説明

半導体装置の製造装置

【課題】 レーザビームの電場の方向がヒューズの長手方向と平行になるようにしてレーザビームを照射して、ブローの取れ残りの低減やブロー痕の増大防止を行う。
【解決手段】 あるヒューズの長手方向に対して電場の方向が平行となるレーザ6mと垂直方向になるレーザ6nとの2台のレーザを搭載し、偏光ビームスプリッタ10により両者のレーザビームは同一軸になるようにされている。偏光ビームスプリッタ10は、電場の方向が垂直の場合はほぼ100%反射するが、水平の場合はほぼ100%透過する特性を有し、レーザ6mのビームNmは反射し、レーザ6nのビームNnは透過する。これにより、あるヒューズに対してはその長手方向と電場の方向が平行になるレーザ6mを照射し、別のヒューズが90度方向が異なるように置かれた場合にはその長手方向と電場の方向が平行になるビームNnを照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置では、図13に示したようにウエハ基板1上に酸化膜2を形成し、酸化膜2の上にヒューズ3を形成したのち、さらにその上に酸化膜4を形成する。
【0003】
このヒューズ3は、一層構造であったり多層構造であったりするが、この酸化膜4の上方からヒューズ3にレーザビームCを照射し加熱する。ヒューズ3は加熱されることで固体→液体→気体へと相変化し、特に気化する際に急激な体積変化を伴うことからヒューズが切断されブローが完成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ヒューズは電気的特性やプロセスの簡便性から設計される面が多く、新世代に移行する際に前世代と全く異なる部材を採用したり、ヒューズ寸法やヒューズの周囲の酸化膜の厚さ等が異なることがある。このために、エネルギーマージンが狭くなったり、取れ残りが発生したりするといった問題が生じ、ブローが安定して行えないことがあったり、ブロー痕が大きくなるためヒューズの配置間隔を小さくできず、半導体装置の縮小化を妨げるといった問題があった。
【0005】
特に、昨今の集積化及びプロセス工程削減にともなう厚膜化で、下層に位置するヒューズの切断が困難となってきており、上層に位置する配線をヒューズとして採用するようになってきている。上層に位置する配線は主に金属が採用されているが、金属の場合、配線パターン転写時に照射光の反射が大きくなり、うまく転写が行えないといった問題が生じるため、表面に減反射コーティングの役割を果たす膜、例えば窒化膜を成膜したりしている。
【0006】
また、ウエハ基板から金属配線にシリコン(Si)のイオンが拡散してこないよう金属配線下に拡散防止膜を成膜するなどしており、ヒューズのブローには必ずしも適していない膜構成になっている場合が多い。
【0007】
従来のレーザブロー装置は、図14の構成図に示すように、レーザ6から出されたビームCは数μmまで集光する必要があるため一旦ビームエキスパンダ7などで拡げ、その後集光レンズ8にてヒューズ3にビームを集光し、そのエネルギーでヒューズ3のブローを行う。
【0008】
ところが、通常のビームCは直線偏光であり、図15(a)に示したようにヒューズ3の長手方向に電場ベクトルAが平行であるタイプA、あるいは電場ベクトルBが長手方向と交差するタイプBが考えられる。しかし、照射されるビーム径よりヒューズ幅が小さい場合、エッジ部分でのビームの吸収が電場の方向によって変わることが知られており、タイプAの場合は図15(b)に示すようにエッジ部分に吸収が集中し、タイプBの場合は図15(c)に示すように表面とヒューズ側面に吸収が分散する。
【0009】
タイプAはエッジ部のごく一部に光吸収が生じ、この部分からヒューズ全体を加熱する必要があり、取れ残りが生じる可能性が大きい。実際のヒューズは、設計の都合上タイプAのように配置される場合があったり、また、ヒューズの形状も単に真っ直ぐではなく”コ”の字型などをしている場合がある。従って、ヒューズの配置や形状で電場分布がヒューズに対して常に一定ではなくなり、あるヒューズでは取れ残りはほとんどないが、他のヒューズでは取れ残りがあるといった問題点が生じる。
【0010】
さらに、沸点が3000Kを超えるような高沸点物質で構成されたヒューズ、以下このようなヒューズを高沸点物質ヒューズと称することもある、の場合、タイプAではブロー痕が大きくならないが、タイプBではブロー痕が大きくなるため半導体装置の縮小化を行えないといった問題点がある。
【0011】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、ヒューズの取れ残りを低減でき、またブロー痕を縮小できる、半導体装置の製造装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の半導体装置の製造装置においては、直線偏光したレーザビームの電場の方向がヒューズの長手方向と少なくとも直交しないようにして照射して切断するようにした。
【0013】
そして、本発明の半導体装置の製造装置においては、基板上に形成されたヒューズを照射して切断するレーザビームを発するものであって、第一の電場の方向を有する直線偏光した第一のレーザビームと第一の電場の方向と交差する第二の電場の方向を有する第二のレーザビームとを同一軸上で選択的にあるいは同時に照射しうるようにしたものである。
【0014】
さらに、本発明の半導体装置の製造装置においては、基板上に形成され沸点が3000K以上の物質の性質が支配的なヒューズを照射して切断する直線偏光したレーザビームを発するものであって、直線偏光したレーザビームの電場の方向をヒューズの長手方向にほぼ平行になるように制御する電場の方向制御手段を有する。
【0015】
また、本発明の半導体装置の製造装置においては、基板上に形成されたヒューズを照射して切断するレーザビームを発するものであって、レーザビームを直線偏光と円偏光とに切換える切換手段を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
この本発明は、直線偏光したレーザビームの電場の方向が少なくともヒューズの長手方向と直交しないようにして照射して切断するようにしたので、沸点が3000K以上の物質の性質が支配的なヒューズの場合に直線偏光したレーザビームの電場の方向とヒューズの長手方向とが直交する状態ではヒューズ周りの物質が温度上昇して軟化する範囲が広がるので、これを避けてレーザビームの電場の方向がヒューズの長手方向と少なくとも直交しないようにしてブロー痕の拡大を防止すれば、ヒューズ間隔を小さくして半導体装置の縮小化が可能となる。
【0017】
そして、基板上に形成されたヒューズを照射して切断するレーザビームを発するものであって、第一の電場の方向を有する直線偏光した第一のレーザビームと第一の電場の方向と交差する第二の電場の方向を有する第二のレーザビームとを同一軸上で選択的にあるいは同時に照射しうるようにしたものであるので、第一の電場の方向、第二の電場の方向、あるいは第一及び第二の電場の方向のレーザビームを組み合わせて三通りの電場の方向を選択でき、ヒューズの長手方向の三通りの位置に対応でき、ヒューズの長手方向とビームの電場とのずれを少なくすれば、ヒューズの局部発熱を抑制することができ、取れ残りを少なくできる。
【0018】
さらに、基板上に形成されたヒューズを照射して切断する直線偏光したレーザビームを発するものであって、上記直線偏光したレーザビームの電場の方向を上記ヒューズの長手方向にほぼ平行になるように制御する電場の方向制御手段を有するものであるので、直線偏光したレーザビームの電場の方向とヒューズの長手方向とを平行にしてヒューズ周辺の物質の温度上昇を抑制でき、ブロー痕の拡大が防止でき、半導体装置の縮小化が可能となる。
【0019】
また、基板上に形成されたヒューズを照射して切断するレーザビームを発するものであって、レーザビームを直線偏光と円偏光とに切換える切換手段を有するものであるので、高沸点物質の性質が支配的なヒューズには直線偏光を、低沸点物質の性質が支配的なヒューズには円偏光を、切換えて照射でき、ヒューズの取れ残りを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明においては、ヒューズの物性に応じて、ビームの照射時間や電場の方向をそれに適したものとし、ブローが完全に行われるようにし、取れ残りが生じないようにする。
具体的には、高沸点物質ヒューズの場合、低沸点物質ヒューズとは異なり、高沸点物資であるため表面で光吸収がなされた場合であっても表面の温度は即座に沸点までには到達しない。このことより、ヒューズの相状態が低沸点物質ヒューズでは短時間照射では気相、液相および固相の混在となるが高沸点物質ヒューズでは液相、固相の状態での時間が長くなることから、照射時間を長くとると沸点に達するまでの時間が長くなることから、その間にヒューズの周囲の温度も高くなり、軟化領域が広がりブロー痕が大きくなる。
【0021】
これを防ぐために、高沸点物質ヒューズでは3相が混在しない程度になるようピークが高く比較的照射時間が短い、しかも、ある特定の部分に光吸収を集中させることが可能な直線偏光のビームを照射する。これにより、周囲の酸化膜軟化領域抑制でブロー痕を小さくし、ヒューズどうしの配設間隔が狭まることで半導体装置の縮小化が可能となる。
【0022】
さらに、発熱分布はヒューズの長手方向の向きとビームの電場の方向との関係の影響を大きく受ける。特に、高沸点物質で構成されたヒューズの場合、ブロー痕はこの発熱分布の偏りの影響を大きく受けるので、その長手方向の向きに応じて直線偏光のビームの電場の方向を変えられるようにして、ヒューズの発熱の極端な偏りを防止し、ブロー痕が大きくならないようにすることが有効である。
【0023】
また、複数のレーザから同じ波長のビームを遅延照射できるようにブロー装置を構成し、照射時間を長くできるようにする。そうすれば、1台のブロー装置で、高沸点物質のヒューズの場合は短時間パルス幅のビームを、低沸点物質のヒューズの場合は同じ波長のビームを遅延照射して照射時間を長くすることにより、それぞれに適した照射時間にしてブロー痕が大きくならず、あるいは取れ残りがないようにできる。
【0024】
そして、ヒューズを構成する物質が高沸点物質、低沸点物質のいずれの性質が支配的か、及びヒューズの長手方向の向き、に応じて、ビームを変更できるようにする。すなわち、直線偏光、円偏光、及びビームの電場の方向を切り替えられるようにして、1台のブロー装置で、高沸点物質ヒューズでは直線偏光でかつヒューズの長手方向にビームの電場の方向を合わせて照射することでブロー痕の縮小化を図り、低沸点物質ヒューズでは円偏光のビームを照射して取れ残りを低減する。
【0025】
実施の形態1.
図1〜図9は、この発明を実施するための実施の形態1を示すものであり、図1はレーザブローの対象である半導体装置のヒューズ部の説明図、図2は複素屈折率と比複素誘電率を示す特性図である。図3は多層膜ヒューズにおける電場分布と発熱分布を示す特性図、図4はレーザビームの出力と時間の関係を示す特性図である。図5は低沸点と高沸点物質ヒューズの周囲の酸化膜の温度分布の概要を示す説明図である。図6はブロー痕の状態を説明するための説明図、図7はブロー装置の構成図、図8、図9はビームの説明図である。
【0026】
図1において、1はウエハ基板、2はウエハ基板1とヒューズ3の層間に位置する酸化膜、ヒューズ3は、Siイオン拡散防止の役割を果たしている窒化物3a、ヒューズを構成する物質の50%以上を占め沸点が3000K未満の低沸点物質である金属3b及び反射防止の役割を果たしている窒化物3cの三層膜で構成されている。4はヒューズの上に設けられた酸化膜、Fはビームであり入射方向及びエネルギーの大きさを矢印の向きと大きさで示した。なお、図示しないブロー装置は、図14の構成図に示されたものと同様のものであるが、詳細を後述するパルス時間が長いビームFを照射可能にしている。
【0027】
レーザブローにおける手順は次の通りである。ビームFを酸化膜4側からウエハ基板1に向かって照射する。ヒューズ3は照射されたビームFを吸収することで発熱し、固体、液体、気体といった過程を経る。特に、液体から気体へと変化する際急激な圧力変化を伴うため、上部に位置する酸化膜4がヒューズ3と共に吹き飛びブローが完結する。
【0028】
しかし、ヒューズ3は単一の物質で構成されている場合もあるが、上記のように多層膜で構成される場合が多く、レーザビームの吸収分布そのものが不均一であることと各膜の熱物性値が異なることから、光吸収によって発生した熱の伝導も非常に複雑となる。
【0029】
ヒューズ3内での光吸収分布は層内での電場分布で表され、各膜の複素屈折率m=n−jk(ここにjは虚数)は、膜厚及びヒューズの形状に大きく依存する。そして、ヒューズの発熱はヒューズでの光吸収分布と相似であると考えられるから、光吸収分布を知ることが重要となる。
【0030】
なお、光は電磁波であるから、複素屈折率を誘電率に変換すると、複素誘電率ε=εa−jεbの実数項εaは複素屈折率の実数項nと虚数項kの各2乗の差、すなわちεa=n・n−k・kである。また、虚数項εbは複素屈折率の実数項nと虚数項kの積の2倍、すなわちεb=2n・kとなる。ウエハ基板1、酸化膜2,4及びヒューズ3を構成している物質の各複素屈折率と比複素誘電率の関係を図2の特性図に示す。
【0031】
図2に一例を示したように、アルミニウム、銅、窒化チタン等は、比複素誘電率εの実数項εaは負の値である。また、これらの物質が体積でヒューズ全体の半分以上を占める場合は、低沸点物質の性質が支配的となり、低沸点物質ヒューズとして扱うことができる。
【0032】
比複素誘電率εの実数項εaが負であるような物質でヒューズの表面が覆われている多層膜ヒューズの場合、電界強度は図3(a)、発熱分布は図3(b)に示すようになり、ヒューズ表面でほとんど光が吸収されてしまう。従って、表面の発熱によってヒューズ全体を加熱する必要があると考えられる。
【0033】
レーザブローでは単位面積あたり膨大なエネルギーをヒューズに与えることから、ブロー現象はレーザビーム照射中に完結する。一般に、レーザビームFは図4の特性図に示したようなパルス形状でヒューズ3に照射される。パルス時間はビーム強度のピーク値を1とした場合、強度が0.5となる値での照射時間である半値幅で定義される。
【0034】
比複素誘電率εの実数項εaが負であるような物質で表面を覆われている場合、図3の多層膜ヒューズの特性図に示したようにヒューズ表面でほとんど光が吸収されてしまい、表面での吸収発熱だけでヒューズ全体を加熱する必要がある。このように、表面吸収でヒューズ全体を加熱しなければならない場合、ヒューズは熱伝導で加熱されることになるので、ヒューズ下層部まで加熱する場合にはある程度の時間を必要とする。
【0035】
この現象は、熱伝導でヒューズ表面から下層部に熱が伝わり、少なくとも液化するまでの時間よりも表面が気化してしまう時間の方が早いために起こる。これを防ぐため、ヒューズを充分にブローすべく、十分なエネルギーは照射するが、パルス時間を延ばし単位時間あたりの照射エネルギーを低くすることにより、ヒューズ下層部まで熱伝導で十分に加熱できるようにする。
【0036】
この発明の実施の形態は、製品によって異なるヒューズ部材、特に高沸点物質ヒューズ及び低沸点物質ヒューズのいずれにも対応できるように、短パルス時間及び長パルス時間のレーザビームをヒューズ部材に応じて照射できるようにしたものである。
【0037】
ヒューズにおける熱の吸収は、比複素誘電率εの実数項εaが負の物質でヒューズの表面が覆われている場合、表面吸収が支配的で、しかも沸点が3000K未満の物質がヒューズを構成する物質の50%以上であるような低沸点物質ヒューズの場合は、長パルス時間でのレーザビーム照射が取れ残りを低減するのに有効である。
【0038】
これに対し、高沸点物質ヒューズでは、高沸点物質であるため沸点に到達するまでの時間がかなりかかることから、図5に示すように長パルス時間のレーザビームをヒューズに照射すると、ヒューズ周りの酸化膜の温度も高くなり図の曲線TL1のように酸化膜軟化域が拡がる。このため、低沸点物質ヒューズでは問題とならなかった酸化膜軟化域の拡大により、ヒューズブロー時にその軟化された酸化膜までもブローしてしまい、ブロー痕が大きくなりすぎる。ブロー痕が大きいということは飛び散りが大きくなり、抵抗が低くなる場合が多く見られる。また、ブロー痕が大きいと隣のヒューズまでブローしてしまうおそれがあるので、ブロー痕が大きくなっても支障がないようにヒューズの間隔を大きくとった設計をしなければならず、半導体装置の縮小化を行うことが困難となる。
【0039】
高沸点物質ヒューズは、高沸点であるといった特徴から、表面吸収であった場合でも表面が気化するまでにはある程度の時間を要する。そこで、このような高沸点物質ヒューズの場合は、短パルス時間のレーザビームを照射するのが、取れ残りの防止およびブロー痕の拡大防止には効果的である。
【0040】
発明者らの実験によれば、図6に示すようにビームの半値パルス幅が7.5nsでは、ブロー痕Mの大きさはヒューズの幅よりもやや広い適切なものとなり、15ns位になるとブロー痕Mはヒューズの幅の2倍程度の幅の楕円状となり、ヒューズ間隔をヒューズ幅と同じにしたものにおいては隣接するヒューズのブロー痕同士がくっつくような状態になる。これらより、ビームのパルス時間を10ns未満にするのが望ましいことが判明した。すなわち、レーザビームを、半値幅照射時間が10ns未満と短くして、ヒューズ周りの物質が温度上昇して軟化する範囲が広がらないようにすると、ブロー痕の拡大防止に効果的である。
【0041】
このように、パルス時間の短い、すなわち照射されるトータルエネルギーが同じならばパルスより時間あたりに照射されるエネルギーが高い、レーザビームを照射すれば、10ns未満といった非常に短い時間でブロー現象が完結する。このため、酸化膜がある程度軟化する前にブローが完了するためにブロー痕も小さくなると考えられる。すなわち、短時間パルスのレーザビームを用いれば、図5の曲線TS1のように周囲の軟化領域があまり広がらない状態でブローを完結できる。これを長時間パルスのレーザビームにすると図5の曲線TL1の如く軟化領域が広がるのでブロー痕も大きくなる。ここで、たとえパルス時間を短くしたことで若干の取れ残り発生したとしてもそれはエッチング等で取り除くことが可能であり、これを考慮しても半導体装置縮小化の効果は非常に大きい。
【0042】
従って、この発明における半導体装置の製造装置であるブロー装置は、図7のように構成し、高沸点物質ヒューズ及び低沸点物質ヒューズのいずれに対応できるようにレーザビームの照射時間を調整できるようにする。
図7において、単一波長の複数のレーザ6d〜6gから出射するビームKd〜Kgを、ビームスプリッタ9d〜9fを使用して同一軸上に遅延照射して長時間幅のビームKtを照射できるようにしている。これにより、図8に示すように個々のビームKd〜Kgが短パルスレーザであっても照射時間の長いビームKtをヒューズ3に照射することが可能となる。
【0043】
ここで、すべてのレーザ6d〜6gを同一の強度及びパルス時間で照射する必要はなく、図9に示したように強度及び電流の調整によりパルス時間を変更したレーザビームを照射してもよい。また、短パルスだけでよい場合には単一のレーザだけを使用してもよいし、同時に複数のレーザ6d〜6gを発振させれば、そのエネルギーが加算されて短時間に大きなエネルギーを加えることもできる。これにより、様々な異なる材料のヒューズに対応することが可能となる。
【0044】
なお、上記のような短パルスのレーザ6d〜6gの長パルス化を図るには半導体励起レーザであるなら供給する電流やQスイッチの調整で行うことができるが、それらの調整ではせいぜいパルス時間を2倍程度までしか延ばすことができない。さらに、それらの方法でたとえ2倍以上のパルス時間にしたとしても、レーザビームの安定性が悪くなったり照射エネルギーの急激な低下が起こり、量産工場のばらつきに対応できなくなったり、ブローに必要なエネルギーを確保できなくなったりする。
【0045】
このように、単一のレーザ1台だけでは十分な照射時間を安定して確保できないので、図7のように単一波長の複数のレーザ6d〜6gを、ビームスプリッタ9を使用して同一軸上に遅延照射できるようにすることが有効である。これにより、図8や図9に示したような、短パルスレーザであっても照射時間の長いレーザビームをヒューズに照射することが可能となる。
なお、各レーザ6d〜6gを供給する電流やQスイッチの調整でパルス時間を2倍程度まで延ばせば、4台のレーザで8倍程度まで容易に照射時間を調整することができうる。
【0046】
実施の形態2.
図10、図11は、この発明の実施の形態2を示すもので、図10はブロー装置の構成図、図11はレーザビームの光路を説明するための説明図である。
【0047】
先の従来例における図15にも示したとおり、ヒューズの長手方向と直線偏光されたビームの電場の方向が平行であるタイプA、及び直交するタイプB、により光吸収分布が異なることからブロー現象が異なる。沸点が3000K以上の高沸点物質で構成されたヒューズの場合、タイプAではブロー痕が小さくなるがタイプBでは大きくなるといった問題がある。さらに、円偏光のビームはタイプAとタイプBの中間的な光吸収を示すことから、高沸点物質ではブロー痕が比較的大きくなり必ずしも適しているとはいえない。
【0048】
半導体装置において、面積縮小化を図る場合、半導体装置の設計上、ヒューズを必ずしも特定方向に揃えること、つまり、ヒューズをタイプAと同様になる方向に揃えることは困難なことが多い。従って、半導体装置の設計の自由を高め、縮小化を行うためには、ヒューズの長手方向に電場の方向を平行にあわせることのできるブロー装置が必要となる。
【0049】
図10において、ヒューズの長手方向に対して電場の方向が平行となるレーザ6mと垂直方向になるレーザ6nとの2台のレーザを搭載し、偏光ビームスプリッタ10により両者のレーザビームが同一軸になるようにされている。この偏光ビームスプリッタ10は、例えば、図11(a)に示すように電場の方向が垂直の場合の光はほぼ100%反射するが、水平の場合は図11(b)に示すようにほぼ100%透過するといった特性を有し、図10に示されたレーザ6mのビームNmは反射し、レーザ6nのビームNnは透過する。
【0050】
これにより、半導体装置の製造装置において、ヒューズが図15(a)の矢印Aに示したように配置されたタイプAの場合にはレーザ6mを、タイプBの場合にはレーザ6nを照射することにより痕跡の小さなブローを行うことが可能となる。また、ヒューズ3がタイプAとタイプBとの中間に位置する場合、すなわち長手方向に対して45゜傾いて位置する場合には、レーザ6mとレーザ6nを同時に照射しブローする。これにより、ヒューズ3の長手方向が、基準位置に対して平行、直角及び45゜の3通りあった場合にも、このヒューズの長手方向にビームの電場の方向が平行になるように調整することが可能となり、1台のブロー装置で対応できる。
【0051】
なお、ヒューズ3の長手方向とビームの電場の方向とを必ずしも厳密にあわせる必要はなく、ヒューズの長手方向に対するビームの電場の方向のずれがもっとも小さくなるように、ヒューズ3の長手方向と平行、直角及び45゜の通りの方向を選んで照射するようにすることも可能である。
また、ビームの電場の方向を任意の方向に制御できる電場方向制御手段を設ければ、設計時にヒューズの長手方向の向きに制約を受けることがないので、設計の自由度が一層高くなる。
【0052】
実施の形態3.
図12は、さらにこの発明の実施の形態3を示すブロー装置の構成図である。
ブロー現象は照射されるビームの偏光、すなわちヒューズの長手方向に対するビームの電場の方向に大きく依存する。ヒューズが、主として高沸点物質で構成されている場合には直線偏光が有効であるが、図9、図10の実施の形態で示したような、主に低沸点の物質で構成されている場合には円偏光が有効である。このような様々なヒューズ部材に対応するために、この実施の形態では直線偏光と円偏光の両ビームを選択し照射できるようにしている。
【0053】
図12において、レーザビームの光路に設けられた光切換装置14は、スリット11、λ/4板12とλ/2板13とを有し、本来照射される電場の方向である直線偏光を採用する場合にはスリット11を、円偏光を採用したい場合にはλ/4板12を、本来の電場の方向から90゜回転させた電場の方向を採用する場合にはλ/2板13に切り替えられる。これにより、3種類の電場の方向の選択が可能となり、様々なヒューズ部材及び方向に対応することが可能となる。
また、この光切換装置は固定された偏光板である必要はなく、可変偏光素子等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施の形態1であるレーザブローの対象である半導体装置のヒューズ部の説明図である。
【図2】複素屈折率と比複素誘電率を示す特性図である。
【図3】多層膜ヒューズにおける電場分布と発熱分布を示す特性図である。
【図4】レーザビームの出力と時間の関係を示す特性図である。
【図5】低沸点と高沸点物質ヒューズの周囲の酸化膜の温度分布の概要を示す説明図である。
【図6】ブロー痕の状態を説明するための説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1である複数レーザ照射によるブロー装置の構成図である。
【図8】図7のブロー装置におけるパルス合成の一例を示す説明図である。
【図9】他のパルス合成の一例を示す説明図である。
【図10】さらに、この発明の実施の形態2である3方向直線偏光ビームを選択して照射可能なブロー装置の構成図である。
【図11】図10における偏光ビームスプリッタの特性を示す特性図である。
【図12】さらに、この発明の実施の形態3である直線偏光と円偏光の選択が可能なブロー装置の構成図である。
【図13】従来の半導体装置のヒューズのブローの説明図である。
【図14】従来のブロー装置の構成図である。
【図15】ヒューズに対する電場の方向と発熱分布の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ウエハ基板、2 酸化膜、3 ヒューズ、3a 窒化物ヒューズ、
3b 金属ヒューズ、3c 窒化物ヒューズ、4 酸化物、6d〜6g レーザ、
6m,6n レーザ、9d〜9f ビームスプリッタ、10 偏光ビームスプリッタ、
11 スリット、12 λ/4板、13 λ/2板、14 光切換装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光したレーザビームの電場の方向が切断すべきヒューズの長手方向と少なくとも直交しないようにして照射して切断する半導体装置の製造装置。
【請求項2】
上記直線偏光したレーザビームの電場の方向を上記ヒューズの長手方向と平行にして照射して切断する請求項1に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項3】
基板上に形成されたヒューズを照射して切断するレーザビームを発するものであって、第一の電場の方向を有する直線偏光した第一のレーザビームと上記第一の電場の方向と交差する第二の電場の方向を有する第二のレーザビームとを同一軸上で選択的にあるいは同時に照射しうるようにされた半導体装置の製造装置。
【請求項4】
基板上に形成され沸点が3000K以上の物質の性質が支配的なヒューズを照射して切断する直線偏光したレーザビームを発するものであって、上記直線偏光したレーザビームの電場の方向を上記ヒューズの長手方向にほぼ平行になるように制御する電場の方向制御手段を有する半導体装置の製造装置。
【請求項5】
基板上に形成されたヒューズを照射して切断するレーザビームを発するものであって、上記レーザビームを直線偏光と円偏光とに切換える切換手段を有する半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−5346(P2006−5346A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171803(P2005−171803)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【分割の表示】特願平10−98984の分割
【原出願日】平成10年4月10日(1998.4.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】