説明

半導体装置、半導体装置の製造方法およびリードフレーム

【課題】封止性能が向上したダイパッド露出型パッケージの半導体装置を提供する。
【解決手段】この半導体装置10は、以下の構成を備えている。裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部222を備えるダイパッド220と、ダイパッド220の裏面の反対側の一面に搭載された半導体チップ100と、ダイパッド220から間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子240と、ダイパッド220、半導体チップ100、および複数のリード端子240の少なくとも一部を封止した封止樹脂300と、を備えている。ダイパッド220の裏面のうち、凸部222および凸部222によって囲まれた領域224は、封止樹脂300の下面から露出しており、凸部222の頂面は、封止樹脂300の下面と同一面を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法およびリードフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リードフレームのダイパッド(アイランド部)の半導体チップ等を搭載した一面の反対の裏面を露出させた状態で、封止樹脂で電子部品を封止した構成のパッケージ(以下、ダイパッド露出型パッケージ)が開発されている。このようなダイパッド露出型パッケージでは、ダイパッドが放熱板としての機能も有する。このため、特に、高消費電力の半導体装置向けに用いられている。
【0003】
特許文献1(特表2007−509485号公報)には、ダイパッド露出型パッケージのうち、QFN(Quad Flat Non−Leaded)の半導体デバイスパッケージが記載されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2004−104155号公報)には、以下のような半導体装置が記載されている。ダイパッドの側面には、複数の突起部が設けられている。この突起部は、半導体素子の搭載面側に折り曲げるように加工されている。半導体素子、ダイパッド、突起部およびインナーリードは封止樹脂で封止されている。このとき、ダイパッドの裏面は、封止樹脂から外へ露出している。これにより、封止樹脂の封止圧力が溝に沿って逃がされるとされている。また、樹脂が回り込んだときには、その封止樹脂を溝で止めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−509485号公報
【特許文献2】特開2004−104155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の中でも、特許文献2に記載されているように、ダイパッド露出型パッケージの半導体装置は、封止工程において、ダイパッドの裏面に封止樹脂のバリ(樹脂バリ)が発生する可能性がある。この樹脂バリが発生すると、露出したダイパッドからの放熱性が悪化してしまう。したがって、ダイパッドから効率よく放熱させるためには、この樹脂バリを除去することが必要となる。
【0007】
発明者は、樹脂バリを除去するために、電解脱脂を行う際に、以下のような課題が生じることを見出した。この電解脱脂工程において、ダイパッドの端部に電流が集中する。このため、ダイパッドの端部と封止樹脂とを、引き剥がす力が働く。したがって、ダイパッドの外縁と、封止樹脂との界面に剥離が生じてしまう可能性があった。ダイパッドの外縁と、封止樹脂との界面に剥離が生じてしまった半導体装置は、極端に耐湿性が低くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部を備えるダイパッドと、
前記ダイパッドの前記裏面の反対側の一面に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドから間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子と、
前記ダイパッド、前記半導体チップ、および前記複数のリード端子の少なくとも一部を封止した封止樹脂と、
を備え、
前記ダイパッドの前記裏面のうち、前記凸部および前記凸部によって囲まれた領域は、前記封止樹脂の下面から露出しており、
前記凸部の頂面は、前記封止樹脂の前記下面と同一面を形成している半導体装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、
裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部を備えるダイパッドと、
前記ダイパッドの前記裏面と反対側の一面に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドから間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子と、
を備えるリードフレームを準備する工程と、
前記リードフレームを金型内に配置して、前記金型内のキャビティに封止樹脂を充填することにより、前記ダイパッド、前記半導体チップ、および前記複数のリード端子の一部を封止する封止工程と、
を備え、
前記封止工程において、前記ダイパッドの少なくとも前記凸部を、前記金型のうち、下金型の一面と接するように配置する半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、
裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部を備えるダイパッドと、
前記ダイパッドから間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子と、
を備えるリードフレームが提供される。
【0011】
本発明によれば、ダイパッドの裏面には、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部が形成されている。また、凸部の頂面は、封止樹脂の下面と同一面を形成している。これにより、封止工程において、この凸部によって、封止樹脂が堰き止められるため、ダイパッドの裏面に樹脂バリが発生しにくい。また、ダイパッドの裏面に樹脂バリが発生しても、樹脂バリを除去するための電解脱脂工程において、印加される電流は、ダイパッドの裏面の凸部に集中する。これにより、ダイパッドの表面側が封止樹脂と剥離することを抑制することができる。したがって、封止性能が向上したダイパッド露出型パッケージの半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、封止性能が向上したダイパッド露出型パッケージの半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。
【図2】図1(a)のB部の拡大図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図8】第1の実施形態の効果を説明するための図である。
【図9】第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1および図2を用い、第1の実施形態に係る半導体装置10について説明する。この半導体装置10は、以下の構成を備えている。裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部222を備えるダイパッド220と、ダイパッド220の裏面の反対側の一面に搭載された半導体チップ100と、ダイパッド220から間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子240と、ダイパッド220、半導体チップ100、および複数のリード端子240の少なくとも一部を封止した封止樹脂300と、を備えている。ダイパッド220の裏面のうち、凸部222および凸部222によって囲まれた領域224は、封止樹脂300の下面から露出しており、凸部222の頂面は、封止樹脂300の下面と同一面を形成している。以下、詳細を説明する。
【0016】
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。図1(a)は、図1(b)におけるA−A'線断面図を示している。また、図1(b)は、半導体装置10を裏面側から見た図を示している。
【0017】
図1(a)のように、ダイパッド220の裏面には、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部222が設けられている。凸部222に関しては、詳細を後述する。
【0018】
また、ダイパッド220の一面の上には、半導体チップ100が搭載されている。半導体チップ100は、接着剤(不図示)を介してダイパッド220上に固着されている。これに用いられる接着剤は、熱伝導性の高いものが好ましい。
【0019】
また、ダイパッド220および半導体チップ100は、矩形状をしているが、この形状に限定されるものではない。また、ダイパッド220の面積は、半導体チップ100よりも広い。これにより、放熱性を向上させることができる。
【0020】
この半導体チップ100の基板は、たとえばシリコン基板である。この半導体チップ100には、たとえば、FET(Field Effect Transistor)などの半導体素子(不図示)が形成されている。また、半導体チップ100上には、多層配線層(不図示)が形成されている。多層配線層の最上層には、電極パッドが設けられている。この電極パッドは、多層配線層に設けられた複数のビアおよび配線を介して、上記した半導体素子に接続している。
【0021】
また、リード端子240は、ダイパッド220から間隔を隔てて、当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に設けられている。ダイパッド220は、このリード端子240よりも低い位置に設けられている。これにより、封止樹脂300から露出されるように形成されている。
【0022】
半導体チップ100の電極パッドは、ボンディングワイヤ400を介して、リード端子240と接続している。ボンディングワイヤ400は、たとえば、Au、またはCuである。
【0023】
また、この半導体装置10は、封止樹脂300によって封止されている。封止樹脂300は、ダイパッド220、半導体チップ100、ボンディングワイヤ400、および複数のリード端子240の少なくとも一部を封止している。
【0024】
ここで、ダイパッド220の裏面のうち、凸部222および凸部によって囲まれた領域224は、封止樹脂300の下面から露出している。これにより、半導体チップ100からの熱を放出することができる。
【0025】
また、凸部222の頂面は、封止樹脂300の下面と同一面を形成している。これにより、樹脂バリを電解脱脂で除去する工程において、ダイパッド220の裏面に設けられた凸部222に、電流が集中する。仮にダイパッド220の凸部222と封止樹脂300との間に剥離が発生しても、封止樹脂300で封止されたダイパッド220の表面側に達することはない。したがって、ダイパッド220の外縁の側面と封止樹脂300とが剥離することを抑制することができる。なお、第1の実施形態の効果については、詳細を後述する。
【0026】
図1(b)のように、封止樹脂300の外縁から、リード端子240の一部が露出している。この露出したリード端子240の端部は、はんだを介して回路基板(不図示)等の端子に接続される。なお、このリード端子240の表面には、はんだの濡れ性を良くするために、SnまたはSn合金がめっきされている。
【0027】
また、ダイパッド220の裏面のうち、ダイパッド220の凸部222および凸部222によって囲まれた領域224は、封止樹脂300の下面から露出している。回路基板に実装する際には、このダイパッド220の裏面は、はんだを介して回路基板に接続される。これにより、さらに放熱性を向上させることが出来る。
【0028】
次に、図2を用いて、ダイパッド220の断面形状について説明する。図2は、図1(a)のB部の拡大図である。
【0029】
図2のように、ダイパッド220の端部の側面から凸部222の側面までの距離aは、たとえば、50μm以上1mm以下である。さらには、距離aは、100μm以上500μm以下であることが好ましい。距離aが上記範囲内であることにより、樹脂バリを電解脱脂で除去する工程において、封止樹脂300とダイパッド220の凸部222の側面との間に剥離が生じても、ダイパッド220の端部の側面から凸部222の側面までの接着力によって剥離が拡大することを防ぐことができる。
【0030】
また、凸部222の幅bは、たとえば、100μm以上1mm以下である。さらには、凸部222の幅bは、400μm以上500μm以下であることが好ましい。凸部222の幅bが上記範囲内であることにより、封止工程において、樹脂バリが凸部222によって囲まれた領域224に侵入することがない。
【0031】
また、凸部222の高さcは、ダイパッド220の外縁の裏面から、たとえば、10μm以上50μm以下である。さらには、凸部222の高さcは、20μm以上30μm以下であることが好ましい。凸部222の高さcが上記範囲内であることにより、樹脂バリを電解脱脂で除去する工程において、封止樹脂300とダイパッド220の凸部222の側面との間に剥離が生じても、当該側面で剥離を止めることができる。また、凸部222の高さが20μm以上であることにより、電解脱脂工程において、凸部222に電流を集中させることができる。一方、凸部222の高さが30μm以下であることにより、実装工程において、半導体装置10の取り付け高さを一定以上とするために、ダイパッド220の裏面に形成するはんだペーストの厚さを過度に厚くする必要が無い。
【0032】
また、ダイパッド220の裏面の凸部222は、たとえば、エッチング加工により形成されている。これにより、リードフレーム200の裏面側をハーフエッチングすることにより、容易に、上記した凸部222の所望の形状を得ることができる。
【0033】
一方、ダイパッド220裏面の凸部222は、たとえば、プレス加工により形成されていてもよい。これにより、凸部222のための金型を用いることにより、容易に大量生産が可能となる。
【0034】
次に、図3〜図6を用い、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法は、以下の工程を備えている。裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部222を備えるダイパッド220と、ダイパッド220の裏面と反対側の一面に搭載された半導体チップ100と、ダイパッド220から間隔を隔てて当該ダイパッド220の外縁に沿って当該ダイパッド220の周囲に配置された複数のリード端子240と、を備えるリードフレーム200を準備する(S110)。次いで、リードフレーム200を金型500内に配置して、金型500内のキャビティに封止樹脂300を充填することにより、ダイパッド220、半導体チップ100、および複数のリード端子240の一部を封止する(封止工程:S120)。この封止工程において、ダイパッド220の少なくとも凸部222を、金型500のうち、下金型540の一面と接するように配置する。以下、詳細を説明する。
【0035】
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明するためのフローチャートである。図3のように、まず、リードフレーム準備工程を行う(S110)。
【0036】
まず、下記のように、半導体チップ100を準備する。はじめに、たとえば、シリコン基板に、FETなどの半導体素子を形成する。次いで、多層配線層を形成する層間絶縁層に、ビアおよび配線を形成する。次いで、多層配線層の最上層に、電極パッドを形成する。次いで、ダイシングを行う。以上により、半導体チップ100を形成する。
【0037】
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明するための図である。なお、図4は、リードフレーム準備工程を示している。図4(a)は、図4(b)のA−A'線断面図である。また、図4(b)は、リードフレーム200を裏面側から見た図である。ただし、図4(b)においては、ボンディングワイヤ400を省略している。以降の図5(b)および図6(b)についても同様とする。
【0038】
図4(a)のように、裏面に凸部222を備えたダイパッド220と、ダイパッド220から間隔を隔てて配置されたリード端子240を備えるリードフレーム200を準備する。ここでは、たとえば、凸部222を、エッチング加工により形成する。なお、凸部222を、プレス加工により形成してもよい。このような加工法を用いることにより、容易に凸部222を形成することができる。
【0039】
次いで、ダイパッド220がリード端子240よりも所定の間隔だけ下方に位置するように、リードフレーム200の吊りリード260を屈曲させる。
【0040】
次いで、ダイパッド220の裏面と反対側の一面に、半導体チップ100を接着剤(不図示)で固定する。次いで、ボンディングワイヤ400により、半導体チップ100の電極パッド(不図示)と、リード端子240の端部上面とを接続する。
【0041】
なお、上記した半導体チップ100を搭載する工程の後に、吊りリード260を屈曲させてもよい。
【0042】
また、図4(b)のように、上述のように、ダイパッド220の裏面には、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部222を備えている。
【0043】
また、複数のリード端子240は、ダイパッド220から間隔を隔てて、当該ダイパッド220の外縁に沿って当該ダイパッド220の周囲に配置されている。
【0044】
また、ダイパッド220は、吊りリード260によって、リードフレーム200の支持フレーム(符号不図示)に接続されている。この吊りリード260によって、封止工程までの間、ダイパッド220はリードフレーム200に固定される(以上、リードフレーム準備工程:S110)。
【0045】
次いで、以下のように、封止工程を行う(S120)。
【0046】
図5は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。なお、図5は、封止工程において、リードフレーム200を金型に配置した状態を示している。図5(a)は、図5(b)のA−A'線断面図である。また、図5(b)は、金型500に配置したときのリードフレーム200を裏面側から見た図である。
【0047】
図5(a)のように、リードフレーム200を金型500内に配置する。このとき、ダイパッド220の少なくとも凸部222を、金型500のうち、下金型540の一面と接するように配置する。これにより、封止樹脂300を、凸部222よりも内側に流入させることがない。したがって、ダイパッド220の裏面のうち、凸部222および凸部222によって囲まれた領域224を封止樹脂300の下面から露出させることができる。さらに、凸部222の頂面と封止樹脂300の下面とが同一面となるように形成することができる。
【0048】
また、図5(b)のように、リードフレーム200を、リード端子240のボンディングワイヤ400によってボンディングされた部分が金型500の端部560よりも内側に来るように配置する。これにより、封止樹脂300によって、リード端子240のボンディングワイヤ400によってボンディングされた部分を封止することができる。
【0049】
次いで、上金型520および下金型540の間のキャビティ内に、封止樹脂300を充填する。これにより、ダイパッド220、半導体チップ100、および複数のリード端子240の一部を封止する(以上、封止工程:S120)。
【0050】
図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。なお、図6は、封止工程後において、金型500からリードフレーム200を取り出した状態を示している。図6(a)は、図6(b)のA−A'線断面図である。また、図6(b)は、封止されたリードフレーム200を裏面側から見た図である。
【0051】
図6(a)のように、上述の封止工程(S120)によって、ダイパッド220、半導体チップ100、および複数のリード端子240の少なくとも一部を含むリードフレーム200は、封止樹脂300によって封止されている。
【0052】
ここで、本実施形態におけるダイパッド220の裏面には、凸部222が形成されているため、封止工程(S120)において、封止樹脂300は、凸部222によって堰き止められて、ダイパッド220の裏面側に回り込むことが少ない。したがって、本実施形態では、凸部222が無い状態よりも樹脂バリ320は発生しにくい。
【0053】
しかし、封止工程(S120)において、ダイパッド220の凸部222の加工精度の範囲で、凸部222が下金型540に当接している部分に微細な隙間を生じる場合などがある。このような場合、微小ながらもダイパッド220の裏面側に、樹脂バリ320が発生することがある。この樹脂バリ320が発生すると、ダイパッド220の裏面からの放熱性が悪化してしまう。したがって、この樹脂バリ320を除去することが必要となる。
【0054】
よって、以下のように、樹脂バリ除去工程を行う(S130)。
【0055】
図7は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。なお、図7は、樹脂バリ320を除去するための電解脱脂工程を示している。
【0056】
図7のように、封止されたリードフレーム200を、NaOHなどのアルカリ液に浸漬する。また、電解脱脂を行う装置側の電極600を陽極として、一方、リードフレーム200を陰極として、電界脱脂工程を行う。このとき、ダイパッド220は吊りリード260と接続しているため、ダイパッド220も陰極として同じ電位となる。
【0057】
上記した電解脱脂工程により、化学的に樹脂バリ320が除去される(以上、電解脱脂工程:S132)。この電解脱脂工程(S132)における本実施形態の効果については、詳細を後述する。
【0058】
次いで、上記した電解脱脂工程(S132)だけでは不十分な場合があるため、樹脂バリ320を物理的に除去するために、ジェットホーニング工程を行う(S134)。この「ジェットホーニング工程」とは、高圧水またはビーズをダイパッド220の裏面に噴射する工程のことである。これにより、物理的に、残存した樹脂バリ320を除去する。
【0059】
次いで、リード端子240およびダイパッド220の裏面に、めっきを行う(S140)。たとえば、めっきする材料としては、たとえば、Snである。これにより、後工程でのはんだの濡れ性を良くする。
【0060】
次いで、リードフレーム200から、吊りリード260が封止樹脂300から露出している部分(符号不図示)、およびリード端子240が支持フレームに接続している部分(符号不図示)をカットする(S150)。次いで、リード端子240を、適宜、所望の形状に屈曲させる。
【0061】
以上のようにして、第1の実施形態に係る半導体装置10を得る。
【0062】
次に、図8を用い、比較例と対比しながら、第1の実施形態の効果について説明する。
【0063】
図8は、第1の実施形態の効果を説明するための図である。また、図8は、上記した電解脱脂工程(S132)を示している。
【0064】
図8(a)は、比較例として、ダイパッド220の裏面に凸部222を有していない場合を示している。この場合では、封止工程(S120)において、ダイパッド220の裏面に、樹脂バリ320が多く発生する。
【0065】
電解脱脂工程(S132)において、電流は、陽極である電極600から、対向する陰極であるダイパッド220の裏面に向けて、平行に流れる。このとき、ダイパッド220の端部には、エッジ効果によって、電流が集中する。このため、ダイパッド220と樹脂を剥がそうとする力が働く。これによって、ダイパッド220の外縁から封止樹脂300の内部へ剥離が進行して、さらにダイパッド220の表面側まで進行してしまう(図8(a)黒矢印で示す太実線部)。
【0066】
よって、比較例では、剥離した部分から水分が侵入しやすくなってしまうため、極端に耐湿性が低くなってしまう。
【0067】
一方、図8(b)は、第1の実施形態として、ダイパッド220の裏面に凸部222を有している場合を示している。
【0068】
第1の実施形態では、封止工程(S120)において、封止樹脂300は凸部222によって堰き止められるため、樹脂バリ320は発生しにくい。このため、ダイパッド220の裏面に樹脂バリ320が発生したとしても、微小な量である。したがって、電解脱脂工程(S132)において、電解脱脂の条件を、比較例よりも弱い条件で行うことができる。
【0069】
電解脱脂工程(S132)では、上記した比較例と同様にして、電流は、陽極である電極600から、対向するダイパッド220の裏面に向けて平行に流れる。このとき、比較例とは異なり、ダイパッド220の裏面に設けられた凸部222に、電流が集中する。このため、凸部222の側面と、封止樹脂300と接した部分に剥離が生じることがある(図8(b)黒矢印で示す太実線部)。しかし、第1の実施形態では、凸部222の側面からダイパッド220の外縁までの距離は長い。これにより、仮に上記した剥離が発生しても、封止樹脂300で封止されたダイパッド220の表面側に達することはない。
【0070】
なお、封止樹脂300の下面より、凸部222の頂面が突出している場合は、比較例と同じように、ダイパッド220の外縁から表面側において、封止樹脂300との界面に剥離が生じてしまう可能性がある。したがって、第1の実施形態のように、凸部222の頂面は、封止樹脂300の下面と同一面を形成していることが好ましい。すなわち、凸部222の側面は、封止樹脂300に覆われていることが好ましい。これにより、上記のように、仮に凸部222の側面と封止樹脂300との間に剥離が生じても、凸部222の側面で止めることができる。したがって、封止樹脂300で封止されたダイパッド220の表面側に達することはない。
【0071】
このようにして、第1の実施形態によれば、ダイパッド220の表面側が封止樹脂300と剥離することを抑制することができる。よって、第1の実施形態によれば、封止性能が向上したダイパッド露出型パッケージの半導体装置10を提供することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。第2の実施形態は、複数のパッケージ20が積層されている点を除いて、第1の実施形態と同様である。以下、詳細を説明する。
【0073】
図9のように、第1の実施形態の封止工程(S120)後のリードフレーム200が、積層されている。このリードフレーム200には、封止樹脂300を有する複数のパッケージ20が備えられている。ここでいう「パッケージ20」とは、ダイパッド220、半導体チップ100、および複数のリード端子240の少なくとも一部が封止樹脂300によって封止されている部分をいう。
【0074】
ここで、第1の実施形態と同様に、ダイパッド220の裏面は、凸部222および凸部222によって囲まれた領域224は、封止樹脂300から露出されている。凸部222によって囲まれた領域224は、封止樹脂300の下面よりも窪んでいる。これにより、凸部222によって囲まれた領域224は、積層時に下側に位置するパッケージ20の上面と接することがない。
【0075】
図2に関して上述したように、凸部222の幅bは、たとえば、100μm以上1mm以下である。さらには、凸部222の幅bは、400μm以上500μm以下であることが好ましい。本実施形態において、凸部の幅bが上記範囲内であることにより、積層時に下側に位置するパッケージ20の上面と接する面積を小さくすることができる。
【0076】
また、凸部222の高さcは、ダイパッド220の外縁の裏面から、たとえば、10μm以上50μm以下である。さらには、凸部222の高さcは、20μm以上30μm以下であることが好ましい。ここで、封止工程(S120)後の封止樹脂300の上面に、シリアルナンバー等の印字がなされている場合等がある。その場合、封止樹脂300の上面には、微小な凹凸が生じている。このため、凸部222の高さcが上記範囲内であることにより、下側に位置するパッケージ20の上面に、上記した凹凸がある場合であっても、当該上面がダイパッド220の裏面によって損傷することを抑制することができる。
【0077】
また、これらの複数のパッケージ20は、上下に積層されている。上側のパッケージ20は、下側のパッケージ20の上面に接して積層されている。なお、図示されていないが、リードフレーム200の横方向にも、同一のパッケージ20が複数備えられており、それらも相互に上下に積層されている。
【0078】
第2の実施形態では、たとえば、図9に示されているように、一方のパッケージ20の上面が、他方のパッケージ20の下面と接するように、積層されている。なお、図9では、上下に二つのリードフレーム200が積層されている場合を示しているが、図中縦方向に、複数のリードフレーム200を積層されていてもよい。
【0079】
これらの積層されたパッケージ20は、この状態でマガジン(不図示)等に収納される。ここで、「マガジン」とは、上記したパッケージ20を搬送するために用いられる収納容器のことをいう。
【0080】
このようにパッケージ20が積層された状態の半導体装置10は、後工程に搬送される。または、半導体装置10は、この状態で、後処理、またはアッセンブリー等を行う別のメーカーに出荷される。
【0081】
次に、第2の実施形態の製造方法について、説明する。第2の実施形態は、封止工程(S120)後に複数のパッケージ20を積層する点を除いて、第1の実施形態と同様である。
【0082】
第1の実施形態と同様の封止工程(S120)により、得られた複数のパッケージ20を、一方のパッケージ20の封止樹脂300の上面と、他方のパッケージ20の封止樹脂300の下面とが接するように順次積層する。
【0083】
次いで、上記した半導体装置10をマガジン(不図示)に収納する。次いで、マガジンに収納した状態で、後工程に搬送、または別のメーカーに出荷する。すなわち、このパッケージ20が積層された形態も、半導体装置10の一実施態様である。
【0084】
次に、第2の実施形態の効果について、比較例と対比しながら説明する。
【0085】
第1の比較例として、ダイパッド露出型パッケージにおいて、ダイパッド220の裏面に凸部222を有していない場合を考える。この第1の比較例のパッケージ20を積層した場合、ダイパッド220の裏面のうち、全面が、下側のパッケージ20の上面と接してしまう。このようにパッケージ20が積層された状態の半導体装置10を搬送する際、金属であるダイパッド220が接した状態で搬送される。このため、搬送時の振動などにより、ダイパッド220の裏面は、下側に位置するパッケージ20の上面を損傷してしまう可能性がある。
【0086】
また、第2の比較例として、封止樹脂300の下面より、凸部222の頂面が露出している場合を考える。この第2の比較例のパッケージ20を積層した場合、ダイパッド220の裏面のうち、凸部222の頂面のみによって、下側のパッケージ20の上面と接してしまう。パッケージ20が積層された状態の半導体装置10を搬送する際、小さい面積の凸部222の頂面のみによって積層された状態で搬送される。このため、積層した状態が不安定となり、搬送時の振動などにより、下側に位置するパッケージ20の上面を損傷してしまう可能性がある。
【0087】
一方、第2の実施形態によれば、ダイパッド220の裏面に凸部222を有している。さらに、パッケージ20の下面から露出した凸部222の頂面は、封止樹脂300の下面と同一面を形成している。また、凸部222によって囲まれた領域224は、封止樹脂300の下面よりも窪んでいる。これにより、パッケージ20を積層した際に、封止樹脂300から露出したダイパッド220が、下側に位置するパッケージ20の上面と接する面積が小さくなる。また、凸部222よりも広い面積を有する封止樹脂300の下面によって、下側に位置するパッケージ20の上面と接している。これにより、安定的にパッケージ20を積層することができる。したがって、パッケージ20を積層した際に、ダイパッド220の裏面によって、下側に位置するパッケージ20の上面が損傷することを抑制することができる。
【0088】
上記した第2の実施形態では、同一のパッケージ20を積層した場合を説明したが、この場合に限らず、他の形態のパッケージ(不図示)に積層する場合にも同様の効果を得ることができる。
【0089】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0090】
10 半導体装置
20 パッケージ
100 半導体チップ
200 リードフレーム
220 ダイパッド
222 凸部
224 凸部によって囲まれた領域
240 リード端子
260 吊りリード
300 封止樹脂
320 樹脂バリ
400 ボンディングワイヤ
500 金型
520 上金型
540 下金型
560 金型の端部
600 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部を備えるダイパッドと、
前記ダイパッドの前記裏面の反対側の一面に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドから間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子と、
前記ダイパッド、前記半導体チップ、および前記複数のリード端子の少なくとも一部を封止した封止樹脂と、
を備え、
前記ダイパッドの前記裏面のうち、前記凸部および前記凸部によって囲まれた領域は、前記封止樹脂の下面から露出しており、
前記凸部の頂面は、前記封止樹脂の前記下面と同一面を形成している半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記凸部の高さは、前記ダイパッドの外縁の前記裏面から10μm以上50μm以下である半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記凸部の高さは、前記ダイパッドの外縁の前記裏面から20μm以上30μm以下である半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置において、
前記凸部の幅は、100μm以上1mm以下に設けられている半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置において、
前記凸部の幅は、400μm以上500μm以下に設けられている半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の半導体装置において、
前記封止樹脂によって封止された複数のパッケージを備え、
上側の前記パッケージは、下側の前記パッケージの上面に接して積層されている半導体装置。
【請求項7】
裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部を備えるダイパッドと、
前記ダイパッドの前記裏面と反対側の一面に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドから間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子と、
を備えるリードフレームを準備する工程と、
前記リードフレームを金型内に配置して、前記金型内のキャビティに封止樹脂を充填することにより、前記ダイパッド、前記半導体チップ、および前記複数のリード端子の一部を封止する封止工程と、
を備え、
前記封止工程において、前記ダイパッドの少なくとも前記凸部を、前記金型のうち、下金型の一面と接するように配置する半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記封止工程後に、前記ダイパッドの前記裏面に生じた前記封止樹脂のバリを取るバリ取り工程を備え、
当該バリ取り工程において、前記バリを電界脱脂で除去する工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の半導体装置の製造方法において、
前記封止工程により得られた複数のパッケージを、一方の前記パッケージの前記封止樹脂の上面と、他方の前記パッケージの前記封止樹脂の下面とが接するように順次積層する工程を備える半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記リードフレームを準備する工程において、
前記凸部を、エッチング加工により形成する半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記リードフレームを準備する工程において、
前記凸部を、プレス加工により形成する半導体装置の製造方法。
【請求項12】
裏面に、平面視で外縁に沿って、当該外縁よりも内側に設けられた凸部を備えるダイパッドと、
前記ダイパッドから間隔を隔てて当該ダイパッドの外縁に沿って当該ダイパッドの周囲に配置された複数のリード端子と、
を備えるリードフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69955(P2013−69955A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208462(P2011−208462)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】