説明

半導体装置およびそれに用いる配線基板

【課題】両面または多層の配線基板に半導体チップをフリップチップ方式を用いて実装される半導体装置において、半導体チップと配線基板との接合状態を安定させ、高い接続信頼性を有する半導体装置、およびそれに用いる両面または多層の配線基板を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、略矩形状の一主面の対向する二辺に複数の電極パッド55a〜55hが形成されたICチップ50と、前記電極パッドと対応するIC接続端子35a〜35hが形成された多層配線基板10とを有している。複数のIC接続端子35a〜35hと対応する電極パッド55a〜55hとは、それぞれ半田バンプ56a〜56hにより接合されている。電極パッド55a〜55hと対応するIC接続端子35a〜35hの直下には、接合部支持ビア36a〜36hが、各接合部支持ビアの中心点C5a〜C5hを結んで形成される多角形T1の略中心にICチップ50の重心Gがあるように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが配線基板に実装された半導体装置およびそれに用いる配線基板に関し、特に、フリップチップ実装技術を用いて製造される半導体装置およびその接続信頼性を確保するのに有効な両面または多層の配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年ますます進展する電子機器の小型化および高機能化にともない、電子機器に搭載される半導体チップが配線基板にベアチップ実装された半導体装置の小型化および高密度化の要求が高まっている。このような小型化および高密度化の要求に応え得るベアチップ実装方式としてフリップチップ実装方式が従来より用いられている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体装置は、一主面に形成された複数の電極パッド(外部電極)に突起状電極としての金バンプが設けられた半導体チップ(IC)と、絶縁基板層の一主面上に形成され前記電極パッドと対応する接続端子(パターン)を有する配線基板(フィルム基板)とを有している。そして、配線基板の複数の接続端子上に、対応する半導体チップの突起状電極を位置合わせし、半導体チップの他方の主面側から加熱されたボンディングヘッドにより所定時間の加熱および加圧して接続端子と突起状電極とを接合せしめる。このように、半導体チップの電極パッドと配線基板の接続端子とを突起状電極を介して接合するフリップチップ実装方式(フェイスダウンボンディング)によれば、半導体装置の小型化および薄型化、また、電気的な高速化を図ることが可能になる。
【0004】
また、フリップチップ実装方式により製造される半導体装置の集積度をさらに向上させる配線基板として、ビア(Via)を用いて層間配線を形成した多層配線基板が、例えば特許文献2に紹介されている。特許文献2に示された多層配線基板(多層プリント配線基板)は、有機絶縁性基材からなる絶縁基板層と所定のパターンの導体回路からなる配線層とが交互に積層された片面配線基板を、接着剤層を介して複数積層することにより形成されている。また、各片面配線基板に貫通させて形成されたビア孔に電解銅メッキにより銅ビア材(金属ビア材)を充填することにより形成されたビア(バイアホール)が配設されている。ビアは、配線基板において絶縁基板層内に形成された層間配線として絶縁基板層の両主面側の各配線層の対応する一部どうしを接続している。このように、ビアを用いて複数層の配線基板を層間接続して形成される多層基板によれば、半導体装置の高集積化およびそれに伴う平面サイズの小型化を可能としている。なお、多層配線基板においては、上記のように接着剤層を用いて複数の片面配線基板を貼り合わせて積層させるものの他に、ガラスエポキシ樹脂などの半硬化状態の絶縁基板(プリプレグ)層を積層させて焼成することにより多層配線板を形成する方法も広く用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−237164号公報
【特許文献2】特開平11−54934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなフリップチップ実装方式による接合において半導体チップの複数の電極パッドと対応する配線基板の接続端子との接続信頼性を確保するためには、接合金属である突起状電極による接合部に熱と圧力を均一に印加する必要がある。フリップチップ実装方式は比較的高い接合温度が必要であり、配線基板に対して高いストレスが加わるので絶縁基板層が変形し易く、複数の接合部に不均一な力が加わると接合状態に偏りが生じて不安定な接続状態となる。特に、ビアを用いた層間配線を有する多層配線基板を用いた場合に、接続端子の直下のビアの有無によって絶縁基板層が接合時に不均一な変形を起こし、接合部がオープンする虞があるなど接続信頼性低下を招く可能性があるという課題があった。
【0007】
上記課題を鑑みて、本発明は、両面または多層の配線基板に半導体チップをフリップチップ方式を用いて実装される半導体装置において、半導体チップと配線基板との接合状態を安定させ、高い接続信頼性を有する半導体装置、およびそれに用いる両面または多層の配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置は、略矩形状の一主面の少なくとも対向する二辺に沿って複数の電極パッドが形成された半導体チップと、該半導体チップが一主面に実装される配線基板とを有する半導体装置であって、配線基板は、少なくとも一層の絶縁基板層と、該絶縁基板層の両主面にそれぞれ形成された配線パターンからなる配線層とを備え、配線基板の一主面の配線層に電極パッドと対応する複数の接続端子が形成され、絶縁基板層を貫通して形成されるビア孔および該ビア孔に埋設される金属ビア材により構成されるビアを用いて絶縁基板層の両主面側に形成された各配線層の対応する一部どうしが接続され、複数の接続端子と対応する電極パッドとがそれぞれ突起状電極を介して接合され、ビアは接続端子の対応する電極パッドとの接合位置の直下に配置される接合部支持ビアを少なくとも三つ以上含み、該接合部支持ビアが、接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の内側に半導体チップの重心があるように配設されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、平面視において半導体チップの重心を囲むように配置された接合部支持ビアにより、配線基板上において半導体チップがバランスよく支持される。これにより、配線基板に半導体チップをフリップチップボンディングにより接合する際に、半導体チップの主面と配線基板の主面との平行度が保持された状態で接合されるので、複数の電極パッドと対応する接合端子との突起状電極による均一な接合が可能となる。これにより、半導体チップと配線基板との接続信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。
【0010】
本発明の半導体装置では、接合部支持ビアが、接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の中心と半導体チップの重心とが概ね合致するように配設されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、配線基板上において半導体チップがさらにバランスよく均一に支持されるので、接続信頼性がより良好な半導体装置を提供することができる。
【0012】
本発明の半導体装置では、配線基板が、絶縁基板層と配線層が交互に積層された多層の配線基板であり、接合部支持ビアが、複数の絶縁基板層の鉛直方向に複数積み重ねられたスタック構造を有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、フェイスダウンボンディングする際に半導体チップを均一に且つより強固に支持することが可能となり、接合時の熱や圧力による絶縁基板層の変形を軽減することができる。これにより、半導体装置の接続信頼性をより高くすることができるという顕著な効果を奏する。
【0014】
本発明の配線基板は、略矩形状の一主面の少なくとも対向する二辺に沿って複数の電極パッドが形成された半導体チップと、該半導体チップが電極パッドに対応する突起状電極を介して一主面に実装される配線基板とを有する半導体装置用の配線基板であって、少なくとも一層の絶縁基板層と、該絶縁基板層の両主面にそれぞれ形成された配線パターンからなる配線層とを備え、配線基板の一主面の配線層に電極パッドと対応する複数の接続端子が形成され、絶縁基板層を貫通して形成されるビア孔および該ビア孔に埋設される金属ビア材により構成されるビアを用いて絶縁基板層の両主面側に形成された各配線層の対応する一部どうしが接続され、ビアは接続端子の対応する電極パッドとの接合位置の直下に配置される接合部支持ビアを少なくとも三つ以上含み、該接合部支持ビアが、接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の内側に半導体チップの重心があるように配設されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、平面視において半導体チップの重心を囲むように配置された接合部支持ビアにより、半導体チップを接合するときに、配線基板上において半導体チップがバランスよく支持することができる。これにより、半導体チップの複数の電極パッドと対応する接合端子との突起状電極による均一な接合が可能となり、半導体チップとの接続信頼性が良好な半導体装置用の配線基板を提供することができる。
【0016】
本発明の配線基板は、接合部支持ビアが、接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の中心と半導体チップの重心とが概ね合致するように配設されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、半導体チップを接合する際の配線基板上において、半導体チップがさらにバランスよく均一に支持され、接続信頼性がより良好な半導体装置を提供するのに供する。
【0018】
本発明の配線基板は、多層の配線基板であり、接合部支持ビアが、複数の絶縁基板層の鉛直方向に複数積み重ねられたスタック構造を有していることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、フリップチップボンディングする際に半導体チップを均一に且つより強固に支持することが可能となり、接合時の熱や圧力による絶縁基板層の変形を軽減することができるので、接続信頼性がより高い半導体装置の提供に供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
図1(a)は、半導体装置の概略構成を説明する模式平面図、同図(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。図2(a)は、本発明の半導体装置に係る半導体チップとしてのICチップの模式平面図であり、同図(b)は図2(a)のB−B線断面図である。図3(a)は、本発明の半導体装置に係る多層配線基板の模式平面図であり、同図(b)は図3(a)のC−C線断面図である。
【0021】
<半導体装置>
図1において、半導体装置1は、第1の片面配線基板11、第2の片面配線基板12、第3の片面配線基板13がこの順に積層されて形成された多層配線基板10上に、半導体チップとしてのICチップ50がフリップチップ実装法により接合されて構成されている。
【0022】
図1(b)に示すように、多層配線基板10の第1の片面配線基板11には、絶縁性基材からなる絶縁基板層11aの一主面に配線層としての複数のビア接続端子15a〜15dが形成されている。
また、第1の片面配線基板11の上に積層された第2の片面配線基板12には、絶縁基板層12a上面の上記ビア接続端子15a〜15dと対応する位置にビア接続端子25a〜25dが形成されている。ビア接続端子15a〜15dと対応するビア接続端子25a〜25dとは、絶縁基板層12aに貫設された層間配線である接合部支持ビア26a〜26dによりそれぞれ接続されている。
さらに、第2の片面配線基板12上に積層された第3の片面配線基板13には、絶縁基板層13a上面の上記ビア接続端子25a〜25dと対応する位置にIC接続端子35a〜35dが形成されている。ビア接続端子25a〜25dと対応するIC接続端子35a〜35dとは、絶縁基板層13aに貫設された層間配線である接合部支持ビア36a〜36dによりそれぞれ接続されている。
【0023】
なお、図1(a)に示すように、第3の片面配線基板13のIC接続端子35a〜35dと対向する位置にはIC接続端子35e〜35hが形成されている。そして、詳細は後述するが、第1の片面配線基板11および第2の片面配線基板12それぞれのIC接続端子35e〜35hの直下となる位置には、上記したIC接続端子35a〜35dの直下と同様な構成にて図示しないビア接続端子および接合部支持ビアがそれぞれ設けられている。
【0024】
ICチップ50の一主面上には保護膜としてのパッシベーション膜59が積層されている。また、上記IC接続端子35a〜35hに対応する位置のパッシベーション膜59が除去されて形成された開口部分には電極パッド55a〜55hが配設されている。さらに、各電極パッド55a〜55h上には突起状電極としての半田バンプ56a〜56hがそれぞれ形成されている。
【0025】
図1(b)に示すように、半導体装置1は、ICチップ50の半田バンプ56a〜56dと対応する多層配線基板10のIC接続端子35a〜35dとが位置合わせされ、半田バンプ56a〜56dを溶融させた後固化されることにより接続されている。同様に、半田バンプ56e〜56hと対応するIC接続端子35e〜35hが半田バンプ56e〜56hによりそれぞれ接続されている。多層配線基板10とICチップ50との間に形成された隙間には絶縁性樹脂材料からなるアンダーフィル90が充填されて固化されている。
【0026】
図1(a)において、接合部支持ビア36a〜36hそれぞれの平面視における中心を中心点C5a〜C5hとし、これらの中心点C5a〜C5hを結んで形成される多角形を多角形T1として図示している。また、半導体装置1におけるICチップ50の重心を重心Gとして図示している。接合部支持ビア36a〜36hそれぞれの中心点C5a〜C5hを結んで形成される多角形T1は、本実施形態ではICチップ50の重心Gを内側に含んだ四角形状を有し、なお且つ、多角形T1の中心はICチップ50の重心と概ね合致されている。
【0027】
<半導体チップ>
図2に示すICチップ50は、シリコンなどからなる半導体基板上に形成されたトランジスタ等の複数の半導体素子と、シリコン酸化膜などからなる層間絶縁膜およびアルミニウムなどがパターニングされてなる配線層が繰り返し積層された半導体回路基板51を有している。複数の半導体素子は、配線層に形成された回路配線および層間絶縁膜に形成された層間配線により接続されて半導体集積回路を形成している。
【0028】
半導体回路基板51上には、アルミ合金などからなる複数の電極パッド55a〜55hが、それぞれ半導体回路基板51に形成された半導体回路の一部に接続されて設けられている。本実施形態では、平面視で矩形状の半導体回路基板51の長手方向の一辺の近傍に電極パッド55a〜55dが等間隔にて形成され、これと対向する辺の近傍に電極パッド55e〜55hが形成されている。なお、図2において、ICチップ50の重心を重心Gとして図示するとともに、多層配線基板10上にICチップ50が接合されたときのIC接続端子35a〜35hそれぞれの中心点C5a〜C5hを結んで形成される多角形T1を仮想線にて図示している。本実施形態においては、ICの重心GとIC接続端子35a〜35hそれぞれの中心点を結んで形成される仮想の多角形T1の中心とが概ね合致するようになっている。
【0029】
電極パッド55a〜55hを含む半導体回路基板51上には、例えば酸化シリコンおよび窒化シリコンをこの順に積層して形成された保護膜としてのパッシベーション膜59が、電極パッド55a〜55hそれぞれの一部または大部分を露出させて形成されている。そして、各電極パッド55a〜55h上には、半田ペーストをスクリーン印刷してから溶融させた後固化させて形成された突起状電極としての略球状の半田バンプ56a〜56hが形成されている。
【0030】
なお、半田バンプ56a〜56hは、比較的間便な製造方法にて安価に形成することができる突起状電極である。これに限らず、メッキ方式あるいはスタック方式により形成される半田以外の例えば金などの金属バンプを用いてもよく、また、金属ワイヤに形成した金属ボールを電極パッド上に転写して形成する所謂スタッドバンプなどを用いてもよい。
【0031】
<配線基板>
次に、多層配線基板10について詳細に説明する。
図3(b)に示すように、多層配線基板10は、第1の片面配線基板11、第2の片面配線基板12、第3の片面配線基板13がこの順に積層され、本実施形態では三層構造にて形成されている。
【0032】
第1の片面配線基板11には、絶縁性基材からなる絶縁基板層11aの一主面に配線層としての複数のビア接続端子15a〜15dが形成されている。また、第1の片面配線基板11の上に積層された第2の片面配線基板12には、絶縁基板層12a上面の上記ビア接続端子15a〜15dと対応する位置にビア接続端子25a〜25dが形成されている。さらに、第2の片面配線基板12上に積層された第3の片面配線基板13には、絶縁基板層13a上面の上記ビア接続端子25a〜25dと対応する位置にIC接続端子35a〜35dが形成されている。
【0033】
第1の片面配線基板11、第2の片面配線基板12、第3の片面配線基板13それぞれの絶縁基板層11a〜13aには、本実施形態では半硬化状態(未焼成)のガラスエポキシ樹脂などからなる絶縁樹脂シートが用いられている。第1の片面配線基板11、第2の片面配線基板12、第3の片面配線基板13をこの順に位置合わせして積層させ、加圧しながら所定の温度にて焼成することにより、接着剤層を特に用いることなく多層配線基板10が形成される。
【0034】
多層配線基板10において、第1の片面配線基板11のビア接続端子15a〜15dと、対応する第2の片面配線基板12のビア接続端子25a〜25dとは、絶縁基板層12aに貫設された接合部支持ビア26a〜26dによりそれぞれ接続される。また、第2の片面配線基板12のビア接続端子25a〜25dと対応する第3の片面配線基板13のIC接続端子35a〜35dとは、絶縁基板層13aに貫設された層間配線である接合部支持ビア36a〜36dによりそれぞれ接続されている。
【0035】
なお、図3(a)に示すように、IC接続端子35a〜35dと対向する位置に設けられたIC接続端子35e〜35hの直下についても、上記のIC接続端子35a〜35dの直下と同様の構成にて接合部支持ビア36e〜36hが配置されている。そして、接合部支持ビア36e〜36hの下方には、上記の接合部支持ビア36a〜36dの下方と同様の構成にて図示しないビア接続端子および接合部支持ビアがそれぞれ設けられている。
【0036】
多層配線基板10において、IC接続端子35a〜35hそれぞれの直下に配置されている接合部支持ビア36a〜36h各々の中心点C5a〜C5hを結んで形成される仮想の多角形T1は本実施形態では四角形を形成している。また、この仮想の多角形T1は、図3(a)において仮想線にて図示している多層配線基板10上におけるICチップ搭載位置50Pにおいて、ICチップ50の重心Gを内側におさめて形成されている。なお、本実施形態の複数の接合部支持ビア36a〜36hおよびこれらの直下に備えられている接合部支持ビア26a〜26hは、前記仮想の多角形T1の中心がICチップの重心Gと概ね合致するように配設されている。
【0037】
以上、説明した上記実施形態の多層配線基板10の接合部支持ビア36a〜36hは、各々の中心点C5a〜C5hを結んで形成される仮想の多角形の中心と、搭載されるICチップの重心Gとが概ね合致するように配設した。これに限らず、接合部支持ビアは少なくとも三つ形成し、接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形が、搭載するICチップの重心を内側におさめるように配設する構成としてもよい。
【0038】
例えば、図4は、上記実施形態の半導体装置1と同一のIC接続端子35a〜35h配列にて、最小限必要な三つの接合部支持ビアを配設した多層配線基板20を説明する模式平面図である。また、図5は、略矩形状の一主面の四辺に電極パッドが配列されたICチップを搭載する多層配線基板30を説明する模式平面図である。なお、図4および図5の説明において、上記実施形態と同様な構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
図4の多層配線基板20は、上記実施形態の多層配線基板10と同じ三層構造を有し、一主面である絶縁基板層13a上の対向する二辺側に、IC接続端子35a〜35hが形成されている。絶縁基板層13a内のIC接続端子35c,35e,35gの直下には、接合部支持ビア36c,36e,36gがそれぞれ設けられている。接合部支持ビア36c,36e,36gの中心点C5c,C5e,C5gを結んで形成される仮想の多角形T2は三角形状を呈し、図示する仮想のICチップ搭載位置50Pに搭載されるICチップの重心Gを内側におさめて形成されている。
【0040】
また、図5において、多層配線基板30の主面上には、図示する仮想の搭載位置60Pに搭載されるICチップに形成された複数の電極パッドと対応するIC接続端子が重心Gを内側におさめて形成されている。多層配線基板30の図中長手方向の対向する二辺には、IC接続端子85a〜85eおよびIC接続端子85f〜85jが形成され、これと直交する対向する二辺側には、IC接続端子75a〜75dおよびIC接続端子75e〜75hがそれぞれ形成されている。IC接続端子75c,75e,85d,85hそれぞれの直下の絶縁基板層内には、接合部支持ビア76c,76e,86d,86hが設けられている。各接合部支持ビア76c,76e,86d,86hの中心点C75c,C75e,C85d,C85hを結んで形成される仮想の多角形T3は四角形状を呈し、搭載されるICチップの重心Gを内側におさめて形成されている。
【0041】
以上説明した図4に示す多層配線基板20および図5に示す多層配線基板30のように、接合部支持ビアは全ての接合部の直下に設ける必要はない。接合部支持ビアの中心を結んで形成される多角形が、搭載されるICチップの重心を内側におさめて形成されるように接合部支持ビアを配設すればよい。
【0042】
以下、上記実施形態の効果を記載する。
【0043】
(1)上記実施形態の半導体装置1では、多層配線基板10内の層間配線を形成する接合部支持ビア36a〜36hを、ICチップ50の各電極パッド55a〜55h上にそれぞれ設けられた半田バンプ56a〜56hと接合されるIC接続端子35a〜35hの直下に配設した。このとき、各接合部支持ビア36a〜36hの略中心を結んで形成される多角形T1の内側にICチップ50の重心Gがあるように接合部支持ビア36a〜36hを配設した。さらに、上記実施形態では、多角形T1の中心とICチップ50の重心Gが概ね合致するように接合部支持ビア36a〜36hを配設する構成とした。
【0044】
この構成によれば、ICチップ50の重心Gを中心として配設された接合部支持ビア36a〜36hにより、多層配線基板10上においてICチップ50を略均等に支持しながらフリップチップボンディング接合を行なうことができる。これにより、複数の半田バンプ56a〜56hには均等な熱と圧力が印加され、ICチップ50の主面と多層配線基板10の主面との平行度を保持しながら接合されるので、複数の半田バンプ56a〜56hと対応するIC接続端子35a〜35hとの略均一な接合が可能となる。したがって、ICチップ50と多層配線基板10との接続信頼性が良好な半導体装置1を提供することができる。
【0045】
(2)上記実施形態では、多層配線基板10において、第3の片面配線基板13内に形成された接合部支持ビア36a〜36hの直下に、さらに第2の片面配線基板12の接合部支持ビア26a〜26hを配設した。
【0046】
この構成によれば、スタック構造の接合部支持ビア26a〜26h,36a〜36hにより、ICチップ50を接合する際の熱と圧力による絶縁基板層11a〜13aの変形をより抑制して均一な接続を図ることが可能になる。したがって、ICチップ50の接続信頼性に優れた半導体装置1を提供することができる。
【0047】
(3)上記実施形態では、多層配線基板10において、絶縁基板層12a,13a内の層間配線を形成するビアの全てを、ICチップ50の全ての半田バンプ56a〜56hに対応する位置に設けられた接合部支持ビア26a〜26h,36a〜36hとして配設した。
【0048】
この構成によれば、ICチップ50を最も安定したバランスにて支持しながら接合することができるので、特に高い接続信頼性を有する半導体装置1を提供できるという顕著な効果を奏する。また、ICチップ50の直下により多数の金属ビアが形成されることにより、半導体装置1動作時のICチップ50の放熱効果も期待でき、半導体装置1の動作の安定化を図ることが可能になる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下の変形例を実施することもできる。
【0050】
(変形例)
上記実施形態では、ICチップ50の電極パッド55a〜55h上にそれぞれと対応する半田バンプ56a〜56hを形成し、多層配線基板10のIC接続端子35a〜35hと接合する構成を説明した。これに限らず、突起状電極を多層配線基板側に設ける構成としてもよい。図6は、突起状電極を備えた多層配線基板を説明する図であり、図6(a)は模式平面図、同図(b)は、図6(a)のD−D線断面図である。なお、本変形例において、上記実施形態と同一の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図6(a)および(b)において、多層配線基板40は、上記実施形態の多層配線基板10と同様の構成にて、第1の片面配線基板11、第2の片面配線基板12、第3の片面配線基板13がこの順に積層されて形成されている。そして、第3の片面配線基板13上に配設されたIC接続端子35a〜35h上の略中央には、突起状電極としてのスタッドバンプ45a〜45hがそれぞれ形成されている。
【0052】
IC接続端子35a〜35hそれぞれの直下に配置されている接合部支持ビア36a〜36h各々の中心点C5a〜C5hを結んで形成される仮想の多角形T1は四角形を形成している。この仮想の多角形T1の中心は、ICチップ50を搭載したときのICチップ搭載位置50Pにおいて、ICチップ50の重心Gと概ね合致している。
【0053】
スタッドバンプ45a〜45hは、金ワイヤの先端を放電溶解させて金ボールを形成し、これを各IC接続端子35a〜35hに超音波および所定の熱を印加せて接合させた後、ワイヤを切断して形成する。多層配線基板40にICチップを接合する際には、スタッドバンプ45a〜45hと対応するICチップの電極パッドとを位置合わせしてから、圧着用ツールなどにより超音波および所定の熱と圧力を印加することにより、アルミなどからなる電極パッドとスタッドバンプ45a〜45hとの界面部分を金属間接合させる。
【0054】
なお、多層配線基板40に設ける突起状電極はスタッドバンプ45a〜45hに限らない。ICチップの電極パッドとの接合が可能で且つICチップと所定の隙間を形成できればよく、半田バンプやその他の導電性材料を用いて形成することも可能である。
【0055】
この構成によれば、ICチップ側に突起状電極を設ける必要がなくなり、半導体装置を製造する際のICチップの選択肢が広くなる。また、半導体装置の製造において、突起状電極を用いたベアチップ実装を良品のICチップのみに施すことができるので、製造効率を向上させることが可能になる。
【0056】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、第2の片面配線基板12および第3の片面配線基板13の層内にそれぞれ貫設された接合部支持ビア26a〜26hおよび接合部支持ビア36a〜36hを積層させて形成し、対応するIC接続端子35a〜35hを支持する構成を説明した。これに限らず、接合部支持ビアは、上記実施形態と同様の配置にてIC接続端子直下の少なくとも一層の絶縁基板層(片面配線基板)内に設けることにより、ICチップ50のフリップチップ実装において接合均一性を向上させる効果を奏する。
【0058】
また、上記実施形態では突起状電極としての半田バンプ56a〜56hを用いて、あるいは上記変形例では突起状電極としてのスタッドバンプ45a〜45hを用いて、突起状電極自身を接合材としてICチップ50と多層配線基板10とを接続する例を説明した。これに限らず、突起状電極と電極パッドまたはIC接続端子とを、ACF(Anisotropic Conductive Film)やACP(Anisotropic Conductive Paste)などの異方性導電材料を介して接続する方法を用いてもよい。あるいは、NCP(Non Conductive Paste)を用いたフリップチップ実装方式を採用することもできる。
【0059】
また、上記実施形態では、第1の片面配線基板11、第2の片面配線基板12、第3の片面配線基板13を積層させた三層からなる多層配線基板10としたが、四層以上の片面配線基板を積層させた多層配線基板としてもよいことは言うまでもない。また、多層配線基板に限らず、単層の絶縁基板層を有する両面配線基板であっても、各主面に形成された配線層を絶縁基板層内で層間接続するビアの配置を上記実施形態と同様にすることにより、本発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は、本発明の半導体装置の一実施形態を説明する模式平面図、(b)は、同図(a)のA−A線断面図。
【図2】(a)は、本発明の半導体装置に係る半導体チップの模式平面図、(b)は、同図(a)のB−B線断面図。
【図3】(a)は、本発明の半導体装置に係る多層配線基板の模式平面図、(b)は、同図(a)のC−C線断面図。
【図4】本発明に係る配線基板の最小限必要な構成を説明する模式平面図。
【図5】本発明に係る配線基板の構成の一例を説明する模式平面図。
【図6】(a)は、本発明の多層配線基板の変形例を説明する模式平面図、(b)は、同図(a)のD−D線断面図。
【符号の説明】
【0061】
1…半導体装置、10,20,30…多層配線基板、11a,12a,13a…絶縁基板層、15a〜15d,25a〜25d…配線層としてのビア接続端子、35a〜35h,75a〜75h,85a〜85j…IC接続端子、26a〜26h,36a〜36h,76c,76e,86d,86h…接合部支持ビア、45a〜45h…突起状電極としてのスタッドバンプ、50…半導体チップとしてのICチップ、56a〜56h…突起状電極としての半田バンプ、C5a〜C5h,C75c,C75e,C85d,C85h…接合部支持ビアの中心点、G…半導体チップの重心、T1,T2,T3…接合部支持ビアを結んで形成される多角形。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形状の一主面の少なくとも対向する二辺に沿って複数の電極パッドが形成された半導体チップと、該半導体チップが一主面に実装される配線基板とを有する半導体装置であって、
前記配線基板は、少なくとも一層の絶縁基板層と、該絶縁基板層の両主面にそれぞれ形成された配線パターンからなる配線層とを備え、前記配線基板の前記一主面の前記配線層に前記電極パッドと対応する複数の接続端子が形成され、
前記絶縁基板層を貫通して形成されるビア孔および該ビア孔に埋設される金属ビア材により構成されるビアを用いて前記絶縁基板層の前記両主面側に形成された各前記配線層の対応する一部どうしが接続され、
複数の前記接続端子と対応する前記電極パッドとがそれぞれ突起状電極を介して接合され、
前記ビアは前記接続端子の対応する前記電極パッドとの接合位置の直下に配置される接合部支持ビアを少なくとも三つ以上含み、該接合部支持ビアが、前記接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の内側に前記半導体チップの重心があるように配設されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記接合部支持ビアが、前記接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の中心と前記半導体チップの重心とが概ね合致するように配設されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置であって、
前記配線基板が、前記絶縁基板層と前記配線層が交互に積層された多層の配線基板であり、前記接合部支持ビアが、複数の前記絶縁基板層の鉛直方向に複数積み重ねられたスタック構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
略矩形状の一主面の少なくとも対向する二辺に沿って複数の電極パッドが形成された半導体チップと、該半導体チップが前記電極パッドに対応する突起状電極を介して一主面に実装される配線基板とを有する半導体装置用の配線基板であって、
少なくとも一層の絶縁基板層と、該絶縁基板層の両主面にそれぞれ形成された配線パターンからなる配線層とを備え、前記配線基板の前記一主面の前記配線層に前記電極パッドと対応する複数の接続端子が形成され、
前記絶縁基板層を貫通して形成されるビア孔および該ビア孔に埋設される金属ビア材により構成されるビアを用いて前記絶縁基板層の前記両主面側に形成された各前記配線層の対応する一部どうしが接続され、
前記ビアは前記接続端子の対応する前記電極パッドとの接合位置の直下に配置される接合部支持ビアを少なくとも三つ以上含み、該接合部支持ビアが、前記接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の内側に前記半導体チップの重心があるように配設されていることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項4に記載の配線基板であって、
前記接合部支持ビアが、前記接合部支持ビアの略中心を結んで形成される多角形の中心と前記半導体チップの重心とが概ね合致するように配設されていることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項4または5に記載の配線基板であって、
前記配線基板が多層の配線基板であり、前記接合部支持ビアが、複数の前記絶縁基板層の鉛直方向に複数積み重ねられたスタック構造を有していることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−243884(P2008−243884A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78390(P2007−78390)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】