説明

半導体装置の解析装置及びその解析方法

【課題】解析対象試料を破壊又は切断することなく、また、解析対象試料に非接触で、解析対象試料の内部構造を精度良く解析する解析装置を提供する。
【解決手段】半導体装置の解析装置は、解析対象試料となる半導体基板を水平に保持するステージ2と、解析対象試料に対して出射超音波の周波数を可変に発振する電磁超音波送信部4と、電磁超音波送信部4から発振されて解析対象試料から反射されてきた反射超音波を受信する電磁超音波受信部4と、ステージ2及び電磁超音波送受信部4のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御すると共に該少なくとも一方の水平方向の位置情報を取得する位置制御部1bとを備える。そして、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数と位置情報から得られる解析位置情報とに基づいて解析対象試料を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の解析装置及びその解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンウェハの大口径化により、加工の均一性評価が益々重要となってきており、加工の均一性を評価するために取得が必要なデータ数が増大している。
【0003】
まず、半導体装置の構造を解析する従来からの解析方法として、SEM(走査型顕微鏡写真)又はTEM(透過型顕微鏡写真)を用いた断面の解析方法がある。ところが、この方法では、解析対象試料の切断などを行なって解析対象試料の断面を露出させる必要がある。このため、断面を一旦露出させた解析対象試料そのものを半導体プロセスに組み込むことができなくなる一方、解析対象用に試料を作成する場合にはその作成に手間がかかり、多数の解析対象試料を解析する場合には現実的ではない。
【0004】
ところで、非破壊で解析対象試料を解析する方法として、超音波顕微鏡を用いた解析方法及び電磁超音波センサを用いた解析方法が提案されている。
【0005】
超音波顕微鏡を用いた従来の解析方法では、図5に示すように、超音波を用いて解析対象試料100を解析するために、超音波の送受信に一般的に用いられる圧電素子102を使用している。圧電素子102を使用する際には、媒体101となる物質が必要であり、水などの液体又は接着剤などのような媒体101を解析対象試料100と圧電素子102との間に介在させる必要があり、解析対象試料100及び圧電素子102に媒体101を接触させた状態で解析対象試料100の解析を行なっている。ところが、圧電素子102を媒体101を介して解析対象試料100と密着させる必要があることにより、圧電素子102を構成するセンサ自身が振動すると、媒体101及び解析対象試料100が連動して振動するため、解析対象試料100から反射されてくる本来解析に必要な超音波以外の超音波も、センサ内部に侵入してくるので、超音波顕微鏡を用いた従来の解析方法では、解析対象試料の解析が困難である。
【0006】
この点、電磁超音波センサを用いた従来の解析方法(例えば特許文献1参照)では、金属の疲労寿命を予測する方法が開示されており、非接触で超音波の発生を行なうので、センサ内部に本来解析に必要な超音波を得ることができる。
【特許文献1】特開平9−257760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本来、解析対象試料の解析は、前述したSEM又はTEMを用いた従来の解析方法のように、解析対象試料の内部構造を精度良く解析する必要がある。しかしながら、SEM又はTEMを用いた従来の解析方法が抱える問題を解決可能な超音波顕微鏡を用いた従来の解析方法及び電磁超音波センサを用いた従来の解析方法では、解析対象試料の内部構造を解析することができない。すなわち、超音波顕微鏡を用いた従来の解析方法よりも精度良く解析可能な電磁超音波センサを用いた従来の解析方法であっても、例えばSEM又はTEMを用いた従来の解析方法では可能である解析対象試料の内部構造の精度良い解析を実現することは困難である。
【0008】
前記に鑑み、本発明の目的は、解析対象試料を破壊又は切断することなく、解析対象試料の内部構造を精度良く解析できる半導体装置の解析装置及びその解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、我々は鋭意検討を重ねた結果、解析対象試料を保持するステージ及び超音波の送受信を行なう手段のうちの少なくとも一方の位置制御を可能とすることにより、前記目的を達成できるという知見に到達した。本発明は、前記の知見に基づいてなされたものであり、具体的には、本発明に係る半導体装置の解析装置は、解析対象試料となる半導体基板を水平に保持するステージと、ステージの上方に設けられ、超音波を送信及び受信する超音波送受信部と、超音波送受信部に対して電流値が可変になるように電流を印加する電流制御部と、超音波送受信部に設けられ、電流制御部から印加される電流の電流値の変化に伴って解析対象試料に対して出射超音波を周波数を可変に発振する超音波送信部と、超音波送受信部に設けられ、超音波送信部から発振されて解析対象試料から反射されてきた反射超音波を受信する超音波受信部と、ステージ及び超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御する位置制御部とを備え、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数と、少なくとも一方の位置から得られる解析対象試料の解析位置情報とに基づいて、解析対象試料を解析することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る半導体装置の解析装置によると、位置制御部が、ステージ及び超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向へ移動可能に制御することにより、解析対象試料の水平方向の解析位置を把握しながら超音波を用いて解析対象試料の解析を行なうことができるので、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。また、解析対象試料を破壊又は切断することなく、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。
【0011】
本発明に係る半導体装置の解析装置において、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数と解析位置情報とをもとに画像処理を行なう画像処理部をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
このようにすると、解析対象試料を構成する物質の特定及びその物質が占める領域の特定が可能となるので、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる
本発明に係る半導体装置の解析装置において、画像処理部は、解析対象試料を構成する物質の共鳴周波数をデータとして保持していることが好ましい。
【0013】
このようにすると、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数から、解析対象試料を構成する物質を容易に特定することができる。
【0014】
本発明に係る半導体装置の解析装置において、位置制御部は、ステージ及び超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に加えて垂直方向に移動可能に制御することが好ましい。
【0015】
このようにすると、解析対象試料の厚さに応じた位置制御が可能になる。
【0016】
本発明に係る半導体装置の解析装置において、超音波送受信部を挟んで並列に配置され、超音波を送信及び受信する第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部をさらに備えていることが好ましい。
【0017】
このようにすると、超音波送受信部から出射される出射超音波が隣り合う第1及び第2の副超音波送受信部からの超音波と干渉し合うことを可能にするので、超音波送受信装置からの出射超音波を強めることが可能になる。
【0018】
本発明に係る半導体装置の解析方法は、ステージ上に水平に保持された解析対象試料となる半導体基板に対して超音波送受信部から送信される出射超音波と、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数に基づいて、解析対象試料を解析する半導体装置の解析方法であって、超音波送受信部に対して電流値が可変になるように電流を印加する工程(a)と、電流値の変化に伴って解析対象試料に対して出射超音波を周波数を可変に発振する工程(b)と、発振された出射超音波が解析対象試料から反射されてきた反射超音波を受信する工程(c)と、ステージ及び超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御する工程(d)と、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数と、該少なくとも一方の位置から得られる解析対象試料の解析位置情報解析位置情報とに基づいて、解析対象試料を解析する工程(e)とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る半導体装置の解析方法によると、ステージ及び超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御することにより、解析対象試料の水平方向の解析位置を把握しながら電磁超音波を用いて解析対象試料の解析を行なうことができるので、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。また、解析対象試料を破壊又は切断することなく、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。
【0020】
本発明に係る半導体装置の解析方法において、工程(e)は、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数と解析位置情報とをもとに画像処理を行なう工程を含むことが好ましい。
【0021】
このようにすると、解析対象試料を構成する物質の特定及びその物質が占める領域の特定が可能となるので、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。
【0022】
本発明に係る半導体装置の解析方法において、工程(d)は、ステージ及び超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に加えて垂直方向に移動可能に制御する工程を含むことが好ましい。
【0023】
このようにすると、解析対象試料の厚さに応じた位置制御が可能になる。
【0024】
本発明に係る半導体装置の解析方法において、解析対象試料は、上部に導電性膜を備えた半導体基板であることが好ましい。
【0025】
このようにすると、電磁超音波共鳴法を用いて、解析対象試料の解析が実現できる。
【0026】
本発明に係る半導体装置の解析方法において、半導体基板と導電性膜との間には、半導体基板に対してエッチング選択比を有する膜が介在していることが好ましい。
【0027】
このようにすると、半導体基板からの剥離が容易になるので、解析後の解析対象試料について以降のプロセスを継続することができ、寸法、形状データとプロセス完了後に行う電気特性とを対比して評価することが可能になる。
【0028】
本発明に係る半導体装置の解析方法において、エッチング選択比を有する膜はレジスト膜であることが好ましい。
【0029】
このようにレジスト膜を用いると、その剥離が容易であると共に、塗布後の表面の平坦性に優れるので、半導体基板と導電性膜との間に介在させる材料として好ましい。
【0030】
本発明に係る半導体装置の解析方法において、超音波送受信部を挟んで並列に配置され、超音波を送信及び受信する第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部をさらに備え、工程(a)は、超音波送受信部に印加する電流の位相に対して180℃ずれるように、第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部に対して電流を印加する工程を含むことが好ましい。
【0031】
このようにすると、超音波送受信部から出射される出射超音波が隣り合う第1及び第2の副超音波送受信部からの超音波と干渉し合うことで、超音波送受信装置からの出射超音波を強めることができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように本発明に係る半導体装置の解析装置及びその解析方法によると、解析対象試料を配置するステージ及び超音波を送信及び受信する超音波送受信装置のうちの少なくとも一方の位置制御を行なうことにより、解析対象試料の水平方向の解析位置を把握しながら電磁超音波を用いて解析対象試料の解析を行なうことができるので、SEM又はTEMように解析対象試料を切断又は破壊することなく、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置及びその製造方法、具体的には、電磁超音波を用いて解析対象試料となる半導体基板を解析する装置及びその方法について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置の構成図を示している。
【0035】
図1に示す本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置は、制御装置1aと、位置制御装置1bと、ステージ2と、第1の駆動装置3と、超音波送受信装置4と、支持棒5と、第2の駆動装置6と、アンプ7と、画像処理装置8と、表示装置9とを備えている。
【0036】
制御装置1aは、解析対象試料に対して出射される出射超音波と、出射超音波と解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった反射超音波の周波数を探索可能とし、解析対象試料を解析することを可能とする装置である。また、制御装置1aは、超音波送受信装置4に対して電流値が可変になるように電流を印加する機構を有している。
【0037】
位置制御装置1bは、ステージ2及び超音波送受信装置4を水平方向及び垂直方向に制御する。なお、ここでは、図1に示すように、一つの位置制御装置1aがステージ2及び超音波送受信装置4の双方の位置制御を行なう場合について説明しているが、ステージ2及び超音波送受信装置4のそれぞれを別個独立に制御する位置制御装置を対応する個数設ける構成でもかまわない。
【0038】
ステージ2は、水平方向及び垂直方向に移動可能であり、解析対象試料を水平に保持する。
【0039】
第1の駆動装置3は、X方向位置制御レール2a、Y方向位置制御レール2b、及びZ方向制御回転ネジ2cを備えており、第1の駆動装置3は、位置制御装置1bからの制御信号を受けて、ステージ2を水平方向及び垂直方向に移動させる。
【0040】
超音波送受信装置4は、例えば電磁超音波センサなどを備え、水平方向及び垂直方向に移動可能であり、超音波送信部と超音波受信部とを備えている。超音波送信部は、ステージ2上の解析対象試料に対して、制御装置1aから印加される高周波電流の電流値の変化に伴って出射超音波をその周波数を可変に発振する一方、超音波受信部は、出射超音波がステージ2上の解析対象試料から反射されてきた反射超音波を受信する。
【0041】
支持棒5は、超音波送受信装置4を支持する役割を有し、超音波送受信装置4と連動するように水平方向及び垂直方向に移動可能である。
【0042】
第2の駆動装置6は、位置制御装置1bからの制御信号を受けて、超音波送受信装置4及び支持棒5と連動するように水平方向及び垂直方向に移動させる。
【0043】
アンプ7は、超音波送受信装置4における超音波受信部によって受信された反射超音波の周波数を示す電気信号を増幅し、その増幅された電気信号を超音波特性として制御装置1aに対して出力する。
【0044】
画像処理装置8は、超音波特性を制御装置1aから取得すると共に、ステージ2及び超音波送受信装置4の位置情報から得られる解析対象試料の解析位置情報を位置制御装置1bから取得し、解析対象試料の内部構造を画像表示できるように、これらの情報を加工して表示装置9に出力する。また、画像処理装置8は、その内部の記憶装置に、解析対象試料を構成する各材料及び物質毎の共鳴周波数をデータとして保持しており、制御装置1aから取得した超音波特性と比較して、共鳴を起こした材料又は物質を特定する。
【0045】
表示装置9は、画像処理装置8から受けた信号に基づいて、解析対象試料の内部構造を画像表示する。
【0046】
以上のように構成される本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置及びその装置を用いた解析方法について、前記図1及び図2を参照しながら具体的に説明する。
【0047】
まず、図2は、本発明の一実施形態に係る半導体解析装置及びその解析方法で用いられる電磁超音波共鳴法の原理を説明するための模式図を示している。
【0048】
図2に示すように、電磁超音波送受信装置4には、磁石21及び渦巻き状の平面コイル22が設けられており、この構成により、電磁超音波送受信装置4は前述した電磁超音波送信部及び電磁超音波受信部の機能を実現する。また、平面コイル22を介して磁石21に対向するステージ2上の解析対象試料の最上面には導電性膜2Aが形成されている。
【0049】
磁石21は静磁場23を形成しており、制御装置1aから電流値を可変に平面コイル22に高周波電流を印加すると、導電性膜2Aの内部には、平面コイル22に流れる電流の向きと逆向きの渦電流24が発生する。このため、フレミングの左手の法則にしたがったローレンツ力25が生じ、導電性膜2A内部の自由電子が影響を受けることにより、導電性膜2Aの内部方向に向かう出射超音波26が生じる。一方、この出射超音波26は解析対象試料内部を伝播していき、反射されてきた反射超音波によって前述した現象と逆の過程を経ることにより、平面コイル22に電気信号が検出される。なお、検出された電気信号は、アンプ7を介して増幅されて超音波特性として制御装置1aに対して出力される。
【0050】
その後は、前述したように、画像処理装置8が、超音波特性としての共鳴周波数を制御装置1aから取得し、予め保持しておいた解析対象試料を構成する各材料及び物質毎の固有の共鳴周波数と比較することにより、解析対象試料を構成する材料及び物質の特定を行なう。また、超音波特性としての超音波の速度及び減衰係数などから、解析対象試料における各材料及び物質が存在する領域を計測する。さらに、解析対象試料の解析位置情報を位置制御装置1bから取得する。そして、特定された材料及び物質並びにその存在領域と解析位置情報とを合わせて画像処理し、表示装置9に出力する。以上のようにして、解析対象試料の内部構造を精度良く解析する。
【0051】
ここで、位置制御装置1bについて具体的に説明する。
【0052】
位置制御装置1bは、前述したように、それぞれ、第1の駆動装置3及び第2の駆動装置6を介して、ステージ2及び超音波送受信装置4の位置を水平方向及び垂直方向に動作可能に制御するが、例えば以下のように制御する。まず、水平方向への制御については、例えば、超音波送受信装置4からの出射超音波が解析対象試料における所望の領域に出射されるように、解析対象試料を配置したステージ2の位置を移動させておおまかに位置調整を行なう一方で、超音波送受信装置4からの出射超音波が解析対象試料における所望の正確な解析位置に出射されるように、超音波送受信装置4の位置を動作させて微調整を行なう。さらに、超音波送受信装置4からの出射超音波を出射しながら、超音波送受信装置4を水平方向に走査させるように移動させることにより、解析対象試料における解析位置の二次元的な位置情報を把握しなら、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。また、垂直方向への制御については、例えば解析対象試料の厚さなどに応じて、ステージ2及び超音波送受信装置4を垂直方向に移動させる。なお、ここでは、位置制御装置1bが、ステージ2及び超音波送受信装置4の両方を移動させる場合について説明したが、位置制御装置1aが、ステージ2又は超音波送受信装置4の一方を移動可能に制御する場合であってもよく、例えば、ステージ2が超音波送受信装置4に比べて大きいことに鑑みると、超音波送受信装置4の位置制御のみを行なう構成でもよい。
【0053】
以上のように、本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析方法及びその解析装置によると、位置制御装置1bが、ステージ2及び超音波送受信装置4のうちの少なくとも一方を水平方向及び垂直方向へ移動可能に制御することにより、解析対象試料の解析位置を把握しながら電磁超音波を用いて解析対象試料の解析を行なうことができるので、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。
【0054】
ここで、前述した超音波送受信装置4の構成の変形例について、図3を参照しながら説明する。
【0055】
図3は、本発明の一実施形態における超音波送受信装置4の変形例を示している。
【0056】
図3に示すように、磁石21a〜21cが並列に配置されており、それぞれの磁石21a〜21cの下部には平面コイル22が配置されている。このように、図3に示す超音波送受信装置4の変形例は、磁石21bを含む主となる超音波送受信装置を挟んで磁石21aを含む副となる超音波送受信装置と磁石21cを含む副となる超音波送受信装と置が配置された構成を有している。そして、主となる超音波送受信装置に印加する電流の位相に対して180℃ずれるように、副となる2つの超音波送受信装置に対して電流を印加することにより、図示する向きの静磁場31、渦電流32、ローレンツ力33、及び超音波34が生じる。これにより、主となる超音波送受信装置から出射される超音波34が隣り合う超音波34と干渉し合うことで、主となる超音波送受信装置から出射される超音波34を強めることができる。
【0057】
<実施例>
以下に、本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置及びその解析方法の実施例について説明する。
【0058】
図4は、図1に示した半導体解析装置の要部断面図であって、解析対象試料が解析可能なように作成された試料44がステージ2上に配置されている。なお、本試料44は、例えば静電チャック方式などによってステージ2に固定されている。
【0059】
まず、試料44は、解析対象試料となる凹部41a及び凸部41bを有する半導体基板41、該半導体基板41の上に塗布された半導体プロセスにて通常使用されるレジスト42、及び該レジスト42の上に例えばスパッタ法によって堆積されたアルミニウムよりなる金属膜43から構成される。
【0060】
ここで、試料44の最上面に金属膜43を堆積しているのは、前述の図2を用いて説明したように、最上面が導電性膜でなければ電磁超音波の共鳴現象が生じないからである。したがって、例えばダマシン構造を持つ配線を形成する場合であれば、銅めっきをした後であれば、その状態での半導体基板を用いてその内部構造を解析することができる。
【0061】
また、解析対象試料としての半導体基板41の上にレジスト42を塗布した理由は、塗布後のレジスト表面は平坦性が高いことに加えて、金属膜43と共にレジスト42を容易に剥離することができるので、剥離後における加工工程後の解析対象試料を連続して評価することができるからである。しかしながら、解析対象試料となる半導体基板41に対してエッチング選択比を持つ材料であれば、その材料の剥離が容易であるので、レジスト42の変わりに例えば酸化膜等の材料を用いる構成でもかまわない。さらに好ましくは、半導体基板41に対してエッチング選択比を持つ材料はその表面の平坦化が容易な膜であることが望ましい。
【0062】
なお、金属膜43を堆積する方法としてスパッタ法を用いる場合についてここでは説明したが、メッキによる方法などを用いてもかまわない。
【0063】
この状態で、位置制御装置1bは、第1の駆動装置3を介してステージ2を水平方向に移動させると共に、第2の駆動装置6を介して支持棒5を水平方向に移動させることにより、超音波送受信装置4を最適な位置へ移動させる。なお、位置制御装置1bは、試料44の厚さに応じて、ステージ2及び超音波送受信装置4のうちの少なくとも一方を垂直方向に移動させることもできる。
【0064】
制御装置1aは、電流値を可変させながら高周波電流を超音波送受信装置4における超音波受信部に印加する。続いて、超音波受信部は、印加される高周波電流の電流値の変化に伴って出射超音波をその周波数を可変に試料44に対して出射する。続いて、超音波受信部は、出射超音波が試料44内部から反射された反射超音波を受けて電気信号に変換する。そして、変換された電気信号はアンプ7を介して増幅され、超音波特性として制御装置1aに対して出力される。
【0065】
次に、画像処理装置8は、超音波特性としての共鳴周波数を制御装置1aから取得し、予め保持しておいた半導体基板41を構成する各材料及び物質毎の固有の共鳴周波数と比較することにより、半導体基板41を構成する材料及び物質の特定を行なう。また、超音波特性としての超音波の速度及び減衰係数などから、半導体基板41における各材料及び物質が存在する領域を計測する。例えば、画像処理装置8は、半導体基板41における凹部41aの底部から反射されてくる反射超音波を制御装置1aが受けた時刻と、凸部41bにおける上部から反射されてくる反射超音波を制御装置1aが受けた時刻とから、半導体基板41における凹部41aの深さを求めることができる。さらに、超音波送受信装置4における超音波送信部から出射超音波を出射しながら、位置制御装置1bによって超音波送受信装置4を水平方向に一定速度で走査させることにより、半導体基板41における二次元的な解析位置情報を把握しなら、半導体基板41の内部構造を解析することが可能になる。例えば、凹部41a間の距離を正確に把握することができる。そして、このようにして特定された材料及び物質並びにその存在領域と解析位置情報とを加工して合わせて表示装置9に出力する。以上のようにして、解析対象試料の内部構造を精度良く解析することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明は、半導体装置を破壊又は切断することなく、その内部構造を解析する装置及び方法に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置における電磁超音波送受信部の構成と動作原理を説明するための模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置における電磁超音波送受信部の変形例を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の解析装置及びその解析方法の一実施例を説明するための断面図である。
【図5】従来に係る半導体装置の解析方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1a 制御装置
1b 位置制御装置
2 ステージ
2A 導電性膜
3 第1の駆動装置
4 超音波送受信装置
5 支持棒
6 第2の駆動装置
7 アンプ
8 画像処理装置
9 表示装置
21、21a〜21c 磁石
22 平面コイル
23、31 静磁場
24、32 渦電流
25、33 ローレンツ力
26 出射超音波
34 超音波
41 半導体基板
42 レジスト
43 金属膜
44 試料
100 解析対象試料
101 媒体
102 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象試料となる半導体基板を水平に保持するステージと、
前記ステージの上方に設けられ、超音波を送信及び受信する超音波送受信部と、
前記超音波送受信部に対して電流値が可変になるように電流を印加する電流制御部と、
前記超音波送受信部に設けられ、前記電流制御部から印加される電流の電流値の変化に伴って前記解析対象試料に対して出射超音波を周波数を可変に発振する超音波送信部と、
前記超音波送受信部に設けられ、前記超音波送信部から発振されて前記解析対象試料から反射されてきた反射超音波を受信する超音波受信部と、
前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御する位置制御部とを備え、
前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と、前記少なくとも一方の位置から得られる前記解析対象試料の解析位置情報とに基づいて、前記解析対象試料を解析することを特徴とする半導体装置の解析装置。
【請求項2】
前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と前記解析位置情報とをもとに画像処理を行なう画像処理部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記解析対象試料を構成する物質の共鳴周波数をデータとして保持していることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項4】
前記位置制御部は、前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を前記水平方向に加えて垂直方向に移動可能に制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項5】
前記超音波送受信部を挟んで並列に配置され、超音波を送信及び受信する第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項6】
ステージ上に水平に保持された解析対象試料となる半導体基板に対して超音波送受信部から送信される出射超音波と、前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数に基づいて、前記解析対象試料を解析する半導体装置の解析方法であって、
前記超音波送受信部に対して電流値が可変になるように電流を印加する工程(a)と、
前記電流値の変化に伴って前記解析対象試料に対して前記出射超音波の周波数を可変に発振する工程(b)と、
発振された前記出射超音波が前記解析対象試料から反射されてきた前記反射超音波を受信する工程(c)と、
前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御する工程(d)と、
前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と、前記少なくとも一方の位置から得られる前記解析対象試料の解析位置情報とに基づいて、前記解析対象試料を解析する工程(e)とを備えることを特徴とする半導体装置の解析方法。
【請求項7】
前記工程(e)は、前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と前記解析位置情報とをもとに画像処理を行なう工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項8】
前記工程(d)は、前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を前記水平方向に加えて垂直方向に移動可能に制御する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項9】
前記解析対象試料は、上部に導電性膜を備えた前記半導体基板であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項10】
前記半導体基板と前記導電性膜との間には、前記半導体基板に対してエッチング選択比を有する膜が介在していることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項11】
前記エッチング選択比を有する膜はレジスト膜であることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項12】
前記超音波送受信部を挟んで並列に配置され、超音波を送信及び受信する第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部をさらに備え、
前記工程(a)は、前記超音波送受信部に印加する電流の位相に対して180℃ずれるように、前記第1の副超音波送受信部及び前記第2の副超音波送受信部に対して電流を印加する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象試料となる半導体基板を水平に保持するステージと、
前記ステージの上方に設けられ、超音波を送信及び受信する超音波送受信部と、
前記超音波送受信部に対して電流値が可変になるように電流を印加する電流制御部と、
前記超音波送受信部に設けられ、前記電流制御部から印加される電流の電流値の変化に伴って前記解析対象試料に対して出射超音波を周波数を可変に発振する超音波送信部と、
前記超音波送受信部に設けられ、前記超音波送信部から発振されて前記解析対象試料から反射されてきた反射超音波を受信する超音波受信部と、
前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御する位置制御部とを備え、
前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と、前記少なくとも一方の位置から得られる前記解析対象試料の解析位置情報とに基づいて、前記解析対象試料を解析することを特徴とする半導体装置の解析装置。
【請求項2】
前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と前記解析位置情報とをもとに画像処理を行なう画像処理部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記解析対象試料を構成する物質の共鳴周波数をデータとして保持していることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項4】
前記位置制御部は、前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を前記水平方向に加えて垂直方向に移動可能に制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項5】
前記超音波送受信部を挟んで並列に配置され、超音波を送信及び受信する第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の解析装置。
【請求項6】
ステージ上に水平に保持された解析対象試料となる半導体基板に対して超音波送受信部から送信される出射超音波と、前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった、前記超音波送信部から発振されて前記解析対象試料から反射されてきた反射超音波の周波数に基づいて、前記解析対象試料を解析する半導体装置の解析方法であって、
前記超音波送受信部に対して電流値が可変になるように電流を印加する工程(a)と、
前記電流値の変化に伴って前記解析対象試料に対して前記出射超音波の周波数を可変に発振する工程(b)と、
発振された前記出射超音波が前記解析対象試料から反射されてきた前記反射超音波を受信する工程(c)と、
前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を水平方向に移動可能に制御する工程(d)と、
前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と、前記少なくとも一方の位置から得られる前記解析対象試料の解析位置情報とに基づいて、前記解析対象試料を解析する工程(e)とを備えることを特徴とする半導体装置の解析方法。
【請求項7】
前記工程(e)は、前記出射超音波と前記解析対象試料の非解析物質との共鳴により振幅が大きくなった前記反射超音波の周波数と前記解析位置情報とをもとに画像処理を行なう工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項8】
前記工程(d)は、前記ステージ及び前記超音波送受信部のうちの少なくとも一方を前記水平方向に加えて垂直方向に移動可能に制御する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項9】
前記解析対象試料は、上部に導電性膜を備えた前記半導体基板であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項10】
前記半導体基板と前記導電性膜との間には、前記半導体基板に対してエッチング選択比を有する膜が介在していることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項11】
前記エッチング選択比を有する膜はレジスト膜であることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の解析方法。
【請求項12】
前記超音波送受信部を挟んで並列に配置され、超音波を送信及び受信する第1の副超音波送受信部及び第2の副超音波送受信部をさらに備え、
前記工程(a)は、前記超音波送受信部に印加する電流の位相に対して180℃ずれるように、前記第1の副超音波送受信部及び前記第2の副超音波送受信部に対して電流を印加する工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の解析方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−189380(P2006−189380A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2712(P2005−2712)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】