半導体故障解析装置及び故障解析方法
【課題】 半導体デバイスの発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能な半導体故障解析装置及び方法を提供する。
【解決手段】 半導体デバイスSにバイアス電圧を印加する電圧印加部14と、画像を取得する撮像装置18と、画像処理を行う画像処理部30とを備えて故障解析装置1Aを構成し、撮像装置18は、電圧印加状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、電圧未印加状態での複数の背景画像とを取得する。画像処理部30は、解析画像及び背景画像のそれぞれでの撮像位置を算出する撮像位置算出部32と、撮像位置に対して用意された領域分割単位に基づいて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類部33と、N個の画像グループについて個別に解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成部34とを有する。
【解決手段】 半導体デバイスSにバイアス電圧を印加する電圧印加部14と、画像を取得する撮像装置18と、画像処理を行う画像処理部30とを備えて故障解析装置1Aを構成し、撮像装置18は、電圧印加状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、電圧未印加状態での複数の背景画像とを取得する。画像処理部30は、解析画像及び背景画像のそれぞれでの撮像位置を算出する撮像位置算出部32と、撮像位置に対して用意された領域分割単位に基づいて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類部33と、N個の画像グループについて個別に解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成部34とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析装置、及び半導体故障解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの故障解析を行う装置として、半導体デバイスで発生する熱を検出して、その故障箇所を特定する故障解析装置が用いられている。このような故障解析装置では、例えば、半導体デバイスに含まれる電子回路に対してバイアス電圧を印加する。そして、赤外光の波長領域に感度を有する撮像装置を用いて半導体デバイスを撮像することで発熱像を取得し、その発熱像を解析することによって、半導体デバイスにおける発熱箇所を特定する(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2758562号公報
【特許文献2】特開平9−266238号公報
【特許文献3】特開平11−337511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した半導体故障解析装置では、赤外撮像装置によって取得される半導体デバイスの画像は、半導体デバイスで発生する熱による発熱像と、半導体デバイスでの回路パターンによるパターン像とを含む。この場合、このような画像からパターン像を除去して発熱像を抽出する方法として、差分法が考えられる。すなわち、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像+パターン像による解析画像とは別に、バイアス電圧が印加されていない状態でのパターン像のみによる背景画像を取得する。そして、解析画像と背景画像との差分をとることによって、発熱像のみを抽出することができる。
【0005】
ここで、上記の方法では、解析画像及び背景画像は、通常、それぞれ時系列に複数ずつ取得されて故障解析に用いられる。一方、このような故障解析装置では、温度変化の影響によって撮像装置による半導体デバイスに対する撮像位置が変動する温度ドリフトが発生する。すなわち、解析画像及び背景画像の時系列での取得中に温度が変化すると、故障解析装置を構成している各部品が、その材質やサイズの違いなどに応じて異なる条件で伸縮することで位置変動が発生し、それによって撮像位置がずれることとなる。
【0006】
このような温度による撮像位置ずれは、装置自体が熱の発生元であり、また、サンプルの出し入れに伴う外気の入出などもあり、完全に排除することはできない。そして、撮像位置ずれが発生した状態で取得された解析画像及び背景画像について、発熱像に対応する差分画像を生成すると、半導体デバイスにおける回路パターンのエッジ部分がノイズとして差分画像に現れる(エッジノイズ成分)。このようなエッジノイズ成分は、発熱像を用いて半導体デバイスの故障解析を行う上で問題となる。
【0007】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、半導体デバイスの発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能な半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による半導体故障解析装置は、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析装置であって、(1)解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、(2)半導体デバイスの画像を取得する撮像手段と、(3)撮像手段によって取得された画像に対して、半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段とを備え、(4)撮像手段は、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、(5)画像処理手段は、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出手段と、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に撮像位置が属するかによって、複数の解析画像及び複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類手段と、分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による半導体故障解析方法は、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析方法であって、(1)解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加ステップと、(2)半導体デバイスの画像を取得する撮像ステップと、(3)撮像ステップによって取得された画像に対して、半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理ステップとを備え、(4)撮像ステップは、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、(5)画像処理ステップは、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出ステップと、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に撮像位置が属するかによって、複数の解析画像及び複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類ステップと、分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による半導体故障解析プログラムは、(a)解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、半導体デバイスの画像を取得する撮像手段とを備え、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行うとともに、(b)撮像手段は、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得する半導体故障解析装置に適用され、(c)撮像手段によって取得された画像に対して、半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、(d)複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出処理と、(e)複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に撮像位置が属するかによって、複数の解析画像及び複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類処理と、(f)分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
上記した半導体故障解析装置、方法、及びプログラムでは、半導体デバイスに対し、バイアス電圧が印加された状態での発熱像+パターン像の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態でのパターン像のみの背景画像とを、それぞれ時系列に複数ずつ取得する。そして、それらの解析画像及び背景画像のそれぞれについて撮像位置を算出するとともに、撮像位置の変動に対して領域分割単位を用意し、領域分割単位によって分割されたN個の領域を用いて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類して、発熱像が抽出された差分画像の生成を行っている。
【0012】
上記構成では、撮像位置ずれの位置ずれ量に応じて、複数の解析画像及び複数の背景画像がN個の画像グループに分類され、分類後の画像グループ毎に差分画像が生成される。このような構成によれば、領域分割単位を適切に設定することにより、撮像位置ずれの影響を低減して、半導体デバイスの故障解析に用いられる差分画像における、撮像位置ずれによるエッジノイズ成分などのノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
なお、N個の画像グループについて画像グループ毎に行われる解析画像と背景画像との差分画像の生成については、半導体デバイスの故障解析の具体的な方法等に応じて、N個の画像グループのそれぞれについて差分画像を生成して、N個の差分画像を取得する構成としても良い。あるいは、N個の画像グループの少なくとも1個について差分画像を生成する構成としても良い。
【0014】
ここで、解析画像及び背景画像のN個の画像グループへの分類については、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置の位置頻度分布を求めるとともに、複数の解析画像の位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、複数の背景画像の位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、分類に用いられる領域分割単位を設定することが好ましい。このような構成によれば、半導体デバイスの画像取得における撮像位置ずれの実際の発生状況に応じて領域分割単位を適切に設定して、複数の解析画像及び複数の背景画像を好適にN個の画像グループに分類することができる。
【0015】
上記構成での領域分割単位の設定については、具体的には、領域分割単位を調整するための調整係数αを設定するとともに、複数の解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、複数の背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を領域分割単位として設定する構成を用いることができる。また、領域分割単位の設定方法については、このような構成に限らず、様々な構成を用いて良い。
【0016】
また、上記のように領域分割単位の設定において調整係数αを用いる構成では、具体的な故障解析条件等に応じて調整係数αを自動で設定する構成を用いることができる。あるいは、操作者によって入力された係数値に基づいて、調整係数αを手動で設定する構成を用いても良い。このような手動設定の構成では、撮像位置ずれの実際の発生状況、及び半導体デバイスの具体的な解析条件等を考慮した操作者の判断に基づいて、領域分割単位を好適に設定することができる。
【0017】
さらに、上記した調整係数αの具体的な設定については、複数の解析画像の位置頻度分布での分布幅w1と、複数の背景画像の位置頻度分布での分布幅w2とを、それぞれ標準偏差σ1、σ2によって求めるとともに、調整係数αを、条件1≦α≦2を満たす範囲内で設定することが好ましい。標準偏差σ1、σ2に対する調整係数αの数値範囲を上記のように設定することにより、撮像位置の変動による位置頻度分布に対して、領域分割単位を適切に設定することができる。
【0018】
解析画像と背景画像との差分画像の生成については、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する構成を用いることができる。あるいは、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する構成を用いることができる。これらの構成によれば、最終的に半導体デバイスの故障解析に用いられる差分画像を好適に導出することができる。
【0019】
また、差分画像の生成については、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能に構成されていることとしても良い。このような構成によっても、自動で、または操作者が手動で解析モードを選択することにより、最終的に半導体デバイスの故障解析に用いられる差分画像を好適に導出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体故障解析装置、方法、及びプログラムによれば、解析対象の半導体デバイスに対し、バイアス電圧が印加された状態での解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での背景画像とを複数ずつ取得し、解析画像及び背景画像のそれぞれについて撮像位置を算出するとともに、撮像位置の変動に対して領域分割単位を用意し、領域分割単位によって分割されたN個の領域を用いて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類して、発熱像に対応する差分画像の生成を行うことにより、半導体デバイスの発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】半導体故障解析装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した半導体故障解析装置において実行される故障解析方法について模式的に示す図である。
【図3】図1に示した半導体故障解析装置において実行される故障解析方法について模式的に示す図である。
【図4】解析画像と背景画像との差分画像の生成方法を示す図である。
【図5】撮像位置の位置頻度分布及び領域分割単位について示す図である。
【図6】撮像位置の変動による位置頻度分布の導出方法について示す図である。
【図7】位置頻度分布を参照した領域分割単位の設定方法について示す図である。
【図8】表示装置に表示される操作画面の一例を示す図である。
【図9】半導体デバイスの通常のパターン画像を示す図である。
【図10】解析画像と背景画像との差分画像の例を示す図である。
【図11】解析画像と背景画像との差分画像の例を示す図である。
【図12】解析画像と背景画像との差分画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面とともに本発明による半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0023】
図1は、本発明による半導体故障解析装置の一実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。この装置1Aは、半導体デバイスSの発熱像を用いて故障解析を行う故障解析装置である。図1に示した半導体故障解析装置1Aは、試料ステージ10と、電圧印加部14と、撮像装置18と、制御部20と、画像処理部30とを備えて構成されている。
【0024】
解析対象となる半導体デバイスSは、X軸方向、Y軸方向(水平方向)、及びZ軸方向(垂直方向)にそれぞれ駆動可能なXYZステージを用いた試料ステージ10上に載置されている。このステージ10は、ステージ駆動部12によってX、Y、Z方向に駆動可能に構成されており、これにより、半導体デバイスSに対する撮像の焦点合わせ、撮像位置の位置合わせ等が行われる。ステージ10の上方には、半導体デバイスSの2次元の画像を取得する撮像手段である撮像装置18が設置されている。撮像装置18としては、半導体デバイスSの発熱像による画像を取得するため、所定の波長領域に感度を有する撮像装置、例えば赤外光の波長領域に感度を有する赤外撮像装置が好適に用いられる。
【0025】
ステージ10と撮像装置18との間の光軸上には、半導体デバイス10の像を撮像装置18へと導く導光光学系16が設けられている。また、ステージ10上の半導体デバイスSに対して、電圧印加部14が設けられている。電圧印加部14は、発熱像による故障解析を行う際に、半導体デバイスSの電子回路に対して必要なバイアス電圧を印加する電圧印加手段であり、電圧印加用の電源を含んで構成されている。なお、導光光学系16についても、必要があればXYZステージなどの駆動機構が設けられる。
【0026】
このような構成において、撮像装置18は、電圧印加部14によって半導体デバイスSにバイアス電圧が印加された状態での解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での背景画像とを、それぞれ複数ずつ時系列に取得する。電圧印加状態で取得される解析画像は、半導体デバイスSの発熱像と、半導体デバイスSでの回路パターンによるパターン像とを含む画像である。一方、電圧未印加状態で取得される背景画像は、半導体デバイスSのパターン像のみを含む画像である。
【0027】
図1に示す故障解析装置1Aでは、これらのステージ10、ステージ駆動部12、電圧印加部14、導光光学系16、及び撮像装置18に対して、それらの動作を制御する制御部20が設けられている。本実施形態における制御部20は、撮像制御部21と、ステージ制御部22と、同期制御部23とを有して構成されている。
【0028】
撮像制御部21は、電圧印加部14によるバイアス電圧の印加動作、及び撮像装置18による画像取得動作を制御することにより、半導体デバイスSの解析画像及び背景画像の取得を制御する。また、ステージ制御部22は、XYZステージ10及びステージ駆動部12の動作(ステージ10上の半導体デバイスSの移動動作)を制御する。また、同期制御部23は、撮像制御部21及びステージ制御部22と、撮像装置18に対して設けられた画像処理部30との間で必要な同期をとるための制御を行う。
【0029】
画像処理部30は、撮像装置18によって取得された画像に対して、半導体デバイスSの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段である。本実施形態における画像処理部30は、画像記憶部31と、撮像位置算出部32と、画像分類部33と、差分画像生成部34とを有して構成されている。撮像装置18で取得された半導体デバイスSの画像は、画像処理部30に入力され、必要に応じて画像記憶部31に記憶、蓄積される。
【0030】
撮像位置算出部32は、撮像装置18で取得された半導体デバイスSの複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その水平面内(XY面内)での撮像位置を算出する。ここで、故障解析装置1Aにおける画像取得では、温度変化の影響によって半導体デバイスSに対する撮像位置が変動する(温度ドリフト)。また、装置1Aにおける振動等によっても撮像位置は変動する。撮像位置算出部32は、このように変動する撮像位置を画像毎に求めて、その位置ずれ量を評価する。ここで、このような撮像位置の変動レベルは、通常、撮像装置18の画素サイズよりも小さいレベルである。
【0031】
画像分類部33は、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、その位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意する。そして、撮像位置の分布を領域分割単位にしたがってN個の領域(Nは2以上の整数)に分割し、撮像位置が分割されたN個の領域のうちのどの領域に属するかによって、解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類する。ここで、上記のように撮像位置の変動が画素サイズよりも小さい場合、画像分類に用いられる領域分割単位は画素サイズよりも小さく設定され、画像のグループ分けは画素サイズよりも小さい位置精度で行われる。
【0032】
差分画像生成部34は、画像分類部33によって分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する。ここで、解析画像は、上記したように発熱像とパターン像とを含む画像であり、背景画像は、パターン像のみを含む画像である。したがって、それらの差分をとった差分画像は、故障解析に必要な発熱像のみが抽出された画像となる。そして、その差分画像における発熱箇所を特定することによって、半導体デバイスの故障解析が行われる。
【0033】
このような画像処理部30は、例えばコンピュータを用いて構成される。また、この画像処理部30に対して、入力装置36及び表示装置37が接続されている。入力装置36は、例えばキーボードやマウス等から構成され、本装置1Aにおける画像取得動作、故障解析動作の実行に必要な情報、指示の入力等に用いられる。また、表示装置37は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等から構成され、本装置1Aにおける画像取得及び故障解析に関する必要な情報の表示等に用いられる。
【0034】
なお、この画像処理部30については、制御部20とともに単一の制御装置(例えば、単一のコンピュータ)によって実現される構成としても良い。また、画像処理部30に接続される入力装置36及び表示装置37についても、同様に、画像処理部30のみでなく制御部20に対する入力、表示装置としても機能する構成としても良い。
【0035】
画像処理部30において実行される解析画像及び背景画像のN個の画像グループへの分類、及び差分画像の生成について、図2及び図3を参照して概略的に説明する。ここで、図2、図3は、図1に示した半導体故障解析装置1Aにおいて実行される故障解析方法について模式的に示す図である。ここでは、簡単のため、複数の解析画像(発熱像+パターン像)と、複数の背景画像(パターン像のみ)とを時系列に取得する際(電圧印加ステップ、撮像ステップ)に、温度ドリフトまたは装置の振動等の影響によって、撮像装置18による半導体デバイスSの撮像位置がP1、P2の2つの位置に時系列に変動する場合を考え、そのような場合に行われる画像処理について説明する(画像処理ステップ)。
【0036】
各画像の撮像位置を求めた結果(撮像位置算出ステップ)、撮像位置の変動について得られる位置頻度分布に対し、画像分類部33は、図2(a)に示すように、分類後の個々の画像グループでの撮像位置の変動の許容範囲となる領域分割単位ΔPを設定する。そして、この領域分割単位ΔPにしたがって、撮像位置の分布領域を複数の領域、この例では第1領域R1及び第2領域R2の2個の領域に分割する。このとき、図2(a)の例では撮像位置P1は領域R1に属し、撮像位置P2は領域R2に属している。
【0037】
これにより、図2(b)、(c)に示すように、領域R1に属する位置P1が撮像位置の画像が画像グループ1に分類され、また、領域R2に属する位置P2が撮像位置の画像が画像グループ2に分類される(画像分類ステップ)。図2に示す例では、時系列に取得された解析画像A1〜A6、背景画像B1〜B6のうち、解析画像A1、A2、A4、及び背景画像B1、B3、B5が画像グループ1に分類されている。また、解析画像A3、A5、A6、及び背景画像B2、B4、B6が画像グループ2に分類されている。
【0038】
解析画像及び背景画像が画像グループに分類されると、差分画像生成部34は、図3に示すように、画像グループ毎に、差分画像を生成する(差分画像生成ステップ)。まず、図3(a)、(b)に示すように、画像グループ1に分類された解析画像A1、A2、A4の平均によって、平均解析画像A7を生成し、また、背景画像B1、B3、B5の平均によって、平均背景画像B7を生成する。同様に、画像グループ2に分類された解析画像A3、A5、A6の平均によって、平均解析画像A8を生成し、また、背景画像B2、B4、B6の平均によって、平均背景画像B8を生成する。
【0039】
そして、図3(c)に示すように、画像グループ1について、解析画像A7と背景画像B7との差分をとることで、第1差分画像C7(=A7−B7)を生成する。同様に、画像グループ2について、解析画像A8と背景画像B8との差分をとることで、第2差分画像C8(=A8−B8)を生成する。これらの画像グループ毎の差分画像C7、C8、あるいは差分画像C7、C8に対して加算、平均、選択等の処理を行って得られた差分画像が、実質的に発熱像のみを含み故障解析に用いられる発熱解析画像となる。
【0040】
図1に示した故障解析装置1Aの画像処理部30において実行される故障解析方法に対応する処理は、撮像装置18によって取得された画像に対して半導体デバイスSの故障解析に必要な画像処理をコンピュータに実行させるための半導体故障解析プログラムによって実現可能である。例えば、画像処理部30は、画像処理に必要な各ソフトウェアプログラムを動作させるCPUと、上記ソフトウェアプログラムなどが記憶されるROMと、プログラム実行中に一時的にデータが記憶されるRAMとによって構成することができる。このような構成において、CPUによって所定の故障解析プログラムを実行することにより、上記した画像処理部30、及び故障解析装置1Aを実現することができる。
【0041】
また、故障解析の画像処理をCPUによって実行させるための上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録して頒布することが可能である。このような記録媒体には、例えば、ハードディスク及びフレキシブルディスクなどの磁気媒体、CD−ROM及びDVD−ROMなどの光学媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光学媒体、あるいはプログラム命令を実行または格納するように特別に配置された、例えばRAM、ROM、及び半導体不揮発性メモリなどのハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0042】
本実施形態による半導体故障解析装置1A、半導体故障解析方法、及び半導体故障解析プログラムの効果について説明する。
【0043】
図1〜図3に示した半導体故障解析装置1A、故障解析方法、及び故障解析プログラムでは、半導体デバイスSに対し、電圧印加部14によってバイアス電圧が印加された状態での発熱像+パターン像を含む解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態でのパターン像のみを含む背景画像とを、それぞれ時系列に複数ずつ取得する。そして、それらの解析画像及び背景画像のそれぞれについて、撮像位置算出部32において撮像位置を算出するとともに、画像分類部33において、撮像位置の変動に対して領域分割単位を用意し、領域分割単位によって分割されたN個の領域を用いて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類して、発熱像が抽出された差分画像の生成を行っている。
【0044】
上記構成では、図2及び図3に示すように、撮像位置ずれの位置ずれ量に応じて、複数の解析画像及び複数の背景画像がN個の画像グループに分類され、分類後の画像グループ毎に差分画像が生成される。このような構成によれば、画像分類部33において領域分割単位を適切に設定することにより、温度ドリフトや装置の振動などによる撮像位置ずれの影響を低減して、半導体デバイスSの故障解析に用いられる差分画像における、撮像位置ずれによるエッジノイズ成分などのノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0045】
解析画像と背景画像との差分画像において発生するエッジノイズ成分、及びその抑制について、図4を参照して説明する。図4(a)は、従来の故障解析方法による差分画像の生成方法を示している。また、図4(b)は、上記実施形態の故障解析方法による差分画像の生成方法を示している。また、図4において、符号Dを付した矩形パターンは、撮像装置18で取得される2次元画像での1画素(画素サイズ)を示し、また、符号Eを付した直線は、半導体デバイスSにおける回路パターンでのエッジ部分を示している。
【0046】
図4(a)に示す例では、バイアス電圧印加時の解析画像として画像A1、A2が、また、バイアス電圧未印加時の背景画像として画像B1、B2が取得されている。これらの画像では、画素Dの画素サイズによって決まる分解能での濃淡パターンとして、パターンエッジEの像が取得されている。また、解析画像A1とA2、背景画像B1とB2とで、撮像位置ずれによって画素構造に対するパターンエッジEの位置が変動しており、その結果、各画像において得られている画素の濃淡パターンが異なるものとなっている。
【0047】
このような画像データに対し、画像A1、A2の平均として解析画像A0を求め、画像B1、B2の平均として背景画像B0を求め、それらについて減算処理A0−B0を行うことで差分画像C0を生成する。このとき、解析画像A0において発熱箇所が含まれていないにもかかわらず、解析画像A0と背景画像B0との間での撮像位置ずれの影響でパターンエッジEによるノイズ的な画像が生成されている。このようなエッジノイズ成分は、図4(a)から理解されるように、撮像位置ずれが画素サイズよりも小さいものであっても、画素のコントラストパターンがずれることによってノイズが発生する。
【0048】
これに対して、図4(b)に示す例では、解析画像A1、A2、及び背景画像B1、B2について、撮像位置による画像グループへの分類を行った後に、差分画像を生成する。例えば、図4(b)において、解析画像A2と背景画像B1とは、撮像位置がほぼ同じであり、画像のグループ分けにおいて同一の画像グループに分類される。したがって、これらの画像A2、B1を、その画像グループでの解析画像A0=A2、背景画像B0=B1とし、それらについて減算処理A0−B0を行うことにより、パターンエッジEによるノイズが除去された差分画像C0を得ることができる。また、解析画像A1、背景画像B2についても、他の画像グループにおいて同様の画像処理が行われる。
【0049】
ここで、図2及び図3に示した例では、上述したように撮像位置がP1、P2の2つの位置で離散的に変動することを仮定しているが、実際には、撮像位置は連続的な位置頻度分布で変動する。具体的には、装置の振動による撮像位置ずれは、充分な枚数の画像が得られているとすると、正規分布状に発生する。また、この振動による撮像位置ずれの標準偏差σは、通常、例えば撮像装置18の画素サイズの1/10以下のレベルである。
【0050】
また、温度ドリフトによる撮像位置ずれについては、一般的には電圧印加部14の電源ONの時に大きく、電源OFFの時に小さくなる。したがって、電圧印加状態で取得される解析画像と、電圧未印加状態で取得される背景画像とでは位置ずれ量が一致せず、正規分布状の位置頻度分布の中心位置が両者で異なる状態となる。
【0051】
図5は、撮像位置の位置頻度分布及び領域分割単位について示す図である。この図5において、図5(a)、(b)、(c)は、領域分割単位を大きめの分割単位ΔP1に設定した場合の解析画像及び背景画像の画像グループへの分類の例を示している。また、図5(d)、(e)、(f)は、領域分割単位を小さめの分割単位ΔP2に設定した場合の解析画像及び背景画像の画像グループへの分類の例を示している。また、これらの図において、図5(a)、(d)は、分類前の解析画像の撮像位置の位置頻度分布(画像数分布)50、及び背景画像の撮像位置の位置頻度分布55を示している。これらの位置頻度分布50、55は、中心がずれた正規分布状の頻度分布となっている。
【0052】
これに対して、図5(b)は、分割単位ΔP1による分類後の解析画像の位置頻度分布(画像グループ毎の画像数分布)51を示し、図5(c)は、同様の分類後の背景画像の位置頻度分布56を示している。また、図5(e)は、分割単位ΔP2による分類後の解析画像の位置頻度分布52を示し、図5(f)は、同様の分類後の背景画像の位置頻度分布57を示している。領域分割単位ΔPの設定においては、後述するように、各画像グループでの画像数に応じた統計的な平均効果、及び領域分割での位置再現性等を考慮して、適切に設定することが好ましい。
【0053】
なお、分類されたN個の画像グループについて、画像グループ毎に行われる解析画像と背景画像との差分画像の生成については、故障解析の具体的な方法等に応じて、N個の画像グループのそれぞれについて個別に差分画像を生成して、全体としてN個の差分画像を取得する構成としても良い。あるいは、N個の画像グループのうちで故障解析に必要とされる少なくとも1個の画像グループについて差分画像を生成する構成としても良い。
【0054】
また、最終的に半導体デバイスSの故障解析に用いられる差分画像の生成については、例えば、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する構成を用いることができる。また、この場合の具体的な重み付け方法としては、例えば、各差分画像を重み付けして加算する方法、各差分画像を重み付けして加算平均をとる方法等を用いることができる。
【0055】
あるいは、差分画像の生成について、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する構成を用いることができる。この場合の具体的な選択方法としては、例えば、N個の画像グループのうちで最も画像数が多い画像グループでの差分画像を選択する方法を用いることができる。あるいは、画像数が多い2以上の画像グループでの差分画像を選択し、それらの差分画像から加算、平均等によって最終的な差分画像を算出する方法を用いても良い。これらの差分画像に対して重み付け、画像の選択等を行う構成によれば、最終的に半導体デバイスSの故障解析に用いられる差分画像を好適に導出することができる。
【0056】
また、差分画像生成部34で行われる差分画像の生成において、2以上の解析モードを切り替え可能とする構成を用いても良い。そのような構成としては、例えば、N個の画像グループのそれぞれについてのN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能とする構成が挙げられる。
【0057】
このように、差分画像生成部34での解析モードが切り替え可能な構成によっても、自動で、または操作者が手動で解析モードを選択することにより、実際に半導体デバイスSの故障解析に用いられる、発熱像が抽出された差分画像を好適に導出することができる。この場合、具体的には、表示装置37に解析モード選択画面を表示し、その表示内容を参照して操作者が入力装置36を介して解析モードを選択する構成とすることが好ましい。あるいは、差分画像生成部34が、実際の画像の位置頻度分布等を参照して、自動で解析モードを設定または切り替える構成としても良い。
【0058】
図1に示した故障解析装置1Aにおいて、半導体デバイスSの画像を取得する撮像装置18としては、具体的には例えば、赤外光の波長領域(例えば波長3.7μm〜5.2μm)に感度を有する画素数320×240、撮像サイズ9.6mm×7.2mm、フレームレート140Hzの赤外InSbカメラを用いることができる。また、このような赤外カメラを用いた構成において、光学系16で0.8倍対物レンズを用いた場合、全体の視野サイズは概算でX=11923μm、Y=8931μm、1画素あたりのサイズは37μmである。また、4倍対物レンズを用いた場合、視野サイズはX=2379μm、Y=1788μm、画素サイズは7.4μmである。また、15倍対物レンズを用いた場合、視野サイズはX=629μm、Y=474μm、画素サイズは2μmである。
【0059】
また、電圧印加状態での解析画像(ON画像)、及び電圧未印加状態での背景画像(OFF画像)の取得画像数については、必要に応じて設定すれば良いが、通常は1秒以上は画像取得を行うため、例えば上記したフレームレート140Hzの撮像装置を用いた場合には、それぞれの画像数は140以上となる。
【0060】
この画像数については、画像数が多ければ位置頻度分布が正規分布に近づくため、ある程度の画像数は必要である。この点を考慮すると、例えば、解析画像及び背景画像のそれぞれについて画像取得時間4秒〜8秒(画像数560〜1120)程度に設定することが好適と考えられる。一方、画像数が多くなって画像取得時間が長くなると、温度ドリフトによる撮像位置ずれが大きくなる可能性がある。この点を考慮すると、解析画像及び背景画像のそれぞれについて画像取得時間10秒以下に設定することが好適と考えられる。
【0061】
この場合、画像取得時間の設定の一例として、半導体デバイスSにおける発熱が弱い場合は上記した8秒程度、発熱が強い場合は4秒程度とし、発熱が特に強くオーバーフローの可能性がある場合には1秒程度とする設定が考えられる。また、解析画像及び背景画像の取得動作の繰返し回数(ON/OFF回数)については、通常、電圧印加状態において所定の時間で複数の解析画像を取得し、続いて、電圧未印加状態において所定の時間で複数の背景画像を取得する画像取得動作を1回行うが、発熱の強さや取得画像数等を考慮して、必要があれば2回以上繰り返して画像取得動作を行う構成としても良い。
【0062】
また、このような構成の故障解析装置1Aにおいて、撮像位置の変動の原因となる温度ドリフトは、例えば、金属の膨張・収縮による歪み、装置中の非対称な機構、重心バランスの不均等などによって発生する。また、装置の振動は、例えば、赤外カメラのスターリングサイクルクーラーなどの冷却機構、外来の振動による共振、顕微鏡光学系、光学系ステージ、試料ステージなどによって発生する。
【0063】
故障解析装置1Aの画像処理部30において行われる画像処理について、さらに具体的に説明する。最初に、撮像位置算出部32による各画像での撮像位置の算出について説明する。図6は、撮像装置18で取得される半導体デバイスSの画像における、撮像位置の変動による位置頻度分布の導出方法について示す図である。解析画像、及び背景画像の各画像での撮像位置の算出は、通常の画像認識技術を利用して行うことができる。具体的な算出方法としては、例えば、オプティカルフローで認識したものの平均値を用いる方法、位相相関法、テンプレートマッチングによる方法等がある。
【0064】
オプティカルフローを用いた撮像位置の算出方法の一例を説明する。オプティカルフロー自体にも様々な方式があるが、例えばLucas-Kanadeアルゴリズムによる方式を用いることができる。まず、図6(a)の画像65において模式的に示すように、1枚目の画像について、その特徴点(コーナー)66をHarrisオペレータによって認識する。特徴点66の点数については、例えば、撮像装置18で取得される解像度320×240の画像に対して200点の特徴点を抽出する。また、抽出された特徴点をサブピクセル化する。
【0065】
次に、2枚目の画像について、同様に、その特徴点67をHarrisオペレータによって認識し、抽出された特徴点をサブピクセル化する。そして、図6(a)中に矢印で示すように、1枚目と2枚目の画像間で、特徴点66、67間の距離(画像間の位置ずれ量)を計測する。ここでは、200点の特徴点のそれぞれで特徴点間の距離が求められるが、対応がとれない点がある場合には、得られる距離データは200点よりも少なくなる。
【0066】
そして、それらの特徴点間の距離データの平均値を求めることによって、1枚目の画像での撮像位置を基準位置ゼロとしたときの2枚目の画像の撮像位置を算出する。このような処理を複数の解析画像及び背景画像のそれぞれについて行うことにより、図6(b)のグラフに示すように、各画像での撮像位置、及びそれによる位置頻度分布60が求められる。なお、特徴点となるコーナー検出のアルゴリズムについては、具体的には、上記したHarris以外にも、例えばMoravec、SUSANなど、他の方法を用いても良い。
【0067】
図6(b)に示す位置頻度分布60は、図5と同様に、中心位置61に対して正規分布状の頻度分布となっている。このような位置頻度分布に対する領域分割単位の設定、及びそれによる画像のグループ分けについては、画像分類部33において、解析画像及び背景画像のそれぞれでの撮像位置の位置頻度分布を求めるとともに、解析画像の位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、背景画像の位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、領域分割単位ΔPを設定することが好ましい。このような構成によれば、撮像位置ずれの実際の発生状況に応じて領域分割単位を適切に設定して、解析画像及び背景画像を好適にN個の画像グループに分類することができる。なお、位置頻度分布の分布幅wについては、標準偏差σ、半値幅などの値を用いることができる。
【0068】
画像分類のための領域分割単位ΔPの設定について、具体的に説明する。領域分割単位の設定では、(1)平均効果によるS/N比の向上のため、各画像グループの画像数は多いことが好ましく、そのためには分割単位ΔPを広くする必要がある。一方、(2)エッジノイズ成分の除去効果の向上を考慮すると、領域分割での位置再現性が高いことが好ましく、そのためには分割単位ΔPを狭くする必要がある。したがって、領域分割単位ΔPについては、条件(1)、(2)のバランスを考慮して設定することが好ましい。
【0069】
また、例えば最終的に故障解析に用いる差分画像を、各画像グループでの画像数に基づいた重み付けを行って求めるような場合、図6(b)に示した正規分布状の位置頻度分布60において、中心の平均位置61を含む画像グループが最終的な差分画像に最も影響する。このような点を考慮すると、この平均位置61を含む画像グループのための分割範囲を適切に設定することが第1に重要になると考えられる。
【0070】
正規分布の特性から、位置頻度分布60の分布幅wとして標準偏差σを与えれば、平均位置μ(図6(b)中の位置61)からの位置ずれが±1σ以内の範囲に撮像位置が含まれる確率は68.3%、±1.5σ以内の範囲に含まれる確率は86.6%、±2σ以内の範囲に含まれる確率は95.4%となる。実際には、取得される画像数は有限であり、また、ノイズによる撮像位置の認識ずれ、認識精度不足等も発生する。このため、領域分割単位ΔPの位置範囲を±2σ程度に広く設定すると、平均位置μから±2σ離れた位置では画像が得られる頻度が減り、ノイズ成分となる可能性もある。具体的には、平均位置μでの頻度を100%とすると、位置μ±2σでの頻度は13.5%である。
【0071】
これらの正規分布の特性等を考慮し、ここでは、標準的な領域分割単位ΔPとして、位置範囲μ±1.5σを採用する。図6(b)において、左右の撮像位置62は、平均位置61から±1.5σ離れた位置を示している。この場合、平均位置61(=μ)での頻度を同様に100%とすると、位置62(=μ±1.5σ)での頻度は32.5%である。また、図6(b)において、平均位置μからの位置ずれが±1.5σ以内の範囲63に含まれる画像数は、全体の画像数に対して86.6%である。
【0072】
図7は、解析画像及び背景画像のそれぞれについての位置頻度分布を参照して領域分割単位を設定する場合の設定方法について示す図である。ここで、図5に関して上述したように、解析画像と背景画像とでは、通常、その位置頻度分布は、互いに中心がずれた正規分布状の頻度分布となる。この場合、領域分割単位ΔPの設定においては、それらの2つの位置頻度分布をともに考慮することが好ましい。そのような設定方法としては、具体的には、解析画像についての領域単位と、背景画像についての領域単位とを求め、それらの領域単位の共通範囲(領域単位が重複する範囲、領域単位の積集合)を領域分割単位ΔPとして設定する方法を用いることができる。
【0073】
図7(a)に示す例では、解析画像の位置頻度分布70と、背景画像の位置頻度分布75とで、その分布幅w1、w2に対応する標準偏差σ1、σ2は、同一の値σとなっている。また、その平均位置μ1、μ2は、位置ずれ量=σで異なる位置となっている。
【0074】
また、図7(a)のグラフにおいて、解析画像についての領域単位71は、位置頻度分布70の平均位置μ1から±1.5σの範囲を示している。同様に、背景画像についての領域単位76は、位置頻度分布75の平均位置μ2から±1.5σの範囲を示している。これらの領域単位71、76に対して、領域分割単位ΔPは、その共通範囲72によって設定される。また、このとき、領域分割単位ΔPによって分割される領域の中心領域となる範囲73に含まれる画像数は、全体の画像数に対して52.4%である。
【0075】
図7(b)に示す例では、解析画像の位置頻度分布80と、背景画像の位置頻度分布85とで、その分布幅w1、w2に対応する標準偏差σ1、σ2が異なり、σ2=1.2×σ1となっている。また、その平均位置μ1、μ2は、位置ずれ量=σ1で異なる位置となっている。
【0076】
また、図7(b)のグラフにおいて、解析画像についての領域単位81は、位置頻度分布80の平均位置μ1から±1.5σ1の範囲を示している。同様に、背景画像についての領域単位86は、位置頻度分布85の平均位置μ2から±1.5σ2の範囲を示している。これらの領域単位81、86に対して、領域分割単位ΔPは、その共通範囲82によって設定される。また、このとき、領域分割単位ΔPによって分割される領域の中心領域となる範囲83に含まれる画像数は、全体の画像数に対して56.9%である。
【0077】
また、上記した領域分割単位の設定例では、位置範囲μ±1.5σを標準的な領域分割単位ΔPとして設定しているが、この標準偏差σ(一般には分布幅w)に対して分割単位を決定する係数1.5については、自動または操作者により手動で変更が可能な調整係数αとしてもよい。この場合、具体的には、画像分類部33において、領域分割単位ΔPを調整するための調整係数αを設定するとともに、解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を領域分割単位ΔPとして設定する構成を用いることができる。また、領域分割単位ΔPの設定方法については、このような構成に限らず、様々な構成を用いて良い。
【0078】
さらに、調整係数αの具体的な数値設定については、解析画像の位置頻度分布での分布幅w1と、背景画像の位置頻度分布での分布幅w2とを、標準偏差σ1、σ2によって求めるとともに、調整係数αを、上記したα=1.5を中心値として、条件1≦α≦2を満たす範囲内で可変に設定することが好ましい。標準偏差σ1、σ2に対する調整係数αの数値範囲を上記のように設定することにより、撮像位置の変動による位置頻度分布に対して、領域分割単位ΔPを適切に設定することができる。また、調整係数αの設定、変更においては、上述したS/N比を向上する条件(1)と、エッジノイズ成分の除去効果を向上する条件(2)とのバランスを考慮することが好ましい。
【0079】
また、領域分割単位ΔPの設定において調整係数αを用いる構成では、具体的な故障解析条件等に応じて、画像分類部33において調整係数αを自動で設定する構成を用いることができる。あるいは、操作者によって入力装置36を介して入力された係数値に基づいて、調整係数αを手動で設定する構成を用いても良い。このような手動設定の構成では、撮像位置ずれの実際の発生状況、及び半導体デバイスの具体的な解析条件等を考慮した操作者の判断に基づいて、領域分割単位ΔPを好適に設定することができる。
【0080】
図8は、調整係数αの設定に関して、表示装置37に表示される操作画面の一例を示す図である。この操作画面40には、その上方部分において、画像表示領域41と、α値設定領域42と、重畳率設定領域43とが設けられている。画像表示領域41は、半導体デバイスSについて取得された解析画像、背景画像、差分画像等の画像を表示する際に用いられる。また、画像表示領域41においては、必要があれば、本装置1Aにおいて取得される発熱解析画像に加えて、半導体デバイスSの通常のパターン画像、あるいは半導体デバイスSの設計情報を含むレイアウト画像等をも表示する構成としても良い。
【0081】
α値設定領域42は、領域分割単位ΔPを設定する際に用いられる調整係数αの手動での設定、変更に用いられる。図8に示す例では、設定領域42には、1.5を標準値として1.0≦α≦2.0の範囲で調整係数αの値を設定するための設定つまみが設けられている。また、重畳率設定領域43は、画像表示領域41において、発熱解析画像に対して通常のパターン画像、及びレイアウト画像を重畳して表示する際に用いられる重畳率の設定、変更に用いられる。図8に示す例では、設定領域43には、パターン画像、レイアウト画像の重畳率を設定するための2つの設定つまみが設けられている。また、これらの設定領域42、43では、それぞれ設定数値の手動入力も可能な構成となっている。
【0082】
また、操作画面40の下方部分には、さらに、バイアス設定領域44と、画像取得数設定領域45と、ON/OFF回数設定領域46とが設けられている。バイアス設定領域44は、電圧印加部14の電源から半導体デバイスSへと供給されるバイアス電圧、バイアス電流の値を設定する際に用いられる。また、画像取得数設定領域45は、電圧印加状態(電源ON)で取得される解析画像の画像数、及び電圧未印加状態(電源OFF)で取得される背景画像の画像数を設定する際に用いられる。また、ON/OFF回数設定領域46は、電源ON状態での複数の解析画像の取得と、電源OFF状態での複数の背景画像の取得とによる画像取得動作を何回行うかを設定する際に用いられる。
【0083】
上記実施形態による半導体故障解析装置1A、及び故障解析方法を用いて取得される発熱解析画像について、その具体例とともに説明する。図9は、解析対象となる半導体デバイスSの通常のパターン画像を示す図である。このようなパターン画像は、例えば撮像装置18、または撮像装置18とは別に設けられた撮像系を用いて取得される。ここでは、このような回路パターンの半導体デバイスSに対し、電圧印加部14により電圧100mV、電流20mAでバイアスを印加して、その発熱像を取得する。
【0084】
図10〜図12は、それぞれ、解析画像と背景画像との差分画像(発熱解析画像)の例を示す図である。なお、以下の図10〜図12に示す画像では、いずれも、スムージング処理を行った画像を示している。
【0085】
図10(a)は、解析画像及び背景画像の撮像位置による分類を行わない従来の方法で生成された差分画像を示している。この差分画像と、図9に示したパターン画像とを比較すると、従来法による差分画像では、解析画像と背景画像との間での撮像位置ずれの影響により、半導体デバイスSのパターンエッジによるエッジノイズ成分が発生していることがわかる。
【0086】
また、このときの解析画像での平均位置μ1、標準偏差σ1、及び背景画像での平均位置μ2、標準偏差σ2をX軸方向、Y軸方向についてそれぞれ求めると、
平均位置:μ1X=0.025、μ1Y=0.010
標準偏差:σ1X=0.040、σ1Y=0.029
平均位置:μ2X=0.026、μ2Y=0.021
標準偏差:σ2X=0.025、σ2Y=0.018
であった。なお、上記の平均位置及び標準偏差の各数値は、導光光学系16の対物レンズとして4倍対物レンズを用いて画像を取得した際の画素ずれ量である。例えば、解析画像と背景画像との間でのY軸方向の画素ずれ量は、μ2Y−μ1Y=0.011画素であるが、これは位置ずれ量にすると約0.08μmに相当する。
【0087】
図10(b)は、解析画像及び背景画像を撮像位置によって分類する上記実施形態の方法で生成された差分画像を示している。この差分画像は、上述した具体的な方法において調整係数をα=1とし、1σによって領域分割単位ΔPを設定するとともに、領域分割数をN=9とした条件で求めたものである。このように、解析画像及び背景画像を画像グループに分類する方法を用いて得られた差分画像では、撮像位置ずれの影響が低減され、従来法の差分画像に発生していたエッジノイズ成分が除去されて、半導体デバイスSの故障解析に用いられる発熱像が明瞭に確認できることがわかる。
【0088】
また、このようなエッジノイズ成分の除去効果は、領域分割単位ΔPを変えることで変化する。図11(a)は、調整係数をα=1.5とするとともに、領域分割数をN=5とした条件で求めた差分画像を示している。また、図11(b)は、調整係数をα=2とするとともに、領域分割数をN=5とした条件で求めた差分画像を示している。これらの差分画像では、調整係数αの値を大きくして、領域分割単位ΔPを広くするほど、エッジノイズ成分の除去効果が減少している。ただし、上述したように、逆に領域分割単位ΔPを狭くするとS/N比が悪くなるため、領域分割単位ΔPの設定においては、それらの条件のバランスを考慮する必要がある。
【0089】
また、解析画像及び背景画像を分類した画像グループの取扱いについては、N個の画像グループの全てを差分画像生成に用いる構成、及びN個の画像グループのうちで画像数が多い一部(1または複数)の画像グループを選択して差分画像生成に用いる構成がある。一般には、平均効果によるS/N比の向上のためには、全ての画像グループを用いる方法が有利である。一方、エッジノイズ成分の除去効果の向上のためには、一部の画像グループを選択して用いる方法が有利である。したがって、これらの方法のいずれを用いるかについても、それらの条件のバランスを考慮する必要がある。
【0090】
複数の解析画像、背景画像をN個の画像グループに分類した場合、画像グループに含まれる画像数は、平均位置μが含まれる画像グループが最も多く、平均位置μから離れるにしたがって画像数は減少する(図5〜図7参照)。この場合、平均位置から離れた位置の画像グループでは、画像数が少ないために位置の偏りが発生しやすく、差分をとったときにエッジノイズ成分が発生しやすい。このため、得られている画像数、S/N比、具体的な撮像条件等によっては、全てではなく一部の画像グループを選択して用いる構成の方が良い結果が得られる場合がある。
【0091】
図12(a)は、調整係数をα=1.5、領域分割数をN=5に設定するとともに、5個の画像グループの全てを用いて求めた差分画像を示している。また、図12(b)は、同じく調整係数をα=1.5、領域分割数をN=5に設定するとともに、平均位置を含む1個の画像グループのみを用いて求めた差分画像を示している。これらの差分画像では、平均位置を含む画像グループのみを用いた差分画像の方が、エッジノイズ成分の除去効果が向上している。
【0092】
本発明による半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、半導体デバイスSの画像取得に用いられるステージ10、電圧印加部14、導光光学系16、及び撮像装置18等の構成については、上記した構成以外にも、具体的には様々な構成を用いて良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、半導体デバイスの故障解析に用いられる発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能な半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1A…半導体故障解析装置、S…半導体デバイス、10…試料ステージ、12…ステージ駆動部、14…電圧印加部、16…導光光学系、18…撮像装置、20…制御部、21…撮像制御部、22…ステージ制御部、23…同期制御部、30…画像処理部、31…画像記憶部、32…撮像位置算出部、33…画像分類部、34…差分画像生成部、36…入力装置、37…表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析装置、及び半導体故障解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの故障解析を行う装置として、半導体デバイスで発生する熱を検出して、その故障箇所を特定する故障解析装置が用いられている。このような故障解析装置では、例えば、半導体デバイスに含まれる電子回路に対してバイアス電圧を印加する。そして、赤外光の波長領域に感度を有する撮像装置を用いて半導体デバイスを撮像することで発熱像を取得し、その発熱像を解析することによって、半導体デバイスにおける発熱箇所を特定する(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2758562号公報
【特許文献2】特開平9−266238号公報
【特許文献3】特開平11−337511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した半導体故障解析装置では、赤外撮像装置によって取得される半導体デバイスの画像は、半導体デバイスで発生する熱による発熱像と、半導体デバイスでの回路パターンによるパターン像とを含む。この場合、このような画像からパターン像を除去して発熱像を抽出する方法として、差分法が考えられる。すなわち、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像+パターン像による解析画像とは別に、バイアス電圧が印加されていない状態でのパターン像のみによる背景画像を取得する。そして、解析画像と背景画像との差分をとることによって、発熱像のみを抽出することができる。
【0005】
ここで、上記の方法では、解析画像及び背景画像は、通常、それぞれ時系列に複数ずつ取得されて故障解析に用いられる。一方、このような故障解析装置では、温度変化の影響によって撮像装置による半導体デバイスに対する撮像位置が変動する温度ドリフトが発生する。すなわち、解析画像及び背景画像の時系列での取得中に温度が変化すると、故障解析装置を構成している各部品が、その材質やサイズの違いなどに応じて異なる条件で伸縮することで位置変動が発生し、それによって撮像位置がずれることとなる。
【0006】
このような温度による撮像位置ずれは、装置自体が熱の発生元であり、また、サンプルの出し入れに伴う外気の入出などもあり、完全に排除することはできない。そして、撮像位置ずれが発生した状態で取得された解析画像及び背景画像について、発熱像に対応する差分画像を生成すると、半導体デバイスにおける回路パターンのエッジ部分がノイズとして差分画像に現れる(エッジノイズ成分)。このようなエッジノイズ成分は、発熱像を用いて半導体デバイスの故障解析を行う上で問題となる。
【0007】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、半導体デバイスの発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能な半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による半導体故障解析装置は、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析装置であって、(1)解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、(2)半導体デバイスの画像を取得する撮像手段と、(3)撮像手段によって取得された画像に対して、半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段とを備え、(4)撮像手段は、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、(5)画像処理手段は、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出手段と、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に撮像位置が属するかによって、複数の解析画像及び複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類手段と、分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による半導体故障解析方法は、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析方法であって、(1)解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加ステップと、(2)半導体デバイスの画像を取得する撮像ステップと、(3)撮像ステップによって取得された画像に対して、半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理ステップとを備え、(4)撮像ステップは、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、(5)画像処理ステップは、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出ステップと、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に撮像位置が属するかによって、複数の解析画像及び複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類ステップと、分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による半導体故障解析プログラムは、(a)解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、半導体デバイスの画像を取得する撮像手段とを備え、半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行うとともに、(b)撮像手段は、半導体デバイスにバイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得する半導体故障解析装置に適用され、(c)撮像手段によって取得された画像に対して、半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、(d)複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出処理と、(e)複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に撮像位置が属するかによって、複数の解析画像及び複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類処理と、(f)分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する差分画像生成処理とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
上記した半導体故障解析装置、方法、及びプログラムでは、半導体デバイスに対し、バイアス電圧が印加された状態での発熱像+パターン像の解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態でのパターン像のみの背景画像とを、それぞれ時系列に複数ずつ取得する。そして、それらの解析画像及び背景画像のそれぞれについて撮像位置を算出するとともに、撮像位置の変動に対して領域分割単位を用意し、領域分割単位によって分割されたN個の領域を用いて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類して、発熱像が抽出された差分画像の生成を行っている。
【0012】
上記構成では、撮像位置ずれの位置ずれ量に応じて、複数の解析画像及び複数の背景画像がN個の画像グループに分類され、分類後の画像グループ毎に差分画像が生成される。このような構成によれば、領域分割単位を適切に設定することにより、撮像位置ずれの影響を低減して、半導体デバイスの故障解析に用いられる差分画像における、撮像位置ずれによるエッジノイズ成分などのノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
なお、N個の画像グループについて画像グループ毎に行われる解析画像と背景画像との差分画像の生成については、半導体デバイスの故障解析の具体的な方法等に応じて、N個の画像グループのそれぞれについて差分画像を生成して、N個の差分画像を取得する構成としても良い。あるいは、N個の画像グループの少なくとも1個について差分画像を生成する構成としても良い。
【0014】
ここで、解析画像及び背景画像のN個の画像グループへの分類については、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置の位置頻度分布を求めるとともに、複数の解析画像の位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、複数の背景画像の位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、分類に用いられる領域分割単位を設定することが好ましい。このような構成によれば、半導体デバイスの画像取得における撮像位置ずれの実際の発生状況に応じて領域分割単位を適切に設定して、複数の解析画像及び複数の背景画像を好適にN個の画像グループに分類することができる。
【0015】
上記構成での領域分割単位の設定については、具体的には、領域分割単位を調整するための調整係数αを設定するとともに、複数の解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、複数の背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を領域分割単位として設定する構成を用いることができる。また、領域分割単位の設定方法については、このような構成に限らず、様々な構成を用いて良い。
【0016】
また、上記のように領域分割単位の設定において調整係数αを用いる構成では、具体的な故障解析条件等に応じて調整係数αを自動で設定する構成を用いることができる。あるいは、操作者によって入力された係数値に基づいて、調整係数αを手動で設定する構成を用いても良い。このような手動設定の構成では、撮像位置ずれの実際の発生状況、及び半導体デバイスの具体的な解析条件等を考慮した操作者の判断に基づいて、領域分割単位を好適に設定することができる。
【0017】
さらに、上記した調整係数αの具体的な設定については、複数の解析画像の位置頻度分布での分布幅w1と、複数の背景画像の位置頻度分布での分布幅w2とを、それぞれ標準偏差σ1、σ2によって求めるとともに、調整係数αを、条件1≦α≦2を満たす範囲内で設定することが好ましい。標準偏差σ1、σ2に対する調整係数αの数値範囲を上記のように設定することにより、撮像位置の変動による位置頻度分布に対して、領域分割単位を適切に設定することができる。
【0018】
解析画像と背景画像との差分画像の生成については、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する構成を用いることができる。あるいは、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する構成を用いることができる。これらの構成によれば、最終的に半導体デバイスの故障解析に用いられる差分画像を好適に導出することができる。
【0019】
また、差分画像の生成については、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能に構成されていることとしても良い。このような構成によっても、自動で、または操作者が手動で解析モードを選択することにより、最終的に半導体デバイスの故障解析に用いられる差分画像を好適に導出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体故障解析装置、方法、及びプログラムによれば、解析対象の半導体デバイスに対し、バイアス電圧が印加された状態での解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での背景画像とを複数ずつ取得し、解析画像及び背景画像のそれぞれについて撮像位置を算出するとともに、撮像位置の変動に対して領域分割単位を用意し、領域分割単位によって分割されたN個の領域を用いて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類して、発熱像に対応する差分画像の生成を行うことにより、半導体デバイスの発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】半導体故障解析装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した半導体故障解析装置において実行される故障解析方法について模式的に示す図である。
【図3】図1に示した半導体故障解析装置において実行される故障解析方法について模式的に示す図である。
【図4】解析画像と背景画像との差分画像の生成方法を示す図である。
【図5】撮像位置の位置頻度分布及び領域分割単位について示す図である。
【図6】撮像位置の変動による位置頻度分布の導出方法について示す図である。
【図7】位置頻度分布を参照した領域分割単位の設定方法について示す図である。
【図8】表示装置に表示される操作画面の一例を示す図である。
【図9】半導体デバイスの通常のパターン画像を示す図である。
【図10】解析画像と背景画像との差分画像の例を示す図である。
【図11】解析画像と背景画像との差分画像の例を示す図である。
【図12】解析画像と背景画像との差分画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面とともに本発明による半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0023】
図1は、本発明による半導体故障解析装置の一実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。この装置1Aは、半導体デバイスSの発熱像を用いて故障解析を行う故障解析装置である。図1に示した半導体故障解析装置1Aは、試料ステージ10と、電圧印加部14と、撮像装置18と、制御部20と、画像処理部30とを備えて構成されている。
【0024】
解析対象となる半導体デバイスSは、X軸方向、Y軸方向(水平方向)、及びZ軸方向(垂直方向)にそれぞれ駆動可能なXYZステージを用いた試料ステージ10上に載置されている。このステージ10は、ステージ駆動部12によってX、Y、Z方向に駆動可能に構成されており、これにより、半導体デバイスSに対する撮像の焦点合わせ、撮像位置の位置合わせ等が行われる。ステージ10の上方には、半導体デバイスSの2次元の画像を取得する撮像手段である撮像装置18が設置されている。撮像装置18としては、半導体デバイスSの発熱像による画像を取得するため、所定の波長領域に感度を有する撮像装置、例えば赤外光の波長領域に感度を有する赤外撮像装置が好適に用いられる。
【0025】
ステージ10と撮像装置18との間の光軸上には、半導体デバイス10の像を撮像装置18へと導く導光光学系16が設けられている。また、ステージ10上の半導体デバイスSに対して、電圧印加部14が設けられている。電圧印加部14は、発熱像による故障解析を行う際に、半導体デバイスSの電子回路に対して必要なバイアス電圧を印加する電圧印加手段であり、電圧印加用の電源を含んで構成されている。なお、導光光学系16についても、必要があればXYZステージなどの駆動機構が設けられる。
【0026】
このような構成において、撮像装置18は、電圧印加部14によって半導体デバイスSにバイアス電圧が印加された状態での解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態での背景画像とを、それぞれ複数ずつ時系列に取得する。電圧印加状態で取得される解析画像は、半導体デバイスSの発熱像と、半導体デバイスSでの回路パターンによるパターン像とを含む画像である。一方、電圧未印加状態で取得される背景画像は、半導体デバイスSのパターン像のみを含む画像である。
【0027】
図1に示す故障解析装置1Aでは、これらのステージ10、ステージ駆動部12、電圧印加部14、導光光学系16、及び撮像装置18に対して、それらの動作を制御する制御部20が設けられている。本実施形態における制御部20は、撮像制御部21と、ステージ制御部22と、同期制御部23とを有して構成されている。
【0028】
撮像制御部21は、電圧印加部14によるバイアス電圧の印加動作、及び撮像装置18による画像取得動作を制御することにより、半導体デバイスSの解析画像及び背景画像の取得を制御する。また、ステージ制御部22は、XYZステージ10及びステージ駆動部12の動作(ステージ10上の半導体デバイスSの移動動作)を制御する。また、同期制御部23は、撮像制御部21及びステージ制御部22と、撮像装置18に対して設けられた画像処理部30との間で必要な同期をとるための制御を行う。
【0029】
画像処理部30は、撮像装置18によって取得された画像に対して、半導体デバイスSの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段である。本実施形態における画像処理部30は、画像記憶部31と、撮像位置算出部32と、画像分類部33と、差分画像生成部34とを有して構成されている。撮像装置18で取得された半導体デバイスSの画像は、画像処理部30に入力され、必要に応じて画像記憶部31に記憶、蓄積される。
【0030】
撮像位置算出部32は、撮像装置18で取得された半導体デバイスSの複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれについて、その水平面内(XY面内)での撮像位置を算出する。ここで、故障解析装置1Aにおける画像取得では、温度変化の影響によって半導体デバイスSに対する撮像位置が変動する(温度ドリフト)。また、装置1Aにおける振動等によっても撮像位置は変動する。撮像位置算出部32は、このように変動する撮像位置を画像毎に求めて、その位置ずれ量を評価する。ここで、このような撮像位置の変動レベルは、通常、撮像装置18の画素サイズよりも小さいレベルである。
【0031】
画像分類部33は、複数の解析画像及び複数の背景画像のそれぞれでの撮像位置に対して、その位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意する。そして、撮像位置の分布を領域分割単位にしたがってN個の領域(Nは2以上の整数)に分割し、撮像位置が分割されたN個の領域のうちのどの領域に属するかによって、解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類する。ここで、上記のように撮像位置の変動が画素サイズよりも小さい場合、画像分類に用いられる領域分割単位は画素サイズよりも小さく設定され、画像のグループ分けは画素サイズよりも小さい位置精度で行われる。
【0032】
差分画像生成部34は、画像分類部33によって分類されたN個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる解析画像と背景画像との差分画像を生成する。ここで、解析画像は、上記したように発熱像とパターン像とを含む画像であり、背景画像は、パターン像のみを含む画像である。したがって、それらの差分をとった差分画像は、故障解析に必要な発熱像のみが抽出された画像となる。そして、その差分画像における発熱箇所を特定することによって、半導体デバイスの故障解析が行われる。
【0033】
このような画像処理部30は、例えばコンピュータを用いて構成される。また、この画像処理部30に対して、入力装置36及び表示装置37が接続されている。入力装置36は、例えばキーボードやマウス等から構成され、本装置1Aにおける画像取得動作、故障解析動作の実行に必要な情報、指示の入力等に用いられる。また、表示装置37は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等から構成され、本装置1Aにおける画像取得及び故障解析に関する必要な情報の表示等に用いられる。
【0034】
なお、この画像処理部30については、制御部20とともに単一の制御装置(例えば、単一のコンピュータ)によって実現される構成としても良い。また、画像処理部30に接続される入力装置36及び表示装置37についても、同様に、画像処理部30のみでなく制御部20に対する入力、表示装置としても機能する構成としても良い。
【0035】
画像処理部30において実行される解析画像及び背景画像のN個の画像グループへの分類、及び差分画像の生成について、図2及び図3を参照して概略的に説明する。ここで、図2、図3は、図1に示した半導体故障解析装置1Aにおいて実行される故障解析方法について模式的に示す図である。ここでは、簡単のため、複数の解析画像(発熱像+パターン像)と、複数の背景画像(パターン像のみ)とを時系列に取得する際(電圧印加ステップ、撮像ステップ)に、温度ドリフトまたは装置の振動等の影響によって、撮像装置18による半導体デバイスSの撮像位置がP1、P2の2つの位置に時系列に変動する場合を考え、そのような場合に行われる画像処理について説明する(画像処理ステップ)。
【0036】
各画像の撮像位置を求めた結果(撮像位置算出ステップ)、撮像位置の変動について得られる位置頻度分布に対し、画像分類部33は、図2(a)に示すように、分類後の個々の画像グループでの撮像位置の変動の許容範囲となる領域分割単位ΔPを設定する。そして、この領域分割単位ΔPにしたがって、撮像位置の分布領域を複数の領域、この例では第1領域R1及び第2領域R2の2個の領域に分割する。このとき、図2(a)の例では撮像位置P1は領域R1に属し、撮像位置P2は領域R2に属している。
【0037】
これにより、図2(b)、(c)に示すように、領域R1に属する位置P1が撮像位置の画像が画像グループ1に分類され、また、領域R2に属する位置P2が撮像位置の画像が画像グループ2に分類される(画像分類ステップ)。図2に示す例では、時系列に取得された解析画像A1〜A6、背景画像B1〜B6のうち、解析画像A1、A2、A4、及び背景画像B1、B3、B5が画像グループ1に分類されている。また、解析画像A3、A5、A6、及び背景画像B2、B4、B6が画像グループ2に分類されている。
【0038】
解析画像及び背景画像が画像グループに分類されると、差分画像生成部34は、図3に示すように、画像グループ毎に、差分画像を生成する(差分画像生成ステップ)。まず、図3(a)、(b)に示すように、画像グループ1に分類された解析画像A1、A2、A4の平均によって、平均解析画像A7を生成し、また、背景画像B1、B3、B5の平均によって、平均背景画像B7を生成する。同様に、画像グループ2に分類された解析画像A3、A5、A6の平均によって、平均解析画像A8を生成し、また、背景画像B2、B4、B6の平均によって、平均背景画像B8を生成する。
【0039】
そして、図3(c)に示すように、画像グループ1について、解析画像A7と背景画像B7との差分をとることで、第1差分画像C7(=A7−B7)を生成する。同様に、画像グループ2について、解析画像A8と背景画像B8との差分をとることで、第2差分画像C8(=A8−B8)を生成する。これらの画像グループ毎の差分画像C7、C8、あるいは差分画像C7、C8に対して加算、平均、選択等の処理を行って得られた差分画像が、実質的に発熱像のみを含み故障解析に用いられる発熱解析画像となる。
【0040】
図1に示した故障解析装置1Aの画像処理部30において実行される故障解析方法に対応する処理は、撮像装置18によって取得された画像に対して半導体デバイスSの故障解析に必要な画像処理をコンピュータに実行させるための半導体故障解析プログラムによって実現可能である。例えば、画像処理部30は、画像処理に必要な各ソフトウェアプログラムを動作させるCPUと、上記ソフトウェアプログラムなどが記憶されるROMと、プログラム実行中に一時的にデータが記憶されるRAMとによって構成することができる。このような構成において、CPUによって所定の故障解析プログラムを実行することにより、上記した画像処理部30、及び故障解析装置1Aを実現することができる。
【0041】
また、故障解析の画像処理をCPUによって実行させるための上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録して頒布することが可能である。このような記録媒体には、例えば、ハードディスク及びフレキシブルディスクなどの磁気媒体、CD−ROM及びDVD−ROMなどの光学媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光学媒体、あるいはプログラム命令を実行または格納するように特別に配置された、例えばRAM、ROM、及び半導体不揮発性メモリなどのハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0042】
本実施形態による半導体故障解析装置1A、半導体故障解析方法、及び半導体故障解析プログラムの効果について説明する。
【0043】
図1〜図3に示した半導体故障解析装置1A、故障解析方法、及び故障解析プログラムでは、半導体デバイスSに対し、電圧印加部14によってバイアス電圧が印加された状態での発熱像+パターン像を含む解析画像と、バイアス電圧が印加されていない状態でのパターン像のみを含む背景画像とを、それぞれ時系列に複数ずつ取得する。そして、それらの解析画像及び背景画像のそれぞれについて、撮像位置算出部32において撮像位置を算出するとともに、画像分類部33において、撮像位置の変動に対して領域分割単位を用意し、領域分割単位によって分割されたN個の領域を用いて解析画像及び背景画像をN個の画像グループに分類して、発熱像が抽出された差分画像の生成を行っている。
【0044】
上記構成では、図2及び図3に示すように、撮像位置ずれの位置ずれ量に応じて、複数の解析画像及び複数の背景画像がN個の画像グループに分類され、分類後の画像グループ毎に差分画像が生成される。このような構成によれば、画像分類部33において領域分割単位を適切に設定することにより、温度ドリフトや装置の振動などによる撮像位置ずれの影響を低減して、半導体デバイスSの故障解析に用いられる差分画像における、撮像位置ずれによるエッジノイズ成分などのノイズの発生を抑制することが可能となる。
【0045】
解析画像と背景画像との差分画像において発生するエッジノイズ成分、及びその抑制について、図4を参照して説明する。図4(a)は、従来の故障解析方法による差分画像の生成方法を示している。また、図4(b)は、上記実施形態の故障解析方法による差分画像の生成方法を示している。また、図4において、符号Dを付した矩形パターンは、撮像装置18で取得される2次元画像での1画素(画素サイズ)を示し、また、符号Eを付した直線は、半導体デバイスSにおける回路パターンでのエッジ部分を示している。
【0046】
図4(a)に示す例では、バイアス電圧印加時の解析画像として画像A1、A2が、また、バイアス電圧未印加時の背景画像として画像B1、B2が取得されている。これらの画像では、画素Dの画素サイズによって決まる分解能での濃淡パターンとして、パターンエッジEの像が取得されている。また、解析画像A1とA2、背景画像B1とB2とで、撮像位置ずれによって画素構造に対するパターンエッジEの位置が変動しており、その結果、各画像において得られている画素の濃淡パターンが異なるものとなっている。
【0047】
このような画像データに対し、画像A1、A2の平均として解析画像A0を求め、画像B1、B2の平均として背景画像B0を求め、それらについて減算処理A0−B0を行うことで差分画像C0を生成する。このとき、解析画像A0において発熱箇所が含まれていないにもかかわらず、解析画像A0と背景画像B0との間での撮像位置ずれの影響でパターンエッジEによるノイズ的な画像が生成されている。このようなエッジノイズ成分は、図4(a)から理解されるように、撮像位置ずれが画素サイズよりも小さいものであっても、画素のコントラストパターンがずれることによってノイズが発生する。
【0048】
これに対して、図4(b)に示す例では、解析画像A1、A2、及び背景画像B1、B2について、撮像位置による画像グループへの分類を行った後に、差分画像を生成する。例えば、図4(b)において、解析画像A2と背景画像B1とは、撮像位置がほぼ同じであり、画像のグループ分けにおいて同一の画像グループに分類される。したがって、これらの画像A2、B1を、その画像グループでの解析画像A0=A2、背景画像B0=B1とし、それらについて減算処理A0−B0を行うことにより、パターンエッジEによるノイズが除去された差分画像C0を得ることができる。また、解析画像A1、背景画像B2についても、他の画像グループにおいて同様の画像処理が行われる。
【0049】
ここで、図2及び図3に示した例では、上述したように撮像位置がP1、P2の2つの位置で離散的に変動することを仮定しているが、実際には、撮像位置は連続的な位置頻度分布で変動する。具体的には、装置の振動による撮像位置ずれは、充分な枚数の画像が得られているとすると、正規分布状に発生する。また、この振動による撮像位置ずれの標準偏差σは、通常、例えば撮像装置18の画素サイズの1/10以下のレベルである。
【0050】
また、温度ドリフトによる撮像位置ずれについては、一般的には電圧印加部14の電源ONの時に大きく、電源OFFの時に小さくなる。したがって、電圧印加状態で取得される解析画像と、電圧未印加状態で取得される背景画像とでは位置ずれ量が一致せず、正規分布状の位置頻度分布の中心位置が両者で異なる状態となる。
【0051】
図5は、撮像位置の位置頻度分布及び領域分割単位について示す図である。この図5において、図5(a)、(b)、(c)は、領域分割単位を大きめの分割単位ΔP1に設定した場合の解析画像及び背景画像の画像グループへの分類の例を示している。また、図5(d)、(e)、(f)は、領域分割単位を小さめの分割単位ΔP2に設定した場合の解析画像及び背景画像の画像グループへの分類の例を示している。また、これらの図において、図5(a)、(d)は、分類前の解析画像の撮像位置の位置頻度分布(画像数分布)50、及び背景画像の撮像位置の位置頻度分布55を示している。これらの位置頻度分布50、55は、中心がずれた正規分布状の頻度分布となっている。
【0052】
これに対して、図5(b)は、分割単位ΔP1による分類後の解析画像の位置頻度分布(画像グループ毎の画像数分布)51を示し、図5(c)は、同様の分類後の背景画像の位置頻度分布56を示している。また、図5(e)は、分割単位ΔP2による分類後の解析画像の位置頻度分布52を示し、図5(f)は、同様の分類後の背景画像の位置頻度分布57を示している。領域分割単位ΔPの設定においては、後述するように、各画像グループでの画像数に応じた統計的な平均効果、及び領域分割での位置再現性等を考慮して、適切に設定することが好ましい。
【0053】
なお、分類されたN個の画像グループについて、画像グループ毎に行われる解析画像と背景画像との差分画像の生成については、故障解析の具体的な方法等に応じて、N個の画像グループのそれぞれについて個別に差分画像を生成して、全体としてN個の差分画像を取得する構成としても良い。あるいは、N個の画像グループのうちで故障解析に必要とされる少なくとも1個の画像グループについて差分画像を生成する構成としても良い。
【0054】
また、最終的に半導体デバイスSの故障解析に用いられる差分画像の生成については、例えば、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する構成を用いることができる。また、この場合の具体的な重み付け方法としては、例えば、各差分画像を重み付けして加算する方法、各差分画像を重み付けして加算平均をとる方法等を用いることができる。
【0055】
あるいは、差分画像の生成について、N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する構成を用いることができる。この場合の具体的な選択方法としては、例えば、N個の画像グループのうちで最も画像数が多い画像グループでの差分画像を選択する方法を用いることができる。あるいは、画像数が多い2以上の画像グループでの差分画像を選択し、それらの差分画像から加算、平均等によって最終的な差分画像を算出する方法を用いても良い。これらの差分画像に対して重み付け、画像の選択等を行う構成によれば、最終的に半導体デバイスSの故障解析に用いられる差分画像を好適に導出することができる。
【0056】
また、差分画像生成部34で行われる差分画像の生成において、2以上の解析モードを切り替え可能とする構成を用いても良い。そのような構成としては、例えば、N個の画像グループのそれぞれについてのN個の差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能とする構成が挙げられる。
【0057】
このように、差分画像生成部34での解析モードが切り替え可能な構成によっても、自動で、または操作者が手動で解析モードを選択することにより、実際に半導体デバイスSの故障解析に用いられる、発熱像が抽出された差分画像を好適に導出することができる。この場合、具体的には、表示装置37に解析モード選択画面を表示し、その表示内容を参照して操作者が入力装置36を介して解析モードを選択する構成とすることが好ましい。あるいは、差分画像生成部34が、実際の画像の位置頻度分布等を参照して、自動で解析モードを設定または切り替える構成としても良い。
【0058】
図1に示した故障解析装置1Aにおいて、半導体デバイスSの画像を取得する撮像装置18としては、具体的には例えば、赤外光の波長領域(例えば波長3.7μm〜5.2μm)に感度を有する画素数320×240、撮像サイズ9.6mm×7.2mm、フレームレート140Hzの赤外InSbカメラを用いることができる。また、このような赤外カメラを用いた構成において、光学系16で0.8倍対物レンズを用いた場合、全体の視野サイズは概算でX=11923μm、Y=8931μm、1画素あたりのサイズは37μmである。また、4倍対物レンズを用いた場合、視野サイズはX=2379μm、Y=1788μm、画素サイズは7.4μmである。また、15倍対物レンズを用いた場合、視野サイズはX=629μm、Y=474μm、画素サイズは2μmである。
【0059】
また、電圧印加状態での解析画像(ON画像)、及び電圧未印加状態での背景画像(OFF画像)の取得画像数については、必要に応じて設定すれば良いが、通常は1秒以上は画像取得を行うため、例えば上記したフレームレート140Hzの撮像装置を用いた場合には、それぞれの画像数は140以上となる。
【0060】
この画像数については、画像数が多ければ位置頻度分布が正規分布に近づくため、ある程度の画像数は必要である。この点を考慮すると、例えば、解析画像及び背景画像のそれぞれについて画像取得時間4秒〜8秒(画像数560〜1120)程度に設定することが好適と考えられる。一方、画像数が多くなって画像取得時間が長くなると、温度ドリフトによる撮像位置ずれが大きくなる可能性がある。この点を考慮すると、解析画像及び背景画像のそれぞれについて画像取得時間10秒以下に設定することが好適と考えられる。
【0061】
この場合、画像取得時間の設定の一例として、半導体デバイスSにおける発熱が弱い場合は上記した8秒程度、発熱が強い場合は4秒程度とし、発熱が特に強くオーバーフローの可能性がある場合には1秒程度とする設定が考えられる。また、解析画像及び背景画像の取得動作の繰返し回数(ON/OFF回数)については、通常、電圧印加状態において所定の時間で複数の解析画像を取得し、続いて、電圧未印加状態において所定の時間で複数の背景画像を取得する画像取得動作を1回行うが、発熱の強さや取得画像数等を考慮して、必要があれば2回以上繰り返して画像取得動作を行う構成としても良い。
【0062】
また、このような構成の故障解析装置1Aにおいて、撮像位置の変動の原因となる温度ドリフトは、例えば、金属の膨張・収縮による歪み、装置中の非対称な機構、重心バランスの不均等などによって発生する。また、装置の振動は、例えば、赤外カメラのスターリングサイクルクーラーなどの冷却機構、外来の振動による共振、顕微鏡光学系、光学系ステージ、試料ステージなどによって発生する。
【0063】
故障解析装置1Aの画像処理部30において行われる画像処理について、さらに具体的に説明する。最初に、撮像位置算出部32による各画像での撮像位置の算出について説明する。図6は、撮像装置18で取得される半導体デバイスSの画像における、撮像位置の変動による位置頻度分布の導出方法について示す図である。解析画像、及び背景画像の各画像での撮像位置の算出は、通常の画像認識技術を利用して行うことができる。具体的な算出方法としては、例えば、オプティカルフローで認識したものの平均値を用いる方法、位相相関法、テンプレートマッチングによる方法等がある。
【0064】
オプティカルフローを用いた撮像位置の算出方法の一例を説明する。オプティカルフロー自体にも様々な方式があるが、例えばLucas-Kanadeアルゴリズムによる方式を用いることができる。まず、図6(a)の画像65において模式的に示すように、1枚目の画像について、その特徴点(コーナー)66をHarrisオペレータによって認識する。特徴点66の点数については、例えば、撮像装置18で取得される解像度320×240の画像に対して200点の特徴点を抽出する。また、抽出された特徴点をサブピクセル化する。
【0065】
次に、2枚目の画像について、同様に、その特徴点67をHarrisオペレータによって認識し、抽出された特徴点をサブピクセル化する。そして、図6(a)中に矢印で示すように、1枚目と2枚目の画像間で、特徴点66、67間の距離(画像間の位置ずれ量)を計測する。ここでは、200点の特徴点のそれぞれで特徴点間の距離が求められるが、対応がとれない点がある場合には、得られる距離データは200点よりも少なくなる。
【0066】
そして、それらの特徴点間の距離データの平均値を求めることによって、1枚目の画像での撮像位置を基準位置ゼロとしたときの2枚目の画像の撮像位置を算出する。このような処理を複数の解析画像及び背景画像のそれぞれについて行うことにより、図6(b)のグラフに示すように、各画像での撮像位置、及びそれによる位置頻度分布60が求められる。なお、特徴点となるコーナー検出のアルゴリズムについては、具体的には、上記したHarris以外にも、例えばMoravec、SUSANなど、他の方法を用いても良い。
【0067】
図6(b)に示す位置頻度分布60は、図5と同様に、中心位置61に対して正規分布状の頻度分布となっている。このような位置頻度分布に対する領域分割単位の設定、及びそれによる画像のグループ分けについては、画像分類部33において、解析画像及び背景画像のそれぞれでの撮像位置の位置頻度分布を求めるとともに、解析画像の位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、背景画像の位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、領域分割単位ΔPを設定することが好ましい。このような構成によれば、撮像位置ずれの実際の発生状況に応じて領域分割単位を適切に設定して、解析画像及び背景画像を好適にN個の画像グループに分類することができる。なお、位置頻度分布の分布幅wについては、標準偏差σ、半値幅などの値を用いることができる。
【0068】
画像分類のための領域分割単位ΔPの設定について、具体的に説明する。領域分割単位の設定では、(1)平均効果によるS/N比の向上のため、各画像グループの画像数は多いことが好ましく、そのためには分割単位ΔPを広くする必要がある。一方、(2)エッジノイズ成分の除去効果の向上を考慮すると、領域分割での位置再現性が高いことが好ましく、そのためには分割単位ΔPを狭くする必要がある。したがって、領域分割単位ΔPについては、条件(1)、(2)のバランスを考慮して設定することが好ましい。
【0069】
また、例えば最終的に故障解析に用いる差分画像を、各画像グループでの画像数に基づいた重み付けを行って求めるような場合、図6(b)に示した正規分布状の位置頻度分布60において、中心の平均位置61を含む画像グループが最終的な差分画像に最も影響する。このような点を考慮すると、この平均位置61を含む画像グループのための分割範囲を適切に設定することが第1に重要になると考えられる。
【0070】
正規分布の特性から、位置頻度分布60の分布幅wとして標準偏差σを与えれば、平均位置μ(図6(b)中の位置61)からの位置ずれが±1σ以内の範囲に撮像位置が含まれる確率は68.3%、±1.5σ以内の範囲に含まれる確率は86.6%、±2σ以内の範囲に含まれる確率は95.4%となる。実際には、取得される画像数は有限であり、また、ノイズによる撮像位置の認識ずれ、認識精度不足等も発生する。このため、領域分割単位ΔPの位置範囲を±2σ程度に広く設定すると、平均位置μから±2σ離れた位置では画像が得られる頻度が減り、ノイズ成分となる可能性もある。具体的には、平均位置μでの頻度を100%とすると、位置μ±2σでの頻度は13.5%である。
【0071】
これらの正規分布の特性等を考慮し、ここでは、標準的な領域分割単位ΔPとして、位置範囲μ±1.5σを採用する。図6(b)において、左右の撮像位置62は、平均位置61から±1.5σ離れた位置を示している。この場合、平均位置61(=μ)での頻度を同様に100%とすると、位置62(=μ±1.5σ)での頻度は32.5%である。また、図6(b)において、平均位置μからの位置ずれが±1.5σ以内の範囲63に含まれる画像数は、全体の画像数に対して86.6%である。
【0072】
図7は、解析画像及び背景画像のそれぞれについての位置頻度分布を参照して領域分割単位を設定する場合の設定方法について示す図である。ここで、図5に関して上述したように、解析画像と背景画像とでは、通常、その位置頻度分布は、互いに中心がずれた正規分布状の頻度分布となる。この場合、領域分割単位ΔPの設定においては、それらの2つの位置頻度分布をともに考慮することが好ましい。そのような設定方法としては、具体的には、解析画像についての領域単位と、背景画像についての領域単位とを求め、それらの領域単位の共通範囲(領域単位が重複する範囲、領域単位の積集合)を領域分割単位ΔPとして設定する方法を用いることができる。
【0073】
図7(a)に示す例では、解析画像の位置頻度分布70と、背景画像の位置頻度分布75とで、その分布幅w1、w2に対応する標準偏差σ1、σ2は、同一の値σとなっている。また、その平均位置μ1、μ2は、位置ずれ量=σで異なる位置となっている。
【0074】
また、図7(a)のグラフにおいて、解析画像についての領域単位71は、位置頻度分布70の平均位置μ1から±1.5σの範囲を示している。同様に、背景画像についての領域単位76は、位置頻度分布75の平均位置μ2から±1.5σの範囲を示している。これらの領域単位71、76に対して、領域分割単位ΔPは、その共通範囲72によって設定される。また、このとき、領域分割単位ΔPによって分割される領域の中心領域となる範囲73に含まれる画像数は、全体の画像数に対して52.4%である。
【0075】
図7(b)に示す例では、解析画像の位置頻度分布80と、背景画像の位置頻度分布85とで、その分布幅w1、w2に対応する標準偏差σ1、σ2が異なり、σ2=1.2×σ1となっている。また、その平均位置μ1、μ2は、位置ずれ量=σ1で異なる位置となっている。
【0076】
また、図7(b)のグラフにおいて、解析画像についての領域単位81は、位置頻度分布80の平均位置μ1から±1.5σ1の範囲を示している。同様に、背景画像についての領域単位86は、位置頻度分布85の平均位置μ2から±1.5σ2の範囲を示している。これらの領域単位81、86に対して、領域分割単位ΔPは、その共通範囲82によって設定される。また、このとき、領域分割単位ΔPによって分割される領域の中心領域となる範囲83に含まれる画像数は、全体の画像数に対して56.9%である。
【0077】
また、上記した領域分割単位の設定例では、位置範囲μ±1.5σを標準的な領域分割単位ΔPとして設定しているが、この標準偏差σ(一般には分布幅w)に対して分割単位を決定する係数1.5については、自動または操作者により手動で変更が可能な調整係数αとしてもよい。この場合、具体的には、画像分類部33において、領域分割単位ΔPを調整するための調整係数αを設定するとともに、解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を領域分割単位ΔPとして設定する構成を用いることができる。また、領域分割単位ΔPの設定方法については、このような構成に限らず、様々な構成を用いて良い。
【0078】
さらに、調整係数αの具体的な数値設定については、解析画像の位置頻度分布での分布幅w1と、背景画像の位置頻度分布での分布幅w2とを、標準偏差σ1、σ2によって求めるとともに、調整係数αを、上記したα=1.5を中心値として、条件1≦α≦2を満たす範囲内で可変に設定することが好ましい。標準偏差σ1、σ2に対する調整係数αの数値範囲を上記のように設定することにより、撮像位置の変動による位置頻度分布に対して、領域分割単位ΔPを適切に設定することができる。また、調整係数αの設定、変更においては、上述したS/N比を向上する条件(1)と、エッジノイズ成分の除去効果を向上する条件(2)とのバランスを考慮することが好ましい。
【0079】
また、領域分割単位ΔPの設定において調整係数αを用いる構成では、具体的な故障解析条件等に応じて、画像分類部33において調整係数αを自動で設定する構成を用いることができる。あるいは、操作者によって入力装置36を介して入力された係数値に基づいて、調整係数αを手動で設定する構成を用いても良い。このような手動設定の構成では、撮像位置ずれの実際の発生状況、及び半導体デバイスの具体的な解析条件等を考慮した操作者の判断に基づいて、領域分割単位ΔPを好適に設定することができる。
【0080】
図8は、調整係数αの設定に関して、表示装置37に表示される操作画面の一例を示す図である。この操作画面40には、その上方部分において、画像表示領域41と、α値設定領域42と、重畳率設定領域43とが設けられている。画像表示領域41は、半導体デバイスSについて取得された解析画像、背景画像、差分画像等の画像を表示する際に用いられる。また、画像表示領域41においては、必要があれば、本装置1Aにおいて取得される発熱解析画像に加えて、半導体デバイスSの通常のパターン画像、あるいは半導体デバイスSの設計情報を含むレイアウト画像等をも表示する構成としても良い。
【0081】
α値設定領域42は、領域分割単位ΔPを設定する際に用いられる調整係数αの手動での設定、変更に用いられる。図8に示す例では、設定領域42には、1.5を標準値として1.0≦α≦2.0の範囲で調整係数αの値を設定するための設定つまみが設けられている。また、重畳率設定領域43は、画像表示領域41において、発熱解析画像に対して通常のパターン画像、及びレイアウト画像を重畳して表示する際に用いられる重畳率の設定、変更に用いられる。図8に示す例では、設定領域43には、パターン画像、レイアウト画像の重畳率を設定するための2つの設定つまみが設けられている。また、これらの設定領域42、43では、それぞれ設定数値の手動入力も可能な構成となっている。
【0082】
また、操作画面40の下方部分には、さらに、バイアス設定領域44と、画像取得数設定領域45と、ON/OFF回数設定領域46とが設けられている。バイアス設定領域44は、電圧印加部14の電源から半導体デバイスSへと供給されるバイアス電圧、バイアス電流の値を設定する際に用いられる。また、画像取得数設定領域45は、電圧印加状態(電源ON)で取得される解析画像の画像数、及び電圧未印加状態(電源OFF)で取得される背景画像の画像数を設定する際に用いられる。また、ON/OFF回数設定領域46は、電源ON状態での複数の解析画像の取得と、電源OFF状態での複数の背景画像の取得とによる画像取得動作を何回行うかを設定する際に用いられる。
【0083】
上記実施形態による半導体故障解析装置1A、及び故障解析方法を用いて取得される発熱解析画像について、その具体例とともに説明する。図9は、解析対象となる半導体デバイスSの通常のパターン画像を示す図である。このようなパターン画像は、例えば撮像装置18、または撮像装置18とは別に設けられた撮像系を用いて取得される。ここでは、このような回路パターンの半導体デバイスSに対し、電圧印加部14により電圧100mV、電流20mAでバイアスを印加して、その発熱像を取得する。
【0084】
図10〜図12は、それぞれ、解析画像と背景画像との差分画像(発熱解析画像)の例を示す図である。なお、以下の図10〜図12に示す画像では、いずれも、スムージング処理を行った画像を示している。
【0085】
図10(a)は、解析画像及び背景画像の撮像位置による分類を行わない従来の方法で生成された差分画像を示している。この差分画像と、図9に示したパターン画像とを比較すると、従来法による差分画像では、解析画像と背景画像との間での撮像位置ずれの影響により、半導体デバイスSのパターンエッジによるエッジノイズ成分が発生していることがわかる。
【0086】
また、このときの解析画像での平均位置μ1、標準偏差σ1、及び背景画像での平均位置μ2、標準偏差σ2をX軸方向、Y軸方向についてそれぞれ求めると、
平均位置:μ1X=0.025、μ1Y=0.010
標準偏差:σ1X=0.040、σ1Y=0.029
平均位置:μ2X=0.026、μ2Y=0.021
標準偏差:σ2X=0.025、σ2Y=0.018
であった。なお、上記の平均位置及び標準偏差の各数値は、導光光学系16の対物レンズとして4倍対物レンズを用いて画像を取得した際の画素ずれ量である。例えば、解析画像と背景画像との間でのY軸方向の画素ずれ量は、μ2Y−μ1Y=0.011画素であるが、これは位置ずれ量にすると約0.08μmに相当する。
【0087】
図10(b)は、解析画像及び背景画像を撮像位置によって分類する上記実施形態の方法で生成された差分画像を示している。この差分画像は、上述した具体的な方法において調整係数をα=1とし、1σによって領域分割単位ΔPを設定するとともに、領域分割数をN=9とした条件で求めたものである。このように、解析画像及び背景画像を画像グループに分類する方法を用いて得られた差分画像では、撮像位置ずれの影響が低減され、従来法の差分画像に発生していたエッジノイズ成分が除去されて、半導体デバイスSの故障解析に用いられる発熱像が明瞭に確認できることがわかる。
【0088】
また、このようなエッジノイズ成分の除去効果は、領域分割単位ΔPを変えることで変化する。図11(a)は、調整係数をα=1.5とするとともに、領域分割数をN=5とした条件で求めた差分画像を示している。また、図11(b)は、調整係数をα=2とするとともに、領域分割数をN=5とした条件で求めた差分画像を示している。これらの差分画像では、調整係数αの値を大きくして、領域分割単位ΔPを広くするほど、エッジノイズ成分の除去効果が減少している。ただし、上述したように、逆に領域分割単位ΔPを狭くするとS/N比が悪くなるため、領域分割単位ΔPの設定においては、それらの条件のバランスを考慮する必要がある。
【0089】
また、解析画像及び背景画像を分類した画像グループの取扱いについては、N個の画像グループの全てを差分画像生成に用いる構成、及びN個の画像グループのうちで画像数が多い一部(1または複数)の画像グループを選択して差分画像生成に用いる構成がある。一般には、平均効果によるS/N比の向上のためには、全ての画像グループを用いる方法が有利である。一方、エッジノイズ成分の除去効果の向上のためには、一部の画像グループを選択して用いる方法が有利である。したがって、これらの方法のいずれを用いるかについても、それらの条件のバランスを考慮する必要がある。
【0090】
複数の解析画像、背景画像をN個の画像グループに分類した場合、画像グループに含まれる画像数は、平均位置μが含まれる画像グループが最も多く、平均位置μから離れるにしたがって画像数は減少する(図5〜図7参照)。この場合、平均位置から離れた位置の画像グループでは、画像数が少ないために位置の偏りが発生しやすく、差分をとったときにエッジノイズ成分が発生しやすい。このため、得られている画像数、S/N比、具体的な撮像条件等によっては、全てではなく一部の画像グループを選択して用いる構成の方が良い結果が得られる場合がある。
【0091】
図12(a)は、調整係数をα=1.5、領域分割数をN=5に設定するとともに、5個の画像グループの全てを用いて求めた差分画像を示している。また、図12(b)は、同じく調整係数をα=1.5、領域分割数をN=5に設定するとともに、平均位置を含む1個の画像グループのみを用いて求めた差分画像を示している。これらの差分画像では、平均位置を含む画像グループのみを用いた差分画像の方が、エッジノイズ成分の除去効果が向上している。
【0092】
本発明による半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、半導体デバイスSの画像取得に用いられるステージ10、電圧印加部14、導光光学系16、及び撮像装置18等の構成については、上記した構成以外にも、具体的には様々な構成を用いて良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、半導体デバイスの故障解析に用いられる発熱解析画像における撮像位置ずれの影響を抑制することが可能な半導体故障解析装置、故障解析方法、及び故障解析プログラムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1A…半導体故障解析装置、S…半導体デバイス、10…試料ステージ、12…ステージ駆動部、14…電圧印加部、16…導光光学系、18…撮像装置、20…制御部、21…撮像制御部、22…ステージ制御部、23…同期制御部、30…画像処理部、31…画像記憶部、32…撮像位置算出部、33…画像分類部、34…差分画像生成部、36…入力装置、37…表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析装置であって、
解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、
前記半導体デバイスの画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された画像に対して、前記半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段とを備え、
前記撮像手段は、前記半導体デバイスに前記バイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、前記バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、
前記画像処理手段は、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出手段と、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置に対して、前記撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、前記領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に前記撮像位置が属するかによって、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類手段と、
分類された前記N個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる前記解析画像と前記背景画像との差分画像を生成する差分画像生成手段と
を有することを特徴とする半導体故障解析装置。
【請求項2】
前記画像分類手段は、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置の前記位置頻度分布を求めるとともに、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、前記領域分割単位を設定することを特徴とする請求項1記載の半導体故障解析装置。
【請求項3】
前記画像分類手段は、前記領域分割単位を調整するための調整係数αを設定するとともに、前記複数の解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、前記複数の背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を前記領域分割単位として設定することを特徴とする請求項2記載の半導体故障解析装置。
【請求項4】
前記画像分類手段は、操作者によって入力された係数値に基づいて、前記調整係数αを設定することを特徴とする請求項3記載の半導体故障解析装置。
【請求項5】
前記画像分類手段は、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w2とを、それぞれ標準偏差σによって求めるとともに、前記調整係数αを、条件1≦α≦2を満たす範囲内で設定することを特徴とする請求項3または4記載の半導体故障解析装置。
【請求項6】
前記差分画像生成手段は、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の半導体故障解析装置。
【請求項7】
前記差分画像生成手段は、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の半導体故障解析装置。
【請求項8】
前記差分画像生成手段は、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の半導体故障解析装置。
【請求項9】
半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析方法であって、
解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加ステップと、
前記半導体デバイスの画像を取得する撮像ステップと、
前記撮像ステップによって取得された画像に対して、前記半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理ステップとを備え、
前記撮像ステップは、前記半導体デバイスに前記バイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、前記バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、
前記画像処理ステップは、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出ステップと、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置に対して、前記撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、前記領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に前記撮像位置が属するかによって、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類ステップと、
分類された前記N個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる前記解析画像と前記背景画像との差分画像を生成する差分画像生成ステップと
を有することを特徴とする半導体故障解析方法。
【請求項10】
前記画像分類ステップは、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置の前記位置頻度分布を求めるとともに、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、前記領域分割単位を設定することを特徴とする請求項9記載の半導体故障解析方法。
【請求項11】
前記画像分類ステップは、前記領域分割単位を調整するための調整係数αを設定するとともに、前記複数の解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、前記複数の背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を前記領域分割単位として設定することを特徴とする請求項10記載の半導体故障解析方法。
【請求項12】
前記画像分類ステップは、操作者によって入力された係数値に基づいて、前記調整係数αを設定することを特徴とする請求項11記載の半導体故障解析方法。
【請求項13】
前記画像分類ステップは、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w2とを、それぞれ標準偏差σによって求めるとともに、前記調整係数αを、条件1≦α≦2を満たす範囲内で設定することを特徴とする請求項11または12記載の半導体故障解析方法。
【請求項14】
前記差分画像生成ステップは、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載の半導体故障解析方法。
【請求項15】
前記差分画像生成ステップは、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択することを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項記載の半導体故障解析方法。
【請求項16】
前記差分画像生成ステップは、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載の半導体故障解析方法。
【請求項1】
半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析装置であって、
解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、
前記半導体デバイスの画像を取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された画像に対して、前記半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段とを備え、
前記撮像手段は、前記半導体デバイスに前記バイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、前記バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、
前記画像処理手段は、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出手段と、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置に対して、前記撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、前記領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に前記撮像位置が属するかによって、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類手段と、
分類された前記N個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる前記解析画像と前記背景画像との差分画像を生成する差分画像生成手段と
を有することを特徴とする半導体故障解析装置。
【請求項2】
前記画像分類手段は、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置の前記位置頻度分布を求めるとともに、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、前記領域分割単位を設定することを特徴とする請求項1記載の半導体故障解析装置。
【請求項3】
前記画像分類手段は、前記領域分割単位を調整するための調整係数αを設定するとともに、前記複数の解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、前記複数の背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を前記領域分割単位として設定することを特徴とする請求項2記載の半導体故障解析装置。
【請求項4】
前記画像分類手段は、操作者によって入力された係数値に基づいて、前記調整係数αを設定することを特徴とする請求項3記載の半導体故障解析装置。
【請求項5】
前記画像分類手段は、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w2とを、それぞれ標準偏差σによって求めるとともに、前記調整係数αを、条件1≦α≦2を満たす範囲内で設定することを特徴とする請求項3または4記載の半導体故障解析装置。
【請求項6】
前記差分画像生成手段は、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の半導体故障解析装置。
【請求項7】
前記差分画像生成手段は、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の半導体故障解析装置。
【請求項8】
前記差分画像生成手段は、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の半導体故障解析装置。
【請求項9】
半導体デバイスの発熱像を用いて故障解析を行う半導体故障解析方法であって、
解析対象となる半導体デバイスに対してバイアス電圧を印加する電圧印加ステップと、
前記半導体デバイスの画像を取得する撮像ステップと、
前記撮像ステップによって取得された画像に対して、前記半導体デバイスの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理ステップとを備え、
前記撮像ステップは、前記半導体デバイスに前記バイアス電圧が印加された状態での発熱像をそれぞれ含む複数の解析画像と、前記バイアス電圧が印加されていない状態での複数の背景画像とを取得するとともに、
前記画像処理ステップは、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれについて、その撮像位置を算出する撮像位置算出ステップと、
前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置に対して、前記撮像位置の位置頻度分布を参照して設定された領域分割単位を用意し、前記領域分割単位にしたがって分割されたN個の領域(Nは2以上の整数)のどの領域に前記撮像位置が属するかによって、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像をN個の画像グループに分類する画像分類ステップと、
分類された前記N個の画像グループについて個別に、故障解析に用いられる前記解析画像と前記背景画像との差分画像を生成する差分画像生成ステップと
を有することを特徴とする半導体故障解析方法。
【請求項10】
前記画像分類ステップは、前記複数の解析画像及び前記複数の背景画像のそれぞれでの前記撮像位置の前記位置頻度分布を求めるとともに、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での平均位置μ1及び分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での平均位置μ2及び分布幅w2とに基づいて、前記領域分割単位を設定することを特徴とする請求項9記載の半導体故障解析方法。
【請求項11】
前記画像分類ステップは、前記領域分割単位を調整するための調整係数αを設定するとともに、前記複数の解析画像についての領域単位μ1±α×w1と、前記複数の背景画像についての領域単位μ2±α×w2とを求め、それらの領域単位の共通範囲を前記領域分割単位として設定することを特徴とする請求項10記載の半導体故障解析方法。
【請求項12】
前記画像分類ステップは、操作者によって入力された係数値に基づいて、前記調整係数αを設定することを特徴とする請求項11記載の半導体故障解析方法。
【請求項13】
前記画像分類ステップは、前記複数の解析画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w1と、前記複数の背景画像の前記位置頻度分布での前記分布幅w2とを、それぞれ標準偏差σによって求めるとともに、前記調整係数αを、条件1≦α≦2を満たす範囲内で設定することを特徴とする請求項11または12記載の半導体故障解析方法。
【請求項14】
前記差分画像生成ステップは、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載の半導体故障解析方法。
【請求項15】
前記差分画像生成ステップは、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択することを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項記載の半導体故障解析方法。
【請求項16】
前記差分画像生成ステップは、前記N個の画像グループのそれぞれについて求められるN個の前記差分画像に対して、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいた重み付けを行うことで、故障解析に用いられる差分画像を生成する第1解析モードと、それぞれの画像グループに属する画像数に基づいて、故障解析に用いられる差分画像を選択する第2解析モードとを切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載の半導体故障解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図4】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−233768(P2011−233768A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103876(P2010−103876)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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