べると密度が大きく、さらに強度向上のためにシリカ等が充填されており、一次X線が試料内部に入り込みにくく、測定値が小さくなるといった傾向がある。また、半導体製品を測定する場合、試料内部(フレーム、チップ、ワイヤなど)の構成元素の蛍光X線も検出してしまい、測定対象元素によっては誤差の原因にもなる。
【0005】
製品を非破壊で検査する方法として、試料中におけるPb含有の有無を蛍光X線によって判別する技術が知られている(特許文献1参照)。
この技術は、ポリスチレン等の試料にX線を照射し、Pbの全てのエネルギー位置におけるピークを判定し、エネルギー位置が近いAs、Brなどの阻害を回避してPbの定量を行う方法である。ところで、かかる方法においては、前述の様に、圧縮成型によって製造されている半導体装置の封止樹脂のような密度の高い試料において、測定値が小さいことから生じる測定精度の問題を解決するものではない。
【0006】
また、蛍光X線分析法を採用し、複数の素材が層状に形成された対象物において、特定物質を含有する素材を特定する方法が公知となっている(特許文献2参照)。この文献には、複数の素材が層状に形成された対象物として、FeにZnめっきとCrめっきを施した材料が挙げられており、また、特定物質としてCd、Pb、Hg、Br、Cr、Au、Ag、Pt、Pdなどが挙げられている。そして、この試料に照射条件を変化させてX線を照射し、発生する蛍光X線を分析することによって、X線の浸透深さを制御し、特定の物質の存在位置を判定するものである。このような方法は、比較的単純な層構造を有し、かつ十分量の測定X線強度が得られる程度の試料の量を確保できる試料においては有効な方法であるが、半導体封止樹脂は、ポリエチレンやABS樹脂、あるいはめっき素材と異なり、基材となる樹脂(例えばDCP(ジクロロペンタジ工ン)等)にシリカ等の充填材を混合した複合材であるうえ、圧縮成型されているため高密度の素材である。このため、蛍光X線による測定値が小さくなる、半導体製品(全体)を非破壊で測定対象とした場合には樹脂以外の部材も測定してしまうため、実際の(精密分析の結果に比べ)大きな誤差が生じるという課題を抱えている。
【特許文献1】特開2007−003331号公報
【特許文献2】特開2007−017306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体封止樹脂中の有害元素管理方法において、簡易でかつ誤差の少ない測定方法により管理を行なう。

【課題を解決するための手段】
【0008】
測定対象試料を蛍光X線分析装置内のX線照射面に配置し、定性分析を行ない管理対象元素の含有の有無を確認する。管理対象元素が検出された場合は、試料のX線被照射面がすべて同一になるように蛍光X線分析装置のX線照射面いっぱいに試料を配置する。その一方面を測定し、さらにその対向面を測定し、検量線法により定量分析を行なう。定量分析を行なうためにはあらかじめ封止樹脂に測定対象元素を添加した樹脂試料を作製しておく。これらを精密化学分析により値付けを行ない、蛍光X線分析における検量線作成用樹脂標準試料とする。さらに測定対象元素の蛍光X線強度を散乱線強度で規格化してバックグラウンドを補正する。得られた2つの定量分析結果から、共存成分の影響が少ない方の定量結果を用いて閾値判定をする。
【0009】
すなわち、本発明は、半導体封止樹脂中の有害元素管理方法であって、
蛍光X線分析装置により定性分析を行ない含有判定する工程と、
試料の上下面を一致させてX線照射面全体に試料を並べる試料準備工程と、
試料の一方面およびその対向面を蛍光X線分析装置により測定し定量分析を行なう工程と、
前記定量分析工程から得られた2つのデータのうち共存元素の影響が少ない方の定量結果を用いて閾値判定をする工程、
を有することを特徴とする有害元素管理方法である。
【0010】
前記本発明の定量分析工程において、ベースレジンがエポキシ樹脂を含む標準試料を用いて作成した検量線から定量分析を行なうことが好ましい。
【0011】
また、前記定量分析工程において、測定対象元素の蛍光X線強度を散乱X線強度で規格化することによりバックグラウンドを補正することが好ましい。
【0012】
また、測定対象試料がAu,Si,Cu,Fe,Ni,Sn,Bi,Pb,及びAgのうち少なくとも1つの元素をするものであることが好ましい。
【0013】
さらに、測定対象試料に含まれるSb及びBrの内の少なくとも1種を測定することが好ましい。

【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の分析方法では、半導体封止樹脂中の有害元素濃度を精度よく測定・管理することが可能となる。
すなわち、本方法によって測定誤差が低減される。また、共存物質の影響をうけにくい方法であるため、半導体製品(全体)を非破壊で測定することが可能になる。したがって、半導体製品中の有害元素の有無及び含有量等が精密分析をすることなく簡易に判明するため、半導体製品の有害元素管理が簡易になる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[蛍光X線測定装置]
従来、微量分析に用いられる蛍光X線分析装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置及びエネルギー分散型蛍光X線分析装置が知られている。本願発明においては、いずれの装置も用いることができるが、検出器が簡素で、装置としてシンプルなことから、エネルギー分散型蛍光X線分析装置が好ましい。このエネルギー分散型蛍光X線分析装置の一例である概念図を図1に示す。図1に見られるように、この装置は、試料11を試料ホルダー12上に載置し、これに、X線管のようなX線発生装置13から発生するX線を照射する。X線を照射された試料からは、試料中に含まれる元素種に応じた蛍光X線が発生するので、これを半導体検出器14のような、検出器で蛍光X線のエネルギー強度を測定する。X線発生装置13は、制御装置15によって制御され、また、半導体検出器14から出力される信号は、信号処理装置16で処理された後、演算処理装置17によって、スペクトルとして構成される。

【0016】
[試料]
(半導体装置の構造)
本発明で分析を行う試料である半導体装置の典型的な一例の概略図を図2に示す。
図2に見られる様に、半導体装置は、半導体素子22が、鉄基合金などで構成され、半導体装置の端子となるリードフレーム24上に載置され、Auワイヤ23によって、半導体素子22に形成された端子部と、リードフレーム24とが電気的に接続されている。このリードフレーム24と、半導体素子22と、Auワイヤ23とで構成される組み立て体は、封止樹脂21によって、被覆・封止され、水分や汚染物質から、半導体素子を保護する機能を果たしている。
【0017】
(半導体素子用材料)
試料である半導体装置に用いるのに適した封止樹脂は、エポキシ樹脂とフィラーと硬化剤などからなるものであり、エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればいかなるものでもよい。たとえば、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
フィラーは、石英ガラス、結晶性シリカ、溶融シリカ、ガラス、アルミナ、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、雲母、金属等がある。フィラー量は70〜95重量%配合される。
硬化剤は、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、アリルフェノールノボラック樹脂、ナフトール型ノボラック樹脂、ビフェニル型ノボラック樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)アルカン系化合物などを挙げることができる。
【0018】
本発明の管理方法は、被測定試料である半導体装置を構成する部材において、Au,Si,Cu,Fe,Ni,Sn,Bi,Pb,及びAgのうち少なくとも1つの元素を含有する半導体装置に適用することが適している。これらの元素は、蛍光X線分析において、分析の妨害元素として作用する可能性が大きく、従来の蛍光X線分析手法によれば精度の高い分析を期待することが困難な材料であるからである。

【0019】
[測定方法]
本発明の測定方法について、そのフローチャートを図3に示す。以下、図3に従って本実施の形態の方法について説明する。
【0020】
(S10、S20:定性分析、及び判定ステップ)
試料となる半導体装置を準備する。前述の通り、半導体装置の蛍光X線分析においては、放射する蛍光X線の強度が弱いため、小さな半導体装置を分析する際には、多数の試料を準備することが必要となる。この定性分析は、分析対象となる元素が存在するか否かを判別することを目的とするものであり、この分析の結果、判定ステップS20で、特定元素が含有されないと判断された場合には、ステップS30以下の工程を経ることなく、良品と判断される。
【0021】
(S30:定量分析試料準備ステップ)
前工程で、特定の元素について、含有するものと判断された場合には、試料となる半導体装置を、試料ホルダー上に、図6に示す様に複数上下面を揃えて密に並べる。図6(a)は、半導体装置上面を揃えて並べた例を示し、図6(b)は、半導体装置の下面を揃えて並べた例を示す。図6に見られる様に、試料となる半導体装置は、空隙が内容に密に接して配置することが好ましい。
蛍光X線分析方法においては一般的には、X線の照射面積は、10mmφ程度であるので、この範囲をカバーする様に、半導体装置を密に配置する。この工程で、半導体装置の上下面を揃えるのは、次の理由による。
すなわち、蛍光X線分析においては、試料に照射したX線が、試料を構成する元素を励起し、蛍光X線を発生することになる。照射されたX線はその表面から順次構成元素によって吸収され、これを励起することになり、照射X線は、試料を完全に貫通するわけではない。従って、観測される蛍光X線のスペクトルは、試料の照射側の構成元素の影響を強く受けることになる。
そして、典型的な半導体装置は、図2に示す様に、半導体装置の上面側と下面側とでは、構成部材が異なっている。上面側からX線を照射した場合には、封止樹脂材料及びAuワイヤの影響を受けることになり、一方、下面側からX線を照射した場合には、封止樹脂及びリードフレーム材料の影響を受けることになる。
そして、測定対象元素のピークのエネルギー値と、上記各構成要素に含まれる元素の蛍光X線ピークのエネルギー値が近似している場合には、測定対象元素の分析値には、妨害元素の量の影響を受けるため、妨害元素の影響を受けることのない方向からの分析を行う必要がある。そのために、このプロセスにおいて、試料として配置する半導体装置の上下方向を揃えることが必要となる。
【0022】
(S40:一面の分析)
この工程は、上記工程で整列させた試料について、その一方の面からX線を照射して、蛍光X線の測定を行う。得られた結果は、信号処理装置14及び演算処理装置17によって、蛍光X線スペクトルとして構成され、記録される。
【0023】
(S50:他面の分析)
この工程は、上記工程で、測定を行った試料の対向面にX線を照射し、対向面側の元素分析を行うものである。この工程における結果も、演算処理装置17によって処理され、記録される。
【0024】
(S60:定量・閾値判定)
このプロセスは、上記分析工程で得られた結果を基に、判定を行うプロセスである。
具体的には、次の様にして行われる。すなわち、上記プロセスまでで得られた2つのスペクトルを比較し、妨害元素の影響が少ないスペクトルを選択して、定量分析データとして採用する。
次いで、採用したスペクトルデータに対して、散乱線補正を行う。散乱線補正とは、試料にX線を照射すると、試料中に進入したX線が試料中の元素によって反射され、散乱線となって放射される。X線が試料に入射する領域(面積・厚さ)が変化すると、測定対象元素の蛍光X線強度に影響を及ぼす。この入射領域の変動をキャンセルするために、散乱線補正を行う。具体的には、測定対象元素に帰属するピークのエネルギー強度を、散乱X線強度で除算し、規格化することによって行う。この補正を採用することによって、測定誤差が小さくなり、測定精度が格段に向上する。
【0025】
標準試料によって求めた検量線を使用し、上記方法によって得られた規格化したエネルギー強度から、濃度を算出する。
検量線は、通常市販されている既知の濃度の標準試料を用いて、蛍光X線強度と、濃度とを関係付けて作成されるが、本発明の半導体装置における特殊性を考慮して、標準試料を作成することが好ましい。通常の標準試料では、ベースレジンであるマトリックス樹脂として、前述したとおり、ポリエチレン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂などが用いられているが、これらの樹脂材料は、現実の半導体装置の封止樹脂とは異なるものであることから、封止樹脂として一般的であるエポキシ樹脂をマトリックス樹脂として採用した標準試料を用いることが好ましい。
【0026】
前記ステップによって、試料中に存在する測定対象元素の濃度を決定することができる。
【0027】
上記定量・閾値判定のプロセスを、測定対象元素種ごとに行う。これにより得られた測定元素の含有量を測定し、良品として容認できる閾値と比較し、試料である製品の良否判定を行い、不良であると判定された製品は出荷を停止するなどの製造管理を行うことができる。また、この判定により不良と判断された場合には、半導体封止樹脂の製造工程において、基準を超える濃度の元素が混入するプロセスを特定し、改善するなどの製造工程管理を行うことができる。
【0028】
上記した方法は、RoHSで規定されている有害元素の内、半導体装置に組み込まれている金元素と近接するエネルギー強度を有するBrの定量分析及び密度の高い試料において測定値が小さくなる傾向にあるSbの定量分析に適している。
【0029】
[変形例]
上記方法においては、半導体装置を複数整列させて測定する例を示したが、これは、蛍光X線分析においては、X線の照射面積が大きいほど蛍光X線の強度が大きくなり、測定精度が向上するため、X線の照射面積に十分な量の試料を密に配置する例として示したものである。これに対して、例えばパワー半導体の様な半導体装置は、大型であって、半導体装置1個で十分照射面積をカバーするものも存在する。このような半導体装置を分析する場合には、複数の試料を整列させる必要はなく、1個の試料を試料ホルダー上に配置して分析すれば十分である。

【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を説明する。本実施例は、図2に示す形状の内部にAuワイヤを有する半導体装置を用いて、封止樹脂中に含まれるBrを分析するものである。
まず、標準試料を作成し、検量線を作成した。標準試料としては、エポキシ樹脂をマトリックスとし、これに既知濃度のBrを添加し、固化して標準試料とした。この標準試料について、エネルギー分散蛍光X線分析装置を用いてBrのピーク強度と、濃度との関係を決定する検量線を作成した。
次いで、図2に示す半導体装置を準備し、ランダムに試料ホルダー上に載置し、X線を照射し蛍光X線のエネルギー強度を測定した。また、同じ半導体装置について、図6に示す様に、半導体装置の上下面を揃えて、整然と試料ホルダー上に載置し、その上面及び下面にX線を照射してそれぞれ蛍光X線のエネルギー強度を測定した。その結果のスペクトルを、図4に示す。図4において、図4(a)は、半導体装置の上面からX線を照射して測定したエネルギー強度スペクトルであり、図4(b)は、半導体装置の下面からX線を照射し測定したエネルギー線強度スペクトルである。図4(a)において、Br−Ka線強度は、544.124cpsであり、図4(b)において、Br−Ka線強度は、315.838cpsであった。
【0031】
得られたスペクトルについて、散乱X線強度を用いて規格化を行い、上記検量線を用いて臭素の含有量を決定した。
【0032】
また、上記試料について、別途精密分析を行った。
【0033】
上記本実施例の方法及び精密分析である参考例によって得られたBrの含有量を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
上記した様に、この試料の内部にはAuワイヤが使用されており、ランダムに試料を並べて測定すると蛍光X線分析においてAuが検出される。図4からわかるように、BrのKα線とAuのLβ線がエネルギー的に隣接しているため、Auが検出されてしまうと見かけ上Brが大きく測定されてしまい、正の誤差の原因となる。これに対して、試料を整然と並べ、下面のみに一次X線が照射されるように試料を配置すればAuはほとんど検出されない。ランダムに測定した場合もしくは上面を測定した場合、Auの影響によりBr含有量の精密分析値に対する誤差は20%以上となっているのに対し、下面を測定した場合、Auはほとんど検出されず、誤差は7%程度と非常に精度よく測定が可能となった。
以上のBrの分析の結果、試料である半導体装置の上下面を整然と整列させ、各面にX線を照射して測定した2つのスペクトルの内、妨害元素による影響の少ないスペクトルを用いて、元素の定量分析を行うことによって、より精度の高い分析が可能であることが判明した。この分析手法を用いて、半導体装置の良否判定を行うことによって確度の高い判定を行うことが可能であることが分かった。
すなわち、上述の実施例Brの測定を行う例では、Brが、Auの蛍光X線とエネルギー強度において近接しており、Auの影響を受けやすい。従って、半導体装置の金ワイヤが存在しない面から測定を行うことが好ましい。
【0036】
次いで、同じ半導体装置の試料を用い、Sbの蛍光X線分析を行った。その結果を図5に示す。図5(a)は、半導体装置の上面からX線を照射し測定した蛍光X線強度を示すスペクトルであり、図5(b)は、下面からX線を照射して測定したスペクトルである。図5(a)の場合には、Sb−Ka線の強度は、181.954cpsであり、一方、図5(b)の場合には、Sb−Ka線の強度は、138.015cpsであった。このようにSbの場合には、Auの影響を受けることがないため、より多くの封止樹脂にX線を照射することが好ましい。図2に示す半導体装置の場合、上面に多くの封止樹脂が存在しており、上面を分析することが好ましい。また、図6に示す半導体装置の場合、下面にリード端子が配置されており、この場合も上面からX線を照射することによってより多くの封止樹脂にX線を照射することが可能であり、より好ましい。


【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明で用いる蛍光X線分析装置の概念図。
【図2】試料となる半導体装置の概略断面図。
【図3】本発明の方法を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例でBrを分析した結果を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例でSbを分析した結果を示すグラフ。
【図6】本発明の実施例において、半導体装置を並べて測定する例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
11…試料
12…試料ホルダー
13…X線管
14…半導体検出器
15…制御装置
16…信号処理装置
17…演算装置
21…封止樹脂
22…半導体素子
23…金ワイヤ
24…リードフレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体封止樹脂中の有害元素管理方法であって、
蛍光X線分析装置により定性分析を行ない含有判定する工程と、
試料の上下面を一致させてX線照射面全体に試料を並べる試料準備工程と、
試料の一方面およびその対向面を蛍光X線分析装置により測定し定量分析を行なう工程と、
前記定量分析工程から得られた2つのデータのうち共存元素の影響が少ない方の定量結果を用いて閾値判定をする工程、
を有することを特徴とする有害元素管理方法。
【請求項2】
前記定量分析工程において、ベースレジンがエポキシ樹脂を含む標準試料を用いて作成した検量線から定量分析を行なうことを特徴とする、請求項1に記載の半導体封止樹脂中の有害元素管理方法。
【請求項3】
前記定量分析工程において、測定対象元素の蛍光X線強度を散乱X線強度で規格化することによりバックグラウンドを補正することを特徴とする請求項1に記載の半導体封止樹脂中の有害元素管理方法。
【請求項4】
測定対象試料がAu,Si,Cu,Fe,Ni,Sn,Bi,Pb,及びAgのうち少なくとも1つの元素をすることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止樹脂中の有害元素管理方法。
【請求項5】
測定対象試料に含まれるSb及びBrの内の少なくとも1種を測定することを特徴とする請求項1に記載の半導体封止樹脂中の有害元素管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−275454(P2008−275454A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119575(P2007−119575)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】