説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】微細化されたN+型ソース層とソース電極のコンタクト抵抗が低減されたパワーMOSトランジスタの実現を図る。
【解決手段】N型ドリフト層2の表面にP型ボディ層6を形成し、該P型ボディ層6の表面にN+型ソース層7を形成する。N+型ソース層7上を被覆する層間絶縁膜8に第1のコンタクトホール9を形成し、N+型ソース層7の一部を露出する。第1のコンタクトホール9の底面に露出したN+型ソース層7の表面からP型ボディ層6内まで第2のコンタクトホール10を形成する。第2のコンタクトホール10の底面に露出したP型ボディ層6の表面にP+型コンタクト層11を形成する。第1のコンタクトホール9の底面にフォトリソグラフィ工程のマスク合わせ精度のばらつき幅より小さい幅のN+型層7aを形成し、第1、第2のコンタクトホール9、10内をタングステン層12等で埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特にオン抵抗の低減されたパワーMOSトランジスタ及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSトランジスタは、IGBTと共に、バイポーラ型のパワートランジスタに比べてスイッチング特性が優れ特性も安定し使いやすいことからDC−DCコンバータなどのスイッチング電源や照明機器のインバータ回路、モーターのインバータ回路等に広く使用されている。
【0003】
パワーMOSトランジスタの重要な特性としてオン抵抗があり、その低減については、低消費電力化の流れの中、重要な課題として幾多の先行技術が開示されている。オン抵抗の大きさは、主として高抵抗のドレイン側ドリフト層の不純物濃度で決定され、次にゲートに電圧が印加されたとき生じる反転層からなるチャネル層の抵抗で決定される。
【0004】
縦型のパワーMOSトランジスタにおいて、オン電流は、N+型ソース層からP型ボディ層の表面に形成されたチャネル層を通り、不純物濃度の低いN型ドリフト層を経由して半導体基板の底面のN+型ドレイン層まで流れる。この電流の通路となるN型ドリフト層の一部に不純物濃度の高いN+型層を形成し、オン抵抗の低減を図る内容が以下の特許文献1に開示されている。
【0005】
また、ゲート幅を広くして電流容量を大きくするため、ゲート電極を微細化されたストライプ状、更には、格子状に配置しオン抵抗の低減を図ることが一般的に行われている。微細化が進展するとフォトリソグラフィ工程でのマスク合わせ作業が困難になる。係る問題に対処するため、マスク合わせ作業を行わずにパターンを形成するセルフアライン技術も導入されてきた。
【0006】
半導体基板の上にゲート電極の一部を露出させ、該露出したゲート電極をマスクとして砒素(As)等をイオン注入し、セルフアラインでN+型ソース層を形成する。更に、ゲート電極の側壁に形成されたシリコン酸化膜のサイドウォールによりセルフアラインでP型ボディ層と接続するP+型コンタクト層を形成する等の内容が特許文献2に開示されている。
【0007】
また、トレンチ内に形成されたゲート電極上を被覆するCVD法により形成された絶縁膜の側壁に、砒素(As)等がドープされたポリシリコンからなるサイドウォールを形成し、該サイドウォールを構成するポリシリコンから砒素(As)等をP型ボディ層に拡散し、セルフアラインでN+型ソース層を形成する。
【0008】
次に、N+型ソース層及び前記サイドウォールの双方と接続するソース電極を形成し、ソース電極とN+型ソース層等の接触面積を増加させコンタクト抵抗を低減するという技術内容が、以下の特許文献3に開示されている。微細化の進展と共に、オン抵抗に占めるソース電極とN+型ソース層とのコンタクト抵抗も無視できなくなっており、それに対処する内容である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−5398号公報
【特許文献2】特開2004−111661号公報
【特許文献3】特開2002−158233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
微細化の進展と共に、ゲート電極がストライプ状の構成であれ、格子状の構成であれN+型ソース層の中にフォトマスクを使用してP+型コンタクト層を形成することは困難になってきている。そこで、N+型ソース層とソース電極を接続するため、該N+型ソース層上を被覆する層間絶縁膜にコンタクトホールを形成するとき、このコンタクトホール内に露出したN+型ソース層からP型ボディ層に至るP+型コンタクト形成用コンタクトホールを同時に形成することが行われている。
【0011】
半導体基板上に開口された該コンタクトホールからボロン(B)等を所定のイオン注入法で注入しセルフアラインでP+型コンタクト形成用コンタクトホールの底面に露出したP型ボディ層にP+型コンタクト層を形成する。
【0012】
この場合、ソース電極はP型ボディ層に形成されたP+型コンタクト層に接続されると共に、P+型コンタクト形成用コンタクトホールの側壁に露出したN+型ソース層と接続される。N+型ソース層のP型ボディ層内の深さが深い場合は、ソース電極は該N+型ソース層と所望の接触面積を確保できるが、微細化の進展と共にN+型ソース層の深さも浅くなり、ソース電極はN+型ソース層との接触面積を十分に取れない場合も出てくる。その分オン抵抗が増加する。
【0013】
係る状況の元、オン抵抗の規格の上限も厳しくなる中、ソース電極とN+型ソース層の接触面積を如何にして拡大するかが課題になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体装置は、半導体基板上に形成された第1導電型のドリフト層と、前記ドリフト層の表面から内部まで延在して形成されたトレンチと、前記トレンチ内にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ドリフト層の表面から該トレンチの深さより浅い位置まで延在して形成された第2導電型のボディ層と、前記ボディ層の表面に形成された第1導電型のソース層と、前記ソース層上に堆積された層間絶縁膜に形成された第1のコンタクト開口と、前記第1のコンタクト開口の底面に露出する前記ソース層の表面から前記ボディ層内部まで、該第1のコンタクト開口と連続して形成された第2のコンタクト開口と、前記第2のコンタクト開口に露出する前記ボディ層に形成された第2導電型のコンタクト層と、前記第2のコンタクト開口の上端と前記第1のコンタクト開口の下端の間に挟まれた該第1のコンタクト開口の底面に露出された前記ソース層と、を具備することを特徴とする。
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に第1導電型のドリフト層を形成する工程と、前記ドリフト層の表面から内部に延在する複数のトレンチを形成する工程と、前記トレンチ内にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、前記ドリフト層の表面に第2導電型のボディ層を形成する工程と、前記ボディ層の表面に第1導電型のソース層を形成する工程と、前記ソース層上に堆積された層間絶縁膜に第1のコンタクト開口を形成する工程と、前記第1のコンタクト開口の底面に露出する前記ソース層の表面から前記ボディ層内部まで、該第1のコンタクト開口と連続して延在する第2のコンタクト開口を形成する工程と、前記第2のコンタクト開口に露出する前記ボディ層の表面に第2導電型のコンタクト層を形成する工程と、前記コンタクト層を形成した後に前記層間絶縁膜をライトエッチングして、前記第2のコンタクト開口の上端と前記第1のコンタクト開口の下端の間に挟まれた該第1のコンタクト開口の底面に前記ソース層を露出する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体装置及びその製造方法によれば、微細化されたN+型ソース層とソース電極のコンタクト抵抗が低減されたパワーMOSトランジスタを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体装置及びその製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の第1、第2の実施形態における半導体装置において、ソース電極を形成する前の前処理方法の違いとオン抵抗の関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態における半導体装置及びその製造方法を示す平面図及び断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態との比較例を示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
本実施形態の半導体装置及びその製造方法について、図1〜図3に基づいて、以下に説明する。本実施形態の半導体装置は縦型のトレンチゲートを有するパワーMOSトランジスタであり、図1(A)は格子状に形成されたゲート電極5にN+型ソース層7、該N+型ソース層7内のP+型コンタクト層11が取り囲まれている様子を示す平面図の一部である。
【0018】
図1(B)は図1(A)のA−A線での断面図である。N+型の半導体基板1上に所望の耐圧特性とオン抵抗のバランスをとった状態で決定された所定の比抵抗、膜厚からなるN型エピタキシャル層からなるNドリフト型2が堆積される。該N型ドリフト層2の表面から内部に向かって延在する格子状のトレンチ3が形成され、該トレンチ3の内部にはゲート絶縁膜4を介してゲート電極5が形成される。
【0019】
格子状のトレンチ3、3間のそれぞれの格子内に形成されたN型ドリフト層2には、その表面からトレンチ3の深さより浅いP型ボディ層6が形成される。P型ボディ層6の表面にはN+型ソース層7が形成され、該N+型ソース層7及びゲート電極5上には層間絶縁膜8が形成される。該層間絶縁膜8には第1のコンタクトホール9が形成される。
【0020】
第1のコンタクトホール9の底面に露出したN+型ソース層7には、N+型ソース層7からP型ボディ層6内まで延在する第2のコンタクトホール10が形成される。第2のコンタクトホール10の底面に露出したP型ボディ層6にはその表面にP+型コンタクト層11が形成される。P+型コンタクト層11はP型ボディ層6の電位をN+型ソース層7の電位に固定する役割を有している。
【0021】
第2のコンタクトホール10には、その底面にP+型コンタクト層11が、その側壁にはN+型ソース層7bが露出しているが、第1のコンタクトホール9にはその底面の一部にフォトリソグラフィ工程のマスク合わせ精度のばらつき幅より小さな幅のN+型ソース層7aが露出する。この小さな幅のN+型ソース層7aが本発明の要旨となる構成である。
【0022】
第1のコンタクトホール9、第2のコンタクトホール10内に露出するN+型ソース層7a、7b、P+型コンタクト層11上に、不図示のチタン膜及び窒化チタン膜からなるバリアメタルを介して、該第1のコンタクトホール9、第2のコンタクトホール10内を埋め込むタングステン(W)層12が形成される。
【0023】
タングステン(W)層12上にはアルミニューム(Al)等からなるソース電極13が形成される。また、N+型半導体基板1の裏面には銅(Cu)等からなる金属電極が形成される。
【0024】
本実施形態のパワーMOSトランジスタのドレイン・ソース間のオン抵抗RDS(on)の改善度合いについて、図3に基づき以下に説明する。同図にオン抵抗RDS(on)と不図示のチタニューム(Ti)等のバリア層形成前のN+型半導体基板1の前処理条件との関係を示す。横軸に希フッ酸液等中でライトエッチングする時間、即ち層間絶縁膜8のライトエッチング量を、縦軸にRDS(on)を示している。
【0025】
○印は、希フッ酸液等中でライトエッチングした後に、第1、第2のコンタクトホール9、10内に露出するN+型ソース層7a、7b、及びP+型コンタクト層11の表面を逆スパッタし、表面のシリコン層を100Å程度除去した場合のRDS(on)とライトエッチング時間との関係を示している。×印は逆スパッタしないで希フッ酸液等中で30秒間ライトエッチングしただけのときのRDS(on)を示している。
【0026】
逆スパッタ100Å程度のみ行い、希フッ酸液等中でのライトエッチング時間が0秒のときのRDS(on)を1として相対値で示している。逆スパッタした場合、希フッ酸液等中でのライトエッチング時間が増えることによりRDS(on)は低下するが、ある時間以上エッチングしてもその低下の程度は少なくなり、RDS(on)は飽和する傾向を示す。
【0027】
一方、逆スパッタをしないで希フッ酸液等中で30秒間ライトエッチングした×印の場合、逆スパッタ及び30秒間ライトエッチングした場合のようにRDS(on)が低下しない。エッチング時間が0秒で逆スパッタのみ行った場合と比べても高い値になる。このことから逆スパッタによるRDS(on)の改善と希フッ酸液等中でのライトエッチングによるRDS(on)の改善とは別の理由であると認識できる。
また、逆スパッタがない状態でライトエッチングを30秒行っても逆スパッタのみの場合に比しRDS(on)が低減されず逆に大きい位であるとの結果から、逆スパッタもライトエッチングもしない場合は、RDS(on)が更に高い値であることが推定できる。そのような状態でライトエッチングしてもRDS(on)の低下の程度が低いことが×印の結果から判明した。
【0028】
逆スパッタ100Å程度行っただけで、ライトエッチング時間が0秒のときは、図1(B)の第1のコンタクトホール10の底部に示すN+型ソース層7a部分は層間絶縁膜8の下に埋もれ露出していないため、第1、第2のコンタクトホール内に埋設されるタングステン(W)等と接触することは無い。タングステン(W)等と接触する部分は、第2のコンタクトホール10部分に露出するN+型ソース層7bとP+型コンタクト層11のみである。
【0029】
従って、逆スパッタによりRDS(on)が改善されるのは、N+型ソース層7bとタングステン(W)等との接触が良好になり、当該部分のコンタクト抵抗が低減できるからである。逆スパッタによりN+型ソース層7bとタングステン(W)等との接触が良好になるのは、後述するようにP+型コンタクト層11を形成するときのイオン注入によりN+型ソース層7b等に発生したダメージ層が逆スパッタにより除去されるためである。
【0030】
図3に示すように、逆スパッタ100Å程度行うことによりタングステン(W)等とN+型ソース層7bとのコンタクト抵抗を改善しRDS(on)を相対値で1まで低下させることができる。その後、同図に示すように、ライトエッチング時間と共にRDS(on)が低下するがその理由は、ライトエッチングにより、図1(B)に示す第1のコンタクトホール9の底面に新たに露出するN+型ソース層7aの幅が増え、タングステン(W)12等との接触面積が増加した分でコンタクト抵抗が低下するからである。
【0031】
エッチング時間を30秒以上にしてもRDS(on)の低下度が飽和気味になるがその理由は、高抵抗からなるN型ドリフト層2等の抵抗によりRDS(on)が支配されるからである。
【0032】
DS(on)=R+Yと表すことができる。抵抗Rは、N+型ソース層7b部分とタングステン(W)12等とのコンタクト抵抗Rと、N+型ソース層7aとタングステン(W)層12等とのコンタクト抵抗rとの並列抵抗になる。抵抗YはN型ドリフト層2等の抵抗分でRDS(on)の支配的部分である。ここで、N+型ソース層7bの幅をX、層間絶縁膜8から露出するN+型ソース層7aの幅をxとする。
【0033】
微細化の進展が少なく、本実施形態のようにセルフアラインでP+型コンタクト層11を形成する必要のない場合、R成分は無視できた。例えば、図5Bに示されるように、タングステン層12等がストライプ上に形成された広い面積のN+型ソース層7と接触していたので、当該部分のコンタクト抵抗は小さかったからである。
【0034】
抵抗Rはコンタクト抵抗Rとコンタクト抵抗rで表すと1/R=1/R+1/rからR=R/(1+R/r)になる。即ち、抵抗Rはタングステン層12等とN+型ソース層7aとのコンタクト抵抗rが大きくなれば大きくなり、コンタクト抵抗rが小さくなれば小さくなる。
【0035】
また、逆スパッタによりイオン注入時のダメージ層が除去されタングステン層12等とN+型ソース層7bの接触状態が改善され、タングステン層12等とダメージ層のないN+型ソース層7aと同様な接触状態になれば、Aを定数としてR=A/X、r=A/xと表せる。これを上記Rの式に代入し整理することによりR=A/(x+X)と表せる。
【0036】
従って、ライトエッチング量の増加により層間絶縁膜8の底面に露出するN+型ソース層7aの幅xが大きくなるが、それに伴い抵抗Rは小さくなり限りなく0に近づく。逆に、ライトエッチング量の減少に伴い幅xが小さくなれば、抵抗Rは大きくなる。ライトエッチングしない場合はタングステン層12等と幅XのN+型ソース層7bのコンタクト抵抗であるRになる。
【0037】
本実施形態では、図3に示すように、ライトエッチング時間30秒程度まではRDS(on)は大きく改善されるが、それ以上ライトエッチング時間を延ばしても、前述したようにN型ドリフト層2等の抵抗成分が支配的になるためRDS(on)は飽和する傾向となる。本実施形態ではXは250nm程度であり、ライトエッチング30秒でのxは20nm程度であった。
【0038】
DS(on)を低減するためには、Xが大きければ、即ちN+ソース層7の深さが深ければ、ライトエッチング量を減らすことができ、Xが小さければ、即ちN+ソース層7の深さが浅ければ、ライトエッチング量を増やさなければならない。
【0039】
第2のコンタクトホール10を第1のコンタクトホール9にセルフアラインして形成する場合、タングステン(W)層12等は幅の狭いN+型ソース層7b部分と接触する。従って、当該部分のコンタクト抵抗Rは大きくなり、その分だけRDS(on)は大きくなる。また、当該N+型ソース層7bの幅、形状、表面状態は、第1、第2のコンタクトホール9、10形成時のエッチングばらつき、イオン注入時のばらつき、ダメージ層のばらつき等によりばらつく。
【0040】
その結果、タングステン(W)層12等とN+型ソース層7b部分との接触状態が変化し、当該部分のコンタクト抵抗が上昇する。狭い規格幅のRDS(on)が要求される中、係る部分のコンタクト抵抗が上昇すればRDS(on)の規格上限を超える不良が発生する。
【0041】
本実施形態の発明は、係るタングステン(W)層12等とN+型ソース層7bとの接触で構成されるタングステン(W)層12等とN+型ソース層7とのコンタクト抵抗を低減し、RDS(on)の規格上限を超える不良の減少を図るものである。
【0042】
次に本実施形態の半導体装置の製造方法について、図1に示す平面図、断面図及び図2に示す断面図に基づいて簡単に説明する。先ず、図2(A)に示すように、不図示のN+型半導体基板1上にN型ドリフト層2を構成するN型エピタキシャル層を、所定のエピタキシャル法により堆積する。次に、N型ドリフト層2の表面から内部に向かって、絶縁膜等をマスクとして所定の反応性イオンエッチング法(RIE)により複数のトレンチ3を形成する。
【0043】
次に、少なくともトレンチ3の底面及び側壁を被覆するゲート絶縁膜4を所定の方法で形成する。次に、該トレンチ3内部を含むN+型半導体基板1の表面全面を被覆するポリシリコン膜を堆積し、イオン注入等によりリン(P)等をドープした後、所定の方法でポリシリコン層を全面エッチバックし、トレンチ3内に埋設されたゲート電極5を形成する。ゲート絶縁膜4はシリコン熱酸化膜のみ、または他の絶縁膜、あるいはそれらの多層膜のいずれでもよい。
【0044】
次に、格子状のトレンチ3間に挟まれたN型ドリフト層2のそれぞれの表面から、トレンチ3の深さより浅い層からなるP型ボディ層6を、所定の方法によりボロン(B)等をイオン注入して形成する。トレンチ3の側壁に形成されたゲート絶縁膜4と該P型ボディ層6との界面はチャネル層になる領域である。
【0045】
次に、該P型ボディ層6の表面に、所定の方法により砒素(As)等をイオン注入してN+型ソース層7を形成する。本実施形態ではN+型ソース層7のP型ボディ層6内の深さは250nmである。次に、所定の工程を経て、N+型ソース層7を含む不図示のN+型半導体基板1の全面を被覆する層間絶縁膜8を所定のCVD法で形成する。
【0046】
次に、図2(B)に示すように、コンタクトホール形成用フォトレジストマスクCを使用して層間絶縁膜8をRIE法によりエッチングして第1のコンタクト開口となる第1のコンタクトホール9を形成する。次に、フォトレジストマスクCを除去してから、層間絶縁膜8をマスクとして、該層間絶縁膜8に形成された第1のコンタクトホールの底面に露出するN+型ソース層7を所定のRIE法でエッチングし、P型ボディ層6の内部まで延在する第2のコンタクト開口となる第2のコンタクトホール10を形成する。
【0047】
同図に示すように、第2のコンタクトホール10の側壁にはN+型ソース層7bが、その底面にはP型ボディ層6の一部が露出する。一方、第1のコンタクトホール9の側壁及び底面には空間があるだけである。第1のコンタクトホール9、第2のコンタクトホール10は若干傾斜面となっているが、これによりタングステン(W)層12等との接触面積が大きくなりコンタクト抵抗の低減が図かられる。
【0048】
次に、第2のコンタクトホール10上からボロン(B)等を所定の方法でイオン注入して該第2のコンタクトホール10の底面に露出したP型ボディ層6にP+型コンタクト層11を形成する。この場合、ボロン(B)等はN+型ソース層7bにも注入されるが不純物濃度的にはN+型ソース層7のほうが高いので問題ない。但し、イオン注入時のダメージ層が残るという問題がある。
【0049】
次に、図1(B)に示すように、P+型コンタクト層11等が形成されたN+型半導体基板1を希フッ酸液等からなるエッチング液にさらすことにより、N+型ソース層7b等の表面に形成された自然酸化膜を除去すると共に、N+型ソース層7を被覆するBPSG等からなる層間絶縁膜8の一部をエッチング除去する。
【0050】
この結果、同図に示すように、N+型ソース層7上の層間絶縁膜8が一部除去され、第1のコンタクトホール9の底面にフォトリソグラフィ工程のマスク合わせ精度のばらつき幅より、幅の狭いN+型ソース層7aが露出する。本実施形態では、30秒間のエッチングで幅20nm程度が露出する。第1のコンタクトホール9の底面に係る狭い幅のN+型ソース層7を露出させたことが本実施形態の特徴である。
【0051】
前記したコンタクトホール形成用のフォトレジストマスクCとは別に、P+型コンタクト層形成のためのフォトレジストマスクCPを使用する場合、フォトリソグラフィ工程のマスク合わせ作業等が増えるという問題に加え、フォトレジストマスクCが微細化されたものであるとき、フォトレジストマスクCPが、フォトレジストマスクCにより形成された第1のコンタクトホール9の中心からマスクずれを生じる場合がある。
【0052】
係るマスクずれが生じた場合、フォトレジストマスクCPは第1のコンタクトホール9の側壁となる層間絶縁膜8上に跨ってその一部が形成されることになる。その結果、フォトレジストマスクCP内に露出するN+型ソース層7の面積が小さくなり、現像がうまくできない、または、第2のコンタクトホール10の底面にP型ボデイ層6が十分な広さの面積で露出できないという不具合が起きる。
【0053】
次に、第2のコンタクトホール10の側壁に露出したN+型ソース層7b及びその底面に露出したP+型コンタクト層11の表面層の10nm程度を逆スパッタにより除去する。P+型コンタクト層11を形成するときのボロン(B)等のイオン注入によりN+型ソース層7b等に生じ、且つ、残存しているダメージ層を除去するためである。なお、N+型ソース層7aの表面も逆スパッタされる。
【0054】
次に、不図示のバリアメタルとしてチタン膜及び窒化チタン膜をN+型ソース層7b等を含むN+型半導体基板の表面全面に所定のスパッタ法等により形成する。次に、所定のCVD法によりタングステン(W)層12をバリアメタル層上に堆積し、第1のコンタクトホール9及び第2のコンタクトホール10内を埋設する。不要部分に堆積されたタングステン(W)層等は所定の方法でエッチング除去される。
【0055】
次に、アルミニューム(Al)を主成分とする金属膜を、タングステン(W)層12等が形成されたN+型半導体基板1上に所定のスパッタ法により堆積した後、所定のフォトエッチング工程を経てソース電極13を形成する。必要に応じ多層配線を行い、最上層をシリコン窒化膜等からなる不図示のパッシベーション膜で被覆し、N+型半導体基板1の裏面に所定の方法により不図示の裏面電極を形成すれば、本実施形態の半導体装置は完成する。
〔第2の実施形態〕
本実施形態について図4に基づき、比較例としての図5と対比して説明する。第1の実施形態と同一の構成は、原則同一の符号で示す。図4(A)は本実施形態の平面図の一部を示す。図4(B)は図4(A)のB−B線での断面図である。第1の実施形態ではゲート電極5が格子状の構成をとり、N+型ソース層7等が各格子ごとに形成されているのに対して、本実施形態ではゲート電極5、N+型ソース層7等がストライプ状に形成されている点で異なる。
【0056】
従って、第1の実施形態の第1のコンタクトホール9、第2のコンタクトホール10は本実施形態では、それぞれ第1のコンタクト溝9a、第2のコンタクト溝10aとなる。本実施形態でも、図4(B)に示すように、第1のコンタクト溝9aの底面に露出するN+型ソース層7aによりタングステン(W)12等との接触面積を増やし抵抗Rを小さくできる効果や、フォトレジストマスクCPを別に必要としないため、十分な面積のP+型コンタクト層11が確保できる効果は第1の実施形態と同様である。
【0057】
図5に比較例の半導体装置を示す。図5(A)は比較例の半導体装置の平面図の一部である。また、図5(B)は、図5(A)のP+型コンタクト層11を含む領域であるC−C線の断面図である。図5Cは、図5AのP+型コンタクト層11が存在しない領域であるD−D線の断面図である。
【0058】
一般に、N+型ソース7等がストライプ構造になっている場合、図5(A)、同(B)に示す比較例のように、N+型ソース層7を露出させるフォトレジストマスクCとそれより開口の狭いP+型コンタクト層11形成領域のP型ボディ層6を露出させるフォトレジストマスクCPを使用して、N+型ソース層7の中に分離した状態で複数のP+型コンタクト層11を形成する。
【0059】
この場合、微細化の程度によっては、図5(B)に示すように、フォトレジストマスクCより小さい開口のフォトレジストマスクCPを使用したときでも、フォトレジストマスクCPにより形成された第2のコンタクト溝10aの底面に十分な面積のP+型コンタクト層11を形成することができる。
【0060】
また、図5(C)に示すように、N+型ソース層7はP+型コンタクト層11の存在していない領域で第1のコンタクト溝10aの底面に大きな面積で露出される。そのため、タングステン(W)層12等とN+型ソース層7との接触面積は大きくなり、当該部分でのコンタクト抵抗は十分低くRDS(on)に対する影響は無視できる程度である。
【0061】
従って、比較例に対して本実施形態の最大の特徴は、フォトマスク枚数の低減による工程の合理化であり、該合理化に伴うタングステン(W)層12等とN+型ソース層7bとの接触で構成されるタングステン(W)層12等とN+型ソース層7とのコンタクト抵抗を低減したことである。
【0062】
即ち、逆スパッタによりN+型ソース層7bの表面状態を良好にし、且つ、ライトエッチングを導入することによりN+型ソース層7aを露出させ、タングステン(W)層12等とN+型ソース層7との接触面積を拡大し、両者の間に良好な接触状態を形成したことである。
【0063】
また、ゲート電極5等がストライプ状の構成で微細化が進んだ場合でも、十分な面積のP+型コンタクト層11を形成できるという特徴も有する。
【0064】
なお、本発明はパワーMOSトランジスタに関するものであるが、技術的思想が同一である限りIGBTに関しても適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 N+型半導体基板 2 N型ドリフト層 3 トレンチ 4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極 6 P型ボディ層 7,7a,7b N+型ソース層
8 層間絶縁膜 9 第1のコンタクトホール 9a 第1のコンタクト溝
10 第2のコンタクトホール 10a 第2のコンタクト溝
11 P+型コンタクト層 12 タングステン層 13 ソース電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層の表面から内部まで延在して形成されたトレンチと、
前記トレンチ内にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ドリフト層の表面から該トレンチの深さより浅い位置まで延在して形成された第2導電型のボディ層と、
前記ボディ層の表面に形成された第1導電型のソース層と、
前記ソース層上に堆積された層間絶縁膜に形成された第1のコンタクト開口と、
前記第1のコンタクト開口の底面に露出する前記ソース層の表面から前記ボディ層内部まで、該第1のコンタクト開口と連続して形成された第2のコンタクト開口と、
前記第2のコンタクト開口に露出する前記ボディ層に形成された第2導電型のコンタクト層と、
前記第2のコンタクト開口の上端と前記第1のコンタクト開口の下端の間に挟まれた該第1のコンタクト開口の底面に露出された前記ソース層と、を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2の開口の上端と前記第1の開口の下端の間に挟まれた該第1のコンタクト開口の底面に露出された前記ソース層の幅がフォトリソグラフィ工程のマスク合わせ精度のばらつき幅より小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記トレンチが格子状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トレンチがストライプ上に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板上に第1導電型のドリフト層を形成する工程と、
前記ドリフト層の表面から内部に延在する複数のトレンチを形成する工程と、
前記トレンチ内にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と、
前記ドリフト層の表面に第2導電型のボディ層を形成する工程と、
前記ボディ層の表面に第1導電型のソース層を形成する工程と、
前記ソース層上に堆積された層間絶縁膜に第1のコンタクト開口を形成する工程と、
前記第1のコンタクト開口の底面に露出する前記ソース層の表面から前記ボディ層内部まで、該第1のコンタクト開口と連続して延在する第2のコンタクト開口を形成する工程と、
前記第2のコンタクト開口に露出する前記ボディ層の表面に第2導電型のコンタクト層を形成する工程と、
前記コンタクト層を形成した後に前記層間絶縁膜をライトエッチングして、前記第2のコンタクト開口の上端と前記第1のコンタクト開口の下端の間に挟まれた該第1のコンタクト開口の底面に前記ソース層を露出する工程と、を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2のコンタクト開口の上端と前記第1のコンタクト開口の下端の間に挟まれた該第1のコンタクト開口の底面に露出する前記ソース層の幅が、フォトリソグラフィ工程のマスク合わせ精度のばらつき幅より小さいことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記層間絶縁膜のライトエッチングの後に、前記第2のコンタクト開口の側壁に露出する前記ソース層及び該第2のコンタクト開口の底面に露出する前記コンタクト層、それぞれの表面層を逆スパッタすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記表面層が逆スパッタされる膜厚が10nm以上であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−119559(P2012−119559A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269155(P2010−269155)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】