説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】TSV構造を採用し複数のチップをスタックした半導体装置を、改良された入出力形式で提供できるようにする。
【解決手段】複数のチップをスタックしてなり、隣り合うチップ間の接続を、貫通電極を介して行なうTSV構造を持つ半導体装置に適用される。各チップは複数のチャンネルに対応した複数のTSVアレイ部を備え、該複数のTSVアレイ部は、スタックするチップの数に応じて入出力に寄与するTSVアレイ部と入出力回路に接続されないパススルーのTSVアレイ部とに分けられている。スタックするチップの数に応じて2段目以降のチップを面方向に回転させてスタックし、前記パススルーのTSVアレイ部を経由してデータの入出力を行なう構成とすることにより、前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部にのみ共有の入出力回路を備える構成とし、入出力回路の数を低減させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TSV構造を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)システムの超高密度化に伴い、複数の半導体チップ(例えばメモリチップ)をスタックすることで半導体装置を三次元的に構成することが行われている。このために、TSV(Through Silicon Via:シリコン貫通電極)構造、すなわち半導体チップを貫通するように貫通電極を形成し、この貫通電極の端部を他の半導体チップの電極に接続して三次元構造を形成する技術が採用されている。
【0003】
TSV構造においては、複数の半導体チップをスタックさせた場合に、半導体チップ間の接続を、貫通電極を介して行うため、接続のためのボンディングパッドやインターポーザ層等が不要となり、半導体装置をより小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−029535号公報
【特許文献2】特開2010−282511号公報
【特許文献3】特開2010−282702号公報
【特許文献4】特開2007−036054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TSV構造を採用した半導体装置、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)の一例として、現在のワイドI/O DRAMの概略構成を図2に示す。チップの各TSVアレイ部には128個の入出力(DQ)回路(ピン)があり、コマンド/アドレス(CMD/ADD)等のための内部バスも128ビットで図2(c)のようにSDRAM(Synchronous DRAM)インターフェースで動作する。
【0006】
ところで、今後高速化が進み、例えば図3(c)に示すようにDDR(Double Data Rate)インターフェースとなった場合、従来のようにDDR化した場合には図3(a)、(b)のような256個の入出力(DQ)回路の構成が想定される。
【0007】
しかし、図3の場合、内部バスは256×4で従来の倍の内部バス幅となり、かつ、入出力(DQ)回路もSDRAMインターフェースの倍の高速動作のため大きな回路となり、図2の構成に対してチップサイズが大きくなる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、TSV構造を採用し複数のチップをスタックした半導体装置を、改良された入出力形式で提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のチップをスタックしてなり、隣り合うチップ間の接続を、貫通電極を介して行なうTSV構造を持つ半導体装置に適用される。
【0010】
本発明の態様によれば、各チップは複数のチャンネルに対応した複数のTSVアレイ部を備え、前記複数のTSVアレイ部は、あらかじめ、スタックするチップの数に応じてデータの入出力に寄与するTSVアレイ部と入出力回路に接続されないパススルーのTSVアレイ部とに分けられている。そして、前記スタックするチップの数に応じて2段目以降のチップを面方向に回転させてスタックし、前記パススルーのTSVアレイ部を経由してデータの入出力を行なう構成とすることにより、前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部にのみ入出力回路を備える構成とした。
【0011】
本発明の別の態様によれば、複数のチップをスタックしてなり、隣り合うチップ間の接続を、貫通電極を介して行なうTSV構造を持つ半導体装置の製造方法が提供される。本製造方法においては、各チップには複数のチャンネルに対応した複数のTSVアレイ部を用意し、前記複数のTSVアレイ部を、スタックするチップの数に応じてデータの入出力に寄与するTSVアレイ部と入出力回路に接続されないパススルーのTSVアレイ部とに分け、前記スタックするチップの数に応じて2段目以降のチップを面方向に回転させてスタックし、前記パススルーのTSVアレイ部を経由してデータの入出力を行なうように構成することにより、前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部にのみ共有の入出力回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のチップのスタックにより半導体装置を構成する場合の入出力回路数を減らし、面積を縮小することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が適用される半導体装置の一例を、TSV構造を採用した2つのメモリチップのスタック例により示した図である。
【図2】現在のワイドI/O DRAMの概略構成例を示した図である。
【図3】DDR化した場合のDRAMの構成例を示した図である。
【図4】図1で説明したようなメモリチップの2段スタックに適用した、本発明の第1の実施例を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施例について説明するための図である。
【図6】本発明を4段スタックに適用した場合のCS制御について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について説明する前に、図1を参照して、本発明が適用される半導体装置の一例を説明する。
【0015】
図1は、説明を簡単にするために、2つのメモリチップ(以下、チップと略称する)をスタックした半導体装置の例を示している。勿論、これは一例にすぎない。図1(a)において、チップ100Aは、チャンネル0〜チャンネル3の4つのメモリエリアにそれぞれ、入出力(DQ)回路との接続のためのTSVアレイ部100−0〜100−3を備える。TSVアレイ部100−0、100−2はそれぞれ、チャンネル0のメモリエリアとチャンネル2のメモリエリアの互いに隣接する辺縁に沿って配置され、TSVアレイ部100−1、100−3はそれぞれ、チャンネル1のメモリエリアとチャンネル3のメモリエリアの互いに隣接する辺縁に沿って配置されている。
【0016】
図1(b)において、チップ100A、100Bは、SOC(System on a Chip)200上にスタックされ、樹脂でパッケージされている。チップ100A、100B、SOC200を貫通して上下方向に延びる線がTSVアレイ部を構成している複数の貫通電極であり、半導体装置底面に設けられた半田ボール210を通して外部と接続される。
【0017】
以下に、本発明の実施形態を幾つかの実施例に基づいて説明する。
【0018】
[第1の実施例]
図4は、本発明を、図1で説明したようなチップ(DRAMチップ)の2段スタックに適用した第1の実施例を示す。すなわち、図1で説明したように、チップ100はチャンネル0〜3の4つのメモリエリアにそれぞれTSVアレイ部100−0〜100−3を備える。図中左側の2つのTSVアレイ部100−0、100−2はそれぞれ、互いに隣接するメモリエリアの辺縁に沿って配置され、図中右側の2つのTSVアレイ部100−1、100−3もそれぞれ、互いに隣接するメモリエリアの辺縁に沿って配置されている。
【0019】
第1の実施例においては、図4(a)に示すように、チップ100における上半分のメモリエリアに対応する2つのTSVアレイ部100−0,100−1をDRAMに入出力するためのTSVアレイ部とする一方、下半分のメモリエリアに対応する2つのTSVアレイ部100−2,100−3をパススルーのTSVアレイ部としている。この場合、DRAMに入出力するためのTSVアレイ部100−0,100−1側にのみ4チャンネルに対応した入出力(DQ)回路を設ける。そして、2段スタックの場合、図4(b)に示すように、上段側となるチップ100’は、面方向に沿って180度回転させて下側となるチップ100にスタックさせ、下段側のチップ100のパススルーのTSVアレイ部100−2,100−3を経由してデータを出力する構成としている。
【0020】
図4(c)はスタックした後の構成を示し、上半分の左右2つのTSVアレイ部は下段側のチップ(図4(a))のDRAMに対しての入出力(DQ)として、下半分の左右2つのTSVアレイ部は上段側のチップ(図4(b))のDRAMの入出力(DQ)としてそれぞれ作用し、スタックした2つのチップで128DQ×4として動作する。すなわち、ここでは4つのチャンネルのうちの2つのチャンネルの入出力(DQ)回路を共通化(共有)することで、チップにおける入出力(DQ)回路の数を減らしている。
【0021】
(第1の実施例の効果)
第1の実施例の構成の場合、内部バスは256×2 = 512となって図2に示した現在のワイドI/O DRAMと同じであり、かつ、入出力(DQ)回路はSDRAMインターフェースの倍の高速動作のため大きくなるが、回路数は半分で済むので、現在のワイドI/O DRAM以下の面積で済む。
【0022】
[発明の他の実施例]
図5は、4枚のチップをスタックする場合に適用される、本発明の第2の実施例を説明するための図である。図5(a)において、第2の実施例では、チップ300におけるチャンネル0〜3の4つのメモリエリアに対応するように、4つのTSVアレイ部300−0〜300−3を十字型に配置している。そして、ここではTSVアレイ部300−0をDRAMに入出力するためのTSVアレイ部とし、残りのTSVアレイ部300−1〜300−3をパススルーのTSVアレイ部とするようにしている。これにより、4つのチャンネルのうちの3つのチャンネルの入出力(DQ)回路を共通化(共有)することで、チップにおける入出力(DQ)回路の数を1つに減らしている。すなわち、図5(a)では、DRAMに入出力するためのTSVアレイ部300−0側にのみ入出力(DQ)回路を設けている。
【0023】
このような十字型のTSVアレイ部の配置を持つチップ300を4枚用い、図5(b)に示すように、2枚目以降については面方向に沿って90度ずつ順に回転させてスタックすることにより、4段スタックで4つの入出力(DQ)回路を実現し、128DQ×4の動作を実現することが可能となる。このような構成により、1チップあたりの内部バスは256ビットで現在のワイドI/O DRAMの半分、かつ入出力(DQ)回路の数も1/4となり、面識のより小さい半導体装置を実現することができる。
【0024】
図6は、4段スタックの場合のCS(Chip Select)制御について説明するための図である。
【0025】
図6(a)は、4段スタックの各々のスライス(チップ)に入出力回路を持つ例である。
【0026】
図6(b)は、4段スタックのうち、スタック方向に関して隣り合うペアの2枚のチップで入出力(DQ)回路を共用(共通化)したCS制御の例を示す。スライスからみたチップCS0とCS1(及びCS2とCS3)でORを取り、共用した入出力(DQ)回路をオン(活性化)にする。つまり、ペアとなる2枚のチップの入出力(DQ)回路が活性化された状態となる。
【0027】
以上の説明で理解できるように、本発明では、2チップのスタック構造であれば、一方を他方に対して面方向に沿って180度回転させてスタックすることで下段側のチップと上段側のチップの入出力(DQ)回路自体は活性化し、チップセレクトCS信号によって選択されたチップが2つのチップの入出力(DQ)回路を介してデータを入出力する。
【0028】
一方、4チップのスタックの場合は、2段目以降を90度ずつ回転させてスタックし4つのチップの入出力(DQ)回路が常時活性化された状態になる。
【0029】
以上、本発明について複数の実施例を挙げて説明したが、本発明は上記の実施例に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱することなく種々の変更。変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、DRAM、例えばDIMM(Dual Inline Memory Module)方式のDRAMへの適用に適している。
【符号の説明】
【0031】
100、100A、100B、300 チップ
100−0〜100−3、300−0〜300−3 TSVアレイ部
200 SOC
210 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップをスタックしてなり、隣り合うチップ間の接続を、貫通電極を介して行なうTSV構造を持つ半導体装置において、
各チップは複数のチャンネルに対応した複数のTSVアレイ部を備え、
前記複数のTSVアレイ部は、スタックするチップの数に応じてデータの入出力に寄与するTSVアレイ部と入出力回路に接続されないパススルーのTSVアレイ部とに分けられており、
前記スタックするチップの数に応じて2段目以降のチップを面方向に回転させてスタックし、前記パススルーのTSVアレイ部を経由してデータの入出力を行なう構成とすることにより、前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部にのみ共有の入出力回路を備える構成としたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
各チップは4つのチャンネルに対応した4つのTSVアレイ部を備え、
チップのスタック数が2である場合、各チップにおける2つの前記TSVアレイ部を前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部、残る2つのTSVアレイ部を前記パススルーのTSVアレイ部として、2段目のチップを180度回転させてスタックしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
各チップは4つのチャンネルに対応した4つのTSVアレイ部を備え、
チップのスタック数が4である場合、各チップにおける1つの前記TSVアレイ部を前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部、残る3つのTSVアレイ部を前記パススルーのTSVアレイ部として、2段目以降のチップを90度ずつ回転させてスタックしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
複数のチップをスタックしてなり、隣り合うチップ間の接続を、貫通電極を介して行なうTSV構造を持つ半導体装置の製造方法において、
各チップには複数のチャンネルに対応した複数のTSVアレイ部を用意し、
前記複数のTSVアレイ部を、スタックするチップの数に応じてデータの入出力に寄与するTSVアレイ部と入出力回路に接続されないパススルーのTSVアレイ部とに分け、
前記スタックするチップの数に応じて2段目以降のチップを面方向に回転させてスタックし、前記パススルーのTSVアレイ部を経由してデータの入出力を行なうように構成することにより、前記データの入出力に寄与するTSVアレイ部にのみ共有の入出力回路を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−51299(P2013−51299A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188141(P2011−188141)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】