説明

半導体装置

【課題】 高速なスイッチング特性を補償するとともに、電界破壊による破壊耐性を上げることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】 n++型シリコン基板10と、n++型シリコン基板10上に形成される半導体層20と、n++型シリコン基板10に達するように形成されるトレンチ30内部に形成される埋め込み層35と、埋め込み層35に隣接する位置に形成されるn型ピラー層22と、n型ピラー層22に隣接する位置に形成されるp型ピラー層24と、p型ピラー層24上に設けられたp型ベース層50と、埋め込み層35上に形成されるゲート電極40と、ゲート電極40同士を接続する追加電極部45と、半導体層20に形成され、ゲート電極40及び追加電極部45の側方に形成されるn型ソース層54と、追加電極部45の下部に形成されるn型ベース層56を備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MOSFETを利用したパワースイッチング素子として、Deep Trench MOSFET(以下、DTMOSと称す)が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来、DTMOS構造は、n++型シリコン基板内に、従来のプレーナ型MOSFETには存在しない深さ約10〜60μmのトレンチが存在し、このトレンチ以外には、スーパージャンクション構造となるn型ピラー層やp型ピラー層が存在している。
【0004】
このスーパージャンクション構造により、高速なスイッチング特性が得られる。しかしながら、このスーパージャンクション構造では、その素子の最大耐圧を得る為に、縦方向の電界分布が矩形となりバルク層が一様に高電界となっている。そのため、この高電界による電界破壊が起こりやすく、この電界破壊に耐えうる破壊耐性を持ったDTMOSが望まれている。
【0005】
そこで、DTMOSの破壊耐性を向上させるため、つまり、ゲート電極の内部抵抗を低減させるために、ゲート絶縁膜上にある、ゲート電極をn型ピラー層やp型ピラー層に平行に設けるだけでなく、直交する位置にもゲート電極を設け、格子状にゲート電極を配置し、自己整合的にn型ピラー層やp型ピラー層に直交するベース拡散層を形成することにより、ゲート電極の内部抵抗を低減させることができた。
【0006】
しかしながら、このようなn型、p型ピラー層に直交したベース拡散層では、ベース拡散層のコーナー部、つまり、ゲート電極の四つ角部分のベース拡散層やそのベース拡散層とn型ピラー層との接続部が電界集中しやすく、高電界となり、この部分を起点にして、電界破壊が起こりやすいという問題点がある。
【0007】
また、この電界破壊を避ける為に、n型ピラー層やp型ピラー層に直交するゲート電極をなくすことも考えられるが、ゲート電極の内部抵抗を増大させてしまう問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−46082号公報(第10頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高速なスイッチング特性を補償するとともに、電界破壊による破壊耐性を上げることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板上に形成される第1導電型の第1の半導体層と、前記半導体基板上に形成され、前記第1の半導体層に隣接し、前記第1の半導体層と交互に縞状に配列した第2導電型の第2の半導体層と、前記第2の半導体層上に設けられる第2導電型の第1のベース層と、前記第1の半導体層上に形成されるゲート電極と、前記ゲート電極同士を接続し、前記ゲート電極と格子状を成す追加電極と、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に形成され、前記ゲート電極の側方に形成される第1導電型のソース層と、前記追加電極の下部に形成され、前記第1のベース層と接続する第2導電型の第2のベース層と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速なスイッチング特性を補償するとともに、電界破壊による破壊耐性を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体装置であるDTMOSの構造を模式的に示した断面斜視図である。図2は、本発明の実施例1に係るDTMOSの構造を示す図1のA−A′面の断面図であり、図3は、本発明の実施例1に係るDTMOSの構造を示す図1のB−B′面の断面図である。
【0013】
図1に示すように、この本実施例のDTMOSは、共通のドレイン層となる高不純物濃度のn++型シリコン基板10上に、エピタキシャル成長により形成された低濃度のn−型の半導体層20が設けられ、この半導体層20を貫通して、n++型シリコン基板10に達するようなトレンチ30が設けられ、このトレンチ30内に、例えば、酸化膜を介して、多結晶シリコン、誘電体等が埋め込まれた埋め込み層35が形成されている。
【0014】
そして、この半導体層20には、この埋め込み層35側面に隣接する位置に、第1の半導体層であるn型ピラー層22が形成され、n型ピラー層22に隣接する位置に第2の半導体層であるp型ピラー層24が形成されている。この並んで配置されたn型ピラー層22及びp型ピラー層24がスーパージャンクション構造をとり、高速なスイッチング特性を得ることができる。
【0015】
ここで、トレンチ30及び埋め込み層35は、図1に示すように、図中の手前から奥行き方向に形成されている。また、n型ピラー層22及びp型ピラー層24についても、図中の手前から奥行き方向に形成されおり、埋め込み層35及びn型ピラー層22及びp型ピラー層24がストライプ状に形成されている。
【0016】
そして、この埋め込み層35上には、ゲート絶縁膜(図示しない)を介してゲート電極40が形成される。つまり、このゲート電極40は、図中の手前から奥行き方向に形成されることになる。また、このゲート電極40は、隣接するゲート電極40と追加電極部45で接続され、格子形状を有する。
【0017】
このように、ゲート電極40同士を追加電極部45で接続し、格子形状にすることにより、ゲート電極40全体の内部抵抗を減らすことができ、DTMOSの高電界による破壊耐性を上げることができる。
【0018】
そして、ゲート電極40及び追加電極45の側方で、この半導体層20のn型ピラー層22の相互間、かつ半導体層20の表面には、p型ベース拡散層50及びp+型ベース拡散層52が設けられる。このp型ベース拡散層50の一部分は、ゲート電極40及び追加電極45下部の一部分にまで形成される。
【0019】
そして、このp型ベース拡散層50及びp+型ベース拡散層52の表面には、高濃度のn+型ソース拡散層54が選択的に形成される。このn+型ソース拡散層54は、ゲート電極40の側方に形成される。
【0020】
そして、図2、図3に示すように、埋め込み層35上にあるゲート電極40間を格子状に接続している追加電極部45下部には、p型ベース拡散層50と接続するようにp型ベース拡散層56が形成されている。
【0021】
このp型ベース拡散層56の半導体層20への不純物拡散層の深さは、図3に示すように、隣接するp型ベース拡散層50の不純物拡散層の深さとおおよそ等しいことが望ましい。また、p型ベース拡散層50、56の不純物拡散層の深さが異なる場合には、p型ベース拡散層56の不純物拡散層の深さは、p型ベース拡散層50の電界集中による電界破壊が緩和される程度に、p型ベース拡散層50の不純物拡散層の深さよりも深いことが望ましい。
【0022】
また、p型ベース拡散層50、56の不純物濃度も、おおよそ等しいことが望ましい。また、p型ベース拡散層50、56の不純物濃度は、電界集中による電界破壊が緩和される程度に、不連続であってもかまわない。
【0023】
以上のように構成される本実施例のDTMOSは、ゲート電極が追加電極部により格子形状に構成されているため、ゲート電極の内部抵抗を小さくすることができ、高速なスイッチング特性を期待することできる。また、この追加電極部下部にp型ベース拡散層を設けることにより、従来、追加電極部との間で分離していたp型ベース拡散層をつなげることができ、ゲート電極及び追加電極側方に形成されたp型ベース拡散層のコーナー部やこのp型ベース拡散層とn型ピラー層との接合部での電界集中を緩和することができ、破壊耐性を向上させることができる。
【0024】
ここで、本実施例のDTMOSの構造として、nチャネル型のDTMOSについて述べるが、不純物を適宜変更することにより、本実施例のDTMOSをPチャネル型のDTMOSにも適用することができる。
【実施例2】
【0025】
図4は、本発明の実施例2に係る半導体装置であるパワーMOSFETの構造を模式的に示した断面斜視図である。図5は、本発明の実施例2に係るパワーMOSFETの構造を示す図4のC−C′面の断面図であり、図6は、本発明の実施例2に係るパワーMOSFETの構造を示す図4のD−D′面の断面図である。尚、実施例2と同一の構成については、同一符号を附している。
【0026】
図4に示すように、この本実施例のパワーMOSFETは、実施例1のDTMOSと同様、共通のドレイン層となる高不純物濃度のn++型シリコン基板10上に、エピタキシャル成長により形成された低濃度のn−型の半導体層20であるn型ピラー層22が設けられる。そして、p型ピラー層24がn型ピラー層22と縞状になるように形成されている。
【0027】
つまり、n型ピラー層22及びp型ピラー層24は、図中の手前から奥行き方向に形成されおり、n型ピラー層22及びp型ピラー層24が交互に形成されている。この並んで配置されたn型ピラー層22及びp型ピラー層24がスーパージャンクション構造をとり、高速なスイッチング特性を得ることができる。
【0028】
そして、このn型ピラー層22上には、ゲート絶縁膜(図示しない)を介してゲート電極40が形成される。このゲート電極40は、隣接するゲート電極40と追加電極部45で接続され、格子形状を有する。
【0029】
このように、隣接するゲート電極40を追加電極部45で接続し、格子形状にすることにより、ゲート電極40全体の内部抵抗を減らすことができ、パワーMOSFETの高電界による破壊耐性を上げることができる。
【0030】
そして、ゲート電極40及び追加電極45の側方で、この半導体層20のn型ピラー層22の相互間、かつ半導体層20の表面には、p型ベース拡散層50及びp+型ベース拡散層52が設けられる。このp型ベース拡散層50の一部分は、ゲート電極40及び追加電極45下部の一部分にまで形成される。
【0031】
そして、このp型ベース拡散層50及びp+型ベース拡散層52の表面には、高濃度のn+型ソース拡散層54が選択的に形成される。このn+型ソース拡散層54は、ゲート電極40の側方に形成される。
【0032】
そして、図4、図5に示すように、埋め込み層35上にあるゲート電極40間を格子状に接続している追加電極部45下部には、p型ベース拡散層50と接続するようにp型ベース拡散層56が形成されている。
【0033】
このp型ベース拡散層56の半導体層20への不純物拡散層の深さは、図3に示すように、隣接するp型ベース拡散層50の不純物拡散層の深さとおおよそ等しいことが望ましい。また、p型ベース拡散層50、56の不純物拡散層の深さが異なる場合には、p型ベース拡散層56の不純物拡散層の深さは、p型ベース拡散層50の電界集中による電界破壊が緩和される程度に、p型ベース拡散層50の不純物拡散層の深さよりも深いことが望ましい。
【0034】
また、p型ベース拡散層50、56の不純物濃度も、おおよそ等しいことが望ましい。また、p型ベース拡散層50、56の不純物濃度は、電界集中による電界破壊が緩和される程度に、不連続であってもかまわない。
【0035】
以上のように構成される本実施例のパワーMOSFETは、実施例1のDTMOSと同様、ゲート電極が追加電極部により格子形状に構成されているため、ゲート電極の内部抵抗を小さくすることができ、高速なスイッチング特性を期待することできる。また、この追加電極部下部にp型ベース拡散層を設けることにより、従来、追加電極部との間で分離していたp型ベース拡散層をつなげることができ、ゲート電極及び追加電極側方に形成されたp型ベース拡散層のコーナー部やこのp型ベース拡散層とn型ピラー層との接合部での電界集中を緩和することができ、破壊耐性を向上させることができる。
【0036】
ここで、本実施例のパワーMOSFETの構造として、nチャネル型のパワーMOSFETについて述べるが、不純物を適宜変更することにより、本実施例のパワーMOSFETをPチャネル型のパワーMOSFETにも適用することができる。
【0037】
なお、本発明は、上述したような実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置であるDTMOSの構造を模式的に示した断面斜視図。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置であるDTMOSの構造を示す図1のA−A′面の断面図。
【図3】本発明の実施例1に係る半導体装置であるDTMOSの構造を示す図1のB−B′面の断面図。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体装置であるパワーMOSFETの構造を模式的に示した断面斜視図。
【図5】本発明の実施例2に係る半導体装置であるパワーMOSFETの構造を示す図4のC−C′面の断面図。
【図6】本発明の実施例2に係る半導体装置であるパワーMOSFETの構造を示す図4のD−D′面の断面図。
【符号の説明】
【0039】
10 n++型シリコン基板
20 半導体層
22 n型ピラー層
24 p型ピラー層
30 トレンチ
35 埋め込み層
40 ゲート電極
45 追加電極
50、56 p型ベース拡散層
52 p+型ベース拡散層
54 n+型ソース拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板上に形成される第1導電型の第1の半導体層と、
前記半導体基板上に形成され、前記第1の半導体層に隣接し、前記第1の半導体層と交互に縞状に配列した第2導電型の第2の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成されるゲート電極と、
前記ゲート電極同士を接続し、前記ゲート電極と格子状を成す追加電極と、
前記第2の半導体層上に設けられ、前記ゲート電極及び前記追加電極側方に形成される第2導電型の第1のベース層と、
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に形成され、前記ゲート電極側方の前記第1のベース層に形成される第1導電型のソース層と、
前記追加電極の下部に形成され、前記第1のベース層と接続する第2導電型の第2のベース層と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極下部の前記第1の半導体層に形成され、前記第1の半導体層の表面から前記半導体基板に達するように形成されるトレンチと、
前記トレンチ内部に形成される埋め込み層と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1のベース層及び前記第2のベース層の不純物濃度は、略均一であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のベース層の不純物拡散深さは、前記第2のベース層の不純物拡散深さと略等しいことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1のベース層の不純物拡散深さは、前記第2のベース層の不純物拡散深さよりも浅いことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−266267(P2007−266267A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88707(P2006−88707)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】