説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】SiC基板を用い、オン抵抗のさらなる低減が図られた半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、研磨等により厚さが200μm以下にされ、( 0 0 0−1)C面を上面とするSiC基板11aと、SiC基板11aの上面上に順に設けられた半導体からなるエピタキシャル成長層12,ショットキー電極14及び上部電極16と、Si面であるSiC基板11aの裏面上に順に設けられたオーミック電極15及び下部電極17とを備えている。SiC基板11aが従来の基板よりも薄いため、動作時のオン抵抗が大きく低減されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素からなる基板を用いた半導体装置及びその製造方法に関し、より詳細には、高耐圧性を有し、大電流で使用される半導体パワーデバイス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高耐圧で、大電流で駆動するパワーデバイスとして、シリコン(Si)を用いた整流素子やスイッチング素子が従来から多く用いられている。しかしながら、近年の技術の発達に伴って、Siの物性限界が問題となってきている。
【0003】
例えば、ある程度以上の耐圧が必要な整流素子としては、Siからなるpnダイオードが用いられているが、スイッチング損失が大きいという不具合がある。このため、よりスイッチング損失が小さいショットキーダイオードがpnダイオードの代替品として期待される。ところが、Siを用いたショットキーダイオードはSiの物性限界のために所望の耐圧を得ることが困難であるため、実使用の用途は限られてしまっていた。そこで、高い耐圧性を有し、且つスイッチング損失が小さい半導体装置を作製するための材料として、炭化珪素(シリコンカーバイド、SiC)が注目を集めている。
【0004】
SiCは、Siに比べてバンドギャップが大きいことから高い絶縁耐性を有しており、また、高温においても安定な性質を有する半導体である。このような特性から、SiCは、スイッチング素子に限らず、パワーデバイスや耐環境素子、高周波デバイスおよび高温動作デバイス等への応用が期待されている。以下に、これまでに提案されてきた従来の半導体装置の一例として、SiC基板上にSiCのエピタキシャル成長層を設けたショットキーダイオードについて説明する。
【0005】
図8は、従来のショットキーダイオードの構造を示す断面図である。同図に示すように、従来のショットキーダイオードは、SiC基板181と、SiC基板181の上面上に設けられ、n型不純物を含むエピタキシャル成長層182と、エピタキシャル成長層182の上に設けられ、Ni(ニッケル)からなるショットキー電極184と、ショットキー電極184の上に設けられ、Ti(チタン)とAu(金)の積層構造を有する上部電極186と、エピタキシャル成長層182の上部にイオン注入により設けられ、B(ボロン)などのp型不純物を含む不純物注入領域183とを備えている。また、従来のショットキーダイオードにおいて、SiC基板181の裏面上にはNiからなるオーミック電極185が設けられ、オーミック電極185の裏面上にはTiとAuの積層構造を有する下部電極187が設けられている。SiC基板181としては、例えばn型の( 0 0 0 1)オフ面を上面とする厚さ400μm程度の4H−SiC基板が用いられている。上部電極186や下部電極187は、半導体装置のアノード電極上にアルミニウムなどの配線を設けたり、半田を用いてリードフレームに半導体装置を固定するために必要であるが、整流素子としての動作には関係がない。SiCからなるエピタキシャル成長層182の適切な膜厚や不純物濃度を選択することにより、順方向に流れる電流が数アンペア以上で、逆方向耐圧が600V以上、場合によっては1000V以上の整流素子が得られる。図8に示すような縦型の半導体装置では、駆動電流を大きくするためにエピタキシャル成長層182の上面とSiC基板181の裏面とにそれぞれ電極を設けることが一般的である。
【0006】
次に、従来のショットキー電極および該ショットキー電極を備えた樹脂封止型半導体装置の製造方法について説明する。
【0007】
図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)は、従来のショットキーダイオードを備えた樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0008】
まず、図9(a)に示す工程で、厚さが約400μmで直径2インチのn型不純物を含むSiC基板181(4H−SiC基板)を準備する。次いで、CVD法などによりSiC基板181の上面上にn型不純物を含むSiCからなるエピタキシャル成長層182を形成する。
【0009】
次に、図9(b)に示す工程で、エピタキシャル成長層182上にSiO からなるマスクを形成した後、ボロンなどのp型不純物イオンを注入する。次いで、マスクを除去した後、基板に1500℃以上の高熱処理を施すことにより注入したイオンの活性化を行う。この処理によって不純物注入領域183が形成される。この不純物注入領域183は、電界集中を防ぐためのガードリングとして機能する。
【0010】
次いで、図9(c)に示す工程で、SiC基板181の裏面の全面に例えばNiを堆積し、これに続いて1000℃程度の熱処理を行うことにより、オーミック電極185を形成する。
【0011】
次に、図10(a)に示す工程で、エピタキシャル成長層185の上面上にNiを堆積した後パターニングすることにより両端部が不純物注入領域183とオーバーラップするショットキー電極184を形成する。なお、先の図9(c)において、ショットキー電極184を形成する前にオーミック電極185を形成するのは、ショットキー電極184の形成後に熱処理を行なうと、ショットキー接合がオーミック接合に変化する場合があるからである。
【0012】
次に、図10(b)に示す工程で、ショットキー電極184の上にTiとAuとを積層してパターニングすることにより、上部電極186を形成する。そして、オーミック電極185の裏面上にTiとAuとを積層することにより、下部電極187を形成する。
【0013】
この後、ウエハ状の基板を分割し、図10(b)に示すような半導体チップを作製する。
【0014】
次に、図10(c)に示す工程で、半田201を用いて半導体チップをリードフレームの上面に固定した後、上部電極186とリードフレームの陽極204とを金属からなるワイヤ203によって接続する。次に、半導体チップ、ワイヤ203およびリードフレーム202の上面を樹脂205で封止することにより、樹脂封止型の半導体装置を作製できる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来のショットキーダイオードは、Siからなる半導体装置に比べれば耐圧性が高い。このようなパワーデバイスでは、駆動時の電流が大きいため、電力損失を小さくすることが要求される。
【0016】
しかしながら、従来の半導体装置はオン抵抗が大きく、SiCの優れた特性を十分に発揮できていなかった。これは、ショットキーダイオードに限らず、pnダイオードや縦型MISFETなど、デバイスの上面から裏面、あるいはその逆方向に電流が流れる縦型パワーデバイスに共通する不具合である。
【0017】
本発明の目的は、SiC基板を用い、オン抵抗のさらなる低減が図られた半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の半導体装置は、裏面全体が削られたSiC基板と、上記SiC基板の上面上に設けられた半導体からなる半導体層とを備え、動作時には、キャリアが上記SiC基板および上記半導体層を通過して縦方向に走行する。
【0019】
この構造により、SiC基板が薄くなっているので、縦方向(基板面に対し垂直方向)の抵抗が従来の半導体装置に比べて大幅に低減されている。
【0020】
上記SiC基板の厚みは250μm以下であることにより、従来のSiC基板を用いた半導体装置では達成できないレベルにまで動作時のオン抵抗を低減することができる。
【0021】
上記SiC基板の厚みは200μm以下であることがより好ましい。
【0022】
上記半導体層の上方に金属からなる電極が設けられ、上記SiC基板の裏面上には、上記SiC基板とオーミック接触し、金属からなる下部電極が設けられていることにより、動作時のオン抵抗が低減された縦型半導体装置が得られる。
【0023】
上記下部電極は、アルミニウム,チタン,ニッケル,タングステン,クロム,モリブデン及び銀のうちから選ばれた1つの材料を含むことが好ましい。
【0024】
上記SiC基板の( 0 0 0−1)カーボン面上に上記エピタキシャル成長層が設けられており、上記SiC基板の( 0 0 0 1)シリコン面上には上記下部電極が設けられていることにより、特にショットキーダイオードやpnダイオードの場合には、1000℃以上の高熱処理をしなくても下部電極におけるオーミック接触を形成することができる。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法は、SiC基板と、上記SiC基板上に設けられた半導体層と、上記半導体層の上方に設けられた上部電極と、上記SiC基板の裏面上に設けられ、オーミック電極となる下部電極と備えた半導体装置の製造方法であって、
上記上部電極を形成する工程(a)と、上記工程(a)の後に上記SiC基板の厚さを薄くする工程(b)とを含んでいる。
【0026】
この方法により、基板部分の抵抗が低減され、オン抵抗が低減された半導体装置を製造することができる。
【0027】
上記工程(b)の後に上記下部電極を形成する工程(c)をさらに含んでいることにより、下部電極よりも上部電極を先に作製するので、SiC基板を薄くする工程を上部電極の形成後に行なうことができるようになる。このため、基板が薄い状態での工程を減らすことができ、基板の反りや破損の危険を低減することができる。また、SiC基板を薄くする工程が上部電極の位置合わせに影響しないので、上部電極を形成する際のパターニングを良好に行うことができる。
【0028】
上記工程(c)の後、上記SiC基板および上記半導体層を分離して半導体チップを製造する工程(d)と、上記工程(d)の後、上記半導体チップをリードフレーム上に載置して熱処理を行なうことにより上記SiC基板と上記下部電極との間にオーミック接合を形成する工程(e)とをさらに含み、上記工程(c)では、熱処理工程を省略することにより、工程数を減らせるので、製造コストを引き下げると共に、装置の歩留まりも向上させることができる。
【0029】
上記SiC基板の( 0 0 0−1)カーボン面上に上記半導体層が設けられ、上記工程(c)では、上記SiC基板の( 0 0 0 1)シリコン上に上記下部電極が設けられることにより、1000℃以上の高熱処理をせずとも下部電極をオーミック電極とすることができるので、下部電極よりも先に上部電極を形成することが可能になる。その結果、上部電極の形成後にSiC基板を薄くすることが可能になる。
【0030】
上記半導体層に各素子間を分離するための溝を形成する工程(f)をさらに含むことにより、素子分離が確実に行われると共に、この溝を利用して半導体チップに分割しやすくすることができる。また、基板上に溝が形成されていることで、製造工程中に生じるクラックなどの欠陥を溝の部分で止めることができる。すなわち、歩留まりを向上することができる。
【0031】
上記溝の深さが1μm以上であることが好ましい。
【0032】
上記SiC基板の厚みは250μm未満であることにより、従来の半導体装置よりもオン抵抗の小さい半導体装置を製造することができる。
【0033】
特に、上記SiC基板の厚みは200μm以下であることが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】
半導体装置の抵抗成分としては、半導体層と電極との接触抵抗、半導体層の抵抗、SiC基板自体の抵抗など種々のものがある。従来の半導体装置では、SiC基板の厚みが400μmと厚いため、この抵抗成分のうちSiC基板の抵抗が大きな部分を占めている。そのため、本願発明者らは検討の結果、SiC基板の抵抗を低減することを目指すこととした。
【0035】
SiC基板の抵抗を低減するための直接的な方法としては、SiC基板の厚みを薄くすることが考えられる。厚さが250μm程度の基板は市販されているが、これを用いても抵抗値が十分に低いとは言えないため、本願発明者らは、SiC基板の厚みを研磨やサンドブラスト、リアクティブイオンエッチング(RIE)などによって物理的に薄くすることとした。これにより、SiC基板の厚みを例えば250μm未満にすることで、SiC基板の抵抗値を要求されるレベル以下にまで低減することができた。さらに、SiC基板の厚みは200μm以下であるとさらに大幅に抵抗値を低減できた。どの半導体装置にも基板は用いられるため、基板を薄くすることでほぼすべての縦型半導体装置のオン抵抗を低減することができる。
【0036】
ところが、基板を薄くした状態で1000℃以上の高熱処理をした場合、基板が反ってフォトレジストを形成する位置がずれる等の現象が見られることがあった。このような高熱処理は、半導体装置の製造工程において、オーミック電極を形成する際や不純物を活性化させる際に必要となる。また、SiC基板を薄くすることで、破損や予期せぬクラックが基板に生じやすくもなる。そのため、SiC基板の厚みを十分に薄くするための方法が必要であると考えられた。
【0037】
そこで、例えば、ショットキーダイオードの製造工程において基板の反りおよびクラックの発生を防ぐために、高熱処理の後にSiC基板を薄くする方法が検討された。
【0038】
この検討段階で、本願発明者らはSiC基板の面方位に着目した。( 0 0 0 1)4H−SiC基板をはじめとするSiC基板には、Si(シリコン)面とC(カーボン)面があり、通常は面上にエピタキシャル成長層を形成しやすいSi面を上面として半導体装置が製造される。Si面上にNiなどの金属を堆積してから1000℃以上の熱処理をした場合、Niと基板がオーミック接触となるため、従来のショットキーダイオードの製造工程において、図9(c)に示すショットキー電極の形成工程は、図10(a)のオーミック電極の形成工程の後に置かねばならなかった。
【0039】
そこで、本願発明者らはC面を上面、Si面を裏面としてショットキーダイオードを製造することを試みた。その結果、Si面上には高温処理をしなくてもオーミック電極を形成しやすく、C面上にはショットキー電極が形成しやすいため、オーミック電極よりも先にショットキー電極を形成することが可能であることが分かった。この方法により、基板上にショットキー電極を形成後にSiC基板の厚さを薄くでき、且つオーミック電極の形成工程で1000℃以上の高温にする必要がなくなった。
【0040】
以下の実施形態では、この方法を用いて形成された半導体装置について説明する。
【0041】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るショットキーダイオードの構造を示す断面図である。1つの樹脂封止型半導体装置に搭載される半導体チップには、このような半導体素子が多数個集積されていることもある。ここでは、1つのショットキーダイオードについて説明する。
【0042】
本実施形態のショットキーダイオードの特徴は、SiC基板11aの厚みが200μmと薄いことと、ショットキー電極14がSiC基板11aのC面側に設けられていることである。
【0043】
図1に示すように、本実施形態のショットキーダイオードは、厚さが約200μmで、n型不純物を含むSiC基板11aと、SiC基板11aの上面上に設けられた厚さ約10μmのn型SiCからなるエピタキシャル成長層12と、エピタキシャル成長層12の上部にボロンを注入することにより設けられた不純物注入領域13と、エピタキシャル成長層12の上面上に設けられ、両端部が不純物注入領域13とオーバーラップするように設けられた第1の電極層18と、SiC基板11aの裏面全体の上に設けられた第2の電極層19とを備えている。
【0044】
SiC基板としては、窒素を含む4H−SiCからなる( 0 0 0 1)基板を用いており、( 0 0 0−1)(「0001バー」と読む)C面から(11−20)方向に8°オフ角をつけた面を上面とし、Si面を裏面としている。このSiC基板11aの抵抗率は、0.02Ω・cmである。
【0045】
また、エピタキシャル成長層12には窒素が1×1016cm−3の濃度で含まれている。
【0046】
第1の電極層18は、エピタキシャル成長層12とショットキー接触し、厚さが約200nmのTiからなるショットキー電極14と、ショットキー電極14上に設けられ、厚さが約3μmのAuからなる上部電極16とから構成されている。ショットキー電極14の大きさは、例えば0.63mm×0.63mmであり、不純物注入領域13とはそれぞれ約15μmずつオーバーラップしている。また、第2の電極層19は、SiC基板11aの裏面とオーミック接触し、厚さ400nmのAl(アルミニウム)からなるオーミック電極15と、オーミック電極15の裏面上に設けられ、厚さ400nmのAuからなる下部電極17とから構成されている。
【0047】
次に、本実施形態のショットキーダイオードの抵抗成分について説明する。
【0048】
本実施形態のショットキーダイオードが動作する際のオン抵抗Ronは、
on=Rsub+Repi+Rcont+Rother
で表される。ここで、RsubはSiC基板11aの抵抗、Repiはエピタキシャル成長層12の抵抗、Rcontは各部材間に生じる接触抵抗、Rotherはリードフレームやワイヤの抵抗を含むその他の抵抗成分である。接触抵抗には、SiC基板11aとオーミック電極15の界面や下部電極17とリードフレームの界面にある半田で生じる抵抗などが含まれる。なお、RsubおよびRepiは図1中の縦方向、つまり、基板面に対して垂直方向の抵抗成分である。
【0049】
上述の抵抗成分の中で支配的となるのがRsubとRepiである。本実施形態で例として挙げられている4H−SiC基板では、基板面に対して平行な方向と垂直な方向とで電気伝導率の異方性を示す。これを考慮してRsubとRepiとを概算すると、図8に示す従来のショットキーダイオード180では、SiC基板の厚さが400μmの場合、Rsubが約0.7mΩ・cm、Repiが約0.8mΩ・cmとなる。
【0050】
これに対し、本実施形態のショットキーダイオードでは、SiC基板の厚さが薄くなっているので、例えば基板の厚さが200μmの場合、Rsubが約0.35mΩ・cmとなる。つまり、基板を薄くすることにより、SiCからなる部分の抵抗を20%以上も低減させることができる。また、後に説明するショットキーダイオードの製造方法によれば、SiC基板の厚みを200μm以下にすることもできるので、さらに素子の抵抗成分を低減することが可能である。
【0051】
また、本実施形態のショットキーダイオードの耐圧は従来のものとほぼ同じである。これは、耐圧を決定するエピタキシャル成長層12の厚みが本実施形態のショットキーダイオードと従来のものとで本実施形態ほぼ同一であるためである。よって、本実施形態のショットキーダイオードでは、耐圧性を犠牲にすることなく抵抗成分が低減されている。このため、導通損失も小さくなっている。
【0052】
なお、本実施形態ではエピタキシャル成長層12がSiCからなる例を説明したが、Siや、他の半導体からなっていてもよい。
【0053】
次に、本実施形態のショットキーダイオードおよび該ショットキーダイオードが集積された半導体チップの製造方法を説明する。
【0054】
図2(a)〜(c)および図3(a)〜(c)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。ただし、説明を簡単にするために、マスク合わせのためのアラインメントキーの形成工程や、層間絶縁膜の形成工程は省略する。
【0055】
まず、図2(a)に示す工程で、SiC基板11を準備する。具体的には、( 0 0 0−1)C面から(11−20)方向に約8度のオフ角をつけた面を上面とする4H−SiC基板を準備する。そして、SiC基板11の上面を十分に洗浄する。なお、SiC基板12は例えば厚さが400μmで直径2インチのウエハの状態であるが、本実施形態ではウエハ上に多数設けられるショットキーダイオードのうちの1つについて説明する。
【0056】
次に、図2(b)に示す工程で、炭素の原料ガスとしてプロパンガスを、シリコンの原料ガスとしてシランガスを、キャリアガスとして水素を用いたCVD法によってSiC基板11上にn型不純物を含む4H−SiCからなるエピタキシャル成長層12を形成する。エピタキシャル成長層12の厚さは10μm程度とし、n型不純物としては、例えば窒素を用いる。ここで、エピタキシャル成長層12の上面も( 0 0 0−1)C面となっている。
【0057】
続いて、基板の上面を水素雰囲気に保つことにより、エピタキシャル成長層12の表面処理を行なう。
【0058】
次に、図2(c)に示す工程で、エピタキシャル成長層12の上に厚さ約600nmのSiO 膜を形成した後、フォトレジストによるパターンを形成し、バッファードフッ酸を用いてSiO 膜のエッチングを行なう。これにより、エピタキシャル成長層12の上に0.6mm×0.6mmのダミーマスク21を形成する。
【0059】
次いで、エピタキシャル成長層12の上面側にダミーマスク21をマスクとしてボロンイオンなどのp型不純物を注入することにより、エピタキシャル成長層12の上部のうち、ダミーマスク21に保護されない領域に深さ約150nmの不純物注入領域13を形成する。この際のイオン注入条件は、注入角度が0度で注入温度が500℃、注入エネルギーが30keV、注入量が1×1015atoms/cm である。
【0060】
その後、基板を加熱炉内に設置し、窒素雰囲気下1100℃で90分間の熱処理を行なう。これにより、不純物注入領域13に含まれる不純物が活性化される。
【0061】
次に、バッファードフッ酸を用いたエッチングによりダミーマスク21を除去した後、エピタキシャル成長層12上に厚さ約200nmのTi層と、厚さ100nmのAuとからなる電極層を順に形成する。このAu層を形成することにより、これに続くAuのめっき処理を行いやすくすることができる。ちなみに、このAu層は、後の上部電極16の一部になる。次に、フォトレジストのパターンを形成してからAuのめっき処理を行って厚さ約3μmのAuを堆積する。続いて、レジストを除去した後にAu膜のうちめっきされていない部分をエッチング処理で除去し、Tiの一部もエッチング処理で除去する。これにより、エピタキシャル成長層12の上面上に設けられた、大きさが0.63mm×0.63mmのTiからなるショットキー電極14と、ショットキー電極14上に設けられたAuからなる上部電極16とがそれぞれ形成される。
【0062】
次に、図3(b)に示す工程で、SiC基板11の裏面を、基板の厚さが約200μmになるまで研磨する。ここで研磨された基板を、以下SiC基板11aとする。なお、SiC基板の厚さが200μm以下になるまで研磨してもよい。
【0063】
次に、図3(c)に示す工程で、SiC基板11aの裏面を十分に洗浄した後、SiC基板11aの裏面の全面上に厚さ200nm程度のAlからなるオーミック電極15と厚さ400nm程度のAuからなる下部電極17とを順に形成する。続いて、窒素雰囲気下、基板の熱処理を300℃、5分間の条件で行い、ショットキー電極14およびオーミック電極15を安定化させる。
【0064】
本実施形態の方法においては、金属とオーミック接触しやすいSiC基板のSi面上にオーミック電極15を形成しているので、電極形成後に1000℃以上の熱処理を行なわなくてもオーミック電極を形成することができる。
【0065】
次に、図3(c)に示すショットキーダイオードが多数形成されたウエハ状の基板は分割され、例えば1mm角の半導体チップとなる(図示せず)。
【0066】
以上の工程により、本実施形態のショットキーダイオードは作製される。
【0067】
本実施形態のショットキーダイオードの製造方法によれば、パターニングの必要なショットキー電極の形成工程後にSiC基板11の研磨を行っているので、エッチング用のマスクを形成する際などに基板の反りによるマスクずれを起こしにくくなっている。また、例えば厚さ200μmのSiC基板を最初から使用する場合に比べて、製造工程中に基板が破損する確率を低減することができる。
【0068】
また、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法において、図3(a)に示すショットキー電極の形成工程後にSiC基板11の研磨が可能になったのは、Si面上にオーミック電極15を形成するためである。SiC基板のSi面上にオーミック電極15を形成することで、1000℃以上の高熱処理を行わなくてもSiC基板11aとオーミック電極15との間にオーミック接触をとることが可能になる。これにより、ショットキー電極14の形成後にオーミック電極15を形成することが可能になったため、オーミック電極15の形成工程の直前にSiC基板11を研磨することが可能になったのである。本実施形態のように、300℃、5分間の処理の場合には、1000℃で基板を処理する場合に比べてオーミック電極15とSiC基板11aとの接触抵抗は大きくなる可能性はあるが、オーミック電極15のサイズは大きいため、SiC基板を薄くしたことによる抵抗の減少の方が大きく、問題とはならない。
【0069】
以上のように、本実施形態の方法で製造されたショットキーダイオードは、基板を薄くすることにより、SiCからなる部分の抵抗が低減されている。また、基板が薄いことにより、ウエハから半導体チップに分割しやすくなる。
【0070】
なお、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法において、図3(c)に示すオーミック電極15の形成工程の前にSiC基板11aの裏面に不純物の注入、あるいはプラズマ処理などの表面処理を施すことにより、オーミック接合をより形成しやすくすることができる。
【0071】
なお、本実施形態のショットキーダイオードにおいて、エピタキシャル成長層12はSiCから構成される例を示したが、これに代えてSi、GaN(窒化ガリウム)、ダイヤモンドなど、SiC基板の上に堆積できる材料を用いることができる。また、エピタキシャル成長層でなくとも、アモルファス、多結晶のいずれの結晶状態のものを用いてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、ショットキー電極をTiで、オーミック電極をAlで構成したが、それぞれの面でショットキー接合およびオーミック接合を形成できる金属であれば、いかなる金属でもよい。具体的なオーミック電極の例としてはNiよりも低仕事関数の金属が好ましく、アルミニウム、チタン、タングステン、クロム、モリブデン、銀、およびこれらを含むことが好ましい。もちろんNiを用いることもできる。また、ショットキー電極14もTiの他、Niなどの他の金属を含んでいてもよい。
【0073】
また、本実施形態においては、SiC基板として4H−SiCの他にも6H−SiC、15R−SiC、3C−SiCといったポリタイプからなる基板を用いてもよい。
【0074】
また、本実施形態においては、オーミック電極をn型の( 0 0 0 1)Si面上に形成する例を説明したが、ショットキー電極およびその他の構成を壊すことなくオーミック電極を形成できるのであれば、( 0 0 0 1)Si面以外の面を用いてもよい。用いるSiC基板の導電型もn型のみならず、p型であってもよい。
【0075】
また、本実施形態のショットキーダイオードにおいて、各電極や部材のサイズは特に限定されない。なお、図2(a)に示す工程で準備したSiC基板の厚さは400μmであるが、250μmのものも市販されているので用いることができる。
【0076】
また、本実施形態のショットキーダイオードにおいて、SiC基板の厚さは200μm以下であったが、250μmを下回る厚さであれば、従来のショットキーダイオードよりもオン抵抗を低減することはできる。
【0077】
なお、本実施形態のショットキーダイオードの製造方法においては、不純物注入領域13を含めたエピタキシャル成長層12からSiC基板11の上部に至る溝を設けておくことが好ましい。
【0078】
図4(a)〜(c)は、本実施形態のショットキーダイオードの製造工程において、SiC基板上の複数のショットキーダイオードを示す断面図である。同図では、図3(a)に示すショットキー電極14の形成工程の時点で各ショットキーダイオード間に溝が設けられている例を示している。この溝は、紙面の手前から奥に向かう方向と、横方向の両方向に設けられている。また、半導体チップに分割する際には、多数の溝のうち目的の溝の部分から分割する。
【0079】
図4(a)は、図3(a)と同じくショットキー電極14の形成工程を示している。本実施形態のショットキーダイオードにおいては、ウエハ上に形成された各ショットキーダイオードが、SiC基板11の上部にまで至る溝41によって素子分離されている。この溝41は、リアクティブイオンエッチング(RIE)により設けてもよいし、物理的なスクライブラインであってもよい。
【0080】
次に、図4(b)に示す工程でSiC基板11が研磨されてSiC基板11aとなる。そして、図4(c)に示す工程でオーミック電極15および下部電極17が形成された後、基板の熱処理が行われる。
【0081】
その後、所望の位置の溝41に沿って基板を分割し、多数のショットキーダイオードを有する半導体チップを作製する。
【0082】
ここで示す例のように、各ショットキーダイオードを分離する溝41を設けることにより、素子分離が良好にできる上、この溝に沿って容易にウエハが分割されるため、半導体チップを容易に作製することもできる。また、溝41を設ける工程はウエハの分割前であればいつ行ってもよいが、SiC基板を研磨する前に行なうことが好ましい。SiC基板の研磨を行なう前に溝41が形成されていることにより、基板にクラックなどの損傷が生じた場合に、その損傷を溝の部分で止めることができる。すなわち、この方法によれば、クラックなどによる素子の不良率を低減させることが可能になる。
【0083】
また、溝41は、SiC基板11aの上部に達していてもよいが、エピタキシャル成長層12までの深さであっても素子分離は問題なく行える。ただし、素子分離を良好に実現すると共に容易にチップ状に分割するためには、溝41の深さが1μm以上で、SiC基板11aの上部に達することが好ましい。
【0084】
なお、本実施形態ではSiC基板の厚みを薄くしたショットキーダイオードについて説明したが、pnダイオードや縦型MISFETなど、他の縦型デバイスであってもSiC基板を薄くすることによってオン抵抗を大きく低減することができる。
【0085】
なお、本実施形態のショットキーダイオードでは、十分にエピタキシャル成長層12を厚くして、SiC基板11を全て研磨してもよい。一般に、エピタキシャル成長層の方が基板よりも結晶性が優れているので、耐圧の向上などを期待できる場合がある。
【0086】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態で説明したショットキーダイオードなどの素子を有する半導体チップが搭載された樹脂封止型半導体装置について説明する。
【0087】
図5(a)〜(c)は、ショットキーダイオードを有する半導体チップの実装工程を示す断面図である。ここで、各部材の符号は第1の実施形態と同じとする。
【0088】
まず、図5(a)に示す工程で、ウエハから分割され、多数のショットキーダイオードが設けられた半導体チップを準備する。
【0089】
すなわち、図3(c)または図4(c)に示す工程の後にダイシングを行い、多数のショットキーダイオードを備える半導体チップ10を準備する。
【0090】
次に、図5(b)に示す工程で、例えば銅などからなるTO−220型のリードフレーム51を準備し、リードフレーム51の上面上に半導体チップ10を載置する。
【0091】
具体的な手順としては、まずリードフレーム51を窒素やアルゴン(Ar)などの不活性な雰囲気に置き、その状態で金錫(AuSn)の融点以上である300℃程度に加熱する。続いて、金錫(AuSn)合金からなる半田52をリードフレーム51の上面上に置いて溶融させた後、半導体チップ10を裏面側からリードフレーム51上に載置する。その後、半導体チップ10の上部から適度な圧力をかけることにより、半導体チップ10の裏面(下部電極17の裏面)とリードフレーム51の上面が接着される。この時、半導体チップ10のSiC基板11aは熱伝導性に優れているため、リードフレームの加熱温度が伝達されやすく、半導体チップ10全体が効率良く加熱される。このため、本工程を行なうことで、第1の実施形態において説明した、オーミック電極およびショットキー電極を安定化するための熱処理を省略することが可能になる
次に、図5(c)に示す工程で、上部電極16とリードフレームの陽極54とを例えばAlからなるワイヤ53により接続する。その後、半導体チップ10、ワイヤ53およびリードフレーム51の上面を樹脂で封止する。そして、リードフレーム51を分割することにより、樹脂封止型半導体装置が作製できる。
【0092】
上述の工程により製造された樹脂封止型半導体装置は、図5(c)に示すように、金属からなるリードフレーム51と、リードフレームの上面上にAuSnからなる半田を用いて接着された多数のショットキーダイオードを有する半導体チップ10と、リードフレーム51の一部であって外部端子として機能する陽極54とショットキーダイオードの上部電極16とを接続するAlからなるワイヤ53と、リードフレーム51の上面,半導体チップ10およびワイヤ53を封止する封止樹脂55とを備えている。
【0093】
本実施形態の樹脂封止型半導体装置は、半導体チップ10のSiC基板11aの厚さが200μm程度にまで薄くなっているので、従来の樹脂封止型半導体装置に比べて駆動時の電力損失が著しく低減されている。
【0094】
本実施形態では、半田の材料をAuSnとして説明したが、素子の構造や使用環境などの状況に応じて別の材料を用いてもよい。この場合、図5(b)に示す工程では、半田材料の融点以上でショットキー接触が保持可能な温度以下にリードフレームを加熱すればよい。
【0095】
また、本実施形態の樹脂封止型半導体装置では、オーミック電極15とショットキー電極14の構成材料をそれぞれTiとAlとし、上部電極16および下部電極17をAuとしたが、ショットキー電極14と上部電極16とを同一材料で一体として形成してもよいし、オーミック電極15と下部電極17とが同一材料で一体として形成されていてもよい。また、電極の材料は、金属であれば特に限定はない。
【0096】
なお、本実施形態の樹脂封止型半導体装置には、ショットキーダイオードを有する半導体チップを用いたが、基板の裏面上と上面上のそれぞれに電極を有し、基板面に垂直方向に電流が流れる縦型半導体素子を有するチップであれば用いることができる。例えば、縦型MISFETやpnダイオードなどを有する半導体チップも同様の方法で電力損失の少ない樹脂封止型半導体装置とすることができる。
【0097】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態として、SiC基板を用いたpnダイオードについて説明する。
【0098】
図6は、本実施形態のpnダイオードの構造を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態のpnダイオード60は、厚さが200μm以下でn型不純物を含むSiC基板21aと、SiC基板21aの上面上にエピタキシャル成長により設けられた厚さが約20μmでn型不純物を含むn型SiC層61と、n型SiC層61のうち一部の上にエピタキシャル成長により設けられ、厚さ約1.5μmでp型不純物を含むSiCからなるp型SiC層62と、p型SiC層62上に設けられた金属からなる第1の電極層66と、第1の電極層66の両側方に設けられ、p型SiC層62およびn型SiC層61の上面を覆う絶縁膜63とを備えている。また、本実施形態のpnダイオード60において、SiC基板21aの裏面の全面上には金属からなる第2の電極層29が設けられている。第1の電極層66は、p型SiC層62の上に設けられた厚さ約200nmの第1のオーミック電極64と、第1のオーミック電極64上に設けられたAuなどからなる厚さ約3μmの上部電極65とから構成されている。そして、第2の電極層29は、Niからなる厚さ約200nmの第2のオーミック電極25と、例えばAuからなる厚さ約400nmの下部電極27とから構成されている。なお、本実施形態のpnダイオードでは、SiC基板21aとして( 0 0 0 1)オフ面を主面とする4H−SiC基板を用いている。ただし、第1の実施形態とは異なり( 0 0 0 1)Si面を上面としている。
【0099】
本実施形態のpnダイオードは、SiC基板21aの厚みが200μm以下と、従来のpnダイオードに比べて薄くなっているので、動作時のオン抵抗をより小さくすることが可能である。
【0100】
次に、本実施形態のpnダイオード60の製造方法について簡単に説明する。
【0101】
まず最初に、厚さ400μm程度のSiC基板を準備し、CVD等の公知の方法によりSiC基板上に順次n型SiC層61、p型SiC層62を形成する。ここで、図6のようなメサ型構造をRIEにより形成する。
【0102】
次に、絶縁膜63を熱酸化やCVDにより形成し、その一部に開口部を設け、EB蒸着などの公知技術を用いて第1の電極層66を形成する。
【0103】
続いて、SiC基板を裏面であるC面側から研磨し、厚さを200μm以下とする。その後、EB蒸着など公知の方法により、SiC基板21aの裏面上に第2の電極層29を形成する。次に、基板の熱処理を行って第1のオーミック電極64および第2のオーミック電極25とSiC基板との接触をオーミック接触とする。
【0104】
本実施形態のpnダイオードの製造方法においても、第1の実施形態と同様に第2の電極層29よりも先に第1の電極層66を形成し、第2の電極層29を形成する直前にSiC基板を研磨している。この方法により、基板が薄い状態で熱処理されることがないので、第1のオーミック電極64を形成する際の位置ズレを防ぐことができる。ここで、第1のオーミック電極64の構成材料としてはAlがよく用いられるが、オーミック接触をとるための熱処理を1000℃以上の高温で行なう場合、Alでは破損しやすいため、Alよりも融点の高い金属をAlの上に積層することが好ましく、例えばAl/TiやAl/Niなどが用いられる。ただし、SiC基板の研磨は、製造工程中のいずれの時点で行ってもよい。特に、第1の電極層66の位置合わせを厳密に行なう必要がない場合には、第1の電極層66の形成前にSiC基板の研磨を行っても構わない。
【0105】
なお、本実施形態のpnダイオードにおいても、ショットキーダイオードの場合と同様、隣接する素子との間に溝を設けてもよい。この際には、ショットキーダイオードの場合と同じく溝はSiC基板21aの上部まで達する深さであることが好ましいが、溝の深さが1μm以上あればある程度の効果が得られる。
【0106】
また、本実施形態のpnダイオードにおいて、n型SiC層61およびp型SiC62の材料はSiCを用いたが、Si、GaN(窒化ガリウム)、ダイヤモンドなど、SiC基板上に形成できる材料であれば用いることができる。
【0107】
なお、本実施形態では、SiC基板の厚みを薄くした素子の例としてpnダイオードを挙げたが、同様の方法でSiC基板を薄くすることで、動作時のオン抵抗が低減された縦型MISFETを作製することができる。
【0108】
図7は、SiC基板の厚みを薄くした縦型MOSFETの構造の一部を示す断面図である。図6のpnダイオードと共通の部材については同じ符号を付している。
【0109】
図7に示すように、本発明の縦型MOSFET70は、SiC基板21aと、SiC基板21aの上面上に設けられ、n型不純物を含むSiCからなるn型エピタキシャル成長層71と、n型エピタキシャル成長層71の上面側からp型不純物イオンを注入することによりn型エピタキシャル成長層71の上部に設けられたp型不純物注入領域73と、p型不純物注入領域73の一部にn型不純物イオンを注入することにより設けられた高濃度n型不純物注入領域72と、n型エピタキシャル成長層71の上に、両端がp型不純物注入領域73および高濃度n型不純物注入領域72にオーバーラップするように設けられたSiO からなるゲート酸化膜76と、ゲート酸化膜76上に設けられたゲート電極77と、n型エピタキシャル成長層71の上であって、ゲート電極77の両側方に設けられ、高濃度n型不純物注入領域72とオーミック接触するソース電極74と、ゲート電極77の上に設けられた層間絶縁膜78と、ソース電極74の上に設けられた上部電極75と、SiC基板21aの裏面上に設けられたドレイン電極35および下部電極37とを備えている。ソース電極74と上部電極75とは第1の電極層79を構成する。
【0110】
このような構造の縦型MOSFETにおいても基板面とほぼ垂直方向に電流が流れるため、SiC基板21aを薄くすることによって、抵抗が大幅に減少する。
【0111】
なお、本実施形態ではプレーナ構造のDI(Double−implanted)MOSを例にとって説明したが、トレンチ構造を有するUMOSFETにおいても、基板の裏面を研磨する方法は有効である。このトレンチ構造は、オン抵抗の低減に有利である。
【0112】
また、ECFETやACCUFETなどの蓄積型の縦型MOSFETについても、基板を薄くすることは素子の特性向上に有効である。
【0113】
【発明の効果】
本発明の半導体装置によれば、SiC基板の厚みが200μm以下となっているので、動作時に装置全体のオン抵抗が従来の半導体装置よりも小さくなっている。また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、SiC基板の裏面上に電極を形成する直前にSiC基板を研磨するため、基板の反りによるマスクずれ等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、第1の実施形態に係るショットキーダイオードの製造方法を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、第1の実施形態に係るショットキーダイオードの製造工程において、SiC基板上の複数のショットキーダイオードを示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体チップの実装工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るpnダイオードの構造を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態の一例である縦型MOSFETの構造を示す断面図である。
【図8】従来のショットキーダイオードの構造を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、従来のショットキーダイオードを備えた樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図10】(a)〜(c)は、従来のショットキーダイオードを備えた樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
10               半導体チップ
11,11a,21a       SiC基板
12,71            エピタキシャル成長層
13               不純物注入領域
14               ショットキー電極
15               オーミック電極
16,65,75         上部電極
17,37            下部電極
18,66,79         第1の電極層
19,29,39         第2の電極層
25               第2のオーミック電極
29               第2の電極層
35               ドレイン電極
41               溝
51               リードフレーム
52               半田
53               ワイヤ
54               陽極
55               封止樹脂
60               pnダイオード
61               n型SiC層
62               p型SiC層
63               絶縁膜
64               第1のオーミック電極
70               縦型MOSFET
72               高濃度n型不純物注入領域
73               p型不純物注入領域
74               ソース電極
76               ゲート酸化膜
77               ゲート電極
78               層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面全体が削られたSiC基板と、
上記SiC基板の上面上に設けられた半導体層とを備え、
動作時には、キャリアが上記SiC基板および上記半導体層を通過して縦方向に走行する半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
上記SiC基板の厚みは250μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
上記SiC基板の厚みは200μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
上記半導体層の上方に金属からなる電極が設けられ、
上記SiC基板の裏面上には、上記SiC基板とオーミック接触し、金属からなる下部電極が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
上記下部電極は、アルミニウム,チタン,ニッケル,タングステン,クロム,モリブデン及び銀のうちから選ばれた1つの材料を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項4または5のうちいずれか1つに記載の半導体装置において、
上記SiC基板の( 0 0 0−1)カーボン面上に上記半導体層が設けられており、
上記SiC基板の( 0 0 0 1)シリコン面上には上記下部電極が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
SiC基板と、上記SiC基板上に設けられた半導体層と、上記半導体層の上方に設けられた上部電極と、上記SiC基板の裏面上に設けられ、オーミック電極となる下部電極と備えた半導体装置の製造方法であって、
上記上部電極を形成する工程(a)と、
上記工程(a)の後に上記SiC基板の厚さを薄くする工程(b)と
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
上記工程(b)の後に上記下部電極を形成する工程(c)をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置の製造方法において、
上記工程(c)の後、上記SiC基板および上記半導体層を分離して半導体チップを製造する工程(d)と、
上記工程(d)の後、上記半導体チップをリードフレーム上に載置して熱処理を行なうことにより上記SiC基板と上記下部電極との間にオーミック接合を形成する工程(e)とをさらに含み、
上記工程(c)では、熱処理工程を省略することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記SiC基板の( 0 0 0−1)カーボン面上に上記半導体層が設けられ、
上記工程(c)では、上記SiC基板の( 0 0 0 1)シリコン面上に上記下部電極が設けられることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記半導体層に各素子間を分離するための溝を形成する工程(f)をさらに含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜11のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記溝の深さが1μm以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項7〜12のうちいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法において、
上記SiC基板の厚みは250μm未満であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項7〜13に記載の半導体装置の製造方法において、
上記SiC基板の厚みは200μm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate



【図8】
image rotate



【図9】
image rotate



【図10】
image rotate


【公開番号】特開2004−22878(P2004−22878A)
【公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−177080(P2002−177080)
【出願日】平成14年6月18日(2002.6.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】