説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】被実装体上に半導体チップが積層された半導体装置において、上側の半導体チップ上へのアンダーフィル材の乗り上げやチップ間でのボイドの発生を防止する。
【解決手段】第1の主面上に配線パターン7が形成された第1の半導体チップと、第1の半導体チップ上でかつ配線パターン7が形成された面上に搭載された第2の半導体チップと、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に充填され、第2の半導体チップの外周部にフィレットを形成するアンダーフィル材とを備える半導体装置の構成として、第1の半導体チップ上でかつ第2の半導体チップが搭載されるチップ搭載領域15を区画する4つの辺部のうち、フィレットが最も長く形成される辺部15Aの外側に、アンダーフィル材をチップ間に導く導入部18を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。詳しくは、被実装体の上に半導体チップを搭載した構造を有する半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化、高性能化及び高機能化に伴って、歩留まりの低下、実装面積の増大、高コスト化といった課題が深刻となっている。近年、これらの課題とLSI性能の両立が可能なSiP(システムインパッケージ)が注目されている。SiPは、パッケージ積層型、チップスタック型、チップオンチップ型など、さまざまな構造に分類できるが、なかでもチップオンチップ型は短い配線長でチップ同士を多ピン接続できることから、高速化、低消費電力化に有利である。
【0003】
チップオンチップ型のSiPは、例えばメモリチップと論理回路チップそれぞれを、チップ上に形成したマイクロバンプを介して、チップの活性面同士をFace−to−faceで対面させて接続することにより実現される。
【0004】
通常、チップオンチップ型のSiPでは、バンプを介して接続されたチップ間に、バンプを保護する目的でアンダーフィル材と呼ばれる液状樹脂が封入される。アンダーフィル材は、例えば図21に示すような方法(例えば、特許文献1を参照)でチップ間に封入される。即ち、第1の半導体チップ1とその上に搭載される第2の半導体チップ2(図示しない拡散層、トランジスタ、配線層等を含む)とをバンプ3を介して接続し、この状態でニードル4を用いてアンダーフィル材5を供給する。このとき、第1の半導体チップ1の表面で第2の半導体チップ2の近傍にアンダーフィル材5を滴下する。そうすると、アンダーフィル材5は、第1の半導体チップ1の表面に濡れ広がって第2の半導体チップ2の端部に到達し、そこから毛細管現象によりチップ間の空隙に浸透する。また、毛細管現象で浸透したアンダーフィル材5は、図22(A),(B)に示すように、第2の半導体チップ2の外周部に裾広がりのフィレット6を形成する。その後、アンダーフィル材5を熱処理によって硬化させる。これにより、応力集中によるバンプ3のクラックを防止するとともに、吸湿などの外部ストレスの影響を緩和し、上下チップ間の接続信頼性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−276879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンダーフィル材の封入プロセスは、次の(1)〜(3)の現象を利用して行なわれる。
(1)アンダーフィル材5の滴下。
(2)滴下されたアンダーフィル材5が第1の半導体チップ1の表面上に濡れ広がる現象。
(3)濡れ広がったアンダーフィル材5がチップ間の空隙に毛細管現象によって浸透する現象。
その際、チップ間の空隙にボイド(気泡)を発生させることなく、アンダーフィル材5を浸透させるためには、第1の半導体チップ1の表面の濡れ広がり性が高いこと、つまり表面張力が小さいことが望ましい。また、アンダーフィル材5をボイドレスに均一に浸透させるためには、部分的に濡れ広がり性の悪い部分が存在しないことが望ましい。
【0007】
一方、LSIのパターンによっては、図23に示すように、第1の半導体チップ1の表面に、LSIの最上層の配線パターン7を覆うパッシベーション膜8によって段差9が形成される。特に、図24(A),(B),(C)に示すように、最上層の配線パターン7がアンダーフィル材5の浸透方向Yに対して垂直に形成された場合は、配線パターン7と平行にパッシベーション膜8の段差9が形成される。このため、パッシベーション膜8の段差9での表面張力によってアンダーフィル材5の流動性が阻害されてしまう。したがって、例えば、第1の半導体チップ1の製造ばらつきにより、アンダーフィル材5が第2の半導体チップ2の端部に到達する速度や量がチップごとにばらついてしまう。その結果、例えば図25に示すように、上下チップ間の空隙においてボイド11を誘発し、接続部の信頼性を劣化させる要因になる。
【0008】
また、アンダーフィル材5の流動性が阻害されると、その封入プロセスにおいて、上記(1)〜(3)のバランスが崩れる。このため、例えば、第1の半導体チップ1の表面上を濡れ広がるアンダーフィル材5や、チップ間の空隙に浸透するアンダーフィル材5に比較して、ニードル4から滴下されるアンダーフィル材5の量が過剰になる場合がある。そうした場合は、上記図25に示すように、上記供給領域10の近傍で第2の半導体チップ2上にアンダーフィル材5の乗り上げ(這い上がり)12が発生してしまう。その結果、本来アンダーフィル材5が充填されるべき上下チップ間の空隙に上記のボイド11が発生し、接続部の信頼性が劣化するという課題があった。また、乗り上げ12の発生に伴ってアンダーフィル材5の充填不足が発生するという課題もあった。
【0009】
特に近年は、LSIの集積化技術の向上と小型化への要求により、チップオンチップ型の半導体装置(SiP)で第1の半導体チップ1の更なる小型化が検討されている。このため、第2の半導体チップ2のチップサイズに合わせて規定量のアンダーフィル材5を供給するとしても、その供給領域10を第2の半導体チップ2の近くに寄せて設定する必要がある。その結果、例えば、第2の半導体チップ2の端面とニードル4との間に毛細管力が働き、上記の乗り上げ12が一層発生しやすい状況となる。
【0010】
また近年は、チップの積層化技術が発達し、3つ以上の半導体チップ(LSIチップ等)を多段に積み上げて1つのパッケージの中に収めることが多くなっている。上述のようにチップオンチップ構造で第1の半導体チップ1に搭載された第2の半導体チップ2の上に、図示しない第3の半導体チップを積層する場合は、上記のアンダーフィル材5の乗り上げ12が支障になる。具体的には、図26に示すように、アンダーフィル材5の乗り上げ12が生じたことで、その上に積層される第3の半導体チップ13の姿勢に傾きが生じたり、チップ間の密着性が悪化したりする。また、積層された第3の半導体チップ13とともに樹脂封止する際に、第3の半導体チップ13上の樹脂厚さがばらつき、樹脂の充填不足を生じたりする。このため、歩留まりや信頼性の低下を招くことになる。
【0011】
本発明は、被実装体の上に半導体チップを搭載した構造を有する半導体装置において、半導体チップ上へのアンダーフィル材の乗り上げやボイドの発生を防止することができる半導体装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、第1の主面上に配線パターンが形成された被実装体と、前記被実装体の前記配線パターンが形成された面上に搭載された半導体チップと、前記被実装体と前記半導体チップとの間に充填され、前記半導体チップの外周部にフィレットを形成するアンダーフィル材と、前記被実装体上でかつ前記半導体チップが搭載されるチップ搭載領域を区画する4つの辺部のうち前記フィレットが最も長く形成される辺部の外側に形成され、前記アンダーフィル材を前記被実装体と前記半導体チップの間に導く導入部とを備える。
【0013】
本発明に係る半導体装置においては、当該半導体装置の製造工程で被実装体上に供給されるアンダーフィル材が、導入部を通して半導体チップの辺部(チップ端)へと導かれる。また、半導体チップの辺部に到達したアンダーフィル材は、毛細管現象によって被実装体と半導体チップの間に浸透するとともに、半導体チップの外周部にフィレットを形成する。
【0014】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の製造方法は、被実装体の第1の主面上に形成された配線パターン上の半導体チップが搭載されるチップ搭載領域を区画する4つの辺部のうちアンダーフィル材が供給される供給領域に最も近い辺部の外側に導入部を形成する工程と、前記被実装体の前記チップ搭載領域に半導体チップを搭載する工程と、前記導入部を通じて前記被実装体と前記半導体チップの間にアンダーフィル材を充填することにより、前記半導体チップの外周部にフィレットを形成する工程とを備える。
【0015】
本発明に係る半導体装置の製造方法においては、半導体チップの搭載を行なった後に、被実装体と半導体チップとの間にアンダーフィル材を充填すべく、被実装体上の供給領域にアンダーフィル材を供給する。そうすると、アンダーフィル材は、被実装体上で導入部を通して半導体チップの辺部(チップ端)へと導かれる。また、半導体チップの辺部に到達したアンダーフィル材は、毛細管現象によって被実装体と半導体チップの間に浸透するとともに、半導体チップの外周部にフィレットを形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被実装体の上に半導体チップを搭載した構造を有する半導体装置において、半導体チップ上へのアンダーフィル材の乗り上げやボイドの発生を防止することができる。このため、半導体装置の接続信頼性や歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す図である。
【図2】第1の半導体チップ上に設定されたアンダーフィル材の供給領域とチップ搭載領域の位置を示す平面図である。
【図3】第1の半導体チップの断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図5】図4のJ−J断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図(その1)である。
【図7】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図(その2)である。
【図8】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図(その3)である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の他の構成を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図14】本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置の他の構成を示す図である。
【図16】本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図17】本発明の第8の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図18】本発明の第9の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップを搭載する前の第1の半導体チップの素子形成面の一部を拡大した平面図である。
【図19】第1の実施の形態〜第9の実施の形態の変形例を説明するための模式図(1)である。
【図20】第1の実施の形態〜第9の実施の形態の変形例を説明するための模式図(2)である。
【図21】アンダーフィル材の封入プロセスの一例を示す図である。
【図22】アンダーフィル材の充填によってフィレットを形成した図である。
【図23】半導体チップの断面構造を示す図である。
【図24】アンダーフィル材の供給領域と半導体チップの表面状態を示す図である。
【図25】従来の課題を説明する図(その1)である。
【図26】従来の課題を説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下に記述する実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0019】
本発明の実施の形態については、以下の順序で説明する。また、この実施の形態においては、上記図21〜図26に挙げた各々の部分と同様の部分に同じ符号を付与して説明することとする。
1.半導体装置の構成
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
4.第3の実施の形態
5.第4の実施の形態
6.第5の実施の形態
7.第6の実施の形態
8.第7の実施の形態
9.第8の実施の形態
10.第9の実施の形態
11.変形例
【0020】
<1.半導体装置の構成>
図1は本発明の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す図である。図示した半導体装置100は、第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2を備えた構成となっている。各々の半導体チップ1,2は、機能的には、どのような機能を有するものであってもよい。例えば、一方の半導体チップがメモリチップで、他方の半導体チップが論理回路チップであってもよいし、それ以外の機能を有するものであってもよい。また、ここでは一例として、第1の半導体チップ1を被実装体としたチップオンチップ型の半導体装置を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限らず、図示しない配線基板(例えば、シリコンインターポーザ基板など)を被実装体としてもよい。
【0021】
第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2は、それぞれ平面視四角形(長方形、正方形など)に形成されている。第1の半導体チップ1は、第2の半導体チップ2よりも大きな外形寸法を有している。第1の半導体チップ1の主面には、図示しない半導体素子(例えば、トランジスタなど)が形成され、第2の半導体チップ2の主面にも、図示しない半導体素子が形成されている。第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2は、互いに主面(素子形成面)同士を対向させた状態で、バンプ3を介して電気的かつ機械的に接続されている。バンプ3は、例えば、Sn(すず)−Ag(銀)合金からなるはんだバンプを用いて形成されている。
【0022】
第2の半導体チップ2は第1の半導体チップ1上に搭載されている。第1の半導体チップ1の主面(素子形成面)には、図2の平面図に示すように、第2の半導体チップ2を搭載するためのチップ搭載領域15が設定されている。チップ搭載領域15は、例えば、第1の半導体チップ1の素子形成面の中央部に設定されている。第2の半導体チップ2は、チップ搭載領域15に位置を合わせて第1の半導体チップ1上に搭載されている。
【0023】
第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2の間にはアンダーフィル材5が充填されている。アンダーフィル材5は、第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2が対向する部分に充填されている。アンダーフィル材5は、例えば、応力集中によるバンプ3のクラック防止や、吸湿などの外部ストレスの影響緩和、さらにはバンプ3の機械的な保護や、バンプ3を形成するはんだ材料の溶融による電気的な短絡防止などを目的に設けられるものである。アンダーフィル材5は、例えば、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて形成されている。
【0024】
アンダーフィル材5は、第2の半導体チップ2の外周部にフィレット6を形成している。フィレット6は、第2の半導体チップ2の外周部を規定する4つの辺部から、それぞれ該第2の半導体チップ2の端面を被覆する状態で裾広がりに形成されている。第2の半導体チップ2の4つの辺部でフィレット6の長さを比較すると、半導体装置100の製造工程で第1の半導体チップ1上にアンダーフィル材5が供給される供給領域10に最も近い辺部2Aに形成されるフィレット6の長さが最も長くなっている。これは、アンダーフィル材5の供給領域10に最も近い第2の半導体チップ2の辺部2Aでは、第1の半導体チップ1上でアンダーフィル材5が供給領域10を起点に濡れ広がることで、他の辺部よりもフィレット6が広範囲に形成されるためである。フィレット6の長さは、半導体装置100を平面的に見た場合に、第2の半導体チップ2の辺部からフィレット端までの寸法で規定されるものである。
【0025】
図3は第1の半導体チップ1の断面図である。第1の半導体チップ1は、例えば、シリコン基板などの半導体基板16をベースに構成されている。半導体基板16の主面側には複数の配線層からなる多層配線層17が形成されている。多層配線層17は、例えば、銅やアルミニウムなどの配線材料を用いた配線層と、酸化シリコンや窒化シリコンなどの絶縁材料を用いた層間絶縁層とを積層することで形成されるものである。多層配線層17の最上層よりも下層に形成された配線層の配線パターンは、例えば、銅を配線材料に用いて形成されている。これに対して、多層配線層17の最上層に形成された配線層の配線パターン7は、例えば、アルミニウム、又はアルミニウム主体の合金(アルミニウムに微量の銅を混ぜ合わせた合金)を配線材料に用いて形成されている。配線パターン7は、第1の半導体チップ1の表層部に形成されている。また、配線パターン7は、例えば、配線幅が30μm、配線間のギャップが4μm、配線の厚みが1.1μmの条件で形成されている。
【0026】
配線パターン7は、パッシベーション膜8で覆われている。パッシベーション膜8は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を積層した積層膜によって形成されている。パッシベーション膜8は、例えば、厚さ500nmの酸化シリコン膜と、厚さ700nmの窒化シリコン膜の積層膜で形成される。パッシベーション膜8の表面には、配線パターン7の形成位置に対応して段差9が形成されている。段差9は、配線パターン7の形成部位でパッシベーション膜8が凸となり、配線パターン7の間でパッシベーション膜8が凹となることで、第1の半導体チップ1の面内に形成されている。
【0027】
<2.第1の実施の形態>
図4は本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。また、図5は図4のJ−J断面図である。図示のように、第1の半導体チップ1の素子形成面内には、前述したようにチップ搭載領域15が設定されている。チップ搭載領域15は、第2の半導体チップ2の外形に合わせて平面視四角形に区画されるものである。チップ搭載領域15を区画する4つの辺部のうち、一つの辺部15Aの近傍にはアンダーフィル材の供給領域10が設定されている。チップ搭載領域15の内側及び外側には、当該チップ搭載領域15の辺部15Aと平行な向きで、上述した複数の配線パターン7が形成されている。各々の配線パターン7は、上述した多層配線層17の最上層の配線層を形成するものである。アンダーフィル材の供給領域10は、チップ搭載領域15の辺部15Aから第1の半導体チップ1のチップ端側に所定の距離を隔てた位置に設定されている。所定の距離は、例えば、上述のようにアンダーフィル材をディスペンサーのニードル4から滴下して供給する場合、少なくとも当該ニードル4の外径寸法よりも大きな寸法で設定されるものである。このため、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5は、チップ搭載領域15の辺部15Aに合わせて搭載される第2の半導体チップ2の辺部2Aから毛細管現象によってチップ間の空隙に浸透することになる。
【0028】
ここで、配線パターン7の配線方向(長さ方向)をX方向と定義し、第1の半導体チップ1の面内でX方向と直交する方向をY方向と定義する。そうした場合、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5は、当該供給領域10から見てY方向に流動することにより、第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達し、そこからチップ間に浸透することになる。これに対して、第1の半導体チップ1の素子形成面にはY方向に延在するように導入部18が設けられている。導入部18は、半導体装置100の製造工程で第1の半導体チップ1上の供給領域10に供給されるアンダーフィル材を第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2の間に導くために形成されたものである。導入部18は、チップ搭載領域15を区画する4つの辺部のうち、フィレット6が最も長く形成される辺部15Aの外側に形成されている。ここで記述する「辺部15Aの外側」とは、当該辺部15Aと平面的に重なる位置を含むとともに、当該辺部15Aから見て第1の半導体チップ1のチップ端側でかつフィレット端までの領域をいう。
【0029】
ちなみに、第1の半導体チップ1上に第2の半導体チップ2を搭載した状態では、チップ搭載領域15を区画する4つの辺部と第2の半導体チップ2の外周部を規定する4つの辺部とが、位置ずれ等のない理想状態で同一の位置に配置される。このため、半導体装置100を平面的に見た場合、第2の半導体チップ2の辺部2Aとチップ搭載領域15の辺部15Aは、実質的に同一の辺部を意味するものとなる。
【0030】
導入部18は、第1の半導体チップ1上でチップ搭載領域15の辺部15Aに接続する状態に形成されている。また、導入部18は、配線パターン7の配線方向となるX方向と交差する向きでスリット状に形成されている。導入部18のY方向の一端は、チップ搭載領域15の辺部15Aに接続している。また、X方向においては、チップ搭載領域15の辺部15Aの中央部(中心線K上)に供給領域10と導入部18が配置されている。導入部18は、供給領域10に重なる状態で形成されている。導入部18は、アンダーフィル材の供給領域10からチップ搭載領域15の辺部15Aに向かって直線状(真っ直ぐ)に形成されている。
【0031】
チップ搭載領域15の辺部15Aから数えて、それよりも外側に配置された複数本(図例では10本)の配線パターン7は、X方向で各々の配線パターン7の端部を揃えるように途切れており、その途切れた部分が導入部18として形成されている。このため、導入部18には配線パターン7が存在していない。また、それらの配線パターン7を覆っているパッシベーション膜8の表面は、アンダーフィル材の供給領域10からチップ搭載領域15の辺部15Aまでの間を連続的につなぐ状態で凹状にへこみ、当該へこみ部分が導入部18となっている。導入部18の深さ(凹み寸法)は、上述した段差9と同等の寸法となる。導入部18の平面的な寸法は、半導体装置100の製造工程で使用する熱硬化前(液状)のアンダーフィル材の粘度や流動性、第1の半導体チップ1表面での濡れ広がり性などを考慮して設定すればよい。導入部18の幅Wは、少なくともパッシベーション膜8の膜厚以上の幅とすることが望ましい。ここでは一例として、導入部18をW=150μmの幅で、かつL=500μmの長さで形成するものとする。
【0032】
上記構成からなる半導体装置100を製造する場合は、まず、第1の半導体チップ1の製造工程において、第1の半導体チップ1の主面に最上層の配線パターン7とパッシベーション膜8を用いて導入部18を形成する。また、第2の半導体チップ2の製造工程において、第2の半導体チップ2の表面に複数のバンプ3を形成する。バンプ3は、第1の半導体チップ1側に形成してもよい。
【0033】
次に、第1の半導体チップ1の製造工程で得られた第1の半導体チップ1と、第2の半導体チップ2の製造工程で得られた第2の半導体チップ2とを用いて、第1の半導体チップ1上にバンプ3を介して第2の半導体チップ2を搭載する(図6)。このとき、第1の半導体チップ1の素子形成面に設定されているチップ搭載領域15に位置を合わせて第2の半導体チップ2を搭載する。この段階では、第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2との間に、バンプ3の高さに対応した空隙が介在した状態となる。
【0034】
次に、図7に示すように、第1の半導体チップ1上に設定されている供給領域10に、ニードル4からの滴下によってアンダーフィル材5を供給することにより、第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2との間(空隙)にアンダーフィル材5を充填する。このとき、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5は、導入部18を通して第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達する。導入部18は、第1の半導体チップ1上において、アンダーフィル材の供給領域10からチップ搭載領域15の辺部15Aに至るまで、段差のない平坦な状態で形成されている。このため、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5は、導入部18によって第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導かれる。また、第2の半導体チップ2の辺部2Aにアンダーフィル材5が到達すると、それをきっかけとしてアンダーフィル材5が毛細管現象により第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2の間に引き込まれ、浸透していく。こうしてチップ間の空隙に浸透したアンダーフィル材5は、図8に示すように、第2の半導体チップ2の外周部にフィレット6を形成する。その後、アンダーフィル材5を熱硬化させる。
【0035】
本発明の第1の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、その流れを段差の存在で阻害されることなく、導入部18によってスムーズに第2の半導体チップ2の辺部2Aまで導かれる。このため、アンダーフィル材5が幾つもの段差9を乗り越えて第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達する場合に比較して、アンダーフィル材5が第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達する速度や量のばらつきが小さくなる。また、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5は、より短時間で第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達し、そこから毛細管現象でチップ間に浸透するようになる。このため、第1の半導体チップ1上に濡れ広がるアンダーフィル材5や、チップ間の空隙に浸透するアンダーフィル材5に比較して、供給領域10に供給されるアンダーフィル材5の量が適正に維持される。したがって、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第2の半導体チップ2の上に乗り上げることがなくなる。その結果、ボイドの発生やアンダーフィル材の乗り上げの発生を防止することができる。
【0036】
<3.第2の実施の形態>
図9は本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第2の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と比較して、導入部18の構成が異なっている。即ち、導入部18は、第1の半導体チップ1上に設定されたチップ搭載領域15の外側で、前述したチップ搭載領域15の辺部15Aに最も近い1本の配線パターン7の一部をスリット状に切り欠いた状態で形成されている。導入部18は、上記第1の実施の形態と同様に、フィレット6が最も長く形成されるチップ搭載領域15の辺部15Aの外側に形成されている。また、導入部18は、上記第1の実施の形態と同様に、配線パターン7の配線方向と交差する向きでスリット状に形成されている。そして、導入部18のY方向の一端は、チップ搭載領域15の辺部15Aに接続する状態で形成されている。
【0037】
本発明の第2の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で導入部18に到達し、この導入部8を通して第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導かれる。このため、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5は、導入部18が形成されていない場合に比較して、短時間で第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達し、そこから毛細管現象でチップ間に浸透するようになる。したがって、ボイドの発生やアンダーフィル材の乗り上げの発生を防止することができる。
【0038】
<4.第3の実施の形態>
図10は本発明の第3の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第3の実施の形態においては、上記第2の実施の形態と比較して、チップ搭載領域15の辺部15Aと導入部18の位置関係が異なっている。即ち、上記第2の実施の形態においては、チップ搭載領域15の辺部15Aに位置を合わせて導入部18の一端を配置しているが、第3の実施の形態においては、チップ搭載領域15の辺部15Aに交差する状態で導入部18を配置している。チップ搭載領域15の辺部15Aに導入部18を交差させる形態は、Y方向において、導入部18の一端をチップ搭載領域15の内側に配置し、かつ導入部18の他端をチップ搭載領域15の外側に配置することで実現される。
【0039】
本発明の第3の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で導入部18に到達し、この導入部8を通して第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導かれる。その際、導入部18に到達したアンダーフィル材5は、チップ搭載領域15の内側、つまり第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2が対向している領域の内側まで導入部18によって導かれる。このため、上記第2の実施の形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。即ち、毛細管現象によるアンダーフィル材5の引き込みを導入部18の存在によって促進させることができる。また、第1の半導体チップ1上に設定されたチップ搭載領域15に対して、第2の半導体チップ2の搭載位置が製造公差内でずれた場合でも、導入部18を通してアンダーフィル材5を確実にチップ間に導くことができる。
【0040】
なお、上記第3の実施の形態においては、X方向で第2の半導体チップ2の辺部2Aの中央部に導入部18を形成しているが、これに限らない。例えば図11に示すように、X方向で第2の半導体チップ2の辺部2Aの中央部からずれた位置に導入部18を形成してもよい。つまり、導入部18は、チップ搭載領域15の辺部15Aに導入部18の一端を接続又は交差する状態であれば、チップ搭載領域15の辺部15Aの範囲内でX方向のいずれの位置に形成してもかまわない。この点は、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態についても同様である。
【0041】
<5.第4の実施の形態>
図12は本発明の第4の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第4の実施の形態においては、上記第1〜第3の実施の形態と比較して、導入部18の個数が異なっている。即ち、上記第1〜第3の実施の形態においては、導入部18を一つだけ形成しているが、第4の実施の形態においては、X方向に位置をずらして導入部18を2つ形成している。2つの導入部18は、X方向でチップ搭載領域15の辺部15Aの中央部から左右均等な距離を隔てた位置に配置されている。また、各々の導入部18は、チップ搭載領域15の辺部15Aに交差する状態で形成されている。
【0042】
本発明の第4の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で各々の導入部18に到達する。そして、アンダーフィル材5は、各々の導入部8を通して第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導かれる。これにより、チップ搭載領域15の辺部15Aでアンダーフィル材5が複数の箇所で同時進行的にチップ間に導入される。このため、ボイドや乗り上げの発生を有効に防止することができる。
【0043】
<6.第5の実施の形態>
図13は本発明の第5の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第5の実施の形態においては、上記第4の実施の形態と比較して、Y方向の導入部18の長さが異なっている。即ち、上記第4の実施の形態においては、1本の配線パターン7をX方向の二箇所でスリット状に切り欠いて二つの導入部18を形成している。これに対して、第5の実施の形態においては、Y方向に並ぶ複数本の配線パターン7をそれぞれX方向の二箇所でスリット状に切り欠いて二つの導入部18を細溝状に長く形成している。図例では6本の配線パターン7をスリット状に切り欠いているが、スリット状に切り欠く配線パターン7の本数は6本に限らず、2本以上5本以下であってもよいし、7本以上であってもよい。
【0044】
本発明の第5の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で各々の導入部18に到達する。この場合、各々の導入部18は、複数本の配線パターン7を横切る状態でチップ搭載領域15の辺部15Aに向かって直線状に形成されている。このため、供給領域10から濡れ広がるアンダーフィル材5が上記第4の実施の形態よりも早く各々の導入部18に到達する。そして、各々の導入部18に到達したアンダーフィル材5は、当該導入部18に沿って素早く第2の半導体チップ2の辺部2Aに導かれる。したがって、ボイドや乗り上げの発生を有効に防止することができる。
【0045】
なお、上記第4の実施の形態及び第5の実施の形態においては、チップ搭載領域15の辺部15Aと交差する状態で導入部18を形成しているが、本発明はこれに限らない。例えば、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、チップ搭載領域15の辺部15Aに導入部18の一端を接続する状態で形成してもよい。
【0046】
また、上記第4の実施の形態及び第5の実施の形態においては、導入部18を2つ形成しているが、導入部18を3つ以上形成してもよい。また、導入部18を3つ形成する場合は、X方向でチップ搭載領域15の辺部15Aの中央部に1つの導入部18を配置し、そこから左右均等な距離を隔てた位置にそれぞれ1つの導入部18を配置した形態を採用することが望ましい。
【0047】
<7.第6の実施の形態>
図14は本発明の第6の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第6の実施の形態においては、上記第4の実施の形態と比較して、チップ搭載領域15の辺部15Aよりも外側に、当該辺部15Aに接続しない状態(離間状態)で補助導入部19を形成した点が異なる。補助導入部19は、導入部18と同様に、配線パターン7の一部をスリット状に切り欠いた状態で形成されている。補助導入部19は、導入部18を通してチップ間にアンダーフィル材5を導入するにあたって、これを補助するために形成されたものである。補助導入部19は、供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が第1の半導体チップ1上に濡れ広がるときに、Y方向でのアンダーフィル材5の流れを局所的に促進する作用をなす。補助導入部19は、X方向及びY方向で任意の1箇所に形成してもよいし、例えば図15に示すように、任意の複数箇所に形成してもよい。また、各々の補助導入部19のスリット幅を任意に変えてもよい。
【0048】
本発明の第6の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、補助導入部19を経由することで、導入部18やこれにつながる第2の半導体チップ2の辺部2Aに、より早く到達するようになる。このため、補助導入部19が形成されていない場合に比較して、アンダーフィル材5を短時間で第2の半導体チップ2の辺部2Aに到達させることができる。
【0049】
<8.第7の実施の形態>
図16は本発明の第7の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第7の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と比較して、導入部18の平面形状が異なっている。即ち、上記第1の実施の形態においては、導入部18が直線状に形成されているが、第7の実施の形態においては、導入部18が末広がり状に形成されている。さらに詳述すると、導入部18は、第1の半導体チップ1上でアンダーフィル材5が供給される供給領域10から、チップ搭載領域15の辺部15Aに向かって、末広がり状に形成されている。この末広がりの形状は、チップ搭載領域15の辺部15Aの外側で当該辺部15Aに最も近い配線パターン7を最も幅広に切り欠き、そこから離れるにしたがって配線パターン7の切り欠き幅を徐々に狭めていくことで実現される。末広がり状の導入部18を形成する配線パターン7の本数は、図例ではY方向に6本となっているが、これに限らず、2本以上5本以下であってもよいし、7本以上であってもよい。また、X方向においては、チップ搭載領域15の辺部15Aの中央部に導入部18を末広がり状に形成することが望ましい。
【0050】
本発明の第7の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。即ち、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で導入部18に到達する。このとき、導入部18に到達したアンダーフィル材5は、最も幅狭に切り欠かれた配線パターン7の切り欠き部分から、最も幅広に切り欠かれた配線パターン7の切り欠き部分に向けて、導入部18内を流れる。このため、導入部18内でのアンダーフィル材5の流れがスムーズになる。また、導入部18から第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導かれる過程で、アンダーフィル材5は、導入部18の幅広部分を起点にチップ間に浸透する。このため、第1の半導体チップ1と第2の半導体チップ2の間に素早くアンダーフィル材5を浸透させることができる。
【0051】
なお、上記図16において、最も幅広に切り欠かれた配線パターン7をチップ搭載領域15の辺部15Aに沿わして配置することで、導入部18の一部をチップ搭載領域15の辺部15Aに接続させているが、本発明はこれに限らない。例えば、図示はしないが、最も幅広に切り欠かれた配線パターン7をチップ搭載領域15の辺部15Aに重なるように配置することで、導入部18の一部をチップ搭載領域15の辺部15Aに交差させた形態を採用してもよい。
【0052】
<9.第8の実施の形態>
図17は本発明の第8の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第8の実施の形態においては、上記第7の実施の形態と比較して、導入部18の平面形状が異なっている。即ち、上記第7の実施の形態においては、第1の半導体チップ1上でアンダーフィル材5が供給される供給領域10から、チップ搭載領域15の辺部15Aに向かって、導入部18を末広がり状に形成している。これに対して、第8の実施の形態においては、第1の半導体チップ1上でアンダーフィル材5が供給される供給領域10から、チップ搭載領域15の辺部15Aに向かって、導入部18を先すぼみ状(先細り状)に形成している。この先すぼみ状の形状は、チップ搭載領域15の辺部15Aの外側で当該辺部15Aに最も近い配線パターン7を最も幅狭に切り欠き、そこから離れるにしたがって配線パターン7の切り欠き幅を徐々に広げていくことで実現される。先すぼみ状の導入部18を形成する配線パターン7の本数は、図例ではY方向に6本となっているが、これに限らず、2本以上5本以下であってもよいし、7本以上であってもよい。また、X方向においては、チップ搭載領域15の辺部15Aの中央部に導入部18を末広がり状に形成することが望ましい。
【0053】
本発明の第8の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。即ち、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で導入部18に到達する。このとき、導入部18に到達したアンダーフィル材5は、最も幅広に切り欠かれた配線パターン7の切り欠き部分から、最も幅狭に切り欠かれた配線パターン7の切り欠き部分に向けて、導入部18内を流れる。このため、導入部18を流れるアンダーフィル材5の速度が速まる。したがって、導入部18に到達したアンダーフィル材5を素早く第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導くことができる。
【0054】
なお、上記図17において、最も幅狭に切り欠かれた配線パターン7をチップ搭載領域15の辺部15Aに重なるように配置することで、導入部18の一部をチップ搭載領域15の辺部15Aに交差させているが、本発明はこれに限らない。例えば、図示はしないが、最も幅狭に切り欠かれた配線パターン7をチップ搭載領域15の辺部15Aに沿わして配置することで、導入部18の一部をチップ搭載領域15の辺部15Aに接続させた形態を採用してもよい。
【0055】
<10.第9の実施の形態>
図18は本発明の第9の実施の形態に係る半導体装置の構成として、第2の半導体チップ2を搭載する前の第1の半導体チップ1の素子形成面の一部を拡大した平面図である。この第9の実施の形態においては、配線パターン7の配線方向となるX方向でチップ搭載領域15の辺部15Aの全部(全領域)に接続する状態で導入部18を形成している。Y方向における導入部18の寸法は、少なくとも第2の半導体チップ2のチップ厚の1/3以上とするのが望ましい。また、Y方向における導入部18の寸法の最大値(上限値)は、例えば、導入部18内にアンダーフィル材の供給領域10が完全に収まる条件で規定すればよい。具体的には、チップ搭載領域15の辺部15Aからアンダーフィル材の供給領域10までの離間距離に、当該供給領域10の大きさ(外径)を加算した値で、Y方向における導入部18の寸法の最大値を規定すればよい。
【0056】
本発明の第9の実施の形態においては、第1の半導体チップ1の供給領域10に供給されたアンダーフィル材5が、第1の半導体チップ1上に濡れ広がる過程で導入部18に到達する。このとき、チップ搭載領域15の辺部15Aの全部に接続する状態で導入部18を形成しておけば、導入部18に到達したアンダーフィル材5がその流れを阻害されることなく、幅広の導入部18を通して第2の半導体チップ2の辺部2Aへと導かれる。また、アンダーフィル材5は、第2の半導体チップ2の辺部2Aの全域から毛細管現象によりチップ間に導入される。このため、ボイドや乗り上げの発生を有効に防止することができる。
【0057】
なお、上記図18において、Y方向で導入部18の一端をチップ搭載領域15の辺部15Aに沿わして配置することで、導入部18をチップ搭載領域15の辺部15Aに接続させているが、本発明はこれに限らない。例えば、図示はしないが、Y方向で導入部18の一端側をチップ搭載領域15の辺部15Aに重なるように配置することで、導入部18をチップ搭載領域15の辺部15Aに交差させた形態を採用してもよい。
【0058】
<11.変形例>
上記した第1の実施の形態〜第9の実施の形態では、第2の半導体チップ2の辺部2Aの外側に導入部18が設けられたことで、アンダーフィル材5の流れが段差の存在で阻害されることなくスムーズにチップ間の空隙に導くことができる。
【0059】
しかし、チップ間の空隙に導かれたアンダーフィル材5についても、チップ間の空隙に導かれるまでと同様に段差部での表面張力によってその流動性が阻害されることが考えられる。そして、チップ間の空隙に導かれたアンダーフィル材5の流動性が阻害されると、辺部2A以外の辺部までアンダーフィル材5が到達し難くなり、辺部2A以外のフィレット6の長さが不充分となり得る。
【0060】
例えば、図19は辺部2Aに対向する辺部2Bのフィレット6の長さが不充分である場合を示し、図20は辺部2Aと垂直の方向に配置された辺部2C及び辺部2Dのフィレット6の長さが不充分である場合を示している。なお、フィレット6の長さが充分である場合は図1で示す様な構成となる。ここで、配線パターン7の配線方向とアンダーフィル材5の流動方向が直交している場合には、図19の現象が生じやすく、配線パターン7の配線方向とアンダーフィル材5の流動方向が同一方向である場合には、図20の現象が生じやすいと考えられる。
【0061】
ところで、フィレット6は、第2の半導体チップ2の端部をアンダーフィル材5で保護し、パッケージ組み立て後の製品信頼性を向上するために必要である。例えば、半導体パッケージは、実装時の加熱処理や動作する半導体デバイスからの発熱によって、パッケージを構成する材料の熱膨張係数差に起因した熱ストレスが生じ、結果として、第2の半導体チップの端面から配線層が剥離するといった不良発生が懸念される。従って、製品信頼性を向上するためにフィレット6の長さを充分に確保することが必要となる。
【0062】
そのため、辺部2Bのフィレット6の長さを充分に確保するためには、辺部2Bの外側に図9〜図12で示した導入部18と同様の構成のスリットが形成された方が好ましい。同様に、辺部2Cのフィレット6の長さを充分に確保するためには、辺部2Cの外側に図9〜図12で示した導入部18と同様の構成のスリットが形成された方が好ましい。更には、辺部2Dのフィレット6の長さを充分に確保するためには、辺部2Dの外側に図9〜図12で示した導入部18と同様の構成のスリットが形成された方が好ましい。ここで、辺部2B、2C、2Dの外側に形成されるスリットは導出部の一例である。
【0063】
なお、辺部2B、2C及び2Dの外側にスリットが形成された場合には、辺部2A、2B、2C及び2Dといった全ての辺部においてフィレットの長さを充分に確保することができるために、極めて高い製品信頼性を期待することができる。
【0064】
ところで、本願発明者らは、フィレットの長さが異なる多種多数の半導体装置を製造し、それぞれの半導体装置について−25度と125度との温度変化を2000回繰り返す温度サイクル試験を行った。その結果、フィレット6の長さは100μm以上であることが好ましいとの知見を得た。なお、温度サイクル試験に用いたアンダーフィル材の物性値及び条件は以下の通りである。
【0065】
上下チップ間ギャップ :15μm〜30μm
上下チップ最上層 :シリコンナイトライド
アンダーフィル材の注入温度 :70℃〜110℃
フィラー最大粒径 :1μm
含有量 :50〜60%
ガラス転移温度 :120℃〜140℃
粘度 :8〜20Pa.s
熱膨張係数(硬化前) :30×10−5〜40×10−5
熱膨張係数(硬化後) :120×10−5〜140×10−5
ポアソン比 :0.35
塗布スピード :0.1mg/sec
【0066】
また、本発明者らが更なる実験を重ねた結果、第2の半導体チップの辺部2B及び辺部2C、2Dの各辺について第2の半導体チップ端から100μmまでの外側部分にスリットが設けられた場合には、フィレットの長さが100μm以上となることが分かった。
【0067】
上記の通り、辺部2B、2C若しくは2Dにスリットを設けることによって、辺部2A以外の辺部にも100μm以上の長さのフィレットを形成することが可能となる。その結果、例えば、熱応力に起因する第2の半導体チップ端から生じる配線層の剥離を防止すること等が可能となり、半導体デバイスの長期信頼性の向上を図ることができる。
【0068】
また、第2の半導体チップ端部でもアンダーフィル材5の浸入が阻害されないために、上下チップ間に充填されたアンダーフィル材5にボイドが発生することを抑制することができる。同様に、アンダーフィル材5の浸入が阻害されないことによって、アンダーフィル材5の塗布位置での第2の半導体チップへのアンダーフィル材5の乗り上げを効果的に抑止することが可能となる。
【0069】
なお、上下チップ間を充填するために適したアンダーフィル材5の分量を供給することによって、各辺で確実に100μm以上のフィレットの長さを確保することができることとなる。そのため、アンダーフィル材5の供給後に各辺のフィレットの長さを測長することによって、上下チップ間のギャップバラツキや装置の塗布量のバラツキに起因したアンダーフィル材不足を検出することが可能となる。このことは、アンダーフィル材5の充填不足の不良品が次工程に送られて市場に流出することを抑止できることをも意味する。
【符号の説明】
【0070】
1 第1の半導体チップ
2 第2の半導体チップ
3 バンプ
4 ニードル
5 アンダーフィル材
6 フィレット
7 配線パターン
10 供給領域
15 チップ搭載領域
18 導入部
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面上に配線パターンが形成された被実装体と、
前記被実装体の前記配線パターンが形成された面上に搭載された半導体チップと、
前記被実装体と前記半導体チップとの間に充填され、前記半導体チップの外周部にフィレットを形成するアンダーフィル材と、
前記被実装体上でかつ前記半導体チップが搭載されるチップ搭載領域を区画する4つの辺部のうち前記フィレットが最も長く形成される辺部の外側に形成され、前記アンダーフィル材を前記被実装体と前記半導体チップの間に導く導入部とを備える
半導体装置。
【請求項2】
その外側に前記導入部が形成された辺部を除く3つの辺部のうちの少なくとも1つの辺部の外側に、前記被実装体と前記半導体チップの間に導かれた前記アンダーフィル材を前記半導体チップの外周部に導く導出部を備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
その外側に前記導入部が形成された辺部を除く3つの辺部の外側に、前記被実装体と前記半導体チップの間に導かれた前記アンダーフィル材を前記半導体チップの外周部に導く導出部を備える
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導入部は、前記フィレットが最も長く形成される前記チップ搭載領域の辺部に接続または交差する状態に形成されている
請求項1、請求項2または請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線パターンは、前記フィレットが最も長く形成される前記チップ搭載領域の辺部の外側に、当該辺部と平行に形成され、
前記導入部は、前記配線パターンの配線方向で前記チップ搭載領域の辺部の一部に接続または交差する状態で形成されている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導入部は、前記配線パターンの配線方向と交差する向きでスリット状に形成されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記スリット状の導入部は、前記配線パターンの配線方向に位置をずらして複数個形成されている
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記配線パターンは、前記フィレットの長さが最も長く形成される前記チップ搭載領域の辺部の外側に、当該辺部と平行に形成され、
前記導入部は、前記配線パターンの配線方向で前記チップ搭載領域の辺部の全部に接続または交差する状態で形成されている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
被実装体の第1の主面上に形成された配線パターン上の半導体チップが搭載されるチップ搭載領域を区画する4つの辺部のうちアンダーフィル材が供給される供給領域に最も近い辺部の外側に導入部を形成する工程と、
前記被実装体の前記チップ搭載領域に半導体チップを搭載する工程と、
前記導入部を通じて前記被実装体と前記半導体チップの間にアンダーフィル材を充填することにより、前記半導体チップの外周部にフィレットを形成する工程とを備える
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
その外側に前記導入部が形成される辺部を除く3つの辺部のうちの少なくとも1つの辺部の外側に導出部を形成する工程を備えると共に、
前記導出部を通じて前記被実装体と前記半導体チップの間に導かれた前記アンダーフィル材を前記半導体チップの外周部に導くことにより、前記半導体チップの外周部にフィレットを形成する
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−192886(P2010−192886A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10091(P2010−10091)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】