説明

半導体発光素子

【課題】高効率で低動作電圧の半導体発光素子を提供する。
【解決手段】n形半導体層、p形半導体層、発光部、p側電極を備えた半導体発光素子において、発光部はn形半導体層とp形半導体層との間に設けられ、複数の障壁層と複数の障壁層の間に設けられた井戸層とを含む。p側電極はp形半導体層に接する。p形半導体層は第1〜第4p形層を含む。第1p形層51はp側電極に接し第1濃度でp形不純物を含む。第2p形層52は第1p形層と発光部との間において発光部に接し、Alを含み第1濃度よりも低い第2濃度でp形不純物を含む。第3p形層53は第1p形層51と第2p形層52との間に設けられ、第2濃度よりも低い第3濃度でp形不純物を含む。第4p形層54は第2p形層52と第3p形層53との間に設けられ、p形不純物の濃度はn形半導体層からp形半導体層への方向に沿って第2濃度から第3濃度に漸減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を応用して、例えば、紫外、青色及び緑色の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、並びに、青紫色、青色及び緑色のレーザダイオード(LD:Laser Diode)などの半導体発光素子が開発されている。
【0003】
半導体発光素子の高効率化のためには、半導体層の結晶性を高め、非発光再結合中心を減らし、内部量子効率を高めることが重要である。また、半導体層におけるp形不純物の活性化率は低い。このため、正孔の密度が低くなり易い。正孔の注入効率を向上することが求められている。また、半導体発光素子において動作電圧の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3314666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、高効率で低動作電圧の半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、n形半導体層と、p形半導体層と、発光部と、p側電極と、を備えた半導体発光素子が提供される。前記発光部は、前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む。前記p側電極は、前記p形半導体層に接する。前記p形半導体層は、第1p形層と、第2p形層と、第3p形層と、第4p形層と、を含む。前記第1p形層は、前記p側電極に接し、第1濃度でp形不純物を含む。前記第2p形層は、前記第1p形層と前記発光部との間において前記発光部に接し、Alを含み、前記第1濃度よりも低い第2濃度でp形不純物を含む。前記第3p形層は、前記第1p形層と前記第2p形層との間に設けられ、前記第2濃度よりも低い第3濃度でp形不純物を含む。前記第4p形層は、前記第2p形層と前記第3p形層との間に設けられる。前記第4p形層におけるp形不純物の濃度は、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう第1方向に沿って、前記第2濃度から前記第3濃度に漸減する。前記第2p形層には、AlGaN層が用いられ、前記第1p形層、前記第3p形層及び前記第4p形層には、GaN層が用いられる。前記第1p形層の厚さは、前記第3p形層の厚さよりも薄く、前記第4p形層の厚さよりも薄く、前記第2p形層の厚さは、前記第3p形層の厚さよりも薄く、前記第4p形層の厚さよりも薄い。前記第3p形層の厚さは、10ナノメートル以上である。前記第3濃度は、1×1019cm−3以上2.5×1019cm−3未満である。前記第3濃度は、前記第3濃度の変動が前記第3濃度の平均のプラスマイナス20%以内であるように、前記第3p形層におけるp形不純物濃度は一定である。前記第3濃度は、前記p形半導体層におけるp形不純物の最も低い濃度である。前記第3p形層の厚さと前記第4p形層の厚さとの差は、前記第3p形層の厚さと前記第1p形層の厚さとの差よりも小さく、前記第3p形層の厚さと前記第2p形層の厚さとの差よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る半導体発光素子を示す模式図である。
【図2】実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図4】実施形態に係る半導体発光素子の一部を示す模式的断面図である。
【図5】実施形態に係る半導体発光素子の構成を示すグラフ図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図7】図7(a)〜図7(c)は、参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、参考例の半導体発光素子を示す模式図である。
【図9】半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(実施の形態)
図1は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
図2は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図3は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。 図4は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。 まず、図2を参照しつつ、実施形態に係る半導体発光素子の構成の概要について説明する。
【0010】
図2に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110は、n形半導体層20と、p形半導体層50と、発光部40と、p側電極80と、を備える。
発光部40は、n形半導体層20とp形半導体層50との間に設けられる。発光部40は、複数の障壁層と、複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む。発光部40の構成の例については、後述する。p側電極80は、p形半導体層50に接する。
【0011】
ここで、n形半導体層20からp形半導体層50に向かう方向を+Z方向(第1方向)とする。
【0012】
p形半導体層50は、第1p形層51と、第2p形層52と、第3p形層53と、第4p形層54と、を含む。
【0013】
第1p形層51は、p側電極80に接する。第2p形層52は、第1p形層51と発光部40との間において発光部40に接する。第3p形層53は、第1p形層51と第2p形層52との間に設けられる。第4p形層54は、第2p形層52と第3p形層53との間に設けられる。
【0014】
第2p形層52は、Alを含む。第2p形層52には、例えばAlGaN層が用いられる。第2p形層52は、例えば、電子オーバーフロー抑制層(電子オーバーフロー防止層)として機能することができる。第1p形層51は、p側電極80とのコンタクト層として機能する。第1p形層51、第3p形層53及び第4p形層54には、例えばGaN層が用いられる。
【0015】
第1p形層51、第2p形層52、第3p形層53及び第4p形層54は、p形不純物を含む。p形不純物には、例えばMg(マグネシウム)が用いられる。実施形態は、これに限らず、p形不純物として、他の元素を用いても良い。すなわち、p形不純物には、Mg、Zn及びCの少なくともいずれかを用いることができる。
【0016】
n形半導体層20は、例えば、n形ガイド層22と、n形コンタクト層21と、を含むことができる。n形ガイド層22は、n形コンタクト層21と発光部40との間に設けられる。n形ガイド層22には、例えばGaN層が用いられる。n形コンタクト層21には、n形不純物を含むGaN層が用いられる。n形不純物として、例えばSi(シリコン)が用いられる。実施形態は、これに限らず、n形不純物として、他の元素を用いても良い。すなわち、n形不純物には、Si、Ge、Te及びSnの少なくともいずれかを用いることができる。
【0017】
なお、例えば、n形半導体層20と発光部40との間に多層積層体(図示せず)をさらに設けても良い。多層積層体は、+Z方向に沿って交互に積層された複数の厚膜層と複数の薄膜層とを含む。薄膜層は、厚膜層の厚さよりも薄い厚さを有する。薄膜層は、厚膜層の組成とは異なる組成を有する。多層積層体は、例えば超格子構造を有する。多層積層体は必要に応じて設けられ、場合によっては省略できる。
【0018】
このように、半導体発光素子110においては、n形半導体層20、発光部40及びp形半導体層50を含む積層構造体10sが設けられている。この例では、積層構造体10sの第1主面10aの側の一部が選択的に除去されている。これにより、第1主面10aの側にn形半導体層20(具体的にはn形コンタクト層21)の一部が露出している。この露出している部分にn側電極70が設けられている。n側電極70は、n形半導体層20に接する。実施形態はこれに限らず、n側電極70は、n形半導体層20の第2主面10bの側に設けられても良い。第2主面10bは、積層構造体10sの第1主面10aとは反対側の面である。n側電極70としては、例えば、チタン−白金−金(Ti/Pt/Au)の複合膜が用いられる。Ti膜の厚さは、例えば約0.05μm(マイクロメートル)である。Pt膜の厚さは、例えば約0.05μmである。Au膜の厚さは、例えば約1.0μmである。
【0019】
p側電極80には、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)などが用いられる。すなわち、p側電極80は、金属酸化物を含み、発光部40から放出される光に対して透光性を有することができる。
また、p側電極80には、ニッケル−金(Ni/Au)などの複合膜を用いることができる。
【0020】
半導体発光素子110は、さらに、基板10と、バッファ層11と、を備えている。基板10及びバッファ層11は、必要に応じて設けられ、省略しても良い。
【0021】
基板10には、例えばサファイア、GaN、SiC、Si及びGaAsなどが用いられる。基板10の上にバッファ層11が形成される。バッファ層11には、例えばGaN層が用いられる。バッファ層11の上に、n形半導体層20、発光部40及びp形半導体層50が順次形成される。バッファ層11の上に積層構造体10sを形成した後に、基板10を除去しても良い。
【0022】
図3は、発光部40の構成の例を示している。
図3に表したように、発光部40は、複数の障壁層BLと、複数の障壁層BLの間に設けられた井戸層WLと、を含む。
【0023】
この例では、井戸層WLは4つである。ただし、実施形態はこれに限らない。井戸層WLの数は2以上であり、任意である。この例では、井戸層WLが複数設けられている。すなわち、本具体例での発光部40は、多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有している。
【0024】
複数の井戸層WLは、第1井戸層WL1〜第n井戸層WLnを含む。ここで、「n」は2以上の整数である。例えば、第(i+1)井戸層WL(i+1)は、第i井戸層WLiとp形半導体層50との間に設けられる。ここで、「i」は1以上の整数である。
【0025】
複数の障壁層BLは、第1障壁層BL1〜第n障壁層BLnを含む。例えば、第(i+1)障壁層BL(i+1)は、第i障壁層BLiとp形半導体層50との間に設けられる。
【0026】
第i井戸層WLiは、第i障壁層BLiと第(i+1)障壁層BL(i+1)との間に設けられるものとする。さらに、複数の障壁層BLは、第(n+1)障壁層BL(n+1)を有している。第(n+1)障壁層BL(n+1)は、例えばp側障壁層BLPである。
【0027】
図4は、本実施形態に係る別の半導体発光素子111における発光部40の構成を例示している。半導体発光素子111における発光部40以外の構成は、図2に例示した半導体発光素子110の構成と同様なので説明を省略する。
【0028】
図4に表したように、半導体発光素子111においては、発光部40は、2つの障壁層BLと1つの井戸層WLとを含む。このように、半導体発光素子111における発光部40は、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造を有することができる。
このように、実施形態においては、MQW構造またはSQW構造が採用される。
【0029】
以下では、MQW構造を有する半導体発光素子110に関して説明する。ただし、以下の説明は、SQW構造を有する半導体発光素子111にも適用される。
【0030】
n形半導体層20、p形半導体層50及び発光部40には、窒化物半導体が用いられる。すなわち、n形半導体層20、p形半導体層50及び発光部40は、窒化物半導体を含む。
【0031】
井戸層WLはInGaNを含み、障壁層BLはGaNを含むことができる。障壁層BLのバンドギャップエネルギーは、井戸層WLのバンドギャップエネルギーよりも大きい。
【0032】
障壁層BLにはInがドープされなくても良い。すなわち、障壁層BLはInを実質的に含まない。井戸層WLのIII族元素中におけるInの組成比は、障壁層BLのIII族元素中におけるInの組成比よりも高い。すなわち、障壁層BLがInを含む場合においても、障壁層BLのInの組成比は、井戸層WLのInの組成比よりも低い。
【0033】
井戸層WLのIII族元素中におけるInの組成比は、例えば、0.05以上0.3以下である。
【0034】
また、発光部40から放出される光のピーク波長は、380ナノメートル(nm)以上550nm以下である。
【0035】
図1は、p形半導体層50におけるp形不純物濃度を例示するグラフ図である。
図1において横軸は、+Z方向に沿った位置Pzである。縦軸は、p形不純物濃度C(p)である。縦軸は、例えばp形不純物濃度C(p)の対数である。
【0036】
図1に表したように、第1p形層51は、第1濃度C1でp形不純物を含む。
第2p形層52は、第1濃度C1よりも低い第2濃度C2でp形不純物を含む。
第3p形層53は、第2濃度C2よりも低い第3濃度C3でp形不純物を含む。
第4p形層54におけるp形不純物濃度C(p)は、+Z方向(n形半導体層20からp形半導体層50に向かう方向)に沿って、第2濃度C2から第3濃度C3に漸減する。
【0037】
すなわち、p形半導体層50におけるp形不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って、第2p形層52の第2濃度C2から、第4p形層54において漸減し、第3p形層53において最も低い第3濃度C3となり、第1p形層51で最も高い第1濃度C1になる。
これにより、高効率で低動作電圧の半導体発光素子が提供される。
【0038】
なお、第4p形層54におけるp形不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って直線的に変化することができる。また、第4p形層54におけるp形不純物濃度C(p)は、曲線的に変化しても良い。第4p形層54におけるp形不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って、複数の段階で段階的に変化しても良い。
【0039】
上記において、p形不純物は、例えばMgである。すなわち、第1濃度C1は、第1p形層51におけるMgの濃度である。第2濃度C2は、第2p形層52におけるMgの濃度である。第3濃度C3は、第3p形層53におけるMgの濃度である。第4p形層54におけるp形不純物濃度C(p)は、第4p形層54におけるMg濃度である。
【0040】
すなわち、例えば、第1p形層51は、第1濃度C1でMgを含む。第2p形層52は、第2濃度C2でMgを含む。第3p形層53は、第3濃度C3でMgを含む。第4p形層54におけるMg濃度は、+Z方向に沿って、第2濃度C2から第3濃度C3に漸減する。
【0041】
第1濃度C1は、例えば、2×1020cm−3以上である。第2濃度C2は、例えば、2.5×1019cm−3以上2×1020cm−3未満である。第3濃度C3は、例えば、1×1019cm−3以上2.5×1019cm−3未満である。
例えば、第3濃度C3は、第2濃度C2の0.05倍以上、0.8倍以下である。
【0042】
上記において、第3p形層53は、p形不純物濃度C(p)が実質的に一定の層である。第3p形層53におけるp形不純物濃度C(p)の変動は、例えば第3濃度C3の平均値のプラスマイナス20%以内である。
【0043】
なお、p形半導体層50の各層に含まれるp形不純物の濃度は、例えば、二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)法などにより測定することができる。
【0044】
以下、半導体発光素子110aについて説明する。半導体発光素子110aは、半導体発光素子110の具体例の1つである。半導体発光素子110aは、図2に例示した構成を有する。半導体発光素子110aは、以下のようにして作製された。
【0045】
まず、サファイアの基板10上に、バッファ層11を形成した。バッファ層11の上に、n形コンタクト層21となるn形GaN層を形成した。n形コンタクト層21の厚さは、約4μmである。n形コンタクト層21におけるn形不純物(本具体例ではSi)の濃度は、約2×1018cm−3である。
【0046】
n形コンタクト層21の上に、n形ガイド層22となるGaN層を形成した。n形ガイド層22の厚さは、約0.1μmである。n形ガイド層22におけるn形不純物の濃度は、約1×1018cm−3である。
【0047】
n形コンタクト層21の成長温度及びn形ガイド層22の成長温度は、1000℃以上1100℃以下である。
【0048】
n形ガイド層22として、In0.01Ga0.99Nを用いても良い。このときのn形ガイド層22の厚さは、例えば約0.1μmである。n形ガイド層22としてIn0.01Ga0.99Nを用いる場合においては、n形ガイド層22の成長温度は、700℃以上800℃以下である。
【0049】
n形ガイド層22の上に、発光部40を形成した。すなわち、発光部40の障壁層BLとなるIn0.01Ga0.99N層と、井戸層WLとなるIn0.15Ga0.85N層と、を交互に形成した。障壁層BLの厚さは、約5nmである。井戸層WLの厚さは、約2.5nmである。なお井戸層WLは、アンドープである。本具体例では、井戸層WLの数は8であり、障壁層BLの数は9である。障壁層BL及び井戸層WLの成長温度は700℃以上800℃以下である。なお、障壁層BLは、アンドープである。障壁層BLに、例えばn型不純物を約1×1018cm−3の濃度でドープしても良い。
【0050】
発光部40の上に、第2p形層52となるAl0.20Ga0.80N層を形成した。第2p形層52の厚さ(第2厚t52)は、約5nmである。第2p形層52におけるMgの濃度は、約1×1020cm−3である。
【0051】
第2p形層52の上に、第4p形層54となるGaN層を形成した。第4p形層54の厚さ(第4厚t54)は、約40nmである。第4p形層54の形成において、第4p形層54におけるMg濃度を、1×1020cm−3から2×1019cm−3に漸減させた。第4p形層54の成長温度は、1000℃以上1100℃以下である。
【0052】
第4p形層54の上に、第3p形層53となるGaN層を形成した。第3p形層53の厚さ(第3厚t53)は、約40nmである。第3p形層53におけるMg濃度は、約2×1019cm−3である。第3p形層53の成長温度は、1000℃以上1100℃以下である。
【0053】
第3p形層53の上に、第1p形層51となるGaN層を形成した。第1p形層51の厚さ(第1厚t51)は、約5nmである。第1p形層51におけるMg濃度は、約1×1021cm−3である。
【0054】
上記により積層構造体10sが形成される。
第1p形層51の上に、p側電極80となるITO膜を形成する。さらに、p側電極80の上にパッド電極(図示しない)を形成する。p側電極80となるITO膜の厚さは、約0.2μmである。パッド電極には、厚さが約1.0μmのAu膜が用いられる。
【0055】
積層構造体10sの一部にドライエッチングを施し、n形コンタクト層21の一部を露出させる。露出されたn形コンタクト層21の上にn側電極70となる、チタン−白金−金(Ti/Pt/Au)の複合膜を形成する。
これにより、半導体発光素子110aが形成される。半導体発光素子110aの発光部40から放出される光のピーク波長は450nmである。すなわち、発光は、青色である。
【0056】
図5は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、半導体発光素子110aのp形半導体層50のSIMS法による元素分析結果を示している。同図の横軸は、+Z方向における位置Pzである。左側の縦軸は、Mg濃度C(Mg)である。右側の縦軸は、Alの二次イオン強度I(Al)である。実線は、Mg濃度C(Mg)を示す。破線は、Alの二次イオン強度I(Al)を示す。
【0057】
図5に表したように、Alの二次イオン強度I(Al)は、第2p形層52において鋭いピークを示している。このように、第2p形層52は、Alを含む。
【0058】
さらに、図5に表したように、第1p形層51においては、Mg濃度C(Mg)(すなわち、第1濃度C1)は、約1×1021cm−3である。第3p形層53におけるMg濃度C(Mg)(すなわち、第3濃度C3)は、約2×1019cm−3で実質的に一定である。第4p形層54におけるMg濃度C(Mg)は、−Z方向に沿って、2×1019cm−3から1×1020cm−3に上昇している。すなわち、第4p形層54におけるMg濃度C(Mg)は+Z方向に沿って、1×1020cm−3から2×1019cm−3に漸減している。第2p形層52におけるMg濃度C(Mg)(すなわち、第2濃度C2)は、約1×1020cm−3である。
【0059】
このように、半導体発光素子110aは、図1に例示したp形不純物濃度プロファイル(Mgドーピングプロファイル)を有している。
【0060】
すなわち、Mg濃度C(Mg)は、+Z方向に沿って、第2p形層52の第2濃度C2から、第4p形層54において漸減し、第3p形層53において最も低い第3濃度C3となり、第1p形層51で最も高い第1濃度C1になる。
【0061】
実施形態に係る半導体発光素子110(110a及び111、以下同じ)においては、第2p形層52の不純物濃度(第2濃度C2)は、中程度の値に設定される。第2濃度C2は、例えば、2.5×1019cm−3以上2×1020cm−3未満に設定される。第2濃度C2が2.5×1019cm−3よりも低い場合は、発光部40への正孔の注入が少なくなる。このため、発光効率が低下する。第2濃度C2が、2×1020cm−3以上の場合は、結晶に欠陥が発生し易い。このため、発光効率が低下する。第2濃度C2を中程度で適切な範囲である2.5×1019cm−3以上2×1020cm−3未満に設定することで、高い発光効率が得られる。
【0062】
一方、p側のコンタクト層となる第1p形層51における不純物濃度(第1濃度C1)は、第2濃度C2よりも高く設定される。第1濃度C1は、例えば、2×1020cm−3以上である。これにより、p形半導体層50とp側電極80とのコンタクト抵抗を十分に下げることができる。第1濃度C1が2×1020cm−3よりも低いと、コンタクト抵抗が高くなり、動作電圧が上昇する。
【0063】
このように、第1p形層51における第1濃度C1は、非常に高い値に設定されている。このため、第1p形層51の厚さがある程度以上になると結晶品質が低下し易くなる。第1p形層51の厚さ(第1厚t51)は、例えば、10nm未満に設定される。これにより、高い結晶品質が維持できる。なお、第1厚t51が1nmよりも薄いと、コンタクト特性が悪化し易い。このため、第1厚t51は、例えば、1nm以上10nm未満に設定される。
【0064】
このとき、不純物濃度が高い第1p形層51を、不純物濃度が中程度の第2p形層52と接して形成すると、不純物濃度が高い領域が一定以上の厚さになるので、結晶に欠陥が発生し易くなる。このため、実施形態においては、第1p形層51と第2p形層52との間に、不純物濃度が低い中間層を設ける。この中間層が、第3p形層53及び第4p形層54に相当する。
【0065】
図1に例示したように、第1p形層51と第3p形層53との間での不純物濃度の変化(第1濃度C1と第3濃度C3との間における変化)は、ステップ状である。これにより、不純物濃度が高い領域の厚さが小さくなる。これにより、結晶における欠陥の発生が抑制される。
【0066】
そして、第3p形層53と第2p形層52との間での不純物濃度の変化(第3濃度C3と第2濃度C2との間における変化)は、スロープ状である。スロープ状に不純物濃度が変化する部分が、第4p形層54に相当する。第2濃度C2は、中程度の濃度であるため、第3濃度C3と第2濃度C2との間の不純物濃度の変化がスロープ状であっても、結晶に欠陥は発生し難い。
【0067】
また、第2p形層52と第3p形層53との間の第4p形層54における不純物濃度をスロープ状に変化させることで、第4p形層54における抵抗(直列抵抗)を下げることができる。これにより動作電圧が低下する。
【0068】
なお、第3濃度C3と第2濃度C2との間の不純物濃度の変化をステップ状にすることは、製造上難しい。この観点でも、実施形態においては、第3p形層53と第2p形層52との間に、不純物濃度が傾斜した層(第4p形層54)が設けられる。これにより、製造し易い半導体発光素子が得られる。
【0069】
このように、実施形態によれば、正孔の注入効率が向上する。これにより、発光効率が高くなる。そして、p形半導体層50における抵抗(直列抵抗)を下げ、動作電圧を低減できる。さらに、製造し易い。
実施形態によれば、高効率で低動作電圧の半導体発光素子が提供される。
【0070】
図6(a)〜図6(c)は、参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。 図7(a)〜図7(c)は、参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。 図8(a)及び図8(b)は、参考例の半導体発光素子の構成を例示する模式図である。
すなわち、これらの図は、参考例の半導体発光素子のp形半導体層50におけるp形不純物濃度C(p)(例えばMg濃度C(Mg))を示している。
【0071】
図6(a)に表したように、第1参考例の半導体発光素子119aにおいても、第1〜第4p形層51〜54が設けられている、しかし、第1濃度C1が第2濃度C2と同等である。このような第1参考例において、第1濃度C1及び第2濃度C2が、2×1020cm−3以上の高い値に設定されると、第2濃度C2が高過ぎるため、結晶品質が低下し、発光効率が低下する。また、第1濃度C1及び第2濃度C2が、2.5×1019cm−3以上2×1020cm−3未満の中程度の値に設定されると、コンタクト抵抗が上昇する。
【0072】
図6(b)に表したように、第2参考例の半導体発光素子119bにおいては、第1p形層51と第4p形層54との間に、傾斜層55が設けられている。傾斜層55における不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って第3濃度C3から第1濃度C1に漸増している。そして、第1濃度C1は第2濃度C2と同等である。この場合も、第1濃度C1及び第2濃度C2が高いと結晶品質が低下する。第1濃度C1及び第2濃度C2が中程度の値に設定されるとコンタクト抵抗が上昇する。
【0073】
図6(c)に表したように、第3参考例の半導体発光素子119cにおいては、第1p形層51と第4p形層54との間に、傾斜層55が設けられている。傾斜層55における不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って第3濃度C3から第1濃度C1に漸増している。そして、第1濃度C1は第2濃度C2よりも高い。第1濃度C1が高いため、コンタクト抵抗は低くなると考えられる。第2濃度C2が中程度の値に設定されるので、正孔の注入効率が高いと考えられる。しかしながら、第1p形層51と第4p形層54との間の傾斜層55において、不純物濃度がスロープ状に変化する。このため、傾斜層55においては、p形不純物濃度が高い領域が一定の厚さを超える。このため、結晶に欠陥が発生し易い。このため、発光効率が低い。
【0074】
図7(a)に表したように、第4参考例の半導体発光素子119dにおいては、第1p形層51と第2p形層52との間に、傾斜層55が設けられている。そして、第4p形層54が設けられていない。傾斜層55における不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って第3濃度C3から第1濃度C1に漸増している。そして、第1濃度C1は第2濃度C2よりも高い。この場合も、コンタクト抵抗は低く、正孔の注入効率が高いと考えられる。しかしながら、傾斜層55において不純物濃度がスロープ状に変化する。このため、傾斜層55においては、p形不純物濃度が高い領域が一定の厚さを超える。このため、結晶に欠陥が発生し易い。このため、発光効率が低い。
【0075】
図7(b)に表したように、第5参考例の半導体発光素子119eにおいては、第1p形層51と第2p形層52との間に、傾斜層56が設けられている。傾斜層56における不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って第2濃度C2から第3濃度C3に漸減している。そして、第1濃度C1は第2濃度C2よりも高い。この場合も、コンタクト抵抗は低く、正孔の注入効率が高いと考えられる。しかしながら、傾斜層56において不純物濃度がスロープ状に変化する。このため、結晶に欠陥が発生し易い。
【0076】
図7(c)に表したように、第6参考例の半導体発光素子119fにおいては、第1p形層51と第2p形層52との間に、傾斜層56が設けられている。傾斜層56における不純物濃度C(p)は、+Z方向に沿って第2濃度C2から第3濃度C3に漸減している。そして、第1濃度C1は第2濃度C2よりも高い。半導体発光素子119fにおいては、第3濃度C3が、非常に低く設定されている。この場合も、コンタクト抵抗は低く、正孔の注入効率が高いと考えられる。傾斜層56において不純物濃度がスロープ状に変化するが、第3濃度C3が低いため、結晶欠陥の発生が抑制される。しかしながら、第3濃度C3が低いため、傾斜層56の平均の不純物濃度は低い。このため傾斜層56の抵抗(直列抵抗)が高くなる。このため、動作電圧が高い。
【0077】
図8(a)に表したように、第7参考例の半導体発光素子119gにおいては、第1p形層51と第2p形層52との間に、第3p形層53が設けられているが、第4p形層54が設けられていない。そして、第1濃度C1は第2濃度C2よりも高い。この場合も、コンタクト抵抗は低く、正孔の注入効率が高いと考えられる。しかしながら、第3濃度C3が高く設定されると、結晶に欠陥が発生し易い。また、第3濃度C3が低く設定されると抵抗(直列抵抗)が高くなる。また、第2p形層52と第3p形層53との間で不純物濃度がステップ状に変化するため、製造条件の制御が難しい。
【0078】
図8(b)に表したように、第8参考例の半導体発光素子119hにおいては、第2p形層52の第2濃度C2が低い。第2濃度C2は、第3濃度C3と同程度である。第4p形層54は、実質的に設けられない。この例においては、第2p形層52におけるエネルギーバンドが相対的に低下し、量子閉じ込め効果が低下する。このため、発光効率が低下する。そして、発光部40への正孔の注入が少なくなる。このため、発光効率が低下する。
【0079】
このように、第1〜第8参考例の半導体発光素子119a〜119hにおいては、高効率と低動作電圧とを同時に得ることが困難である。
【0080】
これに対し、実施形態に係る半導体発光素子によれば、高効率と低動作電圧とが同時に得られる。さらに、製造し易い。
【0081】
実施形態に係る半導体発光素子110と、参考例の半導体発光素子の特性をシミュレーションした。
以下、実施形態に係る半導体発光素子110、第1参考例の半導体発光素子119a、第5参考例の半導体発光素子119e、及び、第8参考例の半導体発光素子119hの特性のシミュレーション結果について説明する。
【0082】
このシミュレーションにおいては、以下とした。
半導体発光素子110においては、第1濃度C1(Mg濃度)は、1×1021cm−3とした。第2濃度C2(Mg濃度)は、1×1020cm−3とした。第3濃度C3(Mg濃度)は、2×1019cm−3とした。第4p形層54におけるMg濃度C(Mg)は、+Z方向に沿って、1×1020cm−3から2×1019cm−3に直線的に低下するとした。第1厚t51及び第2厚t52は、5nmとした。第3厚t53及び第4厚t54は、40nmとした。
【0083】
半導体発光素子119aにおいては、第1濃度C1=第2濃度C2=1×1020cm−3、第3濃度C3=2×1019cm−3とし、第1厚t51、第2厚t52、第3厚t53及び第4厚t54は、半導体発光素子110と同じとした。
【0084】
半導体発光素子119eにおいては、第1濃度C1=1×1021cm−3、第2濃度C2=1×1020cm−3、第3濃度C3=1×1018cm−3とし、第1厚t51及び第2厚t52は、半導体発光素子110と同じとした。そして、傾斜層56の厚さは80nmとした。
【0085】
半導体発光素子119hにおいては、第1濃度C1=1×1021cm−3、第2濃度C2=第3濃度C3=1×1019cm−3とし、第1厚t51及び第2厚t52は、半導体発光素子110と同じとした。そして、第3厚t53=80nmとした。
【0086】
図9は、半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
すなわち、同図は、上記のシミュレーション結果を示している。図9の横軸は、半導体発光素子に流す注入電流Icである。縦軸は、動作電圧Vfである。
【0087】
図9から分かるように、実施形態に係る半導体発光素子110の動作電圧Vfは、参考例の半導体発光素子119a、119e及び119hのいずれよりも低い。
【0088】
実施形態による駆動電圧Vfの低減効果は、特に注入電流Icが大きい領域において顕著である。
【0089】
また、実施形態においては、光出力が増大する。
例えば、実施形態に係る半導体発光素子110においては、注入電流Icが20ミリアンペア(mA)のときに、動作電圧Vfは2.88ボルト(V)であり、このときの光出力は、28ミリワット(mW)と見積もられる。
【0090】
一方、第8参考例の半導体発光素子119hにおいては、注入電流Icが20mAのときに、動作電圧Vfは2.94Vであり、このときの光出力は、24mWと見積もられる。
【0091】
このように、実施形態に係る半導体発光素子110においては、光出力が高く、効率が高い。そして、動作電圧Vfが低い。
【0092】
実施形態に係る半導体発光素子110(111を含む)においては、第1p形層51の+Z方向に沿った厚さ(第1厚t51)は、例えば1nm以上10nm未満である。第1厚t51は、例えば5nmである。第2p形層52の+Z方向に沿った厚さ(第2厚t52)は、例えば1nm以上10nm未満である。第2厚t52は、例えば5nmである。第3p形層53の+Z方向に沿った厚さ(第3厚t53)は、例えば10nm以上80nm以下である。第3厚t53は、例えば40nmである。第4p形層54の+Z方向に沿った厚さ(第4厚t54)は、例えば10nm以上80nm以下である。第4厚t54は、例えば40nmである。
【0093】
第3厚t53は、第4厚t54と実質的に等しい。第3厚t53と第4厚t54との差は、第3厚t53と第1厚t51との差よりも小さく、第3厚t53と第2厚t52との差よりも小さい。第3厚t53と第4厚t54との差は、第4厚t54と第1厚t51との差よりも小さく、第4厚t54と第2厚t52との差よりも小さい。
【0094】
このように、第3厚t53を第4厚t54と実質的に等しく設定することで、p形不純物濃度のプロファイルを適正に制御することが容易になる。
【0095】
また、第1厚t51は、第3厚t53よりも薄く、第4厚t54よりも薄い。そして、第2厚t52は、第3厚t53よりも薄く、第4厚t54よりも薄い。第1厚t51及び第2厚t52を第3厚t53及び第4厚t54よりも小さく設定することで、結晶における欠陥の発生を抑制し易くなる。
【0096】
第1厚t51は、第2厚t52と近い値を有する。第1厚t51と第2厚t52との差は、第1厚t51と第3厚t53との差よりも小さく、第1厚t51と第4厚t54との差よりも小さい。第1厚t51と第2厚t52との差は、第2厚t52と第3厚t53との差よりも小さく、第2厚t52と第4厚t54との差よりも小さい。
【0097】
実施形態に係る半導体発光素子における各半導体層の成長方法には、例えば、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法及び分子線エピタキシー法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法などが用いられる。
【0098】
各半導体層の形成の際の原料には、以下を用いることができる。
Gaの原料として、例えば、TMGa(トリメチルガリウム)及びTEGa(トリエチルガリウム)などを用いることができる。Inの原料として、例えば、TMIn(トリメチルインジウム)及びTEIn(トリエチルインジウム)などを用いることができる。Alの原料として、例えば、TMAl(トリメチルアルミニウム)などを用いることができる。Nの原料として、例えば、NH(アンモニア)、MMHy(モノメチルヒドラジン)及びDMHy(ジメチルヒドラジン)などを用いることができる。Siの原料として、例えば、SiH(モノシラン)などを用いることができる。Mgの原料として、例えば、CpMg(ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)などを用いることができる。
【0099】
実施形態によれば、高効率で低動作電圧の半導体発光素子が提供される。
【0100】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0101】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれるn形半導体層、p形半導体層、発光部、井戸層、障壁層及び電極などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0103】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0104】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
10…基板、 10a…第1主面、 10b…第2主面、 10s…積層構造体、 11…バッファ層、 20…n形半導体層、 21…n形コンタクト層、 22…n側ガイド層、 40…発光部、 50…p形半導体層、 51…第1p形層、 52…第2p形層、 53…第3p形層、 54…第4p形層、 55、56…傾斜層、 70…n側電極、 80…p側電極、 110、110a、111、119a〜119h…半導体発光素子、 BL1〜BLi…第1〜第i障壁層、 BLP…p側障壁層、 C(p)…p形不純物濃度、 C(Mg)…Mg濃度、 C1〜C3…第1〜第3濃度、 I(Al)…Alの二次イオン強度、 Ic…注入電流、 Pz…位置、 Vf…動作電圧、 WL…井戸層、 WL1〜WLi…第1〜第i井戸層、 t51、t52、t53、t54…第1〜第4厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n形半導体層と、
p形半導体層と、
前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられ、複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む発光部と、
前記p形半導体層に接するp側電極と、
を備え、
前記p形半導体層は、
前記p側電極に接し、第1濃度でp形不純物を含む第1p形層と、
前記第1p形層と前記発光部との間において前記発光部に接し、Alを含み前記第1濃度よりも低い第2濃度でp形不純物を含む第2p形層と、
前記第1p形層と前記第2p形層との間に設けられ、前記第2濃度よりも低い第3濃度でp形不純物を含む第3p形層と、
前記第2p形層と前記第3p形層との間に設けられ、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう第1方向に沿ってp形不純物の濃度が前記第2濃度から前記第3濃度に漸減する第4p形層と、
を含み、
前記第2p形層には、AlGaN層が用いられ、
前記第1p形層、前記第3p形層及び前記第4p形層には、GaN層が用いられ、
前記第1p形層の厚さは、前記第3p形層の厚さよりも薄く、前記第4p形層の厚さよりも薄く、
前記第2p形層の厚さは、前記第3p形層の厚さよりも薄く、前記第4p形層の厚さよりも薄く、
前記第3p形層の厚さは、10ナノメートル以上であり、
前記第3濃度は、1×1019cm−3以上2.5×1019cm−3未満であり、
前記第3濃度は、前記第3濃度の変動が前記第3濃度の平均のプラスマイナス20%以内であるように一定であり、
前記第3濃度は、前記p形半導体層におけるp形不純物の最も低い濃度であり、
前記第3p形層の厚さと前記第4p形層の厚さとの差は、
前記第3p形層の厚さと前記第1p形層の厚さとの差よりも小さく、
前記第3p形層の厚さと前記第2p形層の厚さとの差よりも小さいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1濃度は、2×1020cm−3以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2濃度は、2.5×1019cm−3以上2×1020cm−3未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1p形層の厚さは、1ナノメートル以上10ナノメートル未満であり、
前記第2p形層の厚さは、1ナノメートル以上10ナノメートル未満であり、
前記第3p形層の厚さは、80ナノメートル以下であり、
前記第4p形層の厚さは、10ナノメートル以上80ナノメートル以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第4p形層における前記p形不純物の濃度は、前記第2濃度から前記第3濃度に段階的に漸減し、前記第2p形層側の漸減する割合は、前記第3p形層側の漸減する割合より大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48266(P2013−48266A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226181(P2012−226181)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【分割の表示】特願2010−268431(P2010−268431)の分割
【原出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】