半導体装置及びその製造方法
【課題】積層構造を有する半導体装置において、素子の熱を効率良く冷却する。
【解決手段】半導体装置1は、パッケージ基板10の上に第1のLSI素子15と、第1のインターポーザ基板20が実装されている。第1のLSI素子15の上には、受熱部材25が配置される。パッケージ基板10とインターポーザ基板20との間に下部流路54を有する。第1のインターポーザ基板20の上には、第2のインターポーザ基板30が実装され、第1のインターポーザ基板20と第2のインターポーザ基板30との間に上部流路52を有する。第1のインターポーザ基板20には、開口部27が受熱部材25を露出させ位置に形成されており、ここに上下の流路52,54を接続させる連結流路53が形成される。冷媒は、上部流路52から連結流路53に流入し、連結流路53内で第1のLSI素子15で発生した熱を受熱部材25を介して受け取り、下部流路54から排出される。
【解決手段】半導体装置1は、パッケージ基板10の上に第1のLSI素子15と、第1のインターポーザ基板20が実装されている。第1のLSI素子15の上には、受熱部材25が配置される。パッケージ基板10とインターポーザ基板20との間に下部流路54を有する。第1のインターポーザ基板20の上には、第2のインターポーザ基板30が実装され、第1のインターポーザ基板20と第2のインターポーザ基板30との間に上部流路52を有する。第1のインターポーザ基板20には、開口部27が受熱部材25を露出させ位置に形成されており、ここに上下の流路52,54を接続させる連結流路53が形成される。冷媒は、上部流路52から連結流路53に流入し、連結流路53内で第1のLSI素子15で発生した熱を受熱部材25を介して受け取り、下部流路54から排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどの電子装置では、LSI(Large Scale Integration;半導体集積回路)素子を有する半導体装置を有する。一般的に、LSI素子は、処理に伴って熱を生じるので、LSI素子を冷却して熱を取り除く必要がある。LSI素子を冷却するときは、例えば回路配線基板に実装したLSI素子の上面を放熱面に設定し、放熱面にヒートスプレッダーやヒートシンクを熱的に接触させる。さらに、ファンを用いてヒートスプレッダーやヒートシンクに付設するフィンに送風することで、LSI素子の熱を大気に放出させる。
【0003】
ここで、LSI素子の処理が高速化したりすると、LSI素子の発熱量が増加する。この場合にLSI素子を十分に冷却するためには、ヒートスプレッダーやヒートシンクを大型化したり、形状を複雑にしたりする必要があり、電子装置の部品設計や実装設計に大きな影響を与える。
【0004】
また、近年では、半導体装置の高性能化に対応するために、LSI素子やパッケージ基板を積層するような実装、いわゆる3次元実装が提案されている。3次元実装によって製造された半導体装置では、例えば、積層した複数の基板のそれぞれにLSI素子が実装されており、一番上の基板上に放熱フィンが設けられる。しかしながら、この構成では、最上部のLSI素子は放熱フィンで排熱できるが、下層のLSI素子は、放熱フィンから離れて配置されているので、熱を十分に放出させることが難しかった。従って、下層のLSI素子を冷却することが困難であった。
【0005】
そこで、従来では、パッケージ基板上に3次元に積層されたLSI素子のそれぞれの基板の裏面に複数の溝を形成してヒートパイプを設置し、ヒートパイプによる熱移動によってLSI素子を冷却することが図られている。
また、従来では、流路が複数形成されたヒートシンクをLSI素子のそれぞれに取り付け、流路に冷媒を流すことでLSI素子を冷却している。各LSI素子の上にヒートシンクが取り付けられるので、LSI素子間は、パッケージ基板の外周部分に設けられたソケットを介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−168255
【特許文献2】特開2002−151640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LSI素子の基板を利用してヒートパイプを形成するケースでは、LSI素子間に埋設されるヒートパイプによって、近接するLSI素子の間の相互の電気的接続が妨げられるため、LSIパッケージの高速化の障害となる。また、LSI素子の製造方法が複雑になってコストが増大し、LSI素子および配線基板の設計自由度が低下することが問題となる。
また、冷媒の流路を有するヒートシンクをLSI素子のそれぞれに取り付けるケースでは、LSI素子のサイズに合わせたヒートシンク内に冷媒の流路を形成する必要があるの
で、製造工程が複雑化する。さらに、LSI素子から出力された信号は、パッケージ基板外周部にあるソケットを介して他の層のLSI素子に伝達されるので、信号遅延が生じ易く、電子機器の処理の高速化が困難になる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、積層構造を有する半導体装置において、LSI素子の熱を効率良く冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、第1の基板と、前記第1の基板上に実装される電子部品と、前記第1の基板上に実装される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板によって区画され、前記第1の基板の外端部まで延びる流路と、前記第1の基板上に実装された前記電子部品を冷却する冷媒が流れる前記流路を有する冷却路と、を含む半導体装置が提供される。
【0009】
また、実施形態の別の観点によれば、第1の基板上に電子部品を実装する工程と、前記第1の基板上に接合材による流路パターンを形成する工程と、を含み、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材と、前記第1の基板と、前記第2の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる冷却路を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上下に配置された基板の間に形成された冷却路に冷媒を流すことで、電子部品の熱を半導体装置の外に効率良く排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿った平面図であって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電子部品と受熱部材の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1のB−B線に沿った断面図であって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の第1の冷却路の一例を示す図である。
【図5】図5は、図1のC−C線に沿った断面図であって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の第3の冷却路の一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置と冷却システムの一例を示す図である。
【図7A】図7Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その1)
【図7B】図7Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その2)
【図7C】図7Cは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その3)
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、図8のD−D線に沿った断面図であって、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。
【図10】図10は、図1のE−E線に沿った断面図であって、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の第1の冷却路の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置と冷却システムの一例を示す図である。
【図12A】図12Aは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その1)
【図12B】図12Bは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その2)
【図13】図13は、本発明の変形例に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0013】
図1に半導体装置の断面図を示す。さらに、図2に図1のA−A線に沿った側部断面図を示す。半導体装置1は、回路配線基板2を有し、回路配線基板2上にパッケージ基板10(第1の基板)がはんだバンプ4を用いて実装されている。パッケージ基板10上には、第1のLSI素子15(電子部品)や、その他の電子部品16、第1のインターポーザ基板20(第2の基板)がはんだバンプ17,18を用いて実装されている。第1のインターポーザ基板20上には、第2のインターポーザ基板30(第3の基板)がパッケージ接合材22を用いて実装されている。第2のインターポーザ基板30には、電子部品35及び第2のLSI素子36がはんだバンプ32を用いて実装されている。はんだバンプ4,17,18,19,32は、例えば格子状に配列されており、BGA(Ball Grid Array)又はBGA端子と呼ばれることもある。はんだ材料には、例えば、Sn−Agが用いられる。さらに、ヒートシンク40によってパッケージ基板10及びインターポーザ基板20,30、その他の部品15,16,35,36が覆われている。
【0014】
回路配線基板2は、例えば、樹脂に配線や電極を印刷したプリント基板などが用いられる。回路配線基板2の上面には、複数の電極3が配列されており、各電極3にはんだバンプ4が1つずつ接合されている。
パッケージ基板10の下面には、複数の電極5が配列されており、各電極5にはんだバンプ4が1つずつ接合されている。図2に示すように、パッケージ基板10の上面には、複数の電極11,12と、下地パターン37が形成されている。各電極11,12の上にははんだバンプ17,18が1つずつ接合されている。下地パターン37の上には、パッケージ接合材38(第1の接合材)が接合されている。ここで、下面の電極5と上面の電極11,12の少なくとも一部は、例えば配線や貫通ビア(TSV;through-silicon via)によって電気的に接続されている。
【0015】
その他の電子部品16としては、例えば、コンデンサや抵抗がある。電子部品16は、下面の電極16Aにはんだバンプ17が接合されており、はんだバンプ17を介して上下に対向配置された電極11,16Aが電気的に接続される。同様に、第1のLSI素子15は、下面の電極15Aにはんだバンプ17が接合されており、はんだバンプ17を介して上下に対向配置された電極11,15Aが電気的に接続される。さらに、第1のインターポーザ基板20の下面には、電極19が配列されている。電極19にはんだバンプ18を接合することで、はんだバンプ18を介して上下に配列された電極12,19が電気的に接続される。
【0016】
ここで、図2と、図3の斜視図に示すように、第1のLSI素子15の上面には、受熱部材25が取り付けられている。受熱部材25の上部は、複数の溝26が並列に形成されることで放熱フィンを形成している。さらに、受熱部材25は、溝26の一方の端部側が第1のLSI素子15を越えて延び、第1のLSI素子15の側方に垂れ下がっている。
このような受熱部材25は、熱伝導性が良好な材料、例えば、銅やアルミニウムを用いて製造される。ここで、第1のLSI素子15の冷却を効率化する観点からは、受熱部材25と第1のLSI素子15の接触面積は大きいことが好ましい。このために、受熱部材25の下面の大きさは、第1のLSI素子15の上面の面積以上になっている。しかしながら、受熱部材25の下面の大きさは、第1のLSI素子15より小さくても良い。
【0017】
図1及び図2に示すように、第1のインターポーザ基板20の上面には、多数の下地パターン21が形成されている。下地パターン21は、例えば、基板内部に形成された不図示の配線や貫通ビアによって、下面に形成された電極19の少なくとも一部に電気的に接続されている。さらに、第1のインターポーザ基板20には、開口部27(貫通孔)が第1のLSI素子15の実装位置に併せて形成されている。
【0018】
開口部27の上部は、受熱部材25を上から抑えるようにひさし状に延びており、延出部分28によって開口部27の大きさが減少させられている。図2に示すように、延出部分28より下方の領域では、開口部27の平面形状は、受熱部材25の平面形状に加えて一部を延出させた領域29を加えて形状になっており、この領域29においては、開口部27の側面と、受熱部材25の側面との間にスペースが形成されている。受熱部材25の他の3つの側面は、開口部27に密着している。ここで、領域29は、パッケージ基板10上のパッケージ接合材38によって形成されたパターンの上方に配置されている。
【0019】
ここで、第1のLSI素子15及び電子部品16は、第1のインターポーザ基板20の下面以下に配置されている。受熱部材25は、少なくとも一部が第1のインターポーザ基板20の開口部27内に収容されている。これは、パッケージ基板10の上面から第1のインターポーザ基板20の実装高さが、第1のLSI素子15及び電子部品16の実装時のそれぞれの上面の高さ以上であるためである。
【0020】
第1のインターポーザ基板20上の下地パターン21には、パッケージ接合材22(第2の接合材)が接合されている。パッケージ接合材22は、はんだ材料、例えばSn−Agはんだめっき、はんだペーストや、導電性ペースト、例えばAgペーストが用いられる。
【0021】
また、第2のインターポーザ基板30は、下面に電極23が多数形成されている。これら電極23は、パッケージ接合材22を介して第1のインターポーザ基板20の下地パターン21に電気的に接続される。電極23は第2のインターポーザ基板30に形成された不図示の配線や貫通ビアによって、上面に形成された電極31の少なくとも一部に電気的に接続されている。第2のインターポーザ基板30の上面には、電子部品35や、第2のLSI素子36がはんだバンプ32を用いて電極31上に実装されている。
【0022】
図1に示すように、ヒートシンク40は、回路配線基板2に固定され、内部に各基板10,20,30やLSI素子15,36などを収容する箱形状を有する。ヒートシンク40の上蓋40Aの下面には、第2のLSI素子36の上面が熱伝導性グリースなどを介して熱的に接触させられる。上蓋40Aの上面からは複数の放熱フィン41が上方に伸びている。
【0023】
ここで、半導体装置1には、第1のLSI素子15を冷却する冷却路51が形成されている。図2と、図2のB−B線に沿った断面図である図4に示すように、冷却路51は、第1のインターポーザ基板20と第2のインターポーザ基板30との間に形成される上部流路52(第1の流路)を有する。上部流路52は、第1のインターポーザ基板20上に形成されたパッケージ接合材22によって主に区画されている。パッケージ接合材22は、第1のインターポーザ基板20の一方の側面から中央の開口部27に向けて平行な2つ
のラインとして形成され、第1のインターポーザ基板20の中央付近で開口部27を囲むように四角形に閉じている。パッケージ接合材38は、上部流路52の区画と共に、2つのインターポーザ基板20,15の接合にも寄与する。このために、上部流路52の高さは、接合部の高さ、即ち第1のインターポーザ基板20の上面から第2のインターポーザ基板30の下面までの距離に等しい。
【0024】
また、冷却路51は、連結流路53(第2の流路)を有する。連結流路53は、上部流路52に連結され、第2のインターポーザ基板30と、開口部27と、受熱部材25とを利用して形成されている。このような連結流路53は、第1のインターポーザ基板20の上方から、開口部27を通って第1のインターポーザ基板20の下側へと導く流路であり、この経路中において冷媒が第1のLSI素子15と熱的に接続される。
【0025】
さらに、図2と、図2のC−C線に沿った断面図である図5に示すように、冷却路51は、下部流路54(第3の流路)を有する。下部流路54は、連結流路53に連結され、パッケージ基板10上に形成されたパッケージ接合材38によって主に区画され、パッケージ基板10の外端部まで延びる流路である。パッケージ接合材38は、パッケージ基板10の中央部分において第1のLSI素子15の側方の領域を四角形に囲むと共に、第1のLSI素子15から突出する受熱部材25の下面に接続され、これによって下部流路54が、開口部27の領域29に連結される。このために、連結流路53から下部流路54に至る過程で冷媒が冷却路51の外に漏れることはない。さらに、下部流路54は、四角形の中央部分から、パッケージ基板10の他方側面に向けて平行な2つのラインとして延びる。パッケージ接合材38は、下部流路54の区画と共に、パッケージ基板10と第1のインターポーザ基板20の接合にも寄与する。このために、下部流路54の高さは、はんだ接合部の高さ、即ちパッケージ基板10の上面から第1のインターポーザ基板20の下面までの距離に等しい。
【0026】
ここで、図6に半導体装置の冷却システムを模式的に示す。冷却システム61は、冷媒を加圧して吐出するポンプ62を有し、ポンプ62の吐出口には、配管64として、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)などの樹脂チューブや、銅製の配管などが接続されている。配管64は、半導体装置1の上部流路52の一方の端部に接着剤などを用いて接続される。続いて、半導体装置1の下部流路54の他方の端部には、配管65が接着剤などを用いて接続される。配管65は、放熱部66を経てポンプ62の吸入口に接続される。放熱部66には、例えば、複数の放熱フィン66Aが設けられている。
【0027】
冷却システム61中を循環する冷媒としては、例えばR365mfc(沸点40℃)や、水、エチレングリコールが用いられる。この半導体装置1では、冷却路51は、電子部品16やLSI素子15に冷媒が直接接触しないので、冷媒の絶縁性は考慮する必要がない。このために、冷媒に水を使用することが可能である。
【0028】
次に、半導体装置1に製造方法について説明する。
最初に、図7Aに示す構造を得るまでの工程について説明する。
Si製のパッケージ基板10にドライエッチングによって貫通ビアを形成する。パッケージ基板10の上下面のそれぞれに例えばスパッタ法を用いて導電膜を形成した後、導電膜をパターニングして電極11,12と、流路形成用の下地パターン37を形成する。
【0029】
続いて、図7Bに示す構造を得るまでの工程について説明する。
最初に、下地パターン37の上に、パッケージ接合材38を例えばはんだめっき法によって形成する。これによって、下部流路54の下部が形成される。
続いて、パッケージ基板10の上に、第1のLSI素子15や電子部品16を実装する。第1のLSI素子15や電子部品16は、融点227℃がSn−Cu系や、Sn−Cu
−Ni系のはんだを用いてフリップチップ実装される。さらに、第1のLSI素子15の上に、受熱部材25を配置する。受熱部材25は、溝26がパッケージ接合材38のラインと平行になる向きに設置される。このとき、受熱部材25の一部25Cが第1のLSI素子15の側方に延び、パッケージ接合材38の上面に当接する。
【0030】
さらに、図7Cに示す構造を得るまでの工程について説明する。
まず、パッケージ基板10の上に第1のインターポーザ基板20を実装する。第1のインターポーザ基板20は、Si基板を用いて形成されており、予め貫通ビアと開口部27が例えばドライエッチングによって形成される。また、第1のインターポーザ基板20の下面には、パッケージ基板10と電気的に接続される電極19と、はんだバンプ18とが形成される。第1のインターポーザ基板20の上面には、第2のインターポーザ基板30と電気的に接続される下地パターン21と、上部流路52の下地パターン21とが形成される。下地パターン21は、例えば、スパッタ法やめっき法で形成される。さらに、パッケージ接合材22が下地パターン21と下地パターン21の上に例えばはんだめっき法で形成される。ここでのはんだ材料は,第1のLSI素子15を実装した時のはんだ材料よりも融点の低い材料、例えばSn−Ag−Cu系(融点217℃)を選択する。続いて、第1のLSI素子15の上面に、銅製の受熱部材25を配置する。受熱部材25の厚さは、例えば300μmであり、上部は表面積を拡大するために例えば高さ200μmの溝26が複数形成されている。
【0031】
次に、図1に示す構造を得るまでの工程について説明する。
まず、貫通ビアを有するSi製の第2のインターポーザ基板30の上下面のそれぞれに電極23,31を形成する。さらに、上面の電極31上に電子部品35や第2のLSI素子36を実装する。この後、第2のインターポーザ基板30を第1のインターポーザ基板20に実装する。インターポーザ基板20,30同士の接続には,先のSn−Ag−Cu系材料よりも融点が低いSn−Bi系(融点139℃)の材料を用いる。これによって、上部流路52が形成されると共に、上部、連結、下部流路52,53,54が連結され、冷却路51が完成する。この後、パッケージ基板10が回路配線基板2に実装されると共に、冷却路51に配管64,65を接着剤で接続する。さらに、ヒートシンク40が取り付けられる。
【0032】
次に、冷却路を用いたLSI素子の冷却作用について説明する。
図1に示す半導体装置1を動作させると、第1及び第2のLSI素子15,36が発熱する。第2のLSI素子36の熱は、ヒートシンク40を伝って放熱フィン41から外部に放出される。これに対し、図3に示すように、第1のLSI素子15で発生した熱は、上方に配置された受熱部材25に伝達される。受熱部材25は、冷却路51に面しているので、受熱部材25の熱が冷却路51を流れる冷媒に伝達される。特に、図3に矢印で示すように、溝26を流れる冷媒の熱交換によって、第1のLSI素子15の冷却が促進される。溝26は、上部冷却路52及び下部流路54に平行に配置されているので、冷媒の流れを阻害することはない。そして、受熱部材25から熱を受け取った冷媒は、図2に示す領域29を通って下方に流れ、第3の流路54に流入し、半導体装置1の外に排出される。
【0033】
さらに、冷媒は、図6に示す放熱部66に導かれ、フィン66Aによって冷却された後、ポンプ62に吸入される。ポンプ62で加圧された冷媒は、配管64からび半導体装置1に向けて吐出される。冷媒は、図4に示す半導体装置1の上部流路52に流入し、上部流路52を経て連結流路53に流入する。連結流路53内では、冷媒が上方から下方に向かって流れ、このときに受熱部材25の熱を奪う。以降は、前記の動作が繰り返されることで、第1のLSI素子15が連続して冷却される。
【0034】
以上、説明したように、この実施の形態では、3次元実装される基板10,20,30の隙間を利用して冷却路51を形成したので、装置構成が簡単になる。インターポーザ基板20,30の実装と同時に流路52,54が形成されるので、製造工程を簡略化できる。上部流路52と下部流路54を異なる基板10,20,30間に設けたので、冷却路51のレイアウトの自由度を高められる。
また、上部流路52と下部流路54と、第1のインターポーザ基板20の開口部27を利用して連結したので、上方から下方に冷媒の流れを形成できる。さらに、この流れに面する位置に受熱部材25を配置したので、第1のLSI素子15を効率良く冷却できる。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図8の側面図と、図8のD−D線に沿った断面図である図9に示すように、半導体装置71は、パッケージ基板10上に第1のLSI素子15や電子部品16が実装され、さらに第1のインターポーザ基板20が実装されている。第1のLSI素子15の上面には、受熱部材25Aが取り付けられている。受熱部材25Aは、高さが低い点を除けば、第1の実施の形態の受熱部材25と同様の形状を有し、同様の材料から製造されている。このために、溝26Aは、図1に示す溝26より高さが低い。
【0036】
さらに、受熱部材25Aの上には、多孔質体(ウィック)72が配置されている。受熱部材25A及び多孔質体72は、第1のインターポーザ基板20に形成された開口部27Aに挿入されている。多孔質体72は、開口部27Aの上部から内側延びる延出部分28Aによって受熱部材25Aに押し付けられている。多孔質体72と開口部27Aの間に隙間は形成されていない。従って、受熱部材25が配置されていない領域29上にも多孔質体72が配置されている。
【0037】
第1のインターポーザ基板20上には、パッケージ接合材38を介して第2のインターポーザ基板30が実装されている。第2のインターポーザ基板30には、電子部品35や第2のLSI素子36が実装されている。
【0038】
ここで、図9と、図9のE−E線に沿った断面図である図10に示すように、上部流路52は、第1のインターポーザ基板20と、第1のインターポーザ基板20上のパッケージ接合材38と、第2のインターポーザ基板30とによって主に形成される。連結流路53は、第1のインターポーザ8の開口部27Aと、受熱部材25Aとによって主に区画され、経路中に多孔質体72が配置されている。図5と同様に、下部流路54は、パッケージ基板10と、パッケージ基板10上のパッケージ接合材38と、第1のインターポーザ基板20とによって形成される。
【0039】
多孔質体72は、例えば、セラミック多孔質や焼結金属からなり、冷媒が通流可能な気孔を有する。多孔質体の気孔径は、例えば1μm〜10μmで、体積の40%〜50%の空孔率を有することが好ましい。
【0040】
さらに、図11にシステム構成の概略を示すように、半導体装置71の冷却システム76は、冷媒を通流させる配管64,65が半導体装置71にはんだ材、接着剤などを用いて接続されている。配管65の途中には、放熱部66(凝縮部)が設けられている。放熱部66は、例えば、複数の放熱フィン66Aから形成される。この実施の形態では、後述するように、多孔質体72における毛細管力を利用することによって、ポンプがなくても冷媒を循環させられる。
【0041】
次に、半導体装置71に製造方法について説明する。
最初に、図12Aに示す構造を得るまでの工程について説明する。
パッケージ基板10上には、第1のLSI素子15や電子部品16が、融点227℃のSn−Cu−Ni系のはんだバンプ17を用いてフリップチップ実装される。パッケージ基板10は、貫通ビアや電極23、パッケージ接合材24が予め形成されているものとする。第1のLSI素子15の上面には、受熱部材25Aが熱伝導性グリースなどを用いて取り付けられる。受熱部材25Aの上には、多孔質体72が配置される。多孔質体72には、高さ200μmのアルミナセラミックが用いられる。受熱部材25Aには、溝26Aが形成されているので、多孔質体72は、一部のみが受熱部材25Aに当接する。
【0042】
さらに、図12Bに示す構造を得るまでの工程について説明する。
開口部27Aを有する第1のインターポーザ基板20をパッケージ基板10にはんだバンプ18とパッケージ接合材38を用いて実装する。これによって、連結流路53と下部流路54とがそれぞれ形成される。ここで、第1のインターポーザ基板20の下面には電極19が、上面には電極35及び下地パターン21が予め形成される。また、下地パターン21上には、パッケージ接合材22がはんだめっき法で形成される。はんだ材料には、例えばSn−Ag−Cu系材料よりも融点が低い、Sn−Ag−Cu系(融点217℃)が用いられる。続いて、第1のLSI素子15の上面に、銅製の受熱部材25Aを配置する。受熱部材25Aの厚さは、例えば200μmであり、上部は表面積を拡大するために例えば高さ100μmの溝26が複数形成されている。さらに、受熱部材25Aの上にアルミナセラミックスからなる多孔質体72を配置する。多孔質体72の厚さは、例えば200μmとする。
【0043】
続いて、図9に示す構造を得るまでの工程について説明する。
第2のインターポーザ基板30の上下面のそれぞれに電極23,31を形成する。さらに、上面の電極31上に電子部品35や第2のLSI素子36を実装する。この後、第2のインターポーザ基板30を第1のインターポーザ基板20に実装する。インターポーザ基板20,30同士の接続には,先のSn−Ag−Cu系材料よりも融点が低いSn−In系(融点198℃)の材料を用いる。これによって、上部流路52が形成されると共に、上部、連結、下部流路52,53,54が連結され、冷却路51が完成する。この後、パッケージ基板10が回路配線基板2に実装されると共に、冷却路51に配管64,65を接着剤で接続する。さらに、ヒートシンク40が取り付けられる。
【0044】
この後、上部及び下部流路52,54は,例えばCu製の配管64,65に接着剤を用いて接続される。冷媒としては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(R365mfc;沸点40℃)が充填される。
【0045】
次に、冷却路51を用いた第1のLSI素子15の冷却作用について説明する。
第1のLSI素子15が発熱すると、熱が受熱部材25Aを介して多孔質体72の下面に伝達される。ここで、冷却路51の上部流路52内の冷媒が多孔質体72内に吸収され、多孔質体72の下部に、第1のLSI素子15からの熱が伝わることで冷媒が蒸発する。
【0046】
このとき、多孔質体72は毛細管力によって逆止弁として働くので、冷媒の逆流が阻止される。これによって、連結流路53内の流体(冷媒)のポンピング力が生じ、多孔質体72内で相変化によって発生した気相の冷媒は、連結流路53から、下方の下部流路54を通って、半導体装置71の外に排出される。排出された気相の冷媒は、図11に示す放熱部66での熱交換により液化された後、半導体装置71に戻り、多孔質体72に吸引される。半導体装置71内で、冷媒は上部流路52から連結流路53に流入し、多孔質体72において再び相変化し、気化熱を奪われる。以上が繰り返されることによって、第1の
LSI素子15が連続して冷却される。
【0047】
以上、説明したように、この実施の形態では、多孔質体72を連結流路53内に設けることで、第1のLSI素子15の冷却が行える。多孔質体72の上下の領域の圧力差によって冷媒の流れを形成できるので、冷却システム76にポンプが不要になる。冷却システム81にポンプを設けることも可能である。
【0048】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
図13に示す側面図を示すように、半導体装置81は、パッケージ基板10の上に、電子部品16、第1のLSI素子15、第2のインターポーザ基板30が実装されている。第2のインターポーザ基板30は、パッケージ基板10の電極12上に形成されたパッケージ接合材82を用いて実装されている。第1のLSI素子15の接合部は、アンダーフィル材83で覆われている。この半導体装置81では、第1のLSI素子15を囲むように配置されたインターポーザ基板10,20と、パッケージ接合材82によって冷媒の冷却路85が形成されている。冷却路85を用いて、例えば、図6に示す冷却システム61を構築する。図13では半導体装置81内の冷却路形成に使用する基板の数は、2枚であるが、第1の実施の形態に示すように冷却路を3枚の基板を用いて形成した場合と同様の作用及び効果が得られる。このように、この実施の形態では、複数の基板10,20,30のうち、2つの基板10,20,30を接合するのと同時に流路51の少なくとも一部を形成することができる。
【0049】
さらに、前記各実施の形態において、半導体装置は、パッケージ基板10上の複数のLSI素子のそれぞれに対して、複数の冷却路51を形成しても良い。また、パッケージ基板10上の複数のLSI素子に対して、1つの冷却路51を形成しても良い。
また、下部流路54を第1のインターポーザ基板20と第2のインターポーザ基板の間に形成しても良い。この場合には、上部、連結、下部の3つの流路52,53,54が同時に形成される。
【0050】
また、パッケージ基板10、インターポーザ基板20,30の母材は、石英ガラスでも良い。基板10,20,30同士の電気的な接続や、流路51の形成には、パッケージ接合材22,37を印刷法によって形成しても良い。
多孔質体72は、Ni焼結金属を使用しても良い。冷媒は、エタノール等の有機溶媒や、ブタン、ペンタン等の炭化水素系冷媒でも良い。
受熱部材27を配置せずに、第1のLSI素子15を連結流路52に面して配置しても良い。
【0051】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0052】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) 第1の基板と、前記第1の基板上に実装される電子部品と、前記第1の基板上に実装される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板によって区画され、前記第1の基板の外端部まで導出された流路と、前記第1の基板上に実装された前記電子部品を冷却する冷媒が流れる前記流路を有する冷却路と、を含む半導体装置。
(付記2) 前記第2の基板上に実装される第3の基板をさらに含み、前記冷却路は、前
記第2の基板と前記第3の基板を接続する第2の接合材、前記第2の基板、及び前記第3の基板で区画された第1の流路と、前記第2の基板において、前記電子部品の上方に相当する位置に形成され、冷媒が流れる貫通孔を含み、前記第1の流路に連結される第2の流路と、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する前記第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板で区画され、かつ前記第2の流路に連結されると共に冷媒が流れる第3の流路と、を含むことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3) 前記電子部品には溝が形成された受熱部材が取り付けられおり、前記受熱部材の溝が前記冷却路に配置されていることを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置。
(付記4) 前記受熱部材上で、かつ前記第2の流路内に多孔質体を配置したことを特徴とする付記2又は付記3に記載の半導体装置。
(付記5) 第1の基板上に電子部品を実装する工程と、前記第1の基板上に接合材によるパターンを形成する工程と、前記接合材を用いて前記第1の基板上に第2の基板を接合する工程と、を含み、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材と、前記第1の基板と、前記第2の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる冷却路を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記6) 前記第2の基板は、前記電子部品の実装位置に併せて貫通孔が形成されており、前記第1の基板上に第2の基板を接合する工程は、前記電子部品と冷媒が熱交換可能な流路を形成する工程を含むことを特徴とする付記5に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7) 前記第2の基板上に第3の基板を接合する工程を有し、前記第3の基板を接合する工程は、前記第2の基板と前記第3の基板を接続する第2の接合材と、前記第2の基板と、前記第3の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる流路を形成する工程を含むことを特徴とする付記5又は付記6に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8) 前記貫通孔内に多孔質を配置する工程を含む付記6又は付記7に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 複数の基板のうち、下方に配置される前記基板の少なくとも一つに電子部品を実装する工程と、複数の基板のうちの2つの基板を接合材によって接合すると同時に前記電子部品を冷却する冷媒が流れる流路を形成する工程を有する半導体装置の製造方法。(付記10) 複数の基板のうちの2つの基板と、前記2つの基板を接合する接合材とによって区画され、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる流路を有する半導体装置。
【符号の説明】
【0053】
1 シリコン基板
10 パッケージ基板(第1の基板)
15 第1のLSI素子(電子部品)
20 第1のインターポーザ基板(第2の基板)
22 パッケージ接合材(第2の接合材)
25,25A 受熱部材
26,26A 溝
27,27A 開口部
30 第2のインターポーザ基板(第3の基板)
38 パッケージ接合材(第1の接合材)
51 冷却路
52 第1の流路
53 第2の流路
54 第3の流路
72 多孔質体
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータなどの電子装置では、LSI(Large Scale Integration;半導体集積回路)素子を有する半導体装置を有する。一般的に、LSI素子は、処理に伴って熱を生じるので、LSI素子を冷却して熱を取り除く必要がある。LSI素子を冷却するときは、例えば回路配線基板に実装したLSI素子の上面を放熱面に設定し、放熱面にヒートスプレッダーやヒートシンクを熱的に接触させる。さらに、ファンを用いてヒートスプレッダーやヒートシンクに付設するフィンに送風することで、LSI素子の熱を大気に放出させる。
【0003】
ここで、LSI素子の処理が高速化したりすると、LSI素子の発熱量が増加する。この場合にLSI素子を十分に冷却するためには、ヒートスプレッダーやヒートシンクを大型化したり、形状を複雑にしたりする必要があり、電子装置の部品設計や実装設計に大きな影響を与える。
【0004】
また、近年では、半導体装置の高性能化に対応するために、LSI素子やパッケージ基板を積層するような実装、いわゆる3次元実装が提案されている。3次元実装によって製造された半導体装置では、例えば、積層した複数の基板のそれぞれにLSI素子が実装されており、一番上の基板上に放熱フィンが設けられる。しかしながら、この構成では、最上部のLSI素子は放熱フィンで排熱できるが、下層のLSI素子は、放熱フィンから離れて配置されているので、熱を十分に放出させることが難しかった。従って、下層のLSI素子を冷却することが困難であった。
【0005】
そこで、従来では、パッケージ基板上に3次元に積層されたLSI素子のそれぞれの基板の裏面に複数の溝を形成してヒートパイプを設置し、ヒートパイプによる熱移動によってLSI素子を冷却することが図られている。
また、従来では、流路が複数形成されたヒートシンクをLSI素子のそれぞれに取り付け、流路に冷媒を流すことでLSI素子を冷却している。各LSI素子の上にヒートシンクが取り付けられるので、LSI素子間は、パッケージ基板の外周部分に設けられたソケットを介して電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−168255
【特許文献2】特開2002−151640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LSI素子の基板を利用してヒートパイプを形成するケースでは、LSI素子間に埋設されるヒートパイプによって、近接するLSI素子の間の相互の電気的接続が妨げられるため、LSIパッケージの高速化の障害となる。また、LSI素子の製造方法が複雑になってコストが増大し、LSI素子および配線基板の設計自由度が低下することが問題となる。
また、冷媒の流路を有するヒートシンクをLSI素子のそれぞれに取り付けるケースでは、LSI素子のサイズに合わせたヒートシンク内に冷媒の流路を形成する必要があるの
で、製造工程が複雑化する。さらに、LSI素子から出力された信号は、パッケージ基板外周部にあるソケットを介して他の層のLSI素子に伝達されるので、信号遅延が生じ易く、電子機器の処理の高速化が困難になる。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、積層構造を有する半導体装置において、LSI素子の熱を効率良く冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、第1の基板と、前記第1の基板上に実装される電子部品と、前記第1の基板上に実装される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板によって区画され、前記第1の基板の外端部まで延びる流路と、前記第1の基板上に実装された前記電子部品を冷却する冷媒が流れる前記流路を有する冷却路と、を含む半導体装置が提供される。
【0009】
また、実施形態の別の観点によれば、第1の基板上に電子部品を実装する工程と、前記第1の基板上に接合材による流路パターンを形成する工程と、を含み、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材と、前記第1の基板と、前記第2の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる冷却路を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上下に配置された基板の間に形成された冷却路に冷媒を流すことで、電子部品の熱を半導体装置の外に効率良く排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿った平面図であって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電子部品と受熱部材の一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1のB−B線に沿った断面図であって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の第1の冷却路の一例を示す図である。
【図5】図5は、図1のC−C線に沿った断面図であって、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の第3の冷却路の一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置と冷却システムの一例を示す図である。
【図7A】図7Aは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その1)
【図7B】図7Bは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その2)
【図7C】図7Cは、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その3)
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【図9】図9は、図8のD−D線に沿った断面図であって、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。
【図10】図10は、図1のE−E線に沿った断面図であって、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の第1の冷却路の一例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置と冷却システムの一例を示す図である。
【図12A】図12Aは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その1)
【図12B】図12Bは、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を説明する図である。(その2)
【図13】図13は、本発明の変形例に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型例及び説明のためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0013】
図1に半導体装置の断面図を示す。さらに、図2に図1のA−A線に沿った側部断面図を示す。半導体装置1は、回路配線基板2を有し、回路配線基板2上にパッケージ基板10(第1の基板)がはんだバンプ4を用いて実装されている。パッケージ基板10上には、第1のLSI素子15(電子部品)や、その他の電子部品16、第1のインターポーザ基板20(第2の基板)がはんだバンプ17,18を用いて実装されている。第1のインターポーザ基板20上には、第2のインターポーザ基板30(第3の基板)がパッケージ接合材22を用いて実装されている。第2のインターポーザ基板30には、電子部品35及び第2のLSI素子36がはんだバンプ32を用いて実装されている。はんだバンプ4,17,18,19,32は、例えば格子状に配列されており、BGA(Ball Grid Array)又はBGA端子と呼ばれることもある。はんだ材料には、例えば、Sn−Agが用いられる。さらに、ヒートシンク40によってパッケージ基板10及びインターポーザ基板20,30、その他の部品15,16,35,36が覆われている。
【0014】
回路配線基板2は、例えば、樹脂に配線や電極を印刷したプリント基板などが用いられる。回路配線基板2の上面には、複数の電極3が配列されており、各電極3にはんだバンプ4が1つずつ接合されている。
パッケージ基板10の下面には、複数の電極5が配列されており、各電極5にはんだバンプ4が1つずつ接合されている。図2に示すように、パッケージ基板10の上面には、複数の電極11,12と、下地パターン37が形成されている。各電極11,12の上にははんだバンプ17,18が1つずつ接合されている。下地パターン37の上には、パッケージ接合材38(第1の接合材)が接合されている。ここで、下面の電極5と上面の電極11,12の少なくとも一部は、例えば配線や貫通ビア(TSV;through-silicon via)によって電気的に接続されている。
【0015】
その他の電子部品16としては、例えば、コンデンサや抵抗がある。電子部品16は、下面の電極16Aにはんだバンプ17が接合されており、はんだバンプ17を介して上下に対向配置された電極11,16Aが電気的に接続される。同様に、第1のLSI素子15は、下面の電極15Aにはんだバンプ17が接合されており、はんだバンプ17を介して上下に対向配置された電極11,15Aが電気的に接続される。さらに、第1のインターポーザ基板20の下面には、電極19が配列されている。電極19にはんだバンプ18を接合することで、はんだバンプ18を介して上下に配列された電極12,19が電気的に接続される。
【0016】
ここで、図2と、図3の斜視図に示すように、第1のLSI素子15の上面には、受熱部材25が取り付けられている。受熱部材25の上部は、複数の溝26が並列に形成されることで放熱フィンを形成している。さらに、受熱部材25は、溝26の一方の端部側が第1のLSI素子15を越えて延び、第1のLSI素子15の側方に垂れ下がっている。
このような受熱部材25は、熱伝導性が良好な材料、例えば、銅やアルミニウムを用いて製造される。ここで、第1のLSI素子15の冷却を効率化する観点からは、受熱部材25と第1のLSI素子15の接触面積は大きいことが好ましい。このために、受熱部材25の下面の大きさは、第1のLSI素子15の上面の面積以上になっている。しかしながら、受熱部材25の下面の大きさは、第1のLSI素子15より小さくても良い。
【0017】
図1及び図2に示すように、第1のインターポーザ基板20の上面には、多数の下地パターン21が形成されている。下地パターン21は、例えば、基板内部に形成された不図示の配線や貫通ビアによって、下面に形成された電極19の少なくとも一部に電気的に接続されている。さらに、第1のインターポーザ基板20には、開口部27(貫通孔)が第1のLSI素子15の実装位置に併せて形成されている。
【0018】
開口部27の上部は、受熱部材25を上から抑えるようにひさし状に延びており、延出部分28によって開口部27の大きさが減少させられている。図2に示すように、延出部分28より下方の領域では、開口部27の平面形状は、受熱部材25の平面形状に加えて一部を延出させた領域29を加えて形状になっており、この領域29においては、開口部27の側面と、受熱部材25の側面との間にスペースが形成されている。受熱部材25の他の3つの側面は、開口部27に密着している。ここで、領域29は、パッケージ基板10上のパッケージ接合材38によって形成されたパターンの上方に配置されている。
【0019】
ここで、第1のLSI素子15及び電子部品16は、第1のインターポーザ基板20の下面以下に配置されている。受熱部材25は、少なくとも一部が第1のインターポーザ基板20の開口部27内に収容されている。これは、パッケージ基板10の上面から第1のインターポーザ基板20の実装高さが、第1のLSI素子15及び電子部品16の実装時のそれぞれの上面の高さ以上であるためである。
【0020】
第1のインターポーザ基板20上の下地パターン21には、パッケージ接合材22(第2の接合材)が接合されている。パッケージ接合材22は、はんだ材料、例えばSn−Agはんだめっき、はんだペーストや、導電性ペースト、例えばAgペーストが用いられる。
【0021】
また、第2のインターポーザ基板30は、下面に電極23が多数形成されている。これら電極23は、パッケージ接合材22を介して第1のインターポーザ基板20の下地パターン21に電気的に接続される。電極23は第2のインターポーザ基板30に形成された不図示の配線や貫通ビアによって、上面に形成された電極31の少なくとも一部に電気的に接続されている。第2のインターポーザ基板30の上面には、電子部品35や、第2のLSI素子36がはんだバンプ32を用いて電極31上に実装されている。
【0022】
図1に示すように、ヒートシンク40は、回路配線基板2に固定され、内部に各基板10,20,30やLSI素子15,36などを収容する箱形状を有する。ヒートシンク40の上蓋40Aの下面には、第2のLSI素子36の上面が熱伝導性グリースなどを介して熱的に接触させられる。上蓋40Aの上面からは複数の放熱フィン41が上方に伸びている。
【0023】
ここで、半導体装置1には、第1のLSI素子15を冷却する冷却路51が形成されている。図2と、図2のB−B線に沿った断面図である図4に示すように、冷却路51は、第1のインターポーザ基板20と第2のインターポーザ基板30との間に形成される上部流路52(第1の流路)を有する。上部流路52は、第1のインターポーザ基板20上に形成されたパッケージ接合材22によって主に区画されている。パッケージ接合材22は、第1のインターポーザ基板20の一方の側面から中央の開口部27に向けて平行な2つ
のラインとして形成され、第1のインターポーザ基板20の中央付近で開口部27を囲むように四角形に閉じている。パッケージ接合材38は、上部流路52の区画と共に、2つのインターポーザ基板20,15の接合にも寄与する。このために、上部流路52の高さは、接合部の高さ、即ち第1のインターポーザ基板20の上面から第2のインターポーザ基板30の下面までの距離に等しい。
【0024】
また、冷却路51は、連結流路53(第2の流路)を有する。連結流路53は、上部流路52に連結され、第2のインターポーザ基板30と、開口部27と、受熱部材25とを利用して形成されている。このような連結流路53は、第1のインターポーザ基板20の上方から、開口部27を通って第1のインターポーザ基板20の下側へと導く流路であり、この経路中において冷媒が第1のLSI素子15と熱的に接続される。
【0025】
さらに、図2と、図2のC−C線に沿った断面図である図5に示すように、冷却路51は、下部流路54(第3の流路)を有する。下部流路54は、連結流路53に連結され、パッケージ基板10上に形成されたパッケージ接合材38によって主に区画され、パッケージ基板10の外端部まで延びる流路である。パッケージ接合材38は、パッケージ基板10の中央部分において第1のLSI素子15の側方の領域を四角形に囲むと共に、第1のLSI素子15から突出する受熱部材25の下面に接続され、これによって下部流路54が、開口部27の領域29に連結される。このために、連結流路53から下部流路54に至る過程で冷媒が冷却路51の外に漏れることはない。さらに、下部流路54は、四角形の中央部分から、パッケージ基板10の他方側面に向けて平行な2つのラインとして延びる。パッケージ接合材38は、下部流路54の区画と共に、パッケージ基板10と第1のインターポーザ基板20の接合にも寄与する。このために、下部流路54の高さは、はんだ接合部の高さ、即ちパッケージ基板10の上面から第1のインターポーザ基板20の下面までの距離に等しい。
【0026】
ここで、図6に半導体装置の冷却システムを模式的に示す。冷却システム61は、冷媒を加圧して吐出するポンプ62を有し、ポンプ62の吐出口には、配管64として、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene)などの樹脂チューブや、銅製の配管などが接続されている。配管64は、半導体装置1の上部流路52の一方の端部に接着剤などを用いて接続される。続いて、半導体装置1の下部流路54の他方の端部には、配管65が接着剤などを用いて接続される。配管65は、放熱部66を経てポンプ62の吸入口に接続される。放熱部66には、例えば、複数の放熱フィン66Aが設けられている。
【0027】
冷却システム61中を循環する冷媒としては、例えばR365mfc(沸点40℃)や、水、エチレングリコールが用いられる。この半導体装置1では、冷却路51は、電子部品16やLSI素子15に冷媒が直接接触しないので、冷媒の絶縁性は考慮する必要がない。このために、冷媒に水を使用することが可能である。
【0028】
次に、半導体装置1に製造方法について説明する。
最初に、図7Aに示す構造を得るまでの工程について説明する。
Si製のパッケージ基板10にドライエッチングによって貫通ビアを形成する。パッケージ基板10の上下面のそれぞれに例えばスパッタ法を用いて導電膜を形成した後、導電膜をパターニングして電極11,12と、流路形成用の下地パターン37を形成する。
【0029】
続いて、図7Bに示す構造を得るまでの工程について説明する。
最初に、下地パターン37の上に、パッケージ接合材38を例えばはんだめっき法によって形成する。これによって、下部流路54の下部が形成される。
続いて、パッケージ基板10の上に、第1のLSI素子15や電子部品16を実装する。第1のLSI素子15や電子部品16は、融点227℃がSn−Cu系や、Sn−Cu
−Ni系のはんだを用いてフリップチップ実装される。さらに、第1のLSI素子15の上に、受熱部材25を配置する。受熱部材25は、溝26がパッケージ接合材38のラインと平行になる向きに設置される。このとき、受熱部材25の一部25Cが第1のLSI素子15の側方に延び、パッケージ接合材38の上面に当接する。
【0030】
さらに、図7Cに示す構造を得るまでの工程について説明する。
まず、パッケージ基板10の上に第1のインターポーザ基板20を実装する。第1のインターポーザ基板20は、Si基板を用いて形成されており、予め貫通ビアと開口部27が例えばドライエッチングによって形成される。また、第1のインターポーザ基板20の下面には、パッケージ基板10と電気的に接続される電極19と、はんだバンプ18とが形成される。第1のインターポーザ基板20の上面には、第2のインターポーザ基板30と電気的に接続される下地パターン21と、上部流路52の下地パターン21とが形成される。下地パターン21は、例えば、スパッタ法やめっき法で形成される。さらに、パッケージ接合材22が下地パターン21と下地パターン21の上に例えばはんだめっき法で形成される。ここでのはんだ材料は,第1のLSI素子15を実装した時のはんだ材料よりも融点の低い材料、例えばSn−Ag−Cu系(融点217℃)を選択する。続いて、第1のLSI素子15の上面に、銅製の受熱部材25を配置する。受熱部材25の厚さは、例えば300μmであり、上部は表面積を拡大するために例えば高さ200μmの溝26が複数形成されている。
【0031】
次に、図1に示す構造を得るまでの工程について説明する。
まず、貫通ビアを有するSi製の第2のインターポーザ基板30の上下面のそれぞれに電極23,31を形成する。さらに、上面の電極31上に電子部品35や第2のLSI素子36を実装する。この後、第2のインターポーザ基板30を第1のインターポーザ基板20に実装する。インターポーザ基板20,30同士の接続には,先のSn−Ag−Cu系材料よりも融点が低いSn−Bi系(融点139℃)の材料を用いる。これによって、上部流路52が形成されると共に、上部、連結、下部流路52,53,54が連結され、冷却路51が完成する。この後、パッケージ基板10が回路配線基板2に実装されると共に、冷却路51に配管64,65を接着剤で接続する。さらに、ヒートシンク40が取り付けられる。
【0032】
次に、冷却路を用いたLSI素子の冷却作用について説明する。
図1に示す半導体装置1を動作させると、第1及び第2のLSI素子15,36が発熱する。第2のLSI素子36の熱は、ヒートシンク40を伝って放熱フィン41から外部に放出される。これに対し、図3に示すように、第1のLSI素子15で発生した熱は、上方に配置された受熱部材25に伝達される。受熱部材25は、冷却路51に面しているので、受熱部材25の熱が冷却路51を流れる冷媒に伝達される。特に、図3に矢印で示すように、溝26を流れる冷媒の熱交換によって、第1のLSI素子15の冷却が促進される。溝26は、上部冷却路52及び下部流路54に平行に配置されているので、冷媒の流れを阻害することはない。そして、受熱部材25から熱を受け取った冷媒は、図2に示す領域29を通って下方に流れ、第3の流路54に流入し、半導体装置1の外に排出される。
【0033】
さらに、冷媒は、図6に示す放熱部66に導かれ、フィン66Aによって冷却された後、ポンプ62に吸入される。ポンプ62で加圧された冷媒は、配管64からび半導体装置1に向けて吐出される。冷媒は、図4に示す半導体装置1の上部流路52に流入し、上部流路52を経て連結流路53に流入する。連結流路53内では、冷媒が上方から下方に向かって流れ、このときに受熱部材25の熱を奪う。以降は、前記の動作が繰り返されることで、第1のLSI素子15が連続して冷却される。
【0034】
以上、説明したように、この実施の形態では、3次元実装される基板10,20,30の隙間を利用して冷却路51を形成したので、装置構成が簡単になる。インターポーザ基板20,30の実装と同時に流路52,54が形成されるので、製造工程を簡略化できる。上部流路52と下部流路54を異なる基板10,20,30間に設けたので、冷却路51のレイアウトの自由度を高められる。
また、上部流路52と下部流路54と、第1のインターポーザ基板20の開口部27を利用して連結したので、上方から下方に冷媒の流れを形成できる。さらに、この流れに面する位置に受熱部材25を配置したので、第1のLSI素子15を効率良く冷却できる。
【0035】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態と同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、第1の実施の形態と重複する説明は省略する。
図8の側面図と、図8のD−D線に沿った断面図である図9に示すように、半導体装置71は、パッケージ基板10上に第1のLSI素子15や電子部品16が実装され、さらに第1のインターポーザ基板20が実装されている。第1のLSI素子15の上面には、受熱部材25Aが取り付けられている。受熱部材25Aは、高さが低い点を除けば、第1の実施の形態の受熱部材25と同様の形状を有し、同様の材料から製造されている。このために、溝26Aは、図1に示す溝26より高さが低い。
【0036】
さらに、受熱部材25Aの上には、多孔質体(ウィック)72が配置されている。受熱部材25A及び多孔質体72は、第1のインターポーザ基板20に形成された開口部27Aに挿入されている。多孔質体72は、開口部27Aの上部から内側延びる延出部分28Aによって受熱部材25Aに押し付けられている。多孔質体72と開口部27Aの間に隙間は形成されていない。従って、受熱部材25が配置されていない領域29上にも多孔質体72が配置されている。
【0037】
第1のインターポーザ基板20上には、パッケージ接合材38を介して第2のインターポーザ基板30が実装されている。第2のインターポーザ基板30には、電子部品35や第2のLSI素子36が実装されている。
【0038】
ここで、図9と、図9のE−E線に沿った断面図である図10に示すように、上部流路52は、第1のインターポーザ基板20と、第1のインターポーザ基板20上のパッケージ接合材38と、第2のインターポーザ基板30とによって主に形成される。連結流路53は、第1のインターポーザ8の開口部27Aと、受熱部材25Aとによって主に区画され、経路中に多孔質体72が配置されている。図5と同様に、下部流路54は、パッケージ基板10と、パッケージ基板10上のパッケージ接合材38と、第1のインターポーザ基板20とによって形成される。
【0039】
多孔質体72は、例えば、セラミック多孔質や焼結金属からなり、冷媒が通流可能な気孔を有する。多孔質体の気孔径は、例えば1μm〜10μmで、体積の40%〜50%の空孔率を有することが好ましい。
【0040】
さらに、図11にシステム構成の概略を示すように、半導体装置71の冷却システム76は、冷媒を通流させる配管64,65が半導体装置71にはんだ材、接着剤などを用いて接続されている。配管65の途中には、放熱部66(凝縮部)が設けられている。放熱部66は、例えば、複数の放熱フィン66Aから形成される。この実施の形態では、後述するように、多孔質体72における毛細管力を利用することによって、ポンプがなくても冷媒を循環させられる。
【0041】
次に、半導体装置71に製造方法について説明する。
最初に、図12Aに示す構造を得るまでの工程について説明する。
パッケージ基板10上には、第1のLSI素子15や電子部品16が、融点227℃のSn−Cu−Ni系のはんだバンプ17を用いてフリップチップ実装される。パッケージ基板10は、貫通ビアや電極23、パッケージ接合材24が予め形成されているものとする。第1のLSI素子15の上面には、受熱部材25Aが熱伝導性グリースなどを用いて取り付けられる。受熱部材25Aの上には、多孔質体72が配置される。多孔質体72には、高さ200μmのアルミナセラミックが用いられる。受熱部材25Aには、溝26Aが形成されているので、多孔質体72は、一部のみが受熱部材25Aに当接する。
【0042】
さらに、図12Bに示す構造を得るまでの工程について説明する。
開口部27Aを有する第1のインターポーザ基板20をパッケージ基板10にはんだバンプ18とパッケージ接合材38を用いて実装する。これによって、連結流路53と下部流路54とがそれぞれ形成される。ここで、第1のインターポーザ基板20の下面には電極19が、上面には電極35及び下地パターン21が予め形成される。また、下地パターン21上には、パッケージ接合材22がはんだめっき法で形成される。はんだ材料には、例えばSn−Ag−Cu系材料よりも融点が低い、Sn−Ag−Cu系(融点217℃)が用いられる。続いて、第1のLSI素子15の上面に、銅製の受熱部材25Aを配置する。受熱部材25Aの厚さは、例えば200μmであり、上部は表面積を拡大するために例えば高さ100μmの溝26が複数形成されている。さらに、受熱部材25Aの上にアルミナセラミックスからなる多孔質体72を配置する。多孔質体72の厚さは、例えば200μmとする。
【0043】
続いて、図9に示す構造を得るまでの工程について説明する。
第2のインターポーザ基板30の上下面のそれぞれに電極23,31を形成する。さらに、上面の電極31上に電子部品35や第2のLSI素子36を実装する。この後、第2のインターポーザ基板30を第1のインターポーザ基板20に実装する。インターポーザ基板20,30同士の接続には,先のSn−Ag−Cu系材料よりも融点が低いSn−In系(融点198℃)の材料を用いる。これによって、上部流路52が形成されると共に、上部、連結、下部流路52,53,54が連結され、冷却路51が完成する。この後、パッケージ基板10が回路配線基板2に実装されると共に、冷却路51に配管64,65を接着剤で接続する。さらに、ヒートシンク40が取り付けられる。
【0044】
この後、上部及び下部流路52,54は,例えばCu製の配管64,65に接着剤を用いて接続される。冷媒としては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(R365mfc;沸点40℃)が充填される。
【0045】
次に、冷却路51を用いた第1のLSI素子15の冷却作用について説明する。
第1のLSI素子15が発熱すると、熱が受熱部材25Aを介して多孔質体72の下面に伝達される。ここで、冷却路51の上部流路52内の冷媒が多孔質体72内に吸収され、多孔質体72の下部に、第1のLSI素子15からの熱が伝わることで冷媒が蒸発する。
【0046】
このとき、多孔質体72は毛細管力によって逆止弁として働くので、冷媒の逆流が阻止される。これによって、連結流路53内の流体(冷媒)のポンピング力が生じ、多孔質体72内で相変化によって発生した気相の冷媒は、連結流路53から、下方の下部流路54を通って、半導体装置71の外に排出される。排出された気相の冷媒は、図11に示す放熱部66での熱交換により液化された後、半導体装置71に戻り、多孔質体72に吸引される。半導体装置71内で、冷媒は上部流路52から連結流路53に流入し、多孔質体72において再び相変化し、気化熱を奪われる。以上が繰り返されることによって、第1の
LSI素子15が連続して冷却される。
【0047】
以上、説明したように、この実施の形態では、多孔質体72を連結流路53内に設けることで、第1のLSI素子15の冷却が行える。多孔質体72の上下の領域の圧力差によって冷媒の流れを形成できるので、冷却システム76にポンプが不要になる。冷却システム81にポンプを設けることも可能である。
【0048】
ここで、この実施の形態の変形例について説明する。
図13に示す側面図を示すように、半導体装置81は、パッケージ基板10の上に、電子部品16、第1のLSI素子15、第2のインターポーザ基板30が実装されている。第2のインターポーザ基板30は、パッケージ基板10の電極12上に形成されたパッケージ接合材82を用いて実装されている。第1のLSI素子15の接合部は、アンダーフィル材83で覆われている。この半導体装置81では、第1のLSI素子15を囲むように配置されたインターポーザ基板10,20と、パッケージ接合材82によって冷媒の冷却路85が形成されている。冷却路85を用いて、例えば、図6に示す冷却システム61を構築する。図13では半導体装置81内の冷却路形成に使用する基板の数は、2枚であるが、第1の実施の形態に示すように冷却路を3枚の基板を用いて形成した場合と同様の作用及び効果が得られる。このように、この実施の形態では、複数の基板10,20,30のうち、2つの基板10,20,30を接合するのと同時に流路51の少なくとも一部を形成することができる。
【0049】
さらに、前記各実施の形態において、半導体装置は、パッケージ基板10上の複数のLSI素子のそれぞれに対して、複数の冷却路51を形成しても良い。また、パッケージ基板10上の複数のLSI素子に対して、1つの冷却路51を形成しても良い。
また、下部流路54を第1のインターポーザ基板20と第2のインターポーザ基板の間に形成しても良い。この場合には、上部、連結、下部の3つの流路52,53,54が同時に形成される。
【0050】
また、パッケージ基板10、インターポーザ基板20,30の母材は、石英ガラスでも良い。基板10,20,30同士の電気的な接続や、流路51の形成には、パッケージ接合材22,37を印刷法によって形成しても良い。
多孔質体72は、Ni焼結金属を使用しても良い。冷媒は、エタノール等の有機溶媒や、ブタン、ペンタン等の炭化水素系冷媒でも良い。
受熱部材27を配置せずに、第1のLSI素子15を連結流路52に面して配置しても良い。
【0051】
ここで挙げた全ての例及び条件的表現は、発明者が技術促進に貢献した発明及び概念を読者が理解するのを助けるためのものであり、ここで具体的に挙げたそのような例及び条件に限定することなく解釈するものであり、また、明細書におけるそのような例の編成は本発明の優劣を示すこととは関係ない。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、それに対して種々の変更、置換及び変形を施すことができる。
【0052】
以下に、前記の実施の形態の特徴を付記する。
(付記1) 第1の基板と、前記第1の基板上に実装される電子部品と、前記第1の基板上に実装される第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板によって区画され、前記第1の基板の外端部まで導出された流路と、前記第1の基板上に実装された前記電子部品を冷却する冷媒が流れる前記流路を有する冷却路と、を含む半導体装置。
(付記2) 前記第2の基板上に実装される第3の基板をさらに含み、前記冷却路は、前
記第2の基板と前記第3の基板を接続する第2の接合材、前記第2の基板、及び前記第3の基板で区画された第1の流路と、前記第2の基板において、前記電子部品の上方に相当する位置に形成され、冷媒が流れる貫通孔を含み、前記第1の流路に連結される第2の流路と、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する前記第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板で区画され、かつ前記第2の流路に連結されると共に冷媒が流れる第3の流路と、を含むことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3) 前記電子部品には溝が形成された受熱部材が取り付けられおり、前記受熱部材の溝が前記冷却路に配置されていることを特徴とする付記1又は付記2に記載の半導体装置。
(付記4) 前記受熱部材上で、かつ前記第2の流路内に多孔質体を配置したことを特徴とする付記2又は付記3に記載の半導体装置。
(付記5) 第1の基板上に電子部品を実装する工程と、前記第1の基板上に接合材によるパターンを形成する工程と、前記接合材を用いて前記第1の基板上に第2の基板を接合する工程と、を含み、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材と、前記第1の基板と、前記第2の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる冷却路を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記6) 前記第2の基板は、前記電子部品の実装位置に併せて貫通孔が形成されており、前記第1の基板上に第2の基板を接合する工程は、前記電子部品と冷媒が熱交換可能な流路を形成する工程を含むことを特徴とする付記5に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7) 前記第2の基板上に第3の基板を接合する工程を有し、前記第3の基板を接合する工程は、前記第2の基板と前記第3の基板を接続する第2の接合材と、前記第2の基板と、前記第3の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる流路を形成する工程を含むことを特徴とする付記5又は付記6に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8) 前記貫通孔内に多孔質を配置する工程を含む付記6又は付記7に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9) 複数の基板のうち、下方に配置される前記基板の少なくとも一つに電子部品を実装する工程と、複数の基板のうちの2つの基板を接合材によって接合すると同時に前記電子部品を冷却する冷媒が流れる流路を形成する工程を有する半導体装置の製造方法。(付記10) 複数の基板のうちの2つの基板と、前記2つの基板を接合する接合材とによって区画され、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる流路を有する半導体装置。
【符号の説明】
【0053】
1 シリコン基板
10 パッケージ基板(第1の基板)
15 第1のLSI素子(電子部品)
20 第1のインターポーザ基板(第2の基板)
22 パッケージ接合材(第2の接合材)
25,25A 受熱部材
26,26A 溝
27,27A 開口部
30 第2のインターポーザ基板(第3の基板)
38 パッケージ接合材(第1の接合材)
51 冷却路
52 第1の流路
53 第2の流路
54 第3の流路
72 多孔質体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上に実装される電子部品と、
前記第1の基板上に実装される第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板によって区画され、前記第1の基板の外端部まで延びる流路と、
前記第1の基板上に実装された前記電子部品を冷却する冷媒が流れる前記流路を有する冷却路と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記第2の基板上に実装される第3の基板をさらに含み、
前記冷却路は、
前記第2の基板と前記第3の基板を接続する第2の接合材、前記第2の基板、及び前記第3の基板で区画された第1の流路と、
前記第2の基板において、前記電子部品の上方に相当する位置に形成され、冷媒が流れる貫通孔を含み、前記第1の流路に連結される第2の流路と、
前記第1の基板と前記第2の基板を接続する前記第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板で区画され、かつ前記第2の流路に連結されると共に冷媒が流れる第3の流路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電子部品には溝が形成された受熱部材が取り付けられおり、前記受熱部材の溝が前記冷却路に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記受熱部材上で、かつ前記第2の流路内に多孔質体を配置したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の基板上に電子部品を実装する工程と、
前記第1の基板上に接合材による流路パターンを形成する工程と、
を含み、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材と、前記第1の基板と、前記第2の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる冷却路を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上に実装される電子部品と、
前記第1の基板上に実装される第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板によって区画され、前記第1の基板の外端部まで延びる流路と、
前記第1の基板上に実装された前記電子部品を冷却する冷媒が流れる前記流路を有する冷却路と、
を含む半導体装置。
【請求項2】
前記第2の基板上に実装される第3の基板をさらに含み、
前記冷却路は、
前記第2の基板と前記第3の基板を接続する第2の接合材、前記第2の基板、及び前記第3の基板で区画された第1の流路と、
前記第2の基板において、前記電子部品の上方に相当する位置に形成され、冷媒が流れる貫通孔を含み、前記第1の流路に連結される第2の流路と、
前記第1の基板と前記第2の基板を接続する前記第1の接合材、前記第1の基板、及び前記第2の基板で区画され、かつ前記第2の流路に連結されると共に冷媒が流れる第3の流路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電子部品には溝が形成された受熱部材が取り付けられおり、前記受熱部材の溝が前記冷却路に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記受熱部材上で、かつ前記第2の流路内に多孔質体を配置したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の基板上に電子部品を実装する工程と、
前記第1の基板上に接合材による流路パターンを形成する工程と、
を含み、前記第1の基板上に前記第2の基板を接合する工程は、前記第1の基板と前記第2の基板を接続する第1の接合材と、前記第1の基板と、前記第2の基板とによって、前記電子部品を冷却する冷媒が流れる冷却路を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公開番号】特開2013−62285(P2013−62285A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198127(P2011−198127)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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