説明

半導体装置製造用の接着シート

【課題】 半導体装置の製造プロセスにおいて外部から混入する陽イオンを捕捉することにより、製造される半導体装置の電気特性の低下を防止して製品信頼性を向上させることができる接着シートを提供すること。
【解決手段】 半導体装置製造用の接着シートであって、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmである半導体装置製造用の接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造用の接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージチップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及している。また、画像処理技術や携帯電話等の多機能化に伴い、パッケージの高密度化・高集積化・薄型化が推し進められている。
【0003】
一方、半導体製造のプロセス中に外部から、ウェハの結晶基板に陽イオン(例えば、銅イオンや鉄イオン)が混入し、この陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達すると、電気特性が低下するといった問題があった。また、製品使用中に回路やワイヤーから陽イオンが発生し、電気特性が低下するといった問題があった。
【0004】
上述した問題に対して、従来、ウェハの裏面を加工して破砕層(歪み)を形成し、この破砕層により陽イオンを捕捉して除去するエクストリンシック・ゲッタリング(以下、「EG」ともいう)や、ウェハの結晶基板中に酸素析出欠陥を形成し、この酸素析出欠陥により陽イオンを捕捉して除去するイントリンシック・ゲッタリング(以下、「IG」ともいう)が試みられている。
【0005】
しかしながら、近年のウェハの薄型化に伴い、IGの効果が小さくなるとともに、ウェハの割れや反りの原因となる裏面歪みが除去されることにより、EGの効果が得られなくなり、ゲッタリングの効果が充分に得られなくなるという問題があった。
【0006】
従来、半導体素子を基板等に固着する方法としては、熱硬化性ペースト樹脂(例えば、特許文献1参照)を用いる方法や、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用した接着シート(例えば、特許文献2参照)を用いる方法が提案されている。また、接着シートとして、従来、陰イオン交換体を含有させ、ワイヤーの腐食の原因となる塩化物イオンを捕捉し、接続信頼性を向上させた接着シート等(例えば、特許文献3(特に、請求項1、段落[0044])、特許文献4(特に、請求項1、段落[0054])、特許文献5(特に、請求項1、段落[0027])参照)が提案されている。また、接着シートとして、従来、塩化物イオン等を捕捉するイオン捕捉剤を添加することにより、電圧印加時の耐湿熱性を向上させた粘接着シート(例えば、特許文献6(特に、請求項1、段落[0019]、段落[0050])参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−179769号公報
【特許文献2】特開2000−104040号公報
【特許文献3】特開2009−256630号公報
【特許文献4】特開2009−127042号公報
【特許文献5】特開2010−116453号公報
【特許文献6】特開2009−203338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、半導体装置の製造プロセスにおいて外部から混入する陽イオンを捕捉することにより、製造される半導体装置の電気特性の低下を防止して製品信頼性を向上させることができる接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、半導体装置製造用の接着シートについて検討した。その結果、銅イオンを有する水溶液中に、半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、所定の条件下で放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度が0〜9.9ppmであると、製造される半導体装置の電気特性の低下を防止して製品信頼性を向上させることができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る半導体装置製造用の接着シートは、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmであることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmである。従って、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンが捕捉されることになる。その結果、外部から混入する陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。なお、特許文献3〜5に開示されている接着シート等は、銅配線を腐食させる塩化物イオンを捕捉すべく、陰イオン交換体が添加されているのであり、陽イオンを捕捉することは開示されていない。また、特許文献6に開示されている粘接着シートは、電圧印加時の耐湿熱性を向上させるために、塩化物イオン等を捕捉するイオン捕捉剤が添加されているのであり、陽イオンを捕捉することは開示されていない。
【0012】
前記構成において、前記半導体装置製造用の接着シートの膜厚が3〜150μmであることが好ましい。前記半導体装置製造用の接着シートの膜厚を3μm以上とすることにより、より良好に陽イオンを捕捉することができる。一方、前記半導体装置製造用の接着シートの膜厚を150μm以下とすることにより、膜厚の制御が容易となる。
【0013】
前記構成においては、酸価が5〜150(mgKOH/g)のアクリル樹脂を含むことが好ましい。酸価が5〜150(mgKOH/g)のアクリル樹脂を含むと、陽イオンが樹脂中を移動し易くなり有機化合物との錯体形成が促進されるという相乗効果により、さらに良好に陽イオンを捕捉することができる。
【0014】
前記構成においては、85℃、85%RHの雰囲気下で120時間放置したときの吸水率が3重量%以下であることが好ましい。85℃、85%RHの雰囲気下で120時間放置したときの吸水率が3重量%以下であると、半導体パッケージ中において、接着シート中の陽イオンの運動が抑制され、より好適に陽イオンを捕捉することができる。
【0015】
前記構成において、前記半導体装置製造用の接着シートの支持部材に対する熱硬化後の剪断接着力が、175℃の条件下において、0.05MPa以上1GPa以下であることが好ましい。前記剪断接着力が、175℃の条件下において、0.05MPa以上であると、半導体パッケージ中において、陽イオンが支持部材(例えば、ウェハ)から接着シートへと拡散し易くなり、陽イオンをより好適に捕捉することができる。
【0016】
前記構成においては、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。硬化剤としてエポキシ樹脂を含有すると、高温において、接着シートとウエハとの高い接着力が得られる。その結果、接着シートとウエハとの接着界面に水が入りにくくなり、イオンが移動し難くなる。これにより、信頼性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の半導体装置製造用の接着シートは、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmであり、0〜9.5ppmであることが好ましく、0〜8ppmであることがより好ましい。前記半導体装置製造用の接着シートは、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmであるため、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンが捕捉されることになる。その結果、外部から混入する陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明の半導体装置製造用の接着シートは、膜厚が3〜150μmであることが好ましく、5〜120μmであることがより好ましく、5〜60μmであることがさらに好ましい。前記半導体装置製造用の接着シートの膜厚を3μm以上とすることにより、より良好に陽イオンを捕捉することができる。一方、前記半導体装置製造用の接着シートの膜厚を150μm以下とすることにより、膜厚の制御が容易となる。
【0019】
本発明の半導体装置製造用の接着シートは、85℃、85%RHの雰囲気下で120時間放置したときの吸水率が3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましい。前記吸水率が3重量%以下であると、半導体パッケージ中において、接着シート中の陽イオンの運動が抑制され、より好適に陽イオンを捕捉することができる。
【0020】
本発明の半導体装置製造用の接着シートは、支持部材に対する熱硬化後の剪断接着力が、175℃の条件下において、0.05MPa以上1GPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上0.8GPa以下であることがより好ましく、0.2MPa以上0.5GPa以下であることがさらに好ましい。前記剪断接着力が、175℃の条件下において、0.05MPa以上であると、半導体パッケージ中において、陽イオンが支持部材(例えば、ウェハ等)から接着シートへと拡散し易くなり、陽イオンをより好適に捕捉することができる。
【0021】
本発明の半導体装置製造用の接着シート(以下、単に「接着シート」ともいう)は、陽イオンを捕捉する添加剤を含有することが好ましい。前記接着シートに、陽イオンを捕捉する添加剤を含有させると、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンをより好適に捕捉することができる。
【0022】
前記陽イオンを捕捉する添加剤としては、陽イオン交換体、又は、錯体形成化合物などを挙げることができる。なかでも、耐熱性に優れる点で、陽イオン交換体が好ましく、良好に陽イオンを捕捉することができる点で、錯体形成化合物がより好ましい。
【0023】
前記陽イオン交換体としては、より好適に陽イオンを捕捉できるという観点から、無機陽イオン交換体が好ましい。
【0024】
本発明において、前記陽イオンを捕捉する添加剤により捕捉する陽イオンとしては、陽イオンであれば特に制限されないが、例えば、Na、K、Ni、Cu、Cr、Co、Hf、Pt、Ca、Ba、Sr、Fe、Al、Ti、Zn、Mo、Mn、V等のイオンを挙げることができる。
【0025】
(無機陽イオン交換体)
前記無機陽イオン交換体は特に制限されるものではなく、従来公知の無機陽イオン交換体を用いることができ、例えば、より好適に陽イオンを捕捉できる観点から、アンチモン、ビスマス、ジルコニウム、チタン、スズ、マグネシウム及びアルミニウムからなる群より選ばれる元素の酸化水和物を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、マグネシウム及びアルミニウムの酸化水和物が好ましい。
【0026】
前記無機陽イオン交換体の市販品としては、東亜合成株式会社製の商品名:IXE−700F、IXE−770、IXE−770D、IXE−2116、IXE−100、IXE−300、IXE−600、IXE−633、IXE−6107、IXE−6136等を挙げることができる。
【0027】
前記無機陽イオン交換体の平均粒径は、0.05〜20μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。前記無機陽イオン交換体の平均粒径を20μm以下とすることにより、接着力の低下を抑制することができ、0.05μm以上とすることにより、分散性を向上させることができる。
【0028】
(錯体形成化合物)
前記錯体形成化合物は、陽イオンと錯体を形成するものであれば、特に制限されるものではないが、有機系錯体形成化合物であることが好ましく、好適に陽イオンを捕捉できるという観点から、窒素含有化合物、水酸基含有化合物、カルボン酸基含有化合物からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0029】
(窒素含有化合物)
前記窒素含有化合物としては、微粉末状のもの、有機溶媒に溶解し易いもの、又は、液状のものが好ましい。このような窒素含有化合物としては、より好適に陽イオンを捕捉できる観点から、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、又は、ビピリジル化合物を挙げることができるが、銅イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点から、トリアゾール化合物がより好ましい。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
前記トリアゾール化合物としては、特に制限されないが、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−{N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−アミルフェニル}ベンゾトリアゾール、2−{2‘−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル}ベンゾトリアゾール、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−t−オクチル−6‘−t−ブチルー4’−メチル−2,2‘−メチレンビスフェノール、1−(2’、3‘−ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−(1’、2‘−ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2−エチルヘキシアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ベンチル−6−{(H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル}フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−[ 2’−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル ]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−メトラメチルブチル)フェノール]、(2‐[2‐ヒドロキシ‐3,5‐ビス(α,α‐ジメチルベンジル)フェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、メチル 3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等があげられる。
【0031】
前記トリアゾール化合物の市販品としては、特に制限はされないが、城北化学株式会社製の商品名:BT−120、BT−LX、CBT−1、JF−77、JF−78、JF−79、JF−80、JF83、JAST−500、BT−GL、BT−M、BT−260、BT−365、BASF社の商品名:TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 99−2、TINUVIN 109、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 571、TINUVIN 213、台湾永光化学公司製の製品名:EVESORB 81、EVESORB109、EVESORB 70、EVESORB 71、EVESORB 72、EVESORB 73、EVESORB 74、EVESORB 75、EVESORB 76、EVESORB 78、EVESORB 80等を挙げることができる。トリアゾール化合物は、防錆剤としても使用される。
【0032】
前記テトラゾール化合物としては、特に限定されないが、5−アミノ−1H−テトラゾール等が挙げられる。
【0033】
前記ビピリジル化合物としては、特に限定されないが、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなどが挙げられる。
【0034】
(水酸基含有化合物)
前記水酸基含有化合物としては、特に制限されないが、微粉末状のもの、有機溶媒に溶解し易いもの、又は、液状のものが好ましい。このような水酸基含有化合物としては、より好適に陽イオンを捕捉できる観点から、キノール化合物、ヒドロキシアントラキノン化合物、又は、ポリフェノール化合物を挙げることができるが、銅イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点から、ポリフェノール化合物がより好ましい。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0035】
前記キノール化合物としては、特に限定されないが、1,2−ベンゼンジオールなどが挙げられる。
【0036】
前記ヒドロキシアントラキノン化合物としては、特に限定されないが、アリザリン、アントラルフィンなどが挙げられる。
【0037】
前記ポリフェノール化合物としては、特に限定されないが、タンニン、タンニン誘導体(没食子酸、没食子酸メチル、ピロガロール)などが挙げられる。
【0038】
(カルボン酸基含有化合物)
前記カルボン酸基含有化合物としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有芳香族化合物、カルボキシル基含有脂肪酸化合物等が挙げられる。
【0039】
前記カルボキシル基含有芳香族化合物としては、特に限定されないが、フタル酸、ピコリン酸、ピロール-2-カルボン酸等が挙げられる。
【0040】
前記カルボキシル基含有脂肪酸化合物としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、カルボン酸系キレート試薬、等が挙げられる。
【0041】
前記カルボキシル酸系キレート試薬の市販品としては、特に制限はされないが、キレスト株式会社製の製品名:キレストA、キレスト110、キレストB、キレスト200、キレストC、キレストD、キレスト400、キレスト40、キレスト0D、キレストNTA、キレスト700、キレストPA、キレストHA、キレストMZ−2、キレストMZ−4A、キレストMZ−8を挙げることができる。
【0042】
前記陽イオンを捕捉する添加剤の含有量は、前記接着シートを構成する樹脂成分100重量部に対して、0.1〜80重量部であることが好ましく、0.1〜50重量部であることがより好ましく、0.1〜20重量部であることがさらに好ましい。0.1重量部以上とすることにより、陽イオン(特に、銅イオン)を効果的に捕捉することができ、80重量部以下とすることにより、耐熱性の低下やコストの増加を抑制することができる。
【0043】
前記接着シートの形成に用いられる接着剤組成物は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。また、前記接着剤組成物は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを含有することが好ましい。前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができ、特に、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくともいずれか一方を用いることが好ましい。なかでも、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。硬化剤としてエポキシ樹脂を含有すると、高温において、接着シートとウエハとの高い接着力が得られる。その結果、接着シートとウエハとの接着界面に水が入りにくくなり、イオンが移動し難くなる。これにより、信頼性が向上する。
【0044】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0045】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0046】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0047】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0048】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0049】
前記アクリル樹脂のなかでも、酸価が5〜150のものが好ましく、10〜145のものがより好ましく、20〜140のものがさらに好ましく、20〜40のものが特に好ましい。前記接着シートに、酸価が5〜150のアクリル樹脂が含まれると、アクリル樹脂のカルボン酸基が錯体形成に寄与してイオン捕捉剤の捕捉効果を促進するという相乗効果により、さらに良好に陽イオンを捕捉することができる。本発明におけるアクリル樹脂の酸価とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数のことをいう。
【0050】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0051】
前記熱硬化性樹脂の配合割合としては、所定条件下で加熱した際にダイボンドフィルム3、3’が熱硬化型としての機能を発揮する程度であれば特に限定されないが、5〜60重量%の範囲内であることが好ましく、10〜50重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
前記接着剤組成物のなかでも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及び、アクリル樹脂を含有し、アクリル樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂、及び、フェノール樹脂の合計量が10〜2000重量部であることが好ましく、10〜1500重量部であることがより好ましく、10〜1000重量部であることがさらに好ましい。アクリル樹脂100重量部に対するエポキシ樹脂、及び、フェノール樹脂の合計量を10重量部以上とすることにより、硬化による接着効果が得られ、剥離を抑制することができ、2000重量部以下とすることより、フィルムが脆弱化して作業性が低下することを抑制することができる。
【0053】
前記接着剤組成物を用いて作成する接着シートを予めある程度架橋をさせておく場合には、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0054】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0055】
また、前記接着剤組成物には、その用途に応じてフィラーを適宜配合することができる。フィラーの配合は、前記接着剤組成物より得られる接着シートへの導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記フィラーとしては、無機フィラー、及び、有機フィラーが挙げられるが、取り扱い性の向上、熱電導性の向上、溶融粘度の調整、チキソトロピック性付与等の特性の観点から、無機フィラーが好ましい。前記無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウィスカ、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。熱電導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶質シリカ、非晶質シリカが好ましい。また、上記各特性のバランスがよいという観点からは、結晶質シリカ、又は、非晶質シリカが好ましい。また、導電性の付与、熱電導性の向上等の目的で、無機フィラーとして、導電性物質(導電フィラー)を用いることとしてもよい。導電フィラーとしては、銀、アルミニウム、金、胴、ニッケル、導電性合金等を球状、針状、フレーク状とした金属粉、アルミナ等の金属酸化物、アモルファスカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0056】
前記フィラーの平均粒径は、0.005〜10μmとすることができる。前記フィラーの平均粒径を0.005μm以上とすることにより、被着体への濡れ性、及び、接着性を良好とすることができる。また、10μm以下とすることにより、上記各特性の付与のために加えたフィラーの効果を十分なものとすることができるとともに、耐熱性を確保することができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0057】
なお、前記接着剤組成物には、前記陽イオンを捕捉する添加剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、陰イオン捕捉剤、分散剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、硬化促進剤などが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0058】
前記接着剤組成物の製造方法としては、特に限定されず、例えば、陽イオンを捕捉する添加剤と、必要に応じて、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、他の添加剤を容器に投入して、有機溶媒に溶解させ、均一になるように攪拌することによって接着剤組成物溶液として得ることができる。
【0059】
前記有機溶媒としては、接着シートを構成する成分を均一に溶解、混練又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等が挙げられる。乾燥速度が速く、安価で入手できる点でメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどを使用することが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る接着シートは、例えば、次の通りにして作製される。先ず、前記接着剤組成物溶液を作製する。次に、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させる。基材セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等が使用可能である。また、塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。これにより、本実施形態に係る接着シートが得られる。
【0061】
このようにして得られた接着シートは、陽イオンを捕捉する添加剤が含有されているため、半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンを捕捉することができる。その結果、混入した陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達し難くなり、電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。
【0062】
前記の実施形態では、接着剤組成物に含有させる接着剤主成分として、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いる場合について説明したが、本発明においては、接着剤組成物に含有させる接着剤主成分として、前記のような熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂に替えて、セラミック系、セメント系、はんだ等の無機系のものを含有させることとしてもよい。
【0063】
半導体装置製造用の接着シートとしては、半導体装置の製造に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、リードフレーム等の被着体に半導体チップを固着するためのダイボンドフィルムや、フリップチップ型半導体装置の半導体チップの裏面を保護する保護フィルムや、半導体チップを封止するための封止シートとして用いられるものが挙げられる。
【0064】
前記接着シートは、熱硬化前における60℃での引張貯蔵弾性率が、0.01MPa以上1000MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以上100MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以上50MPa以下であることがさらに好ましい。また、前記接着シートは、熱硬化後における260℃での引張貯蔵弾性率が、0.01MPa以上500MPa以下であることが好ましく、0.03MPa以上500MPa以下であることがより好ましく、0.05MPa以上100MPa以下であることがさらに好ましく、0.1MPa以上50MPa以下であることがさらにより好ましい。熱硬化前における60℃での引張貯蔵弾性率を、0.01MPa以上とすることにより、フィルムとしての形状を維持し、良好な作業性を付与することができる。また、熱硬化前における60℃での引張貯蔵弾性率を、1000MPa以下とすることにより、被着体に対する良好な濡れ性を付与することができる。一方、熱硬化後における260℃での引張貯蔵弾性率を、0.01MPa以上とすることにより、リフロークラックの発生を抑制することができる。また、熱硬化後における260℃での引張貯蔵弾性率を、500MPa以下とすることにより、半導体チップと配線基板であるインターポーザとの熱膨張係数の差によって発生する熱応力を緩和することができる。
【0065】
本発明は、10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度(以下、「銅イオン捕捉後の銅イオン濃度」ともいう)が、0〜9.9ppmである半導体装置製造用の接着シートである。本発明において、銅イオン捕捉後の銅イオン濃度を0〜9.9ppmとする方法としては、上述したように、陽イオンを捕捉する添加剤を接着シートに含有させる方法以外に、使用する樹脂成分にカルボン酸基等の陽イオンを捕捉する官能基を導入する方法や、ボロン又はn型ドーパントをイオン注入する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0067】
(実施例1)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 36部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 4.5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 4.5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 55部
(e)陽イオンを捕捉する添加剤(以下、「陽イオン捕捉剤」ともいう)(城北化学(株)製、窒素含有化合物、TT−LX) 0.1部
【0068】
(実施例2)
本実施例2に於いては、上記(e)の陽イオン捕捉剤の配合量を0.3部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例2に係る接着剤組成物溶液を得た。
【0069】
(実施例3)
本実施例3に於いては、上記(e)の陽イオン捕捉剤の配合量を1部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例3に係る接着剤組成物溶液を得た。
【0070】
(実施例4)
本実施例4に於いては、上記(e)の陽イオン捕捉剤の配合量を3部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例4に係る接着剤組成物溶液を得た。
【0071】
(実施例5)
本実施例5に於いては、上記(e)の陽イオン捕捉剤の配合量を10部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例5に係る接着剤組成物溶液を得た。
【0072】
(実施例6)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 40部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 50部
(e)陽イオン捕捉剤(BASFジャパン(株)製、窒素含有化合物、TINUVIN928) 3部
【0073】
(実施例7)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 40部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 50部
(e)陽イオン捕捉剤(BASFジャパン(株)製、窒素含有化合物、TINUVIN928) 10部
【0074】
(実施例8)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 36部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 4.5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 4.5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 55部
(e)陽イオン捕捉剤(BASFジャパン(株)製、窒素含有化合物、TINUVIN928) 20部
【0075】
(実施例9)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 40部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 50部
(e)陽イオン捕捉剤(東京化成工業(株)製、水酸基含有化合物、アリザリン) 3部
【0076】
(実施例10)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−700AS、酸価34) 40部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 4.5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 4.5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 55部
(e)陽イオン捕捉剤(BASFジャパン(株)製、窒素含有化合物、TINUVIN928) 10部
【0077】
(比較例1)
下記(a)〜(d)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 36部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 4.5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 4.5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 55部
【0078】
(比較例2)
下記(a)〜(e)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。
(a)アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、SG−70L、酸価5) 36部
(b)エポキシ樹脂(東都化成社製、KI−3000) 4.5部
(c)フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851H) 4.5部
(d)シリカフィラー((株)アドマテックス製、SO−E3) 55部
(e)陽イオン捕捉剤(城北化学(株)製、窒素含有化合物、TT−LX) 0.01部
【0079】
(イオン性不純物濃度の測定)
実施例1に係る接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmの接着シートを作製した。また、実施例2〜10、及び、比較例1〜2に係る接着剤組成物溶液についても前記と同様にして、離型処理フィルム上にそれぞれ塗布した後、130℃で2分間乾燥させ、厚さ20μmの接着シートを作製した。各接着シート(厚さ20μm)を、それぞれ240mm×300mmの大きさ(約2.5g)に切り出し、5回、半分に折り曲げ37.5mm×60mmのサイズにしたものを、直径58mm、高さ37mmの円柱状の密閉式テフロン(登録商標)製容器にいれ、10ppmの銅(II)イオン水溶液50mlを加えた。その後、恒温乾燥機(エスペック(株)製、PV−231)に120℃で20時間放置した。フィルムを取り出した後、ICP−AES(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS−1700HVR)を用いて水溶液中の銅イオンの濃度を測定した。結果を表1、表2に示す。また、銅イオンの濃度の減少量も合わせて表1、表2に示す。
【0080】
(熱硬化前における60℃での引張貯蔵弾性率の測定)
実施例1に係る接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmの接着シートを作製した。また、実施例2〜10、及び、比較例1〜2に係る接着剤組成物溶液についても前記と同様にして、離型処理フィルム上にそれぞれ塗布した後、130℃で2分間乾燥させ、厚さ20μmの接着シートを作製した。作成した各接着シートを貼り合わせ、それぞれ長さ30mm、幅10mm、厚さ0.20mmとなるように切断した。次に、粘弾性測定装置(RSA−II、レオメトリック社製)を用いて−40〜300℃での引張貯蔵弾性率を周波数1Hz、歪み量0.1%、昇温速度10℃/分の条件下にて測定した。その際の60℃における測定値を表1、表2に示す。
【0081】
(熱硬化後における260℃での引張貯蔵弾性率の測定)
前記の熱硬化前における60℃での引張貯蔵弾性率の測定と同様に、実施例1〜10、及び、比較例1〜2に係る接着シート(厚さ20μm)を作製した。作成した各接着シートを175℃のオーブン中に1時間放置した後、粘弾性測定装置(RSA−II、レオメトリック社製)を用いて熱硬化後における260℃での引張貯蔵弾性率を測定した。測定には、作成した接着シートを貼り合わせ、長さ30mm、幅10mm、厚さ0.20mmとなるように切り出した測定試料を用いた。引張貯蔵弾性率の測定は、−40〜300℃の温度域で周波数1Hz、歪み量0.1%、昇温速度10℃/分で行った。その際の260℃における測定値を表1、表2に示す。
【0082】
(熱硬化後のせん断接着力の測定)
実施例1に係る接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmの接着シートを作製した。また、実施例2〜10、及び、比較例1〜2に係る接着剤組成物溶液についても前記と同様にして、離型処理フィルム上にそれぞれ塗布した後、130℃で2分間乾燥させ、厚さ20μmの接着シートを作製した。
作製した各接着シートを500μmのミラーウェハに60℃で貼り合わせた後、ダイシングを行い、接着シートが貼り合わされた5mm×5mmのチップを作製した。作製した接着シート付きのチップを120℃、0.25kg、1sの条件で10mm×10mmのウェハチップ上にダイボンドし、175℃で1時間加熱して硬化させた。せん断試験機(Dage社製、Dage4000)を用いて、接着シートとウェハチップとのせん断接着力を測定した。せん断試験の条件は、測定速度500μm/s、測定ギャップ100μm、ステージ温度175℃とした。結果を表1、表2に示す。
【0083】
(吸水率の測定)
実施例1に係る接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmの接着シートを作製した。また、実施例2〜10、及び、比較例1〜2に係る接着剤組成物溶液についても前記と同様にして、離型処理フィルム上にそれぞれ塗布した後、130℃で2分間乾燥させ、厚さ20μmの接着シートを作製した。
作製した各接着シートを20mm角に切り出し、乾燥機にて175℃で1時間加熱した。次に、175℃で1時間加熱した後を基準として、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に120時間放置した後の吸水率の値を、カールフィッシャー水分計(三菱化学工業製、CA-07(微量水分測定装置)、VA-07(水分気化装置))にて測定した。具体的には、窒素流量250ml/分、測定温度150℃、遅延時間1分の条件で、気化量が0.1μg/秒になるまで測定を行い、電解に要した電気量より水分量を換算することで、吸水率を求めた。結果を表1、表2に示す。
【0084】
(シリコーンウェハとの剥離力の測定)
実施例1に係る接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ20μmの接着シートを作製した。また、実施例2〜10、及び、比較例1〜2に係る接着剤組成物溶液についても前記と同様にして、離型処理フィルム上にそれぞれ塗布した後、130℃で2分間乾燥させ、厚さ20μmの接着シートを作製した。
作成した各接着シート(離型処理フィルムとは反対側の面)にテープ(日東電工株式会社製、BT−315)を貼り、10mm×100mmに切り出した。その後、離型処理フィルムを剥離し、作成したシートの接着シート側の面を、60℃のホットプレート上で、6インチ、760umのミラーウェハーに貼り合わせた。貼り合わせ条件は、2kgのローラーを用いて、30mm/秒の速度で一往復とした。引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフAGS−J)と50Nのロードセルを用いて速度300mm/秒で、180度ピール試験を行い、接着シートとシリコーンウェハとの剥離力(N/10mm)を測定した。結果を表1、表2に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置製造用の接着シートであって、
10ppmの銅イオンを有する水溶液50ml中に、重さ2.5gの半導体装置製造用の接着シートを浸漬し、120℃で20時間放置した後の前記水溶液中の銅イオン濃度が、0〜9.9ppmであることを特徴とする半導体装置製造用の接着シート。
【請求項2】
前記半導体装置製造用の接着シートの膜厚が3〜150μmであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項3】
酸価が5〜150のアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項4】
85℃、85%RHの雰囲気下で120時間放置したときの吸水率が3重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項5】
前記半導体装置製造用の接着シートの支持部材に対する熱硬化後の剪断接着力が、175℃の条件下において、0.05MPa以上1GPa以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項6】
エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の半導体装置製造用の接着シート。





【公開番号】特開2012−241063(P2012−241063A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110549(P2011−110549)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】