説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】配線基板、半導体チップ及び封止体のそれぞれの熱膨張係数の差に起因する半導体装置の反りを低減する手段を提供する。
【解決手段】配線基板2と、半導体チップ7と、電極パッド8と、ワイヤ9と、封止体10と、を具備してなる半導体装置において、前記封止体10が、前記半導体チップ7の熱膨張係数と近似した熱膨張係数の材料を有する第1絶縁材料層11と、前記配線基板2を構成する絶縁材料基板の熱膨張係数と近似した熱膨張係数の材料を有する第2絶縁材料層12とが積層されてなり、前記第1絶縁材料層11が、前記半導体チップ7の搭載領域を除いた前記配線基板2の一面2a上に積層されるとともに前記半導体チップ7の側面7cと接するように形成され、前記第2絶縁材料層12が、前記半導体チップ7及び前記第1絶縁材料層11の上に積層されていることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが配線基板に搭載された半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、BGA(Ball Grid Array)型の半導体装置は、一面に複数の接続パッドを有し、他面に前記接続パッドと電気的に接続された複数のランドとを有する配線基板と、前記配線基板の一面に搭載された半導体チップと、前記半導体チップの電極パッドと配線基板の接続パッドとを電気的に接続するワイヤと、少なくとも前記半導体チップとワイヤを覆う絶縁性樹脂からなる封止体と、前記ランドに設けられた外部端子とから構成されてきた。
【0003】
しかしながら、配線基板と封止樹脂との熱膨張係数の差により、半導体装置に反りが発生するという問題があった。その結果、マザーボードへの二次実装時に、半田ボールが部分的に接続されない等の接続不良を引き起こす問題がある。
【0004】
さらに、PoP(Package on Package)に用いるBGA型の半導体装置では、他の積層接続する半導体装置との反り方向が異なっている場合には、他の積層接続する半導体装置との電気的接続ができなくなるという問題も生じた。
【0005】
また、配線基板と半導体チップとの熱膨張係数の差により、配線基板に搭載された半導体チップ端部の近傍位置、特に半導体チップの4隅近傍位置に応力がかかり、その直下の半田ボールが破断するという問題があった。これにより半導体装置の二次実装の信頼性が低下している。
【0006】
このような半導体装置は、複数の配線基板を一括的に封止するMAP(Mold Array Process)方式を用いており、製造段階では複数の配線基板とそれを一括的に覆う封止体を形成するため、反りの問題が発生する。
【0007】
半導体装置の反り防止を目的とした従来技術としては、例えば特開2006−269861号公報(特許文献1)及び特開2007−66932号公報(特許文献2)、特開2006−286829号公報(特許文献3)に記載の技術がある。
【特許文献1】特開2006−269861号公報
【特許文献2】特開2007−66932号公報
【特許文献3】特開2006−286829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載の技術は、下部基板(配線基板)と、下部基板の上方に位置した半導体チップと、半導体チップを封止する中間部材(封止体)と、中間部材の上面を覆う上部板とから構成し、上部板の熱膨張率を下部基板の熱膨張率とほぼ同じにするものである。
【0009】
また特許文献3に記載の技術は、配線基板上に搭載された半導体チップを覆い、ボンディングワイヤの変形防止の機能或いは半導体チップとワイヤの接続部の腐蝕を防止する機能を有する第1のレジン(封止体)と、配線基板及び第1のレジン上に形成され、配線基板の反りを防止する機能を有する第2のレジン(封止体)とから構成するものである。
【0010】
上記特許文献1〜3においては、配線基板上に搭載した半導体チップを封止する封止体の上部に配線基板の熱膨張率と同等な熱膨張率を有する上部基板や樹脂層を設けたことで、配線基板と封止体との間での熱膨張率の差に起因した半導体装置の反りを抑制することが可能とされている。
しかしながら、配線基板と、当該配線基板に搭載される半導体チップとの間の熱膨張率の差に起因した半導体装置の反りや応力については考慮されておらず、半導体チップの端部近傍位置、特に4隅近傍位置で半田ボールが破断するという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献1〜3においては、半導体チップを覆う封止体の上部に、反り抑制のための上部板や樹脂層を設けるように構成しているため、封止体の厚さにバラツキが生じ、それに起因した半導体装置の反りが発生する恐れもある。
【0012】
半導体装置の反りの問題は、1つの半導体装置の反りは小さくても、PoPに用いる半導体装置では積層数が増えるので問題は大きくなる。また、配線基板の大きさが大きくなるにつれても問題は大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の半導体装置は、一面に接続パッドを有し、他面に前記接続パッドと電気的に接続された複数のランドを有する配線基板と、前記配線基板の一面に搭載された少なくとも1以上の半導体チップと、前記半導体チップに設けられた電極パッドと、前記電極パッドと前記接続パッドとを電気的に接続するワイヤと、少なくとも前記半導体チップと前記ワイヤとを覆う絶縁性樹脂からなる封止体と、を具備してなる半導体装置において、前記封止体が、前記半導体チップの熱膨張係数に近似した熱膨張係数を有する材料によって構成される第1絶縁材料層と、前記配線基板を構成する絶縁材料基板の熱膨張係数と近似した熱膨張係数を有する材料によって構成される第2絶縁材料層とが積層されてなり、前記第1絶縁材料層が、前記半導体チップの搭載領域を除いた前記配線基板の一面上に積層されるとともに前記半導体チップの側面と接するように形成され、前記第2絶縁材料層が、前記半導体チップ及び前記第1絶縁材料層の上に積層されていることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、一面に接続パッドを有し、他面に前記接続パッドと電気的に接続された複数のランドを有する配線基板上に半導体チップを搭載する工程と、前記接続パッドと前記半導体チップに設けられた電極パッドとをワイヤを用いて電気接続する工程と、少なくとも前記半導体チップと前記ワイヤとを絶縁性樹脂からなる封止体を用いて覆う封止工程とを備えた半導体装置の製造方法において、前記封止工程において、前記半導体チップの熱膨張係数に近似した熱膨張係数を有する材料からなる第1絶縁材料層を、前記半導体チップの搭載領域を除いた前記配線基板の一面上に積層するとともに前記半導体チップの側面と接するように形成し、前記配線基板を構成する絶縁材料基板の熱膨張係数と近似した熱膨張係数を有する材料によって構成される第2絶縁材料層を、前記半導体チップ及び前記第1絶縁材料層の上に積層することを特徴とする。
【0014】
上記の半導体装置によれば、半導体チップの側面と半導体チップの搭載領域を除いた配線基板の一面上に、半導体チップの熱膨張係数αに近い、熱膨張係数αの低い第1の樹脂の層を設けることにより、配線基板の半導体チップを搭載した部位と、半導体チップを搭載していない部位とでの熱膨張のバランスが向上され、半導体チップの端部での配線基板の反りが低減される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反りを低減した半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態である半導体装置及びその製造方法について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する図は、本実施形態の半導体装置及びその製造方法を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の半導体装置及びその製造方法における各部の寸法関係とは異なる場合がある。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態である半導体装置1を示す断面図であり、図2は半導体装置1の底面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置1は、配線基板2、半導体チップ7、ワイヤ9及び封止体10とから概略構成されている。
図2に示すように、配線基板2は、例えば0.25mm厚のガラスエポキシ基板などからなる平面視略四角形の基材に、所定の配線が形成されて構成されている。前記配線は部分的に図示略の絶縁膜で覆われている。前記絶縁膜としては、例えばソルダーレジストを例示でき、ガラスエポキシ基板の両面に積層されている。
配線基板2の一面2aの配線の前記絶縁膜から露出された部位には、複数の接続パッド3が形成されており、配線基板2の他面2bの配線の前記絶縁膜から露出された部位には、複数のランド4が形成されている。そして接続パッド3とこれに対応するランド4とは配線基板2の配線によりそれぞれ電気的に接続されている。
複数のランド4には、それぞれ外部端子となる半田ボール5が搭載されており、半田ボール5は、図2に示すように所定の間隔で格子状に配置されている。
【0019】
配線基板2の一面2aの略中央部位には、絶縁性の接着剤或いはDAF(Die Attached Film)等の固定部材6を介して、半導体チップ7が接着固定されている。半導体チップ7は、上面7aに例えば論理回路や記憶回路が形成されている。
また半導体チップ7の上面7aには複数の電極パッド8が形成されており、電極パッド8を除く半導体チップ7の上面7aには図示略のパッシベーション膜が形成され、回路形成面を保護している。
電極パッド8は、それぞれ対応する接続パッド3と導電性のワイヤ9により結線されている。これにより、電極パッド8と接続パッド3とが電気的に接続されている。ワイヤ9は例えばAu、Cu等からなる。
【0020】
配線基板2の一面2aには、半導体チップ7及びワイヤ9を覆うように封止体10が形成されている。封止体10は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなり、熱膨張係数αの異なる2種類の樹脂により構成されている。
熱膨張係数αの異なる樹脂は、例えばフィラーの含有量等を変えることによって得られ、具体的には、封止樹脂に含まれるフィラーの量を多くすることで熱膨張係数αは低く、フィラーの量を少なくすることで熱膨張係数αは高くすることができる。フィラーとしては、ガラス繊維を例示できる。
封止体10は、熱膨張係数αの低い第1の樹脂(第1絶縁材料層)11と熱膨張係数αの高い第2の樹脂(第2絶縁材料層)12とによって構成されている。
【0021】
第1の樹脂11は、半導体チップ7の搭載領域2cを除いた配線基板2の一面2a上に積層されるとともに、半導体チップ7の側面7cと接するように形成されている。また、第1の樹脂11の厚さは、半導体チップ7の厚さと等しくなるように配置されている。
第2の樹脂12は、半導体チップ7及び第1の樹脂11の上に積層されている。
【0022】
このように、少なくとも半導体チップ7の側面7cと半導体チップ7の搭載領域2cを除いた配線基板2の一面2a上には、熱膨張係数αの低い第1の樹脂11からなる封止体が配置される。第1の樹脂11の熱膨張係数αは、半導体チップの材料となるSi(シリコン)の熱膨張係数αである3×10−6/℃程度に合わせて、2〜4×10−6/℃程度、好ましくは3×10−6/℃に構成されている。
また、半導体チップ7の上面7aと、第1の樹脂11の上には、熱膨張係数αの高い第2の樹脂12が配置される。第2の樹脂12の熱膨張係数αは、配線基板2、ここではガラスエポキシ樹脂の熱膨張係数αである13×10−6/℃に合わせて、12〜14×10−6/℃程度、好ましくは13×10−6/℃に構成されている。
なお、第2の樹脂12は、配線基板2との熱膨張のバランスが取れていれば、配線基板2と異なる厚さで構成しても構わない。
【0023】
このように、半導体チップ7の側面7cと配線基板2の一面2a上に、半導体チップ7の熱膨張係数αに近い熱膨張係数αの低い材料からなる第1の樹脂11を設けるとともに、半導体チップ7の上面7aに配線基板2の熱膨張係数αに近似した熱膨張係数αの高い材料からなる第2の樹脂12を設けるように構成したことで、熱膨張係数のバランスが良くなり、半導体装置1の反りを抑制することができる。
【0024】
すなわち、配線基板2と第2の樹脂12との間に、半導体チップ7と第1の樹脂11とが挟まれて配置された状態にある。また、半導体チップ7と第1の樹脂11とはほぼ同じ熱膨張係数を有している。このため、配線基板2と第2の樹脂12との間において、半導体チップ7と第1の樹脂11とが一体となって熱膨張又は熱収縮をする。
これにより、半導体チップ7と第1の樹脂11とが、配線基板2及び第2の樹脂12に対して、それぞれほぼ同程度のひずみを加えることになり、半導体装置1全体として反りが抑制される。
また、第1の樹脂11と第2の樹脂12は、ともにエポキシ樹脂を材質としているので、第1の樹脂11と第2の樹脂12の密着性は高まり、第1の樹脂11と第2の樹脂12との剥離を防止できる。
さらに半導体チップ7の上面7aに配線基板2の熱膨張係数αに近似した熱膨張係数αの高い第2の樹脂12を設けるように構成したことにより、半導体チップ7と第1の樹脂11の上下の熱膨張のバランスを向上することができ、半導体チップ7と配線基板2間、及び封止体10と配線基板2間の熱膨張の差に起因する反りを低減できる。
さらに第1の樹脂11の厚さと、第2の樹脂12の厚さがそれぞれ均一となる為、封止体10の熱膨張のバランスも向上し、樹脂厚の差に起因した反りを低減することができる。
【0025】
半導体装置1の反りが低減した結果、半導体装置1の外形寸法の精度が良くなり、実装精度が向上される。また、各外部端子に均等に荷重が加わる為、接合強度が均等化され、半導体装置1の実装の信頼性がより向上される。
さらに、半導体装置1をPoP(Package On Package)に用いる場合には、図3に示すように、組み合わせる半導体装置の反り状態に関係なく、半導体装置間を良好に接続することができる。また、半導体装置1の反りが低減したことで、半導体装置の積層数を増やすことができ、高密度実装につながる。
【0026】
次に本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明する。
図4は、本実施形態の半導体装置1の製造フローを示す断面図である。
まず本実施形態に用いられる配線母基板13は、MAP(MoldArray Process)方式で処理されるものであり、複数の製品形成部14がマトリクス状に配置されている。
製品形成部14は、切断分離した後に、前述の配線基板2となる部位であり、配線基板2と同様の構成からなる。
【0027】
製品形成部14の周囲には、枠部15が設けられている。枠部15には所定の間隔で図示略の位置決め孔が設けられ、搬送・位置決めが可能に構成されている。
また製品形成部14間はダイシングライン16となる。
このようにして、図4(a)に示すような配線母基板13が準備される。
【0028】
次に図4(b)に示すように、製品形成部14の一面の略中央部に、それぞれ半導体チップ7の底面7bを、絶縁性の接着材或いはDAF(Die Attached Film)等の固定部材6を介して接着固定する。
そして半導体チップ7の上面7aに形成された電極パッド8と、製品形成部14の接続パッド3とを導電性のワイヤ9により結線する。
ワイヤ9は例えばAu等からなり、図示略のワイヤボンディング装置により、溶融され先端にボールが形成されたワイヤ9を、半導体チップ7の電極パッド8上に超音波熱圧着することで接続し、その後、所定のループ形状を描き、ワイヤ9の後端を対応する接続パッド3上に超音波熱圧着することで形成される。
【0029】
次に図5(a)に示すように、配線母基板13の枠部15に重ねるように、封止用の枠体17を配置する。
枠体17は、例えば配線母基板13の枠部15と同様な形状であり、厚さは半導体チップ7の厚さと同じ厚さに構成している。
なお、枠体17は、ポッティング量を制御すれば、半導体チップ7の厚さ以上の構成としても構わない。
【0030】
そして図5(b)に示すように、半導体チップ7の周囲に、塗布装置等のポッティング装置18を用いて、ポッティングにより第1の樹脂11を供給する。
第1の樹脂11は、例えば熱膨張係数αが低いエポキシ系の樹脂、例えば熱膨張係数αが2〜4×10−6/℃程度の樹脂が用いられ、好ましくは半導体チップの材料となるSi(シリコン)の熱膨張係数αである3×10−6/℃に近似した樹脂を用いる。
なお、枠体17は封止樹脂を塞き止める役割を果たしている。
【0031】
そして図5(c)に示すように、配線母基板13に搭載された半導体チップ7の側面7cが第1の樹脂11によって充填されるまで、配線母基板13に第1の樹脂11が供給される。
なお、第1の樹脂11は、配線母基板13に搭載された半導体チップ7の上面7aと同じ高さに形成するのが好ましいが、半導体チップ7の上面7aに近似した高さで封止体を形成しても構わない。
【0032】
半導体チップ7の側面7cが第1の樹脂11によって充填されると、所定の温度、例えば180℃でキュアすることで、第1の樹脂11が硬化される。
その後、配線母基板13から枠体17を除去することで、図5(d)に示すように半導体チップ7の周囲に第1の樹脂11が形成された配線母基板13が得られる。
【0033】
次に配線母基板13は、例えば図6(a)に示すようなトランスファモールド装置の上型19と下型20からなる成形金型に配置される。
配線母基板13を上型19と下型20で型締めされることで、配線母基板13の一面13a側には所定の大きさのキャビティ21やゲート部22が形成される。
なお、本実施形態ではMAP方式で構成されているため、キャビティ21は複数の製品形成部14を一括で覆う大きさで構成されている。
【0034】
そして、図6(b)に示すようにゲート部22から上型19と下型20によって形成されたキャビティ21内に第2の樹脂12を注入する。
第2の樹脂12は、例えば熱硬化性のエポキシ系の樹脂であって、熱膨張係数αが、配線基板2、ここではガラスエポキシ樹脂の熱膨張係数αである13×10−6/℃に合わせて、12〜14×10−6/℃程度、好ましくは13×10−6/℃に近似した樹脂を用いる。
【0035】
そして、図6(c)に示すようにキャビティ21内に第2の樹脂12が充填された後、所定の温度、例えば180℃程度で熱硬化することで、配線母基板13の第1の樹脂11と半導体チップ7の上面7aの上に図4(c)に示すような第2の樹脂12が形成される。
【0036】
このように、半導体チップ7の熱膨張係数と近似する第1の樹脂11と、ガラスエポキシ基材の熱膨張係数と近似する第2の樹脂12を用いて、配線母基板13を一括的に覆う封止体10を形成することにより、配線母基板13の反りを低減することができる。
その結果、配線母基板13の反りに起因する搬送トラブルを低減でき、製造効率を向上できる。
また配線母基板13に搭載された半導体チップ7の周囲を、第1の樹脂11により封止することで、ワイヤ9が第1の樹脂11により固定される為、第2の樹脂12の注入する際のワイヤ流れ等を低減できる。
【0037】
次に図4(d)に示すように、配線母基板13の他面13bに格子状に配置された複数のランド4上に、導電性の半田ボール5を搭載し、外部端子となるバンプ電極を形成する。例えば、配線母基板13の他面13b上のランド4の配置に合わせて、複数の吸着孔が形成された吸着機構23を用いて、半田等からなる半田ボール5を前記吸着孔に保持し、前記保持された半田ボール5にフラックスを転写形成し、配線母基板13の他面13b上のランド4に一括搭載する。全ての製品形成部14への半田ボール5搭載後、配線母基板13をリフローすることで外部端子となるバンプ電極が形成される。
なお、前述した理由から、配線母基板13の反りが低減している為、半田ボール5を良好に搭載することができる。
【0038】
次に図4(e)に示すように、配線母基板13をダイシングライン16で切断し、製品搭載部14毎に個別化する。
この際、第2の樹脂12をダイシングテープ24に接着し、ダイシングテープ24によって配線母基板13を支持する。
その後、配線母基板13をダイシングブレード25により縦横にダイシングライン16を切断して製品形成部14毎に個別化する。個別化完了後、ダイシングテープ24からピックアップすることで、図1に示すような半導体装置1が得られる。
【0039】
以上により、半導体チップ7の側面7cと、配線基板2の一面2a上に、半導体チップ7の熱膨張係数αに近い、熱膨張係数αの低い材料の第1の樹脂11と、半導体チップ7の上面7aと第1の樹脂11の上に、配線基板2の熱膨張係数αに近似した熱膨張係数αの高い材料の第2の樹脂12を有する半導体装置1を効率よく製造することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態である半導体装置1の製造方法を示す断面図であり、半導体装置1の他の製造方法を示すものである。図7(b)に示すように、半導体チップ7の上面7aに形成された電極パッド8と、製品形成部14の接続パッド3とを導電性のワイヤ9により結線する工程までは第1の実施形態と同様である。
【0041】
次に本実施形態では、配線母基板13を、図8(a)に示すように圧縮モールド装置の上型26に配線母基板13の他面13bを吸着保持させた状態に配置する。圧縮モールド装置の下型27にはキャビティ21’が形成されており、キャビティ21’内にフィルム28を介して、顆粒状態の第2の樹脂12’が所定量、供給されている。
第2の樹脂12’には、第1の実施形態と同様に、例えば熱膨張係数αが、配線基板2、ここではガラスエポキシ樹脂の熱膨張係数αである13×10−6/℃に合わせて、12〜14×10−6/℃程度、好ましくは13×10−6/℃に近似した樹脂を用いる。
【0042】
さらにキャビティ21’内の第1の樹脂12’のキャビティ21’側には、顆粒状態の第1の樹脂11’が所定量、供給される。
第1の樹脂11’には、第1の実施形態と同様に、例えば熱膨張係数αが2〜4×10−6/℃程度の樹脂が用いられ、好ましくは半導体チップ7の材料であるSi(シリコン)の熱膨張係数αである3×10−6/℃に近似した樹脂を用いる。
【0043】
そして下型27が所定温度まで加熱されることで、図8(b)に示すように、下型27に供給された顆粒状態の第1の樹脂11’及び第2の樹脂12’が溶融され、キャビティ21’内に2層の溶融された樹脂層が形成される。
その後、上型26を下降させて、配線母基板13の一面13a側を2層の溶融された樹脂層に浸漬させる。
そして、図8(c)に示すように上型26と下型27により2層の溶融された樹脂層を圧縮することで、配線母基板13上に第1の樹脂11と第2の樹脂12とを形成する。
なお、第1の樹脂11は、配線母基板13の半導体チップ7の上面7aと略同じ高さに調整される。
これにより、配線母基板13上に異なるαの2つの樹脂層を同時に効率よく形成することができる。
【0044】
その後、第1の実施形態と同様に、図7(d)に示すように、複数のランド4上に、導電性の半田ボール5を搭載し、外部端子となるバンプ電極を形成する。
次に半田ボール5の搭載された配線母基板13を、図7(e)に示すように、ダイシングライン16で切断し、製品搭載部14毎に個別化することで、図1に示すような半導体装置1が得られる。
これにより、第1の実施形態と同様、図1に示すような反りを低減した半導体装置1を形成できる。
【0045】
また溶融された熱膨張係数の異なる2つの樹脂層に、配線母基板13を浸漬させ、樹脂層を圧縮することで、配線母基板13上に第1の樹脂11と第2の樹脂12とを形成することで、1度の封止により効率よく封止体10を形成できる。
【0046】
また本実施形態においては、圧縮モールドにて第1の樹脂11及び第2の樹脂12を形成しているため、封止樹脂の注入等がなくなり、封止体に含まれるフィラー等の分布が一定となる。
フィラーの分布が一定となることで、フィラー量の偏りに伴う、封止体形成後の配線母基板13の反り量を低減することができる。
さらに封止樹脂の注入がなくなるため、ワイヤ流れ等の発生を低減できる。
また第1の樹脂及び第2の樹脂を同時に形成する場合には、シート状に形成された第1の樹脂と、同様にシート状に形成された第2の樹脂をキャビティ内に供給するように構成しても良い。顆粒状態で樹脂を供給する場合と比べて、よりキャビティ内に均等に2つの樹脂層を形成できる。
【0047】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態の半導体装置1の製造方法を示す図である。
本実施形態は第1の実施形態の製造方法の変形例であり、本実施形態において、配線母基板13には図9(a)に示すように、配線母基板13の枠部15に重ねるように、封止用の枠体17’が配置される。
枠体17’は、例えば配線母基板13の枠部15と同様な形状であり、厚さは当該半導体母基板13に搭載される半導体チップ7の厚さと同じ厚さに構成している。枠体17’の内壁には傾斜部が形成されており、当該傾斜部は、枠体17’の配線母基板13接触面よりその対向面の面積が広くなるように傾斜が形成されている。
【0048】
そして第1の実施形態と同様に、半導体チップ7の周囲に、塗布装置等を用いて、ポッティングにより第1の樹脂11を供給する。
なおこの際、枠体17’は封止樹脂を塞き止める役割を果たす。
第1の樹脂11は、半導体チップ7の側面7cが充填するまで、供給される。
【0049】
その後、第1の樹脂11を所定の温度、例えば180℃でキュアすることで硬化する。
そして、配線母基板13から枠体17’を除去することで、半導体チップ7の周囲に第1の樹脂11が形成された配線母基板13が得られる。
本実施形態では、枠体17’に前記傾斜部を設けたことにより、枠体17’が配線母基板13から除去し易くなる。
【0050】
次に配線母基板13を、例えば図9(b)に示すようにトランスファモールド装置の上型19と下型20からなる成形金型に、キャビディ21’ ’が封止体側にできるように配置する。
この際、配線母基板13の第1の樹脂11には傾斜部が形成されているところ、当該傾斜部が成型金型のゲート部22側に配置されるようにする。
【0051】
そして、ゲート部22から上型19と下型20によって形成されたキャビティ21’ ’内に第2の樹脂12を注入する。
ゲート部22側の第1の樹脂11に傾斜部を設けたことで、第1の樹脂11の上部に第2の樹脂12が回り込み易くなる。
キャビティ21’ ’内に第2の樹脂12が充填された後、所定の温度、例えば180℃程度で熱硬化することで、配線母基板13の第1の樹脂11と半導体チップ7の上に図9(c)に示すように第2の樹脂12が形成される。
【0052】
そして、第1の実施形態と同様に、複数のランド4上に、導電性の半田ボール5を搭載し、外部端子となるバンプ電極を形成した後に、配線母基板13をダイシングライン16で切断し、製品搭載部14毎に個別化することで、図1に示すような半導体装置1が得られる。
以上により、第1の実施形態と同様、図1に示すような反りを低減した半導体装置1が形成できる。
【0053】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態の半導体装置1’を示す断面図である。
本実施形態は、複数の半導体チップ7’を搭載したMCP(Multi Chip Package)に適用した場合を示す実施形態である。
図10に示すように、配線基板2に複数の半導体チップ7’を搭載した半導体装置1’においては、最上に位置する半導体チップの上面7a’の近傍位置まで、第1の樹脂11を形成する。
そして第1の樹脂11と最上位の半導体チップの上面7a’の上に、第2の樹脂12を形成する。
その結果、半導体チップ7’の積層状態に関係なく、MCPにおける熱膨張係数のバランスが良くなり、第1の実施形態と同様な効果が得られる。
【0054】
なお、3チップ以上積層した場合も同様に、最上位の半導体チップの上面7a’の近傍位置まで第1の樹脂11を形成することで対応可能である。
また最上位の半導体チップがフリップチップ接続される場合には、最上位の半導体チップの底面7b’の近傍位置まで、第1の樹脂11を形成することで、対応可能である。
【0055】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば本実施形態では、ガラスエポキシ基材からなる配線基板を用いた場合について説明したが、ポリイミド基材からなるフレキシブル基板等、他の基材の配線基板に適用することも可能である。
例えばポリイミド基材からなるフレキシブル配線基板を用いた場合には、第2の樹脂による封止部を、例えばポリイミド樹脂の線膨張係数αに合せて、20〜25×10−6/℃程度とすることで、適用することができる。
またBGA型の半導体装置について説明したが、LGA(Land Grid Array)等、他の半導体装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、半導体装置を製造する製造業において幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態である半導体装置を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態である半導体装置の外部端子形成面を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態である半導体装置と反った半導体装置とを組み合わせた様子を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造方法のうち、第1の樹脂による封止についての製造方法を示す断面工程図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造方法のうち、第2の樹脂による封止についての製造方法を示す断面工程図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態である半導体装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施形態である半導体装置の製造方法のうち、封止についての製造方法を示す断面工程図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施形態である半導体装置の製造方法のうち、封止につちえの製造方法を示す断面工程図である。
【図10】図10は、本発明の第4の実施形態である半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1’・・・半導体装置、2・・・配線基板、2a・・・配線基板の一面、2b・・・配線基板の他面、2c・・・配線基板の一面上の半導体チップ搭載領域、3・・・接続パッド、4・・・ランド、5・・・半田ボール、6・・・固定部材、7,7’・・・半導体チップ、7a・・・半導体チップの上面、7a’・・・最上位の半導体チップの上面、7b・・・半導体チップの底面、7b’・・・最上位の半導体チップの底面、7c・・・半導体チップの側面、8・・・電極パッド、9・・・ワイヤ、10・・・封止体、11,11’・・・第1の樹脂、12,12’・・・第2の樹脂、13・・・配線母基板、13a・・・配線母基板の一面、13b・・・配線母基板の他面、14・・・製品形成部、15・・・枠部、16・・・ダイシングライン、17,17’・・・枠体、18・・・ポッティング装置、19・・・トランスファモールド装置の上型、20・・・トランスファモールド装置の下型、21,21’,21’ ’・・・キャビティ、22・・・ゲート部、23・・・吸着機構、24・・・ダイシングテープ、25・・・ダイシングブレード、26・・・圧縮モールド装置の上型、27・・・圧縮モールド装置の下型、28・・・フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に接続パッドを有し、他面に前記接続パッドと電気的に接続された複数のランドを有する配線基板と、
前記配線基板の一面に搭載された少なくとも1以上の半導体チップと、
前記半導体チップに設けられた電極パッドと、
前記電極パッドと前記接続パッドとを電気的に接続するワイヤと、
少なくとも前記半導体チップと前記ワイヤとを覆う絶縁性樹脂からなる封止体と、を具備してなる半導体装置において、
前記封止体が、前記半導体チップの熱膨張係数に近似した熱膨張係数を有する材料によって構成される第1絶縁材料層と、前記配線基板を構成する絶縁材料基板の熱膨張係数と近似した熱膨張係数を有する材料によって構成される第2絶縁材料層とが積層されてなり、
前記第1絶縁材料層が、前記半導体チップの搭載領域を除いた前記配線基板の一面上に積層されるとともに前記半導体チップの側面と接するように形成され、
前記第2絶縁材料層が、前記半導体チップ及び前記第1絶縁材料層の上に積層されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1絶縁材料層の厚さが、前記半導体チップの厚さと等しいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1絶縁材料層が、前記第2絶縁材料層より、ガラス繊維が多く含まれているエポキシ樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
一面に接続パッドを有し、他面に前記接続パッドと電気的に接続された複数のランドを有する配線基板上に半導体チップを搭載する工程と、
前記接続パッドと前記半導体チップに設けられた電極パッドとをワイヤを用いて電気接続する工程と、
少なくとも前記半導体チップと前記ワイヤとを絶縁性樹脂からなる封止体を用いて覆う封止工程とを備えた半導体装置の製造方法において、
前記封止工程において、
前記半導体チップの熱膨張係数に近似した熱膨張係数を有する材料からなる第1絶縁材料層を、前記半導体チップの搭載領域を除いた前記配線基板の一面上に積層するとともに前記半導体チップの側面と接するように形成し、
前記配線基板を構成する絶縁材料基板の熱膨張係数と近似した熱膨張係数を有する材料によって構成される第2絶縁材料層を、前記半導体チップ及び前記第1絶縁材料層の上に積層することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−10301(P2010−10301A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166390(P2008−166390)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】