説明

半導体装置の製造方法

【課題】被覆性及び付着力が高い金属膜を、半導体基板上に低コストで形成できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】Pdイオンを含むPd活性化液28(塩化パラジウム)にGaAs基板16(半導体基板)を浸漬してGaAs基板の表面にPdキャタリスト30を付着させる。このPdキャタリストとGaAs基板が反応してPd−Ga−Asの混合層40が形成される。次に、表面にPdキャタリストが付着されたGaAs基板をPd無電解めっき液42に浸漬してGaAs基板上にPdめっき膜44を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆性及び付着力が高い金属膜を半導体基板上に低コストで形成することができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上にオーミック電極以外の電極を形成する場合、一般的には蒸着やスパッタなどを用いて2層以上の金属膜を形成することが多い。上層には、Auなど、表面が酸化しにくく電気伝導性の良い材料を用いる。Auの代わりにAgやCuなどを用いる場合もある。下層は、Auが半導体基板に拡散するのを防ぐバリア層である。バリア層としてはTiやTiNやTaNやPtなどがよく用いられる。さらに、必要電流を確保するため、これらの層を給電層としてAu電解めっきを行う場合もある。Au電解めっきの代わりに、導電性の良いAgやCuを用いる場合もある。
【0003】
電極の特性として、低電気抵抗やエレクトロマグレーション抑制などの電気特性に加えて、ダイボンドやワイヤボンド時の剥がれを防止するために十分な付着力が必要である。そのため、半導体面と接触する電極の金属は半導体に対して付着力が高いものが用いられる。例えばGaAsに対してTiやPtが用いられる。
【0004】
また、半導体基板を貫通するビア内に基板の表面側と裏面側を電気的に接続する貫通電極を形成する場合、ビア内部に十分に金属膜を被覆させる必要がある。蒸着やスパッタを用いて金属膜を形成した場合、ビア側壁の金属膜が他の部分に比べて薄くなる。そこで、逆スパッタやプラネタリ蒸着などを用いてビア側壁への形成効率を上げる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. S. Kuan, J. Appl. Phys. 58(4), 1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蒸着やスパッタを用いた従来の方法では、ビア側壁の金属膜の厚さが平坦部での厚さに比べて数%程度であった。従って、導通不良による歩留まりの低下が問題となっていた。また、蒸着又はスパッタにより形成した金属膜を給電層としてAu電解めっきを行った場合にも、ビア内でのAuめっき膜の不成長や成長異常などが発生し、導通不良や外観不良となり、歩留まり低下の原因となっていた。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、被覆性及び付着力が高い金属膜を半導体基板上に低コストで形成することができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、Pdイオンを含むPd活性化液に半導体基板を浸漬して前記半導体基板の表面にPdキャタリストを付着させる工程と、表面にPdキャタリストが付着された前記半導体基板をPd無電解めっき液に浸漬して前記半導体基板上にPd無電解めっき膜を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、被覆性及び付着力が高い金属膜を半導体基板上に低コストで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】8属金属以外の被めっき物上にPdめっき膜を形成する様子を示す断面図である。
【図2】8属金属以外の被めっき物上にPdめっき膜を形成する様子を示す断面図である。
【図3】8属金属以外の被めっき物上にPdめっき膜を形成する様子を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図7】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図9】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図10】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図11】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図12】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】比較例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】GaAs基板上のPd無電解めっき膜についてデプスオージェ分析を行った結果を示す図である。
【図15】アニール温度に対するPdめっき膜ストレスを示す図である。
【図16】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための上面図である。
【図17】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来は、半導体基板の表面のような平滑面へのPd無電解めっきは困難と考えられていた。Pd無電解めっき膜は、理論的には被めっき面に還元剤を酸化させる作用のあるPdやNiなどの8属金属上に形成できる。一方、8属金属以外の被めっき物上にPdめっき膜を形成する場合、図1に示すように被めっき物10の表面にPdキャタリスト12の薄い膜を形成した後にめっきを行う。
【0012】
しかし、このPdキャタリスト12は単に表面に付着しているだけであるため、付着力が弱い。従って、図2に示すように、Pdめっき膜14の不成長や浮きや剥がれが起こりやすい。一般にこの付着力の弱さを補うため、図3に示すように、ブラスト処理などにより被めっき面を荒らして、Pdキャタリスト12をアンカー効果で保持する。しかし、半導体基板の表面は、基本的に研磨処理により表面粗さがRa=1nm程度の鏡面であり、Pdキャタリストを付着できないと考えられていた。
【0013】
今回、発明者は、半導体基板上にPd無電解めっき膜を形成できることを発見した。形成できる理由は、Pdキャタリストと半導体基板が反応するためと考えている。GaAs基板を例として説明する。GaAsとPdが反応して20℃〜250℃でPdGa〜0.3As〜0.2の3元結晶を形成することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。即ち、Pd活性化処理(通常20℃〜30℃で行う)によりGaAs基板の表面にPdキャタリストが付着した後、GaAsとの反応によりPdGa〜0.3As〜0.2の3元結晶を形成する。このため、平滑面上にも十分なPd層が形成される。よって、次工程のPd無電解めっき処理によりPdめっき膜を安定に形成することができる。また、成膜時から十分な付着性能を得ることができる。
【0014】
この発見に基づいて発明者は本発明を考案した。以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。同様の又は対応する構成要素には同じ番号を付し、説明の繰り返しを省略する。
【0015】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法について説明する。図4〜12は実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0016】
まず、図4に示すように、GaAs基板16(半導体基板)の上面に、電極18やトランジスタ(不図示)などのデバイスを形成する。そして、図5に示すように、GaAs基板16のデバイス形成面(上面)を、ワックスやテープなどの接着材料20により、厚さ1mm程度のサファイア支持基板22に貼り付ける。その状態でGaAs基板16の裏面を研磨して、GaAs基板16を薄板化する。
【0017】
次に、図6に示すように、裏面側からGaAs基板16をエッチングする。これにより、GaAs基板16を貫通してGaAs基板16の裏面から電極18の裏面まで達するビア24を形成する。
【0018】
次に、図7に示すように、ウェハ状態の複数のGaAs基板16を互いに接触しないようにカセット26に保持する。この状態でGaAs基板16を、Pdイオンを含むPd活性化液28に浸漬する(Pd活性化処理)。浸漬時間は1〜5分程度である。これにより、拡大図8に示すように、GaAs基板16の表面に厚さ数nm程度のPdキャタリスト30が付着する。また、Pd無電解めっき液を20℃以上にすることで、Pdキャタリスト30とGaAs基板16が反応してPd−Ga−Asの混合層40が形成される。
【0019】
ここで、Pd活性化液28は例えば塩化パラジウム(PdCl)溶液である。Pd活性化液28のPd濃度は0.1〜1.0g/L程度である。Pd活性化液28はヒータ32により液温20〜30℃程度に加熱され、撹拌子34により撹拌される。ただし、Pd濃度や液温によりPdキャタリスト30の付着量や均一性が異なり、界面の付着力、表面モフォロジ、及び膜浮き異常の原因となる。従って、Pd濃度や液温を適正範囲に調整する必要がある。
【0020】
また、GaAs基板16の表面の濡れ性が悪い場合には、Pd活性化処理を行う前に、酸素アッシング処理やオゾンアッシング処理などの前処理を行う。さらに、めっき膜と半導体の付着を上げるために表面酸化膜除去効果のある酸やアルカリ溶液で洗浄を行ってもよい。
【0021】
また、装置自身への成膜を抑制するため、カセット26、撹拌子34及びハンドル36はテフロン(登録商標)(米デュポン社商品名)製である。ビーカー38は、耐熱性が高く、自身に成膜し難いパイレックスガラス(石英)からなる。
【0022】
次に、図9に示すように、表面にPdキャタリスト30が付着されたGaAs基板16をPd無電解めっき液42に浸漬する。これにより、拡大図10及び図11に示すように、GaAs基板16上にPdめっき膜44が形成される。続けて、図12に示すようにAu電解めっきによりAu層46を形成する。その後、アニールを行い、サファイア支持基板22からGaAs基板16を剥がす。
【0023】
ここで、Pd無電解めっき液42は、還元剤である次亜リン酸、塩化物などの無機酸塩、添加剤であるエチレンジアミン、パラジウム化合物を混合した溶液である。これにより、付着したPdキャタリスト30を触媒として次亜リン酸イオンが酸化し、そのときに放出される電子によってPdイオンが還元され、Pdめっき膜44が形成される。具体的には、Pdめっき膜44は、GaAs基板16の裏面とビア24の側面と電極18の裏面に形成される。
【0024】
Pd無電解めっき液42のPd濃度は0.1〜10g/L程度である。Pd無電解めっき液42はヒータ32により加熱されて液温50℃程度で使用される。安定的にめっきを行うためには、Pd活性化液28やPd無電解めっき液42の建浴量はめっき面積1.0dmに対して1L以上確保するのが望ましい。
【0025】
また、20℃以上でアニールを行うことによりPdとGaAs基板16が反応してPd−Ga−Asの混合層が形成される。具体的には、アニール温度が20℃〜250℃の場合はPd−Ga−Asの3元結晶、250℃〜350℃の場合はPdAsとPdGaの混晶、350℃〜500℃の場合はPdAsとPdGaとPdGaの混晶がそれぞれ形成される。このようにアニール温度により結晶状態が変化する。
【0026】
本実施の形態の効果について比較例と比較しながら説明する。図13は、比較例に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。比較例では、GaAs基板16の表面に、Ti層48及びAu層50を蒸着又はスパッタにより順次形成し、その上にAu層52を電解めっきにより形成する。
【0027】
しかし、ビア24側壁のTi層48及びAu層50が薄くなるため、導通不良が発生する。また、Ti層48及びAu層50を給電層として電解めっきを行った場合にも、ビア24内でのAu層52の不成長や成長異常などが発生する。
【0028】
一方、本実施の形態では、Pd活性化処理によりGaAs基板16の表面にPdキャタリスト30を付着させた後に、GaAs基板16上にPdめっき膜44を形成する。これにより、従来のスパッタや蒸着に比べて、ビア24の側壁に均一に金属膜を形成することができ、電気的導通を確保しやすい。また、Au電解めっきを行う際に、Pd膜がビア内部に十分に被覆しているため、ビア内部でのAu電解めっきの不成長などの異常が発生しにくい。よって、被覆性及び付着力が高い金属膜を半導体基板上に低コストで形成することができる。
【0029】
図14は、GaAs基板上のPd無電解めっき膜についてデプスオージェ分析を行った結果を示す図である。なお、窒素雰囲気中において250℃で4時間のアニールを行った。分析の結果、深さ方向に対してPd、Ga、Asが同程度に混合していた。付着性についてテープテスト(JIS規格H8514)を行ったところ、「剥がれなし」の良好な付着性を確認した。混合層の形成により、GaAsとPdの付着特性が向上したものと考えられる。
【0030】
図15は、アニール温度に対するPdめっき膜ストレスを示す図である。アニール温度を上げるほどストレスは下がり、320℃/1hrのアニール後では100℃/10minのアニール後に比べて、ストレスが半分程度に減少している。ストレスが高くなるとウェハやチップが反り、熱抵抗特性などが悪くなる。
【0031】
アニール温度を設定する場合、たとえば、GaAs半導体デバイスは350℃以上に加熱するとオーミック電極や活性領域の特性変動が起こるため350℃以下であることが望ましい。一方、250℃で樹脂ダイボンドを行う場合、ダイボンド時にストレス特性変動が起きないように予めアニールを行うのが望ましい。この場合には、250℃〜350℃程度でアニールを行うと良い。また、AuSn半田(Snが20%)でダイボンドを行う場合、300℃以上程度の熱履歴がある。この場合には、300℃〜350℃程度でアニールを行うと良い。
【0032】
なお、有機材料などのレジスト上にはPdが成長しないため、半導体基板上にレジストパターンを形成してからPd無電解めっきを行うと任意の形状のPd膜を形成できる。めっき膜形成後に有機洗浄によりレジストを除去する。
【0033】
また、電極の用途に応じて、Pd無電解めっき膜上にNi、Cu、Auなどの他の無電解めっき膜を形成してもよい。パターンがすべて接続している場合には、続けてAu、Ag、Cuなどの電解めっき膜を形成してもよい。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態2に係る半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。図16は実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための上面図であり、図17は断面図である。
【0035】
まず、GaAs基板16(半導体基板)上に段差54をエッチングにより形成する。次に、実施の形態1と同様の方法により、Pdめっき膜44を、GaAs基板16の段差54の平坦部及び側面部に形成する。このように、段差を有する半導体基板の表面にPd膜を均一に形成することができる。例えば段差を跨いだ配線や電極パッドを、断線や細りなどなく形成することができる。
【符号の説明】
【0036】
16 GaAs基板(半導体基板)
18 電極
24 ビア
28 Pd活性化液
30 Pdキャタリスト
42 Pd無電解めっき液
44 Pdめっき膜
54 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pdイオンを含むPd活性化液に半導体基板を浸漬して前記半導体基板の表面にPdキャタリストを付着させる工程と、
表面にPdキャタリストが付着された前記半導体基板をPd無電解めっき液に浸漬して前記半導体基板上にPd無電解めっき膜を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板はGaAs基板であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記Pd活性化液は塩化パラジウム溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記Pd無電解めっき液を20℃以上にすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記Pd無電解めっき膜を形成した後に250℃〜350℃でアニールを行う工程を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記アニールを300℃〜350℃で行うことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体基板の上面に電極を形成する工程を更に備え、
前記半導体基板を貫通して前記半導体基板の裏面から前記電極の裏面まで達するビアを形成し、
前記Pd無電解めっき膜を、前記半導体基板の前記裏面と前記ビアの側面と前記電極の前記裏面に形成することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板に段差を形成する工程を更に備え、
前記Pd無電解めっき膜を、前記半導体基板の前記段差の平坦部及び側面部に形成することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−165810(P2011−165810A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25464(P2010−25464)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】