説明

半導体薄膜、半導体薄膜の形成方法、半導体装置

【課題】オン電流の向上を図ることでオン/オフ電流比を大きくとることが可能な半導体薄膜、およびこの半導体薄膜の形成方法、よびこの半導体薄膜を用いることでスイッチング特性の良好な半導体装置を提供する。
【解決手段】磁性微粒子とこれに結合した有機分子とからなる半導体薄膜7aを、ソース電極9s−ドレイン電極9d間のチャネル領域として用いた半導体装置1aである。この半導体薄膜7aは、基板3(5)表面に磁性微粒子を分散させた状態で固定する工程と、有機分子を溶解させた溶媒に基板3(5)表面に固定した磁性微粒子を晒して結合させる工程とを行うことによって形成される。この半導体装置1aは、半導体薄膜7aにおける導電性が、磁界と共に電界によって制御されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子と半導体分子とを結合させてなる半導体薄膜と、この半導体薄膜の形成方法、およびこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体を利用した薄膜トランジスタ型の半導体装置は、チャネル層となる半導体薄膜を低温で塗布成膜することが可能である。このため、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition;CVD)などの真空処理室を必要とする方法で成膜されるシリコン薄膜を半導体層として用いるSi系無機半導体トランジスタと比較して、低コスト化に有利であると共に、プラスチック等の耐熱性はないがフレキシブルな基板上への形成も可能である。
【0003】
このような中、同様に塗布成膜を用いた製造が可能な半導体装置として、導体または半導体からなる微粒子と、この微粒子と結合した有機半導体分子とによってネットワーク型の導電路を形成し、この導電路の導電性を電界によって制御される半導体層として用いた半導体装置およびその製造方法が提案されている。このような半導体装置においては、有機半導体分子の両端の官能基が微粒子と結合し、これによって微粒子と有機半導体分子とが互いに連結されたネットワーク型の導電路が形成される。
【0004】
このような導電路を形成するには、先ず微粒子を溶媒に分散させた分散液を調製する。この際、微粒子同士が凝集して沈殿するのを防止するために保護膜分子を微粒子に結合させることにより、微粒子を保護膜で被覆した状態にしておくことが重要である。そして、この分散液に基板を浸漬して取り出した後、溶媒を蒸発させることにより、基板上に微粒子1層分の微粒子層を形成する。
【0005】
続いて、微粒子と結合する官能基を両端に備えた有機半導体分子を溶媒に溶解させ、この溶液に基板を浸漬し取り出した後、溶媒を蒸発させる。これにより、有機半導体分子が保護膜分子を置換して微粒子の表面に結合する。この際、有機半導体分子の両端の官能基が、それぞれ異なる微粒子に結合し、有機半導体分子によって微粒子がネットワーク状に連結された1層目の半導体層が形成される。
【0006】
以上の後は、微粒子層の形成と、有機半導体分子による保護膜分子の置換とを繰り返し行うことにより、2層目以降の半導体層を形成する(以上、下記特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】WO2004/006337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、有機半導体材料を用いた半導体装置は、通常のシリコン半導体装置と比較してオン電流が小さく、またオン/オフ電流比を大きくとることができない。
【0009】
そこで本発明は、オン電流およびオン/オフ電流比の向上を図ることが可能な半導体薄膜、およびこの半導体薄膜の形成方法、よびこの半導体薄膜を用いることでスイッチング特性の良好な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するための本発明の半導体薄膜は、磁性微粒子と、当該磁性微粒子に結合した有機分子とからなることを特徴としている。
【0011】
また本発明はこのような半導体薄膜の形成方法でもあり、第1の方法は、基板上に磁性微粒子を分散させた微粒子膜を形成した後、有機分子を溶解させた溶媒に微粒子膜を晒して磁性微粒子に当該有機分子を結合させる。
【0012】
そして、このような半導体薄膜を用いた本発明の半導体装置は、半導体薄膜における導電性が磁界によって制御されるように構成されたものである。
【0013】
以上のような構成の本発明では、半導体薄膜に磁性微粒子が導入されたことにより、当該半導体薄膜における導電性の制御に磁界が用いられようになる。これにより、有機分子における導電性を電界によって制御しつつ、さらに磁界による導電性の制御をアシスト的に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば半導体薄膜の導電性の制御に電界に加えて磁界を用いることができることから、オン電流およびオン/オフ電流比の向上を図ることが可能になると共に、この半導体薄膜を用いた半導体装置のスイッチング特性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
≪第1実施形態≫
図1は本発明を適用した半導体装置1aの実施形態を示す断面図である。また、図2は本第1実施形態の半導体装置1aの特徴部である半導体薄膜の拡大断面図である。
【0017】
図1に示す半導体装置1aは、ボトムゲート・トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、基板3をゲート電極として、この上部にゲート絶縁膜5および半導体薄膜7aがこの順に設けられている。また半導体薄膜7a上には、互いに所定間隔だけ離間させてソース電極9sおよびドレイン電極9dが設けられている。
【0018】
このような構成の半導体装置1aにおいて、半導体薄膜7aが本実施形態に特徴的な構成となっている。一方、基板3、ゲート絶縁膜5、ソース電極9s、およびドレイン電極9dについては、特に構成の限定はなく、例えば通常の有機薄膜トランジスタと同様であって良い。以下、半導体装置1aの各要素を下層側から順に説明する。
【0019】
<基板3>
基板3は、例えば、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル、PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック基板、ガラス、石英、マイカ(雲母)、又はシリコン基板等を用いる。プラスチック基板やマイカなどの可撓性を有する基板を用いると、例えば曲面形状をもつディスプレイのように、フレキシブルな形状の半導体装置を製造できる。
【0020】
尚、本実施形態のように基板3がゲート電極を兼ねている場合には、不純物が導入されたシリコン基板のような導電性を有する基板が用いられる。
【0021】
また、基板3とは別にゲート電極が設けられている場合、ゲート電極の材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]などの導電性高分子、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、インジウム(In)などの金属、あるいはこれらの金属を含有する合金、不純物を含有したポリシリコン等の導電性物質を用いることができる。
【0022】
<ゲート絶縁膜5>
ゲート絶縁膜5は、半導体薄膜7aの下地となる層であるため、磁性微粒子sとの密着性が良好な材料で構成されていることが好ましい。このようなゲート絶縁膜5は、シラノール誘導体、即ちシランカップリング剤からなることが好ましい。そして、基板3と磁性微粒子sとを、シランカップリング剤を介して化学的に結合させるには、一端に磁性微粒子と反応するアミノ基やチオール基等の官能基を持ち、もう一端に基板3表面の水酸基と反応するアルコキシル基等を有することが重要である。
【0023】
尚、磁性微粒子sとの密着性を考慮する必要のない場合には、ゲート絶縁膜5は、通常の絶縁性材料を用いて構成されて良く、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)に例示される有機系絶縁材料、スピンオンガラス(SOG)、酸化ケイ素系材料(SiOX)、窒化ケイ素系材料(SiNY)、金属酸化物高誘電絶縁膜に代表される無機系絶縁材料、またはこれらを組み合わせたものを用いることができる。
【0024】
<半導体薄膜7a>
半導体薄膜7aは、図2に示すように、磁性微粒子sと有機分子mとで構成されている。これらの磁性微粒子sと有機分子mとは、有機分子mが両端に有する官能基によって磁性微粒子sと結合し、3次元的なネットワークを構成している。
【0025】
このうち磁性微粒子sは、FePtからなる微粒子が粒径の均一性、酸化耐性の面から優れている。また、酸化鉄(特にFe34とFe23の混合物)はヒステリシスが見られないものとして好適に用いられる。またこの他にも、Co、Mn、CoPt、Co3Pt、FeCo、FeNi、FePd、MnAl、CoPtCrなどからなる微粒子を、磁性微粒子sとして用いることができる。
【0026】
そして有機分子mは、有機半導体材料からなるものが好適に用いられる。このような有機分子mとしては、共役結合を有する有機半導体分子であって、分子の両端にチオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)、イソシアノ基(−NC)、チオアセトキシル基(−SCOCH3)又はカルボキシル基(−COOH)を有するものが好適に用いられる。具体的には、4,4’−ビフェニルジチオール(BPDT)、4,4’−ジイソシアノビフェニル、4,4’−ジイソシアノ−p−テルフェニル、2,5−ビス(5’−チオアセトキシル−2’−チオフェニル)チオフェン、4,4’−ジイソシアノフェニル等、さらにはBovin Serum Albumin、Horse Redish Peroxidase、antibody−antigen等が挙げられる。これらはいずれも、π共役系分子であって、少なくとも2箇所で磁性微粒子sと化学的に結合する官能基を有している。
【0027】
有機分子mは、磁性微粒子sと結合可能な官能基を1つのみ有しているものであっても良い。このような材料としては、例えば4−ビフェニルチオール、2−アミノチオフェン、2−イソシアノピロール、ベンゾニトリル、4−チオアセトキシル-[1,1';4',1"]-テルフェニルが好適に用いられる。
【0028】
<ソース電極9s,ドレイン電極9d>
ソース電極9s・ドレイン電極9dは、ゲート電極の材料として例示した材料を用いることが出来、例えば、ポリアニリン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]などの導電性高分子、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、インジウム(In)などの金属、あるいはこれらの金属を含有する合金、不純物を含有したポリシリコン等の導電性物質を用いることができる。
【0029】
<半導体装置の製造方法>
次に、以上のような半導体薄膜7aを用いた半導体装置1aの製造方法を、半導体薄膜7aの形成方法を中心に説明する。
【0030】
先ず、ゲート電極を兼ねた基板3上に、ゲート絶縁膜5を形成する。ゲート絶縁膜5の形成は、用いる材料に応じて、熱酸化法、CVD法、スパッタリング法、塗布法、スピンコート法等を適用して行う。
【0031】
次に、以下のようにしてゲート絶縁膜5上に半導体薄膜7aを形成する。
【0032】
この場合先ず、図3(1)に示すように、ゲート絶縁膜5で覆われた基板表面に、磁性微粒子sを分散させた状態で吸着固定させる。ここでは、磁性微粒子sを水や炭化水素系の溶媒に分散させた溶液を用い、塗布法、溶液浸漬法、スピンコート法、LB法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法等を適用し、基板5上に液膜を形成する。その後余分な液および磁性微粒子sを基板5上から除去することで、ある程度の間隔で磁性微粒子sが分散された状態とする。
【0033】
次に図3(2)に示すように、有機分子mを溶解させた溶液に基板5表面に分散させた磁性微粒子sを晒すことにより、磁性微粒子sに有機分子mを結合させ、有機分子mによって磁性微粒子s同士を相互に結合させた状態とする。また、有機分子m同士が一定の間隔を保てる範囲で、複数の有機分子mが磁性微粒子sに結合させる。ここでは、有機分子mを溶解させた溶液を用い、浸漬法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法などを適用することにより、有機分子mを溶解させた溶液に磁性微粒子sを晒した状態とする。
【0034】
尚、ここでは、磁性微粒子sと有機分子mとが結合してネットワークを構成することが好ましいが、磁性微粒子sと有機分子mとが結合しておらず、磁性微粒子sの層上に有機分子mの層が積層された状態となっても良い。また、有機分子mとして、磁性微粒子sと結合可能な官能基を1つのみ有しているものを用いた場合には、有機分子mを結合させた磁性微粒子sのそれぞれが独立した状態に保たれた構成となる。
【0035】
以上の後、図3(3)に示すように、先の図3(1)と同様の工程を繰り返すことにより、第2層目の磁性微粒子sを分散させる。ここでは、有機分子mに磁性微粒子sが結合された状態となることで、3次元のネットワークが形成される。尚、有機分子mと磁性微粒子sとが結合しない場合には、有機分子mの層上に第2層目の磁性微粒子sの層が積層された状態となる。
【0036】
次に、図3(4)に示すように、先の図3(2)と同様の工程を繰り返すことにより、第2層目の磁性微粒子sに有機分子mを結合させる。尚、有機分子mと磁性微粒子sとが結合しない場合には、磁性微粒子sの層上に第2層目の有機分子mの層が積層された状態となる。
【0037】
以降、所定の膜厚に達するまで、図3(1)および図3(2)と同様の工程を繰り返すことにより、所定の膜厚を備えた半導体薄膜7aを形成する。
【0038】
その後は、図1に示したように、半導体薄膜7a上に、例えば金属(Al,Au,Ptなど)からなるソース電極9s、ドレイン電極9dを蒸着法、CVD法、スパッタリング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法等で形成する。
【0039】
<駆動方法>
以上のようにして得られた第1実施形態の半導体装置1aは、磁場形成手段の存在下において駆動されることにより、その機能が発揮される。
【0040】
すなわち、この半導体装置1aは、ソース電極9s−ドレイン電極9d間の半導体薄膜7a部分において、ソース電極9sからドレイン電極9dに向かって電流Iが流れるように、少なくともソース電極9s−ドレイン電極9d間の半導体薄膜7a部分に所定状態で磁界Hが印加されるように設けられた磁場形成手段の存在下で用いることが好ましい。このような磁場形成手段は、例えばスイッチング機能を備えた電磁コイルからなり、上記磁界Hの印加のオン/オフが、ゲート電極のオン/オフに連動するように構成されていることとする。
【0041】
そして、半導体装置1aのソース電極9s−ドレイン電極9d間にオン電流を流す場合には、ゲート電極を兼ねた基板3に電圧を印加し、かつ磁界Hをオンにする。これにより、ソース電極9s−ドレイン電極9d間の半導体薄膜7a部分の導電性が高められ、この分部にチャネルが形成されてソース電極9s−ドレイン電極9d間にオン電流が流れる。
【0042】
一方、ソース電極9s−ドレイン電極9d間の電流をオフにする場合には、ゲート電極を兼ねた基板3に電圧を印加せる、かつ磁界Hをオフにする。これにより、ソース電極9s−ドレイン電極9d間の半導体薄膜7a部分の導電性が低くなり、ソース電極9s−ドレイン電極9d間が絶縁された状態とする。
【0043】
以上説明した第1実施形態によれば、半導体薄膜7aに磁性微粒子sが導入されたことにより、半導体薄膜7aにおける導電性の制御に磁界Hが用いられようになる。これにより、有機分子における導電性をゲート電極のオン/オフによる電界によって制御しつつ、さらに磁界Hによる導電性の制御をアシスト的に行うことができる。
【0044】
この結果、オン電流を増加させ、オン/オフ電流比の向上を図ることが可能になると共に、この半導体薄膜7aを用いた半導体装置1aのスイッチング特性の向上を図ることが可能になる。また、オン/オフ電流比が向上することにより、ヒステリシスの影響が小さく抑えられる効果もある。
【0045】
さらに磁性微粒子sは、粒径のバラツキが小さいものを入手可能である。このため、粒径の均一な磁性微粒子sを用いることで導電性の面内バラツキが小さい半導体薄膜7aを構成することができ、この半導体薄膜7aを用いて半導体装置1aにおける特性バラツキを小さく抑えることが可能である。
【0046】
また、このように粒径分布の狭い磁性微粒子を用いることで、粒径制御の工程を省略することが可能である。
【0047】
以上に加えて、磁性微粒子sとして水溶性の磁性微粒子を用いることで、有機溶媒の使用を抑えた半導体装置の製造が可能になる。しかも、磁力による磁性微粒子sの回収が可能であり、リサイクルが容易である。
【0048】
≪第2実施形態≫
図4は、第2実施形態の半導体装置1bの特徴部である半導体薄膜7bの拡大断面図である。尚、半導体装置1bの全体構成は、第1実施形態と同様であることとし、重複する説明は省略する。
【0049】
<半導体薄膜7b>
すなわち、第2実施形態の半導体装置1bにおける半導体薄膜7bは、図4に示すように、磁性微粒子sと有機分子mと、さらに非磁性微粒子Aとで構成されている。このうち、磁性微粒子sと非磁性微粒子Aとが結合して結合微粒子sAを構成している。また、有機分子mは、その両端に有する官能基によって結合微粒子sAと結合し、3次元的なネットワークを構成している。
【0050】
このうち磁性微粒子sと有機分子mとは、第1実施形態で説明したと同様の材料が用いられる。
【0051】
また非磁性微粒子Aは、導体としての金、銀、白金、銅又はアルミニウム、あるいは半導体としての硫化カドミウム、セレン化カドミウム又はシリコンからなる微粒子であることが好ましく、特には導電性の良好な金属微粒子であることが好ましい。また、その粒子径は10nm以下であるのがよい。
【0052】
ここで、非磁性微粒子(金属微粒子)Aの形状としては球形が挙げられるが、本発明はこれに限るものではなく、例えば球形の他に、三角形、立方体、直方体、円錐等が挙げられる。
【0053】
また、非磁性微粒子Aが、1次元方向に異方性形状を持つ短径10nm以下のナノロッド(又はナノファイバー)(Ser−Sing Chang, Chao−Wen Shih, Cheng−Dah Chen, Wei−Cheng Lai, and C. R. Chris Wang,. “The Shape Transition of Gold Nanorods” Langmuir (1999), 15, 701−709を参照。)又はナノチューブであってもよい。この場合、上記した前記ソース電極及びドレイン電極間の距離が前記ナノロッドの長径より短いのが好ましい。
【0054】
非磁性微粒子Aとして前記ナノロッド又はナノチューブを用いれば、仮にある程度サイズ(長径・短径)にバラつきがある場合でも、球形のナノ粒子に比べてより規則正しく、平行に配置できる可能性が高い。
【0055】
<半導体装置の製造方法−1>
次に、以上のような半導体薄膜7bを用いた半導体装置1bの製造方法の第1例を、半導体薄膜7bの形成方法を中心に説明する。尚、半導体薄膜7bの形成方法以外は、第1実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0056】
先ず、図5(1)に示すように、ゲート絶縁膜5で覆われた基板表面に、非磁性微粒子Aを分散させた状態で固定する。ここでは、非磁性微粒子Aをトルエンやクロロフォルムなどの溶媒に分散させた溶液を用い、塗布法、溶液浸漬法、スピンコート法、LB法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法等を適用し、基板5上に液膜を形成する。その後余分な液および非磁性微粒子Aを基板5上から除去することで、ある程度の間隔で非磁性微粒子Aが分散された状態とする。
【0057】
またここで、非磁性微粒子Aが金属微粒子である場合、鎖状非共役系分子を保護膜として持つ金属微粒子を基板5の表面に固定することとする。
【0058】
次に、図5(2)に示すように、基板5表面に固定した非磁性微粒子Aに対して、磁性微粒子sを結合させ、結合微粒子sAとする。この工程は、磁性微粒子sを水や炭化水素系の溶媒に分散させた溶液中に、基板5を1日程度浸漬することにより行われる。またこのような浸漬法以外にも、磁性微粒子sを分散させた溶液を用い、塗布法、スピンコート法、LB法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法等によって液膜を形成することによっても実施できる。以上の後には、余分な非磁性微粒子Aおよび磁性微粒子sをアセトンや流水等で洗い流して除去する。
【0059】
次に、図5(3)に示すように、有機分子mを溶解させた溶媒に結合微粒子sAを晒すことにより、結合微粒子sAに有機分子mを結合させる。これにより、有機分子mによって結合微粒子sA同士を相互に結合させた状態とする。また、有機分子m同士が一定の間隔を保てる範囲で、複数の有機分子mが結合微粒子sAに結合させる。ここでは、有機分子mを溶解させた溶液を用い、浸漬法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法などを適用することにより、有機分子mを溶解させた溶液に結合微粒子sAを晒した状態とする。
【0060】
また、非磁性微粒子Aが鎖状非共役系分子を保護膜として持つ金属微粒子である場合には、有機分子mによって保護膜分子を置換し、非磁性微粒子(金属微粒子)Aの表面に有機分子mを結合させる。これにより、有機分子mの官能基が、非磁性微粒子Aおよび磁性微粒子sに結合し、有機分子mによって微粒子同士をネットワーク状に結合させた状態とする。
【0061】
尚、ここでは、結合微粒子sAと有機分子mとが結合してネットワークを構成することが好ましいが、結合微粒子sAと有機分子mとが結合しておらず、結合微粒子sAの層上に有機分子mの層が積層された状態となっても良い。
【0062】
次に、図5(4)に示すように、先の図5(1)と同様の工程を繰り返すことにより、第2層目の非磁性微粒子Aを分散させる。ここでは、有機分子mに非磁性微粒子Aが結合された状態となることで、3次元のネットワークが形成される。尚、有機分子mと非磁性微粒子Aとが結合しない場合には、有機分子mの層上に第2層目の非磁性微粒子Aの層が積層された状態となる。
【0063】
以上の後には、先の図5(2)と同様の工程を繰り返すことにより、第2層目の磁性微粒子sに非磁性微粒子Aを結合させ、2層目の結合微粒子sAを形成する。
【0064】
以降、所定の膜厚に達するまで、図5(3)および図5(4)、さらに図5(2)と同様の工程を繰り返すことにより、所定の膜厚を備えた半導体薄膜7bを形成する。
【0065】
その後は、図1に示したように、半導体薄膜7b上に、例えば金属(Al,Au,Ptなど)からなるソース電極9s、ドレイン電極9dを蒸着法、CVD法、スパッタリング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法等で形成する。
【0066】
<半導体装置の製造方法−2>
次に、以上のような半導体薄膜7bを用いた半導体装置1bの製造方法の第2例を、図6に基づいて説明する。
【0067】
先ず、図6(1)に示すように、ゲート絶縁膜5で覆われた基板表面に、非磁性微粒子Aを分散させた状態で固定する。この工程は、先の第1例で図5(1)を用いて説明したと同様に行うこととする。
【0068】
次に、図6(2)に示すように、有機分子mと磁性微粒子sとを含有する溶液に基板5表面に固定させた非磁性微粒子Aを晒すことにより、非磁性微粒子Aに対して磁性微粒子sを結合させて結合微粒子sAを形成すると共に、この結合微粒子sAに有機分子mを結合させる。これにより、有機分子mによって結合微粒子sA同士を相互に結合させた状態とする。また、有機分子m同士が一定の間隔を保てる範囲で、複数の有機分子mを結合微粒子sAに結合させる。
【0069】
この際、例えば、磁性微粒子sを水溶液または炭化水素系溶液に溶かした溶液と、有機分子m(例えばオクタンチオール)のトルエン溶液とを混合した混合液を用い、浸漬法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法などを適用することにより、有機分子mと磁性微粒子sとを含有する溶液に非磁性微粒子Aを晒した状態とする。以上の後には、余分な非磁性微粒子Aおよび磁性微粒子sをアセトンや流水等で洗い流して除去する。
【0070】
また、非磁性微粒子Aが鎖状非共役系分子を保護膜として持つ金属微粒子である場合には、有機分子mによって保護膜分子を置換し、非磁性微粒子(金属微粒子)Aの表面に有機分子mを結合させる。これにより、有機分子mの官能基が、非磁性微粒子Aおよび磁性微粒子sに結合し、有機分子mによって微粒子同士をネットワーク状に結合させた状態とする。
【0071】
尚、ここでは、結合微粒子sAと有機分子mとが結合してネットワークを構成することが好ましいが、結合微粒子sAと有機分子mとが結合しておらず、結合微粒子sAの層上に有機分子mの層が積層された状態となっても良い。
【0072】
次に、図6(3)に示すように、先の図6(1)と同様の工程を繰り返すことにより、第2層目の非磁性微粒子Aを分散させる。ここでは、有機分子mに非磁性微粒子Aが結合された状態となることで、3次元のネットワークが形成される。尚、有機分子mと非磁性微粒子Aとが結合しない場合には、有機分子mの層上に第2層目の非磁性微粒子Aの層が積層された状態となる。
【0073】
以降、所定の膜厚に達するまで、図6(2)および図6(3)と同様の工程を繰り返すことにより、所定の膜厚を備えた半導体薄膜7bを形成する。
【0074】
その後は、図1に示したように、半導体薄膜7b上に、例えば金属(Al,Au,Ptなど)からなるソース電極9s、ドレイン電極9dを蒸着法、CVD法、スパッタリング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、ディップコート法、モールド転写法等で形成する。
【0075】
<駆動方法>
以上の第1例または第2例を適用して得られた第2実施形態の半導体装置1bの駆動方法は、第1実施形態の半導体装置と同様であり、磁場形成手段の存在下において駆動されることにより、その機能が発揮される。
【0076】
以上説明した第2実施形態であっても、半導体薄膜7bに磁性微粒子sが導入されたことにより、半導体薄膜7bにおける導電性の制御に磁界Hが用いられようになる。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0077】
尚、上述した各実施形態においては、半導体装置1a,1bとしてボトムゲート・トップコンタクト型の有機薄膜トランジスタを例示した。しかしながら、半導体装置が有機薄膜トランジスタである場合、その構成はボトムゲート・ボトムコンタクト型、トップゲート・ボトムコンタクト型、トップゲート・トップコンタクト型の何れであっても良い。また、半導体装置が有機薄膜トランジスタである場合に限定されることはなく、半導体薄膜を用いた構成に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態の半導体装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の半導体装置の特徴部である半導体薄膜の拡大断面図である。
【図3】第1実施形態の半導体薄膜の形成方法を示す工程図である。
【図4】第2実施形態の半導体装置の特徴部である半導体薄膜の拡大断面図である。
【図5】第2実施形態の半導体薄膜の形成方法(第1例)を示す工程図である。
【図6】第2実施形態の半導体薄膜の形成方法(第2例)を示す工程図である。
【符号の説明】
【0079】
1a,1b…半導体装置、3…基板、7a,7b…半導体薄膜、9s…ソース電極、9b…ドレイン電極、A…非磁性微粒子、m…有機分子、s…磁性微粒子,sA…結合微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性微粒子と、当該磁性微粒子に結合した有機分子とからなる
ことを特徴とする半導体薄膜。
【請求項2】
請求項1記載の半導体薄膜において、
前記有機分子が有機半導体分子からなる
ことを特徴とする半導体薄膜。
【請求項3】
請求項1記載の半導体薄膜において、
前記磁性微粒子と前記有機分子とが交互に結合してネットワークを構成している
ことを特徴とする半導体薄膜。
【請求項4】
請求項1記載の半導体薄膜において、
前記磁性微粒子と共に非磁性微粒子が含有されている
ことをと特徴とする半導体薄膜。
【請求項5】
請求項4記載の半導体薄膜において、
前記磁性微粒子と前記非磁性微粒子とが結合している
ことを特徴とする半導体薄膜。
【請求項6】
請求項4記載の半導体薄膜において、
前記非磁性微粒子は金属微粒子である
ことを特徴とする半導体薄膜。
【請求項7】
請求項1記載の半導体薄膜において、
前記有機分子は、前記磁性微粒子と結合可能な官能基を1つのみ有し、
前記有機分子を結合させた前記磁性微粒子のそれぞれが独立した状態に保たれている
ことを特徴とする半導体薄膜。
【請求項8】
基板表面に磁性微粒子を分散させた状態で固定する工程と、
有機分子を溶解させた溶媒に前記基板表面に分散せた前記磁性微粒子を晒し、当該磁性微粒子に当該有機分子を結合させる工程とを行う
ことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
【請求項9】
請求項8記載の半導体薄膜の形成方法において、
前記基板表面に前記磁性微粒子と共に非磁性微粒子を分散させることにより、当該磁性微粒子と非磁性微粒子との結合微粒子を前記基板表面に固定した状態とし、
その後、前記有機分子を溶解させた溶媒に前記結合微粒子を晒すことにより、当該結合微粒子に当該有機分子を結合させる
ことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
【請求項10】
基板表面に非磁性微粒子を分散させた状態で固定する工程と、
有機分子と磁性微粒子とを含有する溶媒に前記基板表面に分散させた非磁性微粒子を晒すことにより、当該磁性微粒子と当該非磁性微粒子とを結合させた結合微粒子を形成すると共に、当該結合微粒子に前記有機分子を結合させる
ことを特徴とする半導体薄膜の形成方法。
【請求項11】
磁性微粒子と、当該磁性微粒子に結合した有機分子とからなる半導体薄膜を用いて構成された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置において、
前記半導体薄膜における導電性が磁界によって制御されるように構成された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置において、
前記半導体薄膜における導電性が、磁界と共に電界によって制御されるように構成された
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項11記載の半導体装置において、
前記半導体薄膜に接して設けられたソース電極およびドレイン電極を備え、当該ソース電極とドレイン電極との間の前記半導体薄膜部分がチャネル領域として用いられる
ことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−34577(P2008−34577A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205530(P2006−205530)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】