説明

半導体発光素子及びその製造方法

【課題】高輝度化を図ることができる半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光素子は、構造体と、第1電極層と、第2電極層と、を備える。構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する。第2電極層は、構造体の第2半導体層の側に設けられる。第2電極層は、金属部と、複数の開口部と、を有する。金属部は、第1半導体層から第2半導体層に向かう方向に沿った厚さが10nm以上、50nm以下である。開口部は、前記方向に沿って前記金属部を貫通し、円相当直径が10nm以上、5μm以下である。第1電極層は、構造体の第1半導体層の側に設けられる。第1電極層は、金属製であって、第1半導体層と接する部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、半導体層の表面に接触した電極を具備している。半導体発光素子は、この電極に電流を流すことによって発光する。ここで、照明装置などでは比較的大きな発光素子が望まれる。そこで、パッド電極から半導体層表面に沿って伸びた細線電極を追加した半導体発光素子が考えられる。また、発光表面全面に金属電極を施し、その金属電極にナノメートル(nm)スケールの超微細な開口を形成した半導体発光素子も考えられる。半導体発光素子においては、さらなる高輝度化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−231689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、高輝度化を図ることができる半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体発光素子は、構造体と、第1電極層と、第2電極層と、を備える。
構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する。
第2電極層は、構造体の第2半導体層の側に設けられる。
第2電極層は、金属部と、複数の開口部と、を有する。
金属部は、第1半導体層から第2半導体層に向かう方向に沿った厚さが10ナノメートル(nm)以上、50nm以下である。
開口部は、前記方向に沿って前記金属部を貫通し、円相当直径が10nm以上、5マイクロメートル(μm)以下である。
第1電極層は、構造体の第1半導体層の側に設けられる。
第1電極層は、金属製であって、第1半導体層と接する部分を有する。
【0006】
また、実施形態に係る半導体発光素子の製造方法は、成長用基板の上に、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体を結晶成長によって形成する工程と、前記第2半導体層の上に、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう方向に沿った厚さが10nm以上、50nm以下であって、前記第2半導体層と接合された金属層を形成する工程と、前記金属層の上にマスクパターンを形成する工程と、前記マスクパターンをマスクにして前記金属層をエッチングし、前記方向にみたときの形状の円相当直径が10nm以上、5μm以下である複数の開口部を有する電極層を形成する工程と、前記構造体から前記成長用基板を剥離した後、前記構造体の前記第1半導体層の側に、前記第1半導体層と接する部分を有する金属製の第1電極層を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】半導体発光素子を示す模式的斜視図である。
【図2】半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】半導体発光素子の特性を示す図である。
【図4】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図5】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図6】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図7】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図8】半導体発光素子の特性例を示すグラフ図である。
【図9】半導体発光素子の変形例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、以下の説明では、一例として、第1導電形をn形、第2導電形をp形とした具体例を挙げる。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的斜視図である。
第1の実施形態に係る半導体発光素子110は、構造体100、第1電極層30、第2電極層20、を備える。
【0010】
構造体100は、第1導電形の第1半導体層51と、第2導電形の第2半導体層52と、第1半導体層51と第2半導体層52との間に設けられた活性層53と、を有する。構造体100は、例えば窒化物半導体によって形成される。
【0011】
ここで、本明細書において「窒化物半導体」とは、InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)またはBInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0012】
第1半導体層51は、例えばGaNの電流拡散層511を含む。
【0013】
第2半導体層52は、電流拡散層522を含む。すなわち、例えばp形GaNによるクラッド層521上に、例えばp形GaNによる電流拡散層522が設けられている。実施形態では、便宜上、電流拡散層522は第2半導体層52に含まれるものとする。
【0014】
活性層53は、第1半導体層51と、第2半導体層52と、の間に設けられる。半導体発光素子110では、例えば、n形GaNによるクラッド層512、発光層530、及び、クラッド層521によってヘテロ構造の活性層53が構成される。
構造体100に含まれる第1半導体層51、活性層53及び第2半導体層52は、図示しない成長用基板(例えば、サファイア基板)の上で結晶成長した層である。
【0015】
第2電極層20は、構造体100の第2半導体層52の側に設けられる。具体的には、第2電極層20は、第2半導体層52の第1半導体層51とは反対側に設けられる。第2電極層20には、例えば後述するようにAu及びAg、並びに若干の不純物が添加されたAu及びAgが用いられる。
なお、実施形態では、説明の便宜上、構造体100の第2半導体層52の側を表面側または上側、構造体100の第1半導体層51の側を裏面側または下側とする。また、第1半導体層51から第2半導体層52に向かう方向に沿った積層方法をZ方向とする。
【0016】
第2電極層20は、金属部23と、複数の開口部21と、を有する。開口部21は、Z方向に沿って金属部23を貫通する。開口部21をZ方向にみたときの外形の円相当直径は、10nm以上、5μm以下である。
【0017】
ここで、円相当直径は、次の式で定義される。

円相当直径=2×(面積/π)1/2

ここで、面積は、開口部21のZ方向からみたときの面積である。
【0018】
開口部21は、必ずしも円形とは限らない。したがって、実施形態では、上記の円相当直径の定義を用いて開口部21を特定する。
【0019】
第1電極層30は、構造体100の第1半導体層51の側に設けられる。具体的には、第1電極層30は、第2半導体層51とは反対側に設けられる。第1電極層30は、金属製である。第1電極層30は、第1半導体層51の裏面側と接する部分を有し、この接する部分によって第1半導体層51と導通している。第1電極層30には、例えばAgが用いられる。第1電極層30は、例えば金属のめっきにより形成される。
【0020】
このような半導体発光素子110では、第2電極層20の形成された面が、主たる発光面として利用される。すなわち、第2電極層20と第1電極層30との間に所定の電圧を印加することで、発光層530から所定の中心波長を有する光が放出される。この光は、主として第2電極層20の主面20aから外部に放出される。
【0021】
第1の実施形態に係る半導体発光素子110では、第2電極層20に開口部21が設けられているため、例えば10nm以上5μm以下の程度の大きさの超微細な開口部21を含む第2電極層20による発光層530への電流の拡がりを保ったまま効率良く光を外部に放出できるようになる。
【0022】
また、半導体発光素子110では、第2電極層20と第1電極層30とが対向して配置され、第1電極層30として金属を用いていることから、第2電極層20で拡がり、発光層530から第1電極層30へ向かう電流の集中を抑制することができる。
また、半導体発光素子110では、第1半導体層51の裏面側に金属製の第1電極層30が設けられていることから、半導体発光素子110で発生した熱を、第1電極層30を介して効率良く放出できる。
すなわち、半導体発光素子110によれば、発光層530での発光効率の向上、第2電極層20からの放出光の輝度の向上を図ることが可能となる。
【0023】
半導体発光素子110の具体的な一例を説明する。
半導体発光素子110は、例えばGaNの電流拡散層511を備え、この電流拡散層511の上に、例えばSiがドープされたn形GaNによるクラッド層512と、InGaNによる発光層530と、p形AlGaNによるクラッド層521と、を含むヘテロ構造が形成される。
【0024】
発光層530は、例えば障壁層(GaN)および井戸層(InGaN)が交互に繰り返し設けられたMQW(Multiple Quantum Well)構成であってもよい。また、発光層530は、井戸層を挟む障壁層の組みが1組み設けられたSQW(Single Quantum Well)構成を含むものであってもよい。
【0025】
そして、この発光層530の上に、例えばp形GaNによる電流拡散層522が形成されている。さらに電流拡散層522には、炭素等のドーピングがされていてもよい。これにより、電流拡散層522の抵抗値が下がり、第2電極層20とのオーミック接続をとりやすくなる。なお、これらの半導体の層構成は一例であり、実施形態はこれに限定されない。
【0026】
電流拡散層522の上には、例えばコンタクト層が形成され、コンタクト層を介して第2電極層20が形成されていてもよい。
コンタクト層に用いられる材料は、例えば、コンタクト層に隣接する電流拡散層522の材料、及び、第2電極層20に用いられる材料に基づいて適切に選択すればよい。
【0027】
第2電極層20には、p側の電極として、例えばNi/Ag−Pd−Cuの積層膜が用いられる。第2電極層20には、この金属部23をZ方向に沿って貫通する複数の開口部21が設けられている。開口部21のそれぞれの大きさ及び配置は、規則的であっても、不規則的であってもよい。
【0028】
電流拡散層511の裏面側には、例えばAgからなるn側の第1電極層30が形成されている。第1電極層30は、第1半導体層51と接する部分を有し、この部分で第1半導体層51と導通している。第1電極層30のZ軸方向に沿った厚さは、1μm以上であることが望ましい。すなわち、構造体100は成長用基板の上に結晶成長によって形成されており、Z軸方向に沿った厚さは非常に薄い。このため、構造体100から成長用基板を剥離した後、構造体100の裏面側に形成される第1電極層30は、構造体100を補強する役目も果たす。したがって、第1電極層30の厚さを1μm以上にすることで、構造体100を十分に補強することができる。
ここで、構造体100のZ軸方向に沿った厚さは、数μm以上、20μm以下である。第1電極層30のZ方向に沿った厚さを1μm以上、500μm以下にすることが好ましく、より好ましくは、10μm以上、100μm以下である。
【0029】
実施形態では、構造体100を挟むようにして、第2電極層20と、第1電極層30と、が対向している。
そして、実施形態に係る半導体発光素子110において、発光層530から放出された光は、第2半導体層52の第2電極層20が設けられた全面から外部に放出される。半導体発光素子110は、例えば、中心波長400nm以上、650nm以下の光を放出する。
【0030】
次に、実施形態に係る半導体発光素子110の電流の流れについて説明する。
図2は、シミュレーション計算に用いた半導体発光素子を例示する模式的断面図である。
図2(a)は、実施形態に係る半導体発光素子110を例示する模式的断面図である。
半導体発光素子110では、第1電極層30が第1半導体層51の裏面側に設けられている。
図2(b)は、参考例に係る半導体発光素子190を例示する模式的断面図である。
半導体発光素子190では、第1電極層39が第1半導体層51の表面側の一部に設けられている。
なお、いずれの図においても、パッド電極202はチップの中央にあったり、端にあってもよい。
図3は、半導体発光素子の特性を例示する図である。
図3(a)は、半導体発光素子の電流−出力特性を例示している。
図3(b)は、半導体発光素子の電圧−電流特性を例示している。
【0031】
実施形態に係る半導体発光素子110では、第2電極層20に、金属部23を貫通する複数のnmスケールの開口部21を備えている。このような開口部21を有する第2電極層20は、金属で構成されるため、一般の電流拡散層を構成する半導体やITO(Indium Tin Oxide)などの酸化物透明電極と比較して、導電率が1桁から2桁以上高く、また熱伝導性も高い。このため半導体発光素子110として組み上げた際に、ITOを用いた場合に比べて順方向電圧(Vf)が低くなる。この結果、発光層530において一部だけに電流が集中する、電流集中が緩和される。よって、発光層530の全体がより均一に発光するとともに、輝度が向上する。
【0032】
実施形態に係る半導体発光素子110では、第2電極層20における開口部21の円相当直径は、10nm以上、5μm以下である。また、第2電極層20の厚さは、10nm以上、200nm以下である。
【0033】
すなわち、半導体発光素子110では、比較的大きな第2電極層20を設けることで高い放熱性を得て、半導体発光素子110の温度上昇を抑制している。また、第2電極層20に設けられた開口部21の大きさ(例えば、円相当直径)を調整することによっても、半導体発光素子110の温度上昇を抑制している。すなわち半導体発光素子110の順方向の電圧を低下させることによって直列抵抗を低下させ、発熱自体を減少させることができる。
【0034】
このような効果を実現するためには、開口部21を有する第2電極層20から第2半導体層52に対して全面に均一に電流を流すとことができるとよい。第2半導体層52に均一に電流を流すためには開口部21の大きさ、並びに、開口部21の中心間隔はある程度限定される。
【0035】
電流を流す半導体層のドーピング濃度等にも依存するが、シミュレーション等の計算で得られる電流の流れる範囲は、第2電極層20の端から約5μmまでの範囲であり、十分な導電性を有し、順方向電流の上昇が起こらないのは1μm以下である。すなわち、開口部の直径がそれ以上であると電流が流れない範囲が生じて、直列抵抗を下げることができず、順方向電圧を下げることができない。そのため、開口部21の平均開口部直径の上限は5μm以下である。
【0036】
図2(b)に表した半導体発光素子190のように、第2電極39が第1半導体層51の一部に設けられている場合、第2電極層20で拡がった電流は、第1電極層39に近い部分に集中する。すなわち、開口部21を有する第2電極層20によってパッド電極202から供給された電流は第2電極層20に沿って拡がる。この電流は、第2半導体層51、発光層530及び第1半導体層51を介して第1電極層39へ向かう。半導体発光素子190では、第1電極層39が第1半導体層51の表面側の一部に設けられているため、第1電極層39に近い部分に電流の集中が発生する(i20)。
【0037】
半導体発光素子190の第1電極層39の抵抗値は、半導体発光素子110の第1電極層30の抵抗値よりも大きい。この抵抗値の相違は、図3(b)に表したように、電圧−電流の相違として現れる。
図3(a)に表したように、半導体発光素子190の電流−出力特性では、電流が所定の値(Ipk)を超えると出力の飽和が発生している。半導体発光素子190では、第1電極層39の抵抗値が第1電極層30の抵抗値よりも大きいため、電流の増加に伴い第1電極層39の周辺の発熱が増加する。この発熱の増加によって、電流Ipkを超えると出力の低下が発生すると考えられる。
【0038】
一方、図2(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110では、第1電極層30が第1半導体層51の裏面側に形成されている。すなわち、構造体100をあいだにして、第2電極層20と第1電極層30とが対向して配置される。しかも、第1電極層30は、第1電極層39に比べて広い面積で第1半導体層51と接している。このため、第1電極層30の抵抗値は第1電極層39の抵抗値に比べて小さくなる。このようなことから、半導体発光素子110では、第2電極層20で拡がった電流が、第1電極層30に向かって均一に流れる(i10)。したがって、半導体の電流拡散層に比べ、金属であるため、電極部分の抵抗値が桁違いに低いことから、図3(b)に表したように、閾値電圧を超えると電流は直線的に上昇することが分かる。これより半導体発光素子110では、電圧−電流特性に優れている。
【0039】
図3(a)に表したように、半導体発光素子110の電流−出力特性では、電流の増加とともに出力が増加している。また、電流Ipkを超えても出力の飽和は発生しない。先に説明したように、半導体発光素子110では、第1電極層30の抵抗値が第1電極層39の抵抗値よりも小さいため、電流の増加に伴う第1電極層30の周辺の発熱が非常に少ない。しかも、発熱しても、その熱を第1電極層30から効率良く外部に放出できる。したがって、半導体発光素子110は、電流の増加に伴う熱を影響を受けにくく、電流−出力特性に優れた結果を得られると考えられる。
【0040】
発光層530から発生する光の波長より十分小さい開口部を第2電極層20に設けることによって、第2電極層20は、金属でありながら光透過型電極として機能することがある。これは、開口部に阻害されない連続した金属部位の直線距離が、この光の波長よりも十分短いことにより、第2電極層20に光が照射した際に光の電場により誘起される自由電子の運動が阻害され、該当波長の光と反応できなくなり、金属が透明となる点である。
【0041】
金属反射を記述するドルーデの理論において、対象となる物質は照射される光の波長に対して十分に大きく、均一な構造であることが仮定されている。物質にプラズマ周波数よりも低い周波数の光が照射された際、物質内の自由電子の運動について述べると、光のもつ電場により物質内の電子の分極が生じる。この分極は光の電場を打ち消す方向に誘起される。この誘起された電子の分極により、光の電場が遮蔽されることで、光は物質を透過することができず、いわゆるプラズマ反射が生じる。ここで、もし電子の分極を誘起される物質が、光の波長よりも十分に小さいとすると、電子の運動は幾何学的な構造により制限され、光の電場を遮蔽することができなくなるものと考えられる。これは、構造的には開口部の直径を、該当する光の波長よりも十分小さくすることにより実現できる。
【0042】
このため、第2電極層20における光透過率(発光層530で発生した光の外部への透過率)が、開口率(第2電極層20の面積に対する開口部の面積)を上回る効果を得るためには、円相当直径を、発光層530で発生する光の中心波長の1/2以下程度が望ましい。例えば、可視光の場合には、開口部21の円相当直径は、300nm以下がよい。
【0043】
一方、開口部21の円相当直径の下限に関しては、抵抗値の観点からは制約は無いものの、製造の容易性から10nm以上、好ましくは30nm以上あるとよい。
また、第2電極層20の金属部23の材料となる金属には、例えば、Ag、Auをベース金属とすることが好ましい。これにより、吸収損失が抑制できる。さらに、金属部23の材料となる金属には、Al、Zn、Zr、Si、Ge、Pt、Rh、Ni、Pd、Cu、Sn、C、Mg、Cr、Te、Se、Tiから選択された少なくとも1つの材料または合金であることが好ましい。これにより、オーミック性、密着性、耐熱性が向上する。金属部23の材料となる金属には、十分な導電性および熱伝導性を有しているものを用いることが望ましい。ただし、実施形態はこれに限定されず、任意の金属を用いることができる。
【0044】
なお、例えば、第2電極層20の金属部23(開口部21が設けられていない部分)の任意の2点間は、少なくともパッド電極などの電流供給源から切れ目無く連続している。これは、通電性を確保し抵抗値を低く保つためである。
なお、複数の電流供給源が設けられている場合には、各電流供給源のそれぞれに対応して第2電極層20の金属部23が連続していればよい。
【0045】
また、金属部23は、連続していることが望ましい。これにより、半導体発光素子110において、光の放出の均一性が高まる。また、第2電極層20のシート抵抗は、10Ω/□以下であることが好ましく、5Ω/□以下であることがより好ましい。シート抵抗が小さいほど、均一な発光、輝度の向上が顕著になる。また、半導体発光素子110の発熱は少なくなる。
【0046】
また、半導体層上に金属電極を形成させるためには、半導体層上に金属層を形成させる。
【0047】
例えば、青色発光素子の場合の電極形性方法は、GaN、AlGaN等の化合物半導体層へNi/Ag−Pd−Cuの積層膜を形成した後、熱処理を行うことにより、オーミック接触をさせてもよい。
【0048】
実施形態に係る半導体発光素子110においても、同様にして金属層を形成させ、さらに後述する方法によって開口部21を形成させることによって第2電極層20を形成している。ここで、第2電極層20の厚さが薄すぎるとドーパントの量が少なくなり、ドーピングが不十分となる。その結果、十分なオーミック接触が得られず、抵抗値の上昇を招く可能性がある。
【0049】
実験により調べた結果、第2電極層20の厚さは10nm以上であると、十分なオーミック接触が実現できることが分かった。さらに、第2電極層20の厚さが30nm以上であると、オーミック性がさらに向上する。一方、第2電極層20の厚さが厚いほど抵抗値は下がる。発光層530で発生した光の透過率を確保する点から、第2電極層20の厚さは、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。
【0050】
ここで、第2電極層20においては、発光層530から放出される波長の光に対する金属材料のバルク状態での反射率(バルク反射率)が70%以上である。これは、金属反射の際に反射率が低いと光が熱に変わり損失が生じるためである。第2電極層20で、素子から出られなかった光も本電極では光として反射されるため、発光層32の下部に反射層(図示せず)などを施すことで再利用可能となり、再び取り出すことができる。これにより、発光層530から放出された光が、第2電極層20を透過することになる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、半導体発光素子の製造方法である。
【0052】
第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法には、例えば以下の(A)〜(D)の方法が挙げられる。
【0053】
(A)電子線描画を利用する方法
開口部を有する第2電極層を形成させる方法のひとつは、電子線描画による方法である。この方法を利用した第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、成長用基板の上に、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、当該第1半導体層と当該第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体を結晶成長によって形成し、当該第2半導体層の上に、金属層を形成する工程(a1)と、当該金属層の上にレジスト膜を形成する工程(a2)と、当該レジスト膜に電子線を照射し、現像し、複数の第1レジスト開口部及び第2レジスト開口部を有するレジスト層を形成する工程(a3)と、当該レジスト層をマスクとして当該金属層をエッチングし、複数の開口部を有する第2電極層を形成する工程(a4)と、構造体から成長用基板を剥離した後、構造体の第1半導体層側に第1半導体層と接する部分を有する金属製の第2電極層を形成する工程(a5)と、を備える。
【0054】
そして、実施形態では、当該第2電極層を形成する工程(a4)において、当該複数の開口部のそれぞれの円相当直径を、10nm以上、5μm以下に形成する。
【0055】
具体的には、例えば以下のようにして半導体発光素子を製造する。
図4は、電子線描画を利用する方法の工程例を示す模式的断面図である。
先ず、図4(a)に表したように、サファイア基板等の成長用基板10上に第1半導体層51を形成し、第1半導体層51上に活性層53を形成し、その上に第2半導体層52を形成する。
次いで、第2半導体層52の上に金属層20Aを形成する。その後、金属層20Aと第2半導体層52とを十分にオーミック接触させるため、所定時間のアニールを行う。次に転写層としてシリコン酸化膜201Aを例えば真空蒸着する。そして、シリコン酸化膜201Aの上に電子線用のレジスト膜200Aの層を形成する。
【0056】
次いで、図4(b)に表したように、パターンジェネレータを装備した電子線露光装置で、レジスト膜200Aに、開口部21に対応したレジスト開口部211を形成する。
【0057】
次いで、レジスト開口部211が形成された電子線用のレジスト層200をマスクに、転写層のシリコン酸化膜201AをRIE(Reactive Ion Etching)処理し、レジスト層200のパターンを転写する。次に、開口部が開いたシリコン酸化層201をマスクにしてイオンミリングを行い、金属層20Aをエッチングする。これにより、レジスト開口部211に対応した金属層20Aに開口部21が形成される(図4(c))。金属層20Aは、開口部21が形成され、第2電極層20になる。金属層20Aのエッチング後、シリコン酸化層201は除去される。
【0058】
その後、図4(d)に表したように、金属層20Aの上にパッド電極202を形成する。
次に、表面である第2電極20側に、電極保護用の樹脂をコーティングし、さらに補助基板(図示せず)を貼り付ける。
【0059】
その後、サファイア基板等の成長用基板10側から、波長248nmのフッ化クリプトン(KrF)エキシマレーザ光を照射し、成長用基板10とGaNの界面にレーザ光を吸収させて、レーザリフトオフ(LLO)法により、成長用基板10からエピ基板を剥離する。裏面に残ったGaについては、塩酸処理により取り除く。
次に、剥がした裏面に銀をスパッタし、さらにメッキで銀を約50μm積層させ、第1電極層30を形成する。
そして、表面の樹脂を有機溶媒により溶解することで補助基板(図示せず)を剥離する。最後にダイシングにより素子を分離し、半導体発光素子110を完成させる。
【0060】
(B)型を利用する方法
第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の別のひとつは、型を利用するものである。その方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、成長用基板の上に、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、当該第1半導体層と当該第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体を結晶成長によって形成し、当該第2半導体層の上に、金属層を形成する工程(b1)と、当該金属層の上にレジスト膜を形成する工程(b2)と、レジスト膜に、凸部を有する型の凸部を押し付けて、当該レジスト膜に複数のレジスト凹部を有するレジスト層を形成する工程(b3)と、当該レジスト層をマスクとして当該金属層をエッチングし、レジスト凹部に対応した複数の開口部を有する第2電極層を形成する工程(b4)と、構造体から成長用基板を剥離した後、構造体の第1半導体層側に第1半導体層と接する部分を有する金属製の第1電極層を形成する工程(b5)と、を備える。
【0061】
そして、実施形態では、当該第2電極層を形成する工程(b4)において、当該複数の開口部のそれぞれの円相当直径を、10nm以上、5μm以下に形成する。
【0062】
具体的には、例えば以下のようにして半導体発光素子を得ることができる。
図5は、型を利用する方法の工程例を示す模式的断面図である。
先ず、図5(a)に表したように、サファイア基板等の成長用基板10上に第1半導体層51を形成し、第1半導体層51上に活性層53を形成し、その上に第2半導体層52を形成する。
次いで、第2半導体層52の上に金属層20Aを形成する。その後、金属層20Aと第2半導体層52とを十分にオーミック接触させるため、所定時間のアニールを行う。そして、金属層20Aの上に転写層としてシリコン酸化膜201Aを例えば真空蒸着する。さらにレジスト膜801Aの層を形成する。
【0063】
次いで、図5(b)に表したように、凸部802aを有する型802を用意する。
例えば、型802の凸部802aが設けられた転写面において、複数の凸部802aが設けられている。
型802は、例えば石英上に電子線リソグラフィにて所望の構造を形成させることにより製造することができる。なお、型802の材料及び型802の微細凹凸構造の形成手法はこれに限定されない。例えば、型802を後述するブロックコポリマー(ブロック共重合体)の自己組織化や、微粒子マスクを用いた方法により形成することも可能である。
【0064】
次に、必要に応じてレジスト膜801Aを所定温度に加熱した状態で、図5(b)に表したように、型802の凸形状がある側をレジスト膜801Aに押し付けるインプリントを行う。インプリント後、レジスト膜801Aを室温まで冷却して硬化させ、型802をリリースする。これにより、凸部802aに対応した凹部を有するレジストパターン801Bが形成される(図5(c))。以上、熱インプリントの例を示したが、UVインプリントを用いることも可能である。
【0065】
次いで、図5(d)に表したように、レジストパターン801Bを、エッチングする。これにより、レジスト層の凹部の底が除去され、金属層20Aが露出する(図5(d))。金属層20Aが露出した部分は、レジスト開口部811となる。次に、転写層のシリコン酸化膜800AをRIEでレジスト層801のパターンを転写する。
【0066】
次いで、レジスト開口部811と同じ形状の開口部が形成されたシリコン酸化層801をマスクにしてイオンミリングを行い、金属層20Aをエッチングする。これにより、レジスト開口部811に対応した金属層20Aに開口部21が形成される(図5(e))。金属層20Aは、開口部21が形成され、第2電極層20になる。金属層20Aのエッチング後、シリコン酸化層201は除去される。
【0067】
その後、図5(f)に表したように、金属層20Aの上にパッド電極202を形成する。
次に、表面である第1電極20側に、電極保護用の樹脂をコーティングし、さらに補助基板(図示せず)を貼り付ける。
【0068】
その後、サファイア基板等の成長用基板10側から、波長248nmのKrFエキシマレーザ光を照射し、成長用基板10とGaNの界面にレーザ光を吸収させて、レーザリフトオフ(LLO)法により、成長用基板10からエピ基板を剥離する。裏面に残ったGaについては、塩酸処理により取り除く。
次に、剥がした裏面に銀をスパッタし、さらにメッキで銀を約50μm積層させ、第1電極層30を形成する。
そして、表面の樹脂を有機溶媒により溶解することで補助基板(図示せず)を剥離する。最後にダイシングにより素子を分離し、半導体発光素子110を完成させる。
【0069】
なお、型を利用する方法は、上記のような熱による成形に限定されるものではなく、光の照射によってレジストを硬化させる成形や、PDMA(ポリジメチルアクリルアミド)やPDMS(ポリジメチルシロキサン)等の柔軟性を備えた型を用いる成形など、種々の技術を用いることができる。
【0070】
(C)ブロックコポリマーの自己組織化を利用する方法
第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の別のひとつは、ブロックコポリマーの自己組織化による相分離を利用するものである。その方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、成長用基板の上に、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、当該第1半導体層と当該第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体を結晶成長によって形成し、当該第2半導体層の上に、金属層を形成する工程(c1)と、当該金属層の少なくとも一部の表面にブロックコポリマーを含む組成物を塗布し、当該ブロックコポリマーを相分離させてミクロドメインパターンを生成する工程(c2)と、当該ミクロドメインパターンをマスクとして当該金属層をエッチングして、複数の開口部を有する第2電極層を形成する工程(c3)と、構造体から成長用基板を剥離した後、構造体の第1半導体層側に第1半導体層と接する部分を有する金属製の第1電極層を形成する工程(c4)と、を備える。
【0071】
そして、実施形態では、当該第2電極層を形成する工程(c3)において、複数の開口部のそれぞれの円相当直径を、10nm以上、5μm以下に形成する。
【0072】
具体的には、例えば以下のようにして半導体発光素子を得ることができる。
図6は、ブロックコポリマーの自己組織化を利用する方法の工程例を示す模式的断面図である。
先ず、図6(a)に表したように、サファイア基板等の成長用基板10上に第1半導体層51を形成し、第1半導体層51上に活性層53を形成し、その上に第2半導体層52を形成する。
次いで、第2半導体層52の上にコンタクト層14を形成し、その上に金属層20Aを形成する。その後、金属層20Aと第2半導体層52とを十分にオーミック接触させるため、所定時間のアニールを行う。そして、金属層20Aの上に、例えばシリコン酸化膜701Aを形成する。
【0073】
次に、図6(b)に表したように、シリコン酸化膜701A上に、2種類のポリマーのブロックを有するブロックコポリマーを溶剤に溶かした液をスピンコート法で塗布する。その後、プリベークして溶剤を除去し、ブロックコポリマー膜703Aを形成する。そして、その膜をアニールし、2種類のポリマーのミクロ相分離を行い、ブロックコポリマーによるミクロドメインパターン703を形成する(図6(c))。
【0074】
次いで、ミクロドメインパターン703を例えばRIE装置によってエッチングする。このとき、2種類のポリマーのエッチング速度差により、エッチング速度の速いポリマーによるホールパターンが形成される。
【0075】
次いで、ポリマーによるホールパターンをマスクにして、例えばRIE装置によりシリコン酸化膜701Aをエッチングし、酸化膜ホールパターン701Bを形成する(図6(d))。これにより、酸化膜ホールパターン701Bには、開口部21に対応した開口パターン711が形成される。
【0076】
次いで、酸化膜ホールパターン701Bをマスクにしてイオンミリングを行い、金属層20Aをエッチングする。これにより、開口パターン711に対応した金属層20Aに開口部21が形成される(図6(e))。金属層20Aは、開口部21が形成され、第2電極層20になる。金属層20Aのエッチング後、酸化膜ホールパターン701Bは除去される。
【0077】
その後、図6(f)に表したように、金属層20Aの上にパッド電極202を形成する。
次に、表面である第1電極20側に、電極保護用の樹脂をコーティングし、さらに補助基板(図示せず)を貼り付ける。
【0078】
その後、サファイア基板等の成長用基板10側から、波長248nmのKrFエキシマレーザ光を照射し、成長用基板10とGaNの界面にレーザ光を吸収させて、レーザリフトオフ(LLO)法により、成長用基板10からエピ基板を剥離する。裏面に残ったGaについては、塩酸処理により取り除く。
次に、剥がした裏面に銀をスパッタし、さらにメッキで銀を約50μm積層させ、第1電極層30を形成する。
そして、表面の樹脂を有機溶媒により溶解することで補助基板(図示せず)を剥離する。最後にダイシングにより素子を分離し、半導体発光素子110を完成させる。
【0079】
(D)微粒子のマスクを利用する方法
第2の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法の別のひとつは、シリカ等の微粒子の単分子層をマスクとして利用するものである。その方法は、次の工程を備える。
すなわち、当該製造方法は、成長用基板の上に、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、当該第1半導体層と当該第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体を結晶成長によって形成し、当該第2半導体層の上に、金属層を形成する工程(d1)と、当該金属層の上にレジスト膜を形成する工程(d2)と、当該レジスト膜の表面に微粒子の単粒子層を形成させる工程(d3)と、当該単粒子層をマスクとして当該レジスト膜をエッチングし、開口部を有するレジスト層を形成する工程(d4)と、当該レジスト層の開口部に無機物質を充填して逆パターンマスクを形成する工程(d5)と、当該逆パターンマスクをマスクとして当該金属層をエッチングし、複数の開口部を有する第2電極層を形成する工程(d6)と、構造体から成長用基板を剥離した後、構造体の第1半導体層側に第1半導体層と接する部分を有する金属製の第1電極層を形成する工程(d7)と、を備える。
【0080】
そして、実施形態では、当該第2電極層を形成する工程(d6)において、複数の開口部のそれぞれの円相当直径を、10nm以上、5μm以下に形成する。
【0081】
具体的には、例えば以下のようにして半導体発光素子を得ることができる。
図7は、微粒子のマスクを利用する方法の工程例を示す模式的断面図である。
先ず、図7(a)に表したように、成長用基板10上に第1半導体層51を形成し、第1半導体層51上に活性層53を形成し、その上に第2半導体層52を形成する。
次いで、第2半導体層52の上にコンタクト層14を形成し、その上に金属層20Aを形成する。その後、金属層20Aと第2半導体層52とを十分にオーミック接触させるため、所定時間のアニールを行う。そして、金属層20Aの上にレジスト膜601Aの層を形成する。
【0082】
次いで、例えば乳酸エチル中にシリカ微粒子を分散させた液に、モノマーを加えて分散液を作成する。その分散液を上記のレジスト膜601A上へ滴下し、スピンコートする。スピンコート後、溶媒を除去する。これにより、規則配列した微粒子602Aの単分子層を形成する。
【0083】
次いで、図7(b)に表したように、配列された微粒子602Aの層をRIE装置によってエッチングし、微粒子の粒径を縮小化させる。縮小化された微粒子602Bの間には隙間が生じる。
【0084】
次いで、図7(c)に表したように微粒子602Bの層をマスクとして、レジスト膜601Aをエッチングし、レジストピラーパターン601を形成する。
【0085】
次に、図7(d)に表したように、例えば有機SOG組成物をレジストピラーパターン601上へ滴下し、スピンコートする。スピンコート後、溶媒を完全に除去し、アニールを行う。有機SOG組成物の硬化後、レジストピラーパターン601はSOG層603Aによって埋め込まれる状態になる。SOG層603Aの表面は、平坦化されている。
【0086】
次いで、図7(e)に表したように、SOG層603Aをエッチバックして、レジストピラーパターン601を露出させる。次いで、エッチングによってレジストピラーパターン601を完全に除去する。レジストピラーパターン601を除去した後は、図7(f)に表したように、SOGのホールパターン603Bが形成される。このホールパターン603Bの開口は、開口部21に対応した開口パターン611である。
【0087】
次いで、SOGのホールパターン603Bをマスクにしてイオンミリングを用いて、金属層20Aをエッチングする。これにより、開口パターン611に対応した金属層20Aに開口部21が形成される(図7(g))。金属層20Aは、開口部21が形成され、第2電極層20になる。金属層20Aのエッチング後、SOGのホールパターン603Bは除去する。
【0088】
その後、図7(h)に表したように、金属層20Aの上にパッド電極202を形成する。
次に、表面である第1電極20側に、電極保護用の樹脂をコーティングし、さらに補助基板(図示せず)を貼り付ける。
【0089】
その後、サファイア基板等の成長用基板10側から、波長248nmのKrFエキシマレーザ光を照射し、成長用基板10とGaNの界面にレーザ光を吸収させて、レーザリフトオフ(LLO)法により、成長用基板10からエピ基板を剥離する。裏面に残ったGaについては、塩酸処理により取り除く。
次に、剥がした裏面に銀をスパッタし、さらにメッキで銀を約50μm積層させ、第1電極層30を形成する。
そして、表面の樹脂を有機溶媒により溶解することで補助基板(図示せず)を剥離する。最後にダイシングにより素子を分離し、半導体発光素子110を完成させる。
【0090】
なお、上記(A)〜(D)の各製造方法は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0091】
次に、実施例の説明を行う。なお、以下の実施例で示される材料、数値、製造条件等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
実施例1では、上記(A)の電子線描画を利用した方法に準じて半導体発光素子111を製造する。
【0093】
先ず、成長用基板10上に、GaNの電流拡散層511を形成する。次に、電流拡散層511の上に、n形GaNのクラッド層512、InGaNの発光層530、p形AlGaNのクラッド層521などを含むヘテロ構造を形成する。その上に、p形GaNを含む電流拡散層522をエピタキシャル成長させる。
【0094】
次いで、Ni(1nm)/Ag−Pd−Cu(30nm)の積層膜による金属層20Aを蒸着法により形成する。その後、窒素雰囲気下で600℃、30分間アニールを行い、金属層20Aのオーミック接触を得る。
【0095】
次いで、Ag−Pd−Cu層の上に電子線用レジスト(フジフィルム株式会社製:商品名FEP−301)の層を300nmの厚さで形成する。そして、パターンジェネレータを装備した50kVの加速電圧を持つ電子線露光装置で開口径100nm、150nmの間隔を有するホールパターン(レジスト開口部202a)を電子線用レジストに形成する。
【0096】
次いで、イオンミリング装置を用いて、加速電圧500ボルト(V)、イオン電流40ミリアンペア(mA)の条件で90秒間、Ni/Ag−Pd−Cu層のエッチングを行って開口部を形成する。これにより、開口部21を有する第2電極層20が形成される。
【0097】
その後、Ni/Ag−Pd−Cu層の上にパッド電極202を形成する。そして、電流拡散層511の下面から成長用基板10を剥離し、電流拡散層511の下面に第1電極層30を形成して半導体発光素子111を完成させる。
【0098】
(実施例2)
実施例2では、上記(C)のブロックコポリマーの自己組織化を利用した方法に準じて半導体発光素子112を製造する。
【0099】
先ず、実施例1と同様に、成長用基板10上に、GaNの電流拡散層511を形成する。次に、電流拡散層511の上に、n形GaNのクラッド層512、InGaNの発光層530、p形AlGaNのクラッド層521などを含むヘテロ構造を形成する。その上に、p形GaNを含む電流拡散層522をエピタキシャル成長させる。
【0100】
次いで、Ni(1nm)/Ag−Pd−Cu(30nm)からなる金属層20Aを蒸着法により形成する。その後、窒素雰囲気下で450℃、30分間アニールを行い、金属層20Aのオーミック接触を得る。次に、シリコン酸化膜をCVDにより50nmの厚さで形成する。
【0101】
ブロックコポリマーには、ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)のブロックコポリマー(PS−b−PMMA)が用いられる。ブロックコポリマーの分子量(Mn)は、920kg/molであり、PSとPMMAとの組成比は、80mol:20molである。なお、PS−b−PMMA以外でも、例えば特許3940546号明細書に示したブロックコポリマーを使ってミクロドメインパターンを作成してもよい。そして、PS−b−PMMAは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解され、ブロックコポリマーレジストになる。
【0102】
次に、ブロックコポリマーレジストを、シリコン酸化膜上にスピンコートし、無酸化オーブン中で230℃でアニールを行う。これにより、ピッチが直径が120nmのPMMA球状ドメインがブロックコポリマー中に形成される。PS−b−PMMAブロックコポリマーの膜厚はPMMA球状ドメインが1層になるように調整する。
【0103】
PMMAはRIEに対して耐性がない。したがって、酸素RIEによって、ブロックコポリマーレジストは選択的に削られる。これにより、PMMAドメインの部分を除去する。そして、メッシュ状に残ったPSをマスクにしてCFとArとの混合ガスを用いてRIEしたのち、酸素でアッシングする。これによって、開口部21に対応した開口パターン711を有する酸化膜マスク(酸化膜ホールパターン701B)が形成される。
【0104】
次いで、酸化膜マスクを介して、Ag−Pd−Cu層をアルゴンでミリングを行う。これにより、複数の開口部21を備えた金属製の光透過性薄膜電極(第2電極層20)が形成される。
【0105】
Ni/Ag−Pd−Cu層のエッチング後、酸化膜マスクを除去する。その後、Ni/Ag−Pd−Cu層の上にパッド電極202を形成する。そして、電流拡散層511の下面から成長用基板10を剥離し、電流拡散層511の下面に第1電極層30を形成して半導体発光素子112を完成させる。
【0106】
(参考例)
比較のため、第2半導体層52上に円形のパッド電極のみを形成した半導体発光素子191を形成する(参考例1)。
また、図2(b)に例示した半導体発光素子190のように、開口部21を有する第2電極層20を形成し、第1電極を構造体100の第1半導体層の一部に設けた図2(b)のような半導体発光素子192も作成する(参考例2)。
【0107】
半導体発光素子111、112、191及び192は、ダイシングによってそれぞれ300μm角になっている。半導体発光素子111、112、191及び192の特性の比較は、ベアチップ状態で行う。
【0108】
図8は、実施例及び比較例の特性の一例を示すグラフ図である。
同図において、横軸は電流、縦軸は出力である。
【0109】
開口部21を有していない半導体発光素子191に対して、開口部21を有している半導体発光素子111、112及び192では、低電圧の領域において、同じ電流値に対する電圧値が低下することが分かる。
【0110】
しかし、電流が増加して、電流値Iを超えると、半導体発光素子191では出力の低下が発生している。これにより、輝度が大きく低下することになる。
【0111】
これに対し、半導体発光素子111、112及び192では、電流値Iを超えて電流値Iに至っても、出力の低下は発生していない。
これは、構造体100の上側に第2電極層20が設けられていることで、半導体発光素子111、112及び192の電流拡散の均一性と放熱性とが向上したことによるものである。
【0112】
ここで、半導体発光素子111、112及び192のなかで、半導体発光素子192は、電流値がI3よりも大きい高電流領域での出力低下がみられる。これは、電流値の増加にともない、第1電極層39の近傍に電流の集中が発生し、この電流集中に伴う熱の影響によって出力の低下が発生していると考えられる。
【0113】
これに対し、実施例1及び2の半導体発光素子111及び112では、低電流領域において半導体発光素子191の出力と同程度の出力を保っている。
さらに、高電流領域でも出力の低下は発生していない。
【0114】
以上のことから、半導体発光素子111及び112では、低電流領域から高電流領域まで、非常に良好な発光特性を示すことが分かった。なお、このような発光特性は、1mm角のような大きなチップ構造、すなわち第2電極層20の外形面積が1mm以上の場合であって、大電流を流した場合に有利である。
第2電極層20の面積にも依存するが、一般に100mA以上の電流量において、半導体発光素子111及び112による効果が顕著となる。
【0115】
(変形例)
図9は、変形例に係る半導体発光素子を例示する模式的断面図である。
本変形例に係る半導体発光素子120においては、構造体100の第1半導体層51の側に支持基板が設けられている。支持基板には、Z軸方向に貫通する貫通孔10hが設けられている。そして、第1電極層30は、この貫通孔10hを介して第1半導体層51と接している。ここで、支持基板10Sは、成長用基板10であってもよい。
本変形例に係る半導体発光素子120においては、構造体100の材料として窒化物半導体が用いられている。
【0116】
すなわち、半導体発光素子120は、支持基板10Sとして成長用基板10(例えば、サファイア基板)を用いる。半導体発光素子120は、成長用基板10の上に、例えばGaNの電流拡散層511、Siがドープされたn形GaNのクラッド層512、InGaN/GaNのMQW(Multi Quantum Well)構造を有する発光層530、Mgがドープされたp形Al0.2Ga0.8Nのクラッド層521、Mgがドープされたp形GaNの電流拡散層522が、例えばエピタキシャル成長によって形成されている。
【0117】
電流拡散層522の上には、開口部21を有する第2電極層20が設けられている。また、支持基板10Sの貫通孔10hは支持基板10Sの下面側から電流拡散層511まで達している。第1電極層30は、支持基板10Sの下面側からこの貫通孔10hにかけて形成され、貫通孔10hの部分で電流拡散層511と接している。
【0118】
本変形例に係る半導体発光素子120においても、半導体発光素子110と同様に、第2電極層20による発光層530への電流の拡がりを保ったまま、効率良く光を外部に放出することができるようになる。
【0119】
なお、上記に実施形態では、構造体100として窒化物半導体を用いた例を示したが、窒化物半導体以外の半導体を用いてもよい。例えば、電流拡散層511としてn形GaAs、クラッド層512としてn形InAlPを用い、発光層3としてInGaPを用い、クラッド層521としてp形InAlP、電流拡散層522としてp形InGaAlPを用いてもよい。
また、第1の導電形をn形、第2の導電形をp形として説明したが、第1の導電形をp形、第2の導電形をn形としても実施可能である。
【0120】
以上説明したように、実施形態に係る半導体発光素子およびその製造方法によれば、半導体層への均一な電流の拡がりを保ったまま、光の放出効率(光取り出し効率)を向上することができ、高輝度化を図ることが可能となる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
10…成長用基板、20…第2電極層、21…開口部、23…金属部、30…第1電極層、51…第1半導体層、52…第2半導体層、53…発光層、100…構造体、110…半導体発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体と、
前記構造体の前記第2半導体層の側に設けられた第2電極層であって、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう方向に沿った厚さが10ナノメートル以上、50ナノメートル以下である金属部と、前記方向に沿って前記金属部を貫通し、前記方向にみたときの外形の円相当直径が10ナノメートル以上、5マイクロメートル以下である複数の開口部と、を有する第2電極層と、
前記構造体の前記第1半導体層の側に設けられ、前記第1半導体層と接する部分を有する金属製の第1電極層と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1半導体層、前記第2半導体層及び前記発光層は、窒化物半導体を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1電極層の前記方向に沿った厚さは1マイクロメートル以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1電極層は、めっきによって形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記構造体の前記第1半導体層の側に設けられ、前記方向に沿った貫通孔を有する支持基板をさらに備え、
前記第1電極層は、前記貫通孔を介して前記第1半導体層と接することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
成長用基板の上に、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に設けられた発光層と、を有する構造体を結晶成長によって形成する工程と、
前記第2半導体層の上に、前記第1半導体層から前記第2半導体層に向かう方向に沿った厚さが10ナノメートル以上、50ナノメートル以下の金属層を形成する工程と、
前記金属層の上にマスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンをマスクにして前記金属層をエッチングし、前記方向にみたときの形状の円相当直径が10ナノメートル以上、5マイクロメートル以下である複数の開口部を有する電極層を形成する工程と、
前記構造体から前記成長用基板を剥離した後、前記構造体の前記第1半導体層の側に、前記第1半導体層と接する部分を有する金属製の第1電極層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記マスクパターンを形成する工程では、
前記金属層の上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に凸部を有する型の前記凸部を押し付けて、前記レジスト膜に複数のレジスト凹部を有するレジストパターンを形成することを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記マスクパターンを形成する工程では、
前記金属層の上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に電子線または光を照射したのちに現像し、前記レジスト膜に複数のレジスト開口部が設けられたレジストパターンを形成することを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記マスクパターンを形成する工程では、
前記金属層の上にブロックコポリマー膜を形成し、前記ブロックコポリマー膜をミクロ相分離させ、ブロックコポリマー膜の1相を除去することにより、複数の開口部を作成し、前記開口部が得られたブロックコポリマー膜をマスクに用いることを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記マスクパターンを形成する工程では、
前記金属層の上に単層の微粒子を形成し、前記単層の微粒子を樹脂で固定化したのち、微粒子を除去することで樹脂膜に複数の開口部を作成し、前記開口部が樹脂膜をマスクに用いることを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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